特許第6254206号(P6254206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254206
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】軟質ウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20171218BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20171218BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20171218BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20171218BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20171218BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20171218BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20171218BHJP
   B60N 2/46 20060101ALI20171218BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20171218BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20171218BHJP
   B60N 2/48 20060101ALI20171218BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20171218BHJP
【FI】
   C08G18/00 F
   C08G18/20
   C08G18/76 057
   C08G18/48 033
   B60R7/04 C
   A47C27/14 A
   B68G7/06 A
   B60N2/46
   B60N3/00 C
   B60N3/00 Z
   A47C7/54
   B60N2/48
   C08G101:00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-55441(P2016-55441)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-176071(P2016-176071A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-58488(P2015-58488)
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 崇裕
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−132977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
A47C 7/54
A47C 27/14
B60N 2/46
B60N 2/48
B60N 3/00
B60R 7/04
B68G 7/06
C08G 18/20
C08G 18/48
C08G 18/76
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)の存在下に反応させて軟質ウレタンフォームを製造する方法であって、下記(1)〜(6)の条件を満たす軟質ウレタンフォームの製造方法。
(1)フリー発泡のクリームタイムが6秒以下。
(2)フリー発泡のゲルタイムが12秒以下。
(3)ライズ高さ最大時の80%の高さに到達する時間(t1)が15秒以下。
(4)ライズ高さ最大到達時間(ライズタイム:t2)が24秒以下。
(5)(t2)−(t1)が6秒以下。
(6)得られるフォームの、セトリング率が1%以上、および/または、通気度が5.1L/分以上。
【請求項2】
活性水素成分(A)が、下記(A1)および/または(A2)を含有する請求項1に記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
(A1) ポリエーテルポリオール(a)中でラジカル重合開始剤の存在下、ビニルモノマー(b)が重合されて得られる重合体ポリオール。
(A2) (A1)以外のポリエーテルポリオール。
【請求項3】
活性水素成分(A)が、官能基数が3以上、水酸基価が10〜56(mgKOH/g)、末端エチレンオキシド単位の含有量が10重量%以上のポリエーテルポリオール(A*)を10〜100重量%含有する請求項1または2に記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
有機イソシアネート(B)が、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートおよびこれらの変性物からなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
発泡剤(C)が水である請求項1〜4のいずれかに記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
触媒(D)が、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンおよび/またはその塩(D1)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とが反応開始してからフォーム成形品を取り出すまでの時間が180秒以下である請求項1〜6のいずれかに記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
得られるフォームのフリー密度が60kg/m3以下である請求項1〜7のいずれかに記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
