(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6254246
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20171218BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
E04B1/58 550A
E04B1/26 G
E04B1/58 508L
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-245030(P2016-245030)
(22)【出願日】2016年12月19日
【審査請求日】2017年8月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514039462
【氏名又は名称】伝統建築上総匠の会株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100033
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 武夫
(72)【発明者】
【氏名】大坪 格
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5933806(JP,B2)
【文献】
実開平07−040810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主柱に設けられた貫穴に、合わせ横架材を楔を用いずに固定する柱と合わせ横架材との接合構造であって、
前記主柱の反対向する面に渡って貫通する上方と下方一対の貫穴をそれぞれの合わせ横架材の縦幅方向の長さと同じ乃至やや小さく且つ貫穴は上下方向に軸心をずらして貫穴の一部が直角方向に互いに交差し、
前記下方の貫穴の底部に設けられる垂直な柱中ホゾと前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けるホゾ穴とがそれぞれ嵌合可能に設けられ、
前記合わせ横架材は長手方向に面する一面が傾斜面をなし上側に位置する上部材と下側に位置する下部材からなる二枚の部材をその傾斜面が互いに逆方向に向くように対向して構成し、
前記主柱に設けられる上方と下方一対の貫穴に前記合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通すると共に合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにしてそれぞれの貫穴に打ち込んで固定することを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造。
【請求項2】
主柱に設けられた貫穴に、合わせ横架材を楔を用いずに固定する柱と合わせ横架材との接合構造であって、
前記主柱の反対向する面に渡って貫通する貫穴を合わせ横架材の縦幅方向の長さと同じ乃至やや小さく形成し、
前記貫穴の底部に設けられる垂直な柱中ホゾと前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けるホゾ穴とがそれぞれ嵌合可能に設けられ、
前記合わせ横架材は長手方向に面する一面が傾斜面をなし上側に位置する上部材と下側に位置する下部材からなる二枚の部材をその傾斜面が互いに逆方向に向くように対向して構成し、
前記主柱に設けられる貫穴に前記合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通すると共に合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにして貫穴に打ち込んで固定することを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造。
【請求項3】
前記柱中ホゾ及びホゾ穴は平面視にて多角形からなることを特徴とする請求項1又は2記載の木造軸組における柱と横架材の接合構造。
【請求項4】
前記貫穴の底部に設けられる柱中ホゾを凸条に形成し、前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けられるホゾ穴を凹条に形成して、前記凸条の柱中ホゾと前記凹条のホゾ穴とがそれぞれ嵌合可能に設けられてなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造。
【請求項5】
前記下方の合わせ横架材を構成する上部材の上面側と、上方の合わせ横架材を構成する下部材の下面側のいずれか一方に凹条切欠部を、他方に凸条切欠部を互いに嵌挿可能に設けてなることを特徴とする請求項1,3,4のいずれかに記載の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造。
【請求項6】
前記合わせ横架材を構成する部材の対向するいずれか一方の斜面に横ずれ防止用の凸条を、他方の斜面に横ずれ防止用の凹条溝を、長手方向に向かって一乃至複数本互いに嵌合可能に設けてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造。
