(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー層が、PMMAおよびポリカーボネートの一方から作られており、かつ前記可撓性ガラス基板の厚さの少なくとも13倍の厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層構造。
前記ポリマー層が、PMMAおよびポリカーボネートの一方から作られており、かつ前記可撓性ガラス基板の厚さの少なくとも13倍の厚さを有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
前記上昇させられた積層温度が、少なくとも前記ポリマー層の軟化温度よりも低い温度である、または少なくとも前記ポリマー層の前記軟化温度よりも高くかつ前記ポリマー層の溶融温度より低い温度であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
裸の可撓性ガラスの機械的信頼性を改善するための技術の1つは、可撓性ガラス基板に1つ以上の薄膜ポリマーを積層することである。機械的強度の要求と、最終用途で予想される曲げ応力および曲げ方向とに依存して、本明細書に開示される概念によると、可撓性ガラス−ポリマー積層基板は、機械的要求に適合するように設計することができる。適切に使用すれば、本発明の積層構造は、可撓性非積層(裸のガラス)構造よりも改善された機械的信頼性性能が得られる。
【0006】
さらなる特徴および利点が以下の詳細な説明に記載されており、その一部は当業者には説明から容易に明らかとなるであろうし、あるいは記載の説明および添付の図面によって例示されるように本発明を実施することによって理解されるであろう。以上の一般的説明および以下の詳細な説明の両方は、本発明の単なる例であり、特許請求される本発明の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【0007】
添付の図面は、本発明の原理のさらなる理解を得るために含まれており、本明細書中に含まれその一部を構成している。図面は、1つ以上の実施形態を示しており、説明とともに、例として、本発明の原理および操作を説明する機能を果たしている。本明細書および図面に開示される本発明の種々の特徴は、あらゆる組合せで使用できることを理解されたい。非限定的な例として、本発明の種々の特徴は、以下の態様により互いに組み合わせることができる。
【0008】
第1の態様によると、ガラス−ポリマー積層構造であって:
約0.3mm以下の厚さを有する可撓性ガラス基板と;
可撓性ガラス基板の熱膨張係数(CTE)の少なくとも約2倍のCTEを有する、可撓性ガラス基板の表面に積層されたポリマー層であって、このポリマー層の熱膨張後に、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって少なくとも約30MPaの圧縮応力を可撓性ガラス基板に付与する、可撓性ガラス基板の表面に積層されたポリマー層と;
を含む、ガラス−ポリマー積層構造が提供される。
【0009】
第2の態様によると、ガラス−ポリマー積層構造であって:
約0.3mm以下の厚さを有する可撓性ガラス基板と;
可撓性ガラス基板の熱膨張係数(CTE)よりも少なくとも約3ppm/℃大きいCTEを有する、可撓性ガラス基板の表面に積層されたポリマー層であって、このポリマー層の熱膨張後に、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって少なくとも約30MPaの圧縮応力を可撓性ガラス基板に付与する可撓性ガラス基板の表面に積層されたポリマー層と;
を含む、ガラス−ポリマー積層構造。
【0010】
第3の態様によると、可撓性ガラス基板が、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって少なくとも約80MPaの面内圧縮応力を有する、態様1または態様2の積層構造が提供される。
【0011】
第4の態様によると、ポリマー層が、可撓性ガラス基板のCTEの少なくとも約10倍のCTEを有する、態様1〜3のいずれか1つの積層体が提供される。
【0012】
第5の態様によると、ポリマー層を可撓性ガラス基板に積層する接着層をさらに含む、態様1〜4のいずれか1つの積層体が提供される。
【0013】
接着層が熱活性化され、約50℃を超える活性化温度を有する、第6の態様によると、態様5の積層体が提供される。
【0014】
第7の態様によると、接着層が感圧接着剤である、態様5の積層体が提供される。
【0015】
第8の態様によると、接着層がUV活性化される、態様5の積層体が提供される。
【0016】
第9の態様によると、上記可撓性ガラス基板が第1の可撓性ガラス基板であり、積層構造がポリマー層に積層された第2の可撓性ガラス基板をさらに含み、ポリマー層は第1および第2の可撓性ガラス基板の間に存在する、態様1〜8の積層体が提供される。
【0017】
第10の態様によると、ポリマー層が液体ポリマーから形成される、態様9の積層体が提供される。
【0018】
第11の態様によると、ポリマー層が、第1および第2の可撓性ガラス基板の少なくとも1つの外縁を越えて延在する、態様10の積層体が提供される。
【0019】
第12の態様によると、上記ポリマー層が第1のポリマー層であり、積層構造が、可撓性ガラス基板に積層された第2のポリマー層をさらに含み、可撓性ガラス基板が第1および第2のポリマー層の間に存在する、態様1〜11の積層体が提供される。
【0020】
第13の態様によると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の形成方法であって:
可撓性ガラス−ポリマー積層構造のポリマー層であって、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の可撓性ガラス基板の熱膨張係数(CTE)の少なくとも2倍のCTEを有するポリマー層を、20℃を超える高温に加熱するステップと;
上記高温のポリマー層を可撓性ガラス基板に積層するステップと;
ポリマー層を上記高温未満まで冷却して、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって少なくとも約30MPaの圧縮応力を導入するステップと;
