(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つのコアを含み、上記少なくとも2つのコアのうち第1のコアが、第1APIを含み、上記少なくとも2つのコアのうち第2のコアが、第2APIを含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤デリバリーデバイス。
さらに、第1コーティング層と第2コーティング層の間に第3コーティング層を含み、該第3コーティング層が、第1コーティング層の少なくとも一部分を覆って、APIの放出を遅くすることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤デリバリーデバイス。
第2コーティング層が、シリコーン、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤デリバリーデバイス。
病状が、膣、子宮、骨盤、直腸、目、耳、膿瘻、鼻、前立腺および膀胱の疾患からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤デリバリーデバイス。
活性医薬成分が、アタザナビル、ディダノシン、エファビレンツ、エムトリシタビン、ラミブジン、ロピナビル、ネビラピン、ラルテグラビル、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、ジドブジン、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、モルヒネ、ブプレノルフィン、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン、シクロスポリン、カルシニューリン阻害剤、プロスタグランジン、ベータ遮断剤、ゲンタマイシン、コルチコステロイド、フルオロキノロン、インスリン、抗腫瘍剤、制嘔吐剤、コルチコステロイド、抗生物質、モルヒネブプレノルフィン、VEGF阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤デリバリーデバイス。
薬剤デリバリーデバイスが、真皮下、皮下、全身、局所、硬膜外、病変内、腫瘍内、涙点内およびそれらの組み合わせからなる群から選択される投与経路に適合することを特徴とする、請求項10に記載の薬剤デリバリーデバイス。
病状が、高ホモシステイン血症、慢性腎不全、末期腎不全、血液透析、腹膜透析、血管性認知症、循環器疾患、卒中、脳血管障害、血栓疾患、凝固能亢進状態、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、血栓塞栓性疾患、虚血性卒中、経皮的冠動脈形成術後再狭窄(PTCA)、子癇前症、血管炎、指虚血、多発性骨壊死、網膜静脈閉塞、緑内障、流産、妊娠合併症、胎盤早期剥離、移植、糖尿病性網膜症、虚血性腸疾患、大脳静脈血栓症、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、陰茎静脈血栓症、インポテンス、中央静脈血栓症、末梢動脈障害、間欠性跛行、出血性大腸炎、放射線腸炎、放射線性大腸炎、内臓虚血、急性腸間膜虚血、慢性腸間膜虚血、高血圧、細小血管障害、大血管障害、再発性下腿潰瘍、頸動脈狭窄症、血管閉塞性疾患、動脈瘤、腹部大動脈瘤、鬱血性心不全、肝肺症候群、慢性肝疾患に付随する高流量状態、片頭痛、血管性頭痛、目まい、立ちくらみ、起立不耐症、起立性低血圧、起立性低血圧、体位性起立性頻拍症候群、特発性肺線維症、肺性高血圧、血管性浮腫、血管迷走神経性失神、神経弛緩薬性悪性症候群、学習障害、学習能障害、不眠症、認知症、加齢記憶障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、軽度認識障害、アルツハイマー病、ダウン症、自閉症、パーキンソン病、うつ病、不安または不安症、アスペルガー症候群、耐糖能異常、糖尿病、活動性低血糖症、メタボリック・シンドローム、低コルチゾール血症、視床下部−下垂体−副腎系機能不全、重症筋無力症候群、骨粗鬆症、自己免疫性多内分泌症候群、慢性疲労症候群(CFS)、中枢性過敏症候群、狭心症、X症候群、慢性首痛症候群、慢性神経筋痛、変形性関節症、筋肉緊張性頭痛、慢性頭痛、群発性頭痛、側頭筋腱炎、副鼻腔炎、非定型顔面痛、三叉神経痛、顔面および首の疼痛症候群、顎関節症候群、突発性慢性下背部痛、子宮内膜症、有痛性腹部癒着、慢性腹痛症候群、尾骨痛、骨盤底筋痛(肛門挙筋痙攣)、多発性筋炎、ヘルペス後神経痛、多発神経根障害、多発単神経炎、反射性交感神経性ジストロフィー、神経因性疼痛、外陰部前庭炎、外陰部痛、慢性局所疼痛症候群、変形性関節症、結合組織炎、慢性内臓痛症候群、女性尿道症候群、有痛性憩室症、機能性消化不良、非潰瘍性消化不良、非びらん性胃食道逆流疾患、酸過敏食道、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛症候群、慢性尿道症候群、慢性前立腺炎、1次性月経困難、性交疼痛、月経前症候群(PMS)、外陰部痛、卵巣残遺物症候群、排卵痛、骨盤鬱血症候群、筋膜性疼痛症候群、線維筋痛多発筋痛リウマチ、ライター症候群(反