(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254181
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ポンプ機構を有するタービンブレードのエンジェルウィング
(51)【国際特許分類】
F02C 7/18 20060101AFI20171218BHJP
F01D 11/02 20060101ALI20171218BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20171218BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20171218BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20171218BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
F02C7/18 E
F01D11/02
F01D25/12 E
F02C7/28 Z
F01D25/00 M
F01D5/14
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-545188(P2015-545188)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-501341(P2016-501341A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】US2013072022
(87)【国際公開番号】WO2014085464
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】13/688,411
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チン−パン・リー
(72)【発明者】
【氏名】コク−ムン・タム
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エイチ・ヴィット
(72)【発明者】
【氏名】エリック・シュローダー
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0269399(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0280011(US,A1)
【文献】
特開2012−007606(JP,A)
【文献】
特開2012−036888(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0074734(US,A1)
【文献】
特開2009−062979(JP,A)
【文献】
特開2006−077658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18
F01D 5/14
F01D 11/02
F01D 25/00
F01D 25/12
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン長手方向軸線を回る環状列ブレードへと組み立てられ、部分的に高温ガス路と冷却流体路との両方を画定し、前記冷却流体路は、側面が前記高温ガス路内の高温ガスの流れに対して上流にあるブレードの列の半径方向内側の基部の側面を過ぎて、ロータキャビティから延在して前記高温ガス路へとつながる複数のブレードと、
前記ブレードの列の前記基部の側面に配置されたエンジェルウィングアセンブリと、
エンジェルウィングによって画定される、前記冷却流体路の最狭隙間を通って流れる冷却流体の流れに、該最狭隙間で動きを与えるために構成された、前記エンジェルウィングアセンブリの周りに配分された複数のポンプ機構と
を備えるガスタービンエンジンであって、
複数の前記ポンプ機構と前記エンジェルウィングアセンブリと前記ブレードの列の前記基部は、冷却流体が前記高温ガス路に入った時に、冷却流体の流れに、前記ガスタービンエンジン長手方向軸線を回る螺旋状の動きを作り出すことができる、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記ガスタービンエンジン長手方向軸線に対して、複数の前記ポンプ機構は、反対面の半径方向内側かつ該反対面に軸方向に隣接して前記エンジェルウィングアセンブリの一部と一体であり、該エンジェルウィングアセンブリの一部と前記反対面とは共に、前記冷却流体路内の湾曲した最狭隙間を画定する、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
