【文献】
MediaTek Inc.,Power control problem of multiple PA,3GPP TSG-RAN2 #79 Meeting R2-123608,3GPP,2012年 8月13日
【文献】
LG Electronics,Power Headroom Report in Carrier Aggregation,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #62bis R1-105650,3GPP,2010年10月11日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分配比率は、前記複数の無線基地局それぞれにつき1つのコンポーネントキャリアが設定される場合、前記複数の無線基地局ごとに設定されることを特徴とする請求項2に記載のユーザ端末。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、HetNetの概念図である。
図1Aは、マクロセルとスモールセルとで同一の周波数帯を用いた場合を示している。
図1Bは、マクロセルとスモールセルとで異なる周波数帯を用いた場合を示している。
【0013】
図1に示すように、HetNetは、マクロセルとスモールセルの少なくとも一部が地理的に重複して配置される無線通信システムである。また、HetNetは、マクロセルを形成する無線基地局(以下、マクロセル基地局という)と、スモールセルを形成する無線基地局(以下、スモールセル基地局という)と、マクロセル基地局およびスモールセル基地局と通信するユーザ端末と、を含んで構成される。
【0014】
図1Aに示す場合、マクロセルとスモールセルにおいて、たとえば、0.8GHz(800MHz)や2GHzなどの同一の周波数帯のキャリアを適用することができる。
図1Bに示す場合、マクロセルにおいて、たとえば、0.8GHz(800MHz)や2GHzなどの相対的に低い周波数帯のキャリアが用いられる。一方、複数のスモールセルにおいて、たとえば、3.5GHzなどの相対的に高い周波数帯のキャリアが用いられる。
【0015】
また、スモールセルとマクロセルとが異なる無線基地局で運用される場合、マクロセル基地局とスモールセル基地局とは、バックホールで接続されて相互に情報のやり取りを行う。マクロセル基地局とスモールセル基地局間の接続は、光ファイバ(Optical fiber)や非光ファイバの有線接続、あるいは無線接続とすることが考えられる。なお、マクロセル基地局とスモールセル基地局間を光ファイバ以外の回線で接続する場合には、マクロセル基地局とスモールセル基地局間の情報の送受信において遅延時間が非常に大きくなる。理想的には、バックホールの伝達遅延は0ミリ秒であるが、バックホールの環境によっては最大で伝達遅延が数10ミリ秒となる可能性がある。
【0016】
図2Aは、基地局内CoMP/CAの概念図である。基地局内CoMP/CAにおいては、1つの基地局(
図2Aにおいて基地局1)が2つの基地局のスケジューリングを制御することが想定されている。
【0017】
図2Bは、基地局間CoMP/CAの概念図である。基地局間CoMP/CAにおいては、2つの基地局(
図2Bにおいて基地局1および2)がそれぞれ独立にスケジューリングを制御することが想定されている。基地局1と基地局2は、遅延の無視できないバックホール(Non-ideal backhaul)で接続され、相互に情報をやり取りする。
【0018】
図2Bに示す基地局間CoMP/CAにおいては、2つの基地局に対して、1つのユーザ端末のみが存在している。したがって、ユーザ端末は、2つの基地局から、独立かつ同時に下りリンク信号が送信される可能性がある。
【0019】
また、基地局間CoMP/CAにおいて、ユーザ端末は、2つの基地局から、独立かつ同時に上りリンク信号の送信を割り当てられる可能性がある。この場合、リソース割り当てや伝搬路変動および閉ループ送信電力制御等に起因して、ユーザ端末の送信電力制御値が上限規定を上回るおそれがある。一方、ユーザ端末の送信電力が不足しないように制御すると、割当リソースが十分でなくなるおそれがある。
【0020】
本発明においては、基地局間CAを対象として検討する。基地局間CAでは、マクロセル基地局とスモールセル基地局が異なる周波数でユーザ端末と通信を行う。
【0021】