得られるフォームの形状が自動車内装材用ヘッドレストおよび/またはアームレストである請求項1〜8のいずれかに記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項10】
自動車内装材用ヘッドレストおよび/またはアームレストを表皮材と一体成形する請求項9に記載の軟質ウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ウレタンフォームの製造方法、特に、モールド成形用に適した軟質ウレタンフォームを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウレタンフォームの製造方法として、ポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとを、発泡剤、触媒、整泡剤等の存在下で反応させてウレタンフォームを製造することは公知である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−313262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は軟質ウレタンフォーム成形品を製造する際、脱型時間を短縮しようとした場合、特に表皮一体成形の場合において、液流れ不足によるセル荒れ等の外観不良防止との両立が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、ポリオールとイソシアネートの反応性、および得られるフォームの物性を一定の範囲内とすることにより、脱型時間を短縮でき、液流れ性がよく、かつ成形品の外観が良好な軟質ウレタンフォームが得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
すなわち本発明は、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)の存在下に反応させて軟質ウレタンフォームを製造する方法であって、下記(1)〜(6)の条件を満たす軟質ウレタンフォームの製造方法である。
(1)フリー発泡のクリームタイムが6秒以下。
(2)フリー発泡のゲルタイムが12秒以下。
(3)ライズ高さ最大時の80%の高さに到達する時間(t1)が15秒以下。
(4)ライズ高さ最大到達時間(ライズタイム:t2)が24秒以下。
(5)(t2)−(t1)が6秒以下。
(6)得られるフォームの、セトリング率が1%以上、および/または、通気度が5.1L/分以上。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法では、脱型時間を短縮しても、液回り不足によるセル荒れ等の外観不良が発生することなく、安定して成形性が良好な軟質ウレタンフォームを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法において、活性水素成分(A)は、ポリエーテルポリオール(a)中でラジカル重合開始剤の存在下、ビニルモノマー(b)が重合されて得られる重合体ポリオール(A1)、および/または、(A1)以外のポリエーテルポリオール(A2)を含有するのが好ましい。
【0009】
ポリエーテルポリオール(A2)としては、多価アルコール、アミン、アンモニア等の活性水素化合物のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール等);3価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(ペンタエリスリトール、メチルグルコシド等);5価アルコール(2、2、6、6、−テトラキス(ヒドキシルメチル)シクロヘキサノール等);6価アルコール(ソルビトール等);8価アルコール(ショ糖等)などが挙げられる。
アミンとしては、1価アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン等);2価アミン(メチルアミン、エチルアミン、アニリン等);3価アミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等);4価アミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等);5価アミン(ジエチレントリアミン等)などが挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(以下EOと略記)、プロピレンオキシド(以下POと略記)、1,2−、1,4−もしくは2,3−ブチレンオキシドおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものは、POおよび/またはEOであり、併用の場合の付加形式はブロックまたはランダムのいずれでもよい。
【0010】
該(A2)としては、数平均官能基数が2〜10であることが好ましく、更に好ましくは数平均官能基数が3〜8のアルコールのPOおよびEOのブロックまたはランダム共付加物である。
なお、本発明におけるポリオールの官能基数は、活性水素化合物のアルキレンオキシド付加物の場合、出発物質である活性水素化合物の官能基数を、ポリオールの官能基数と見なす。
水酸基価(mgKOH/g)は、10〜1500であることが好ましく、更に好ましくは20〜1200である。
なお、水酸基価はJIS K1557−1により求められる。
【0011】
ポリエーテルポリオール(A2)の製造方法としては特に限定されず、例えばアルコール等の活性水素を有する化合物にアルカリ触媒下で、アルキレンオキシドを付加する方法等が挙げられ、反応条件の一例として、温度が105〜130℃で0.5MPa以下での付加重合が挙げられる。
【0012】
本発明における重合体ポリオール(A1)としては、ポリエーテルポリオール(a)中でビニルモノマ−(b)を通常の方法で重合して製造することができる。例えば、ポリエーテルポリオール(a)中で、ラジカル重合開始剤の存在下、ビニルモノマ−(b)を重合させ、安定分散させたものが挙げられる。重合方法の具体例としては、米国特許第3383351号明細書、特公昭39−25737号公報等に記載の方法が挙げられる。
ポリエーテルポリオール(a)としては、上記ポリエーテルポリオール(A2)と同様のものが挙げられる。