を含む、方法が提供される。
【0021】
第14の態様によると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の形成方法であって:
可撓性ガラス−ポリマー積層構造のポリマー層であって、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の可撓性ガラス基板の熱膨張係数(CTE)よりも少なくとも約3ppm/℃大きいCTEを有するポリマー層を、20℃を超える高温に加熱するステップと;
上記高温のポリマー層を可撓性ガラス基板に積層するステップと;
ポリマー層を上記高温未満まで冷却して、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって少なくとも約30MPaの圧縮応力を導入するステップと;
を含む、方法が提供される。
【0022】
第15の態様によると、可撓性ガラス基板が、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって少なくとも約80MPaの面内圧縮応力を有する、態様13または態様14の方法が提供される。
【0023】
第16の態様によると、ポリマー層が可撓性ガラス基板のCTEの少なくとも約10倍のCTEを有する、態様13〜15の方法が提供される。
【0024】
第17の態様によると、ポリマー層が上記高温に加熱されるときに、ポリマー層を可撓性ガラス基板に対して膨張させるステップを含む、態様13〜16の方法が提供される。
【0025】
第18の態様によると、可撓性ガラス基板とポリマー層との間に、ポリマー層を可撓性ガラス基板に積層する接着層を塗布するステップをさらに含む、態様13〜17の方法が提供される。
【0026】
第19の態様によると、ポリマー層が上記高温に到達した後に、接着層を熱活性化させるステップを含む、態様18の方法が提供される。
【0027】
第20の態様によると、ポリマー層が上記高温に到達した後に、接着層を圧力活性化させるステップを含む、態様18の方法が提供される。
【0028】
第21の態様によると、ポリマー層が上記高温に到達した後に、接着層をUV活性化させるステップを含む、態様18の方法が提供される。
【0029】
第22の態様によると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の形成方法であって:
可撓性ガラス−ポリマー積層構造のポリマー層であって、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の可撓性ガラス基板の熱膨張係数(CTE)よりも少なくとも約3ppm/℃大きいCTEを有するポリマー層を、20℃を超える高温に加熱するステップと;
上記高温のポリマー層を可撓性ガラス基板に積層するステップと;
ポリマー層を上記高温未満まで冷却して可撓性ガラス基板を湾曲させ、同時に可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって圧縮応力を付与するステップと;
を含む、方法が提供される。
【0030】
第23の態様によると、ポリマー層を加熱するステップが、ポリマー層を可撓性ガラス基板に積層するステップの前に、少なくとも約50℃の温度にポリマー層を加熱するステップを含む、態様22の方法が提供される。
【0031】
第24の態様によると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造であって:
約0.3mm以下の厚さを有する可撓性ガラス基板と;
可撓性ガラス基板の熱膨張係数(CTE)よりも少なくとも約3ppm/℃大きいCTEを有する、可撓性ガラス基板の表面に積層されたポリマー層であって、このポリマー層の熱膨張後に、可撓性ガラス基板に湾曲構造を付与し、同時に、可撓性ガラスの厚さの少なくとも一部に沿って圧縮応力を付与する可撓性ガラス基板の表面に積層されたポリマー層と;
を含む、可撓性ガラス−ポリマー積層構造。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の詳細な説明において、限定ではなく説明の目的で、具体的な詳細が開示される例示的実施形態が、本発明の種々の原理の十分な理解を得るために示されている。しかし、本開示の利益を有している当業者には明らかなように、本発明は、本明細書に開示される具体的な詳細から逸脱した別の実施形態で実施可能である。さらに、本発明の種々の原理の説明を不明瞭にしないようにするため、よく知られた装置、方法、および材料の説明は省略する場合がある。最後に、該当する場合はいつでも、類似の参照番号は類似の要素を意味する。
【0034】
本明細書において、「約」のついた特定の1つの値から、および/または「約」のついたもう1つの特定の値までとして範囲を表現することができる。このように範囲が表現される場合、別の一実施形態は、その特定の1つの値から、および/または別の特定の値までを含む。同様に、前に「約」を使用することによって、値が近似値として表現される場合、その特定の値が別の一実施形態を形成することも理解されよう。それぞれの範囲の端点は、他方の端点に対して、および他方の端点とは独立しての両方で有用であることをさらに理解されよう。
【0035】
本明細書において使用される場合、方向の用語、たとえば上、下、右、左、前、後、上部、底部は、描かれている図に関してのみ記載されており、絶対的な方向を意味することを意図したものではない。
【0036】
ガラスは本来強固な材料だが、その強度(信頼性)は、その表面欠陥または欠陥寸法密度分布、ならびに経時による材料に対する応力の累積曝露の関数となる。全製品寿命サイクル中、可撓性ガラス−ポリマー積層体は、さまざまな種類の静的および動的な機械的応力にさらされる。本明細書に記載の実施形態は、一般に、ポリマー層を用いて強化される可撓性ガラス基板に関する。高温でポリマー層を可撓性ガラス基板に積層し、次にゆっくり冷却することによって、ポリマー層と可撓性ガラス基板との間の比較的大きな熱膨張係数(CTE)の不一致が利用される。このような高温積層方法によって、積層構造が冷却された後に、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって均一に分布した圧縮残留応力を発生させることができる。