従来のLTE,LTE−Aシステムにおいて、ユーザ端末のCCあたりの上りリンク信号の送信電力P
PUSCH,c(i)は、下記式(1)で表される。
P
PUSCH,c(i)=min{P
CMAX,c(i),10log
10(M
PUSCH,c(i))+P
O_PUSCH,c(j)+α
c(j)・PL
c+Δ
TF,c(i)+f
c(i)}[dBm]
(1)
【0022】
ここで、P
CMAX,c(i)はユーザ端末のCCCCあたりの最大送信電力であり、M
PUSCH,c(i)はPUSCHのリソースブロック数であり、P
O_PUSCH,c(j)は基地局より通知される送信電力オフセットに関するパラメータであり、αは基地局より指定されるフラクショナルTPC(Transmission Power Control)の傾斜パラメータであり、PL
cは伝搬損失(パスロス)であり、Δ
TF,c(i)は変調方式および符号化率に基づく電力オフセット値であり、f
c(i)はTPCコマンドによる補正値である。
【0023】
ユーザ端末は、上記式(1)に基づいて送信電力を決定する。ユーザ端末は、送信電力が許容最大送信電力に達した場合には、所定の優先度に従って送信電力を調整する。
【0024】
ユーザ端末は、基地局に対して、ユーザ端末の余剰送信電力を報告するためのPHR(Power Headroom Report)をフィードバックする。PHRは、ユーザ端末の送信電力P
PUSCHと最大送信電力P
CMAXとの差分情報であるPHと、2ビットのリザーブド(Reserved)領域とを含んで構成される。
【0025】
上記式(1)に示すように、ユーザ端末の送信電力P
PUSCHは、下りリンクから推定されるパスロスPL
cに基づいて算出されるよう構成されている。ユーザ端末は、パスロスの変化値が所定値より大きい場合に、PHRを基地局にフィードバックする。CAが行われている場合には、複数のコンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)が用いられているため、基地局は制御を行っているCC以外のパスロスPL
cを知ることはできない。
【0026】
ユーザ端末の余剰送信電力PH
type1,c(i)は、下記式(2)で表される。
PH
type1,c(i)=P
CMAX,c(i)-{10log
10(M
PUSCH,c(i))+P
O_PUSCH,c(j)+α
c(j)・PL
c+Δ
TF,c(i)+f
c(i)}[dB]
(2)
【0027】
図3は、ユーザ端末の余剰送信電力PHを説明するための概念図である。
図3Aに示すように、ユーザ端末の送信電力P
PUSCHが最大送信電力P
CMAXに達していない場合には、最大送信電力P
CMAXから送信電力P
PUSCHを差し引いた値を余剰送信電力PHの値として通知する。
【0028】
図3Bに示すように、ユーザ端末の送信電力P
PUSCHが最大送信電力P
CMAXに達している場合には、実際の送信電力を最大送信電力P
CMAXの値として、余剰送信電力PHの値は上記式(2)に基づいて負の値を通知する。
【0029】
上述のようなTPC制御およびPHR制御を基地局間CoMP/CAに適用する場合、CC間でMACスケジューラやTPC制御が独立であるため、各基地局はユーザ端末の送信電力状況を完全に把握することができない。
【0030】
すなわち、基地局は、制御を行っているCC以外に対して上記式(1)における、リソースブロック数M
PUSCH,c(i)、パスロスPL
c、変調方式および符号化率に基づく電力オフセット値Δ
TF,c(i)、TPCコマンドによる補正値f
c(i)の値を把握することができない。これらの値は基地局にとって未知の変数となる。
【0031】
ユーザ端末からPHRをフィードバックされた場合も、基地局は、ユーザ端末が他の基地局が運用するセルの余剰送信電力PHの算出に用いた変数を把握できていないため、パスロスPL
cを推定することができない。
【0032】
図4は、
図2Bに示すユーザ端末がフィードバックする余剰送信電力PHを説明するための概念図である。
図4におけるPH
1は、
図2Bにおける基地局1が運用するセルに対する余剰送信電力の値を示す。
図4におけるPH
2は、
図2Bにおける基地局2が運用するセルに対する余剰送信電力の値を示す。
【0033】
本発明者らは、基地局間CoMP/CAを適用する場合において、ユーザ端末が、自端末の送信電力が最大送信電力に達した場合に、自律でパワースケーリングを行うことにより送信電力制御値を上限規定以下とする制御を行うことを見出した。