【0013】
上記ラジカル重合開始剤としては、遊離基を生成して重合を開始させるものが使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよび過コハク酸等の有機過酸化物;過硫酸塩および過ホウ酸塩等の無機過酸化物等が挙げられる。なお、これらは2種以上を併用することができる。
【0014】
ビニルモノマー(b)としては、芳香族炭化水素単量体(b1)、不飽和ニトリル類(b2)、(メタ)アクリル酸エステル類(b3)、その他のビニル単量体(b4)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(b1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロルスチレンなどが挙げられる。
(b2)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられる。
(b3)としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(アルキル基の炭素数が1〜24);ヒドロキシポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート類(たとえば、アルキレン基の炭素数2〜4、ポリオキシアルキレン鎖の数平均分子量200〜1000)などが挙げられる。
【0015】
その他のビニル単量体(b4)としては、ビニル基含有カルボン酸およびその誘導体〔(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドなど〕、脂肪族もしくは脂環式炭化水素単量体〔エチレン、プロピレン、ノルボルネンなど〕、フッ素含有ビニル単量体〔パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレートなど〕、上記以外の窒素含有ビニル単量体〔ジアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレートなど〕およびビニル変性シリコンなどが挙げられる。
【0016】
これらの中では、(b1)および(b2)が好ましく、スチレンおよび/またはアクリロニトリルがさらに好ましい。
これらのの重量比率は、要求されるウレタンフォームの物性等に応じて変えることができ、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。
(b1):好ましくは0〜100重量%、さらに好ましくは0〜80重量%
(b2):好ましくは0〜95重量%、さらに好ましくは20〜100重量%
(b3):好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは0〜20重量%
(b4):好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%
なお、(b)の少なくとも一部(好ましくは0.05〜1重量%)として、多官能(好ましくは2〜8官能)ビニル基含有モノマー〔ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)クリレートなど〕を用いることにより、重合体の強度をさらに向上させることができる。
重合体ポリオール(A1)中の(b)の重合体の含量は、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜45重量%である。
【0017】
活性水素成分(A)中には、重合体ポリオール(A1)およびポリエーテルポリオール(A2)以外に他のポリオール、あるいは活性水素成分を併用してもよく、ポリエステルポリオール、変性ポリオールもしくはモノオール、多価アルコール、アミン並びにこれらの混合物で等が挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、前記の多価アルコール(とくに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;前記ポリエーテルポリオール;またはこれらとグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価又はそれ以上の多価アルコールとの混合物)と、前記ポリカルボン酸もしくはその無水物、低級アルキル(アルキル基の炭素数:1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(例えば、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テレフタル酸ジメチル等)、または前記カルボン酸無水物およびAOとの縮合反応物;そのアルキレオンキサイド(EO、PO等)付加反応物;ポリラクトンポリオール、例えば前記ポリオールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの;ポリカーボネートポリオール、例えば前記ポリオールと低級アルコール(メタノールなど)の炭酸ジエステルとの反応物;等が挙げられる。
【0019】
変性ポリオールもしくはモノオールとしては、ポリエーテルポリオールを用いる以外の重合体ポリオール;ポリブタジエンポリオール等のポリジエンポリオールおよびそれらの水添物;アクリル系ポリオール、特開昭58−57413号公報及び特開昭58−57414号公報等に記載された水酸基含有ビニル重合体;ヒマシ油等の天然油系ポリオール;天然油系ポリオールの変性物;国際公開WO98/44016号公報に記載の末端ラジカル重合性官能基含有活性水素化合物;等が挙げられる。
多価アルコール、アミンとしては、前述のものが挙げられる。
【0020】
活性水素成分(A)中には、官能基数が3以上、水酸基価が10〜56(mgKOH/g)、末端エチレンオキシド単位(以下EO単位と略記)の含有量が10重量%以上のポリエーテルポリオール(A*)を、ポリエーテルポリオール(a)とポリエーテルポリオール(A2)の少なくとも一方に、合計で10〜100重量%含有するのが好ましい〔(a)中に含まれるものを(a*)、(A2)中に含まれるものを(A2*)と、それぞれ記載する。〕。
