(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
[001]
(関連出願の相互参照)
本願は、2013年1月4日に出願された米国仮特許出願第61/749,056号の優先権を主張するものである。
【0002】
[002]
(発明の分野)
粉体コーティングは、従来の液体コーティング及び塗料の、低VOCであり、低コストである代替法として使用されている、溶剤を含まない、固形分100%のコーティングシステムである。
【0003】
[003]
粉体コーティングは、特に、耐候性及び大気露出に対する耐性の増大が要求される建築分野の用途で使用され得る。かかるコーティングは、通常、ポリエステル樹脂から形成され、典型的には、優れた光沢保持性及び良好な耐化学性を示す。しかし、これらのコーティングは、例えば、サイクル腐食試験(CCT)等の標準試験を受けると充分な耐食性を示さない。したがって、従来、これらのコーティングは、外装用耐候性の用途には、1回の成分コーティングとしての使用は見受けられず、典型的には、100%被覆するようにトップコートが施され、太陽光に長期間暴露されてもプライマーが劣化しないようにしていた。
【0004】
[004]
上述から、優れた耐候特性及び最適な耐食性を提供する外装用ポリエステル樹脂系プライマーコーティングに対する必要性が存在することが理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[005]
本明細書に記載される発明は、外装用耐候性粉体コーティングの耐食性を改善するためのシステムを含む。本システムは、TGIC反応性結合剤樹脂と、約1〜10重量%の少なくとも1つの高分子量の飽和線状ポリエステルと、を含有する、製剤を含む。本システムから製造される硬化コーティングは、外装用耐候性の用途で使用される標準的な又は従来の粉末製剤に対して、サイクル腐食試験(CCT)における改善された耐食性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[006]
他の実施形態では、本発明は、金属基材をコーティングするための方法及びシステムを含む。方法は、基材と少なくとも1つの粉末製剤とを提供することであって、粉末製剤は、TGIC反応性高分子結合剤及び高分子量の飽和線状ポリエステル樹脂組成物を含む。製剤は、塗布及び硬化させて、CCTにおいて耐食性が少なくとも約40%改善されたことを示すコーティングを形成する。
【0007】
[007]
本発明の1つ以上の実施形態及び態様の詳細を以下に記載する。本発明のその他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び特許請求の範囲により明らかとなるであろう。
【0008】
[008]
選択的定義
特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下に提示する意味を有する。
【0009】
[009]
用語「上に(on)」は、表面又は基材上に(on)塗布されたコーティングに関して用いられるとき、表面又は基材に直接又は間接的に塗布されたコーティングの両方を含む。したがって、例えば、基材を覆っているプライマー層に塗布されたコーティングは、基材上に塗布されたコーティングを構成する。更に、用語「基材」は、本明細書で使用されるとき、未処理の、プライマー塗布されていない、又はブラスト洗浄された表面を指し、また、プライマー塗布されている、つまり当業者には既知の様々な方法、例えば、電着塗装処理で前処理されている表面も指す。
【0010】
[010]
別途記載のない限り、用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマー(即ち、2種以上の異なるモノマーのポリマー)の両方を含む。本明細書で使用されるとき、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリル及びメタアクリルモノマー及びホモポリマーの両方、並びにそれらを含有するコポリマーを含む。
【0011】
[011]