【0034】
具体的には、ユーザ端末が、自端末の送信電力が最大送信電力に達したことを検出した場合に、あらかじめ規定されたパワースケーリングルールに基づいて送信電力制御を行うことを特徴とする。これにより、優先すべき信号を確実に伝送することが可能となる。また、ネットワークにおいてユーザ端末動作の監視性を高めることが可能となる。なお、ユーザ端末は、送信電力を算出する際に、自端末の送信電力が最大送信電力に達したこと、すなわちパワーリミット状態であることを検出することが可能である。
【0035】
以下、送信電力制御を行うために規定されるパワースケーリングルールについて、詳細に説明する。
【0036】
(第1の態様)
第1の態様では、ユーザ端末が、物理チャネルの優先順位規定に基づいて送信電力制御を行う方法について説明する。
【0037】
ユーザ端末は、異なる物理チャネルが割り当てられた場合に、自端末がパワーリミット状態であることを検出すると、物理チャネルの優先順位規定に基づいて送信電力制御を行うことができる。たとえば、ユーザ端末は、上りリンクで送信する信号であるPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)とPUCCH(Physical Uplink Control Channel)とを同時送信する場合に、PUCCHに対して優先的に電力割り当てを行うことができる。
【0038】
ユーザ端末は、同一の物理チャネルが割り当てられた場合に、自端末がパワーリミット状態であることを検出すると、伝送情報に応じて優先順位をつけて送信電力制御を行うことができる。
【0039】
たとえば、ユーザ端末は、制御情報を含むPUSCHに対して、制御情報を含まないPUSCHよりも優先的に電力割り当てを行うことができる。また、ユーザ端末は、レイヤ1の制御信号であるUCI(Uplink Control Information)が多重されているPUSCHに対して、優先的に電力割り当てを行うことができる。また、ユーザ端末は、無線リンク制御(RLC:Radio Link Control)のレイヤ、またはパケットデータ制御プロトコル(PDCP:Packet Data Control Protocol)のレイヤの制御信号(control PDU(Protocol Data Unit))を含んでいるPUSCHに対して、優先的に電力割り当てを行うことができる。さらに、ユーザ端末は、RRCメッセージを含んでいるPUSCHに対して、優先的に電力割り当てを行うことができる。
【0040】
(第2の態様)
第2の態様では、ユーザ端末に対して、優先して電力割り当てを行うCCを規定またはシグナリングする方法について説明する。
【0041】
ユーザ端末は、自端末がパワーリミット状態であることを検出すると、CCインデックスで規定されたCCに対して優先的に電力割り当てを行うことができる。あるいは、ユーザ端末は、電力割り当ての対象が、PCellのCCか、SCellのCCかを区別して、優先的に電力割り当てを行うことができる。たとえば、ユーザ端末は、PCellのCCに対して優先的に電力割り当てを行ってもよい。この場合には、PCellの制御情報を優先することにより、高信頼の通信を実現することが可能となる。
【0042】
ユーザ端末に対して、CCの優先順、優先する単一もしくは複数のCC、または優先しない単一もしくは複数のCCをシグナリングすることができる。この場合、ユーザ端末は、シグナリングされたCCに基づいて、送信電力制御を行うことができる。
【0043】
優先して電力割り当てを行うCCは、物理チャネルごとに定めてもよい。これにより、PCellまたはSCellの役割に応じた優先順位の規定が可能となる。たとえば、C−plane/U−plane Splitを想定して、PUCCHに関してCC#1を優先し、PUSCHに関してCC#2および#3を優先する方法が考えられる。
【0044】
優先するCCを規定またはシグナリングする方法に替えて、優先するTAG(Timing Advance Group)を規定またはシグナリングしてもよい。一般的に異なる位置の基地局では異なるTAGを用いるため、TAGごとに優先度を変えることは基地局ごとに優先度を定めることと等しくなる可能性が高い。
【0045】
(第3の態様)