【請求項7】
木造軸組における柱と合わせ横架材を楔を用いずに固定する施工方法であって、
下方の貫穴に下方の合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通し、下方の貫穴に設けられる柱中ホゾを前記下部材の下面に設けられるホゾ穴に嵌合させる工程と、 下方の合わせ横架材を構成する上部材をその薄肉側を前方に向けて且つ前記下方の合わせ横架材を構成する下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにして下方の貫穴に打ち込んで前記下方の合わせ横架材を下方の貫穴に固定する工程と、
前記主柱の上方の貫穴に上方の合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通し、前記下方の合わせ横架材を構成する上部材の凸条切欠部又は凹条切欠部のいずれかに上方の合わせ横架材を構成する下部材の凹条切欠部又は凸条切欠部のいずれかを嵌挿させる工程と、
上方の合わせ横架材を構成する上部材をその薄肉側を前方に向けて且つ前記上方の合わせ横架材を構成する下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにして上方の貫穴に打ち込んで前記上方の合わせ横架材を上方の貫穴に固定する工程と、
を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法。
【請求項8】
木造軸組における柱と合わせ横架材を楔を用いずに固定する施工方法であって、
下方の貫穴に既に下方の合わせ横架材が固定されてなる2本の主柱と該主柱の中間にある中柱とが合わせ横架材を挿通しようとする貫穴を互いに対向して設ける工程と、
該2本の主柱のいずれか一方の主柱の上方の貫穴から中間にある中柱の貫穴を経て他方の主柱の上方の貫穴に向けて、上方の合わせ横架材を構成する下部材の斜面側を上方に向けて挿通し、前記固定されてなる下方の合わせ横架材を構成する上部材の凸条切欠部又は凹条切欠部のいずれかに前記上方の合わせ横架材を構成する下部材の凹条切欠部又は凸条切欠部のいずれかを嵌挿させると共に中柱の貫穴底部に設けられる柱中ホゾを前記下部材の下面に設けられるホゾ穴に嵌合させる工程と、
前記上方の合わせ横架材を構成する上部材をその薄肉側を前方に向けて且つ前記上方の合わせ横架材を構成する下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くように2本の主柱上方の貫穴並びに中柱の貫穴の隙間に打ち込んで前記上方横架材を主柱に固定する工程と、
を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法。
【請求項9】
請求項7又は8のいずれかに記載の合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くように貫穴の隙間に打ち込む工程の前に前記合わせ横架材を構成する上部材乃至下部材の少なくともいずれか一方の部材の傾斜面に接着剤を施す工程を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法。
【請求項10】
請求項7,8又は9のいずれかに記載の柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法において、最終工程の後に合わせ横架材を構成する上部材と下部材とを接続部材を用いて接合する工程を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造及びその施工方法に関し、より詳細には、長手方向に面する一面が傾斜面をなす上下部材をその傾斜面が互いに逆方向に向くように対向させた合わせ横架材を構成する上側に位置する上部材をその薄肉側部を前方に向けて、柱の貫穴と横架材を構成する下側に位置する下部材との隙間に打ち込んで前記横架材を主柱に固定する柱と合わせ横架材の接合構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、木造家屋においては一辺が16cmに満たない主として輸入材を用い、柱と横架材を金具とボルトで繋ぎ合わせる工法が主流となっていた。しかし、係る従来工法においては、柱と横架材とを離間する引っ張り力や捩り力に対して弱く、柱と横架材は容易に離間ないし緊締力を失い家屋倒壊の一因であるとの問題があった。また、例えば、柱の相対応する面に貫通する透孔を形成しこの透孔に肘木の両端を突出させて挿通し、この肘木に梁の端部下面に形成された凹部を嵌挿せしめて接合する例がある(特許文献1参照)。
また、従来の建材として、原木から両側縁が傾斜状となるように切りだした板材を細幅側が逆になるようにし、互いの傾斜縁に設けたスリットに接続部材を嵌め込んだ状態で両板材の傾斜縁を重ね合わせ、両板材を結合した建材が公知である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−100603号公報