【0037】
図1および2を参照すると、2つの代表的な可撓性ガラス−ポリマー積層構造10および40が、それらの対応する応力
図12および42とともに示されている。最初に
図1を参照すると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造10は、第1の可撓性ガラス基板16(Eg、Vg、α、t
g/2を有する)によって形成される第1の最外ガラス層14と、第2の可撓性ガラス基板20(Eg、Vg、α、t
g/2を有する)によって形成される第2の最外ガラス層18と、第1および第2の可撓性ガラス基板16および20の間に挟まれ積層されるポリマー層22(Ep、Vp、α
p、t
pを有する)とを含む。第1および第2の可撓性ガラス基板16および20をポリマー層22に、それらのそれぞれの広い表面28、30および32、34の間の界面で積層するために、接着層24および26を使用することができる。
【0038】
図1は最外ガラス層14および18を示しているが、
図2は、最外ポリマー層50および52(それぞれEp、Vp、α
p、t
p/2を有する)の間に挟まれた可撓性ガラス基板44(Eg、Vg、α、t
gを有する)を有する別の実施形態を示している。この場合も、第1および第2のポリマー層50および52を可撓性ガラス基板44に、それらのそれぞれの広い表面58、60および62、64の間の界面で積層するために、接着層54および56を使用することができる。
【0039】
図1および2の応力
図12および42は、残留面内圧縮応力が、可撓性ガラス−ポリマー積層構造10の可撓性ガラス基板16および20、ならびに可撓性ガラス−ポリマー積層構造40の可撓性ガラス基板44の厚さ全体にわたって発生することを示しており、これらは、可撓性ガラス−ポリマー積層構造10のポリマー層22中、および可撓性ガラス−ポリマー積層構造40のポリマー層50および52中の引張応力によって補償される。最初に
図1を参照すると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造10の可撓性ガラス基板16および20中の残留圧縮応力は、可撓性ガラス基板16および20の厚さ全体にわたって実質的に均一に分布することができ、ポリマー層22を可撓性ガラス基板16および20に高温で積層し次に室温まで冷却することによって発生させることができる。同様に、
図2を参照すると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造40の可撓性ガラス基板44中の残留圧縮応力は、可撓性ガラス基板44の厚さ全体にわたって実質的に均一に分布することができ、ポリマー層50および52を可撓性ガラス基板44に高温で積層し次に室温まで冷却することによって発生させることができ、これについて以下により詳細に説明する。さらに、3層積層構造が
図1および2に示されているが、層の数は3層より多くても少なくてもよく、たとえば最終用途、および加工の要求に依存して選択することができる。種々の別の層状積層体の例が本明細書において説明される。
【0040】
可撓性ガラス基板16、20、および44は、約0.3mm以下の厚さt
gを有する「超薄層」であってよく、限定するものではないが、たとえば、約0.01〜0.05mm、約0.05〜0.1mm、約0.1〜0.15mm、および約0.15〜0.3mmなどの厚さであってよい。可撓性ガラス基板16、20、および44は、ガラス、ガラスセラミック、セラミック材料、またはそれらの複合材料から形成することができる。高品質薄型ガラスシートが形成される溶融法(たとえば、ダウンドロー法)が、フラットパネルディスプレイなどの種々の装置において使用することができる。溶融法で製造されたガラスシートは、別の方法で製造されたガラスシートと比較して優れた平坦性および平滑性の表面を有する。溶融法は、米国特許第3,338,696号明細書および米国特許第3,682,609号明細書に記載されている。別の好適なガラスシート形成方法としては、フロート法、アップドロー法、およびスロットドロー法が挙げられる。
【0041】
対称可撓性ガラス−ポリマー積層体の強化
ポリマー層および可撓性ガラス基板(たとえば、
図1および2に示されるようなもの)を高温で積層し、次にゆっくり冷却することによって、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって残留圧縮応力を発生させることで、ポリマー層と可撓性ガラス基板との間の大きなCTE不一致(たとえば、約2倍以上、たとえば約5倍以上、たとえば約10倍以上)を利用する可撓性ガラス基板の強化方法を開発した。ある実施形態においては、CTEの不一致は、少なくとも約3ppm/℃以上、たとえば約6ppm/℃以上、たとえば約9ppm/℃以上、たとえば約12ppm/℃以上、たとえば約15ppm/℃以上、たとえば約20ppm/℃以上、たとえば約27ppm/℃以上、たとえば約50ppm/℃以上であってよい。可撓性ガラス−ポリマー積層体は、対称および非対称で分類することができる。対称積層構造は、積層構造の中心面C(
図1および2)の下の層が中心面Cの上の層の鏡像を形成するように構成され、非対称積層体は、それらの中心面に関してそのような鏡像を有さない。2つの異なる材料から形成され、高温で積層された異なるCTEを有する3つ以上の層から形成された対称可撓性ガラス−ポリマー積層体の場合、室温における可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたる圧縮応力(2軸変形を仮定する)は:
【数1】
(式中:
Eはヤング率であり、αは線熱膨張係数であり、tは1つの種類の材料の全体の厚さであり、νはポアソン比であり、下付き文字「g」および「p」はそれぞれ「ガラス」および「ポリマー」を意味する。T
積層は、積層プロセス中に使用される接着剤の硬化温度を意味する)
で表される。
【0042】
したがって、可撓性ガラス基板中の圧縮応力は、
1.ガラス層厚さの減少;
2.可撓性ガラス基板のヤング率の増加;
3.ポリマー層のヤング率の増加;
4.ポリマー層の厚さの増加;
5.可撓性ガラス基板とポリマー層との間の熱膨張係数差の増加;および