応性関節炎)、関節リウマチ、脊椎関節症、機能性身体症候群、慢性局所疼痛症候群、ポリオ後症候群、機能性身体症候群、鼻炎、喘息、多種化学物質過敏症候群、反応性気道機能不全症候群、名詞想起困難症、シックハウス症候群、喘息、特発性肺線維症、特発性肺高血圧症高血圧、嚥下障害、胃不全まひ、機能性下痢、慢性便秘、慢性便秘、排尿障害、弛緩膀胱、過敏膀胱、過敏性腸症候群(IBS)、腸閉塞、慢性特発性大腸偽性腸閉塞症、オギルビー症候群、レストレスレッグス症候群、免疫機能不全症候群、多発性硬化症(MS)、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、回腸嚢炎、非特異性潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎(IBD)、セリアック病、空置大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、盲管係蹄症候群、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脂肪肝、慢性肝疾患、肝硬変、突発性細菌性腹膜炎、術後イレウス、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織障害、未分化結合組織障害、レイノー症候群、川崎症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、筋炎、多発性自己免疫症候群、シェーグレン症候群、扁平苔癬、特発性ブドウ膜炎、歯肉炎、口内炎、耳炎、壊死性腸炎、集中治療室(ICU)多臓器不全、原発性胆汁性肝硬変、特発性骨髄線維症、結節性多発動脈炎、好酸球性胸水、好酸球性胃腸炎、好酸球性食道炎、移植片対宿主疾患、グレーブス病、突発性甲状腺不全、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、膵臓炎、CREST症候群、自己免疫性胆管炎、強直性脊椎炎、アトピー性皮膚炎、白斑、強皮症、自己免疫性耳疾患、多発性血管炎重複症候群、原発性硬化性胆管炎、湾岸戦争症候群、筋痛性脳脊髄炎、食物過敏症、異常調節スペクトラム症候群、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、良性腫瘍、悪性腫瘍、癌およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤デリバリーデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書に示されるすべての参考文献は、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。特記しない限り、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。当業者であれば、本発明の実施に用いることができる、本明細書に記載のものと類似のまたは等価の方法および物質を理解できるであろう。即ち、本発明は、記載の方法および物質に限定されるものではない。本発明のために、以下のように用語を定義する。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「API」は、活性医薬成分を意味する。
本明細書において薬剤デリバリーデバイスに関連して用いられる場合、「コア」は、コーティングされておらず、成形された(例えば、圧縮された)API組成物(例えば、錠剤)を意味する。
本明細書において用いられる場合、「ポッド」は、1つまたはそれ以上の生体分解性ポリマーの層でコーティングされているが、最終シーリングポリマー層および/またはデリバリーチャンネルを有しないコア(例えば、未コーティングの成形されたAPI錠剤)を意味する。
本明細書において本発明に関して用いられる場合、「薬剤デリバリーデバイス」は、1つまたはそれ以上のポッド、シーリングポリマー層および/または1つまたはそれ以上のデリバリーチャンネルを含むデバイスを意味する。薬剤デリバリーデバイスは、医薬化合物を制御された方法(制御された投与速度および合計用量)で、内服または外用のいずれかでの使用も意図する。
本明細書において用いられる場合、「CMCNa」は、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を意味する。
本明細書において用いられる場合、「dH
2O」は、重水素水を意味する。
本明細書において用いられる場合、「DVS」は、ジビニルスルホン架橋剤を意味する。
本明細書において用いられる場合、「EVA」は、エチレン酢酸ビニルを意味する。
本明細書において用いられる場合、「FTIR」は、フーリエ変換赤外スペクトルを意味する。
本明細書において用いられる場合、「HEC」は、ヒドロキシエチルセルロースを意味する。
本明細書において用いられる場合、「賦形剤」は薬剤デリバリーデバイスに含まれる薬理的に不活性な成分を意味する。賦形剤としては、特に限定するものではないが、染料、フレーバー、結合剤、皮膚軟化剤、充填剤、滑沢剤および保存剤が挙げられる。賦形剤は、APIの放出特性または他の特性を改良するのに、例えばAPIの溶解性を増加させるために用いることができ、あるいは、これらは不活性成分、例えば充填剤および着色剤であってもよい。