本明細書で使用されるとき、用語「耐食性」は、標準的な腐食試験中、金属試験パネルの腐食を防ぐコーティングの能力を意味する。サイクル腐食試験(CCT)は、腐食性である屋外環境で発生する不良を示す、製品コーティングの不良に対する標準的な試験を意味する。試験パネルは、所与の期間、反復サイクルで、例えば、湿潤環境又は乾燥環境等一連の様々な環境に曝される。CCTに合格したコーティングは、耐食性であると考えられる。
【0012】
[012]
「含む(comprises)」という用語及びその変形例は、それらの用語が明細書及び特許請求の範囲に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
【0013】
[013]
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で特定の利益を提供し得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じ又は他の状況下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0014】
[014]
本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」は同義的に使用される。したがって、例えば「1つの(an)」添加剤を含むコーティング組成物は、コーティング組成物が、「1つ以上の」添加剤を含むことを意味すると解釈し得る。
【0015】
[015]
本明細書では更に、端点による数の範囲の記載には、その範囲内に含まれる全ての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等が含まれる)。更に、範囲の開示は、より広い範囲内に含まれる全ての部分範囲の開示を含む(例えば、1〜5は、1〜4、1.5〜4.5、1〜2等を開示する)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[016]
本明細書に記載される本発明の実施形態は、金属基材を粉体コーティングするための製剤、方法及びシステムを含む。方法は、少なくとも第1の粉体製剤を基材に塗布する工程であって、製剤は、TGIC反応性結合剤及び線状ポリエステル樹脂を含む。方法は、組成物を硬化して、サイクル腐食試験において優れた耐食性を示す硬化コーティングを得ることを更に含む。
【0017】
[017]
したがって、幾つかの実施形態では、本発明は、基材をコーティングするための製剤、方法、又はシステムを提供する。ある態様では、本明細書に記載される製剤、方法、及びシステムは、外部又は屋外環境において使用される基材に対して粉体組成物を塗布することを含む。別の態様では、本明細書に記載される方法及びシステムは、腐食性である環境において使用される金属基材へ粉体組成物を塗布することを含む。更に別の態様では、本明細書に記載される方法及びシステムは、プライマー塗布されていない基材へ、(つまり、例えば、冷間圧延鋼上のプライマーコーティングとして、)粉体組成物を塗布することを含み、腐食防止又は耐候のためのトップコートによる完全な被覆を必要としない。
【0018】
[018]
ある実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも第1の粉体組成物を基材に塗布することを含む。粉体組成物は、熱の付与によって融解してコーティングフィルムを形成する可融性組成物である。例えば、静電塗装法等の当業者に既知の方法を用いて、約10〜約50マイクロメートル、好ましくは20〜40マイクロメートルのフィルム厚さに、粉体を塗布する。ある態様では、第1の粉体組成物を、金属基材の洗浄された(すなわち、プライマー塗布されていない)表面又は前処理された表面のいずれかに塗布し、すなわち、プライマー塗布されていないブラスト洗浄されている金属表面、又は当業者に既知の様々な方法、例えば、電着塗装等によって前処理されている表面に、第1の粉体組成物を塗布してもよい。別の態様では、粉体組成物は、屋外又は外部環境において使用される基材に塗布される。
【0019】
[019]
ある実施形態では、第1の粉体組成物は、少なくとも1種の高分子結合剤を含む。粉体組成物は、1種以上の顔料、不透明化剤、又は他の添加剤を任意に含んでもよい。
