特許第6254197号(P6254197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6254197ポリイミド前駆体及びそれを含有する樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254197
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体及びそれを含有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20171218BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20171218BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
   B32B27/34
【請求項の数】26
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2015-562686(P2015-562686)
(86)(22)【出願日】2014年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2014066829
(87)【国際公開番号】WO2015122032
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-26601(P2014-26601)
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】宮本 佳季
(72)【発明者】
【氏名】米谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 康史
(72)【発明者】
【氏名】金田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏章
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/107429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73
C08L 79
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体と、溶媒とを含有する、樹脂組成物であって、
前記ポリイミド前駆体は、下記一般式(A)で表される構造を有し、且つ
ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造と;
テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つの脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有し、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であり、前記樹脂組成物中の固形分濃度が3〜50質量%であり、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は:
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物から選択される少なくとも一つと;
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つとからなる、樹脂組成物。
【化1】
{Xは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造であり;
は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【請求項2】
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(B)の構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】
{Xは、前記式(A)におけるのと同じであり、
は、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【請求項3】
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が20〜100%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が30〜100%である、請求項1から3いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物1が、ピロメリット酸二無水物(PMDA)である、請求項1から4いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物2が、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から選択される少なくとも一つである、請求項1から4いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジアミン由来構造が、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)に由来する構造である、請求項1から6いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物及びビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つである、請求項1から7いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)から選択される少なくとも一つである、請求項1から8いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリイミド前駆体が、
前記TFMB由来の構造を全ジアミン由来構造中60モル%以上含み、
前記PMDA、前記ODPA、前記6FDA、前記CBDA及び前記H−PMDAから選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物由来の構造を、合わせて全テトラカルボン酸二無水物由来構造中60モル%以上含む、
請求項1から9いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリイミド前駆体が、
前記PMDAに由来する構造を全テトラカルボン酸二無水物由来構造中1〜70モル%含み、且つ
前記ODPA及び6FDAから選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物由来の構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中1〜50モル%含む、
請求項1から10いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記PMDA、前記ODPA、前記6FDA、前記CBDA及び前記H−PMDAのそれぞれに由来する構造のモル数の和と、前記TFMB由来の構造のモル数との比{PMDA+ODPA+6FDA+CBDA+H−PMDA)/TFMB}が、100/99.9〜100/95である、請求項1から10いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリイミド前駆体を溶媒に溶解して支持体の表面に展開した後、窒素雰囲気下での加熱によりイミド化して得られるポリイミドフィルムの黄色度が10以下、線膨張係数が25ppm以下、且つ、20μm膜厚におけるフィルムの伸度が15%以上である、請求項1から12いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
フレキシブルデバイスの製造に用いられる、請求項1から13いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
さらにアルコキシシラン化合物を含有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
さらに界面活性剤を含有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
ポリイミド前駆体と溶媒とを含有する樹脂組成物を支持体の表面上に展開して塗膜を形成し、次いで、前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化して形成される、ポリイミドフィルムの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体は、下記一般式(A)で表される構造を有し、且つ
ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造と;
テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つの脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有し、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であり、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は:
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと;
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つとからなる、方法。
【化3】
{Xは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造であり;
は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【請求項18】
前記樹脂組成物が、さらにアルコキシシラン化合物を含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂組成物が、さらに界面活性剤を含有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
ポリイミド前駆体と溶媒とを含有する樹脂組成物を支持体の表面上に展開して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する加熱工程と、
前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離してポリイミドフィルムを得る剥離工程と、
を含む、ポリイミドフィルムの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体は、下記一般式(A)で表される構造を有し、且つ
ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造と;
テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つの脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有し、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であり、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は:
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと;
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つとからなる、方法。
【化4】
{Xは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造であり;
は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【請求項21】
支持体及び該支持体上に形成されたポリイミド膜を具備する積層体の製造方法であって、
前記方法は、前記支持体の表面上に、ポリイミド前駆体及び溶媒を含む樹脂組成物を展開して塗膜を形成し、次いで前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成することを含み、
前記ポリイミド前駆体は、下記一般式(A)で表される構造を有し、且つ
ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造と;
テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つの脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有し、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であり、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は:
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと;
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つとからなる、方法。
【化5】
{Xは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造であり;
は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【請求項22】
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との共重合体のイミド化生成物を含む、ポリイミドフィルムであって、
前記ジアミンが、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つであり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つと、
からなり、
当該ポリイミドフィルム上に、350℃においてCVD法を用いて無機膜を形成した時、
該無機膜表面を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した表面粗さが0.01〜50nmであることを特徴とする、前記ポリイミドフィルム。
【請求項23】
前記ジアミンが、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)であり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から選択される少なくとも一つと
からなる、
請求項22に記載のポリイミドフィルム。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のポリイミドフィルムを含む、フレキシブルデバイス。
【請求項25】
請求項20に記載のポリイミドフィルムの製造方法を含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項26】
請求項21に記載の積層体の製造方法を含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体及びそれを含有する樹脂組成物に関する。該ポリイミド前駆体は、例えば、フレキシブルデバイスのための基板として用いることができる。
本発明は、ポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに、積層体及びその製造方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、一般に、ポリイミド樹脂から成るフィルムである。ポリイミド樹脂は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを溶液重合してポリイミド前駆体を製造した後、熱イミド化又は化学イミド化して製造される高耐熱樹脂である。前記熱イミド化は高温における閉環脱水により、前記化学イミド化は触媒による閉環脱水により、それぞれ行われる。
【0003】
ポリイミド樹脂は、不溶及び不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性等の優れた特性を有している。従ってポリイミド樹脂は、例えば絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜等の、電子材料を含む広範囲な分野で用いられている。最近は、液晶配向膜等のディスプレイ材料、光ファイバー等にも用いられている。