各ポンプ機構は、作動中の前記ブレードの列の回転方向に対して、半径方向外側かつ接線方向前方に向いているポンプ面を備える、請求項2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
各ポンプ機構流路は、前記ガスタービンエンジン長手方向軸線に対して半径方向内側にかつ前記ブレードの列の回転方向に対して前方に配向されている流入口と、前記ガスタービンエンジン長手方向軸線に対して半径方向外側にかつ前記ブレードの列の回転方向に対して前方に配向されている排出口とを備える、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
少なくとも1つのポンプ機構流路はさらにスロート部を備える、請求項4に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
少なくとも1つのポンプ機構流路は、前記エンジェルウィングアセンブリの半径方向内向側から半径方向外向側へ該エンジェルウィングアセンブリを横切る、請求項4に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
少なくとも1つのポンプ機構流路は、前記ガスタービンエンジン長手方向軸線に対して軸方向上流端部で制限されない、請求項6に記載のガスタービンエンジン。
【請求項8】
前記エンジェルウィングアセンブリはさらに、各ポンプ機構流路の間に面取り面を備え、各面取り面は、それぞれのポンプ機構流路へと先細りし、冷却流体の流れの一部を前記ポンプ機構流路に送り込むことができる、請求項7に記載のガスタービンエンジン。
【請求項9】
ブレード基部と、
該ブレード基部の側面に形成されたエンジェルウィングであって、該エンジェルウィングは軸方向プラットフォームと半径方向に隆起したリップ部とを備えるエンジェルウィングと、
完全に該エンジェルウィングの円周曲線内部に配置されたポンプ面を備えるポンプ機構と
を備えるガスタービンエンジンブレード。
【請求項10】
前記ポンプ面が、完全に、半径方向に隆起したプラットフォームの円周曲線内部に配置されている、請求項9に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項11】
ガスタービンエンジンに取り付けられると、ガスタービンエンジン長手方向軸線に対して前記ポンプ機構が反対面の半径方向内側かつ該反対面と軸方向に整列して配置され、前記ポンプ機構と前記反対面とは冷却流体路内で流れ抑制シール間隙を画定する、請求項9に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項12】
前記ガスタービンエンジンに取り付けられると、各ポンプ機構は、前記ガスタービンエンジン長手方向軸線に対して半径方向外側にかつ取り付けられた環状列ブレードの回転方向に対して接線方向前方に向いているポンプ面を備える、請求項11に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項13】
ガスタービンエンジンに取り付けられると、各ポンプ機構は、前記ガスタービンエンジンの長手方向軸線に対して半径方向内向側から半径方向外向側まで前記エンジェルウィングのアセンブリにわたるポンプ機構流路を備える、請求項9に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項14】
前記ポンプ機構流路は凹面形状を備える、請求項13に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項15】
前記ポンプ機構流路の半径方向内側端部は、冷却流体の流れの少なくとも一部をすくうことができる流入端部であり、前記ポンプ機構流路の半径方向外側端部は、すくわれた冷却流体を、前記ガスタービンエンジンの長手方向軸線に対して半径方向外側と回転するブレードの列の回転方向の両方に排出することができる排出端部であり、それゆえ、すくわれた冷却流体を、前記ポンプ機構を迂回する冷却流体の流れのすくわれなかった一部と再統合する、請求項14に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項16】