第3の態様では、ユーザ端末が、優先して電力割り当てを行うセルを切り替える方法について説明する。
【0046】
ユーザ端末は、時間的(たとえば、TTI(Transmission Time Interval)単位)に優先して電力割り当てを行うセル、すなわち優先送信するセルを切り替えることができる。
【0047】
ユーザ端末は、優先順位を各CCに対して等確率に切り替えることにより、各セルに対して平等に割り当て機会を与えてもよい。また、各CCの優先確率は、たとえば上位レイヤでユーザ端末に指定されてもよい。これにより、適切なネットワーク運用と電力割り当て機会の制御を実現することができる。
【0048】
基地局は、ユーザ端末に対して、優先するCCを設定できる構成であってもよい。たとえば、基地局は、ULグラントに優先度の高低を含めて、優先するCCを通知してもよい。複数のULグラントの優先度が同一となる場合には、たとえばPCellを優先するようにしてもよい。また、基地局は、上位レイヤにて、優先するCCを通知してもよい。
【0049】
(第4の態様)
第4の態様では、CAが設定(configure)された場合に、ユーザ端末の最大送信電力を各CCに分配する方法について説明する。
【0050】
最大送信電力の分配については、ネットワークから設定できるよう構成されていてもよいし、あらかじめ決められた規定に従って算出するよう構成されていてもよい。たとえば、分配比率を等分配とするようにあらかじめ規定することができる。
【0051】
たとえば、2CC送信を行う場合であって、ユーザ端末の最大送信電力が23[dBm]である場合に、CCごとの最大送信電力を当分配の20[dBm]と設定することができる。しかしながら、このような制約を課した場合には、一方のCCの送信電力が極めて小さい場合または無送信の場合においても、他方のCCの最大送信電力が制限されてしまう。
【0052】
これに対して、送信電力の分配を、ユーザ端末がパワーリミット状態である場合に限定して行うことにより、不必要な送信電力の制限を回避することができる。この場合には、ユーザ端末がパワーリミット状態であり、かつ、CCごとの最大送信電力の制限を超えている場合に、電力補正を行うようにするとよい。
【0053】
CCごとの最大送信電力を設定した場合には、パスロスの大きなセルに対して十分なリソース割り当てが行えないことがある。これに対して、たとえば、送信電力ではなく割当リソースブロック数の観点で分配量を定めてもよい。
【0054】
(その他)
図5に示すように、ユーザ端末に複数のCC(CC#1と#2)が割り当てられている場合、送信電力の大きいCC#1に対して、優先的に電力制御を適用することができる。この場合には、電力比でみた場合に、送信電力の低減を抑制することが可能となる。
【0055】
ユーザ端末は、割当リソースブロック数の大きいPUSCHに対して、優先的に電力割り当てを行うことができる。この場合には、再送が生じた場合のリソース消費を低減することができる。
【0056】
ユーザ端末は、新規送信か再送か、または再送回数の区分で電力割り当ての優先度を規定してもよい。
【0057】
(第5の態様)
第5の態様では、ユーザ端末が、基地局に対して自端末がパワーリミット状態であるか否かを報告する方法について説明する。
【0058】
上述のとおり、基地局にとって、上記式(1)における、リソースブロック数M
PUSCH,c(i)、パスロスPL
c、変調方式および符号化率に基づく電力オフセット値Δ
TF,c(i)、TPCコマンドによる補正値f
c(i)の値は未知の変数である。
【0059】
これらの未知の変数のうち、パスロスPL
c、変調方式および符号化率に基づく電力オフセット値Δ
TF,c(i)、TPCコマンドによる補正値f
c(i)の値は、比較的緩やか、かつ、小さな変動が想定される。したがって、これらの変数は基地局にとって未知であっても、送信電力制御に対する影響は小さい。
【0060】
一方、リソースブロック数M
PUSCH,c(i)が、基地局にとって未知である場合には、送信電力制御に対する影響が大きくなる。他CCのスケジューリング(リソースブロック数)によって、他CCの送信電力は動的に大きく変動する。既存のPHRでは電力状態の把握が遅すぎるため、他の方法を用いてダイナミックに電力状態を把握する必要がある。
【0061】
ユーザ端末は、基地局に対して、PUSCHまたはPUCCHによって、自端末がパワーリミット状態であるか否かをダイナミックに通知することができる。すなわち、基地局は、ユーザ端末がパワーリミット状態であるか否かをダイナミックに把握することができる。