【0004】
しかしながら、ポリイミド樹脂は、その高い芳香環密度によって茶色又は黄色に着色し、可視光線領域における透過率が低いため、透明性が要求される分野に用いることは困難である。
【0005】
この点、特許文献1には、特定の構造を含むテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを用いることにより、透過率及び色相の透明度を向上させた、新規な構造のポリイミドを製造したとの報告がある。
【0006】
また、特許文献2及び特許文献3には、それぞれ、透明性を付与するために脂環構造を導入したポリイミドフィルムが開示されている。
さらに、特許文献4には、テトラカルボン酸二無水物として、特定の芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂環式テトラカルボン酸二無水物とを併用することにより、黄色度(以下、「YI値」ともいう)の低いポリイミド樹脂が得られるとの報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−198843号公報
【特許文献2】特開2005−336243号公報
【特許文献3】特開2003−155342号公報
【特許文献4】韓国特許公開第10−2013−0077946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたポリイミドの機械的特性及び熱特性は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜及びフレキシブルディスプレイ基板として用いるのに十分ではない。
【0009】
特に、特許文献1に記載されたポリイミドは線膨張係数(以下、「CTE」とも記す)が高いことを特徴としている。CTEが高い樹脂は、これをフィルムとして用いる場合、温度変化によって生じるフィルムの膨張及び収縮の程度が大きくなる。従って、例えばTFT工程等にCTEが高いフィルムを用いると、素子材料である無機物膜に損傷が生じ、素子能力が低下することとなる。従って、TFTを形成する基板、カラーフィルターを形成する基板、配向膜、フレキシブルディスプレイ用透明基板等に用いられるポリイミド樹脂は、無色透明で且つCTEが低くなければならない。
【0010】
また、特許文献2に記載されたポリイミドでは、透明性は有するもののCTEが高く、さらに破断伸び率が低いという欠点がある。破断伸び率が低い場合、フレキシブルデバイスを取り扱う際にフレキシブル基板に損傷が生じるから、デバイスとして使用できない。
特許文献3に記載されたポリイミドの場合には、多環の芳香族ジアミンを使うことによって靱性を付与している。しかしこのポリイミドもCTEが高いから、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜又はフレキシブルディスプレイ基板として用いるためには適当ではない。
そして、特許文献4に記載されたポリイミドの場合には、YI値は確かに低い。しかしながら、本発明者等が検討したところ、CTEが高く、伸度が小さいため、ディスプレイプロセスに適用するには改良の余地がある(後述の比較例22〜24参照)。
【0011】
本発明は、上記説明した問題点に鑑みてなされたものであり、無色透明であるとともに、CTEが低く、且つ、伸度に優れたポリイミドフィルムを製造することができるポリイミド前駆体及びそれを含有する樹脂組成物、ポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに、積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し実験を重ねた。その結果、
特定構造のポリイミド前駆体を含む樹脂組成物(ワニス)は、保存安定性に優れること;
当該組成物を硬化して得られるポリイミドフィルムは、優れた透明性、低線膨張係数及び高い伸度を有すること;並びに
当該ポリイミドフィルム上に無機膜を形成した積層体は、Hazeが小さく、水蒸気透過率が優れていること
を見出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
【0013】
[1]
下記一般式(A)で表される構造を有し、且つ
ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造と;
テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つの脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有し、そして
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であることを特徴とする、ポリイミド前駆体。
【0014】
【化1】
【0015】
{Xは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造であり;
は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
[2]
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(B)の構造を有する、[1]に記載のポリイミド前駆体。
【0016】
【化2】
【0017】
{Xは、前記式(A)におけるのと同じであり、
は、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【0018】
[3]
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が20〜100%である、[1]又は[2]に記載のポリイミド前駆体。
【0019】
[4]
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が30〜100%である、[1]から[3]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0020】
[5]
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つと、
からなる、[1]から[4]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0021】
[6]
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物1が、ピロメリット酸二無水物(PMDA)である、[1]から[5]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0022】
[7]
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物2が、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から選択される少なくとも一つである、[1]から[5]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0023】
[8]
前記ジアミン由来構造が、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)に由来する構造である、[1]から[7]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0024】
[9]
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物及びビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つである、[1]から[8]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0025】
[10]
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)から選択される少なくとも一つである、[1]から[9]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0026】
[11]
前記TFMB由来の構造を全ジアミン由来構造中60モル%以上含み、
前記PMDA、前記ODPA、前記6FDA、前記CBDA及び前記H−PMDAから選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物由来の構造を、合わせて全テトラカルボン酸二無水物由来構造中60モル%以上含む、
[1]から[10]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0027】
[12]
前記PMDAに由来する構造を全テトラカルボン酸二無水物由来構造中1〜70モル%含み、且つ
前記ODPA及び6FDAから選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物由来の構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中1〜50モル%含む、
[1]から[11]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0028】
[13]
前記PMDA、前記ODPA、前記6FDA、前記CBDA及び前記H−PMDAのそれぞれに由来する構造のモル数の和と、前記TFMB由来の構造のモル数との比{PMDA+ODPA+6FDA+CBDA+H−PMDA)/TFMB}が、100/99.9〜100/95である、[1]から[11]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0029】
[14]
溶媒に溶解して支持体の表面に展開した後、窒素雰囲気下での加熱によりイミド化して得られるポリイミドフィルムの黄色度が10以下、線膨張係数が25ppm以下、且つ、20μm膜厚におけるフィルムの伸度が15%以上である、[1]から[13]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0030】
[15]
フレキシブルデバイスの製造に用いられる、[1]から[14]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
【0031】
[16]
[1]から[15]いずれか一項に記載のポリイミド前駆体と、溶媒と、を含有することを特徴とする、樹脂組成物。
【0032】
[17]
さらにアルコキシシラン化合物を含有する、[16]に記載の樹脂組成物。
【0033】
[18]
さらに界面活性剤を含有する、[16]又は[17]に記載の樹脂組成物。
【0034】
[19]
[16]から[18]いずれか一項に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に展開して塗膜を形成し、次いで、前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化して形成されることを特徴とする、ポリイミドフィルム。
【0035】
[20]
[16]から[18]いずれか一項に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に展開して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する加熱工程と、
前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離してポリイミドフィルムを得る剥離工程と、
を含むことを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
【0036】
[21]
支持体及び該支持体上に形成されたポリイミド膜を具備し、そして
前記支持体の表面上に[16]から[18]いずれか一項に記載の樹脂組成物を展開して塗膜を形成し、次いで前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成して得られることを特徴とする、積層体。
【0037】
[22]
支持体の表面上に[16]から[18]いずれか一項に記載の樹脂組成物を展開して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する加熱工程と、
を含む、支持体及び該支持体上に形成されたポリイミド膜を具備する積層体の製造方法。
【0038】
[23]
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の共重合体とから製造されるポリイミドフィルムであって、
前記ジアミンが、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つであり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つと、
からなり、
当該ポリイミドフィルム上に、350℃においてCVD法を用いて無機膜を形成した時、
該無機膜表面を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した表面粗さが0.01〜50nmであることを特徴とする、前記ポリイミドフィルム。
【0039】
[24]
前記ジアミンが、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)であり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から選択される少なくとも一つと
からなる、
[23]に記載のポリイミドフィルム。
[25]
[23]又は[24]に記載のポリイミドフィルムを含む、フレキシブルデバイス。
[26]
[20]に記載のポリイミドフィルムの製造方法を含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
[27]
[22]に記載の積層体の製造方法を含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るポリイミド前駆体を含む樹脂組成物(ワニス)は、保存安定性に優れる。また、当該組成物から得られるポリイミドフィルムは、無色透明であり、線膨張係数が低く、且つ、伸度に優れる。当該ポリイミドフィルムに無機膜を形成した積層体は、Hazeが小さく、水蒸気透過率に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0042】
<ポリイミド前駆体>
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、
下記一般式(A)で表される構造を有し、且つ
ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン及び4,4’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造と;
テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つの脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有し、そして
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であることを特徴とする。
【0043】
【化3】
【0044】
{Xは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造であり;
は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
【0045】
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、下記一般式(B)の構造を有することが好ましい。
【0046】
【化4】
【0047】
{Xは、前記式(A)と同じであり、
は、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造である。}
そして、本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、前述の通り、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%である。すなわち、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合の少なくとも一部がイミド化されたイミド化ポリアミド酸である。