【特許文献2】特開平11−343696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記の特許文献1に記載された木造軸組の接合構造は、繋ぎ部材である肘木が両側の梁(横架材)の全重量を負うこととなる。しかも、2個の肘木の交差部には垂直方向の切欠部が形成されており、この交差部が支点となり両端部に垂直方向の重力がかかるために交差部に応力が集中して破壊される可能性に問題があった。また、柱と2本の横架材を接合する場合には接合部を金具とボルトで補強する手段が講じられている。しかし、前述したとおり前記補強を講じたとしても東日本大地震級の激震に対して木造家屋の倒壊を防止することは極めて困難である。
また、特許文献2記載の建材は両板材の斜面同士を合わせる点において本願発明と共通点を有するが、係る板材を主柱の貫穴に貫挿させて固定する旨の記載がなく、本願発明とは全く異なる技術的思想に基づくものである。
【0005】
本願発明者は長年の大工の棟梁としての経験を生かして「大福柱木形組工法」(登録商標;だいふくばしらきなりくみこうほう)と称する木造軸組伝統工法を確立した。本願発明者は前記木造軸組伝統工法に基づく木造軸組における柱と横架材の接合構造について特許出願をし(特願2014−026777、以下「先出願」と称する)、特許を取得した(特許第5654699)。先出願に係る発明は、東日本大地震級の激震に対しても耐え得る程度の強度を有するものであるが、本願発明者は、さらなる研究と改良を積み重ねた結果、従来の製材法では廃材として捨てられていた丸太原木の周辺部を含む木形製材法により丸太原木の形状に沿った木材を横架材として用いることを特徴とする特許(特許5933806号)を取得した。前記特許発明(特許第5654699)は廃材として捨てられていた丸太原木を有効利用する点において本願発明と共通性を有するが、前記発明は丸太原木を一面が斜め横架材としてそのまま使用しているのに対して本願発明は、斜め横架材を2枚組み合わせる「合わせ横架材」として使用する点において異なる。しかも、従来の単なる合わせ横架材とは異なり、合わせ横架材を建築現場で組み立てる工法として前記木造軸組伝統工法に取り込むことによって、建築作業効率を高めると共に強度の向上に資することを知見して本発明に想到したものであって、本願発明の主たる目的は、前記主柱の貫穴に貫挿させる横架材として従来の無垢の木材に代えて合わせ横架材を用いることによって間伐材から横架材の製造ができ資源の有効利用ができる上に、地震にも充分耐えられる安全で安心な建物に用いる木造軸組における柱と横架材の接合構造及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、主柱に設けられた貫穴に、合わせ横架材を
楔を用いずに固定する柱と合わせ横架材との接合構造であって、前記主柱の反対向する面に渡って貫通する上方と下方一対の貫穴をそれぞれの合わせ横架材の縦幅方向の長さと同じ乃至やや小さく且つ貫穴は上下方向に軸心をずらして貫穴の一部が直角方向に互いに交差し、前記下方の貫穴の底部に設けられる垂直な柱中ホゾと前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けるホゾ穴とがそれぞれ嵌合可能に設けられ、前記合わせ横架材は長手方向に面する一面が傾斜面をなし上側に位置する上部材と下側に位置する下部材からなる二枚の部材をその傾斜面が互いに逆方向に向くように対向して構成し、前記主柱に設けられる上方と下方一対の貫穴に前記合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通すると共に合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにしてそれぞれの貫穴に打ち込んで固定することを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とする。
【0007】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、主柱に設けられた貫穴に、合わせ横架材を
楔を用いずに固定する柱と合わせ横架材との接合構造であって、前記主柱の反対向する面に渡って貫通する貫穴を合わせ横架材の縦幅方向の長さと同じ乃至やや小さく形成し、前記貫穴の底部に設けられる垂直な柱中ホゾと前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けるホゾ穴とがそれぞれ嵌合可能に設けられ、前記合わせ横架材は長手方向に面する一面が傾斜面をなし上側に位置する上部材と下側に位置する下部材からなる二枚の部材をその傾斜面が互いに逆方向に向くように対向して構成し、前記主柱に設けられる貫穴に前記合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通すると共に合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにして貫穴に打ち込んで固定することを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とする。