6.積層温度の上昇、
の1つ以上によって増加させることができる。
【0043】
可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたって、より大きな圧縮応力(たとえば、30MPa以上、たとえば50MPa以上、たとえば60MPa以上、たとえば約70MPa以上、たとえば約80MPa以上、たとえば約90MPa以上、たとえば約100MPa以上、たとえば約110MPa以上)が望ましいが、導入可能な圧縮応力の量には制限が存在する。たとえば、可撓性ガラス基板中で大きな圧縮応力を実現するためには、積層温度をできるだけ高く設定することが方法の1つである。しかし、この積層温度の上限は、使用される接着剤の使用温度の制限などの可撓性ガラス−ポリマー積層体材料の特定の性質よって設定される制限を超えるべきではない。製品の信頼性の確保において、材料および構造的完全性を考慮すべきである。したがって、種々の制限が、可撓性ガラス基板に導入可能な圧縮応力の量に影響を与えうる。
【0044】
強化された可撓性ガラス−ポリマー積層体の形成
可撓性ガラス基板中で所望の高い圧縮応力を実現するために、多数の積層方法を使用することができる。重要なことは、ポリマー層を可撓性ガラス基板に積層する前に、可撓性ガラス基板とポリマー層との間の大きなCTE不一致のために、ポリマー層は、可撓性ガラス基板に対して少なくともある程度熱膨張できるようにすべきである。積層後、可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、制御可能に冷却(たとえば、約1〜2℃/分以下)して室温に戻すことができ、それによって圧縮応力が可撓性ガラス基板中に導入される。
【0045】
ポリマー層と可撓性ガラス基板との間の大きなCTE不一致により圧縮応力を発生させるための高温での積層の例を以下に説明する。これらの実施例は、代表的な性質のものであり、限定を意味するものではない。たとえば、以下に議論される多くの実施例でポリメタクリル酸メチル(PMMA)のポリマー層を使用することができるが、可撓性ガラス基板に対して比較的大きなCTE不一致を有するポリカーボネートのポリマー層、および後述の多数の別のポリマー材料を使用することができる。可撓性ガラス−ポリマー積層体の最終用途で透明性が好ましい場合は、PMMAおよびポリカーボネートのポリマー材料が望ましい場合がある。
【0046】
実施例1:UV感受性接着剤
厚さ0.1mmの2枚の可撓性ガラス基板と、透明で熱可塑性で1.3mmの厚さを有するポリメタクリル酸メチル(PMMA)から形成された1つのポリマー層とを用いて、
図1に示されるような可撓性ガラス−ポリマー積層構造を形成した。UV感受性接着剤(Norland Productsより市販されるNOA 68)をポリマー層と可撓性ガラス基板層との間に厚さ約20nmで塗布した。得られた可撓性ガラス−ポリマー積層構造を熱電気ホットプレート上に置き、UV感受性接着剤の使用制限の90℃未満である80℃に維持して一方の側から加熱した。次に、熱電気ホットプレートとは反対側の可撓性ガラス−ポリマー積層構造の側からUV感受性接着剤にUV光を照射してUV感受性接着剤を硬化させて、高温でポリマー層を可撓性ガラス基板層に接合させ、3℃/分の速度で冷却した。複屈折測定(FSM)を用いて可撓性ガラス基板中に約110MPaの圧縮応力を確認した。以下の表Iは、この代表的な可撓性ガラス−ポリマー積層構造の材料特性を強調しており、以下の表IIは、前述の圧縮応力の式を用いた応力の推定値を示している。
【0049】
実施例2:感熱接着剤
厚さ0.1mmの2枚の可撓性ガラス基板と、1.3mmの厚さを有するPMMAから形成された1つのポリマー層とを用いて、
図1に示されるような可撓性ガラス−ポリマー積層構造を形成した。感熱接着剤(Norland Productsより市販されるNOA 68H)をポリマー層と可撓性ガラス基板層との間に厚さ約20nmで塗布した。得られた可撓性ガラス−ポリマー積層構造を対流オーブン中で、PMMAの軟化温度(91℃〜115℃)よりも低い積層温度(100℃で3時間硬化、3℃/分の昇温速度、1℃/分の冷却速度、50℃で12時間エージングの後、室温まで冷却)まで加熱し、積層温度に到達したときにポリマー層を膨張させ、高温でポリマー層を可撓性ガラス基板層に接合させた。
【0050】
実施例3:感圧接着剤
厚さ0.1mmの2枚の可撓性ガラス基板と、1.3mmの厚さを有するPMMAから形成された1つのポリマー層とを用いて、
図1に示されるような可撓性ガラス−ポリマー積層構造を形成した。感圧接着剤(3Mより市販される8211 OCA)をポリマー層と可撓性ガラス基板層との間に塗布した(厚さ約50μm)。得られた可撓性ガラス−ポリマー積層構造をオートクレーブ中で、PMMAの軟化温度(91℃〜115℃)よりも低い積層温度まで加熱し、積層温度に到達したときにポリマー層を膨張させ、高温でポリマー層を可撓性ガラス基板層に接合させた(90psi(620.5kPa)および85℃で1時間硬化、3°F/分(1.67℃/分)の昇温および冷却速度)。
【0051】
上記の実施例では、ポリマー層および可撓性ガラス基板を接合させるために中間接着層を利用しているが、別の実施形態は、中間接着層を全く使用せずに可撓性ガラス基板に直接接合させたポリマー層を含むことができる。たとえば、ポリマー層を、塑性軟化温度(ガラス転移温度)よりも高いが、ポリマーの溶融温度よりも低い温度に加熱することができる。たとえばPMMAの場合、軟化温度は91℃〜115℃であり、溶融温度は160℃である。軟化温度と溶融温度との間の温度にポリマー層を加熱するために、熱および圧力の組合せを使用することができる(たとえば、オートクレーブを使用)。場合によっては、加熱温度は、あらかじめ選択された時間の間維持することができ、次に可撓性ガラス−ポリマー積層構造をあらかじめ選択された速度(たとえば、約3°F/分(約1.67℃/分)未満)で冷却することができる。
【0052】
ポリマー層の別の一例として、液体ポリマー溶液を可撓性ガラス基板の間の空間に注入することができる。簡潔に