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合がイミド化されたイミド化ポリアミド酸構造をとるためには、例えば、
先ず脂環式テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応を行ってポリアミド酸を得た後に、或いはポリアミド酸を得ると同時に、該ポリアミド酸のアミド結合をイミド化し、
次いで、その他のテトラカルボン酸二無水物(本実施の形態の場合は芳香族テトラカルボン酸二無水物)とジアミンとの反応を継続する方法によることができる。
【0048】
初めに脂環式テトラカルボン酸二無水物を反応させることは、ポリイミド前駆体の分子量を大きくする観点、及び得られるポリイミドフィルムの透明性を高くするとの観点から好ましい。そして、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有するポリイミド(前駆体)の分子量を大きくするためには、合成温度を、通常60〜100℃であるのを、150〜210℃まで上げる必要がある。こうして合成温度を上げることにより、結果として脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化が起こり、脂環式酸二無水物に由来する部分のイミド基濃度(イミド化率)が大きくなる。ここで脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率は、ポリイミド前駆体を含む組成物(ワニス)の保存安定性、並びに得られるポリイミドフィルムの伸度及びYIの観点から、10〜100%が好ましく、20〜100%がより好ましく、30〜100%がさらに好ましい。
このように初めに脂環式テトラカルボン酸二無水物を反応させるのは、脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族テトラカルボン酸二無水物を同時に添加、もしくは芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加したのち脂環式テトラカルボン酸二無水物を添加し、150〜210℃の温度で合成した場合は、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する部分のアミド結合のイミド化が急激に起こり、ポリマーが析出するため、不適応だからである。
本実施の形態におけるポリイミド前駆体の詳しい合成方法は後述する。
【0049】
以下、各構造について詳細に説明する。
<テトラカルボン酸二無水物由来構造>
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造と;
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
を有する。
【0050】
ここで、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン及びビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つであることが好ましい。その中でも、CBDA、H−PMDA、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物及びビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つであることが、得られるポリイミドフィルムのCTEの観点から好ましく、そして、CBDA及びH−PMDAから選択される少なくとも一つであることが、コスト並びに得られるポリイミドフィルムのYI及び透明性の観点からより好ましく、コストの観点からH−PMDAがさらに好ましい。
【0051】
前記1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)は、下記式(1)〜(3)
【0052】
【化5】
【0053】
のそれぞれで表わされる異性体のいずれであってもよいし、これらの2種以上からなる混合物であってもよい。
【0054】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、
芳香族テトラカルボン酸二無水物1として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物から選択される少なくとも一つと、
芳香族テトラカルボン酸二無水物2として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一つと
からなることが好ましい。
ここで、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物1は、主に、得られるポリイミドフィルムの熱特性、機械特性等の向上に寄与するために用いられ、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物2は、ポリイミドフィルムの透明性等向上に寄与するために用いられる。
【0055】
芳香族テトラカルボン酸二無水物1としては、PMDAを用いることが、得られるポリイミドフィルムのCTEの観点からより好ましい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物2としては、ODPA及び6FDAから選択される少なくとも一つを用いることが、得られるポリイミドフィルムのYI及び透明性の観点からより好ましく、6FDAを用いることが、ポリイミドフィルムのCTEの観点からさらに好ましい。
【0056】
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中5〜60モル%有し、
芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中40〜95モル%有することが好ましく;
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中5〜60モル%有し、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物1に由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中20〜80モル%有し、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物2に由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中5〜60モル%有することがより好ましい。
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、前記PMDA、前記ODPA、前記6FDA、前記CBDA及び前記H−PMDAから選択される少なくとも一つのテトラカルボン酸二無水物由来の構造を、合わせて全テトラカルボン酸二無水物由来構造中60モル%以上含むものであることが、さらに好ましい。
【0057】
そして、ポリイミドフィルムの好適な黄色度、CTE及び破断強度を得る観点から、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)に由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中1〜70モル%有し、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)から選択される少なくとも一つに由来する構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来構造中1〜50モル%有することが、特に好ましい。
【0058】
<ジアミン由来構造>
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、ジアミン由来構造として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド及び4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエートから選択される少なくとも一つのジアミンに由来する構造を有する。この中でも、TFMBが、得られるポリイミドフィルムのYI及び透明性の観点から好ましい。
特に好ましくは、前記TFMB由来の構造を全ジアミン由来構造中60モル%以上含むことである。
【0059】
<テトラカルボン酸二無水物由来構造とジアミン由来構造との比>
上記テトラカルボン酸二無水物由来構造のモル数の和と、ジアミン由来構造のモル数の和の比は、100/99.9〜100/95であることが、ポリイミドフィルムの透明性、熱特性及び機械特性の観点から好ましい。より具体的には、PMDA、ODPA、6FDA,CBDA及びH−PMDAのそれぞれに由来する構造のモル数の和と、TFMBに由来する構造のモル数との比{(PMDA+ODPA+6FDA+CBDA+H−PMDA)/TFMB}が、100/99.9〜100/95であることが、より好適な黄色度、CTE及び破断強度を有するポリイミドフィルム得る観点から好ましい。
【0060】
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
本実施の形態に係るポリイミド前駆体の重量平均分子量は、5,000以上1,000,000以下であることが好ましく、50,000以上500,000以下であることがより好ましく、70,000以上250,000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が5,000以上であることにより、得られるポリイミドフィルムの強伸度が改善され、機械物性に優れることとなる。特に、低いCTE及び低い黄色度(YI値)を得る観点から、分子量は50,000以上であることがより好ましい。重量平均分子量Mwが1,000,000以下であることにより、該ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を、所望する膜厚にて滲み無く塗工できることとなる。
ここで、重量平均分子量とは、単分散ポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された分子量分布において、各分子の分子量に当該分子の質量を乗じた値の総和を、全分子の質量の総和で除した値をいう。
【0061】
<ポリイミド前駆体の合成方法>
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、上述のテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分を、好ましくは溶媒に溶解して反応させることにより、ポリイミド前駆体及び溶媒を含有する溶液として製造することができる。反応時の条件は、特に限定されないが、例えば、反応温度は−20〜250℃、反応時間は2〜48時間の条件を例示することができる。反応時の周囲雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気であることが好ましい。
【0062】
前記溶媒は、生成する重合体を溶解する溶媒であれば、特に限定されない。公知の反応溶媒として、例えばm−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、エクアミドM100(商品名:出光興産社製)及びエクアミドB100(商品名:出光興産社製)から選ばれる一種以上の極性溶媒が有用である。このうち、好ましくは、NMP、DMAc、エクアミドM100及びエクアミドB100から選ばれる一種以上である。その他、上記の溶媒に代えて、或いは上記の溶媒とともに、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶媒、又は、γ−ブチロラクトンのような低吸収性溶媒を用いてもよい。
【0063】
前記ポリイミド前駆体は、ポリアミド酸のうちの少なくとも脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合の一部が閉環脱水されたイミド化ポリアミド酸である。
アミド結合を閉環脱水する工程としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば熱イミド化又は化学イミド化を採用することができる。
熱イミド化は、より具体的には、例えば以下の方法によることができる。先ず、ジアミンを適当な重合溶媒中に溶解及び/又は分散し、これにテトラカルボン酸二無水物を添加し、水と共沸する溶媒(例えばトルエン等)を加える。そして、メカニカルスターラーを用い、副生する水を共沸除去しながら、0.5時間〜96時間、好ましくは0.5時間〜30時間加熱撹拌する。加熱温度は、好ましくは100℃を超え250℃以下であり、好ましくは130〜230℃であり、より好ましくは150〜210℃である。この時、モノマー濃度は0.5質量%以上95質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以上90質量%以下である。
【0064】
化学イミド化は、公知のイミド化触媒を用いて行うことができる。イミド化触媒としては特に制限されないが、例えば
無水酢酸のような酸無水物;
γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−テトロン酸、γ−フタリド、γ−クマリン、γ−フタリド酸のようなラクトン化合物;
ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエチルアミンのような三級アミン
等が挙げられる。イミド化触媒は、必要に応じて1種のみを用いることができ、あるいは2種以上の混合物であってもよい。この中でも特に、反応性の高さの観点からγ−バレロラクトンとピリジンとの混合系が特に好ましい。
イミド化触媒の添加量としては、ポリアミド酸を100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0065】
アミド結合の閉環脱水は、次反応への影響を最小とする観点から、無触媒で行う熱イミド化によることが、特に好ましい。
本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、
先ず脂環式テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応を、上述の熱イミド化の条件下で行って、イミド化されたポリアミド酸を得て、
次いで、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを追加添加して、好ましくは100℃以下において反応を継続する方法
によって合成することが最も好ましい。
【0066】
上記のようにして、ポリイミド前駆体を含有する溶液が得られる。
該溶液は、これをそのまま樹脂組成物の調製に供しても良く、或いは
該溶液中に含有されるポリイミド前駆体を単離精製した後に、樹脂組成物の調製に供しても良い。
【0067】
<その他の添加剤>
本実施の形態に係る樹脂組成物は、上記のようなポリイミド前駆体及び溶媒を含有するが、必要に応じてその他の添加剤をさらに含有しても良い。
このようなその他の添加剤としては、例えばアルコキシシラン化合物、界面活性剤、レべリング剤等を挙げることができる。
【0068】
(アルコキシシラン化合物)
本実施の形態に係る樹脂組成物から得られるポリイミドがTFT等の素子を形成する際に、支持体との間の密着性を十分なものとするために、樹脂組成物は、ポリイミド前駆体100質量%に対してアルコキシシラン化合物を0.001〜2質量%を含有することができる。
【0069】
ポリイミド前駆体100質量%に対するアルコキシシラン化合物の含有量が0.01質量%以上であることにより、支持体との良好な密着性を得ることができる。またアルコキシシラン化合物の含有量が2質量%以下であることが、樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。アルコキシシラン化合物の含有量は、ポリイミド前駆体に対して、0.02〜2質量%であることがより好ましく、0.05〜1質量%であることがさらに好ましく、0.05〜0.5質量%であることがさらに好ましく、0.1〜0.5質量%であることが特に好ましい。
【0070】
