特許第6254207号(P6254207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6254207バイブロハンマの把持装置及び鋼矢板施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254207
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】バイブロハンマの把持装置及び鋼矢板施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20171218BHJP
   E02D 7/18 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   E02D13/00 Z
   E02D7/18
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-63985(P2016-63985)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-179735(P2017-179735A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002122
【氏名又は名称】調和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】中城 延浩
(72)【発明者】
【氏名】横山 博康
(72)【発明者】
【氏名】溝次 佳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 努
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇吉
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−107218(JP,A)
【文献】 特開2001−032275(JP,A)
【文献】 特開2014−237938(JP,A)
【文献】 特開2013−147851(JP,A)
【文献】 特開2010−209530(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/135861(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02773371(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
E02D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A,1B)と、
(b)前記2つのチャック(1A,1B)の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A,1B)の各々を前記アダプタ(3)の底板(32)に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)前記2つのチャック(1A,1B)の各々の上面に設けられかつフランジ高さ方向に延在するレール溝(24)を具備するスライドベース(21)と、
(c2)前記レール溝(24)にヘッド部(22a)が脱落不能に挿入されかつ螺子部(22b)が該レール溝(24)から上方に突出する複数のボルト(22)と、
(c3)前記アダプタ(3)の底板(32)に穿設された複数の孔(35)と、
(c4)前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(22)とそれぞれ締結される複数のナット(23)と、を具備し、
(c5)前記アダプタ(3)の前記底板(32)に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さ方向に沿った1つの列に前記複数のボルト(22)より多い数の孔(35)が配置されており、
(d)フランジ高さ方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A,1B)の固定位置をそれぞれ変更することにより、フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とするバイブロハンマの把持装置。
【請求項2】
前記アダプタ(3)の底板(32")に穿設された複数の孔(35)の列が、さらにピッチ幅方向に複数列配置されており、
ピッチ幅方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A,1B)の固定位置を変更することにより、ピッチ幅(W)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とする請求項1に記載のバイブロハンマの把持装置。
【請求項3】
フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A',1B')と、
(b)前記2つのチャック(1A',1B')の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A',1B')の各々を前記アダプタ(3)の底板(32)に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)複数のボルト(27A)と、
(c2)前記アダプタ(3)の底板(32)に穿設された複数の孔(35)と、
(c3)前記2つのチャック(1A',1B')の各々の上面に形成され前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(27A)がそれぞれ締結される複数の螺子穴(13A)と、を具備し、