本明細書においてコーティング層に関連して用いられる場合、「不浸透性」は、所望の局所または全身性の生理学的または薬理的効果を与えるのに必要な速度で、有効薬物が通り抜けることができない層を意味する。
本明細書においてコーティング層に関連して用いられる場合、「半浸透性」は、有効薬物が通り抜けることができるが、ポリマーが存在しない場合、または放出性ポリマーが存在する場合よりも、有意に遅い速度で通り抜ける層を意味する。
本明細書において用いられる場合、「有意に遅い」は、0.5〜5log
10の単位で遅い速度を意味する。
本明細書において用いられる場合、「IVR」は、膣内リングデリバリーデバイスを意味する。
本明細書において用いられる場合、「LSR」は、液体シリコーン樹脂を意味する。
本明細書において用いられる場合、「NMR」は、核磁気共鳴分光法を意味する。本明細書において用いられる場合、
1H−NMRは、プロトンNMR分光法を意味する。
本明細書において用いられる場合、「任意に」または「所望により」は、記載の事象または状況が、生じても、生じなくてもよいことを意味し、記載が、その事象または状況が生じる場合および生じない場合の両方を含む。例えば、「所望により遮断ポリマーによりコーティングされていてもよい」は、遮断ポリマーを、処方物に用いても、用いなくてもよいことを意味し、この記載は、遮断ポリマーが存在する場合、および除かれている場合の両方を含む。
本明細書において用いられる場合、「PE」は、ポリエチレンを意味する。
本明細書において用いられる場合、「PLA」は、ポリ乳酸重合体を意味し、また、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチドまたはポリ−L、D−ラクチドから構成されるポリラクチドも意味する。
本明細書において用いられる場合、「PVA」は、ポリビニルアルコール重合体を意味する。
本明細書において用いられる場合、「PVA−MA」は、ポリビニルアルコール−メタクリレート共重合体を意味する。
本明細書において用いられる場合、「TFV」は、テノホビル(抗レトロウイルス殺菌剤)を意味する。
【0039】
開示される発明は、所望のAPIのヒトの患者への放出を正確に制御することができるように、浸透性および半浸透性ポリマーコーティング、不浸透性ポリマーコーティングにおける放出ウィンドウの大きさおよび数、および/または構造、およびヒドロゲルまたはウィッキング材料の固有の組み合わせを利用する薬剤デリバリーデバイスである。種々の態様において、デリバリーデバイスは、膣内リング、ダイアフラム、ペッサリーまたは坐剤として挿入され得る。
【0040】
本発明に開示されるデリバリーデバイスからの薬剤の放出は、放出溶液に対する薬剤の溶解性、薬剤コアに用いるポリマーコーティング、薬剤コアを放出溶液に曝露するデリバリーウィンドウチャンネルの大きさおよび量、薬剤キャビティおよび/またはデリバリーチャンネル内に用いられるウィッキング剤の特性を含む、複数の因子により制御され得る。
【0041】
図1は、本発明の一の態様を説明する。
図1に示されるデバイスは、環(リング)として構成されるが、デバイスはいずれの形状であってもよい。
図1Aは、各々が別個のデリバリーウィンドウに連結されている10個のAPIポッドを有する膣内リング構造であるデリバリーデバイスを示す。
図1Bは、APIのコア101、コアを覆い、APIに対して浸透性および/または半浸透性である第1コーティング層102、第1コーティング層を覆いAPIに対して不浸透性である第2コーティング層103、および第2コーティングを通り抜けるAPIの通路を提供するデリバリーウィンドウ104を含むデバイスを示す。
【0042】
図2は、APIのコア201、コアを覆い、APIに対して浸透性および/または半浸透性である第1コーティング層202、第1コーティング層を覆いAPIに対して不浸透性である第2コーティング層203、および第2コーティング層を通り抜けるAPIの通路を提供するデリバリーウィンドウ204に加えて、ウィッキング材料205を含むデバイスの種々の態様を示す。
図2Aは、デリバリーウィンドウ204を満たすウィッキング材料205を示す。
図2Bは、デリバリーウィンドウ204および第1コーティング層202の上部を満たすウィッキング材料205を示す。
図2Cは、デリバリーウィンドウ204および第1コーティング層202の全周囲を満たすウィッキング材料205を示す。
図2Dは、デリバリーウィンドウ204を通り抜け、コア201にまで伸びているウィッキング材料205を示す。
図2Eは、デリバリーウィンドウ204の内壁をコーティングするウィッキング材料205を示す。
【0043】
図3は、一の態様のデバイスを示す。APIを含むコア301は、シリコーンの不浸透性殻303により包囲されており、縫合絹305は、コア301を貫通し、薬剤が不浸透性殻303を通り抜けるためのデリバリー経路およびデバイスをその場所に保持する縫合糸として機能する。
【0044】
図6は、CMC−HEC(即ち、ウィッキング材料)をデバイスに組み入れる方法の一例を示す。