アルコキシシラン化合物としては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 KBM803、チッソ株式会社製:商品名 サイラエースS810)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6475.0)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 LS1375、アズマックス株式会社製:商品名 SIM6474.0)、メルカプトメチルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6473.5C)、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6473.0)、3−メルカプトプロピルジエトキシメトキシシラン、3−メルカプトプロピルエトキシジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルジエトキシプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルエトキシジプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメトキシジプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルジエトキシメトキシシラン、2−メルカプトエチルエトキシジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルエトキシジプロポキシシラン、2−メルカプトエチルジメトキシプロポキシシラン、2−メルカプトエチルメトキシジプロポキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルトリエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリプロポキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレア(信越化学工業株式会社製:商品名 LS3610、アズマックス株式会社製:商品名 SIU9055.0)、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ウレア(アズマックス株式会社製:商品名 SIU9058.0)、N−(3−ジエトキシメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−エトキシジメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−ジエトキシプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−エトキシジプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−ジメトキシプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−メトキシジプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−トリメトキシシリルエチル)ウレア、N−(3−エトキシジメトキシシリルエチル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−エトキシジプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−ジメトキシプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−メトキシジプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−トリメトキシシリルブチル)ウレア、N−(3−トリエトキシシリルブチル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルブチル)ウレア、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0598.0)、m−アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.0)、p−アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.1)アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.2)、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン(アズマックス株式会社製:商品名 SIT8396.0)、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2−(ジメトキシシリルメチルエチル)ピリジン、2−(ジエトキシシリルメチルエチル)ピリジン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバメート、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシ−n−プロポキシシラン)、テトラキス(エトキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシエトキシエトキシシラン)、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタジエン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ジ−i−ブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、ビス(ペンタジオネート)チタン−O,O’−ビス(オキシエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルシラントリオール、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルシフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、トリフェニルシラノール、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノエチルトリプロポキシシラン、γ−アミノエチルトリブトキシシラン、γ−アミノブチルトリエトキシシラン、γ−アミノブチルトリメトキシシラン、γ−アミノブチルトリプロポキシシラン、γ−アミノブチルトリブトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
シランカップリング剤としては、前記したシランカップリング剤の中でも、樹脂組成物の保存安定性を確保する観点から、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、トリフェニルシラノール及び下記構造のそれぞれで表されるシランカップリング剤から選択される1種以上が好ましい。
【0072】
【化6】
【0073】
(界面活性剤又はレベリング剤)
また、界面活性剤又はレベリング剤を樹脂組成物に添加することによって、塗布性を向上することができる。具体的には、塗布後のはじきを防ぐことができる。
このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えばオルガノシロキサンポリマーKF−640、642、643、KP341、X−70−092、X−70−093、KBM303、KBM403、KBM803(以上、商品名、信越化学工業社製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190(以上、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、SILWET L−77,L−7001,FZ−2105,FZ−2120,FZ−2154,FZ−2164,FZ−2166,L−7604(以上、商品名、日本ユニカー社製)、DBE−814、DBE−224、DBE−621、CMS−626、CMS−222、KF−352A、KF−354L、KF−355A、KF−6020、DBE−821、DBE−712(Gelest)、BYK−307、BYK−310、BYK−378、BYK−333(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン製)、グラノール(商品名、共栄社化学社製)、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等である、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社、商品名)等を挙げることができる。
【0074】
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合、その合計の配合量は、樹脂組成物中のポリイミド前駆体100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0075】
<樹脂組成物>
本実施の形態に係る樹脂組成物は、前記のポリイミド前駆体及び任意的に用いられるその他の成分を溶媒に溶解して成る溶液組成物(ワニス)として用いられる。
ここで、溶媒としては、ポリイミド前駆体を合成する時に使用できる溶媒として上記したのと同じ溶媒を用いることができる。
溶媒の使用量は、樹脂組成物の固形分濃度が3〜50質量%となる量とすることが好ましい。
本実施の形態に係る樹脂組成物のワニスは、室温保存安定性に優れ、室温で4週間保存した場合のワニスの粘度変化率は、初期粘度に対して10%以下である。室温保存安定性に優れると、冷凍保管が不要となり、ハンドリングし易くなる。
【0076】
<積層体>
本実施の形態に係る積層体は、支持体及び該支持体上に形成されたポリイミド膜を具備する。また、前記積層体は、前記ポリイミド膜上にさらに無機膜を具備することもできる。
前記積層体は、
支持体の表面上に本実施の形態に係る樹脂組成物を展開して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する加熱工程と
を経ることにより、形成される。
前記無機膜は、本発明にかかるポリイミドフィルムから有機EL発光層等への水分や酸素の侵入を防ぐためのガスバリア層として用いるものであり、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等の無機酸化物膜が好適に例示される。該無機膜はプラズマCVD法等を用いて成膜する。
【0077】
上記支持体としては、例えば、無アルカリガラス基板等のガラス基板のような無機基板であるが、特に限定されるものではない。
上記展開方法としては、例えば、スピンコート、スリットコート、ブレードコート等の公知の塗工方法が挙げられる。
より具体的には、樹脂組成物を、支持体上(又はその主面上に形成された接着層上)に展開し、溶媒を除去した後、好ましくは不活性雰囲気下で加熱によりポリイミド前駆体をイミド化することにより、前記支持体上にポリイミドフィルムを形成することができる。
前記の溶媒除去は、例えば250℃未満、好ましくは50〜200℃の温度で1分間〜300分間の熱処理によることができる。前記のイミド化は、例えば250℃〜550℃の温度で1分間〜300分間の加熱処理によることができる。イミド化の時の周囲雰囲気は、窒素等の不活性雰囲気下とすることが好ましい。
本実施の形態によって得られるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、10〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは15〜25μmである。
【0078】
この積層体は、例えば、フレキシブルデバイスの製造に用いられる。より具体的には、ポリイミド膜の上に半導体デバイスを形成し、その後、支持体を剥離してポリイミド膜からなるフレキシブル透明基板を具備するフレキシブルデバイスを得ることができる。
【0079】
<ポリイミドフィルム>
本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、上述の本実施の形態に係るポリイミド前駆体及び溶媒を含有する樹脂組成物を、支持体の表面上に展開して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記支持体及び前記塗膜を加熱して前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する加熱工程と、
前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離してポリイミドフィルムを得る剥離工程と
を経ることにより、形成される。
このポリイミドフィルムは、例えばフレキシブルデバイスの製造に用いられる。具体的には、このポリイミドフィルムを、TFTを形成する基板、カラーフィルターを形成する基板、配向膜、フレキシブルディスプレイ用透明基板等に用いることができる。
【0080】
<本発明の利点>
前記したように、本実施の形態に係るポリイミド前駆体は、好ましくは
(1)テトラカルボン酸二無水物由来構造として、
CBDA、H−PMDA等から選ばれる少なくとも1種の脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と、
PMDA等から選ばれる芳香族テトラカルボン酸二無水物1に由来する構造と、
OPDA、6FDA等から選ばれる芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造と
を有し、
(2)ジアミン由来構造としてTFMB等に由来する構造を有している。このようなポリイミド前駆体を用いて製造されたポリイミドフィルムは、無色透明であり、CTEが低く、さらに伸度に優れている。該ポリイミドフィルム上に無機膜を形成して成る積層体は、表面粗さが小さく、Haze値が小さく、水蒸気透過率が小さいため、フレキシブルディスプレイの透明基板における使用に適している。
【0081】
さらに具体的に説明すると、以下のとおりである。
フレキシブルディスプレイを形成する場合、ガラス基板を支持体として用い、その上にフレキシブル基板を形成し、さらにその上にTFT等の無機膜の形成を行う。無機膜を基板上に形成する工程は、典型的には、150〜650℃の広い範囲の温度で実施される。実際に所望する性能を発揮するためには、主に250℃から400℃の温度範囲が採用される。上記無機膜としては、例えばTFT−IGZO(InGaZnO)酸化物半導体、TFT(a−Si−TFT、poly−Si−TFT)等を挙げることができる。
【0082】
この時、フレキシブル基板のCTEがガラス基板のCTEに比べて高ければ、これらが高温の無機膜形成工程で膨張した後の冷却時に収縮する際、ガラス基板の反り及び破損、フレキシブル基板のガラス基板からの剥離等の問題が生じる。一般的に、ガラス基板の熱膨張係数は樹脂に比較して小さい。そのため、フレキシブル基板の線膨張係数は、低いほど好ましい。
本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、上記の点を考慮して、フィルムの厚さ15〜25μmを基準として、TMA法に従って、100〜300℃において測定した平均線膨張係数(CTE)を、25.0ppm/℃以下とすることができる。
また、本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、黄色度(YI値)が10以下であり、且つ、フィルムの厚さ15〜25μmを基準として、紫外分光光度計で透過率を測定した場合の550nmにおける透過率を85%以上とすることができる。
【0083】
本実施に係るポリイミドフィルム上に無機膜を形成した積層体は、無機膜の表面粗さが小さく、Haze値が小さく、水蒸気透過率が小さい。
有機ELディスプレイの場合、ガスバリア層として、ポリイミドフィルム上に無機膜を形成する。この時、無機膜の表面粗さが大きく、Haze値が大きいと、積層体に濁り及び曇りが起こり、ディスプレイとして適切ではない。また、水蒸気透過率が大きいと、ガスバリア層としての機能を果たさないため、適切ではない。
これらの積層体の表面粗さ、Haze値、水蒸気透過率には、ポリイミドフィルムの耐熱性が関係していると考えられる。何故ならば、ポリイミドフィルム上にCVD法によって無機膜を形成する時、該ポリイミドフィルムを含む積層体は、ポリイミドフィルムを形成する時のキュア(イミド化処理)温度以上の高温に晒されるからである。当該積層体は、表面粗さとして25nm以下、Hazeは15以下、水蒸気透過率は0.1g/(m・24h)以下であることが好ましい。