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記柱中ホゾ及びホゾ穴は平面視にて多角形からなることを特徴とする前記の木造軸組における柱と横架材の接合構造とすることが好ましい。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記貫穴の底部に設けられる柱中ホゾを凸条に形成し、前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けられるホゾ穴を凹条に形成して、前記凸条の柱中ホゾと前記凹条のホゾ穴とがそれぞれ嵌合可能に設けられてなることを特徴とする前記の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とすることが好ましい。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記下方の合わせ横架材を構成する上部材の上面側と、上方の合わせ横架材を構成する下部材の下面側のいずれか一方に凹条切欠部を、他方に凸条切欠部を互いに嵌挿可能に設けてなることを特徴とする前記の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とすることが好ましい。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記下方の合わせ横架材を構成する上部材の上面側と、上方の合わせ横架材を構成する下部材の下面側のいずれか一方に凹条切欠部を、他方に凸条切欠部を互いに嵌挿可能に設けてなることを特徴とする前記の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とすることが好ましい。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記合わせ横架材を構成する上部材と下部材の中の少なくともいずれか一方の部材の傾斜面に接着剤を施し該接着剤を介して前記二枚の部材を接合することを特徴とする前記の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とすることが好ましい。
【0013】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記合わせ横架材を構成する上部材と下部材を接続部材を用いて接合することを特徴とする前記の木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造とすることが好ましい。
【0014】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、木造軸組における柱と合わせ横架材
を楔を用いずに固定する施工方法であって、下方の貫穴に下方の合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通し、下方の貫穴に設けられる柱中ホゾを前記下部材の下面に設けられるホゾ穴に嵌合させる工程と、 下方の合わせ横架材を構成する上部材をその薄肉側を前方に向けて且つ前記下方の合わせ横架材を構成する下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにして下方の貫穴に打ち込んで前記下方の合わせ横架材を下方の貫穴に固定する工程と、前記主柱の上方の貫穴に上方の合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通し、前記下方の合わせ横架材を構成する上部材の凸条切欠部又は凹条切欠部のいずれかに上方の合わせ横架材を構成する下部材の凹条切欠部又は凸条切欠部のいずれかを嵌挿させる工程と、上方の合わせ横架材を構成する上部材をその薄肉側を前方に向けて且つ前記上方の合わせ横架材を構成する下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにして上方の貫穴に打ち込んで前記上方の合わせ横架材を上方の貫穴に固定する工程と、を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法とする。
【0015】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、木造軸組における柱と合わせ横架材