前記ガスタービンエンジンの長手方向軸線に対して前記ポンプ機構流路は上流側で開いており、前記エンジェルウィングはさらに、ポンプ機構開口側上流のブレードの列の回転方向に対して始まり、前記ポンプ機構流路で終わっている面取り面を備え、かつ冷却流体の流れの一部を前記開口側に送ることができる、請求項14に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項17】
ブレード基部と、
作動中、ガスタービンエンジン内の高温ガス路内でブレードを過ぎて流れる高温ガスに対して上流にある前記ブレード基部の側面に形成されたエンジェルウィングであって、該エンジェルウィングは軸方向プラットフォームと、半径方向に隆起したリップ部と、軸方向に隣接するかあるいは前記ガスタービンエンジンの長手方向軸線に対して半径方向に隆起したリップ部の下流縁部の上流にある排出終端部を備えるポンプ流路を画定するポンプ機構とを備えるエンジェルウィングと
を備えるガスタービンエンジンブレード。
【請求項18】
前記ポンプ機構はさらに、前記ガスタービンエンジンの長手方向軸線に対して半径方向外側にかつ前記ガスタービンエンジンブレードの回転方向に対して接線方向前方に配向され、かつ前記ガスタービンエンジンの長手方向軸線から最も遠くに配置された前記半径方向に隆起したリップ部のシール面の間に溝を作られたポンプ面を備える、請求項17に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項19】
各ポンプ機構は、前記軸方向プラットフォームの半径方向内側に流入口と、前記半径方向に隆起したリップ部の半径方向外側に排出口と、前記エンジェルウィングを通るポンプ機構流路とを備える、請求項17に記載のガスタービンエンジンブレード。
【請求項20】
前記ポンプ機構は、前記ガスタービンエンジンブレードの回転方向に対して接線方向前方に冷却流体を排出することができる、請求項19に記載のガスタービンエンジンブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータキャビティパージ冷却空気が燃焼ガスの流れに入った時に、その冷却空気の相互作用を改善することに関する。特に、本発明は、冷却空気流に渦流を与える、タービンブレードのエンジェルウィングに配置されたポンプ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは慣例的に、ロータシャフトと幾列かのロータブレードとを備え、各列はロータシャフトの周りに円周状に配分された多重ブレードを備える。ブレード列の間に、固定翼の列がある。燃焼ガスは、ガスタービンエンジンの長手方向軸線に沿って、ブレードと翼とによって画定される環状流路に流入する。ロータシャフトは環状流路の半径方向内側にあり、ロータキャビティは、ロータディスクと、固定翼を保持するステータ構造との間に形成される。冷却空気あるいはロータパージ空気はしばしば、ロータキャビティ内部に送られる。パージ空気は、ブレードと翼とを支えるロータキャビティ内部のコンポーネントを冷却し、その後、パージ空気は、通常、翼とブレードの半径方向内側端部にある翼とブレードとの間の隙間を通って、ロータキャビティから出ていく。
【0003】
環状流路内を進む燃焼ガスは、ブレードあるいは翼のような、ガスがぶつかるあらゆるコンポーネントのすぐ上流で、「頭部波(bow wave)」を形成しやすい。結果として、各ブレードのすぐ上流の燃焼ガス内部で、圧力が高まる。頭部波は、ちょうど隙間の半径方向外側に、ガスタービンエンジンの周りに円周状に配分される。燃焼ガスが隙間とロータキャビティの中に取り込まれるのを防ぐために、流れ抑制シールがしばしば、隙間のちょうど内側、つまり隙間の排出口のわずかに上流に形成される。
【0004】
パージ空気の外への流れと燃焼ガスの中への流れとを限定することを目的とする、隙間における制限部を形成するために、流れ抑制シールが、軸方向プラットフォームの先端部から半径方向外側に延在する、半径方向に隆起したリップ部とともに、ブレードの基部から軸方向に延在するプラットフォームを用いるエンジェルウィングを介して形成されることがある。半径方向に隆起したリップ部は慣例的に、流れ抑制シールとして作用する制限部を形成する反対面、たとえば固定翼の面と軸方向に整列する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8083475号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パージ空気は、燃焼ガスが相互作用する燃焼ガスの流れに対して、空気力学的影響を有することが知られており、影響を和らげるために、様々なアプローチがとられてきた。たとえばBulgrin他の特許文献1は、エンジェルウィングを横切るロータ空気を、それぞれのブレードの前面の領域にガイドするエンジェルウィング圧縮シールを開示している。しかしながらこの特許は、頭部波に対処することに限定されている。別の空気力学的影響の対処にも、ブレードの異なる幾何学形状の空気力学的影響の対処にも、技術的に改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は、図を考慮して、以下の記述において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一列のブレードと隣り合う翼とを示す、ガスタービンエンジンの長手方向断面の概略図である。