【0084】
また、本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ15〜25μmを基準として、伸度が15%以上であることが好ましい。このような伸度を有することにより、フレキシブル基板を取り扱う際に破断強度に優れることとなり、従って歩留まりを向上させることができる。
上記物性を満たす本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、既存のポリイミドフィルムが有する黄色により使用が制限された用途及び透明性が要求される用途に使用することができる。特に、フレキシブルディスプレイ用透明基板として好適であるほか;
例えば、保護膜又はTFT−LCDにおける散光シート及び塗膜(例えば、TFT−LCDのインターレイヤー、ゲイト絶縁膜及び液晶配向膜)等にも使用可能である。液晶配向膜として本実施の形態に係るポリイミドを適用するとき、開口率の増加に寄与し、高コントラスト比のTFT−LCDの製造が可能である。
【0085】
本実施の形態に係るポリイミド前駆体を用いて製造されるポリイミドフィルム及び積層体は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜、フレキシブルデバイスの製造に好適に利用することができる。特に、基板の製造に好適である。ここで、フレキシブルデバイスとは、例えば、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル太陽電池、フレキシブル照明、フレキシブルバッテリー等を挙げることができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0087】
実施例及び比較例における各種評価は次の通りに行った。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の条件により測定した。重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定直前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたもの
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)、UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0088】
(脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する部分のイミド基濃度の算出)
脂環式酸二無水物に由来する部分のイミド基濃度は、ポリイミド前駆体ワニスについて測定した13C−NMRシグナルの積分値から算出した。13C−NMR測定は、下記条件で行った。
測定装置:日本電子社製JNM−GSX400型
測定温度:23℃
測定溶媒:重ジメチルスルホキシド溶媒(DMSO−d
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する部分のイミド結合、アミド結合及びカルボン酸の各炭素に帰属されるシグナルは、下記の磁場強度に表れる:
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する部分のイミド結合炭素に帰属されるシグナル:177ppm付近(A)
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する部分のアミド結合炭素に帰属されるシグナル:172ppm付近(B)
脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する部分のカルボキシル基炭素に帰属されるシグナル:177ppm付近(C)
ここで、アミド酸(イミド化されていない)部位については、BとCの積分値は同じ値になる。イミド化した部位におけるイミド結合炭素の積分値と、イミド化されていない部位におけるアミド結合炭素の積分値は、それぞれ、下記式で表される:
イミド結合炭素の積分値:Aの積分値―Bの積分値
アミド結合炭素とカルボキシル基炭素の積分値:Bの積分値×2
よって、イミド基濃度は下記計算式で表される:
イミド基濃度(%)=100×(Aの積分値―Bの積分値)/(Aの積分値―Bの積分値+Bの積分値×2)=100×(Aの積分値―Bの積分値)/(Aの積分値+Bの積分値)
【0089】
(ワニス保存安定性の評価)
下記の実施例及び比較例のそれぞれで調製した組成物ワニスを、室温で3日間静置したサンプルを調製後のサンプルとして23℃における粘度測定を行った。その後さらに室温で4週間静置したサンプルを4週間後のサンプルとし、再度23℃における粘度測定を行った。
上記の粘度測定は、温調機付粘度計(東機産業械社製TV−22)を用いて行った。
上記の測定値を用いて、下記数式により室温4週間粘度変化率を算出した。
室温4週間粘度変化率(%)=[(4週間後のサンプルの粘度)−(調製後のサンプルの粘度)]/(調製後のサンプルの粘度)×100
室温4週間粘度変化率は、下記基準で評価した。結果を表2に示した。
◎:粘度変化率が5%以下(保存安定性「優良」)
○:粘度変化率が10%以下(保存安定性「良好」)
×:粘度変化率が10%より大きい(保存安定性「不良」)
【0090】
(積層体及び単離フィルムの作製)
各実施例及び比較例で得たポリイミド前駆体のワニスを、無アルカリガラス基板(厚さ0.7mm)上にバーコーターを用いて塗工した。続いて、室温において5分間〜10分間のレベリングを行った後、熱風オーブン中で140℃において60分間加熱し、さらに窒素雰囲気下で所定の温度において60分間加熱して、前記基板上に塗膜を有する積層体を作製した。積層体における塗膜の膜厚は、キュア後の膜厚が20μmとなるようにした。次いで所定の温度でキュア(硬化処理)して塗膜をイミド化した。キュア後の積層体を室温において24時間静置した後、ポリイミドフィルムをガラスから剥離することにより、フィルムを単離した。
以下の破断強度、黄色度及び線膨張係数の評価においては、この所定の温度でキュアしたポリイミドフィルムをサンプルとして用いた。
【0091】
(伸度の評価)
所定の温度でキュアした、幅5mm、長さ50mm、厚み20μmのポリイミドフィルムのサンプルについて、引張り試験機(株式会社エーアンドディ製:RTG−1210)を用いて、速度100mm/分で引張り測定した。破断伸度が20%以上であった場合を◎(伸度「優良」)、15%以上20%未満であった場合を○(伸度「良好」)、10%以上15%未満をであった場合を△(伸度「不良」)、10%未満であった場合を(伸度「劣悪」)×として評価した。
【0092】
(黄色度(YI値)の評価)
所定の温度でキュアした、厚み20μmのポリイミドフィルムを、日本電色工業(株)製(Spectrophotometer:SE600)にてD65光源で測定した。YI値が8.0以下であった場合を◎(黄色度「優良」)、8.0超10.0以下であった場合を○(黄色度「良好」)、10.0超15.0以下であった場合を△(黄色度「不良」)、15.0超であった場合を×(黄色度「劣悪」)として評価した。
【0093】
(線膨張係数(CTE)の評価)
所定の温度でキュアしたポリイミドフィルムについて、島津製作所製熱機械分析装置(TMA−50)を用いて、熱機械分析により、以下の条件下で試験片伸びの測定を行った。
荷重:5g
昇温速度:10℃/分
測定雰囲気:窒素雰囲気
窒素流量:20ml/分)
測定温度範囲:50〜450℃
この時の100〜300℃の温度範囲におけるポリイミドフィルムのCTEを求め、CTEが20ppm/℃以下であった場合を◎(CTE「優良」)、20ppm/℃超25ppm/℃以下であった場合を○(CTE「良好」)、25ppm/℃超30ppm/℃以下であった場合を△(CTE「不良」)、30ppm/℃超であった場合を×(CTE「劣悪」)として評価した。
【0094】
(ポリイミドフィルム上に形成した無機膜の表面粗さの測定)
上記実施例及び比較例のそれぞれで調製した組成物ワニスを用いて、表面にアルミ蒸着層を設けた6インチシリコンウエハー基板に、ポリイミドフィルム及び無機膜がこの順に積層された積層体ウェハーを、以下のように形成した。
先ず、上記基板上に各組成物ワニスを回転塗布した後、熱風オーブンにて140℃において60分間加熱し、さらに窒素雰囲気下、320℃において60分間加熱することにより、膜厚20μmのポリイミドフィルムを有するウエハーを得た。
その後、上記で形成したポリイミドフィルム上に、CVD法を用いて350℃において、無機膜である窒化ケイ素(SiN)膜を100nmの厚さで形成した。次に、形成した窒化ケイ素の表面粗さを、AFMであるナノピクス2100(SIIナノテクノロジーズ社製、商品名)を用いて、100μm×100μmのスケールで測定した。試験はN=5で行い、その平均値をとって表面粗さRaとした。
結果を表2に示した。
【0095】
(Hazeの評価)
上記で得られた積層体ウエハーを希塩酸水溶液に浸漬し、無機膜及びポリイミドフィルムの二層を一体としてウエハーから剥離することにより、表面に無機膜が形成されたポリイミドフィルムのサンプルを得た。このサンプルを用いて、スガ試験機社製SC−3H型ヘイズメーターを用いてJIS K7105透明度試験法に準拠してHazeの測定を行った。
測定結果は下記基準で評価した。
◎:Hazeが5以下(Haze「優良」)
○:Hazeが5より大きく15以下(Haze「良好」)
×:Hazeが15より大きい(Haze「不良」)
結果を表2に示した。
【0096】
(水蒸気透過率の評価)
上記で得られた、表面に無機膜が形成されたポリイミドフィルムの水蒸気透過率を、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名:PERMATRAN(登録商標) W3/31)を使用して、温度40℃、湿度90%RH及び測定面積80mmφの条件下で測定した。測定回数は各5回とし、その平均値を水蒸気透過率とし、下記基準で評価した。
◎:水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)以下(水蒸気透過率「優良」)
○:水蒸気透過率が0.01g/(m・24h)より大きく0.1g/(m・24h)以下(水蒸気透過率「良好」)
×:水蒸気透過率が0.1g/(m・24h)より大きい(水蒸気透過率「不良」)
結果を表2に示した。
【0097】
[参考例1]
窒素雰囲気下、500mlセパラブルフラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を15.69g(49.00mmol)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を178.95g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を1.09g(5.0mmol)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)を3.10g(10.0mmol)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を6.86g(35.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリアミド酸のNMP溶液(以下、「ワニス」ともいう。)を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は、116,500であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を、以下の表2に示した。
【0098】
[参考例2]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP180.42g、PMDA3.27g(15.0mmol)、ODPA3.10g(10.0mmol)及びCBDA4.90g(25.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は120,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0099】
[参考例3]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP186.58g、PMDA1.09g(5.00mmol)、ODPA6.20g(20.0mmol)及びCBDA4.90g(25.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は128,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0100】
[実施例4]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)を2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。次いでフラスコ内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを168.43g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及びODPAを3.10g(10.0mmol)加えて80℃においてで4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は82,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0101】
[参考例5]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP178.14g、PMDA5.45g(25.0mmol)、ODPA1.55g(5.0mmol)及びCBDA3.92g(20mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は119,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0102】
[参考例6]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP187.38g、PMDA2.18g(10.0mmol)、ODPA6.20g(20.0mmol)及びCBDA3.92g(20.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は123,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0103】
[参考例7]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP175.19g、PMDA1.09g(5.0mmol)、ODPA1.55g(5.0mmol)及びCBDA7.84g(40.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は123,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0104】
[参考例8]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP189.59g、PMDA5.45g(25.0mmol)、ODPA6.20g(20.0mmol)及びCBDA0.98g(5.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は103,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0105】
[実施例9]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを171.51g、PMDAを5.45g(25.0mmol)及びODPAを4.65g(15.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は123,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0106】