を楔を用いずに固定する施工方法であって、下方の貫穴に既に下方の合わせ横架材が固定されてなる2本の主柱と該主柱の中間にある中柱とが合わせ横架材を挿通しようとする貫穴を互いに対向して設ける工程と、該2本の主柱のいずれか一方の主柱の上方の貫穴から中間にある中柱の貫穴を経て他方の主柱の上方の貫穴に向けて、上方の合わせ横架材を構成する下部材の斜面側を上方に向けて挿通し、前記固定されてなる下方の合わせ横架材を構成する上部材の凸条切欠部又は凹条切欠部のいずれかに前記上方の合わせ横架材を構成する下部材の凹条切欠部又は凸条切欠部のいずれかを嵌挿させると共に中柱の貫穴底部に設けられる柱中ホゾを前記下部材の下面に設けられるホゾ穴に嵌合させる工程と、前記上方の合わせ横架材を構成する上部材をその薄肉側を前方に向けて且つ前記上方の合わせ横架材を構成する下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くように2本の主柱上方の貫穴並びに中柱の貫穴の隙間に打ち込んで前記上方横架材を主柱に固定する工程と、を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法とする。
【0016】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記の合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くように貫穴の隙間に打ち込む工程の前に前記合わせ横架材を構成する上部材乃至下部材の少なくともいずれか一方の部材の傾斜面に接着剤を施す工程を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法とすることが好ましい。
【0017】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記の柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法において、最終工程の後に合わせ横架材を構成する上部材と下部材とを接続部材を用いて接合する工程を備えることを特徴とする木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造の施工方法とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
従来の合わせ横架材は予め二枚の板材を接着剤等で貼り合わせた状態で建築現場に輸送して組み立て作業を行うのが常識であった。二枚の板材を合わせた横架材は無垢の横架材と同様の重量があるために建築現場では板材を合わせた横架材をクレーンを使用して柱に取り付ける場合が多かった。しかし、本発明の合わせ横架材は主柱に取り付けるまでは上部材と下部材が分離しているために、従来方式の合わせた横架材や無垢の横架材に比較して約半分の重量であり軽く、建築現場における現場作業は人力のみで取り扱い可能なため極めて作業性に優れている。
【0019】
また、無垢の横架材は断面が大きく、ある程度以上の太さの丸太原木から採取するのに対して、本願発明に係る合わせ横架材の場合は太さはそれほど大きくない間伐材のような原木であっても二枚合わせにすることによって無垢の材料と同様に使用することが可能となる。例えば、直径20cm程度の間伐材からでも横架材の製造ができことから資源の有効利用の点からも極めて好ましい。
【0020】
主柱に設けた平面視にて多角形に形成した柱中ホゾと横架材のホゾ穴を嵌合させることによって主柱を軸とする横方向の曲げモーメントが横架材に作用した場合でも横方向への回転が阻止され横架材による柱の損壊を防止できると共に、前記柱中ホゾと下方横架材を構成する下部材のホゾ穴とを嵌合させた後、下方の貫穴と下方横架材を構成する下部材との隙間に上部材を打ち込んで固定する。更に、上部材ないし下部材の傾斜面に接着剤を施すことにより両部材はより強固に結合し、地震等で横架材が主柱から抜け難くくなり、地震による激震にも充分に耐えうる強度を維持することが可能である。更に、前記上部材が楔の役割を果たすので楔を打ち込む手間が省けるだけでなく、柱からの抜けを防止して横架材をより強固に主柱に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例に係る柱と合わせ横架材の接合構造の斜視図である。
【
図6】横ずれ防止用凸条及び凹条溝の説明図である。
【
図7】実施の形態に係る二階建ての使用例の説明図である。
【
図8】実施の形態に係る三階建ての使用例の説明図である。
【
図9】実施の形態に係る五階建ての使用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と称する)について、以下に詳細に説明する。しかし、本願発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
図1,2,3に示す本願請求項1記載の発明を含む実施の形態において、1は柱と合わせ横架材の接合構造を示し、2は主柱であり、3aは下方の合わせ横架材の桁であり、3bは上方の合わせ横架材の梁である。前記主柱2の反対向する面に渡って貫通する上方と下方一対の貫穴(5b,5a)をそれぞれの合わせ横架材の縦幅方向の長さと同じ乃至やや小さく且つ貫穴は上下方向に軸心をずらして貫穴の一部(下方貫穴5aの上方部と上方貫穴5bの下方部)が直角方向に互いに交差するように形成し、前記下方の貫穴5aの底部に設けられる垂直な柱中ホゾ6,61と前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材32aの下面側に設けるホゾ穴7,71とがそれぞれ嵌合可能に設けられている。前記主柱に設けられる下方貫穴5aに前記下方の合わせ横架材を構成する下部材32aを斜面側を上方に向けて挿通し前記下部材32aに設けたホゾ穴7,71に柱中ホゾ6,61を嵌合させ、前記下方の合わせ横架材を構成する上部材31aを下部材32aと傾斜面が互いに逆方向を向くようにして貫穴に打ち込んで固定される。上方貫穴5bには前記上方合わせ横架材を構成する下部材32bが斜面側を上方に向けて挿通され、上方の合わせ横架材を構成する上部材31bを下部材32bと傾斜面が互いに逆方向を向くようにしてそれぞれの貫穴に打ち込んで固定される。