【0062】
ユーザ端末がパワーリミット状態であるか否かは、PUSCHまたはPUCCHに1ビット付加してシグナリングすることにより通知することができる。たとえば、ビット“0”はパワーリミット状態ではない、“1”はパワーリミット状態である、と規定することができる。
【0063】
上記方法によれば、基地局は、ユーザ端末がパワーリミット状態か否かを把握することができるが、それが自セル(自基地局)に起因するのか、他セル(他基地局)に起因するのかまでは把握することができない。
【0064】
そこで、ユーザ端末によるダイナミックシグナリングにおいて、さらにビットを付加して、自セルの電力状態を通知することができる。たとえば、ビット“00”はパワーリミット状態ではない、“01”はパワーリミット状態であり、かつ、自セルの占有電力比が基準値より低い、“10”はパワーリミット状態であり、かつ、自セルの占有電力比が基準値より高い、“11”はリザーブド(reserved)、と規定することができる。
【0065】
すなわち、基地局は、ビット“10”が付加されている場合には、自セルの送信電力を下げる必要があるとわかる。自セルの占有電力比の高低を判断する基準値は、RRCやMACレイヤで指定されてもよいし、CCごとの等分配としてもよい。占有電力比は、単純な比率ではなく、他セルに最低限のリソース割り当てを行った上での残存電力に対する余裕があるか否かを通知してもよい。
【0066】
ユーザ端末は、新しいMACの制御信号(MAC control element)によって、自端末がパワーリミット状態であることを通知してもよい。ユーザ端末は、いずれかの基地局またはCCに対して、送信電力が基準値を超過する場合に、その超過分と、超過するCCを通知する。送信電力の基準値は、RRCやMACレイヤで通知されてもよい。
【0067】
ユーザ端末は、現状のPHRを流用して、送信電力が基準値を超過する場合に、その超過分と、超過するCCを通知してもよい。送信電力が基準値を超過した場合の超過分とは、すなわちマイナスのPHを意味している。たとえば、ユーザ端末は、P
CMAX,cフィールドで送信電力の基準値を通知し、PHで超過電力を通知し、リザーブドビットでPHがマイナス値であることを通知してもよい。
【0068】
(無線通信システムの構成)
以下、本実施の形態に係る無線通信システムの構成について説明する。この無線通信システムでは、上記第1の態様から第5の態様に係る無線通信方法が適用される。
【0069】
図6は、本実施の形態に係る無線通信システムの一例を示す概略構成図である。
図6に示すように、無線通信システム1は、マクロセルC1を形成するマクロ基地局11と、マクロセルC1内に配置され、マクロセルC1よりも狭いスモールセルC2を形成するスモール基地局12aおよび12bと、を備えていてもよい。
図6において、無線通信端末としてのユーザ端末20は、マクロ基地局11、スモール基地局12aおよび12b(以下、総称してスモール基地局12という)の少なくとも1つと無線通信可能に構成されている。なお、マクロ基地局11、スモール基地局12の数は、
図6に示す数に限られない。
【0070】
マクロセルC1およびスモールセルC2では、同一の周波数帯が用いられてもよいし、異なる周波数帯が用いられてもよい。また、マクロ基地局11および各スモール基地局12は、基地局間インターフェース(たとえば、光ファイバ、X2インターフェース)を介して互いに接続される。マクロ基地局11および各スモール基地局12は、それぞれ上位局装置30に接続され、上位局装置30を介してコアネットワーク40に接続される。なお、上位局装置30には、たとえば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0071】
なお、マクロ基地局11は、相対的に広いカバレッジを有する無線基地局であり、eNodeB(eNB)、無線基地局、送信ポイント(transmission point)などと呼ばれてもよい。スモール基地局12は、局所的なカバレッジを有する無線基地局であり、RRH(Remote Radio Head)、ピコ基地局、フェムト基地局、HeNB(Home eNodeB)、送信ポイント、eNodeB(eNB)などと呼ばれてもよい。ユーザ端末20は、LTE、LTE−Aなどの各種通信方式に対応した端末であり、移動通信端末だけでなく固定通信端末を含んでよい。
