(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
「組成物」および同様な用語は、2個以上の物質の混合物を意味し、例えば、他のポリマーとブレンドされているポリマー、または添加物もしくはフィラー等を含有するポリマー等を意味する。反応前混合物、反応混合物および反応後混合物が組成物に含まれ、反応後混合物には、反応生成物および反応副生成物、ならびに、反応混合物の未反応成分、および存在するならば反応前混合物または反応混合物の1個以上の成分から形成される分解生成物が含まれる。
【0007】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」および同様な用語は、2個以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンドは混和性であってもなくてもよい。このようなブレンドは相分離していてもしていなくてもよい。このようなブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において公知の他の任意の方法により測定される1個以上のドメイン配置を含有してもしていなくてもよい。ブレンドは積層体ではないが、積層体の1個以上の層がブレンドを含有してもよい。
【0008】
「ポリマー」は、同じタイプのモノマーか異なるタイプのモノマーのどちらであるかに関わらず、モノマーを重合することによって調製される化合物を意味する。従って、ポリマーという総称用語は、ホモポリマー(通常、1タイプのみのモノマーから調製されるポリマーを指すのに使用される)という用語、および下記で規定されるインターポリマーという用語を包含する。総称用語のポリマーは、インターポリマーの全形態(例えば、ランダム、ブロック等)も包含する。「エチレン/α−オレフィンポリマー」および「プロピレン/α−オレフィンポリマー」という用語は、下記で規定されるインターポリマーを示す。ポリマーは多くの場合、モノマー「から作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプ「に基づき」、特定のモノマー含有物を「含有する」等と言われるが、これは特定のモノマーの重合残存物を指し、重合していない種を指していないことが明白に理解される。
【0009】
「インターポリマー」は、2個以上の異なるモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。この総称用語には、コポリマー(通常、2個以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すのに使用される)が含まれ、また、2個超の異なるモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマー等が含まれる。
【0010】
「ポリオレフィン」、「ポリオレフィンポリマー」、「ポリオレフィン樹脂」等の用語は、モノマーとして単純オレフィン(一般式C
nH
2nを有するアルケンとも呼ばれる)から生成されるポリマーを意味する。ポリエチレンは、1個以上のコポリマーとともに、またはコポリマーなしでエチレンを重合することにより生成され、ポリプロピレンは、1個以上のコポリマーと共に、またはコポリマーなしでプロピレンを重合させることによって生成される等である。従って、ポリオレフィンには、エチレン/α−オレフィンコポリマー、プロピレン/α−オレフィンコポリマー等のインターポリマーが含まれる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「融点」(プロットされたDSC曲線の形状に関して融解ピークとも呼ばれる)は、通常、米国特許第5,783,638号に記載されるように、ポリオレフィンの融点または融解ピークを測定するDSC(示差走査熱分析)法により測定する。2個以上のポリオレフィンを含むブレンドの多くは1個超の融点または融解ピークを有し、個々のポリオレフィンの多くは1個の融点または融解ピークのみを含むことに注意すべきである。
【0012】
多層構造体は、A/B/C等の構造において、または好ましくはA/B/C/B/Dの構造において、A層、B層およびC層の3個以上の層を有し、Aはポリオレフィン層、Cはバリア層、Bはポリオレフィン層とバリア層間に接着力を提供する結合層、およびDはシーラント層である。A層およびD層は同じ組成物であるかまたは異なる組成物であってもよい。任意に、機能性を追加するため、例えばA/B/CまたはA/B/C/B/Dの繰返し単位で7層構造およびそれよりも多い層を組み入れることができる。
【0013】
B層の成分は、B層の全ポリマー重量に基づき、以下の量で存在してもよい:20wt%〜90wt%、好ましくは40〜60wt%のCBC;任意に、0wt%〜30wt%、好ましくは10wt%〜30wt%のポリオレフィンエラストマー;10wt%〜30wt%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン(MAH−g−PE);および任意に、0wt%〜20wt%のポリプロピレンまたは0wt%〜20wt%のポリエチレン。B層調合物におけるグラフト化MAH濃度は、0.05〜1.0%の範囲であることができる。任意に、MAH−g−PEを、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)、またはMAH−g−PEとMAH−g−PPの組み合わせで置換することができる。
【0014】
結合層であるB層の調合物はポリオレフィンエラストマーを含む。適切なポリオレフィンエラストマーには、均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)を含む任意のポリエチレン系エラストマーまたはポリプロピレン系エラストマーが含まれる。
【0015】
均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、メタロセン触媒等の単一サイト触媒または束縛構造触媒を用いて作製することができ、通常105℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、さらに好ましくは80℃未満、さらに好ましくは75℃未満の融点を有する。融点は、例えば米国特許第5,783,638号に記載されるように、示差走査熱分析(DSC)により測定する。α−オレフィンは、好ましくはC
3−20直鎖α−オレフィン、C
3−20分岐α−オレフィンまたはC
3−20環状α−オレフィンである。C
3−20α−オレフィンの例としては、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンはシクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環状構造も含有することができ、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンが結果として生じる。用語の古典的な意味でのα−オレフィンではないが、本発明の目的では、ノルボルネンおよび関連オレフィン等の特定の環状オレフィンはα−オレフィンであり、上述のα−オレフィンのいくつかまたはすべての代わりに使用することができる。同様に、本発明の目的では、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)はα−オレフィンである。均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーの実例としては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレン等が挙げられる。ターポリマーの実例としては、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、およびエチレン/ブテン/スチレンが挙げられる。コポリマーは、ランダムまたはブロックであることができる。
【0016】
本発明において有用な均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーのより詳細な例としては、均一に分枝した直鎖エチレン/α−オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company Limited製のTAFMER(登録商標)およびExxon Chemical Company製のEXACT(登録商標))、ならびに均一に分枝した実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手できるAFFINITY(商標)およびENGAGE(登録)ポリエチレン)が挙げられる。実質的に直鎖のエチレンコポリマーが特に好ましく、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号および同第5,986,028号においてより完全に記載されている。これらのインターポリマーのいずれかのブレンドも本発明の実施において使用することができる。本発明の内容においては、均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、オレフィンブロックコポリマーではない。
【0017】
ポリオレフィン層であるA層、もし存在するならばシーラント層であるD層として使用でき、任意に結合層であるB層において使用することができるポリプロピレンは、ホモポリマー(hPP)、ランダムコポリマーポリプロピレン(rcPP)、インパクトコポリマーポリプロピレン(hPPおよび1個以上のエラストマー耐衝撃性改質剤)(ICPP)または高耐衝撃ポリプロピレン(HIPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、イソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)およびそれらの組み合わせであることができる。
【0018】
ポリオレフィン層であるA層、もし存在するならばシーラント層であるD層において使用でき、任意に結合層であるB層において使用することができるポリプロピレンは、プロピレン−アルファ−オレフィンインターポリマーであることもできる。プロピレン−アルファ−オレフィンインターポリマーは、実質的にイソタクチックなプロピレン配列を有することで特徴づけられる。プロピレン−アルファ−オレフィンインターポリマーには、プロピレン系エラストマー(PBE)が含まれる。「実質的にイソタクチックなプロピレン配列」とは、
13C NMRにより測定される0.85超;あるいは0.90超;あるいは0.92超;あるいは0.93超のイソタクチック3連子(mm)を、配列が有することを意味する。イソタクチック3連子は当技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,504,172号および国際公開第WO00/01745号において記載されており、
13C NMRスペクトルにより測定される、コポリマー分子鎖における3連子単位を単位としたイソタクチックな配列を指す。
【0019】
プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、ASTM D−1238(230℃/2.16Kgにおいて)に従って測定される、0.1〜500グラム毎10分(g/10分)のメルトフローレートを有してもよい。0.1〜500g/10分の各々の値および部分的な範囲の全てが本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、メルトフローレートは、0.1g/10分、0.2g/10分、または0.5g/10分の下限から、500g/10分、200g/10分、100g/10分、または25g/10分の上限までであることができる。例えば、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.1〜200g/10分のメルトフローレートを有してもよく;あるいはプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.2〜100g/10分のメルトフローレートを有してもよく;あるいはプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.2〜50g/10分のメルトフローレートを有してもよく;あるいはプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.5〜50g/10分のメルトフローレートを有してもよく;あるいはプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1〜50g/10分のメルトフローレートを有してもよく;あるいはプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1〜40g/10分のメルトフローレートを有してもよく;あるいはプロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、1〜30g/10分のメルトフローレートを有してもよい。
【0020】
プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、1重量パーセント以上(2ジュール/グラム(J/g)以上の融解熱(Hf))から30重量パーセント(50J/g未満のHf)の結晶化度を有する。1重量パーセント(2J/g以上のHf)から30重量パーセント(50J/g未満のHf)までの各々の値および部分的な範囲の全てが本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、結晶化度は、1重量パーセント(2J/g以上のHf)、2.5パーセント(4J/g以上のHf)、または3パーセント(5J/g以上のHf)の下限から、30重量パーセント(50J/g未満のHf)、24重量パーセント(40J/g未満のHf)、15重量パーセント(24.8J/g未満のHf)、または7重量パーセント(11J/g未満のHf)の上限までであることができる。例えば、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1重量パーセント以上(2J/g以上のHf)から24重量パーセント(40J/g未満のHf)の結晶化度を有してもよく;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1重量パーセント以上(2J/g以上のHf)から15重量パーセント(24.8J/g未満のHf)の結晶化度を有してもよく;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1重量パーセント以上(2J/g以上のHf)から7重量パーセント(11J/g未満のHf)の結晶化度を有してもよく;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、8.3J/g未満のHfの結晶化度を有してもよい。結晶化度は、米国特許第7,199,203号に記載されるように、示差走査熱分析(DSC)により測定する。プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、プロピレンから誘導される単位および1以上のアルファ−オレフィンコモノマーから誘導されるポリマー単位を含む。プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを製造するのに使用する例示的なコモノマーは、C
2およびC
4からC
10のアルファ−オレフィンであり;例えばC
2、C
4、C
6およびC
8アルファ−オレフィンである。
【0021】
プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、1〜40重量パーセントの、1以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含む。1〜40重量パーセントの各々の値および部分的な範囲の全てが本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、コモノマー含有量は、1重量パーセント、3重量パーセント、4重量パーセント、5重量パーセント、7重量パーセント、または9重量パーセントの下限から、40重量パーセント、35重量パーセント、30重量パーセント、27重量パーセント、20重量パーセント、15重量パーセント、12重量パーセント、または9重量パーセントの上限までであることができる。例えば、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1〜35重量パーセントの、1以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1〜30重量パーセントの、1以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、3〜27重量パーセントの、1以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、3〜20重量パーセントの、1以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み;あるいは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、3〜15重量パーセントの、1以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含む。
【0022】
プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、通常0.895g/cm
3未満;あるいは0.890g/cm
3未満;あるいは、0.880g/cm
3未満;あるいは、0.870g/cm
3未満の密度を有する。プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、通常0.855g/cm
3超;あるいは、0.860g/cm
3超;あるいは0.865g/cm
3超の密度を有する。
【0023】
プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、通常120℃未満;あるいは<100℃、あるいは<90℃、あるいは<80℃、あるいは<70℃の融点(Tm)を有し;米国特許第7,199,203号において記載されるように示差走査熱分析(DSC)により測定される、通常70ジュール毎グラム(J/g)未満の融解熱(Hf)を有する。
【0024】
プロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、数平均分子量で割った重量平均分子量(M
w/M
n)として規定される、3.5以下;または3.0以下;または1.8〜3.0の分子量分布(MWD)を有する。
【0025】
このようなプロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、米国特許第6,960,635号および同第6,525,157号において、さらに深く記載されている。このようなプロピレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、The Dow Chemical Companyから商品名VERSIFYで、またはExxonMobil Chemical Companyから商品名VISTAMAXXで市販されている。
【0026】
ポリオレフィン層であるA層、もし存在するならばシーラント層であるD層において使用でき、任意に結合層であるB層において使用することができるポリプロピレンは、EPDM物質であることもできる。EPDM物質は、エチレン、プロピレン、および1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンまたはエチリデンノルボルネン等の非共役ジエンの直鎖インターポリマーである。本明細書において開示される特性を有する好ましいクラスのインターポリマーは、エチレン、プロピレン、および非共役ジエンの重合により得て、EPDMエラストマーを作製する。適切な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状炭化水素ジエンであることができる。適切な非共役ジエンの例としては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の直鎖アクリルジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンおよびジヒドロミルセンとジヒドロオシメンの混合異性体等の分岐鎖アクリルジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン等の単環脂環式ジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン等の多環脂環式縮合環ジエンおよび多環脂環式架橋環ジエン、アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、ならびに5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエン等のシクロアルキリデンノルボルネンが挙げられるがこれらに限定されるものではない。EPDMの調製に通常使用するジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0027】
いくつかの実施形態においては、EPDMポリマーは、50重量%〜75重量%のエチレン含有量、20重量%〜49重量%のプロピレン含有量、および1重量%〜10重量%の非共役ジエン含有量を有し、すべての重量はポリマーの全重量に基づく。使用する代表的なEPDMポリマーの例としては、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能なNordel IP 4770R、Nordel 3722 IP、ルイジアナ州バトン・ルージュのExxonMobilから入手可能なVistalon3666、およびルイジアナ州オーディスのDSM Elastomers Americasから入手可能なKeltan5636Aが挙げられる。
【0028】
エチレン、高級アルファ−オレフィンおよびポリエンのエラストマーコポリマーとしても知られるEPDMポリマーは、20,000〜2,000,000ダルトン以上の分子量を有する。EPDMポリマーの物理形態は、蝋状物質からゴム、硬質プラスチック様ポリマーまで多様である。EPDMポリマーは、トルエン100cc中のポリマー0.1グラムの溶液で、30℃で測定して、0.5〜10dl/gの希釈溶液粘度(DSV)を有する。EPDMポリマーは、125℃で50ML(1+4)超のムーニー粘度も有し、0.870g/cc〜0.885g/ccまたは0.875g/cc〜0.885g/ccの密度も有する。
【0029】
結合層であるB層において任意に使用するポリエチレンは、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、およびそれらの組合せから選択する。さらなる実施形態においては、ポリエチレンは0.950g/cc超の密度を有する(すなわち、HDPE)。
【0030】
結合層であるB層において使用するMAH−g−PEは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンである。グラフト化ポリエチレンは、上記の任意のポリエチレンであってもよい。ポリエチレン鎖にグラフト化した無水マレイン酸成分の量は、0.05重量パーセント超〜2.0重量パーセント(オレフィンインターポリマーの重量に基づく)であり、滴定分析、FTIR分析、または他の適切な任意の方法により測定する。より好ましくは、この量は0.25重量パーセント超〜2.0重量パーセントであり、さらなる実施形態においては、この量は0.3重量パーセント超〜2.0重量パーセントである。好ましい実施形態においては、0.5重量パーセント〜2.0重量パーセントの無水マレイン酸をグラフト化する。