【0020】
[020]
好適な高分子結合剤は通常、フィルム形成樹脂と、任意に樹脂用硬化剤と、を含む。結合剤は、所望のフィルム特性をもたらす任意の樹脂又は樹脂の組み合わせから選択してもよい。高分子結合剤の好適な例としては、非結晶質及び結晶質の熱硬化性及び/又は熱可塑性材料が挙げられ、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、フルオロポリマー、シリコーン、その他樹脂類、又はこれらの組み合わせから製造されてもよい。粉体コーティング用途における高分子結合剤としての使用には、熱硬化性材料が好ましく、エポキシ、ポリエステル、及びアクリルが特に好ましい。必要に応じて、特定の用途にエラストマー樹脂を使用できる。ある態様では、特定の高分子結合剤、又は樹脂は、粉体コーティングされた基材の所望の最終用途に応じて、本明細書に記載される粉体組成物中に含まれる。例えば、ある高分子量ポリエステルは、優れた耐食性を示し、内装用途及び外装用途で用いられる基材への使用に好適である。同様に、非晶質ポリエステルは、明瞭性、色合い、耐化学性が所望される用途において有用である。
【0021】
[021]
好ましい結合剤の例として、エポキシド官能性化合物(例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、すなわち、TGIC)で硬化されるカルボキシル官能性ポリエステル樹脂、高分子エポキシ樹脂で硬化されるカルボキシル官能性ポリエステル樹脂、ヒドロキシアルキルアミドで硬化されるカルボキシル官能性ポリエステル樹脂、ブロック化イソシアネート又はウレトジオン(uretdione)で硬化されるヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、アミン(例えば、ジシアンジアミド)で硬化されるエポキシ樹脂、フェノール官能性樹脂で硬化されるエポキシ樹脂、カルボキシル官能性硬化剤で硬化されるエポキシ樹脂、高分子エポキシ樹脂で硬化されるカルボキシル官能性アクリル樹脂、ブロック化イソシアネート又はウレトジオンで硬化されるヒドロキシル官能性アクリル樹脂、フリーラジカル反応によって硬化される不飽和樹脂、及び唯一の結合剤として、又は有機樹脂と組み合わせて使用されるシリコーン樹脂が挙げられる。任意の硬化反応は、熱的に、又は放射線(例えば、UV、UV可視、可視光線、IR、近IR、及びeビーム)への曝露によって誘導され得る。
【0022】
[022]
好ましい実施形態において、本明細書に記載される高分子結合剤は、例えば、TGIC反応性ポリエステル樹脂等の超耐久性カルボキシ官能性ポリエステル樹脂である。反応性エポキシ官能基を有するトリアジン化合物であるTGICは、当業界では、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の酸官能性樹脂用硬化剤として知られている。ある態様では、本明細書に記載されるTGIC反応性ポリエステルは、結合剤樹脂の総重量に対して、最大約10重量%、より好ましくは、約5〜9重量%、最も好ましくは、約7〜8重量%のTGICを含む。好ましい態様では、TGIC反応性ポリエステルは、93:7のTGICである。これらのTGIC反応性樹脂は、高硬度、良好な耐化学性、良好な耐候性を有するものとして知られているが、可撓性及び耐衝撃性が低いことが難点である。
【0023】
[023]
ある実施形態では、粉末製剤は、非反応性線状ポリエステル樹脂を含む。好ましい態様では、本明細書に記載される粉体組成物に使用されるコイル樹脂は、線状ポリエステル、アクリレート変性ポリエステル、又はアルキド変性ポリエステルを含む。ある態様では、線状ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が、好ましくは、10,000〜25,000であり、より好ましくは、15,000〜20,000である高分子量樹脂である。ある態様では、線状ポリエステル樹脂は、製剤の総重量に対して、好ましくは、1〜10重量%、より好ましくは、3〜8重量%、最も好ましくは、4〜7重量%の量で存在する。非反応性線状ポリエステルは、典型的には、改善された可撓性を有するコーティングを得るために、粉体コーティング組成物中の添加剤として使用される。驚くべきことに、本明細書に記載される製剤及び方法で使用される場合、非反応性線状ポリエステルは、特にCCTにより示されるように、改善された耐食性を提供する。