[実施例10]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを174.59g、PMDAを4.36g(20.0mmol)及びODPAを6.20g(20.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は81,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0107】
[実施例11]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを32.28g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを4.48g(20.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを76.44g、PMDAを5.45g(25.0mmol)及びODPAを1.55g(5.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合組成物の重量平均分子量(Mw)は68,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0108】
[実施例12]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを32.28g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを4.48g(20.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを78.28g、PMDAを4.36g(20.0mmol)及びODPAを3.10g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は68,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0109】
[実施例13]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを0.63g(1.96mmol)、NMPを3.22g及びトルエンを30g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.45g(2.00mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを15.06g(47.0mmol)、NMPを186.57g、PMDAを6.33g(29.0mmol)及びODPAを5.89g(19.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は112,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0110】
[実施例14]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを166.88g、PMDAを7.09g(32.5mmol)及びODPAを2.33g(7.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合組成物の重量平均分子量(Mw)は79,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0111】
[実施例15]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを48.42g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを6.78g(30.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを60.54g、PMDAを3.27g(15.0mmol)及びODPAを1.55g(5.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合組成物の重量平均分子量(Mw)は56,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0112】
[実施例16]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.80mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを168.43g、PMDAを4.36g(20.0mmol)、ODPAを3.10g(10.0mmol)及びCBDAを1.96g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌し、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は71,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0113】
[参考例17]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP162.24g、PMDA6.54g(30.0mmol)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)4.44g(10.0mmol)及びCBDA1.96g(10mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は159,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0114】
[実施例18]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)を2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147.70g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は85,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0115】
[実施例19]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却して、赤外分光分析(IR)によりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、フラスコに、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを153.4g、PMDAを5.45g(25.0mmol)及び6FDAを6.66g(15.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は88,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0116】
[実施例20]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを159.8g、PMDAを4.36g(20.0mmol)及び6FDAを8.88g(20.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は86,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0117】
[実施例21]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを32.28g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを4.48g(20.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを124.9g、PMDAを5.45g(25.0mmol)及び6FDAを2.22g(5.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は76,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0118】
[実施例22]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを32.28g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを4.48g(20.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを131.3g、PMDAを4.36g(20.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は77,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0119】
[実施例23]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.45g(2.00mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを158.3g、PMDAを6.33g(29.0mmol)及び6FDAを8.44g(19.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は89,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0120】
[実施例24]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを143.9g、PMDAを7.09g(32.5mmol)及び6FDAを3.33g(7.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は89,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0121】
[実施例25]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを48.42g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを6.78g(30.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを109.5g、PMDAを3.27g(15.0mmol)及び6FDA2.22g(5.0mmol)を加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は75,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0122】
[実施例26]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを153.5g、PMDAを3.27g(15.0mmol)、BPDAを4.41g(15.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は87,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0123】
[実施例27]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを143.3g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、ODPAを1.55g(5.0mmol)及び6FDAを2.22g(5.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は86,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0124】
[実施例28]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを1.12g(5.0mmol)、CBDAを0.98g(5.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを146.3g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は90,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0125】
[実施例29]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.34g(1.5mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを4.44g(10.0mmol)及びH−PMDAを1.9g(8.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は71,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0126】
[実施例30]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.56g(2.5mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを4.44g(10.0mmol)及びH−PMDAを1.68g(7.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は75,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0127】
[実施例31]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.78g(3.5mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを4.44g(10.0mmol)及びH−PMDAを1.46g(6.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は78,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0128】
[実施例32]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.62g(2.75mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを153.3g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを6.66g(15.0mmol)及びH−PMDAを0.5g(2.25mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は80,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0129】
[実施例33]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを1.68g(7.5mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを160.1g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを2.22g(5.0mmol)及びH−PMDAを5.1g(22.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は71,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0130】
[実施例34]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを1.96g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを166.5g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及びODPAを3.10g(10.0mmol)加えて80℃で4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は120,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0131】