【0031】
MAH−g−PEのグラフト化工程は、開始剤を分解することにより開始することができ、遊離基が形成する。この遊離基には、特に、アゾ含有化合物、過カルボン酸およびカルボン酸ペルオキシエステル、アルキルヒドロペルオキシド、ならびに、ジアルキルペルオキシドおよびジアシルペルオキシドが含まれる。これらの化合物の多くとそれらの特性が記載されている(参考文献:J. Branderup、E. Immergut、E. Grulke編、“Polymer Handbook”、第4版、Wiley、ニューヨーク、1999年、セクションII、pp.1〜76)。開始剤の分解により形成する化学種は、酸素系遊離基であることが好ましい。開始剤が、カルボン酸ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシドおよびジアシルペルオキシドから選択されることがより好ましい。ポリマー構造の修飾に一般的に使用されるより好ましい開始剤のいくつかは、米国特許第7,897,689号の表の48列13行〜49列29号にわたって列記されており、参照により本明細書に取り込まれる。あるいは、MAH−g−PEのグラフト化工程は、熱酸化工程により発生する遊離基により開始することができる。
【0032】
任意に、MAH−g−PP濃縮物を使用してもよい。グラフト化ポリエチレンは、A層について記載した任意のポリプロピレンであってもよい。ポリエチレン鎖にグラフト化した無水マレイン酸成分の量は、0.05重量パーセント超〜2.0重量パーセント(オレフィンインターポリマーの重量に基づく)であり、滴定分析、FTIR分析、または他の適切な任意の方法により測定する。より好ましくは、この量は0.25重量パーセント超〜2.0重量パーセントであり、さらなる実施形態においては、この量は0.3重量パーセント超〜2.0重量パーセントである。好ましい実施形態においては、0.5重量パーセント〜2.0重量パーセントの無水マレイン酸をグラフト化する。
【0033】
任意に、遊離基でグラフト化可能な化学種を含む多様なグラフト化ポリオレフィンとMAH−g−PEを置き換えることができ、またそれらとMAH−g−PEを組み合わせることができる。これらの化学種には、それぞれが1個以上のヘテロ原子を含有する不飽和分子が含まれる。これらの化学種には、無水マレイン酸、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジシクロヘキシル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジオクタデシル、N−フェニルマレイミド、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ブロモマレイン酸、無水クロロマレイン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水アルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、フマル酸ジエチル、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ならびにこれらの化合物のそれぞれのエステル、イミド、塩、およびDiels−Alder付加物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
バリア層であるC層は、1つ以上のポリアミド(ナイロン)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、またはそれらの2つ以上の組合せを含んでもよく、捕捉剤物質およびMXD6ナイロンとコバルトの様な重金属の化合物を含むことができる。
【0035】
EVOHには27〜44mol%のエチレンを有するビニルアルコールコポリマーが含まれ、例えば酢酸ビニルコポリマーの加水分解により調製する。EVOHは、クラレからEVAL(商標)として、および日本合成からNoltex(商標)として入手可能である。
【0036】
ポリアミドには、ポリアミド6,ポリアミド9,ポリアミド10,ポリアミド11、ポリアミド12,ポリアミド6,6、ポリアミド6/66、およびポリアミド6I、ポリアミド6T、MXD6等の芳香族ポリアミド、またはそれらの2つ以上の組合せが含まれ得る。
【0037】
本明細書において開示される組成物は、任意に酸化防止剤または安定剤を含むことができる。当業者に公知の任意の酸化防止剤を、本明細書において開示される接着組成物において使用してもよい。適切な酸化防止剤の非限定的な例としては、アルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルまたはアラルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等のヒンダードフェノール化合物;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン(例えば、ニューヨークのCiba Geigy製IRGANOX(商標)1010);オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナマート(例えば、Ciba Geigyから市販されているIRGANOX(商標)1076)およびそれらの組合せが挙げられる。使用する場合、組成物中の酸化防止剤の量は、組成物全重量の0wt%超〜1wt%、0.05wt%〜0.75wt%、または0.1wt%〜0.5wt%であることができる。
【0038】
さらなる実施形態においては、本明細書において開示される組成物は、UV照射による組成物の分解を防止するかまたは減少させるであろうUV安定化剤を任意に含むことができる。当業者に公知の任意のUV安定化剤を、本明細書において開示される接着組成物において使用してもよい。適切なUV安定化剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、アリールエステル、オキサニリド、アクリルエステル、ホルムアミジン、カーボンブラック、ヒンダードアミン、ニッケル失活剤、ヒンダードアミン、フェノール系酸化防止剤、金属塩、亜鉛化合物、およびそれらの組合せが挙げられる。使用する場合、組成物中のUV安定化剤の量は、組成物全重量の0wt%超〜1wt%、0.05wt%〜0.75wt%、または0.1wt%〜0.5wt%であることができる。
【0039】
さらなる実施形態においては、本明細書において開示される組成物は、着色剤または顔料を任意に含むことができる。当業者に公知の任意の着色剤または顔料を、本明細書において開示される接着組成物において使用してもよい。適切な着色剤または顔料の非限定的な例としては、二酸化チタンおよびカーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニン顔料、ならびにIRGAZIN(登録商標)、CROMOPHTAL(登録商標)、MONASTRAL(登録商標)、CINQUASIA(登録商標)、IRGALITE(登録商標)、ORASOL(登録商標)等のその他の有機顔料が挙げられ、これらその他の有機顔料は全てニューヨーク州タリータウンのCiba Specialty Chemicalsから入手可能である。使用する場合、組成物中の着色剤または顔料の量は、組成物全重量の0wt%超〜10wt%、0.1wt%〜5wt%、または0.5wt%〜2wt%であることができる。
【0040】
本発明のフィルムにおけるB層の組成物(しばしば「結合」層と呼ぶ)は、本発明のフィルムの製造において、好ましくは同時押出成形、あるいはそれほど好ましくはないが積層工程(押出積層、熱積層または接着積層等)のいずれかにより、C層および任意にA層(または任意に他の層)に接着するように選択される。上述の通り、B層は結晶性ブロックコポリマー複合体樹脂(「CBC」)を含む。
【0041】
「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、直鎖状につながれた2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ぶ)を含むポリマーを指し、すなわち、ポリマー官能性に関して、吊り下げ様式またはグラフト化様式ではなく、端と端でつながれた(共有結合した)化学的に異なる単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態においては、ブロックは、ブロックに取り込まれているコモノマーの量もしくはタイプ、密度、結晶化度の値、結晶化度のタイプ(例えば、ポリエチレンに対してポリプロピレン)、このような組成物のポリマーに起因し得るクリスタリットのサイズ、立体規則性のタイプもしくは程度(イソタクチックもしくはシンジオタクチック)、レジオ規則性もしくはレジオ不規則性、分岐の量(長鎖分岐または超分岐を含む)、均一性、または、他の任意の化学的特性もしくは物理的特性において異なる。本発明のブロックコポリマーは、好ましい実施形態においては、触媒と組合せた移動剤の作用に起因する、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/Mn)およびブロック長分布の両方の特異的な分布によって特徴づけられる。
【0042】
「結晶性ブロック複合体」(CBC)という用語(「結晶性ブロックコポリマー複合体」という用語を含む)は、結晶性エチレン系ポリマー(CEP)、結晶性アルファ−オレフィン系ポリマー(CAOP)、ならびに結晶性エチレンブロック(CEB)および結晶性アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を有するブロックコポリマーの3つの部を含む複合体を指す。このブロックコポリマーのCEBはブロック複合体におけるCEPと同じ組成物であり、かつ、ブロックコポリマーのCAOBはブロック複合体におけるCAOPと同じ組成物である。上記の3つの部は1つの成分として一緒に存在する。さらに、CEPの量とCAOPの量の間の組成的相違は、ブロックコポリマーにおける対応するブロック間の組成的相違と同じであろう。ブロックコポリマーは直鎖または分岐であることができる。より詳細には、個々のブロックセグメントのそれぞれが長鎖の分岐を含有することができるが、ブロックコポリマーセグメントは、グラフト化ブロックまたは分岐ブロックを含有することとは対照的に、実質的に直鎖である。連続法において製造される場合、結晶性ブロック複合体は望ましくは1.7〜15のPDIを有し、好ましくは1.8〜10のPDIを有し、好ましくは1.8〜5のPDIを有し、より好ましくは1.8〜3.5のPDIを有する。そのような結晶性ブロック複合体は、例えば以下の提出された特許出願に記載されている:PCT/US11/41189、US13/165054、PCT/US11/41191、US13/165073、PCT/US11/41194およびUS13/165096。これらはすべて、2011年6月21日に提出されたものであり、結晶性ブロック複合体、それらの製造方法およびそれらの分析方法の記載に関して、参照により本明細書中に取り込まれる。
【0043】
CAOBは重合アルファオレフィン単位の高結晶性ブロックを指し、ここではモノマーが90mol%超の量で存在し、好ましくは93molパーセント超の量で存在し、より好ましくは95molパーセント超の量で存在し、好ましくは96molパーセント超の量で存在する。換言すれば、CAOBにおけるコモノマー含有量は10molパーセント未満であり、好ましくは7molパーセント未満であり、より好ましくは5molパーセント未満であり、最も好ましくは4molパーセント未満である。プロピレン結晶性を有するCAOBは、80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である、対応する融点を有する。いくつかの実施形態においては、CAOBは、すべてのプロピレン単位または実質的にすべてのプロピレン単位を含む。一方、CEBは重合エチレン単位のブロックを指し、ここではコモノマー含有量が10mol%以下、好ましくは0mol%〜10mol%、より好ましくは0mol%〜7mol%、最も好ましくは0mol%〜5mol%である。このようなCEBは、好ましくは75℃以上、より好ましくは90℃、および100℃以上である、対応する融点を有する。