【0024】
次に、請求項2記載の発明を含む実施の形態について、
図1,2,3に基づいて説明する。貫穴は
図1,2,3に示す下方貫穴5aに相当する貫穴のみ設けてなり、合わせ横架材は、前記貫穴5aに挿通される下方の合わせ横架材3aのみ設けられる。主柱2に設けられた貫穴5aに、合わせ横架材3aを貫通させて固定する柱と合わせ横架材との接合構造であって、前記主柱2の反対向する面に渡って貫通する貫穴5aを合わせ横架材3aの縦幅方向の長さと同じ乃至やや小さく形成し、前記主柱に設けられた貫穴3aに合わせ横架材を構成する下部材32aを斜面側を上方に向けて挿通すると共に前記の合わせ横架材を構成する上部材31aを下部材32aと傾斜面が互いに逆方向を向くようにして貫穴に打ち込んで固定することを特徴とする。本願発明は主柱1に一方向のみに貫穴5aを設けており従って上方の貫穴5bは無いので柱の中央部で貫穴が交差しない点において請求項1記載の発明と異なる。請求項1記載の合わせ横架材の接合構造が建物の中央に例えば直径40〜50cm程度の主柱を基礎から屋根まで貫き、その主柱の貫穴に横架材を貫挿させて支える場合等に使用されるのに対して、請求項2記載の発明の場合は、例えば、
図4に示す中柱21と合わせ横架材31b,32bの接合構造に適用される。
【0025】
前記柱中ホゾ及びホゾ穴は請求項3記載の発明を含む実施の形態に係る平面視にて多角形からなるほかに、
図1、
図2又は
図3に示す請求項4記載の柱中ホゾをやや長手の凸条に形成し、該凸条の柱中ホゾ61と前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けられる前記やや長手の凸条に見合う凹条のホゾ穴71とがそれぞれ嵌合可能に設けられてなるものも含まれる。係る凸条の柱中ホゾ61と他方の凹条のホゾ穴71は柱中渡りあごと切り欠き部のような役割を担い両者は強固に嵌合し抜けにくいばかりでなく、加工しやすい点においても優れている。
【0026】
請求項1又は5記載の本発明を含む実施の形態に係る柱と合わせ横架材の接合構造1は、前記下方の合わせ横架材を構成する上部材の上面側と、上方の合わせ横架材を構成する下部材の下面側のいずれか一方に凹条切欠部9を、他方に凸条切欠部8を互いに嵌挿可能に設けて、例えば、
図2及び
図3に示す下方横架材(桁)3aを構成する上部材31aの上面側に形成した凸条切欠部(柱中渡りあご)8に、上方横架材(梁)3bの交差部下面に形成した凹条切欠部9を嵌挿(柱中渡りあご組)させて、両者を強固に組み合わせることが可能である。
【0027】
請求項1,2又は6記載の本発明を含む実施の形態に係る柱と合わせ横架材の接合構造1は、前記合わせ横架材を構成する部材の対向するいずれか一方の斜面に横ずれ防止用の凸条41を、他方の斜面に横ずれ防止用の凹条溝42を、長手方向に向かって一乃至複数本互いに嵌合可能に設けてなることを特徴とする。
図6の(1)は1本、(2)は2本の凸条41と凹条溝42を設けた例を示す。このように凸条41と凹条溝42を互いに嵌合させるさせて横ずれを防ぐことによって、合わせ横架材を構成する上部材31aを下部材32aと傾斜面が互いに逆方向を向くようにして貫穴に打ち込む際に、正確に上部材31aを前方に進行させることができるので作業性が格段に向上する。
【0028】
請求項1,2又は
9記載の本発明発明を含む実施の形態に係る柱と合わせ横架材の接合構造1は、前記合わせ横架材を構成する上部材31a,31bと下部材32a,32bの中の少なくともいずれか一方の部材の傾斜面に接着剤を塗り該接着剤を介して前記二枚の部材を接合することを特徴とする。ここで用いられる接着剤は木質系の接着剤が好ましく、特に限定されるものではないが、例えば、構造用集積材には、レゾルシノール樹脂接着剤、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤等のレゾルシノール系接着剤を使用できる。大断面を除く屋内用構造用集積材には水性高分子イソシアネート系接着剤も使用できる。普通の住環境においてはユリア樹脂接着剤あるいは酢酸ビニル樹脂接着剤、ホットメルト接着剤、水性高分子イソシアネート系接着剤等が使用可能である。高湿度の環境下で使用する場合はメラミン・ユリア共重合樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルションと酸硬化型ユリア樹脂を混合した接着剤等を使用してもよい。また、日本農林規格(JAS)に示される構造用集成材用の接着剤として、レゾルシノール系接着剤や水性高分子イソシアネート系接着剤が好ましい。前記、レゾルシノール系接着剤は初期接着性能、耐久性とも高い性能を有し、一方、水性高分子イソシアネート系接着剤は初期接着性能はレゾルシノール系接着剤と同等の性能を有し、耐水性において少し劣るが、ホルムアルデヒドを発生しない点において優れている。