(c4)前記アダプタ(3)の底板(32)に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さに沿った1つの列に前記複数のボルト(27A)より多い数の孔(35)が配置されており、
(d)フランジ高さ方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A',1B')の固定位置を変更することにより、フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とするバイブロハンマの把持装置。
【請求項4】
ピッチ幅(W)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A',1B')と、
(b)前記2つのチャック(1A',1B')の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A',1B')の各々を前記アダプタ(3)の底板(32')に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)複数のボルト(27A)と、
(c2)前記アダプタ(3)の前記底板(32')に穿設された複数の孔(35)と、
(c3)前記2つのチャック(1A',1B')の各々の上面に形成され前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(27A)がそれぞれ締結される複数の螺子穴(13A)と、を具備し、
(c4)前記アダプタ(3)の底板(32')に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さ方向に沿った1つの列に前記複数のボルト(27A)と同数の孔(35)が配置され、さらにピッチ幅方向に複数列配置されており、
(d)ピッチ幅方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A',1B')の固定位置を変更することにより、ピッチ幅(W)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とするバイブロハンマの把持装置。
【請求項5】
フランジ高さ(H)及び/又はピッチ幅(W)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A',1B')と、
(b)前記2つのチャック(1A',1B')の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A',1B')の各々を前記アダプタ(3)の底板(32")に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)複数のボルト(27A)と、
(c2)前記アダプタ(3)の前記底板(32")に穿設された複数の孔(35)と、
(c3)前記2つのチャック(1A',1B')の各々の上面に形成され前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(27A)がそれぞれ締結される複数の螺子穴(13A)と、を具備し、
(c4)前記アダプタ(3)の前記底板(32")に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さ方向に沿った1つの列に前記複数のボルト(27A)より多い数の孔(35)が配置され、さらにピッチ幅方向に複数列配置されており、
(d)フランジ高さ方向及び/又はピッチ幅方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A',1B')の固定位置を変更することにより、フランジ高さ(H)及び/又はピッチ幅(W)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とするバイブロハンマの把持装置。
【請求項6】
前記2つのチャック(1A,1B)又は前記2つのチャック(1A',1B')において、2つのチャックの一方を下側に他方を上側にして前記把持装置(10)を載置した際に、該2つのチャックの互いに対向する側面同士の間に連結される着脱式ストッパ(4)を備え、
前記着脱式ストッパ(4)は、所定の範囲で上下方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバイブロハンマの把持装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバイブロハンマの把持装置(10)を用いて鋼矢板(SP)の2箇所のウェブを把持し、鋼矢板(SP)の打ち込み又は引き抜きを行うことを特徴とする鋼矢板の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイブロハンマの把持装置に関し、特に鋼矢板を把持するための把持装置及び鋼矢板の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にバイブロハンマは、起振機とその下に取り付けられた把持装置とから構成されている。図13(a)(b)(c)は、従来のバイブロハンマの把持装置による種々の鋼矢板の把持方法の例を模式的に示した平面図である。例えば特許文献1、2等に記載されている。バイブロハンマの把持装置には、通常、固定爪と可動爪を具備するチャックが1つ又は2つ備えられている。鋼矢板の天端に固定爪と可動爪を差し込み、固定爪に対して可動爪を油圧駆動で移動させることにより鋼矢板を把持する。
【0003】