図6Aは、ポッドキャビティに加えられるCMC−HECポリマー溶液605を示す;
図6Bは、24時間硬化させたCMC−HECポリマー溶液605を示す;
図6Cは、キャビティ中に挿入されたAPIを含むコア601を示す;
図6Dは、シリコーン603(不浸透性コーティング)でシールされたキャビティを示す。
【0045】
本発明の種々の態様は、薬剤の溶解および放出速度を制御する、ポリマー層でコーティングされた、APIの中実コアを有する薬剤デリバリーデバイスを提供する。種々の態様において、1つのポリマー層は、目的のAPIに対して浸透性である放出ポリマーである(これは、APIポッドを形成する)。種々の態様において、外層は、シリコーン、ポリエチレン(PE)またはエチレン酢酸ビニル(EVA)のようなシーリング物質である。
【0046】
種々の態様において、APIの放出を遅くするためにポッド表面の一部または全体をコーティングする任意の「遮断ポリマー」層が、放出層とシーリング外層の間に存在する。種々の態様において、遮断ポリマーが、不浸透性層と同じ物質から形成される。他の態様において、遮断ポリマーは、不浸透性層とは異なる物質から形成される。
【0047】
デバイスのコーティング層を製造するのに適し得る物質は、体液および組織に生物学的に適合する天然物質または合成物質を含む。
【0048】
体液および組織に生物学的に適合する天然物質または合成物質、本質的には物質が接触するであろう体液に不溶である天然物質または合成物質としては、特に限定されないが、ポリビニル酢酸、架橋性ポリビニルアルコール、架橋性ポリビニル酪酸、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリヘキシルアクリル酸エチル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、可塑性エチレンビニル酢酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑性ポリ塩化ビニル、可塑性ナイロン、可塑性ソフトナイロン、可塑性ポリエチレンテレフタラート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋性ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4’−イソプロピリデンジフェニレンカルボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ジエチルフレメール(fumerale)共重合体、シリコンラバー、特に医薬グレードのポリジメチルシロキサン、エチレン−プロピレンラバー、シリコーン−カルボネート共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマー、およびエチルセルロースポリマーが挙げられる。
【0049】
特に、本発明のデバイスの放出ポリマーは、上記に列挙したポリマーのいずれか、あるいは、体液および組織に生物学的に適合する他のポリマー、本質的には物質が接触し得る体液に対して不溶であり、有効薬物に対して浸透性であるポリマーから形成され得る。放出ポリマーの層でコーティングされる薬剤は、所望の局所または全身性の生理学的または薬理的効果を与えるのに必要な速度で薬剤が通り抜けることができるように、遮断ポリマー層またはシーリング層、およびデリバリーチャンネルを必要とする。本発明のデバイスの遮断ポリマーは、上記に列挙したポリマーのいずれか、あるいは、あるいは、体液および組織に生物学的に適合する他のポリマー、本質的には物質が接触し得る体液に対して不溶であり、有効薬物に対して不浸透性または半浸透性であるポリマーから形成され得る。不浸透性なる用語は、本明細書において用いられる場合、所望の局所または全身性の生理学的または薬理的効果を与えるのに必要な速度で、有効薬物が通り抜けることができない層を意味する。半浸透性なる用語は、有効薬物が通り抜けることはできるが、ポリマーが存在しない場合、または放出性ポリマーが存在する場合よりも、有意に遅い速度で通り抜ける層を意味する。浸透性、半浸透性または不浸透性(即ち、放出、遮断またはシーリングポリマー)としての所定のポリマー物質の挙動は、薬剤の特性、特に限定するものではないが、溶解性、疎水性、親水性または親油性およびlog p(オクタノール−水分配係数)に依存する。
【0050】
種々の態様において、シーリング(シリコーン、EVA、PE)層は、膣内リング、ダイアフラム、子宮内デバイスまたは他の医薬インプラントの本体部を形成する。1つまたはそれ以上のポッドが、1つのリングまたはデバイスに存在し得る。シーリング層は、デリバリーウィンドウを含み、該デリバリーウィンドウは、シーリング層をAPIポッドまで通り抜ける通路であり、デバイスからデリバリーウィンドウ空間を通る拡散によりAPIを放出することができる。各々のポッドについて、1つのウィンドウまたは複数のウィンドウが存在してもよい(
図1)。種々の態様において、デリバリーウィンドウは、ウィンドウ空間を通り抜ける液体および/またはAPIの移動速度を変更するためのウィッキング材料により満たされている。ウィッキング材料および用途に応じて、移動速度は、増加または減少し得る。これらの多くの可能性ある構成を、