[実施例35]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを0.98g(5.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを191.3g、PMDAを5.45g(25.0mmol)及び6FDAを8.88g(20.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は95,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0132】
[実施例36]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを1.96g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを175.5g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は100,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0133】
[実施例37]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを9.42g(29.4mmol)、NMPを48.42g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを5.88g(30.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを6.28g(19.6mmol)、NMPを169.5g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は100,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0134】
[実施例38]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを0.29g(1.5mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを175.5g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを4.44g(10.0mmol)及びCBDAを1.67g(8.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は95,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0135】
[実施例39]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを0.53g(2.75mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを183.8g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを6.66g(15.0mmol)及びCBDAを0.45g(2.25mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は80,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0136】
[実施例40]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CBDAを1.47g(7.5mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを186.8g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを2.22g(5.0mmol)及びCBDAを4.41g(22.5mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は91,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0137】
[実施例41]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを160g、BPDAを8.83g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は86,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0138】
[実施例42]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147.8g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物(TAHQ)を4.58g(10.0mmol)入れ80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は84,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0139】
[実施例43]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CPDAを2.1g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを146.3g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は71,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0140】
[実施例44]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−BPDAを3.06g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを151.7g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は73,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0141】
[実施例45]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、BCDAを2.36g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147.7g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより」、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は75,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0142】
[実施例46]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BOTDA)を2.48g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを148.4g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は74,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0143】
[実施例47]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン(mTB)を2.08g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にmTBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、mTBを8.32g(39.2mmol)、NMPを117.2g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は82,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0144】
[実施例48]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABA)を2.23g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にDABAを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、DABAを8.91g(39.2mmol)、NMPを121.4g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は83,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0145】
[実施例49]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート(APAB)を2.24g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にAPABを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、APABを8.95g(39.2mmol)、NMPを121.6g、PMDAを6.54g(30.0mmol)及び6FDAを4.44g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は82,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0146】
[実施例50]
実施例9で得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスに、樹脂100重量部に対して、0.5重量部換算のアルコキシシラン化合物1(ROSi1)を溶解させ、0.1μmのフィルターで濾過することにより、樹脂組成物を調整した。この組成物及びその硬化膜の特性を前記の評価方法に従って測定した。得られた結果を表2に示した。
[実施例51]
実施例19で得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスに、樹脂100重量部に対して、0.5重量部換算のアルコキシシラン化合物1を溶解させ、0.1μmのフィルターで濾過することにより、樹脂組成物を調整した。この組成物及びその硬化膜の特性を前記の評価方法に従って測定した。得られた結果を表2に示した。
[実施例52]
実施例9で得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスに、樹脂100重量部に対して、0.05重量部換算の界面活性剤1(Surf1)を溶解させ、0.1μmのフィルターで濾過することにより、樹脂組成物を調整した。この組成物及びその硬化膜の特性を前記の評価方法に従って測定した。得られた結果を表2に示した。
[実施例53]
実施例19で得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスに、樹脂100重量部に対して、0.05重量部換算の界面活性剤1を溶解させ、0.1μmのフィルターで濾過することにより、樹脂組成物を調整した。この組成物及びその硬化膜の特性を前記の評価方法に従って測定した。得られた結果を表2に示した。
[比較例1]
原料の仕込みを、TFMB14.39g(44.9mmol)、NMP163.23g、PMDA10.0g(45.8mmol)、ODPA0g(0mmol)及びCBDA0g(0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニス中のポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は47,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0147】
[比較例2]
原料の仕込みを、TFMB10.12g(31.6mmol)、NMP134.65g、PMDA0g(0mmol)、ODPA10.0g(32.2mmol)及びCBDA0g(0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニス中のポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は65,500であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0148】
[比較例3]
原料の仕込みを、TFMB16.00g(50.0mmol)、NMP174.00g、PMDA0g(0mmol)、ODPA0g(0mmol)及びCBDA10.00g(51.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニス中のポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は221,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0149】
[比較例4]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを14.00g(43.7mmol)、NMPを160.62g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを10.00g(44.6mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。その後、フラスコの内容物を室温まで冷却することにより、ポリイミドのワニスを得た。得られたワニス中のポリイミドの重量平均分子量(Mw)は50,600であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0150】
[比較例5]
原料の仕込みを、TFMB8.79g(27.4mmol)、NMP60.6g、PMDA5.50g(25.2mmol)及びODPA0.87g(2.8mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニスに含有される重合体の重量平均分子量(Mw)は47,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び破断強度を以下の表2に示した。
【0151】
[比較例6]
原料の仕込みを、TFMB16.44g(51.3mmol)、NMP184.18g、PMDA8.00g(36.7mmol)、ODPA0g(0mmol)及びCBDA3.08g(15.7mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニスに含有される重合体の重量平均分子量(Mw)は121,900であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び破断強度を以下の表2に示した。
【0152】
[比較例7]
原料の仕込みを、TFMB14.17g(44.2mmol)、NMP171.31g、PMDA0g(0mmol)、ODPA7.00g(22.6mmol)及びCBDA4.43g(22.6mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニスの重量平均分子量(Mw)は105,000であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び破断強度を以下の表2に示した。
【0153】
[比較例8]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを186.91g及びODPAを12.41g(40.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は66,700であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0154】
[比較例9]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP175.05g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、ODPA0g(0mmol)及びCBDA3.92g(20.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニスに含有される重合体の重量平均分子量(Mw)は91,200であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び破断強度を以下の表2に示した。