図13(a)は、U形鋼矢板のウェブを1つのチャックの固定爪と可動爪により把持する方法を示している。(b)は、ハット形鋼矢板の2つのフランジを2つのチャックにより把持する方法を示している。この場合、2つのチャックは所定の傾斜角をもって配置されている。(c)は、連結した2枚のZ形鋼矢板の隣り合う2つのウェブを2つのチャックにより把持する方法を示している。この場合、2つのチャックは並行して配置されている。
【0004】
土留め工事等において、特殊な形状の鋼矢板が必要となることがある。その場合、広幅鋼矢板やH形鋼を成型により作製すると型製作にコストと期間を要する。鋼板を溶接して作製すれば、必要な種々の形状の鋼矢板を低コストで短期間に作製可能である。図13(d)は、溶接により作製された鋼矢板SPとその仮想的な把持方法を模式的に示した平面図である。黒色部分が溶接部である。溶接によれば、鋼矢板SPのフランジ高さHとピッチ幅Wを任意に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭54−28323号公報
【特許文献2】特開2006−299562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図13(d)に示す鋼矢板SPの2箇所のウェブを把持するためには、把持装置の2つのチャックCH1、CH2を図示のように配置する必要がある。鋼矢板SPの2箇所のウェブは、フランジ高さH方向においてもピッチ幅W方向においても不特定の距離だけ離間している。従って、把持装置の2つのチャックCH1、CH2の位置を両方向に変更可能とする構成が要望される。
【0007】
上記の問題点に鑑み、本発明は、フランジ高さとピッチ幅が不特定である鋼矢板における2箇所のウェブを把持するために2つのチャックの位置を変更可能であるバイブロハンマの把持装置を提供することを目的とする。さらに、この把持装置を用いた鋼矢板の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は以下の構成を提供する。なお括弧内の数字は後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0009】
本発明の一態様は、フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A,1B)と、
(b)前記2つのチャック(1A,1B)の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A,1B)の各々を前記アダプタ(3)の底板(32)に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)前記2つのチャック(1A,1B)の各々の上面に設けられかつフランジ高さ方向に延在するレール溝(24)を具備するスライドベース(21)と、
(c2)前記レール溝(24)にヘッド部(22a)が脱落不能に挿入されかつ螺子部(22b)が該レール溝(24)から上方に突出する複数のボルト(22)と、
(c3)前記アダプタ(3)の底板(32)に穿設された複数の孔(35)と、
(c4)前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(22)とそれぞれ締結される複数のナット(23)と、を具備し、
(c5)前記アダプタ(3)の前記底板(32)に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さ方向に沿った1つの列に前記複数のボルト(22)より多い数の孔(35)が配置されており、
(d)フランジ高さ方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A,1B)の固定位置をそれぞれ変更することにより、フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とする。
【0010】
上記態様において、前記アダプタ(3)の底板(32")に穿設された複数の孔(35)の列が、さらにピッチ幅方向に複数列配置されており、ピッチ幅方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A,1B)の固定位置を変更することにより、ピッチ幅(W)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であるようにできる。
【0011】
本発明の別の態様は、フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A',1B')と、
(b)前記2つのチャック(1A',1B')の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A',1B')の各々を前記アダプタ(3)の底板(32)に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)複数のボルト(27A)と、
(c2)前記アダプタ(3)の底板(32)に穿設された複数の孔(35)と、
(c3)前記2つのチャック(1A',1B')の各々の上面に形成され前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(27A)がそれぞれ締結される複数の螺子穴(13A)と、を具備し、
(c4)前記アダプタ(3)の底板(32)に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さに沿った1つの列に前記複数のボルト(27A)より多い数の孔(35)が配置されており、