図3を参照すると、高温において、たとえばスペーサー(点線76で表される)を使用して可撓性ガラス基板72および74を分離することによって、可撓性ガラス−ポリマー積層体70を形成することができる。液体ポリマー溶液78は、可撓性ガラス基板72および74の間に形成される空間80に注入することができる。ポリマー層82の可撓性ガラス基板72および74への積層は、ポリマーの固化(たとえば硬化)および制御された冷却ステップによって完了することができる。加熱中の液体ポリマー溶液78の毛管力、粘性流、および膨張によって、可撓性ガラス基板72および74の外縁84および86を越えて液体ポリマー溶液78が押し出され、それによって外縁84および86の封止および被覆を行うことができる。この外縁84および86の封止によって、ポリマー層82が形成された後、端部保護特徴88を可撓性ガラス基板72および74に付与することができる。ポリマー層82の形成後でさえも、可撓性基板72および74の端部における圧縮応力が比較的小さいまたはさらには存在しない場合があり、端部はバルクのガラスよりも比較的低強度となりうるので、このような端部保護が好都合となりうる。接合を促進するため、接着促進剤をポリマー溶液78に加えることができる。物理的接合、および場合によっては化学的接合が、ポリマー層82と可撓性ガラス基板72および74との間で起こる。
【0053】
前述のヒーターおよびオーブンに加えて、放射ヒーター(およびマイクロ波加熱)などの非接触ヒーターを使用して、本明細書で議論されるポリマー層を加熱することができる。放射ヒーターは、赤外線を放出し、それを材料が吸収することができ、その結果加熱された物体に熱が伝達される。放射加熱は、対流加熱または伝導加熱よりも効率的で迅速な場合があり、加熱される物体の表面に接触する必要がない。実施例1の加熱の代替法の1つとして、可撓性ガラス−ポリマー積層構造をUV光源と放射ヒーターとの間に通すことができ、それによって接着材料が所望の温度でUV硬化し、その温度は放射加熱によって維持することができる。さらに、実施例2の変形として、対流オーブンの代わりに2つの放射ヒーターを使用することができ、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の両側に1つずつ配置することができる。この方法は、加熱、積層温度、および冷却を実現するために供給速度およびヒーターの出力を制御することによって、連続的となることができる。複数の放射ヒーターを使用して、加熱、休止、および冷却の速度を制御することができる。
【0054】
非対称可撓性ガラス−ポリマー積層体
積層プロセスは、非対称可撓性ガラス−ポリマー積層構造の応力プロファイルを操作またはこれに影響を与えるために使用することもできる。これらの実施形態において、可撓性ガラス基板とポリマー層との間の大きなCTE不一致により、ポリマー層を可撓性ガラス基板に積層する前に、ポリマー層を可撓性ガラス基板に対して熱膨張させることができる。しかし、可撓性ガラス−ポリマー積層構造の非対称の性質のため、1軸または2軸の湾曲が、可撓性ガラス基板とポリマー層との間に導入されうる。
【0055】
図4を参照すると、非対称の可撓性ガラス−ポリマー積層構造90のCTE不一致によって導入される1軸湾曲曲率は(平面応力を仮定し、可撓性ガラス基板96およびポリマー層98が同じ幅および長さの寸法を有する):
【数2】
(式中:
κは湾曲曲率であり、Eはヤング率であり、αは線熱膨張係数であり、tは1つの種類の材料の全体の厚さであり、下付き文字「g」および「p」はそれぞれ「ガラス」および「ポリマー」を意味する。T
積層は、積層プロセス中に使用される接着剤の硬化温度を意味する)
によって求められる。湾曲曲率κは、中心Cから中立軸Aまでで測定される半径Rと:
【数3】
の関係があり、可撓性ガラス−ポリマー積層構造90の末端92および94の間で測定される角度θと:
θ=L/R=κL
の関係もある。中立軸までの高さhは:
【数4】
によって求めることができる。したがって、非対称可撓性ガラス−ポリマー積層構造の湾曲特性は、材料特性および積層温度が既知の場合に求めることができる。たとえば、100μm/500μm/100μmのガラス/ポリカーボネート/ガラス積層体の場合で、ポリカーボネートのヤング率Eが2.377GPaであり、CTEαが67.5×10
−6/℃であり、積層温度T
積層は80℃である場合、室温まで冷却した後の高さhは約11.3mmである。
【0056】
図5を参照すると、コーティングされていないガラス片100(ガラスのシートまたはリボンのいずれか)が半径Rの曲線で湾曲する場合(ガラスがデバイス中に維持される場合、または加工中にローラーの周囲で湾曲する場合など)、ガラス中に応力が発生する。ガラス片100が曲げモーメントを受け、それによってガラスが湾曲半径Rに到達する場合、x軸(中立軸)に対する位置(y)における応力は:
【数5】
(式中:
σは応力であり;
E
gはガラスのヤング率であり;
v
gはガラスのポアソン比であり;
yは応力σが計算されるy軸方向の位置であり;
Rはガラスの湾曲半径である)
によって計算することができる。
【0057】
最大引張応力は、ガラス100のいずれかの側で発生し、湾曲方向に依存して表面102または表面104のいずれかで発生する。すなわち、表面102が凸型となるようにガラス100が湾曲する場合、最大引張応力は表面102上で発生し、一方、表面104が凸型となるようにガラス100が湾曲する場合、最大引張応力は表面104上で発生する。いずれの場合も、yに
(1/2)tgを代入することによって、最大応力σ
maxの絶対値は:
【数6】
によって定義される。
【0058】
たとえば
図4に示されるような高温におけるポリマー層98の可撓性ガラス基板96への積層によって、
図5のコーティングされていないガラスに対して応力プロファイルを操作することができる。特に、可撓性ガラス基板に湾曲を発生させ圧縮応力を導入するための大きいCTE不一致を有するポリマー層98と可撓性ガラス基板96との積層は、湾曲したガラスで予想される引張応力を軽減、またはさらには解消することができ、湾曲した可撓性ガラス積層構造90全体を強化する機能を果たすことができる(
図4)。
【0059】
以下の議論では、可撓性ガラス−ポリマー積層体中の可撓性ガラス基板の引張応力の軽減を説明する。2つの異なる材料から形成される非対称可撓性ガラス−ポリマー積層体の場合、CTE不一致によって誘発される曲率(1軸平面応力湾曲を仮定)は(前述のように):