【0044】
「硬質」セグメントは重合単位の高結晶性ブロックを指し、ここではモノマーは90molパーセント超、好ましくは93molパーセント超、より好ましくは95molパーセント超、最も好ましくは98molパーセント超の量で存在する。換言すれば、硬質セグメントにおけるコモノマー含有量は、最も好ましくは2molパーセント未満、より好ましくは5molパーセント未満、好ましくは7molパーセント未満、かつ、10molパーセント未満である。いくつかの実施形態においては、硬質セグメントは、すべてのプロピレン単位または実質的にすべてのプロピレン単位を含む。一方、「軟質」セグメントは重合単位の非晶質ブロック、実質的に非晶質のブロック、またはエラストマーブロックを指し、ここではコモノマー含有量は10mol%超かつ90mol%未満であり、好ましくは20mol%超かつ80mol%未満であり、最も好ましくは33mol%超かつ75mol%未満である。
【0045】
CBCは好ましくは、付加重合可能なモノマーまたはモノマーの混合物を、1個以上の付加重合触媒、共触媒および可逆的連鎖移動剤を含む組成物と付加重合条件下で接触させることを含む工程により調製する。当該工程は、定常状態重合条件下で作動する2個以上の反応器内において、または栓流重合条件下で作動する反応器の2個以上の区域内において、異なる工程条件下で少なくとも一部の成長ポリマー鎖が形成することにより特徴づけられる。好ましい実施形態においては、CBCは、ブロック長の最確分布を有するブロックポリマーの画分を含む。
【0046】
ブロック複合体および結晶性ブロック複合体の作製に有用である適切な方法は、例えば、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269412号において見ることができ、参照により本明細書に取り込まれる。
【0047】
2個の反応器または区域において結晶性エチレンブロック(CEB)および結晶性アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を有するブロックポリマーを生成する場合、第1反応器もしくは区域でCEBを生成し、第2反応器もしくは区域でCAOBを生成することが可能であり、または第1反応器もしくは区域でCAOBを生成し、第2反応器もしくは区域でCEBを生成することが可能である。真新しい可逆的連鎖移動剤を添加して、第1反応器または区域においてCEBを生成することがより有利である。CEBを生成する反応器または区域において高レベルのエチレンが存在することにより、CAOBを生成する区域または反応器中よりも、その反応器または区域中で一般的に分子量はより大きくなる。真新しい可逆的連鎖移動剤は、CEBを生成する反応器または区域中のポリマーのMWを減少させ、従ってCEBセグメントの長さとCAOBセグメントの長さの間の全体的なバランスがより良くなるであろう。
【0048】
直列で反応器または区域を作動させる場合、一方の反応器がCEBを生成し、他方の反応器がCAOBを生成するように、異なる反応条件を維持する必要がある。溶媒およびモノマー再循環システムによる第1反応器から第2反応器(直列)へのエチレンの持ち越し、または逆に第2反応器から第1反応器へのエチレンの持ち越しは、最小限にすることが好ましい。このエチレンを除去する多くの可能な単位操作があるが、エチレンは高級アルファオレフィンより揮発性であるため、1つの簡単な方法は、CEBを生成する反応器の流出液の圧力を減少させエチレンを蒸発分離することにより、未反応エチレンの多くをフラッシュ工程によって除去することである。より好ましい手法は、さらなる単位操作を避けて、CEB反応器でのエチレンの転換率が100%に近づくように、高級アルファオレフィンと比べてエチレンの非常に大きな反応性を使用することである。反応器でのモノマーの全転換率は、アルファオレフィン転換率を高レベル(90から95%)に維持することによって制御することができる。
【0049】
CBCの調製に使用する適切な触媒および触媒前駆体には、WO2005/090426に開示されたもの等の金属錯体が含まれ、特に20頁30行から53頁20行に開示されたものであり、これは、参照により本明細書に取り込まれる。適切な触媒は、US2006/0199930;US2007/0167578;US2008/0311812;US7,355,089 B2;またはWO2009/012215においても開示されており、触媒に関して、これらは参照により本明細書に取り込まれる。
【0050】
好ましくは、CBCは、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテン、および1以上のコモノマーを含む。好ましくは、CBCのブロックポリマーは、プロピレンおよびエチレンおよび/もしくは1個以上のC
4−20α−オレフィンコモノマー、ならびに/もしくは1個以上のさらなる共重合可能なコモノマーを重合形態で含み、または、CBCのブロックポリマーは、4−メチル−1−ペンテンおよびエチレンおよび/もしくは1個以上のC
4−20α−オレフィンコモノマーを含み、または、CBCのブロックポリマーは、1−ブテンおよびエチレン、プロピレンおよび/もしくは1個以上のC
5−20α−オレフィンコモノマーおよび/もしくは1個以上のさらなる共重合可能なコモノマーを含む。さらなる適切なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィン、および環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、ならびにビニリデン芳香族化合物から選択される。
【0051】
生成するCBCにおけるコモノマー含有量は、適切な任意の方法を使用して測定してもよく、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく方法が好ましい。ポリマーブロックのいくつかまたはポリマーブロックのすべてが、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテン、およびコモノマーのコポリマー等の非晶質ポリマーまたは相対的に非晶質なポリマーを含むことが極めて好ましく、特に、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテンとエチレンのランダムコポリマーのコポリマー等の非晶質または相対的に非晶質のポリマーを含むことが極めて好ましい。また、もし存在するならば任意の残りのポリマーブロック(硬質セグメント)が、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテンを重合形態で主に含むことが極めて望ましい。好ましくはこのようなセグメントは、高結晶性または立体特異的なポリプロピレン、ポリブテンまたはポリ−4−メチル−1−ペンテンであり、特に高結晶性または立体特異的なイソタクチックホモポリマーである。
【0052】
さらに好ましくは、CBCのブロックコポリマーは、10〜90重量パーセントの結晶性または相対的に硬質のセグメント、および90〜10重量パーセントの非晶質または相対的に非晶質のセグメント(軟質セグメント)を含み、好ましくは20〜80重量パーセントの結晶性または相対的に硬質のセグメント、および80〜20重量パーセントの非晶質または相対的に非晶質のセグメント(軟質セグメント)を含み、最も好ましくは30〜70重量パーセントの結晶性または相対的に硬質のセグメント、および70〜30重量パーセントの非晶質または相対的に非晶質のセグメント(軟質セグメント)を含む。軟質セグメント中でのコモノマーのモルパーセントは、10〜90モルパーセント、好ましくは20〜80モルパーセント、最も好ましくは33〜75mol%の範囲であってもよい。コモノマーがエチレンである場合において、コモノマーは好ましくは、10mol%〜90mol%、より好ましくは20mol%〜80mol%、最も好ましくは33mol%〜75mol%の量で存在する。好ましくは、コポリマーは、90mol%〜100mol%のプロピレンである硬質セグメントを含む。硬質セグメントは、90mol%超、好ましくは93mol%超、より好ましくは95mol%超のプロピレンであることができ、最も好ましくは98mol%超のプロピレンであることができる。このような硬質セグメントは、80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である、対応する融点を有する。
【0053】
CBCは、好ましくは、100℃超、好ましくは120℃超、より好ましくは125℃超のTmを有する。好ましくは、ブロック複合体のMFRは、0.1〜1000dg/分、より好ましくは0.1〜50dg/分、より好ましくは0.1〜30dg/分である。
【0054】
好ましくは、ブロック複合体ポリマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテン、および任意に1個以上のコモノマーを重合形態で含む。好ましくは、結晶性ブロック複合体のブロックコポリマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテンまたは4−メチル−1−ペンテン、および任意に1個以上のC
4−20α−オレフィンコモノマーを重合形態で含む。さらなる適切なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィンおよび環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、ならびにビニリデン芳香族化合物から選択される。
【0055】
生成するブロック複合体ポリマー中のコモノマー含有量は、任意の適切な方法を使用して測定してもよく、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく方法が好ましい。
【0056】
好ましくは、本発明の結晶性ブロック複合体ポリマーは、0.5〜95重量%のCEP、0.5〜95重量%のCAOPおよび5〜99重量%のブロックコポリマーを含む。より好ましくは、結晶性ブロック複合体ポリマーは、0.5〜79wt%のCEP、0.5〜79wt%のCAOPおよび20〜99wt%のブロックコポリマーを含み、より好ましくは、0.5〜49wt%のCEP、0.5〜49wt%のCAOPおよび50〜99wt%のブロックコポリマーを含む。重量パーセントは、結晶性ブロック複合体の全重量に基づく。CEP、CAOPおよびブロックコポリマーの重量パーセントの合計は100%である。
【0057】
好ましくは、CBCのブロックコポリマーは、5〜95重量パーセントの結晶性エチレンブロック(CEB)および95〜5重量パーセントの結晶性アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を含む。ブロックコポリマーは、10wt%〜90wt%のCEBおよび90wt%〜10wt%のCAOBを含んでもよい。より好ましくは、ブロックコポリマーは、25〜75wt%のCEBおよび75〜25wt%のCAOBを含み、さらにより好ましくは、ブロックコポリマーは、30〜70wt%のCEBおよび70〜30wt%のCAOBを含む。
【0058】