(d)フランジ高さ方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A',1B')の固定位置を変更することにより、フランジ高さ(H)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、ピッチ幅(W)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A',1B')と、
(b)前記2つのチャック(1A',1B')の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A',1B')の各々を前記アダプタ(3)の底板(32')に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)複数のボルト(27A)と、
(c2)前記アダプタ(3)の前記底板(32')に穿設された複数の孔(35)と、
(c3)前記2つのチャック(1A',1B')の各々の上面に形成され前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(27A)がそれぞれ締結される複数の螺子穴(13A)と、を具備し、
(c4)前記アダプタ(3)の底板(32')に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さ方向に沿った1つの列に前記複数のボルト(27A)と同数の孔(35)が配置され、さらにピッチ幅方向に複数列配置されており、
(d)ピッチ幅方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A',1B')の固定位置を変更することにより、ピッチ幅(W)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、フランジ高さ(H)及び/又はピッチ幅(W)の異なる鋼矢板を把持するためのバイブロハンマの把持装置(10)であって、
(a)固定爪(11)と、鋼矢板のフランジ高さ方向に駆動可能な可動爪(12)とをそれぞれ具備しかつ鋼矢板のピッチ幅方向に離間して位置する2つのチャック(1A',1B')と、
(b)前記2つのチャック(1A',1B')の上方に位置するアダプタ(3)と、
(c)前記2つのチャック(1A',1B')の各々を前記アダプタ(3)の底板(32")に固定するための固定手段と、を備え、前記固定手段は、
(c1)複数のボルト(27A)と、
(c2)前記アダプタ(3)の前記底板(32")に穿設された複数の孔(35)と、
(c3)前記2つのチャック(1A',1B')の各々の上面に形成され前記複数の孔(35)を貫通した前記複数のボルト(27A)がそれぞれ締結される複数の螺子穴(13A)と、を具備し、
(c4)前記アダプタ(3)の前記底板(32")に穿設された複数の孔(35)は、フランジ高さ方向に沿った1つの列に前記複数のボルト(27A)より多い数の孔(35)が配置され、さらにピッチ幅方向に複数列配置されており、
(d)フランジ高さ方向及び/又はピッチ幅方向において、前記アダプタ(3)に対する前記2つのチャック(1A',1B')の固定位置を変更することにより、フランジ高さ(H)及び/又はピッチ幅(W)の異なる鋼矢板の2箇所のウェブを把持可能であることを特徴とする。
【0014】
上記いずれかの態様において、前記2つのチャック(1A,1B)又は前記2つのチャック(1A',1B')において、2つのチャックの一方を下側に他方を上側にして前記把持装置(10)を載置した際に、該2つのチャックの互いに対向する側面同士の間に連結される着脱式ストッパ(4)を備え、前記着脱式ストッパ(4)は、所定の範囲で上下方向に伸縮可能であるようにできる。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、上記いずれかのバイブロハンマの把持装置(10)を用いて鋼矢板(SP)の2箇所のウェブを把持し、鋼矢板(SP)の打ち込み又は引き抜きを行うことを特徴とする鋼矢板の施工方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバイブロハンマの把持装置は、2つのチャックをアダプタに固定する固定手段において、鋼矢板のフランジ高さ方向及び/又はピッチ幅方向に相当する方向の固定位置を変更可能としたことにより、多様なフランジ高さとピッチ幅をもつ鋼矢板における2箇所のウェブを把持するように適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第1の実施形態の構成例を概略的に示したものであり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図2図2(a)は、第1の実施形態の平面図、(b)は底面図である。
図3図3は、第1の実施形態の展開図である。
図4図4(a)はスライドベースを取り付けたチャックの斜視図、(b)は(a)のA−A拡大断面図、(c)はスライドベースとアダプタ底板との固定状態を示す断面図である。
図5図5(a)は第1の実施形態のアダプタの底板の底面図、(b)(c)は第1の実施形態の把持装置によりフランジ高さの異なる鋼矢板を把持した状態の底面図である。
図6図6は、第1の実施形態の図5に相当する第2の実施形態の図であり、(a)はアダプタの底板の底面図、(b)(c)は第2の実施形態の把持装置によりフランジ高さ及びピッチ幅の異なる鋼矢板を把持した状態の底面図である。
図7図7は、第1の実施形態の図5に相当する第3の実施形態の図であり、(a)はアダプタの底板の底面図、(b)はチャックの概略斜視図、(c)(d)は第3の実施形態の把持装置によりフランジ高さの異なる鋼矢板を把持した状態の底面図である。