【数7】
となり、中立軸は:
【数8】
で与えられ、室温における可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたる曲げ応力は:
【数9】
で与えられる。
【0060】
可撓性ガラス基板の上面における曲げ応力は:
【数10】
で与えられ、底面(すなわちポリマー層との界面)における曲げ応力は:
【数11】
で与えられ、式中:
E
g、ν
gは、可撓性ガラス基板のヤング率およびポアソン比であり;
E
p、ν
pは、ポリマー層のヤング率およびポアソン比であり;
t
gは可撓性ガラス基板の厚さであり;
t
pはプラスチック層の厚さであり;
α
gは可撓性ガラス基板の熱膨張係数であり;
α
pはポリマー層の熱膨張係数であり;
T
積層は積層温度であり;
κ
0はCTE不一致によって誘発される湾曲曲率であり;
σは曲げ応力であり;
y
0は湾曲した積層体の中立軸である。
【0061】
図6と、特に曲げ応力の前述の式を参照すると、熱的に湾曲させた可撓性ガラス基板の内側の引張応力は、機械的に湾曲させた可撓性ガラス基板よりもはるかに小さいことが分かる。この引張応力の減少は、底部側から上部側までの可撓性ガラス基板の厚さ全体で見ることができる。しかし、可撓性ガラス基板の厚さ全体にわたる応力は、可撓性ガラス基板の湾曲のため、
図1および2に示されるように均一ではないことに留意されたい。この実施形態において、可撓性ガラスの厚さの一部のみ、可撓性ガラス基板の底部側のより近くで30MPa以上となる。
【0062】
全般的な考察
本明細書に記載の積層構造中に使用されるポリマー層は、種々のポリマーを含むことができ、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、または熱重合体のポリオレフィン(TPO(商標)−ポリエチレン、ポリプロピレン、ブロックコポリマーのポリプロピレン(BCPP)、またはゴムのポリマー/充填剤ブレンド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルブテレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンおよび置換ポリエチレン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシビニルブチレート、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリビニルアセチレン、透明熱可塑性樹脂、透明ポリブタジエン、ポリシアノアクリレート、セルロース系ポリマー、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリスルフィド、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、およびポリシロキサンのいずれか1つ以上を含むことができる。プレポリマーまたは予備配合物として堆積/コーティングして、次に変換可能なポリマー、たとえばエポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を使用することもできる。多くのディスプレイおよび電気用途では、アクリル系ポリマー、シリコーン、およびそのような構造補助層、たとえば、DuPontより市販されるSentryGlas(登録商標)が好ましい場合がある。ポリマー層は一部の用途では透明であってよいが、他の用途では透明である必要はない。
【0063】
高温で可撓性ガラス基板にポリマー層を積層するための接着材料の非限定的な例としては、UV硬化性光学接着剤または光学セメント、たとえばNorland(商標)Optical Adhesives(NOA60、NOA61、NOA63、NOA65、NOA68、NOA68T、NOA71、NOA72、NOA73、NOA74、NOA75、NOA76、NOA78、NOA81、、NOA84、NOA88、NOA89)、Dow Corning(商標)(Sylgard 184およびその他の熱硬化性シリコーン)、Dymax(商標)、およびその他の製造のものが挙げられる。熱活性化接着材料(たとえば、NOA83H)の場合、あらかじめ選択された温度(たとえば、約50℃以上、たとえば約70℃以上、たとえば80℃以上、たとえば100℃以上)より高い活性化温度を有する接着材料を使用することで、ポリマー層が積層前に、可撓性ガラス基板に対して膨張する可能性を得ることができる。
【0064】
さらに、各ポリマー層自体が、異なるヤング率、異なるポアソン比、および/または層厚さを有する異なる種類のポリマーでできた積層構造または複合構造であってよい。この場合、当業者であれば、ガラス−ポリマー積層体を好都合に構成するために本明細書に記載のように使用できる、有効な厚さ、有効なヤング率、および有効なポアソン比などの層全体の有効な厚さを見いだすために、化合物層を均質化させることができる。たとえば、上記材料および/または金属、たとえばステンレス鋼、ニッケル、銅、貴金属、金属酸化物などのあらゆる組合せから複合材料を形成することができる。
【0065】
本明細書に記載のガラス−ポリマー積層体は、デバイス機能層を実装するための基板として使用することができるし、またはデバイス中の封止層または障壁層として使用することができる。デバイスは、電子デバイス、たとえば、ディスプレイスクリーン(たとえば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、フラットパネルディスプレイなど)、発光デバイス、または太陽電池モジュールであってよい。機能層としては、たとえば、薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、フォトダイオード、三極管、光起電力セル、フォトカプラ、透明電極、カラーフィルタ、または導電層を挙げることができる。ガラス−ポリマー積層体は、ディスプレイスクリーン上に積層されるカバーとして使用することができる。ガラス−ポリマー積層体は、OLED(小分子蛍光(SMF)および(LEP)発光ポリマー)のためだけでなく、電気活性層、たとえば有機光検出器、有機太陽電池、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、およびOLED用TFTなどの他のデバイスのための基板/封止剤として使用することができる。別の使用は、LEP製品用、たとえばパターン化されていないバックライトおよび他の光源、あるいはパターン化された他のデバイス、たとえば標識、文字数字表示装置またはドットマトリックス、およびその他の高解像度表示装置である。