【0072】
無線通信システム1では、マクロセルごとに形成されるネットワーク間が非同期となる場合(非同期運用)を想定している。また、無線通信システム1では、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(直交周波数分割多元接続)が適用され、上りリンクについてはSC−FDMA(シングルキャリア−周波数分割多元接続)が適用される。
【0073】
無線通信システム1では、下りリンクの通信チャネルとして、各ユーザ端末20で共有される下り共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)と、下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)、EPDCCH(Enhanced Physical Downlink Control Channel)、PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)、PHICH(Physical Hybrid-ARQ Indicator Channel)、報知チャネル(PBCH:Physical Broadcast Channel)などが用いられる。PDSCHにより、ユーザデータや上位レイヤ制御情報が伝送される。PDCCH、EPDCCHにより、下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)が伝送される。
【0074】
また、無線通信システム1では、上りリンクの通信チャネルとして、各ユーザ端末20で共有される各ユーザ端末20で共有される上り共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)と、上り制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)などが用いられる。PUSCHにより、ユーザデータや上位レイヤ制御情報が伝送される。また、PUCCHにより、下りリンクの無線品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)や、送達確認情報(ACK/NACK)等が伝送される。
【0075】
以下、マクロ基地局11とスモール基地局12とを区別しない場合には、無線基地局10と総称する。
【0076】
図7は、本実施の形態に係る無線基地局10の全体構成図である。無線基地局10は、MIMO伝送のための複数の送受信アンテナ101と、アンプ部102と、送受信部103と、ベースバンド信号処理部104と、呼処理部105と、インターフェース部106とを備えている。
【0077】
下りリンクにより無線基地局10からユーザ端末20に送信されるユーザデータは、上位局装置30からインターフェース部106を介してベースバンド信号処理部104に入力される。
【0078】
ベースバンド信号処理部104では、PDCPレイヤの処理、ユーザデータの分割・結合、RLC(Radio Link Control)再送制御の送信処理などのRLCレイヤの送信処理、MAC(Medium Access Control)再送制御、たとえば、HARQの送信処理、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理、プリコーディング処理が行われて各送受信部103に転送される。また、下り制御信号に関しても、チャネル符号化や逆高速フーリエ変換等の送信処理が行われて、各送受信部103に転送される。
【0079】
各送受信部103は、ベースバンド信号処理部104からアンテナごとにプリコーディングして出力された下り信号を無線周波数帯に変換する。アンプ部102は、周波数変換された無線周波数信号を増幅して送受信アンテナ101により送信する。
【0080】
一方、上り信号については、各送受信アンテナ101で受信された無線周波数信号がそれぞれアンプ部102で増幅され、各送受信部103で周波数変換されてベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部104に入力される。
【0081】