図8図8は、第1の実施形態の図5に相当する第4の実施形態の図であり、(a)はアダプタの底板の底面図、(b)はチャックの概略斜視図、(c)(d)は第4の実施形態の把持装置によりピッチ幅の異なる鋼矢板を把持した状態の底面図である。
図9図9は、第1の実施形態の図5に相当する第4の実施形態の図であり、(a)はアダプタの底板の底面図、(b)はチャックの概略斜視図、(c)(d)は第5の実施形態の把持装置によりフランジ高さ及びピッチ幅の異なる鋼矢板を把持した状態の底面図である。
図10図10は、本発明の把持装置の第6の実施形態を概略的に示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
図11図11(a)は、図10(a)に示した着脱式ストッパ4の近傍の拡大縦断面図であり、(b)は第1部材の、(c)は第2部材の斜視図である。
図12図12は、着脱式ストッパの別の実施形態を示す図である。
図13図13(a)〜(c)は、従来のバイブロハンマの把持装置による種々の鋼矢板の把持方法の例を模式的に示した平面図である。(d)は、複数の鋼板を溶接して作製された鋼矢板SPの把持方法を模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各実施形態及び変形例の図面において、同じ構成要素又は類似の構成要素については同じか又は類似の符号を付している。
【0019】
本発明に係るバイブロハンマの把持装置は、図13(d)に示した溶接等により作製された多様なフランジ高さ及び/又はピッチ幅をもつ鋼矢板を把持対象とし、このような鋼矢板に適応可能としたものである。以下に示す本発明の把持装置の幾つかの実施形態の中には、フランジ高さの変更にのみ適応可能なもの、ピッチ幅の変更にのみ適応可能なもの、フランジ高さとピッチ幅の双方の変更に適用可能なものがある。このような鋼矢板における2箇所のウェブを把持するために、本発明の把持装置の各実施形態は、2つのチャックすなわち2組の固定爪と可動爪を有する。
【0020】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第1の実施形態の構成例を概略的に示したものであり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。同じく図2(a)は平面図、(b)は底面図である。
【0021】
第1の実施形態は、鋼矢板のフランジ高さの変更に適応可能な形態である。把持装置10は、把持部1と、スライドベース部2と、アダプタ3とから構成されている。
【0022】
把持部1は、2つのチャック1A、1Bを有する。各チャックは、基本的に同じ構成を有し、内部に油圧駆動機構を具備し、下部に固定爪11と可動爪12を具備する。以下、チャック1Aのみについて説明する場合があるが、チャック1Bについても全く同様である。
【0023】
可動爪12は油圧駆動機構により固定爪11に対して接近/離間するように駆動される。各チャックの可動爪12の固定爪11に対する駆動方向は同じ向きである。
【0024】
把持装置10を、図13(d)に示した把持対象の鋼矢板に設置する場合、可動爪12の駆動方向が当該鋼矢板のフランジ高さHの方向と一致する。また、可動爪12の駆動方向に垂直な方向が当該鋼矢板のピッチ幅Wの方向と一致する。よって、本発明の把持装置の説明では、可動爪駆動方向を便宜上「フランジ高さ方向」と称し、可動爪駆動方向に垂直な方向を便宜上「ピッチ幅方向」と称することとする。他の実施形態においても同様とする。
【0025】
鋼矢板において把持される2箇所のウェブは、フランジ高さ方向及びピッチ幅方向において互いに離れた位置にあるので、チャック1A、1Bも基本的に各方向において互いに離れた位置にある。チャック1A、1Bは互いに、いわゆる対角線上ないしは斜交いの位置にある。
【0026】
スライドベース部2は、チャック1A、1Bの各々の上面に設けられている。スライドベース部2は、チャック1A、1Bを上方に位置するアダプタ3に固定するための固定手段である。スライドベース部2は、スライドベース21を具備する。スライドベース21は、ボルト27によりチャック1A、1Bの上面に固定されている。
【0027】
さらにスライドベース21は、図1及び図2(a)に示すボルト22及びナット23により、その上に位置するアダプタ3とも固定されるが、その固定位置は、フランジ高さ方向において変更可能である。スライドベース21のアダプタ3に対する固定位置の変更機構については、図3図4を参照して後述する。
【0028】
アダプタ3は、チャック1A、1Bをバイブロハンマの起振機(図示せず)に取り付けるために、チャック1A、1Bの上方に位置する部材である。アダプタ3は、天板31と、底板32と、これらの間を連結する縦枠板33と、天板31の上面に固定された起振機用のベース板34とを有する。図2(b)の底面図に示すように、アダプタ3の底板32には、スライドベース21との固定のための複数の孔35が穿設されている。複数の孔35は、チャック1A、1Bの各々のスライドベース21に対し一列ずつ設けられ、フランジ高さ方向に並んでいる。
【0029】
図3は、第1の実施形態の把持装置の展開図である。図4(a)はスライドベースを取り付けたチャック1Aの斜視図、(b)は(a)のA−A拡大断面図、(c)はスライドベース21とアダプタの底板32との固定状態を示す断面図である。
【0030】
図3に示すように、スライドベース21は、ボルト27を孔28に通してチャック1Aの上面の螺子穴13に締結することにより、チャック1Aの上面に固定されている。
【0031】