いくつかの実施形態においては、本発明のブロック複合体は、ゼロより大きく0.4未満であるか、0.1〜0.3である結晶性ブロック複合体指数(CBCI)を有し、結晶性ブロック複合体指数は以下に規定される。他の実施形態においては、CBCIは、0.4より大きく1.0以下である。いくつかの実施形態においては、CBCIは、0.1〜0.9、0.1〜0.8、0.1〜0.7、または0.1〜0.6である。さらに、CBCIは、0.4〜0.7、0.5〜0.7、または0.6〜0.9であることができる。いくつかの実施形態においては、CBCIは、0.3〜0.9、0.3〜0.8、または0.3〜0.7、0.3〜0.6、0.3〜0.5、または0.3〜0.4である。他の実施形態においては、CBCIは、0.4〜1.0、0.5〜1.0、または0.6〜1.0、0.7〜1.0、0.8〜1.0、または0.9〜1.0である。
【0059】
さらに好ましくは、本発明の本実施形態の結晶性ブロック複合体は、1,000〜2,500,000、好ましくは35000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜500,000、50,000〜300,000、好ましくは50,000〜200,000の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0060】
各樹脂の全体の組成は、必要に応じて、DSC、NMR、ゲル浸透クロマトグラフィー、動的機械的分光法、および/または透過型電子顕微鏡によって測定する。キシレン分別および高温液体クロマトグラフィー(「HTLC」)分別をさらに使用して、ブロックコポリマーの収率を見積もることができ、特にブロック複合体指数を見積もることができる。これらは全て2011年4月7日に公開された米国特許出願公開第2011−0082257号、同2011−0082258号および同2011−0082249号においてより詳細に記載されており、分析方法の記載に関して、参照により本明細書に取り込まれる。
【0061】
結晶性ポリプロピレンから構成されるCAOPおよびCAOB、ならびに結晶性ポリエチレンから構成されるCEPおよびCEBを有する結晶性ブロック複合体は、従来の手段によって分別することができない。CEBおよびCAOBは、それぞれCEPおよびCAOPと共結晶化しているため、例えば、キシレン分別、溶媒/非溶媒分離、昇温溶出分別、または結晶化溶出分別等の溶媒または温度分別に基づく方法では、ブロックコポリマーを溶解することはできない。しかし、混合した溶媒/非溶媒および黒鉛カラムの組合せを使用してポリマー鎖を分離する高温液体クロマトグラフィー等の方法を使用すると、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の結晶性ポリマー種を互いに分離し、ブロックコポリマーから分離することができる。
【0062】
結晶性ブロック複合体では、単離されるPPの量は、ポリマーがiPPホモポリマー(この実施例ではCAOP)およびポリエチレン(この場合ではCEP)の単純ブレンドである場合に比べて少ない。従って、ポリマーがiPPおよびポリエチレンの単純ブレンドであれば存在しないであろうかなりの量のプロピレンを、ポリエチレン分画は含有する。この「過剰プロピレン」を明らかにするために、物質収支計算を実施して、ポリプロピレンおよびポリエチレン分画の量ならびにHTLCによって分離される各分画に存在するプロピレンの重量%から、結晶性ブロック複合体指数を見積もることができる。結晶性ブロック複合体中に含まれるポリマーには、iPP−PEジブロック、非結合iPPおよび非結合PEが含まれ、ここで、個々のPPまたはPE成分は、それぞれ少量のエチレンまたはプロピレンを含有することができる。
【0063】
式1に従って、ポリマー中の各成分からのプロピレンの重量%の合計は、(ポリマー全体の)プロピレンの全重量%となる。この物質収支等式を使用して、ジブロックコポリマー中に存在するiPPおよびPEの量を定量化することができる。この物質収支等式を使用して、2成分ブレンド中のiPPおよびPEの量を定量化することもでき、また、3成分ブレンドまたはn成分ブレンドに拡張することもできる。結晶性ブロック複合体では、iPPまたはPEの全量が、ジブロックならびに非結合iPPおよびPEポリマー中に存在するブロック中に含まれる。
【0065】
式中、
w
PP=ポリマー中のPPの重量分率
w
PE=ポリマー中のPEの重量分率
wt%C3
PP=PP成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
wt%C3
PE=PE成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
である。
【0066】
プロピレン(C3)の全重量%は、C13 NMRまたはいくつかの他の組成測定法から測定することが好ましく、これはポリマー全体に存在するC3の合計量を表すことに留意されたい。iPPブロック中のプロピレンの重量%(wt%C3
PP)は100に設定するか、あるいはDSC融点、NMR測定、または他の組成予測から別に知られている場合は、その値を代わりに入れることができる。同様に、PEブロック中のプロピレンの重量%(wt%C3
PE)は、100に設定するか、あるいはDSC融点、NMR測定、または他の組成予測から別に知られている場合は、その値をその代わりに入れることができる。
【0067】
式1に基づき、ポリマー中に存在するPPの全重量分率は、式2を使用して、測定したポリマー中の全C3の物質収支より計算することができる。あるいは、重合中のモノマーおよびコモノマー消費の物質収支から見積もることもできる。概してこの値は、PPおよびPEが非結合成分中に存在するかジブロックコポリマー中に存在するかに関わらず、ポリマー中に存在するPPおよびPEの量を表す。従来のブレンドでは、PPの重量分率およびPEの重量分率は、存在するPPおよびPEポリマーの個々の量に対応する。結晶性ブロック複合体では、PPのPEに対する重量分率の比も、この統計的ブロックコポリマー中に存在するPPおよびPEの間の平均ブロック比に対応すると考えられる。
【0069】
式中、
w
PP=ポリマー全体に存在するPPの重量分率
wt%C3
PP=PP成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
wt%C3
PE=PE成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセント
である。
【0070】
式3から5までを適用して、HTLC分析によって測定される単離されたPPの量を使用して、ジブロックコポリマー中に存在するポリプロピレンの量を決定する。HTLC分析において最初に単離または分離された量は、「非結合PP」を表し、その組成はジブロックコポリマー中に存在するPP硬質ブロックを表す。式3の左辺のポリマー全体のC3の全重量%、ならびにPPの重量分率(HTLCにより単離)およびPEの重量分率(HTLCにより分離)を、式3の右辺に代入することにより、PE分画におけるC3の重量%を、式4および5を使用して計算することができる。PE分画は非結合PPから分離された分画として記述され、ジブロックおよび非結合PEを含有する。単離されたPPの組成は、前述の通り、iPPブロック中のプロピレンの重量%と同じであると考えられる。
【0072】
式中、
w
PP単離=HTLCにより単離されたPPの重量分率
w
PE−分画=ジブロックおよび非結合PEを含有する、HTLCにより分離されたPEの重量分率
wt%C3
PP=PP中のプロピレンの重量%;これは、PPブロック中および非結合PP中に存在するプロピレンと同量でもある
wt%C3
PE−分画=HTLCにより分離されたPE分画中のプロピレンの重量%
wt%C3
全体=ポリマー全体におけるプロピレンの全重量%
【0073】
HTLCによるポリエチレン分画中のC3のwt%量は、ブロックコポリマー分画中に存在するプロピレンの量を表し、この量は「非結合ポリエチレン」中に存在する量を上回る。
【0074】
ポリエチレン分画中に存在する「さらなる」プロピレンを説明するため、この分画にPPを存在させる唯一の方法は、PPポリマー鎖がPEポリマー鎖に結合しなくてはならないということである(そうでないと、HTLCによって分離されたPP分画と共に単離されていたであろう)。従って、PE分画が分離されるまで、PPブロックはPEブロック中に吸着されたままである。ジブロック中に存在するPPの量は、式6を使用して計算する。
【0076】
式中、
wt%C3
PE−分画=HTLCにより分離されたPE分画におけるプロピレンの重量%(式4)
wt%C3
PP=PP成分またはブロックにおけるプロピレンの重量%(前述で規定)
wt%C3
PE=PE成分またはブロックにおけるプロピレンの重量%(前述で規定)
w
PP−ジブロック=HTLCによりPE分画と共に分離されたジブロックにおけるPPの重量分率
である。
【0077】
PPブロックのPEブロックに対する比がポリマー全体に存在するPPのPEに対する全体比と同じであると考えることにより、このPE分画に存在するジブロックの量を予測することができる。例えば、ポリマー全体におけるPPのPEに対する全体比が1:1である場合、ジブロック中のPPのPEに対する比も1:1であると考えられる。従って、PE分画に存在するジブロックの重量分率は、ジブロック中のPPの重量分率(w
PP−ジブロック)に2を掛けたものである。これを計算する別の方法は、ジブロック中のPPの重量分率(w
PP−ジブロック)を、ポリマー全体におけるPPの重量分率で割ることによる(式2)。
【0078】
ポリマー全体に存在するジブロックの量をさらに予測するためには、PE分画におけるジブロックの見積り量に、HTLCから測定されたPE分画の重量分率を掛ける。
【0079】
結晶性ブロック複合体指数を見積もるため、ブロックコポリマーの量を式7によって求める。CBCIを見積もるため、式6を使用して計算したPE分画中のジブロックの重量分率を、PPの全重量分率(式2において計算したとおり)で割り、次いで、これにPE分画の重量分率を掛ける。CBCIの値は、0〜1までの範囲であることができ、ここで1は100%ジブロックに等しく、ゼロは従来のブレンドまたはランダムコポリマー等の物質に相当する。
【0081】
式中、
w
PP−ジブロック=HTLCによってPE分画と共に分離されたジブロックにおけるPPの重量分率(式6)
w
PP=ポリマー中のPPの重量分率
w
PE−分画=ジブロックおよび非結合PEを含有する、HTLCにより分離されたPEの重量分率(式5)
である。
【0082】
例えば、iPP−PEポリマーが合計で62.5wt%のC3を含有し、かつ10wt%のC3を有するPEポリマーおよび97.5wt%のC3を有するiPPポリマーを生成する条件下で作製される場合、PEおよびPPの重量分率は、それぞれ0.400および0.600である(式2を使用して計算)。PEのパーセントは40.0wt%であり、iPPは60.0wt%であるので、PE:PPブロックの相対比は、1:1.5と表される。
【0083】
従って、当業者がポリマーのHTLC分離を実施し、28wt%のPPおよび72wt%のPE分画を単離する場合、これは予想外の結果であり、これはブロックコポリマーの分画が存在したという結論を導く。式4および5から、PE分画のC3含有量(wt%C
3PE−分画)が48.9wt%のC3であると続いて計算される場合、さらなるプロピレンを含有するPE分画は0.556の重量分率のPEポリマーおよび0.444の重量分率のPPポリマーを有する(w
PP−ジブロック、式6を使用して計算)。
【0084】
PE分画は0.444の重量分率のPPを含有するため、1.5:1のiPP:PEブロック比に基づき、さらなる0.293の重量分率のPEポリマーに付けられるべきである。従って、PE分画に存在するジブロックの重量分率は0.741であり、ポリマー全体に存在するジブロックの重量分率のさらなる計算値は0.533である。全体のポリマーについては、組成は、53.3wt%のiPP−PEジブロック、28wt%のPPポリマー、および18.7wt%のPEポリマーと記載される。結晶性ブロック複合体指数(CBCI)は、ポリマー全体に存在するジブロックの見積りの重量分率である。上記の例については、結晶性ブロック複合体のCBCIは、0.533である。
【0085】