【0024】
[024]
理論に制限されず、例えば、TGIC反応性ポリエステルから製造される外装用耐候性コーティング等のコーティングの耐食性は、従来のエポキシ系コーティング製剤よりも改善され得ると考えられている。典型的には、エポキシ系組成物は、外装用耐候性部分のプライマーコーティングとして塗布され、トップコートで100%被覆される必要があるが、これは、下層のエポキシ系プライマーが太陽光からの紫外線露光及びその後の腐食により劣化しないようにするためである。本明細書に記載される製剤及び方法は、驚くべきことに紫外線への暴露の際にも優れた腐食防止性を提供する。更に、プライマーとして使用される場合、本明細書に記載される製剤から製造されるコーティングは、トップコートで100%被覆する必要はなく、実際、トップコートがない場合でも驚くほどに腐食を防止する。
【0025】
[025]
ある実施形態では、本明細書に記載される粉末製剤は、少なくとも1つの湿潤添加剤又は分散添加剤を含む。ある態様では、添加剤は、数平均分子量(Mn)が、好ましくは、約10,000〜25,000、より好ましくは、15,000〜20,000である高分子量である。別の態様では、添加剤は、例えば、ポリマー鎖に多数のアミノ基及び/又はアミド基を有する不飽和ポリマー材料及びポリエステル等を含む不飽和ポリマー化合物の塩である。好ましい態様では、添加剤は、不飽和ポリアミンアミドの塩及び低分子量(Mn≦10000)のポリエステルである。本明細書に記載される市販の添加剤の例としては、例えば、湿潤剤のAnti−Terra Uラインが挙げられる。添加剤は、好ましくは、溶剤を含有せず、製剤の総重量に対して、好ましくは、約0.1〜1.0重量%、より好ましくは、0.2〜0.5重量%、最も好ましくは、0.3〜0.6重量%の量で存在する。
【0026】
[026]
ある実施形態では、本明細書に記載される粉体組成物は、例えば、接着促進剤等の他の添加剤を含む。理論に制限されず、水又は水分に曝された場合のコーティングの脱着が防止され、接着促進剤によって脱着が減少した場合、コーティングの耐食性が改善すると考えられる。接着促進剤はまた、製剤中の本来は非相溶性を示すポリマー間の相溶性を促進することができる。したがって、本明細書に記載される製剤、方法、及びシステムにおいて使用される接着促進剤としては、例えば、アミン類等の単官能性、二官能性、多官能化性合物、例えば、酸類、酸無水物類等のカルボキシ官能性化合物、例えば、フェノール類、アルコール類等のヒドロキシ官能性化合物、チオール類、有機金属化合物、誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、接着促進剤は、例えば、接着促進剤のChartsilライン(Chartwell International(Massachusetts))を含む、ハイブリッド型カルボキシ官能性及びヒドロキシ官能性金属有機化合物である。好ましい態様では、本明細書に記載される粉末製剤は、粉末製剤の総重量に対して、最大約3重量%、好ましくは、約0.1〜2重量%、より好ましくは、約0.5〜約1重量%の接着促進剤を含む。
【0027】
[027]
粉体組成物は、他の添加剤を含んでよい。これら他の添加剤は、粉体コーティングの塗布性、コーティングの融解性及び/若しくは硬化性、又は最終コーティングの性能若しくは外観を改善できる。粉体中で有用であり得る任意の添加剤の例としては、硬化触媒、酸化防止剤、着色安定剤、スリップ及び擦傷添加剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、光開始剤、導電性添加剤、摩擦帯電添加剤、防食添加剤、充填剤、質感剤、脱ガス添加剤、流動性調整剤、チキソトロープ剤、並びに縁部被覆添加剤が挙げられる。
【0028】
[028]