図2に示す。種々の態様において、ウィッキング材料は、親水性ポリマー(ヒドロゲル)であってもよい。このようなヒドロゲル物質の例としては、特に限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース−カルボキシメチルセルロース共重合体、ポリビニルアルコール−メタクリレート共重合体、ポリエチレングリコール−メタクリレート共重合体が挙げられる。種々の態様において、ウィッキング材料は、繊維材料または繊維の束であってもよい。例として、絹、綿、およびナフィオンが挙げられる。
図3は、この構成のデバイスを示す。種々の態様において、ウィッキング材料は、デリバリーウィンドウ空間を完全に満たしていてもよく、あるいは、ウィンドウを部分的にのみ満たしていてもよい。部分的に充填する場合、ウィンドウ通路の中心に充填してもよく(例えば、繊維がウィンドウを貫通する)、あるいは、デリバリーウィンドウ内壁上のウィッキング材料ポリマーコーティングとして充填してもよい。ウィッキング材料はまた、単純に表面をコーティングすることとは対照的に、シリコーン物質に化学的に結合してもよい。この例としては、濡れ性を改善するための、ポリ(エチレングリコール)架橋性ポリマーを用いる、デリバリーウィンドウ壁上の露出シラノール(Si−OH)官能性の修飾が挙げられる。種々の態様において、ヒドロゲル物質は、デリバリーウィンドウを満たすのに加えて、薬剤ポッドキャビティの一部を満たしていても、APIポッドの全周を包囲するまたは一部分を包囲するヒドロゲル層を形成してもよい。
【0051】
多くのポリマーを、本発明のデバイスの構築に用いることができる。求められる条件は、それが、不活性であり、非免疫原性であり、所望の浸透性であることである。
【0052】
本発明のデバイスの不浸透性層は上記に列挙したポリマー、好ましくはシリコーン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレン、または体液および組織に生物学的に適合し、本質的に有効薬物の通路に対して不浸透性である他のポリマーの中の、適切な不浸透性構成員から形成され得る。
【0053】
本発明のデバイスの浸透性および/または半浸透性層は、体液および組織に生物学的に適合し、所望の効果を得るのに有効な薬物または組成物の通路に対して浸透性でなければならない。
【0054】
有効薬剤は、より低い化学ポテンシャルとなる方向に、即ち、デバイスの外側の表面に向かって拡散する。デバイスの外部表面で、平衡が再び確立される。浸透性および/または半浸透性コーティング層の両側の条件が、一定状態に維持される場合、定常的な有効薬剤の流れが、フィックの法則に従って、確立されるだろう。拡散による薬剤の物質を通る速度は、一般的に、そこにおける薬剤の溶解性ならびに壁の厚さ、他のパラメータ(下記参照)に依存する。これは、壁を形成する適当な物質の選定が、用いる特定の薬物に依存するだろうことを意味している。
【0055】
本発明のポリマーの層を通しての上記有効薬剤の拡散速度は、沈降条件下で行われる拡散セル試験により決定することができる。沈降条件下で行われる拡散セル試験においては、供給区分内の高い濃度と比較したとき、その受容区分内の薬剤の濃度は、本質的にゼロである。このような条件では、薬剤放出の速度は、以下の式:
【数1】
[ここで、Qは放出された薬剤の量であり、tは時間であり、Dは拡散係数であり、Kは分配係数であり、Aは表面積であり、DCが、膜を隔てた薬剤の濃度差であり、そしてhが膜の厚さである。]
【0056】
孔を満たす水を介しての、層を通る薬剤の拡散である場合は、分配現象はない。したがって、Kは、上記方程式から除くことができる。沈降条件下では、供給側からの放出が非常に遅い場合には、DC値は本質的に一定であり、そして供給区分の濃度に等しい。したがって、放出速度は、膜の表面積(A)、厚さ(h)、および拡散率(D)に依存するようになる。本発明のデバイスの構築において、その大きさ(したがって、表面積)は、主に、上記有効薬剤の大きさに依存する。
【0057】
かくして、浸透性の値は、Q対時間のプロットの勾配から得ることができる。この浸透性Pは、以下の式:
【数2】
により、上記拡散係数Dと関係付けできる。
【0058】
浸透性および/または半浸透性コーティング層としての使用に好適な微少孔のある材料の例は、例えば、米国特許第4,014,335号(引用により、その全体を本明細書中に組み入れる)に記載されている。これらの物質は、架橋性ポリビニルアルコール、ポリオレフィンもしくはポリビニル塩化物または架橋性ゼラチン;再合成された、不溶の、非浸食性のセルロース、アシル化されたセルロース、エステル化されたセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートジエチル−アミノアセテート;ポリウレタン、ポリカーボネート、そして、ポリカチオン及びポリアニオンにより修飾された不溶のコラーゲンの共沈により形成された微少孔ポリマーである。ポリ乳酸または架橋性ポリビニルアルコールが好ましい。上記浸透性および/または半浸透性コーティング層は、内部コアから哺乳動物の生物に、例えばヒトに接する部分への剤の放出が遅くなるように選ばれる。この浸透性および/または半浸透性コーティング層は、上記剤のその生物学的環境への段階的放出または制御を提供することを必要としない。しかしながら、有利には、この浸透性および/または半浸透性コーティング層は、その性質または特徴を持つように選択することができる。