スライドベース21の上面にはレール溝24が設けられている。レール溝24は、スライドベース21の両端間(フランジ高さ方向)に延在している。図4(b)の拡大断面に示すように、レール溝24の断面は、溝底部24aが広く開口部24bが狭くなっている。図4(c)に示すように、ボルト22は、そのヘッド部22aがレール溝24の溝底部24aの空間に嵌合するように挿入される。また図3に示すように、ボルト22の挿入後、レール溝24の両端にはストッパ部材25がビス26で取り付けられる。これにより、ボルト22はレール溝24から脱落不能となる。なお、ボルト22は、レール溝24に複数個(図1の例では5個)挿入される。
【0032】
図3及び図4(c)に示すように、ボルト22の螺子部22bは、レール溝24から上方に突出している。ボルト22の螺子部22bは、アダプタ3の底板32の孔35を下から上に貫通し、ナット23と締結される。これによりスライドベース21すなわちチャック1Aが、アダプタ3に固定される。
【0033】
図3に示すように、アダプタ3の底板32の孔35は、図示の例では、フランジ高さ方向に8個穿設されている。一方、スライダベース21のレール溝に挿入されるボルト22は、図1の例では5個である。従って、5個のボルト22を貫通させる5個の孔35を、8個の孔35から選択することにより、チャック1Aのアダプタ3に対する固定位置を変更することが可能である。
【0034】
このように、ボルト22の数よりも孔35の数を多く設けることにより、固定位置の変更が可能となる。一段階の変更間隔は、孔35の間隔と一致する。図示の例では、孔35が8個でボルトが5個であるので3段階で固定位置を変更することができる。
【0035】
さらに5個のボルト22は、固定前であれば、レール溝24内において所定の範囲でスライド可能であるので、その範囲内で位置を変更可能である。これにより、チャック1Aの固定位置の微調整が可能となる。
【0036】
なお、図3の展開図では、チャック1Bにおけるチャック1Aと対向する側面の下端近傍に複数の螺子穴14が形成されている。これらの螺子穴14は、チャック1Aにおけるチャック1Bと対向する側面にも形成されている。これらの螺子穴14の役割については、図10図12において後述する。
【0037】
図5(a)は第1の実施形態のアダプタ3の底板32の底面図、(b)(c)は第1の実施形態の把持装置によりフランジ高さHの異なる鋼矢板SPを把持した状態の底面図である。図5(a)に示すように、チャック1A、1Bの各々につき孔35が一列8個で並んでいる。各チャックを固定するスライドベース部2のボルト22(図5では現れていない)がそれぞれ5個である場合を例として説明する。
【0038】
図5(b)は、フランジ高さの最も小さい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1Aは最も右寄りの5個の孔35に固定され、チャック1Bは最も左寄りの5個の孔35に固定されている。
【0039】
図5(c)は、フランジ高さの最も大きい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1Aは最も左寄りの5個の孔35に固定され、チャック1Bは最も右寄りの5個の孔35に固定されている。
【0040】
なお、1つのチャックに割り当てられた一列8個の孔35と5個のボルト22に関しては、3段階の位置変更が可能である。構造的には、2つのチャック1A、1Bの固定位置の組み合わせは3段階より多いが、バイブロハンマの稼働を考慮すると、2つのチャック1A、1Bを起振中心に対して対称に配置することが好ましい(以下の他の実施形態についても同様)。
【0041】
溶接により作製される鋼矢板は、同じ設計寸法であってもばらつきを生じる可能性があるが、スライドベース21に対するボルト22の相対的位置の微調整によって鋼矢板のフランジ高さにばらつきがある場合にも適応可能である。
【0042】
孔35の数及び間隔並びにボルト22の数は適宜設定する。フランジ高さ方向については、孔の数を増やし変更範囲を大きく採っても把持装置を比較的コンパクトに留めることが可能である。これは、底板32がフランジ高さ方向に長く、ピッチ幅方向に短い形状であることによる。
【0043】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形形態であり、鋼矢板のフランジ高さ及びピッチ幅の双方の変更に適応可能な形態である。第2の実施形態については、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
【0044】
図6は、第1の実施形態の図5に相当する第2の実施形態の図であり、(a)はアダプタ3の底板32の底面図、(b)(c)は第2の実施形態の把持装置によりフランジ高さH及びピッチ幅Wの異なる鋼矢板SPを把持した状態の底面図である。
【0045】
図6(a)に示すように、第2の実施形態ではアダプタ3の底板32”の形状が第1の実施形態とは異なる。底板32”には、チャック1A、1Bの各々につき、第1の実施形態の一列8個の孔35が、二列に並んで形成されている。二列の孔35は、ピッチ幅方向に並んでいる。チャック1A、1Bのスライドベース部2のボルト22(図6では現れていない)が、それぞれ5個である場合を例として説明する。
【0046】
図6(b)は、フランジ高さH1が中間的長さでありピッチ幅W1が小さい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1A及びチャック1Bは、フランジ高さ方向の8個の孔35のうち中央の5個を選択し、かつ、ピッチ幅方向においては内側の列の孔35を選択して固定されている。
【0047】