本明細書に記載される粉体コーティング組成物は、当業界で既知の方法で製造される。高分子結合剤は、添加剤と共に乾式混合され、その後、押出成形機を通過させることによって典型的に融解ブレンドされる。得られる押出物を冷却することによって凝固し、続いて粉砕又は微粉砕して粉体を形成する。他の方法を使用してもよい。例えば、1つの代替法では、液体二酸化炭素に可溶性の結合剤を用いる。この方法では、乾燥成分を液体二酸化炭素中で混合し、次いで、噴霧して粉体粒子を形成する。必要に応じて、粉体を選別、つまりふるい分けして、所望の粒径及び/又は粒径分布を得てもよい。
【0029】
[029]
得られる粉体は、塗布プロセスによって効率的に使用できる大きさである。実際に、10マイクロメートル未満の大きさの粒子は、従来の静電塗装法を用いて効率的に塗布するのが困難である。したがって、約25マイクロメートル未満の中央粒径を有する粉体は、典型的に小粒子を大部分有するため、静電的に塗装するのが困難である。好ましくは、粉砕を調節し(又はふるい分け、つまり選別を実施し)、約25〜150マイクロメートル、より好ましくは30〜70マイクロメートル、最も好ましくは30〜50マイクロメートルの中央粒径を有する粉体を得る。
【0030】
[030]
任意で、本発明において他の添加剤を使用してよい。上記のように、これら任意の添加剤は、押出前に添加してベース粉体の一部としてもよく、又は押出後に添加してもよい。押出後に添加するのに好適な添加剤としては、押出前に添加した場合に良好に機能しないであろう材料、押出装置又は他の添加剤に対する、更なる摩耗の原因となるであろう材料が挙げられる。
【0031】
[031]
更に、任意の添加剤として、押出プロセス中に添加可能であるが、後に加えてもよい材料が挙げられる。添加剤は、単独で、又は他の添加剤と組み合わせて添加され、粉体最終物、つまり粉体組成物への所望の影響をもたらすことができる。これら他の添加剤によって、粉体の塗布性、融解性及び/若しくは硬化性、又は最終性能若しくは外観を改善できる。有用であり得る任意の添加剤の例として、硬化触媒、酸化防止剤、着色安定剤、スリップ及び擦傷添加剤、光開始剤、導電性添加剤、摩擦帯電添加剤、防食添加剤、充填剤、質感剤、脱ガス添加剤、流動性調整剤、チキソトロープ剤、及び縁部被覆添加剤が挙げられる。
【0032】
[032]
他の好ましい添加剤としては、ゴム引き剤、摩擦力低減剤、及びマイクロカプセル等の性能向上添加剤が挙げられる。更に、添加剤は、研磨剤、感熱性触媒、多孔質最終コーティングの形成を促進する、又は粉体の濡れ性を改善する剤であり得る。
【0033】
[033]
粉体組成物の調製技術は、当業者に既知である。混合は、任意の入手可能な機械的ミキサーによって、又は手による混合によって実施できる。考えられるミキサーの幾つかの例としては、Henschelミキサー(例えば、Henschel Mixing Technology(Green Bay,WI)から入手可能)、Mixacoミキサー(例えば、Triad Sales(Greer,SC)又はDr.Herfeld GmbH(Neuenrade,Germany)から入手可能)、Marionミキサー(例えば、Marion Mixers,Inc.(3575 3rd Avenue,Marion,IA)から入手可能)、反転ミキサー、Littlefordミキサー(Littleford Day,Inc.)、横軸ミキサー、及びボールミルが挙げられる。好ましいミキサーとしては、最も容易に洗浄されるものが挙げられるだろう。
【0034】
[034]
粉体コーティングは、通常、多工程プロセスで製造される。樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、及び充填剤を含み得る様々な成分を乾式ブレンドして、プレミックスを形成する。次いで、このプレミックスを押出成形機内に送り込み、熱、圧力、及び剪断力の組み合わせを用いて可融性成分を融解し、全ての成分を十分に混合する。押出物を脆い固体になるまで冷却し、次いで、粉体に粉砕する。所望のコーティング最終用途に応じて、粉砕条件を典型的に調節し、中央粒径が約25〜150マイクロメートルの粉体を得る。
【0035】
[035]