【0066】
ガラス−ポリマー積層体は、電子デバイス中の保護要素として使用するための実質的に透明の成形可能および/または可撓性の構造であってよく、この場合のガラス−ポリマー積層体は、5〜300マイクロメートルの厚さのガラス層と、50マイクロメートル〜1cm以上の範囲の厚さのポリマー層とを含む複合構造である。これに関連して、ガラス−ポリマー積層体の成形性により、湾曲および/またはねじれによって完全な平面から逸脱することができ、そのため一部の他の物体の形状または形態に適合することができる。その可撓性のために、障壁特性に悪影響を与えることなく湾曲させることができる。
【0067】
ガラス−ポリマー積層体は、電子デバイスの基板を構成することができ、そのため透明電極層をコーティングすることができる。この層は、アノードであってよく、インジウムスズ酸化物または銀を主成分とする導体であってよい。あるいは、ガラス−ポリマー積層体は、発光、または他の電子デバイスの封止フィルムを構成することができる。
【0068】
ガラス−ポリマー積層体を有する電子デバイスは、ガラス−ポリマー積層体の構成、透明電極層の堆積、各電気活性層の堆積、および第2の電極層の堆積を含む統合された一連のステップによって製造することができる。完成デバイスの製造のために、バッチ、半連続、または連続のプロセスを考慮することができる。第2の電極層上にさらなる封止層を設けることができる。異なる実施形態により、ガラス−ポリマー積層体の種々の製造技術が実施可能である。
【0069】
一実施形態によると、第1の透明電極(たとえばITO)のコーティングを有するポリマー層が提供される。次に、電気活性、たとえばエレクトロルミネッセンスの有機材料の少なくとも1つの層が堆積され、次に第2の電極層が堆積される。次に完成した構造がガラス層に積層される。別の一実施形態によると、上記順序でポリマー層およびガラス層が交換される。さらなる一実施形態によると、ガラス−ポリマー積層体があらかじめ製造され、次に第1の電極層、電気活性材料の少なくとも1つの層、および第2の電極層の堆積の土台として使用される。
【0070】
ガラス層およびポリマー層は、バッチプロセスによりシート形態で提供することができる。あるいは、ガラス層はシート形態で提供することができ、ポリマー層は連続ロールから提供することができる。さらなる可能性として、ガラス層およびポリマー層の両方が連増ロールから得られる。複合構造は、たとえばバッチプロセス、連続ロール・ツー・ロールプロセス、またはポリマー層が連続フィルムでありガラス層がシート形態である半連続プロセスにより、ガラス層およびポリマー層を積層することによって形成することができる。
【0071】
ポリマー層の場合、プレポリマーまたは予備配合物として堆積/コーティングして、次に変換可能なポリマー、たとえばエポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を使用することができる。ガラスおよびポリマー層の積層は、層の間にグルー/接着剤を使用することができる。その場合、接着剤は、2つの基板の1つの上または両方の基板の上にあらかじめコーティングすることができるし;あるいは積層プロセス中に、室温または高温で、圧力を使用してまたは使用せずに供給することもできる。UV硬化性グルーも好適である。ポリマー層は、ヒートシールグルーがあらかじめコーティングされたポリマーシートの形態であってよい。ガラス層上へのポリマー層の積層および/または堆積は、ガラスの製造プロセス中で統合することができ、すなわちガラスは製造ラインから外れ、次に(依然として熱いまたは温かいまたは冷たい)ポリマーがコーティングされる。
【0072】
積層による形成の代替法として、バッチプロセスまたは連続プロセスによって、複合体のポリマー層がガラス層上にコーティングされる。ガラス上へのポリマーのコーティングは、ディップコーティング、スプレーコーティング、溶液スピンコーティング、溶液ブレードコーティング、メニスカスコーティングによって行うことができるし、またはガラス層上への溶融ポリマーのコーティングによって行うことができる。すなわち、(i)ポリマーがすでにフィルムとして存在し、ガラスに積層される場合、および(ii)ポリマーはフィルム形態ではなく、ディップ、スプレーなどによってガラス上にコーティングされる場合などの種々の状況を考慮することができる。たとえば前述のプレポリマーは、場合(ii)が適している。しかし、前述のいくつかの別のポリマーを場合(ii)でコーティングすることもできる。この場合、ポリマーは、主として、溶液から、溶融物から、またはプレポリマーとしてコーティングすることによってガラス上にコーティングすることができる。
【0073】
電子デバイスの製造において、通常は一部またはすべての層に対して処理ステップを行う必要がある。たとえば、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)などの反導電性共役ポリマーであるエレクトロルミネッセンス有機材料が存在する場合、その層の堆積は、通常、溶媒中のポリマーの前駆体を、たとえばスピンコーティングによって堆積し、次にその層に対して次の処理ステップを行って、その前駆体を最終ポリマーに変換することによって行われる。したがって、下にあるガラス−ポリマー積層体は、これらの処理ステップ中に存在する場合には、前駆体層のスピンコーティングに使用される溶媒に耐えることができ、引き続く溶媒の除去および前駆体からポリマーへの変換に使用される温度に耐えることができる必要がある。したがって、ガラス−ポリマー積層体のポリマー層は、適切な品質であることが必要となる。たとえば、ガラス−ポリマー積層体が高温にさらされる場合、ポリマー層のガラス転移温度(および使用される接着剤の使用温度)が、これらの温度よりも高温であるべきである。たとえば、150℃を超える温度が可能となる。さらに、特定の場合では、ポリマー層は、ポリマーに使用される溶媒層、たとえば混合キシレン、THF、可溶性共役ポリマーに使用される溶媒層、たとえばMEH PPVに耐えるべきである。