ジブロック中のCEBのCAOBに対する比は、結晶性ブロック複合体全体における結晶性エチレンの結晶性アルファ−オレフィンに対する比と同一であるという仮定の下、結晶性ブロック複合体指数(CBCI)により、結晶性ブロック複合体中のブロックコポリマーの量を見積もることができる。個々の触媒反応速度および本明細書に記載される可逆的連鎖移動触媒によるジブロックが形成する重合メカニズムの理解に基づき、この仮定はこれらの統計的オレフィンブロックコポリマーに対して有効である。
【0086】
CBCIの計算は、遊離のCAOPの量が重合で生成したCAOPの合計量よりも少ないという分析的観察に基づく。CAOPの残りはCEBに結合して、ジブロックコポリマーを形成する。HTLCにより分離されたPE分画はCEPおよびジブロックポリマーの両方を含有するので、この分画でのプロピレンの観測量は、CEPのそれを上回る。この違いを使用して、CBCIを計算することができる。
【0087】
単に重合統計の予備的知識なしでの分析的観察に基づき、ポリマーに存在するブロックコポリマーの最少量および最大量を計算して、単純なコポリマーまたはコポリマーブレンドから結晶性ブロック複合体を区別することができる。
【0088】
結晶性ブロック複合体中に存在するブロックコポリマーの量の上限である、W
DB最大値は、式8におけるように、HTLCによって測定される非結合PPの部分を1から差し引くことにより得られる。この最大値は、HTLCによるPE分画は完全にジブロックであり、すべての結晶性エチレンは結晶性PPに結合しており、非結合PEはないことを仮定している。ジブロックではないCBC中の唯一の物質は、HTLCにより分離されたPPのその部分である。
W
DB最大値=1−W
PP単離 式8
【0089】
結晶性ブロック複合体中に存在するブロックコポリマーの量の下限W
DB最小値は、PPに結合しているPEがほぼないか、または全くない状況に相当する。この下限値は、式9に示されるように、HTLCによって測定される非結合PPの量を、試料中のPPの全量から差し引くことにより得られる。
W
DB最小値=W
PP−W
PP単離 式9
【0090】
さらに、結晶性ブロック複合体指数は、これらの2つの値の間におさまるであろう。
W
DB最小値<CBCI≦W
DB最大値
【0091】
結晶性ブロック複合体生成の重合メカニズムに基づき、CBCIは、複合体中のジブロックコポリマーの実際の割合を最も良く予測する。未知のポリマー試料について、W
DB最小値を使用して物質が結晶性ブロック複合体であるかを決定することができる。PEおよびPPの物理的ブレンドでは、PPの全重量分率は、HTLCによるPPwt%の全重量分率と一致すべきであり、ジブロック含有量の下限である式9はゼロである。この分析を、PEを含有しないPPの試料に適用する場合、PPの重量分率およびHTLCから得られるPPの量の両方ともが100%であり、またジブロック含有量の下限である式9はゼロである。最後に、この分析を、PP含有しないPEの試料に適用する場合、HTLCにより回収されるPPの重量分率および重量分率PPの両方ともがゼロであり、ジブロックの下限である式9はゼロである。これら3つのケースにおいてジブロック含有量の下限はゼロよりも大きいことはないので、これらの物質は結晶性ブロック複合体ではない。
【0092】
示差走査熱量測定法(DSC)
示差走査熱量測定法を使用して、特に、結晶性ブロックおよびブロック複合体の融解熱を測定する。示差走査熱量測定法は、RCS冷却アクセサリーおよびオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000 DSCにおいて実施する。50ml/分の窒素パージガス流を使用する。試料を薄いフィルムに加圧し、約190℃においてプレス中で融解させ、次いで室温(25℃)まで空気冷却する。次に約3−10mgの物質を切断し、正確に秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)に入れ、その後これを圧着して閉じる。試料の熱挙動を、以下の温度プロファイルを用いて調査する。試料を190℃に急速に加熱し、以前の熱履歴を除去するため等温で3分間維持する。次に試料を10℃/分の冷却速度で−90℃まで冷却し、−90℃で3分間維持する。次に試料を、10℃/分の加熱速度で190℃に加熱する。冷却曲線および第2加熱曲線を記録する。CBCおよび特定のBC樹脂の融解熱の測定では、当業者に公知で日常的に行われているように、計算用ベースラインを融解の開始前の平坦な初期部分(通常、これらのタイプの物質では、約−10〜約20℃までの範囲にある)から第2加熱曲線の融解の終了に伸ばして描く。
【0093】
B層において使用しても良い他の適切な樹脂は:
i)80mol%以上、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、最も好ましくは93mol%以上の重合エチレンを含むエチレンポリマー;
ii)アルファ−オレフィン系結晶性ポリマー(CAOP)、ならびに
iii)(a)80mol%以上、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、最も好ましくは93mol%以上の重合エチレンを含むエチレンポリマーブロック(EB)および(b)結晶性アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を含むブロックコポリマー、
を含むブロック複合体である。
【0094】
B層用の好ましい適切なCBC樹脂は、((iii)に基づき)、30〜70重量%、好ましくは40wt%以上、より好ましくは45wt%以上、最も好ましくは50wt%、好ましくは約60wt%以下、好ましくは55wt%以下のCAOB量(パート(iii)における)を有する(各例の残りはエチレンポリマーである)。B層に適切なCBC樹脂は、0.1以上、好ましくは0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上の(結晶性)ブロック複合体指数を有することも見出されている。B層に不可欠な適切なCBC樹脂を特徴づける他の方法は、1〜50dg/分;好ましくは2g/分以上、より好ましくは3g/分以上;好ましくは40g/分以下、好ましくは30g/分以下のMFRを有することである。
【0095】
一般的に、本発明のB層に使用することができるCBCは、DSCにより測定される、85ジュール毎グラム(J/g)以上、より好ましくは90J/g以上の融解熱値(CEPおよびCEB中の相対的に高いエチレン含有量を反映している)を有する。いずれの場合においても、これらのタイプのポリマーの融解熱値は、一般的に、約125J/gの領域に最大値を有する。融解熱の測定では、当業者に一般的に知られ実施されているように、DSCを窒素下で、一般的に以下に記載されるように操作し、23℃から220℃まで10℃/分、220℃で等温に維持、10℃/分で23℃まで下降させ、10℃/分で再度220℃まで昇温する。第2熱データを使用して、融解転移の融解熱を計算する。
【0096】
他の好ましいシール層物質はMAH−m−ポリオレフィンであり、これにはMAH−g−ポリオレフィンおよびMAHインターポリマーが含まれる。すなわち、ポリマー主鎖にグラフト化することにより、またはMAHとオレフィンモノマーの共重合により主鎖中に官能基を組み込むことのいずれかにより、MAH官能基がポリオレフィン中に存在する。
【0097】
グラフトポリオレフィンの不飽和有機化合物含有量は、ポリオレフィンおよび有機化合物の合計重量に基づき、0.01wt%以上、好ましくは0.05wt%以上である。不飽和有機化合物含有量の最大量は好都合に変化することができるが、通常10wt%を超えず、好ましくは5wt%を超えず、より好ましくは2wt%を超えない。このグラフトポリオレフィンの不飽和有機成分は滴定法によって測定し、例えば、グラフト化ポリオレフィン/キシレン溶液を水酸化カリウム(KOH)溶液で滴定する。例えばグラフト化によって、またはオレフィンモノマーとの共重合によっても、MAH官能基がポリオレフィン中に存在することができる。
【0098】
不飽和有機化合物は、例えば米国特許第3,236,917号および同第5,194,509号において教示されているもの等の任意の公知技術によりポリオレフィンにグラフト化することができる。例えば、’917特許においては、ポリマーを2ロールミキサーに導入し、60℃の温度において混合する。次いで、例えばベンゾイルペルオキシド等のフリーラジカル開始剤と一緒に不飽和有機化合物を添加し、グラフト化が完了するまで成分を30℃で混合する。’509特許においては、手順は類似であるが、反応温度がより高く、例えば、210〜300℃であり、フリーラジカル開始剤を使用しないか、または少ない濃度で使用する。
【0099】
代替的かつ好ましいグラフト化方法が米国特許第4,950,541号において教示されており、混合装置として2軸脱揮押出機(devolatilizing extruder)を使用することによりグラフト化する。ポリマーおよび不飽和有機化合物を、フリーラジカル開始剤の存在下で反応物が融解する温度において、押出機中で混合し反応させる。好ましくは、不飽和有機化合物を、押出機中の圧力下で維持した区域に注入する。
【0100】
積層体または層状構造体を作製する上記ポリマー成分の使用を記載する上で、通常使用される多くの用語があり、以下のとおり規定する。
【0101】
「層」は、連続的もしくは不連続的に塗布されるかまたは表面を覆う、単一厚さ、コーティングまたはストレータム(stratum)を意味する。
【0103】
フィルムまたは層に関する「顔面(facial surface)」、「平面」等の用語は、隣接する層の反対面および隣接面と接触している層の表面を意味する。顔面は、エッジ面と対照的である。長方形のフィルムまたは層は、2つの顔面および4つのエッジ面からなる。円形の層は、2つの表面および1つの連続したエッジ面からなる。
【0104】
「接着接触している」等の用語は、1つの層の1つの顔面と別の層の1つの顔面が、両方の層の接触している顔面を傷つけずに1つの層を他の層から除去することができないように、互いに接触して結合していることを意味する。
【0105】
「シール関係」等の用語は、例えば、2つのポリマー層、またはポリマー層と電子デバイス、またはポリマー層とガラスカバーシート等の2つ以上の成分が、それらの結合により形成する界面がそれらの直接の外部環境から分離されるような手法で、例えば、共押出、積層、塗装等の手法で、互いに結合することを意味する。
【0106】
意図された用途に応じて、本発明の多層フィルムまたはシート構造体を、靱性、透明性、引張強度、層間接着、および耐熱性を含む物理性能特性分野における性能要件等の、特定の性能要件を満足するために設計することができる。
【0107】
いくつかの実施形態においては、全構造体の厚さは、25ミクロン〜2.5cm、好ましくは50ミクロン〜1mmの範囲であることができる。いくつかの実施形態においては、B層は4ミクロン〜50ミクロンの厚さである。
【0108】
多層フィルム構造体に加えて、本発明は任意の多層構造体を含み、これには射出成形およびブロー成形した容器、パイプ、チューブ、ワイヤおよびケーブルおよびフィルム、および積層体を含むシートが含まれる。構造体の例は、例えばCA 2 735 182、米国特許出願公開第2003/0215655号、US2004/0241360およびUS2007/0160788において開示されるものを含む。これらの構造体には、硬質ブロー成形物品、環状形状を有する多層フィルム、および同時押出ブロー成形物品が含まれる。
【実施例】
【0109】
下表に要約する実験用多層試料フィルム(例えば、A、B、およびCの文字により示された層)を、以下の表1に要約する熱可塑性樹脂材料を使用して作製する。示される場合は、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238(230℃/2.16kg)に従って測定し、グラム/10分(g/10分)で報告し、メルトインデックス値(MI)は、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定し、g/10分で報告する。密度は、ASTM D792に従って測定し、グラム/立方センチメートル(g/cc)で報告する。