その後、流動床及び噴霧アプリケータの使用等の様々な手段によって、最終粉体を物品に塗布してよい。最も一般的には、静電塗装プロセスが用いられ、この場合、粉体粒子が物品に引き寄せられてくっつくように、粒子を静電気的に帯電させて、下地塗り済み物品上に噴霧する。コーティング後、物品を加熱する。この加熱工程により、粉体粒子が融解して互いに流動し、物品をコーティングする。任意で、連続的な又は追加の加熱を用いて、コーティングを硬化させてよい。コーティングのUV硬化等の別の代替法を使用してよい。
【0036】
[036]
コーティングは任意に硬化され、このような硬化は、連続的な加熱、後続の加熱、又は基材中の残留熱によって起こり得る。本発明の別の実施形態では、放射線硬化性粉体コーティングベースが選択される場合、比較的短い、又は低温の加熱サイクルによって粉体を融解でき、次いで、放射線に曝露して硬化プロセスを開始してよい。この実施形態の一例は、UV硬化性粉体である。放射線硬化の別の例としては、UV可視、可視光線、近IR、IR及びeビームの使用が挙げられる。
【0037】
[037]
本明細書に記載される組成物及び方法を、様々な基材と共に使用できる。典型的には、本明細書に記載される粉体コーティング組成物を使用して、プライマー塗布されていない金属、ブラスト洗浄されている金属、及びメッキされた基材、電着塗装処理された金属基材、及び粉体コーティング組成物と同じ色である基材を含む前処理されている金属を含む(これらに限定されない)金属基材をコーティングする。金属基材の典型的な前処理として、例えば、リン酸鉄、リン酸亜鉛等での処理が挙げられる。金属基材は、当該技術分野において既知の様々な標準的プロセスを用いて洗浄、かつ前処理できる。例として、基材上に清潔な汚染物質を含まない表面をもたらす、リン酸鉄処理、リン酸亜鉛処理、ナノセラミック処理、様々な周囲温度による前処理、ジルコニウムを含む前処理、酸洗い、又は当該技術分野において既知の任意のその他方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
[038]
本明細書に記載されるコーティング組成物及び方法は、化成被膜、すなわち、化成被膜で処理された部分又は表面に限定されない。その上、本明細書に記載されるコーティング組成物は、例えば、電着塗装法、めっき法等を含む当業者に既知の様々なプロセスによって、予めコーティングされた基材に塗布できる。本明細書に記載される組成物でコーティングされる基材が、常に未処理の、つまりプライマー塗布されていない金属基材であることは、想定されていない。
【0039】
[039]
好ましくは、コーティングされた基材は、所望の物理的及び機械的特性を有する。典型的には、最終フィルムコーティングは、25〜200マイクロメートル、好ましくは50〜150マイクロメートル、より好ましくは75〜125マイクロメートルの厚さを有するであろう。
【0040】
[040]
従来、コーティングにより耐食性の改善がもたらされるため、エポキシ系粉体コーティングが、外装用耐候性部分に使用されている。しかしながら、かかるエポキシ系コーティングは、紫外線に曝されると、つまり、太陽光に曝されると、大きく劣化する。したがって、エポキシ系コーティングは、典型的には、プライマーとして使用され、耐候性又は耐久性があるトップコートで被覆される。これにより、バリアが形成され、紫外線劣化に対するコーティングの耐性が改善される。しかしながら、腐食及びその後の接着性の喪失を防ぐために、トップコートは、100%被覆するように塗布されなければならない。驚くべきことに、本明細書に記載される製剤、方法、及びシステムは、TGIC反応性樹脂を添加剤パッケージと組み合わせ、紫外線劣化に抵抗するトップコートの塗布を必要としない耐食性コーティングを生成する。
【0041】
[041]