図6(c)は、フランジ高さH2が最大でピッチ幅W2が大きい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、フランジ高さ方向の8個の孔35のうち、チャック1Aは最も左寄りの5個の孔35を、チャック1Bは最も右寄りの5個の孔35を選択し、かつ、ピッチ幅方向においては双方とも外側の列の孔35を選択して固定されている。
【0048】
構造的には、例えばチャック1Aを内側の列の孔に、チャック1Bを外側の列の孔に固定することも可能であるが、バイブロハンマの稼働を考慮すると、2つのチャック1A、1Bを起振中心に対して対称に配置することが好ましい(以下の他の実施形態についても同様)。
【0049】
ピッチ幅方向に形成する孔35の列の数は、2列に限らずそれより多くてもよい。しかしながら、ピッチ幅方向については変更範囲を大きく採ると把持装置の質量が大きく増すことになるため、孔35の列の数は多くとも3列程度が好ましい。
【0050】
また、ピッチ幅方向についてもスライドベースを設けることは、構造的には可能である。しかしながら、把持装置の質量が増大することにより必要な振幅や振動加速度が得られ難くなることから、スライドベースはフランジ高さ方向にのみ設けることが好ましい。
【0051】
(3)第3の実施形態
第3の実施形態は、第1の実施形態のスライドベース部2を設けない簡易形であって、鋼矢板のフランジ高さの変更に適応可能な形態である。第3の実施形態については、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
【0052】
図7は、第1の実施形態の図5に相当する第3の実施形態の図であり、(a)はアダプタ3の底板32の底面図、(b)はチャック1A’の概略斜視図、(c)(d)は第3の実施形態の把持装置によりフランジ高さHの異なる鋼矢板SPを把持した状態の底面図である。
【0053】
図7(a)に底面図を示すアダプタ3の底板32は、第1の実施形態の図5(a)と同じである。図7(b)に示すように、第3の実施形態ではチャック1A’の上面にスライドベース部が無く、チャック1A’をアダプタ3の底板32に直接固定する。固定方法は多様に考えられるが、例えば、複数のボルト27Aをそれぞれ、底板32の一列の孔35に上から下に貫通させ、チャック1A’の上面に形成された複数の一列の螺子穴13Aに締結する。
【0054】
図7の例では、チャック1A’を固定するためのボルト27A及び螺子穴13Aは4個であるので、アダプタ3の底板32の一列8個の孔35のうちのいずれの4個を選択するかによって、チャック1A’のアダプタ3に対する固定位置を変更できる。
【0055】
図7(c)は、フランジ高さH1が中間的長さの鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1A’及びチャック1B’は、フランジ高さ方向の8個の孔35のうち中央付近の4個を選択して固定されている。
【0056】
図7(d)は、フランジ高さH2が最大の鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、フランジ高さ方向の8個の孔35のうちチャック1A’は最も左寄りの4個の孔35を、チャック1B’は最も右寄りの4個の孔35を選択して固定されている。
【0057】
なお、第3の実施形態では、スライドベース部が無いので、チャック1A’、1B’のアダプタ3に対する位置を微調整することはできない。
【0058】
(4)第4の実施形態
第4の実施形態は、第3の実施形態と同様にスライドベース部を設けない簡易形であって、鋼矢板のピッチ幅の変更に適応可能な形態である。第4の実施形態は、第3の実施形態の変形形態であるので、第3の実施形態と異なる点のみを説明する。
【0059】
図8は、第1の実施形態の図5に相当する第4の実施形態の図であり、(a)はアダプタ3の底板32’の底面図、(b)はチャック1A’の概略斜視図、(c)(d)は第4の実施形態の把持装置によりピッチ幅Wの異なる鋼矢板SPを把持した状態の底面図である。
【0060】
図8(a)に底面図を示すアダプタ3の底板32’は、1つのチャックに対し、一例としてフランジ高さ方向に沿って一列4個の孔35が形成され、この列がピッチ幅方向に二列形成されている。第4の実施形態では、底板32’の一列の孔35の数は、図8(b)に示すチャック1A’の上面の螺子穴13Aの数と一致している。従って、第4の実施形態では、フランジ高さ方向におけるチャック1A’の位置は変更できず、フランジ高さHの異なる鋼矢板には適応できない。
【0061】
図8(c)は、ピッチ幅W1が小さい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1A’及びチャック1B’は、ピッチ幅方向において内側の列の孔35を選択して固定されている。
【0062】
図8(d)は、ピッチ幅W2が大きい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1A’及びチャック1B’は、ピッチ幅方向において外側の列の孔35を選択して固定されている。
【0063】
(5)第5の実施形態
第5の実施形態は、第3及び第4の実施形態と同様にスライドベース部を設けない簡易形であって、鋼矢板のフランジ高さ及びピッチ幅の変更に適応可能な形態である。第5の実施形態は、第3の実施形態と第4の実施形態の双方の特徴をもつ変形形態である。
【0064】
図9は、第1の実施形態の図5に相当する第5の実施形態の図であり、(a)はアダプタ3の底板32”の底面図、(b)はチャック1A’の概略斜視図、(c)(d)は第5の実施形態の把持装置によりフランジ高さ及びピッチ幅の異なる鋼矢板を把持した状態の底面図である。
【0065】
図9(a)に底面図を示すアダプタ3の底板32”は、1つのチャックに対し、一例としてフランジ高さ方向に沿って一列8個の孔35が形成され、この列がピッチ幅方向に二列形成されている。図9(b)に示すチャック1A’の上面の螺子穴13Aの数は、一例として4個である。