【
図2】
図1とは異なる構成のガスタービンエンジンの長手方向断面の概略図である。
【
図3】エンジェルウィングを有するブレードを示す図である。
【
図4】取り付けられたブレードと、パージ空気のガイドされない流れの方向を示す図である。
【
図5】パージ空気と燃焼ガスとの混合物の流線を示す図である。
【
図6】取り付けられたブレードと、パージ空気のガイドされた流れの方向を示す図である。
【
図7】ポンプ機構の模範的な実施形態を示す図である。
【
図8】ポンプ機構の模範的な代替的な実施形態の側面図である。
【
図10】ポンプ機構の模範的な別の代替的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明者は、ロータパージ空気と燃焼ガスとの混合の空気力学的影響は、渦を作り出すことを見出した。これらの渦は、前部から後部へかつ基部から先端部へ、ブレードの吸気側に沿って横切る傾向がある。このことは、空気力学的損失と、それに関連した、燃焼ガスから引き出され得るエネルギーの減少とを引き起こす。ガスタービンエンジンの作動中、ロータブレードは、ガスタービンエンジン長手方向軸線の周りを回転している。燃焼ガス流に入る前には、軸方向に流れるロータパージ空気は、ブレードの前縁に対して入射角の負角で流れている。これらの渦は少なくとも部分的に、ガスタービンエンジン長手方向軸線の周りを螺旋状に流れ、大きな出会い角を作り出す燃焼ガスとぶつかる、軸方向に流れる冷却空気によって形成されることを、発明者は発見した。それに応じて発明者は、パージ空気がエンジェルウィングを横切る際に、ロータパージ空気に渦流を与える、エンジェルウィングと一体のポンプ機構を開発した。軸方向に進むロータパージ空気に渦流が与えられれば、ロータパージ空気は結局、ガスタービンエンジン長手方向軸線の周りを螺旋状に進むことになる。螺旋状に動くロータパージ空気が、螺旋状に動く燃焼ガスと小さな出会い角で混合すると、渦が軽減する。これによって、順々に、ブレードが燃焼ガスからエネルギーを引き出すことができる効率が上がる。
【0010】
図1は、一列のブレード10と上流翼12と下流翼14とを示す、ガスタービンエンジンの一構成の長手方向断面の概略図であり、これらのために様々なポンプ機構が開発された。燃焼ガス16は、当該燃焼ガス16をガスタービンエンジン長手方向軸線18の周りに螺旋状に方向付ける上流翼12を通って流れる。燃焼ガスはブレード10に衝突してエネルギーが引き出され、それから燃焼ガス16は、当該燃焼ガス16を次の列のブレード20に適切に向ける下流翼14に衝突する。圧縮機(図示されず)によって生み出される圧縮空気は、ロータキャビティ22に向かって方向転換され、そこで当該圧縮空気は、ロータキャビティ22と高温ガス路26内の燃焼ガス16との間の冷却流体路24に進む。
【0011】
示された構成においては、前部下方エンジェルウィング30と前部上方エンジェルウィング32とが、ブレード10の基部36の上流側34にある。各前部エンジェルウィング30,32は、半径方向に隆起したリップ部38を含む。前部上方エンジェルウィング32の半径方向に隆起したリップ部38の半径方向外側(つまり軸方向に向かい合って)は、反対面40であり、半径方向に隆起したリップ部38と反対面40は一緒に、流れ抑制シール間隙42として知られる冷却流体路24の狭くなった隙間を形成する。垂直壁44と突出部46とは、冷却流体路24の排出口48に近接して配置されている。たとえ出会い角が効率を落とす原因となると予め認識されていたとしても、垂直壁44と突出部46とのために、ロータパージ空気が燃焼ガス16と混合するときに、ロータパージ空気に、ガスタービンエンジン長手方向軸線18を回るいかなる螺旋運動も与えることは不可能であろう。なぜなら、垂直壁44と突出部46とは、ロータパージ空気のいかなる軸方向の運動もブロックするからである。
【0012】
図2は、