ポリエーテルポリオール(A*)の官能基数は3以上であり、好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜8である。
(A*)の水酸基価は10〜56(mgKOH/g)であり、好ましくは15〜40、更に好ましくは20〜35である。
(A*)の末端EO単位の含有量は10重量%以上であり、好ましくは12〜25重量%、さらに好ましくは14〜20重量%である。
活性水素成分(A)中のポリエーテルポリオール(A*)の含有量は、10〜100重量%が好ましく、更に好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは60〜99重量%である。
(A*)の官能基数が3以上であると硬化不良が起きにくく、硬さが低くなりにくい。(A*)の水酸基価が56以下であるとフォームが硬くなり過ぎる恐れがなく、末端EO単位の含有量が10重量%以上であると硬化不良が起きにくくなる。
【0021】
本発明において、活性水素成分(A)中のビニルモノマー(b)の重合体の含量は、0〜25重量%が好ましい。25重量%以下だと、フォームにセル荒れ等の外観不良が起きにくくなる。
【0022】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法に用いられる有機イソシアネート(B)としては、ウレタンフォームの製造に通常使用される公知のもの、例えば炭素数(NCO基中の炭素数を除く)6〜20の芳香族ポリイソシアネート[2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート(PAPI)等];炭素数2〜18の直鎖又は分岐脂肪族イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等);炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート(イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート等);これらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ウレトジオン基、ビュウレット基、ウレトンイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物等);およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これら(B)のうち好ましいものは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートおよびこれらの変性物からなる群から選ばれる1種以上である。
【0023】
発泡剤(C)としては、水、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガス等が用いられ、2種以上を併用しても良い。この中で、特に好ましいのは、環境汚染の観点から水単独である。
【0024】
活性水素成分(A)の重量に基づく発泡剤(C)の使用量は、水の場合は0.1〜10重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜8重量%、特に好ましくは1〜7重量%である。(C)中の水の含有量が0.1重量%以上では、フォームの液流れ性が良好で、充填不足によるセル荒れが発生しにくい。
【0025】
本発明に用いられる触媒(D)としては、当業界で慣用されるあらゆるウレタン化反応を促進する触媒を使用することができ、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルアミノプロピルジプロパノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン並びに1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンおよび/またはその塩(D1)等のアミン系触媒、ジブチルチンラウレート等の有機金属化合物、並びに酢酸カリウム、オクチル酸カリウム及びスタナスオクトエート等のカルボン酸金属塩等を挙げることができる。上記の触媒を使用することにより、ポリウレタン形成における縮合反応を適切な状態に制御することが可能となる。
触媒(D)としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンおよび/またはその塩(D1)を含有する触媒が好ましく、他の触媒と併用して用いてもよい。本触媒を使用する好ましい理由としては、硬化が早く、特に表皮一体成形をする際に脱型後の変形がなく形状が良好となることなどが挙げられる。
【0026】
触媒(D)の使用量は、フォームの成形性の観点から、活性水素成分(A)の重量に基づいて、0.1〜15重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。また、触媒(D1)を用いる場合の(D1)の使用量は、フォームの成形性の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは0.1〜5.0重量%、さらに好ましくは0.3〜2.5重量%、とくに好ましくは0.5〜1.0重量%である。
【0027】
本発明に用いられる整泡剤(E)としては、通常のウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用でき、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤[[東レ・ダウコーニング(株)製の「SRX−274C」、「SF−2962」等]、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「L−5309」等が挙げられる。整泡剤の使用量は、ウレタンフォームの成形性及びフォームの変色の観点から、ポリエーテルポリオール(A)の重量に基づいて、0.1〜10.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜5.0重量%、特に好ましくは0.3〜3.0重量%である。
【0028】