【0029】
請求項1,2又は
10記載の本発明の実施発明を含む形態に係る柱と合わせ横架材の接合構造1は、前記合わせ横架材を構成する上部材と下部材を接続部材を用いて接合することを特徴とする。本願柱と合わせ横架材の接合構造1は、本来上部材と下部材を接合するための接続部材は使用しなくても充分にその強度を保持しうる点に特徴を有する。しかし、近来東日本大地震級の激震に対しても耐え得る程度の強度を有することから、より安心感を高める要望に応えるために合わせ横架材を構成する上部材31aと下部材32a乃至上部材31bと下部材32bを従来から用いられる例えば、公知の金属平盤状の接続部材等(図示せず)を用いて連結してもよい。また、使用部材のいずれかの傾斜面に前記接着剤を塗布し、上部材を貫穴に打ち込んで固定した後、接着剤が乾燥するまでの間、前記合わせ横架材の中間部において上部材と下部材を軽易な万力ないしクランプ等で圧締し、接着剤が乾燥した後に取り外してもよい。
【0030】
本願発明の実施の形態において、
図7〜9に示す建物の中央等に例えば直径40〜50cm程度の主柱を基礎から屋根まで貫き、その主柱の貫穴に横架材を貫挿させて支える構造となっており、特に限定されるものではないが、主柱の長さに応じて平屋建てをはじめ二階建てから五階建ての建物に充分に対応が可能である。主柱と合わせ横架材の交差部が本願発明の実施の形態に係る接合構造部である。主柱を建物の中央寄りに2本、奥行き方向に複数本設け、更に最上階に屋上を設けてもよい。この主柱は下方側が太く上方に行くに従って細くなる立木加工材、或いは載頭円錐形や載頭角錐形に加工したものでもよい。また、本願発明の木造軸組の接合構造の加工は熟練を要することなく基礎的な技術があれば簡単にできることから若い技能者の育成にも役立つものである。更に、本願発明に係る柱と横架材の接合構造は前述のとおり地震の揺れに充分に耐えうる強度を有することからシェルター等の地震避難用の空間を確保する手段として応用が可能である。使用する木材も特に限定はなく例えば千葉県の山武杉のように全国の木材を地産地消に有効利用することが望ましい。
【0031】
本願発明の合わせ横架材は直径20cm程度の間伐材からでも2本組み合わせることにより直径40cm位の丸太からの横架材が得られるので間伐材の有効活用が期待できる。2本の角材(エレメント)の組み合わせにより、合わせ横架材の曲げヤング率(撓み難さ)を調整可能である。更に強度を強くしたい場合は強度の強い木材例えばヒノキを下側の下部材として用いたり、高強度の板材や平割材を下部材に用いることにより強い合わせ横架材が得られる。通常の集成材のように接着面が多くないので接着剤の使用量も少なく無垢材のに近い質感が得られる利点がある。
【0032】
主柱2に形成する貫穴(5a,5b)は、柱の強度を損なわない程度の大きさに形成することが好ましい。特に限定するものではないが、主柱2の貫穴形成箇所の断面における貫穴以外の残存面積が通常の管柱と同程度以上の面積を保持することが好ましい。貫穴5aの底部に形成される柱中ホゾ6,凸条柱中ホゾ61の高さは当接箇所における下方横架材を構成する下部材の肉厚を考慮して形成する。特に限定するものではないが0.5〜4cmの範囲が好ましく、1〜3cmの範囲がより好ましい。前記柱中ホゾの形状は横架材が横方向の曲げモーメントを受けたときに回転を阻止するために平面視にて多角形が好ましく、請求項4記載の柱中ホゾをやや長手の凸条61に形成し、該凸条の柱中ホゾ61と前記貫穴に挿通される合わせ横架材を構成する下部材の下面側に設けられる前記やや長手の凸条61に見合う凹条のホゾ穴71とがそれぞれ嵌合可能に設けられてなるものがより好ましい。
【0033】
上下方向の横架材は下方横架材(桁)を構成する上部材31aの凸条切欠部8に上方横架材(梁)を構成する下部材32bの交差部下面に形成した凹条切欠部9を嵌挿(柱中渡りあご組)させて接合する。前記下方横架材(桁)を構成する上部材31aの凸条切欠部8は強度を考慮して上端部分を切欠していないが、通常の渡りあご組と同様に上端部分を切欠いてもよい。これらの主柱や横架材の加工は、のみ或いはチェーンソーなどで加工してもよい。
【0034】
前記主柱2を基礎天上に束石を添えてその上に設置する。主柱の施工は材料の先端部をクレーンで吊り上げて行うが横架材の各部材を柱の貫穴に挿通する作業はクレーンを使用しなくても可能である。請求項
7記載の柱と合わせ横架材の施工方法の一例を以下に示す(
図5)。
第1工程:イ)主柱2を立設する。ロ)桁の下部材32aを柱の下方の貫穴5aに挿通す る。ハ)桁の下部材32aを柱中ホゾ6に嵌合する。
第2工程:イ)桁の下部材32a乃至上部材31bの何れかの傾斜面に接着剤を塗る。