図1とは異なる構成のガスタービンエンジンの長手方向断面の概略図である。この構成においては、異なるよう構成された前部上方エンジェルウィング62を有する、異なるよう構成されたブレード60と、ロータキャビティ22と、冷却流体路24と、半径方向に隆起したリップ部64と、反対面40と、流れ抑制シール間隙42とが存在する。しかしながら、垂直壁44と突出部46との代わりに、この実施形態においては、上方エンジェルウィング62が、ブレードプラットフォーム70の上面68に融合する傾斜移行面66を有する。
【0013】
図3は、
図2のガスタービン構成で用いられてもよいブレード60の斜視図である。上方エンジェルウィング62は、ブレード60の基部76にある垂直側面74から軸方向に延在する軸方向プラットフォーム72を有し、ブレード60の基部76は、エアフォイル78を含まないブレード60の一部である。半径方向に隆起したリップ部64は、軸方向プラットフォーム72から、ガスタービンエンジン長手方向軸線18に対して半径方向外側に延在し、エンジェルウィング62の半径方向外側面84にある谷部82の最低部80で始まって、シーリング面86で終わっている。相対的に上流の端部で、シーリング面86は、半径方向に隆起したリップ部64の上流角部90で、軸方向プラットフォーム72の上流面88と交わる。相対的に下流の端部で、シーリング面86は、半径方向に隆起したリップ部64の下流角部94で、半径方向に隆起したリップ部64の下流面92と交わる。軸方向プラットフォーム72は面取りされている、半径方向内向側上流角部98を有していても、あるいは有していなくてもよい、半径方向内向側96を有する。
【0014】
図4は、ガスタービンエンジンに取り付けられたように取り付けられた2つのブレード60を、半径方向内側に見て示している。エンジェルウィング62は、ガスタービンエンジン長手方向軸線18に対して上流側で視認でき、環状列ブレード60に取り付けられると、エンジェルウィングアセンブリ99を形成する。燃焼ガスが上流翼12(図示せず)から出ると、燃焼ガスは、環状流路において結果的に螺旋状流れ方向100になる、軸方向成分と周方向成分の両方を有する方向に進む。ロータパージ空気は、ガスタービンエンジン長手方向軸線18に対して半径方向外側に流れ、軸方向102の傾斜移行面66に沿って、軸方向にも流れる。燃焼ガス16の流れの方向100とロータパージ空気の流れの方向102との間の第1の出会い角104は、いかなるポンプ機構の影響も受けていない。燃焼ガス16とロータパージ空気との混合は、ブレード60の吸気側106に形成されがちな渦を形成する。渦は、圧縮側108を過ぎて流れてもよく、プラットフォームを横切って隣接するエアフォイルの吸気側へ向かう吸気側渦と混合し、それから吸気側壁に沿ってブレード後縁の上方部分へ向かって上方に流れてもよい。
【0015】
図5は、
図4の1つのブレード60の吸気側106の側面図を示している。この図において、流れ抑制42は右側にあり、燃焼ガス16は右から左へ方向100に流れており、ロータパージ空気は半径方向かつ軸方向で方向102に進んでいる。燃焼ガス16とロータパージ空気とが出会う場所で、ブレード前縁112からブレード後縁114までかつブレード基部116からブレード先端部118まで進む流線110が、ガスタービンエンジン長手方向軸線18に対して形成される。渦の乱流は抗力を増加させ、結果的に、流速を落とさせる抗力のためにエネルギーが失われる。このことは、エネルギーの作業効率を減少させる。
【0016】
図6に見られるように、ロータパージ流体に渦流が与えられれば、当該流体はガスタービンエンジン長手方向軸線の周りを螺旋方向120に動き、それから燃焼ガス16と混合して、燃焼ガス16の流れの方向100とロータパージ空気の流れの方向120との間の第2の出会い角122ができることを発明者は発見した。有利なことには、この第2の出会い角122は、第1の出会い角104よりも小さい。それゆえ、付随する渦はより小さくなり、空気力学上の損失はより小さくなり、エネルギー効率は増加する。
【0017】
図7は、ポンプ機構130の模範的な実施形態を示している。この実施形態において、ポンプ機構130は、エンジェルウィング62内部、特に半径方向に隆起したリップ部64内部で、軸方向プラットフォーム72の上流面88と半径方向に隆起したリップ部64の下流面92との間に配置された第1のポンプ面132を含む。第1のポンプ面132は、半径方向内側に、軸方向プラットフォーム72へ延在していても、あるいは延在していなくてもよい。第1のポンプ面132の間で円周に配置されているのは、個別のシーリング面86である(第1のポンプ面132が存在しないとするならば、一定の直径の連続するシーリング面と比較して)。第1のポンプ面132はブレード60の回転方向134に対して半径方向外側かつ接線方向前方に配向されている。