本明細書に記載される方法及びシステムにより生成されたコーティングの耐食性は、サイクル腐食試験によって評価される。サイクル腐食試験は、加速型腐食試験の標準的な方法である。典型的には、試験パネルは、食塩水、高温、並びに/又は湿度及び乾燥へ間欠的に曝され、そのサイクルが繰り返される。このタイプの試験は、自然の気候条件下で観測される劣化又は腐食をいつも再現できるわけではない従来の塩水噴射法よりも好ましい。本明細書に記載される粉体組成物は、スクライブからのクリープにより測定されるように、たとえ屋外条件に長期間曝されても最適な耐食性を有するコーティングを生成する。例えば、金属基材に亘って塗布された場合、粉体コーティングが剥離することは極めて少ない。以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。別途記載のない限り、全ての部及びパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0042】
[042]
粉体コーティング組成物#1〜#4を、TGIC及びカルボキシ官能性ポリエステル樹脂を80%製剤重量で結合剤系として使用し、標準的な方法によって調製した。組成物#1をTGICにカルボキシ官能性ポリエステル樹脂を80%処方重量で組み合わせることによって調製する。同様に、組成物#2をTGICに飽和カルボキシ官能性ポリエステル樹脂を80%処方重量で組み合わせることによって調整する。線状ポリエステル樹脂、分散添加剤、及び接着促進剤を含む、本明細書に記載される添加剤パッケージを、製剤の総重量に対して表1に示される量で組成物#1及び#2へ加え、組成物#3及び#4を得た。コーティング組成物#1〜#4を冷間圧延鋼(CRS)試験パネルに塗布して硬化し、粉体コーティングを形成した。金属に対して10mmのスクライブを各試験パネルに形成し、パネルは、標準的なCCT条件下でサイクル腐食試験を20サイクル受けた。試験結果が表1に示され、本明細書に記載される添加剤パッケージが改善された耐食性をもたらすことを示している。尚、線状ポリエステルのみを添加剤として使用した場合もまた、改善された耐食性がもたらされている(結果は示されていない)。
【0043】
【表1】
以下、出願時の特許請求の範囲の内容を記載する。
[1]
外装用耐候性粉体コーティングの耐食性を改善させるシステムであって、粉末製剤を含み、該製剤は、
TGIC反応性高分子結合剤と、
該製剤の総重量に対して、約1〜10重量%の高分子量(Mn)の飽和線状ポリエステルと、を含み、サイクル腐食試験を受けると、該処方から形成される硬化コーティングの耐食性は、標準的な粉体コーティングより40%だけ改善する、システム。
[2]
外装用耐候性粉体コーティングの耐食性を改善する製剤であって、
TGIC反応性高分子結合剤と、
該製剤の総重量に対して、約1〜10重量%の高分子量(Mn)の飽和線状ポリエステルと、を含み、サイクル腐食試験を受けると、該処方から形成される硬化コーティングの耐食性は、標準的な粉体コーティングより40%だけ改善する、製剤。
[3]
外装用耐候性粉体コーティングの耐食性を改善する方法であって、該方法は、
基材を提供すること、
粉体コーティング製剤を塗布することであって、該製剤は、
TGIC反応性高分子結合剤と、
該製剤の総重量に対して、約1〜10重量%の飽和高分子量(Mn)の線状ポリエステルと、を含む、
該塗布された粉体コーティング製剤を硬化して、硬化コーティングを形成すること、および
該硬化コーティングをサイクル腐食試験によって試験すること、
を含み、サイクル腐食試験を受けると、該硬化コーティングの耐食性は、標準的な粉体コーティングより40%だけ改善する、方法。
[4]
前記粉体コーティング製剤は、
最大約0.5重量%の不飽和ポリアミンアミドの塩及び低分子量(Mn)のポリエステルと、
最大約2重量%のハイブリッド型カルボキシ/ヒドロキシ官能性金属有機接着促進剤と、を含む、前記1〜3のいずれか一項に記載の方法、製剤、又はシステム。
[5]
前記粉体コーティング製剤は、
約0.1〜約0.3重量%の不飽和ポリアミンアミドの塩及び低分子量(Mn)のポリエステルと、
約0.5〜約1重量%のハイブリッド型カルボキシ/ヒドロキシ官能性金属有機接着促進剤と、を含む、前記1〜4のいずれか一項に記載の方法、製剤、又はシステム。
[6]
前記粉体コーティング製剤は、
約2〜約5重量%の前記線状ポリエステルと、
約0.1〜約0.3重量%の不飽和ポリアミンアミドの塩及び低分子量(Mn)のポリエステルと、
約0.5〜約1重量%のハイブリッド型カルボキシ/ヒドロキシ官能性金属有機接着促進剤と、を含む、前記1〜5のいずれか一項に記載の方法、製剤、又はシステム。