ロ)桁の上部材31aを薄肉側を前方に向けて下部材32aと傾斜面を逆向に して重ね合わせると共に貫穴の間隙に打ち込んで固定する。
第3工程:イ)梁の下部材32bを斜面側を上方に向けて柱の上方貫穴5bに挿通する。 ロ)梁の下部材32bと桁の上部材31aの何れか凸条乃至凹条の切り欠き部 を組み合わせて固定する。
第4工程:イ)梁の下部材32b乃至上部材31b何れかの傾斜面に接着剤を塗る。
ロ)梁の上部材31bをその薄肉側を前方に向けて且つ下部材32bと傾斜面 が互いに逆方向を向くようにして重ね合わせると共に貫穴5bの間隙に打 ち込んで固定する。
【0035】
以下に、請求項
8記載の柱と合わせ横架材の施工方法の一例を以下に示す(
図4)。
第1工程:イ)下方の貫穴5aに桁3aが固定してなる2本の主柱2と、該主柱2の中間 に中柱21をそれぞれ合わせ横架材を挿通しようとする貫穴を互いに対向 して立設する。
第2工程:イ)2本の主柱2,2のいずれか一方の主柱2から他方の主柱2に向けて、 梁の下部材32bを斜面側を上方に向けて主柱2の上方貫穴5b及び中柱 21の貫穴5にそれぞれ挿通する。
ロ)梁の下部材32bと桁の上部材31aの何れか凸条乃至凹条の切り欠き部 を組み合わせると共に中柱21の貫穴5に設けられる凸条柱中ホゾ61を 前記下部材32bの下面に設けられる凹条ホゾ穴71に嵌合させる。
第3工程:イ)梁の下部材32b乃至梁の上部材31b何れかの傾斜面に接着剤を塗る。
ロ)梁の上部材31bをその薄肉側を前方に向けて且つ下部材32bと傾斜面 が互いに逆方向を向くように重ね合わせると共に貫穴5b及び貫穴5の間 隙に打ち込んで固定する。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本願発明について説明する。発明者は、前記実施の形態に係る木造軸組の接合構造を具体化するために
図1に示す模型を作成した。断面が正方形の主柱材と断面が長方形の梁材と桁材を準備し、主柱材の反対向する面に渡って下方貫穴5aと上方貫穴5bを穿設し、下方貫穴5aの底部に中央部を残して両端部を削り取って中央部に凸条の柱中ホゾ61を形成した。次ぎに、桁材を構成する上部材31aの上面側に相対する角部を切り欠いて凸条切欠部8を形成し、桁材を構成する下部材32aの下面側に凹条のホゾ穴71を形成した。次ぎに、梁材を構成する下部材32bの一面側に前記凸条切欠部8に対応する凹条切欠部9を形成した。次に、前記桁材を構成する上部材31aの傾斜面にタテ方向に1本の凹条溝を形成し、他方の下部材32aの傾斜面にタテ方向に1本の凸条を前記凹条溝と嵌合可能に形成した。次に、梁材を構成する上部材31bと下部材32bの傾斜面にも同様に凹条溝と凸条をそれぞれ嵌合可能に形成した。作成した主柱と梁と桁を前記の施工手順に従って組み立てた。なお、組立の直前に予め合わせ横架材を構成する上部材の傾斜面に水性高分子イソシアネート系接着剤を塗布した後に下部材に重ね合わせ貫穴の間隙に打ち込んで模型は手順通り組み立てが完了した。なお、前記梁材と桁材の中間部にクランプを取り付けて圧締し、接着剤が乾燥するまで暫く放置した後クランプを取り外した。その後前記構造物に外部から人力を加えて揺動するもぐらつきが一切なく堅固に固定していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明に係る木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造によれば地震にも充分耐えられる安全で安心な建物をリーズナブルな価格で提供でき、且つ国産の材木を使用することにより全国の林業並びに建築業の活性化にも大いに貢献する。
【符号の説明】
【0038】
1:柱と合わせ横架材の接合構造
2:主柱
21:中柱
3:合わせ横架材
3a:桁(下方の合わせ横架材)
3b:梁(上方の合わせ横架材)
31a:下方の合わせ横架材を構成する上部材
32a:下方の合わせ横架材を構成する下部材
31b:上方の合わせ横架材を構成する上部材
32b:上方の合わせ横架材を構成する下部材
41:横ずれ防止用凸条
42:横ずれ防止用凹条溝
5:貫穴
5a:下方貫穴
5b:上方貫穴
6:柱中ホゾ
61:凸条柱中ホゾ
7:ホゾ穴
71:凹条ホゾ穴
8:凸条切欠部(柱中渡りあご)
9:凹条切欠部
【要約】 (修正有)
【課題】建物の中央等に主柱を基礎から屋根まで貫き、その主柱の貫穴に合わせ横架材を貫挿させて支える地震にも充分耐えられる安全で安心な建物に用いる木造軸組における柱と合わせ横架材の接合構造を提供する。
【解決手段】主柱と合わせ横架材の接合構造において、前記合わせ横架材は長手方向に面する一面が傾斜面をなし上側に位置する上部材と下側に位置する下部材からなる二枚の部材をその傾斜面が互いに逆方向に向くように対向して構成し、前記主柱に設けられる上方と下方一対の貫穴に前記合わせ横架材を構成する下部材を斜面側を上方に向けて挿通し、下方貫穴の底部に設けられた柱中ホゾに対応するホゾ穴に前記ホゾを嵌合させると共に合わせ横架材を構成する上部材を下部材と傾斜面が互いに逆方向を向くようにしてそれぞれの貫穴に打ち込んで固定する。
【選択図】
図4