【0018】
組み立てられてガスタービンエンジン内で回転する場合、エンジェルウィング62は、軸方向プラットフォーム72と半径方向に隆起したリップ部64とが回転するときに占める空間によって規定される曲線を形成する。ガスタービンエンジン長手方向軸線18を回る回転が与えられると、エンジェルウィング62の外側面は曲線を形成し、環状形状を有する曲線の断面は、同じ箇所のエンジェルウィング62の断面と類似するであろう。たとえば、シーリング面86は、一定の直径のシーリング面曲線136を画定する(図における曲率の大きさは、説明のために誇張されている)。それゆえ、最外部の面は、曲線の形状を画定する。図から分かるように、ポンプ機構130は、例示のシーリング面曲線136によって証明されているように、エンジェルウィング62によって画定される曲線の内部に完全に配置される。別の言い方をすれば、ポンプ機構130を作り出すために、
図3のエンジェルウィング62には、いかなる材料も加えられない。これは、本明細書において開示される全ての実施形態に当てはまり、このことは開示されるポンプ機構の特有の利点を提供する。つまり、全ての実施形態は、エンジェルウィング62を有する既存のブレード60から形成され得る。なぜなら、各々は、エンジェルウィング62から材料を取り除くことによって形成され得るからである。その結果、本明細書において開示されるポンプ機構130は、組立てプロセスの一部として作り出され得る。代替的に、エンジェルウィングが鋳造の場合、ポンプ機構130は鋳造プロセスの間で形成され得る。
【0019】
流れ抑制シール間隙42も画定する反対面40は、冷却流体路24内の最狭隙間である流れ抑制シール間隙42内部のその位置ゆえに、パージ空気が第1のポンプ面を越えて半径方向外側に動くのを防ぐ。その結果、特有の構成ゆえに、単純にポンプ機構130を越える代わりに、ロータパージは、第1のポンプ面132によって強制的に回転させられる。第1のポンプ面132はロータパージ空気に渦流を与え、当該渦流は、ロータパージ空気の既存の軸方向の動きとともに、ロータパージ空気が燃焼ガス16と混合した時にロータパージ空気内部で望ましい螺旋運動を作り出す。螺旋方向に動いているロータ流体の環状流も、冷却流体路24から出るときに、圧力の基本的に統一された円周での配分によって特徴付けられる。前述の結果として、ロータパージ空気の流れは、ブレードプラットフォーム70により付いたままになりがちであり、それによって渦の半径方向の増大量が減少する。これは同様に、渦が、吸気側106の上方翼幅に向かって移動するのを防ぎ、それによってブレード60の空気力学的効率が増加する。さらに、より多くのパージ流がブレードプラットフォーム70に付着し、付着するパージ流も軸方向にさらにブレードプラットフォーム70を通り、ブレードプラットフォーム70を冷えたままにすることができ、それによってブレード60の耐用年数を延ばす。パフォーマンスは、コンピュータによる流体力学分析によって効果的であることが明らかにされた。
【0020】
図8は、環状列ブレード60の基部76にあるエンジェルウィングアセンブリ99の一部である、ポンプ機構130の代替的な模範的実施形態を示している。この実施例においては、ポンプ機構130は、凹面形状を有するスコップ148に類似する。スコップ148は、エンジェルウィング62の半径方向内向側96に配置されたスコップ流入端部152を有するスコップ流路150を画定する。スコップ流入端部152は、スコップの延在部154がブレード60の回転方向134に対して半径方向内側かつ接線方向前方に延在している例示された実施形態におけるスコップとして作用してよい。スコップ流路150は、シーリング面86に配置されたスコップ排出端部156も有する。スコップ排出端部156の軸方向延在部158は、ブレード60の回転方向134に対して半径方向外側かつ接線方向前方に延在する。スコップ流路150は第2のポンプ面160を含み、さらに、スコップ流路150内部を流れるロータパージ空気を加速させるために作用するスロート部162を含んでよい。スロート部162はスコップ流路150の中央部に、あるいは必要であれば他のいかなる箇所にも配置されてよい。スコップ流路150はさらに、前方縁部166を含む。
【0021】