【0110】
レトルト工程
レトルト処理は、Contexxor糸蒸機において実施する。フィルムを縦方向で200×15mmに切り、一定のシーリング棒で、150℃で1秒間シールする。4個のシールを作製し、袋を空に保つ。空の袋をスチーマー内で、122℃で40分間滅菌する。
【0111】
接着力試験
接着力試験では、フィルムを横方向で、150℃で1秒間シールする。15mm幅×100mm長の細片を、シール領域から切り出す。縦方向に沿って接着力を測定する。シールを注意深く開封することにより、剥離を開始する。試料を、125mm/分で、室温INSTRON 5564 Dynomometerで剥離する。5個以上の試料を試験し、ピーク負荷の平均を報告する。
【0112】
ヘイズ試験
フィルムヘイズを、ISO14782標準法に基づき測定する。レトルト処理前およびレトルト処理後の両方で、接着力およびヘイズを測定する。
【0113】
ヒートシール強度試験
ヒートシール強度試験は、ASTM標準試験方法F88、柔軟性バリア材料のシール強度用STMに基づく。シールを含有する材料の試験細片を分離するのに必要な力を測定する。試料破損も確認する。試料は15mm幅の打抜細片である。試験結果は、ヒートシールを引き離すのに必要な力、またはヒートシールがはがれる前にフィルムが破損する場合はフィルムが破損するのに必要な力の測定である。
【0114】
光学顕微鏡法
試料調製では、約5ミクロン厚の光学断面を、FCSクライオ−セクショニングチャンバを備えたLeica UCTミクロトームで、ダイアモンドナイフを使用して−120℃で回収した。1滴のDow Corning E−200シリコン油を有する顕微鏡スライドガラスに断面を移し、分析前にカバーガラスで覆った。微分干渉コントラストイルミネーション下の透過明視野光を使用し、Carl Zeiss AxioImager Z1m化合物顕微鏡を使用して光学断面を調べ、HRcデジタルカメラを使用して画像を取得した。
【0115】
物質
【0116】
【表1】
【0117】
結晶性ブロック複合体の合成
一般
長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo−Nobel,Inc.から入手可能)、HClおよびLi[B(C
6F
5)
4]の反応により調製し、実質的に米国特許第5,919,983号の実施例2において開示されている、触媒−1([[rel−2’,2’’’−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ−κO)]ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)−5−メチル[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]ジメチル−ハフニウム)および共触媒−1、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C
14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物は、Boulder Scientificから購入し、さらなる精製なしで使用する。
【0118】
CSA−1(ジエチル亜鉛またはDEZ)および共触媒−2(修飾メチルアルミノキサン(MMAO))はAkzo−Nobelから購入し、さらなる精製なしで使用した。重合反応用溶媒は、ExxonMobil Chemical Companyから入手可能な炭化水素混合物(ISOPAR(登録商標)E)であり、使用前に13−Xモレキュラーシーブ床で精製する。
【0119】
本実施例の結晶性ブロック複合体をCBC1〜CBC4と呼ぶ。これらを直列に接続した2つの連続撹拌槽反応器(CSTR)を使用して調製する。第1反応器は約12ガロンの容量であり、第2反応器は約26ガロンである。各反応器を水で満たし、定常状態条件で作動するよう設定する。モノマー、溶媒、水素、触媒−1、共触媒−1、共触媒−2およびCSA−1を、表2に要約した生成条件に従って第1反応器に供給する。表2に記載されるように、第1反応器内容物は直列の第2反応器に流れる。さらなるモノマー、溶媒、水素、触媒−1、共触媒−1、および任意に共触媒−2を第2反応器に添加する。表3はCBC1〜CBC4の分析特性を示す。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
表4は、EPに対するiPPの比、およびCBC1〜CBC4の結晶性ブロック複合体指数の見積値を示す。
【0123】
【表4】
【0124】
図1はCBC1のDSCプロファイルを示す。DSCプロファイルは、129℃で融解ピークを示し、これはCAOPおよびCAOBを表し、113℃のピークはCEPおよびCEBに対応する。観測した融解エンタルピーは115j/gであり、ガラス転移温度は11℃で観測した。
【0125】
図2はCBC1のTREF分析を示す。TREF溶出プロファイルは、CBC1は高結晶性であることを示し、DSC融解プロファイルと対照的に、CEPとCAOPまたはブロックコポリマーの分離をほとんど示さないかまたは全く示さない。2.4wt%のパージのみが測定され、この結果もCBC1において成分が非常に高結晶であることを示す。
【0126】
図3はCBC1のHTLC分析を示す。HTLCによるCBC1の溶出プロファイルは、1〜2mL間の初期の溶出ピークの13.2wt%、および3〜5mL間の後期の溶出ピークの86.8wt%が溶出したことを示した。濃度および組成測定から、初期の溶出ピークは、CAOPおよびCAOBの代わりである単離PPであることを決定した。第2ピークおよび後期の溶出ピークはC2が豊富であり、C3の傾斜を示した。このピークはPE相であり、ブロックコポリマーおよびCEPを含有すると解釈することができる。組成傾斜は、ブロックコポリマーがより早く溶出し、CEPがサイドに溶出することを示す。
【0127】
キャストフィルム実施例
結合層調合物の複合化
結合層調合物用のブレンドを、30mmTSE(Leistritz製機器)を使用して複合化する。押出機は5個の加熱区域、供給区域、および3mmストランドダイを有する。コアに水を流すことにより供給区域を冷却し、残りの区域1〜5およびダイは電熱し、空冷により、ブレンドする物質に依存した特定の温度に制御する。以下の温度設定を押出工程において使用する。区域1〜5は、130℃、186℃、190℃、190℃、および190℃に加熱し、ダイを190℃に加熱する。押出機の運転ユニットを150rpmで作動させる。複合化用の調合を表5に示す。
【0128】
【表5】
【0129】
INFUSE OBC系結合層調合物と比較するため、INFUSE OBC9500(OBC)をMAHグラフト化INFUSE OBC9500(MAH−g−OBC)またはMAHPECONC1とブレンドする。MAH−g−OBCを調製するため、11個のバレル(45L/D)を有するZSK−92 Megacompounderを使用する。OBC樹脂をK−Tron T−60供給機を用いて供給する。Lewaポンプを使用して、MAHをバレル3、出入口1で注入する。Prominent Sigmaプランジャーポンプを使用して、ペルオキシド/油混合物(50/50 wt/wt)をバレル3、出入口2で注入する。バレル温度を区域1では80℃に設定し、区域2〜11では225℃に設定する。バレル9での脱揮発に、真空ポンプシステムを使用する。スクリューRPMは200〜230であり、トルクは56%〜61%の範囲である。OBC1の供給速度を1500lb/hrに設定する。供給調合は、1.70%MAH、0.20%ペルオキシド/鉱物油(50/50 wt/wt)混合物である。最終MAHグラフト化レベルは1.1%であり、MAH−g−OBCのメルトインデックスは3.0である(2.16Kg、190℃)。キャスト製作では、OBCをMAH−g−OBCまたはMAHPECONC1と乾燥ブレンドする。
【0130】
キャストフィルム工程
A/B/C/B/A構造(
図4)の5層フィルムをCollins5層キャストラインで押出成形する。全フィルム厚は150μmであり、ここでAはスキン層(40μm)、Bは結合層(10μm)およびCはバリア層(50μm)である。ポリアミド UBE5033Bをバリア層として使用し、Dow PP R7051−10N(10MFR)をスキン層として使用する。ラインは5つの押出成形機を有する。押出成形機1および5をスキン層に使用し、押出成形機2および4を結合層に使用し、押出成形機3をバリア層に使用する。押出成形機温度プロファイルを表6に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
キャストフィルムに使用する結合層用の調合を表6に示す。実施例A1および実施例1〜5はAFFINITY PL 1850に代表されるポリオレフィンエラストマーを含有する。これらの実施例においては、MAH−g−HDPE(MAHPECONC1)の添加を一定に保つ。レトルト工程前、実施例A1および実施例1〜5は、13〜15N/15mmの優れた層間接着力を示す。しかしながらレトルト後、実施例A1の接着力は弱くなる。20%のCBC1(実施例1)を結合層調合物に添加することにより、レトルト後の接着特性は著しく改善する。実施例2〜5においては、CBC2の量は20%〜50%増加する。CBC2濃度が増加すると、接着力が増加する。結合層調合物におけるCBC2濃度が40%(実施例4)と50%(実施例5)の間で変化する場合、レトルト後の接着力の値はポリプロピレン系結合層(実施例B)と同等である。実施例4および5は、レトルト後良好なフィルム平滑性を示す。
【0133】
実施例6においては、CBC2に加えて、25%ポリプロピレンを添加する。レトルト後、6.1N/15mmの層間接着力値を達成する。実施例7および8においては、AFFINITY PL1850に代表されるポリオレフィンプラストマーをHDPE KS10100と置き換える。実施例8に40%のCBC2を添加すると、レトルト後、9.4N/15mmの優れた接着力値を達成する。実施例8は、レトルト後の良好なフィルム平滑性を示す。
【0134】
INFUSE OBC調合物に基づく比較例(A2およびA3)は、レトルト前およびレトルト後に良好な接着力を示すが;レトルト後、縮みの結果として著しいしわを有する。比較例A3は、レトルト工程中の融解および再結晶の結果として、レトルト後、高ヘイズを有する。
【0135】
ヘイズに関しては、実施例5は実施例Bよりも良好であり、それに対して実施例8は実施例Bと同等である。
【0136】
【表7】
【0137】
インフレーションフィルム実施例
結合層調合物の複合化
インフレーションフィルム試験に使用する結合層調合物用ブレンドを、Coperion ZSK26 2軸スクリュー押出成形機で複合化する。スクリューの直径は25.5mmであり、ねじ高さは4.55mmである。50lbs/hrの供給速度および500のスクリューRPMを使用する。バレル高さは100mmであり、全工程セクションを含む15バレルがある。以下の温度設定を押出成形工程において使用する。区域1〜2を140℃に加熱し、他の区域およびダイを190℃に設定する。複合化材料を、2穴ダイを通して16フィート長の冷却した水浴へ押し出した。次にストランドをBerlyn Air Knifeに通し、過剰な水を除去する。ストランドが冷却し、乾燥したらLab Techサイドカットペレット成形機でペレットにする。
【0138】
【表8】
【0139】
Lab Techインフレーションフィルムラインでのインフレーションフィルム工程