【0155】
[比較例10]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを2.24g(10.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを162.26g及びPMDAを8.72g(40.0mmol)加えて80℃で4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合組成物のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合組成物の重量平均分子量(Mw)は226,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0156】
[比較例11]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP193.54g、PMDA0g(0mmol)、ODPA9.31g(30.0mmol)及びCBDA3.92g(20.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニスに含有される重合体の重量平均分子量(Mw)は125,100であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び破断強度を以下の表2に示した。
【0157】
[比較例12]
原料の仕込みを、TFMB15.69g(49.0mmol)、NMP178.27g、PMDA0g(0mmol)、ODPA3.10g(10.0mmol)及びCBDA7.84g(40.0mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニスに含有される重合体の重量平均分子量(Mw)は120,900であった。330℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び破断強度を以下の表2に示した。
【0158】
[比較例13]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを64.56g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを8.97g(40.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却した後に、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを46.48g及びODPAを3.1g(10.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は49,800であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0159】
[比較例14]
原料の仕込みを、TFMB7.06g(22.0mmol)、NMP96.67g、PMDA0g(0mmol)及び6FDAを10.00g(22.5mmol)に変更した以外は、参考例1と同様にしてワニスを得た。得られたワニス中のポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は110,000であった。350℃キュアしたフィルムのCTE、YI値及び伸度を以下の表2に示した。
【0160】
[比較例15]
窒素雰囲気下、500mlセパラブルフラスコに、TFMBを15.69g(49.00mmol)及びNMPを203.4g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。次いで、BPDAを14.71g(50.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリアミド酸のNMP溶液(ワニス)を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は49,000であった。330℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0161】
[比較例16]
窒素雰囲気下、500mlセパラブルフラスコに、TFMBを15.69g(49.00mmol)及びNMPを258.4g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。次いで、TAHQを22.92g(50.0mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリアミド酸のNMP溶液(ワニス)を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は64,000であった。330℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0162】
[比較例17]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを15.69g(49.0mmol)、NMPを175.3g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、CPDAを10.51g(100.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。その後、フラスコの内容物を室温まで冷却することにより、ポリイミドのワニスを得た。得られたワニス中のポリイミドの重量平均分子量(Mw)は51,600であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0163】
[比較例18]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを15.69g(49.0mmol)、NMPを175.3g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−BPDAを15.32g(100.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。その後、フラスコの内容物を室温まで冷却することにより、ポリイミドのワニスを得た。得られたワニス中のポリイミドの重量平均分子量(Mw)は54,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0164】
[比較例19]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを15.69g(49.0mmol)、NMPを175.3g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、BCDAを11.82g(100.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。その後、フラスコの内容物を室温まで冷却することにより、ポリイミドのワニスを得た。得られたワニス中のポリイミドの重量平均分子量(Mw)は50,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0165】
[比較例20]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを15.69g(49.0mmol)、NMPを175.3g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、BOTDAを12.41g(100.0mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。その後、フラスコの内容物を室温まで冷却することにより、ポリイミドのワニスを得た。得られたワニス中のポリイミドの重量平均分子量(Mw)は54,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0166】
[比較例21]
ディーンシュタルク装置及び還流器を装着したセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、TFMBを3.14g(9.8mmol)、NMPを16.14g及びトルエンを50g入れ、撹拌下にTFMBを溶解させた。そこに、H−PMDAを0.16g(0.7mmol)加えて、180℃において2時間還流した後、3時間かけて共沸溶媒であるトルエンを除去した。フラスコの内容物を40℃まで冷却し、IRによりアミド結合に由来する1,650cm−1付近の吸収(C=O)が消失していることを確認した。その後、TFMBを12.55g(39.2mmol)、NMPを147g、PMDAを6.54g(30.0mmol)、6FDAを4.44g(10.0mmol)及びH−PMDAを2.08g(9.3mmol)加えて80℃において4時間撹拌することにより、ポリイミド−ポリアミド酸重合体のワニスを得た。得られたポリイミド−ポリアミド酸重合体の重量平均分子量(Mw)は51,000であった。350℃キュアしたフィルムの評価結果を表2に示した。
【0167】
[比較例22]
韓国特許公開第10−2013−0077946号に記載の方法に準拠して、ワニスの調製を行った。
窒素雰囲気下、1,000mlセパラブルフラスコに、ジメチルアセトアミド(DMAc) 270mlを入れ、室温にてTFMB32.02g(100.0mmol)を完全に溶解させた。次いで、6FDA111.1g(25.0mmol)、PMDA109.1g(50.0mmol)及びH−PMDA56.04g(25.0mmol)を順次に添加して、室温において12時間撹拌した。その後、120℃のオイルバスにより20分加熱した後、常温において12時間攪拌することにより、ポリアミド酸溶液(ワニス)を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は32,000であった。
上記のワニスを用い、80℃から250℃まで8時間かけて加熱した後、徐々に冷却することによって得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示した。
【0168】
[比較例23]
韓国特許公開第10−2013−0077946号に記載の方法に準拠してワニスの調製を行った。
原料の仕込みを、6FDA88.85g(20.0mmol)、PMDA87.25g(40.0mmol)及びH−PMDA89.67g(40.0mmol)に変更した以外は、比較例22と同様に操作を行った。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示した。
【0169】
[比較例24]
韓国特許公開第10−2013−0077946号に記載の方法に準拠してワニスの調製を行った。
原料の仕込みを、6FDA177.7g(40.0mmol)、PMDA87.25g(40.0mmol)及びH−PMDA44.83g(20.0mmol)に変更した以外は、比較例22と同様に操作を行った。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示した。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
【表8】
【0178】
表1に記載の成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
[芳香族テトラカルボン酸二無水物1]
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物
[芳香族テトラカルボン酸二無水物2]
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
TAHQ:4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
[脂環式テトラカルボン酸二無水物]
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
H−PMDA:1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
CPDA:1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物
H-BPDA:1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
BCDA:ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物
BOTDA:ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物
【0179】
[ジアミン]
TFMB:2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
mTB:2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン
DABA:4,4’−ジアミノベンズアニリド
APAB:4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート
[他の添加剤]
ROSi1:アルコキシシラン化合物1、下記構造式の化合物
【0180】
【化7】
【0181】
Surf1:界面活性剤1、シリコーン型非イオン界面活性剤 DBE224(商品名、Gelest社製)
【0182】
表に示したように、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物1に由来する構造及び前記芳香族テトラカルボン酸二無水物2に由来する構造のすべてを有するポリイミド前駆体を含む樹脂組成物(ワニス)は、
(0)4週間室温保存時の粘度変化率が10%以下であり、
前記組成物を硬化して得られるポリイミドフィルムは、膜物性において、以下の条件:
(1)CTEが25ppm以下
(2)YI値が10以下
(3)伸度が15%以上
を同時に満たし、
前記ポリイミドフィルムに無機膜を形成した積層体は、
(4)Hazeが15以下
(5)水蒸気透過率が0.1g/(m・24h)以下
を同時に満たすことが確認された。
【0183】
また、
比較例1〜4、14及び15〜20の評価結果からは、1種類のテトラカルボン酸二無水物に由来する構造のみを有するポリイミド前駆体を用いたポリイミドフィルムは、上記(0)〜(5)すべての膜物性を同時に満たすことはできないことが;
比較例5〜13の評価結果からは、2種類のテトラカルボン酸二無水物にそれぞれ由来する2種類の構造を有するポリイミド前駆体を用いたポリイミドフィルムであっても、上記(0)〜(5)すべての膜物性について、十分な性能を付与するに至らないことが、
それぞれ確認された。さらに、
比較例21〜25の評価結果からは、前記3種類のテトラカルボン酸二無水物にそれぞれ由来する3種類の構造を有するポリイミド前駆体を用いたポリイミドフィルムであっても、該ポリイミド前駆体の脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%の範囲外である場合には、上記(0)〜(5)すべての膜物性について、十分な性能を付与するに至らないことが確認された。
以上の結果から、ポリイミド前駆体が脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物1に由来する構造及び前記芳香族テトラカルボン酸二無水物2に由来する構造のすべてを有し、且つ脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%の範囲である場合に限って、該ポリイミド前駆体を含む組成物は保存安定性に優れ、当該組成物を硬化して得られるポリイミドフィルムは、無色透明であるとともに線膨張係数が低く、さらに伸度に優れ、当該ポリイミドフィルムに無機膜を形成した積層体は、Hazeが小さく、水蒸気透過率に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明に係るポリイミド前駆体は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電
極保護膜、フレキシブルディスプレイの製造に、特に基板の製造に好適に利用することが
できる。