【0059】
本発明のデバイスは、多種多様な方法により、例えば、APIの有効量を得て、そしてそのAPIを所望の形状のコアに圧縮することにより作ることができる。例えば、一旦形が作られれば、浸透性および/または半浸透性コーティング層を、APIコアに施して、コーティングされたAPIポッドを作製することができる、エチレンビニルアセテートの場合には、不浸透性コーティング層を、上記ポッドの外側の表面に、シートまたは膜の形態で直接的に施すことができる。種々の態様において、APIコアは、不浸透性コーティング層でコーティングする前に、その表面全体に施された浸透性コーティングを有していてもよい。ポリ乳酸またはポリビニルアルコールの場合は、この浸透性および/または半浸透性コーティング層は、1回またはそれ以上、所望のポリマーを含む溶液中にAPIコアまたはポッドを浸漬することにより施すことができる。場合により、浸透性および/または半浸透性コーティング層は、ポリマー溶液を用いて、コアまたはポッドの外部表面をコーティングする、ドロッピング、スプレー、ブラッシングまたは他の手段により施してもよい。浸透性および/または半浸透性コーティングをコア表面全体に施すために、好ましいコーティング方法は、流動床式またはパンコーティングデバイスにおけるスプレーコーティングである。浸透性および/または半浸透性コーティング層を得るためにポリ乳酸またはポリビニルアルコール溶液を使用した場合、所望の厚さは、数回コーティングすることにより得ることができる。各々のコーティングは、次のコーティングを施す前に乾燥してもよい。
【0060】
以下に、本発明のデバイスに、APIとして含まれ得る剤の群の例を挙げるが、これは限定を意図するものではない:
1)麻酔および鎮痛剤(例えば、リドカインおよび関連化合物、ベンゾジアゼパンおよび関連化合物、およびブプレノルフィンおよび関連化合物);
2)抗アレルギー剤(例えば、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、ピリラミンおよびプロフェンピリダミン);
【0061】
3)抗生物質[例えば、アミノグリコシド系(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン)、アンサマイシン系(例えば、ゲルダナマイシン、ハービマイシン)、カルバセファム系(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム系(例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム)、セファロスポリン系(例えば、第1世代:セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(cefalotin)またはセファロチン(cefalothin)、セファレキシン;第2世代:セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム;第3世代:セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン;第4世代:セフェピム;第5世代:セフトビプロール)、グリコペプチド系(例えば、テイコプラニン、バンコマイシン)、マクロライド系(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシ)、モノバクタム系(例えば、アズトレオナム)、ペニシリン系(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、おキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン)、抗生物質ポリペプチド系(例えば、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB)、キノロン系(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レポフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン)、リファマイシン系(例えば、リファンピシンまたはリファンピン、リファンピシン、リファペンチン、リファキシミン)、スルホンアミド系(例えば、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム−スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール、「tmp−smx」)、およびテトラサイクリン系(例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン)ならびにアルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン組み合わせ、およびチニダゾール);特に抗生物質は、限定するものではないが、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリマイシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、およびえリスロマイシンを含む;