本発明において、必要により難燃剤(F)(リン酸エステル等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール及びヒンダードアミン等)及び紫外線吸収剤(トリアゾール及びベンゾフェノン等)等の老化防止剤;無機塩(炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等)、無機繊維(ガラス繊維及び炭素繊維等)、ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー等)等の充填剤;接着剤(変性ポリカプロラクトンポリオール等);可塑剤(フタル酸エステル類等);着色剤(染料及び顔料);抗菌剤;抗カビ剤;等の、従来公知の添加剤及び助剤を使用することができる。
【0029】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法におけるイソシアネート指数(インデックス)[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、フォームのキュア性及びフォームの成形性の観点から、50〜300が好ましく、さらに好ましくは60〜200、とくに好ましくは70〜150である。
【0030】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法の具体例を示せば、下記の通りである。まず、活性水素成分(A)、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)、並びに必要によりその他の添加剤、助剤を所定量2Lポリ容器に混合してポリオール混合物を作製し、25±5℃に温調する。次いで、25±5℃に温調した有機イソシアネート(B)を所定量加え、攪拌機(ホモディスパー:プライミクス(株)製)にて8000rpm×2秒間攪拌混合し、発泡し硬化させ軟質ウレタンフォームを得る。なお、添加剤、助剤等は、有機イソシアネート(B)に混合して用いることもできる。
【0031】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法においては、下記(1)〜(5)を満たすように、原料反応条件等を調整する。
(1)フリー発泡のクリームタイムが6秒以下。
(2)フリー発泡のゲルタイムが12秒以下。
(3)ライズ高さ最大時の80%の高さに到達する時間(t1)が15秒以下。
(4)ライズ高さ最大到達時間(ライズタイム:t2)が24秒以下。
(5)(t2)−(t1)が6秒以下。
【0032】
本発明において、クリームタイム、ゲルタイム、ライズ高さ、ライズタイムとは、以下のことを意味する。
クリームタイムとは、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)を全て混合してフリー発泡させるとき、混合開始から液面が上昇し始めるまでの時間を意味する。
本発明の製造方法におけるクリームタイムは6秒以下であり、好ましくは5秒以下である。クリームタイムが6秒を超えると、硬化不良が起きやすくなる。
クリームタイムを6秒以下とする手法としては、例えば活性水素成分(A)の一級水酸基の比率を上げることや、触媒(D)の使用量を増やすことなどが挙げられる。
【0033】
ゲルタイムとは、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)を全て混合してフリー発泡させるとき、混合開始から、増粘が起こってゲル強度が出始める(樹脂化)までの時間を意味する
本発明の製造方法におけるゲルタイムは12秒以下であり、好ましくは10秒以下である。ゲルタイムが12秒を超えると、硬化不良が起きやすくなる。
ゲルタイムを12秒以下とする手法としては、例えば活性水素成分(A)の一級水酸基の比率を上げることや、触媒(D)の使用量を増やすことなどが挙げられる。
【0034】
ライズ高さとは、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)を全て混合してフリー発泡させるとき、混合開始から上昇したフォームの高さが最大となる時の高さを意味する。ライズ高さ最大時の80%の高さに到達する時間(t1)とは、混合開始からライズ高さの80%の高さに到達するまでの時間を意味する。
本発明の製造方法における(t1)は15秒以下であり、好ましくは14秒以下、さらに好ましくは10秒以下である。(t1)が15秒を超えると、硬化不良が起きやすくなる。
ライズ高さ最大時の80%の高さに到達する時間(t1)を15秒以下とする手法としては、例えば活性水素成分(A)の一級水酸基の比率を上げることや、水もしくは触媒(D)の使用量を増やすことなどが挙げられる。
【0035】
本発明におけるライズタイム(t2)とは、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)を全て混合してフリー発泡させるとき、混合開始から上昇したフォームの高さが最大となるまでの時間を意味する。
本発明の製造方法におけるライズタイム(t2)は24秒以下であり、好ましくは20秒以下、さらに好ましくは17秒以下、とくに好ましくは15秒以下である。(t2)が24秒を超えると、成形する成形金型内にフォームが充填しにくくなり、充填不足によるセル荒れが生じることがある。
ライズタイム(t2)を24秒以下とする手法としては、例えば水もしくは触媒(D)の使用量を増やすことなどが挙げられる。
また、(t2)−(t1)は6秒以下であり、好ましくは5秒以下である。(t2)−(t1)が6秒を超えると、表皮からの浸み出す等の不良が生じることがある。
(t2)−(t1)を6秒以下とする方法としては、例えば水もしくは触媒(D)の使用量を増やすことなどが挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法において、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とが反応開始(これらを含む原料の混合開始)をしてからフォーム成形品を取り出すまでの時間は、180秒以下であることが好ましい。本発明の製造方法によれば、短時間で脱型しても、成形品に外観不良が発生する恐れがない。