ベースバンド信号処理部104では、入力された上り信号に含まれるユーザデータに対して、FFT処理、IDFT処理、誤り訂正復号、MAC再送制御の受信処理、RLCレイヤ、PDCPレイヤの受信処理がなされ、インターフェース部106を介して上位局装置30に転送される。呼処理部105は、通信チャネルの設定や解放などの呼処理や、無線基地局10の状態管理や、無線リソースの管理を行う。
【0082】
インターフェース部106は、基地局間インターフェース(たとえば、光ファイバ、X2インターフェース)を介して隣接無線基地局と信号を送受信(バックホールシグナリング)する。あるいは、インターフェース部106は、所定のインターフェースを介して、上位局装置30と信号を送受信する。
【0083】
図8は、本実施の形態に係る無線基地局10が有するベースバンド信号処理部104の主な機能構成図である。
図8に示すように、無線基地局10が有するベースバンド信号処理部104は、制御部301と、下り制御信号生成部302と、下りデータ信号生成部303と、マッピング部304と、デマッピング部305と、チャネル推定部306と、上り制御信号復号部307と、上りデータ信号復号部308と、判定部309と、を少なくとも含んで構成されている。
【0084】
制御部301は、PDSCHで送信される下りユーザデータ、PDCCHと拡張PDCCH(EPDCCH)の両方、またはいずれか一方で伝送される下り制御情報、下り参照信号などのスケジューリングを制御する。また、制御部301は、PRACHで伝送されるRAプリアンブル、PUSCHで伝送される上りデータ、PUCCHまたはPUSCHで伝送される上り制御情報、上り参照信号のスケジューリングの制御(割り当て制御)も行う。上りリンク信号(上り制御信号、上りユーザデータ)の割り当て制御に関する情報は、下り制御信号(DCI)を用いてユーザ端末20に通知される。
【0085】
制御部301は、上位局装置30からの指示情報や各ユーザ端末20からのフィードバック情報に基づいて、下りリンク信号および上りリンク信号に対する無線リソースの割り当てを制御する。つまり、制御部301は、スケジューラとしての機能を有している。
【0086】
制御部301は、ユーザ端末20に対して、上りリンク信号を優先的に送信するCCを設定する。制御部301は、ユーザ端末20に対して、最大送信電力を各CCに分配する分配比率を設定する。
【0087】
下り制御信号生成部302は、制御部301により割り当てが決定された下り制御信号(PDCCH信号とEPDCCH信号の両方、またはいずれか一方)を生成する。具体的に、下り制御信号生成部302は、制御部301からの指示に基づいて、下りリンク信号の割り当て情報を通知するDLアサインメントと、上りリンク信号の割り当て情報を通知するULグラントを生成する。
【0088】
下りデータ信号生成部303は、制御部301によりリソースへの割り当てが決定された下りデータ信号(PDSCH信号)を生成する。下りデータ信号生成部303により生成されるデータ信号には、各ユーザ端末20からのCSI等に基づいて決定された符号化率、変調方式に従って符号化処理、変調処理が行われる。
【0089】
マッピング部304は、制御部301からの指示に基づいて、下り制御信号生成部302で生成された下り制御信号と、下りデータ信号生成部303で生成された下りデータ信号の無線リソースへの割り当てを制御する。
【0090】
デマッピング部305は、ユーザ端末20から送信された上りリンク信号をデマッピングして、上りリンク信号を分離する。チャネル推定部306は、デマッピング部305で分離された受信信号に含まれる参照信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態を上り制御信号復号部307、上りデータ信号復号部308に出力する。
【0091】
上り制御信号復号部307は、上り制御チャネル(PRACH,PUCCH)でユーザ端末から送信されたフィードバック信号(送達確認信号等)を復号し、制御部301へ出力する。上りデータ信号復号部308は、上り共有チャネル(PUSCH)でユーザ端末から送信された上りデータ信号を復号し、判定部309へ出力する。判定部309は、上りデータ信号復号部308の復号結果に基づいて、再送制御判定(A/N判定)を行うとともに結果を制御部301に出力する。
【0092】
図9は、本実施の形態に係るユーザ端末20の全体構成図である。
図9に示すように、ユーザ端末20は、MIMO伝送のための複数の送受信アンテナ201と、アンプ部202と、送受信部(受信部)203と、ベースバンド信号処理部204と、アプリケーション部205と、を備えている。