【0074】
ガラス−ポリマー積層体は、2または3を超える層を含むことができる。
図7を参照すると、可撓性ガラス−ポリマー積層構造120は、4つ以上の層を含み、この場合、7つの層122、124、126、128、130、132、および134を含み、層122および134がガラス1であり、層126および130がガラス2であり、層124および132がポリマー2であり、層128がポリマー1である。ここで、ガラス層122および134が最外層を形成する。ガラス1およびガラス2は同じまたは異なるガラス塑性(Eg、Vg、α、t
gを含む)を有することができ、それぞれが1枚の均一シートであってよいし、またはガラス積層体であってよい。ポリマー1およびポリマー2は同じ材料であってもよいし、異なる材料で構成されてもよく(Ep、Vp、α
p、t
pを含む)、1枚の均一ポリマーシート、または種々のポリマーの積層体のいずれであってもよい。
【0075】
図8を参照すると、別の可撓性ガラス−ポリマー積層構造140は7つの層142、144、146、148、150、152、および154を含み、層142および154はポリマー2であり、層146および150はポリマー1であり、層144および152はガラス2であり、層148はガラス1である。ここで、ポリマー層142および154が最外層を形成する(Ep2、Vp2、α
p2、t
p2/2を有する)。ガラス1およびガラス2(Eg1、Vg1、α
g1、t
g1;およびEg2、Vg2、α
g2、t
g2/2をそれぞれ有する)は、同じまたは異なるガラス塑性を有することができ、それぞれが1枚の均一シート、またはガラス積層体であってよい。ポリマー1およびポリマー2(Ep1、Vp1、α
p1、t
p1/2;およびEp2、Vp2、α
p2、t
p2/2をそれぞれ有する)は同じ材料であってもよいし、異なる材料で構成されてよく、1枚の均一ポリマーシート、または種々のポリマーの積層体のいずれであってもよい。
【0076】
以上に記載の可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、超薄可撓性ガラス基板の強度を増加させる。ほぼ一定の均一な圧縮応力を、対称積層構造のガラスの厚さを介して提供することができる。ポリマー層は、破壊から保護することができ、破壊が生じた場合可撓性ガラス基板を共に維持することができる。可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、タッチカバーガラスを提供することができ、化学強化ガラスの代わりに使用することができる。非対称可撓性ガラス−ポリマー積層構造に関連して前述したような湾曲ディスプレイガラスを提供することができる。可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、BIPV用途などの薄膜PVの障壁層を提供することができ、PVモジュールに改善された衝撃保護性を付与することができる。可撓性ガラス基板は、防湿層として機能し、望ましくないUV光を遮断することもできる。可能性のある用途の1つはOLEDの封止材としてである。
【0077】
さらなる機能をポリマー層に組み込むことができる。たとえば、ポリマー層は、ポリマー偏光シート、コントラスト増強フィルタ積層体を含むことができ、反射防止特性、カラーフィルタ特性、または色変換特性を有することができる。たとえば、発光層が青色光を放出し、積層体が、たとえば、青色を吸収して赤色または緑色を再放出する赤色または緑色蛍光分子を含有するデバイスを有することができる。あるいはまたはこれに加えて、ポリマー層は、望ましくない周囲光を遮断する、および/または散乱粒子を有するように設計することができ、それによって導波が減少し、デバイスの輝度が増加する。このようなさらなる機能をガラス層中に組み込むことができる。複合構造中に第3のポリマー層が設けられる場合、これによって、2つの異なる種類のポリマー層が可能となり、異なる層中に別のさらなる機能を組み込む自由度が得られる。
【0078】
電子デバイスに加えて、前述の可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、建築用の表面装飾、保護コーティング、エレクトロクロミックウィンドウ、耐火性表面などの別の分野に使用することができ、および衝撃グレージング(ballistic glazing)の要求に適合するために必要な多層スタック構造の種々の構成に使用することができる。同様に、可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、有機/薄膜、PV、OLEDディスプレイ、および照明などの用途のフィルム、構造、および/またはデバイスを酸素および水分の侵入/透過から保護する障壁材料として機能することができる。
【0079】
本発明の可撓性ガラス−ポリマー積層構造は、2つの種類の材料(有機および無機)の性質を利用することができる。ポリマー材料は、容易にすりきずが生じ、太陽光曝露などの環境要素により劣化し、水分/酸素障壁特性が不十分となる。他方、ガラスは、耐擦傷性、耐久性であり、優れた水分/酸素障壁特性で知られている。しかし、ガラスは、ポリマーよりも高密度であり、欠陥およびきずによってガラスの強度が示される場合は脆性材料である。前述の可撓性ガラス−ポリマー積層構造、およびそれらの方法は、これら2つの種類の材料を利用しており、それらを組み合わせることで、改善された障壁特性、軽量、および裸の薄型ガラススタックよりも高い機械的信頼性を有する1つの積層構造が得られる。
【0080】
結論
前述の本発明の実施形態、特にあらゆる「好ましい」実施形態は、単なる実施のための可能な例であり、単に本発明の種々の原理の明確な理解のために記載されていることが強調される。本発明の意図および種々の原理から実質的に逸脱することなく、前述の本発明の実施形態に対する種々の変形および修正を行うことができる。このような全ての修正および変形が、本開示および本発明の範囲内として本明細書に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることを意図している。