【0066】
図9の例では、アダプタ3の底板32”の一列8個の孔35のうちのいずれの4個を選択するかによって、フランジ高さ方向におけるチャック1A’のアダプタ3に対する固定位置を変更できる。また、二列のうち内側と外側のいずれを選択するかによって、ピッチ幅方向おけるチャック1A’のアダプタ3に対する固定位置を変更できる。
【0067】
図9(c)は、フランジ高さH1が中間的長さでピッチ幅W1が小さい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、チャック1A’及びチャック1B’は、フランジ高さ方向については8個の孔35のうち中央付近の4個を選択して固定されている。ピッチ幅方向については、内側の列の孔35を選択して固定されている。
【0068】
図9(d)は、フランジ高さH2が最大でピッチ幅W2が大きい鋼矢板SPを把持した例を示す。この場合、フランジ高さ方向の8個の孔35のうちチャック1A’は最も左寄りの4個の孔35を、チャック1B’は最も右寄りの4個の孔35を選択して固定されている。ピッチ幅方向については、外側の列の孔35を選択して固定されている。
【0069】
(6)第6の実施形態
図10は、本発明の把持装置の第6の実施形態を概略的に示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。第6の実施形態は、把持装置の仮置き時の安定姿勢を維持するための構造に係る。
【0070】
把持装置10を仮置きする場合、図10に示すようにアダプタ3にチャック1A、1Bを施工時と同じ状態で固定したまま、正面又は背面を下方に向けた横倒しの状態で載置される。さらに、アダプタ3に起振機が取り付けられたまま仮置きされる場合もある。何らの対策もしないならば、片持ち梁状態のチャック1Aの荷重により、アダプタ3との固定部分に大きな負荷が掛かることになる。この結果、把持装置10に歪みや損傷を生じるおそれがある。
【0071】
そこで本発明では、仮置き時に横倒しする前に、チャック1Aとチャック1Bの対向する側面の間に着脱式ストッパ4を予め装着する。着脱式ストッパ4は、チャック1Aとチャック1Bの間の距離と基本的に同じ長さを有する柱状部材である。
【0072】
着脱式ストッパ4は、図3の展開図に示したチャック1B(チャック1Aも同様)の螺子穴14を利用して固定される。着脱式ストッパ4は、例えば、図3に示した二列に並んだ多数の螺子穴14のうち4個(矩形の頂点位置の4個)を選択して固定される。また、図10(b)の底面図に示すように、チャック1Aとチャック1Bの実際に対向している部分の中央に配置することが好ましい。
【0073】
図11(a)は、図10(a)に示した着脱式ストッパ4の近傍の拡大縦断面図であり、(b)は第1部材の、(c)は第2部材の斜視図である。
【0074】
図11(a)に示すように、着脱式ストッパ4は、第1部材41と第2部材42を組み合わせて構成される。第1部材41は固定板41bと固定具41cによりチャック1Bの側面に固定され、第2部材42は固定板42bと固定具42cによりチャック1Aの側面に固定される。図示の例では第1部材41を下側のチャック1Bに、第2部材42を上側のチャック1Aに固定しているが、上下を逆にしてもよい。
【0075】
さらに第1部材41と第2部材42はそれぞれ、柱状部41a、42aを具備する。図示の例で柱状部41a、42aは円柱であるが多角柱でもよい。第2部材42の柱状部42の先端部分は、第1部材41の柱状部41aの先端部分に所定の長さだけ嵌入されている。さらに、第2部材42の柱状部42aの周囲には、所定の位置に環状鍔部42dが突出している。この環状鍔部42dは、第1部材41の柱状部41aの先端から距離tの位置に設けられている。
【0076】
チャック1Aは、その荷重により距離tだけ下降することができるが、第2部材42の環状鍔部42dが第1部材41の先端に当たることによりそれ以上は下降できない。このようにしてチャック1Aが着脱式ストッパ4により支持される。
【0077】
第1部材41に第2部材42を部分的に嵌入できることにより、横倒しする前のチャック1Aとチャック1Bの間に着脱ストッパ4を容易に挿入でき、簡単に取り付けることができる。チャック1Aとチャック1Bを再び起立させた後に取り外す場合も同様である。
【0078】
図12は、着脱式ストッパの変形形態を示す図である。本発明の把持装置では、チャック1Aと1Bが、フランジ高さ方向において大きく離れる場合がある。その場合、図12に示すように、実際に対向している部分が無いときもある。このようなときに把持装置を仮置きする場合は、図示の着脱式ストッパ4’を用いる。
【0079】
着脱式ストッパ4’は、第1部材41は図11の形態と同じであるが、第2部材42’が2つの屈曲部をもつエルボ形部材となっている。
【0080】
図10図12に示した着脱式ストッパ4、4’は、上述した第1〜第5の実施形態の把持装置にいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 把持装置
1 把持部
1A、1B、1A’、1B’ チャック
13、13A、14 螺子穴
2 スライドベース部
21 スライドベース
22 ボルト
23 ナット
24 レール溝
25 ストッパ部材
27 ボルト
3 アダプタ
31 天板
32、32’、32” 底板
35 孔
4、4’ 着脱式ストッパ
41 第1部材
42 第2部材
42d 環状鍔部
SP 鋼矢板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13