運転中に、一部のロータパージ空気はスコップ流路150に入り(言い換えれば、すくい入れられ)、そこでロータパージ空気は加速され、かつ円周方向の動きを与えられる。すくい入れられたロータパージ空気は、回転方向134に対して半径方向外側かつ接線方向前方に排出され、そこでスコップ148を迂回したロータパージ空気と出会う。すくい入れられたロータパージ空気とスコップ148を迂回したロータパージ空気との混合によって、混合ロータパージ流は、ガスタービンエンジン長手方向軸線18を回る螺旋運動で流れることになる。結果として、混合ロータパージ空気が燃焼ガス16と混合すれば、求められている、より小さな第2の出会い角122が達成される。
【0022】
図9は、
図8のスコップ148のための任意の特徴を示している。この図において、3つのブレード60のポンプ機構130は、半径方向内側で見るように、エンジェルウィングアセンブリ99の一部を形成する。軸方向プラットフォーム72の上流面88の上に、スコップ面取り面164が、回転方向134に対して上流面88上の相対的に上流にあり、かつガスタービンエンジン長手方向軸線18に対してテーパ下流にある位置168から、スコップ流路150の端部まで延在してよい。さらに、スコップ流路150の上流側170は取り囲まれていなくてもよいが、冷却流体路24に対して開いていてもよい。
図10は、
図8のスコップ148の代替的な模範的実施形態を示しており、スロート部162はスコップ流路150の端部に配置されている。
【0023】
本発明は、2つの模範的な実施形態において示されたが、開示されたようなかつエンジェルウィングの曲線内部に渦流を与えることのできるいかなる幾何学形状も、開示範囲内で考慮される。これは、第1のポンプ面132を、より接線方向前方に向けるようにしたり、あまり接線方向前方にならないように向けるようにしたり、あるいは完全に接線方向前方に向けるようにすることを含む。これはさらに、スコップ流入端部152を、ロータパージ空気を受容するのに適したエンジェルウィング62のいかなる位置にも動かすことと、必要であればスコップ流路150を再構成することと、接線方向の成分ですくい入れられたロータパージ空気を排出するのに適切な、いかなる位置と配向にも、スコップ排出端部156を設置することとを含む。
【0024】
発明者は、ロータパージ空気が燃焼ガスと混合する前に、ロータパージ空気に螺旋運動をさせるための、シンプルでかつコスト効率のよい技術を発見したことが開示された。結果として、ブレードの空気力学的効率が改善され、それによってエンジンの効率が増し、かつブレードプラットフォームが冷却されたままであり、それによってブレードの耐用年数が増す。さらに、本明細書において開示されたポンプ機構は、簡単な加工処理で、既存のブレードに組み込むことができる。前述のことを考慮すると、このことは、従来技術の改良を意味する。
【0025】
本願発明の様々な実施形態が、本明細書において示され記述されたが、そのような実施形態は例のみによってもたらされたことが明らかとなるであろう。多くの改変と変更と代替とが、本明細書における発明から逸れることなく実施されてもよい。それに基づいて、本発明は特許請求の範囲の趣旨と範囲とによってのみ限定される。
【符号の説明】
【0026】
10 ブレード
12 上流翼
14 下流翼
16 燃焼ガス
18 ガスタービンエンジン長手方向軸線
20 ブレード
22 ロータキャビティ
24 冷却流体路
26 高温ガス路
30 前部下方エンジェルウィング
32 前部上方エンジェルウィング
34 上流側
36 基部
38 半径方向に隆起したリップ部
40 反対面
42 流れ抑制シール間隙
44 垂直壁
46 突出部
48 排出口
60 ブレード
62 前部上方エンジェルウィング
64 半径方向に隆起したリップ部
66 傾斜移行面
68 上面
70 ブレードプラットフォーム
72 軸方向プラットフォーム
74 垂直側面
76 基部
78 エアフォイル
80 最低部
82 谷部
84 半径方向外側面
86 シーリング面
88 上流面
90 上流角部
92 下流面
94 下流角部
96 半径方向内向側
98 半径方向内向側上流角部
99 エンジェルウィングアセンブリ
100 螺旋状流れ方向
102 軸方向
104 第1の出会い角
106 吸気側
108 圧縮側
110 流線
112 ブレード前縁
114 ブレード後縁
116 基部
118 ブレード先端部
120 螺旋方向
122 第2の出会い角
130 ポンプ機構
132 第1のポンプ面
134 回転方向
136 シーリング面曲線
148 スコップ
150 スコップ流路
152 スコップ流入端部
154 延在部
156 スコップ排出端部
158 延在部
160 第2のポンプ面
162 スロート部
164 スコップ面取り面
166 前方縁部
168 位置
170 上流側