【0093】
下りリンクのデータについては、複数の送受信アンテナ201で受信された無線周波数信号がそれぞれアンプ部202で増幅され、送受信部203で周波数変換されてベースバンド信号に変換される。このベースバンド信号は、ベースバンド信号処理部204でFFT処理や、誤り訂正復号、再送制御の受信処理などがなされる。この下りリンクのデータのうち、下りリンクのユーザデータは、アプリケーション部205に転送される。アプリケーション部205は、物理レイヤやMACレイヤより上位のレイヤに関する処理などを行う。また、下りリンクのデータのうち、報知情報もアプリケーション部205に転送される。
【0094】
一方、上りリンクのユーザデータについては、アプリケーション部205からベースバンド信号処理部204に入力される。ベースバンド信号処理部204では、再送制御(HARQ:Hybrid ARQ)の送信処理や、チャネル符号化、プリコーディング、DFT処理、IFFT処理などが行われて各送受信部203に転送される。送受信部203は、ベースバンド信号処理部204から出力されたベースバンド信号を無線周波数帯に変換する。その後、アンプ部202は、周波数変換された無線周波数信号を増幅して送受信アンテナ201により送信する。
【0095】
図10は、ユーザ端末20が有するベースバンド信号処理部204の主な機能構成図である。
図10に示すように、ユーザ端末20が有するベースバンド信号処理部204は、制御部401と、上り制御信号生成部402と、上りデータ信号生成部403と、マッピング部404と、デマッピング部405と、チャネル推定部406と、下り制御信号復号部407と、下りデータ信号復号部408と、判定部409と、を少なくとも含んで構成されている。
【0096】
制御部401は、無線基地局から送信された下り制御信号(PDCCH信号)や、受信したPDSCH信号に対する再送制御判定結果に基づいて、上り制御信号(A/N信号等)や上りデータ信号の生成を制御する。無線基地局から受信した下り制御信号は下り制御信号復号部407から出力され、再送制御判定結果は、判定部409から出力される。
【0097】
制御部401は、上りリンクの物理チャネルを優先送信するCCを時間的に切り替えるよう制御する。制御部401は、自端末の最大送信電力を各CCに分配して、各CCに対する送信電力を補正するよう制御する。
【0098】
上り制御信号生成部402は、制御部401からの指示に基づいて上り制御信号(送達確認信号やチャネル状態情報(CSI)等のフィードバック信号)を生成する。上りデータ信号生成部403は、制御部401からの指示に基づいて上りデータ信号を生成する。なお、制御部401は、無線基地局から通知される下り制御信号にULグラントが含まれている場合に、上りデータ信号生成部403に上りデータ信号の生成を指示する。
【0099】
マッピング部404は、制御部401からの指示に基づいて、上り制御信号(送達確認信号等)と、上りデータ信号の無線リソース(PUCCH、PUSCH)への割り当てを制御する。
【0100】
デマッピング部405は、無線基地局10から送信された下りリンク信号をデマッピングして、下りリンク信号を分離する。チャネル推定部406は、デマッピング部405で分離された受信信号に含まれる参照信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態を下り制御信号復号部407、下りデータ信号復号部408に出力する。
【0101】
下り制御信号復号部407は、下り制御チャネル(PDCCH)で送信された下り制御信号(PDCCH信号)を復号し、スケジューリング情報(上りリソースへの割り当て情報)を制御部401へ出力する。また、下り制御信号に送達確認信号をフィードバックするセルに関する情報や、RF調整の適用有無に関する情報が含まれている場合も、制御部401へ出力する。
【0102】
下りデータ信号復号部408は、下り共有チャネル(PDSCH)で送信された下りデータ信号を復号し、判定部409へ出力する。判定部409は、下りデータ信号復号部408の復号結果に基づいて、再送制御判定(A/N判定)を行うとともに、結果を制御部401に出力する。
【0103】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。