A/B/C/B/A構造の5層フィルムをLab Tech5層インフレーションフィルムラインでブローする。押出成形ダイの直径は75mmであり、ダイギャップは2mmである。ブローアップ比(BUR)は2.7であり、折り径は12.7インチである。ニップ速度は13.5ft/分である。全フィルム厚は100μmであり、ここでAはスキン層、Bは結合層、およびCはバリア層である。Dow PP 6D83Kをスキン層として使用する。ポリアミドおよびEVOHの両方をバリア層として使用する。ポリアミドUltramid(商標)C33L01をバリア層として使用する場合、層構造はA/B/C/B/A(30/10/20/10/30μm)である。EVOH EVAL(商標)H171Bをバリア層として使用する場合、層構造はA/B/C/B/A(35/10/10/10/35μm)である。ラインは5つの押出成形機を有する。押出成形機1および5をスキン層に使用し、押出成形機2および4を結合層に使用し、押出成形機3をバリア層に使用する。バリアとしてポリアミドを有する試料での押出成形機温度プロファイルを表9に示す。バリアとしてEVOHを有する試料での押出成形機温度プロファイルを表10に示す。
【0140】
【表9】
【0141】
【表10】
【0142】
ポリアミドを含有するインフレーションフィルム構造体の接着力およびヘイズの結果を表11に示す。実施例9〜13は、レトルト前およびレトルト後の両方で、PP系結合層(実施例CおよびD)と比較して優れた接着特性を示す。実施例9〜11はMAH−g−HDPE(MAHPECONC1)をMAHグラフト化ポリオレフィンとして使用し、実施例12はMAH−g−HDPE(MAHPECONC2)をMAHグラフト化ポリオレフィンとして使用し、それに対して実施例13はMAH−g−PP(MAHPPCONC)をMAHグラフト化ポリオレフィンとして使用している。実施例16はMAH−g−HDPE(MAHPECONC1)およびCBC3のみを含有し、エラストマーを含有しない。ヘイズに関しては、実施例9〜13はレトルト前に6〜8%のヘイズを有し、レトルト後に13〜15%のヘイズを有する。実施例9〜13もレトルト後、良好なフィルム平滑性を示す。
【0143】
【表11】
【0144】
EVOH(EVAL(商標)H171B)を含有するインフレーションフィルム構造体の接着力およびヘイズの結果を表12に示す。実施例14および15は、レトルト前およびレトルト後の両方で、PP系結合層(実施例E)と比較して優れた接着力を示す。
【0145】
【表12】
【0146】
Alpineインフレーションフィルムラインでのインフレーションフィルム工程
A/B/C/B/D構造の5層フィルムをAlpine7層インフレーションフィルムラインでブローする。A層はシーラント層、Bは結合層、Cはバリア層、およびDはスキン層である。PP 6D83Kをシーラント層Aとして使用する。ポリアミド(Ultramid(商標)C40LN07)およびEVOH(EVAL(商標)F171B)の両方をバリア層Cとして使用する。PP H110−02Nをスキン層Dとして使用する。押出成形ダイの直径は250mmであり、ダイギャップは2mmである。ダイ排出量は、インチダイ外周あたり11.35lbである。ブローアップ比(BUR)は2.5であり、ドローダウン比は7.86である。全フィルム厚100μmおよび50μmを作製する。100μm厚フィルムではニップ速度は46.5ft/分であり、これに対して50μm厚フィルムではニップ速度は93.0ft/分である。ポリアミドC40LN07をバリア層として使用する場合、層構造はA/B/C/B/D(34/6/20/6/34%)である。EVOH F171Bをバリア層として使用する場合、層構造はA/B/C/B/D(39/6/10/6/39%)である。ラインは7つの押出成形機を有する。押出成形機1および2をシーラント層Aに使用し、押出成形機3および5を結合層Bに使用し、押出成形機5をバリア層Cに使用し、押出成形機6および7をスキン層Dに使用する。バリアとしてポリアミドを有する試料での押出成形機温度プロファイルを表13に示す。バリアとしてEVOHを有する試料での押出成形機温度プロファイルを表14に示す。
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【0149】
Alpineインフレーションフィルムラインで作製したポリアミド層を含有する100μm厚フィルムでの試験結果を表15に示す。接着試験の標準偏差を括弧内に示す。実施例16〜18は、レトルト前およびレトルト後の両方で、PP系結合層(実施例F、GおよびH)と比較して同等の接着力を示す。実施例16〜18のヘイズも比較例と同様である。実施例9〜13も、レトルト後に良好なフィルム平滑性を示す。
【0150】
光学顕微鏡観察を実施して、剥離界面を確認する。
図5に示すように、剥離試験した構造体の光学断面の調査は、実施例16、18およびHの同じ場所で破損が生じることを示す。ポリアミド層および結合層間の境界面に沿って、接着破損を観測する。
【0151】
【表15】
【0152】
Alpineインフレーションフィルムラインで作製した、EVOH(EVAL(商標)F171B)層を含有する100μm厚フィルムの試験結果を表16に示す。接着試験の標準偏差を括弧内に示す。実施例19〜21は、レトルト前およびレトルト後の両方で、PP系結合層(実施例I〜K)より強い接着力を示す。
【0153】
【表16】
【0154】
PE系構造体のLab Techインフレーションフィルムラインでのインフレーションフィルム
ポリエチレン/ポリアミド結合層試験を実施して、本発明がポリエチレン/ポリアミドの結合層として使用できるかを試験した。同様のA/B/C/B/A構造の5層フィルムをLab Tech5層インフレーションフィルムラインでブローした。押出成形ダイの直径は75mmであり、ダイギャップは2mmであった。ブローアップ比(BUR)は2.5であり、折り径は11.6インチであった。ニップ速度は14.5ft/分であった。全フィルム厚は100μmであり、ここでAはスキン層、Bは結合層、およびCはバリア層であった。DOWLEX2045Gをスキン層として使用した。ポリアミドUltramid(商標)C33L01をバリア層として使用した。層構造はA/B/C/B/A(30/10/20/10/30μm)であった。ラインは5つの押出成形機を有した。押出成形機1および5をスキン層に使用し、押出成形機2および4を結合層に使用し、押出成形機3をバリア層に使用した。押出成形機温度プロファイルを表17に示す。
【0155】
【表17】
【0156】
本発明の結合層、PP系結合層およびPE系結合層を表18において比較する。PE/ポリアミド結合層では、4ミルフィルムでの最小許容接着レベルは約7N/15mmより大きい。表18において見られるように、PP系結合層である実施例LおよびMは、接着力の要求条件を満たしていないのに対し、本発明の実施例22および23および市販のPE系結合層(実施例NおよびO)は接着力の要求条件を上回る。
【0157】
剥離試験破損の比較により、剥離場所の違いが明らかになった(
図6)。結合層とポリアミド層間の接着界面破損が、本発明の結合層23で作製した調合物で生じた(
図6a)。PE系結合層AMPLIFY TY 1353(実施例N)で、同じ剥離場所を観察した(
図6c)。逆に、PP系結合層の実施例Lで、外側のDOWLEX2045G層とPP系結合層間の接着破損が生じた(
図19b)。PPとPE間の低い互換性が、結合層/DOWLEX2045Gの界面の結合を弱くし、破損部を生じさせる。
【0158】
【表18】
【0159】
熱成形実施例
熱成形試験を実施して、本発明が熱成形用途で結合層として使用できるかどうかを試験した。A/B/C/D/C/B/E構造の7層フィルムをAlpine7層インフレーションフィルムラインでブローした。A層はシーラント層(RCP 6D83K)、Bは結合層、Cはポリアミド(Ultramid(商標)B3601)、DはEVOH(EVAL(商標)LR171B)およびEはPP H110−02Nである。層構造はA/B/C/D/C/B/E(22.5%/7.5%/12.5%/15.0%/12.5%/7.5%/22.5%)である。フィルム厚は6ミル(152μm)である。全スルーアウトプットは425lb/hrである。押出成形ダイの直径は250mmで、ダイギャップは2mmである。ダイ排出量は、インチダイ外周あたり13.7lbである。ブローアップ比(BUR)は2.5であり、ドローダウン比は5.24である。全フィルム厚6ミル(152.4μm)を作製する。ニップ速度は35.9ft/分である。ラインは7つの押出成形機を有する。押出成形機1をシーラント層Aに使用し、押出成形機2および6を結合層Bに使用し、押出成形機3および5を層Cに使用し、押出成形機4を層Dに使用し、押出成形機7を層Eに使用する。押出成形機温度プロファイルを表19に示す。
【0160】
【表19】
【0161】
インフレーションフィルムを、引き続き、Multivac R530熱成形機で熱成形した。成形深さは63.5mmである。ダイ温度は135℃であり、加熱に7秒の静止時間、成形に5秒の静止時間をとる。延伸後、18(長さ)×12(幅)×6(深さ)cmのカップ寸法を形成させる。形成したカップの底部フィルムは、1.0ミル(25.4μm)の厚さを有する。形成したカップの底部から取ったフィルムで、接着力およびヒートシール試験を実施する。
【0162】
熱形成後、本発明の結合層の実施例24は、レトルト前に2.4N/15mmの接着力の値を有し、この値はPP系結合層の実施例P(2.9N/15mm)と同等である。レトルト後、実施例24は、比較例Pよりも著しく高い接着力を示す。
【0163】
【表20】
【0164】
熱成形カップの底部からとった熱成形フィルムのヒートシール力を
図7に示す。実施例24のヒートシール力は、比較例Pより著しく高い。
【0165】
反することが述べられる場合、文脈から暗黙的である場合、または、当技術分野において慣例的である場合を除き、すべての部およびパーセントは重量に基づいており、また、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実施の目的のため、参照されている特許、特許出願または刊行物の内容は、とりわけ、合成技術、規定(本開示において具体的に提供されるいずれの規定とも矛盾しない程度で)、および、当技術分野における一般的知識に関して、その全体が参照によって取り込まれる(あるいは、それと同等の米国版が参照によってそのように取り込まれる)。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
[1]
A層であるポリオレフィン層、B層である結合層、およびC層であるバリア層を含み、各層は、向き合って他の層と接着接触する顔面を有する多層構造体であって、
A層は上部顔面および下部顔面を有し、ポリプロピレンを含み;
B層は上部顔面および下部顔面を有し:
i)90mol%以上の重合エチレンを含むエチレンポリマー(EP);
ii)アルファ−オレフィン系結晶性ポリマー(CAOP);ならびに
iii)(a)90mol%以上の重合エチレンを含むエチレンポリマーブロック、および(b)結晶性アルファ−オレフィンブロック(CAOB)を含むブロックコポリマー;を含む、
a)結晶性ブロックコポリマー複合体(CBC);
b)任意に、ポリオレフィンエラストマー;
c)無水マレイン酸をグラフト化したポリエチレン(MAH−g−PE)または無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(MAH−g−PP);ならびに、任意に、
d)ポリプロピレンまたはポリエチレン;
を含み;
C層はポリアミド(PA)またはエチレンビニルアルコール(EVOH)を含み、上部顔面および下部顔面を有し、C層の該上部顔面はB層の前記下部顔面と接着接触する;
多層構造体。
[2]
B層がポリオレフィンエラストマーをさらに含む、[1]記載の多層構造体。
[3]
B層がポリプロピレンをさらに含む、[1]記載の多層構造体。
[4]
B層がポリエチレンをさらに含む、[1]記載の多層構造体。
[5]
B層の全ポリマー重量に基づき、B層の前記結晶性ブロック複合体が20wt%〜90wt%の量で存在する、[1]記載の多層構造体。
[6]
前記構造体が25ミクロン〜2.5cmの厚さを有する、[1]記載の多層構造体。
[7]
前記構造体がキャストフィルム、インフレーションフィルムまたは熱成形フィルムである、[1]記載の多層構造体。