【0037】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法により得られた軟質ウレタンフォームは、セトリング率が1%以上、通気度が5.1L/分以上のうち、少なくとも一方の物性を満たす。
セトリング率が1%未満、かつ通気度が5.1L/分未満であると、成形品の収縮等の不良が生じることがある。
【0038】
上記セトリング率とは、活性水素成分(A)と有機イソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)を全て混合してフリー発泡させる場合において、前記ライス高さと混合開始から上昇したフォームが停止した特の高さの差を、ライズ高さで割った値をパーセントにした数値であり、1%以上が好ましく、更に好ましくは1.5〜6%である。セトリング率を1%以上とする手法としては、例えば、活性水素成分の水もしくは触媒(D)の使用量を上げることなどがある。
【0039】
通気度とは、ダウ式エアーフローメーターにて測定(ASTM−3574)で測定した数値を示し、単位はL/分で表記され、5.1L/分以上が好ましく、更に好ましくは5.7L/分以上である。通気度を5.1L/分以上とする手法としては、例えば活性水素成分の水もしくは触媒の使用量を上げることなどがある。
【0040】
本発明の軟質ウレタンフォームの製造方法において、得られる軟質ウレタンフォームのフリー密度は、60kg/m3以下が好ましく、更に好ましくは45〜55kg/m3である。
本発明におけるフリー密度は、JIS K6400に準拠して測定される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、以下において、部及び%は、特にことわりのないかぎり、それぞれ重量部及び重量%を示す。
【0042】
〔実施例1〜12、比較例1〜3〕
実施例および比較例における軟質ウレタンフォ−ム原料は次の通りである。
(1)ポリオール(A2*−1):グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価=34、末端EO単位の含有量=14%)。
(2)ポリオール(A2*−2):グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価=28、末端EO単位の含有量=20%)。
(3)ポリオール(A2*−3):グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価=24、末端EO単位の含有量=14%)。
(4)ポリオール(A2*−4):ペンタエリスリトールのPO・EOブロック付加物(水酸基価=28、末端EO単位の含有量=14%)。
(5)ポリオール(A2*−5):ショ糖のPO・EOブロック付加物(水酸基価=28、末端EO単位の含有量=20%)。
(6)ポリオール(A2−6):グリセリンのPO・EOランダム付加物(水酸基価=24、EO単位の含有量=72%)。
(7)ポリオール(A2−7):グリセリンのPO・EOランダム付加物(水酸基価=112、EO単位の含有量=70%)。
(8)ポリオール(A2−8):プロピレングリコールのPO・EO・PO・EOブロック付加物(水酸基価=28、EO単位の合計含有量=20%、末端EO単位の含有量=10%)。
(9)重合体ポリオール(A1−1):ポリオール(A2*−1)中でアクリロニトリルが重合されて得られた重合体ポリオール(重合体含量20%)。
(10)重合体ポリオール(A1−2):ポリオール(A2*−4)中でアクリロニトリルとスチレンが重合されて得られた重合体ポリオール(重合体含量30%、アクリロニトリル/スチレン(重量比)=65/35)。
(11)他の活性水素成分(A3−1):トリエタノールアミン
(12)発泡剤(C−1):水
(13)触媒(D−1):トリエチレンジアミンのジプロピレングリコ−ル溶液〔東ソー(株)製TEDA−L33〕
(14)触媒(D−2):ビス(ジメチルアミノエチル)エ−テルの70%ジプロピレングリコール溶液〔東ソ−(株)製TOYOCAT ET〕
(15)触媒(D−3):ビス(ジメチルアミノエチル)エ−テル〔エアプロ社製DABCO−BL19〕
(16)触媒(D−4):アミン系反応性触媒〔花王(株)製カオーライザーNo.25〕
(17)触媒(D−5):アミン系反応性触媒〔東ソ−(株)製TOYOCAT HX−70〕
(18)触媒(D1−6):1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン
(19)触媒(D1−7):1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンのオクタン酸塩
(20)整泡剤(E−1):東レダウコーニング・シリコーン(株)製「SF−2962」
(21)有機イソシアネ−ト(B−1):粗製MDI〔日本ポリウレタン工業(株)製MR−200〕NCO%=31
【0043】
<成形条件>
・混合方法:ハンドミキシング
・攪拌機:ホモディスパー〔プライミクス(株)社製〕
・撹拌条件:8000rpm×2秒間
・液温:25℃
・成形容器:2Lポリカップ
得られた各フォームの成形性及び物性値の測定結果を表1に示す。
なお、表1では、使用する材料の仕込量を重量部で示している。また、有機イソシアネート(B)の仕込量は、インデックス(イソシアネート指数)で示している。
【0044】
各実施例、比較例における、前記の方法により測定した、クリームタイム、ゲルタイムライズ高さ最大時の80%の高さに到達する時間(t1)、ライズタイム(t2)、(t2)−(t1)、セトリング率、通気度、フリー密度の測定結果を表1に示す。
また、混合開始20秒後脱型後の変形の有無(無し:○、有り:×)、およびセル荒れの有無(無し:○、有り:×)の評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の製造方法で得られた軟質ウレタンフォームは、自動車内装用ヘッドレスト、アームレスト等の軟質ウレタンフォームのあらゆる用途で好適に使用できる。
特に、自動車内装材用ヘッドレストおよび/またはアームレストを表皮材(熱可塑性樹脂成形品など)と一体成形する軟質ウレタンフォームに好適である。