4)抗菌剤(例えば、スルホンアミド系、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウム);
【0062】
5)抗癌剤または抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤および抗増殖剤)
化学療法剤の例としては、細胞毒性剤(例えば、5−フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムスチンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ−2a組み換え体、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシン)、細胞毒性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、またはエチルスルホン酸)、アルキル化剤(例えば、アサリー、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラート白金、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、cis−白金、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾールアミド、ニトロゲンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルニトロゲンマスタード、およびYoshi−864)、抗有糸分裂剤(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、マイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、および硫酸ビンクリスチン)、植物性アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L−アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP−16−213、VM−26、ナベルビンおよびタキソテール)、生物製剤(例えば、アルファインターフェロン、BCG、G−CSF、GM−CSF、およびインターロイキン−2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトセシン、カンプトセシン誘導体およびモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン、アモナフィド、m−AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロピリジン、ビサントレンHCl、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N、N−ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM−26およびVP−16)、および合成物質(例えば、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、o、p’−DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、cis−ジアミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、オールトランス−トランスレチノイン酸、グリアデルおよびポルフィマーナトリウム)が挙げられる。
【0063】
抗増殖剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質、酵素、生物学的応答修飾剤、ホルモンおよびアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミドおよび酢酸ロイプロリド)、抗エストロゲン剤(例えば、クエン酸タモキシフェンおよびそのアナログ、トレミフェン、ドロロキシフェンおよびラロキシフェン)が挙げられる;抗増殖剤のさらなる例としては、限定するものではないが、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチムストロンチウム−89クロライド、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン、およびオンダンセトロンが挙げられる。
【0064】
特別な抗癌剤は、特に限定するものではないが、5−フルオロウラシル、アドリアマイシンおよび関連化合物が挙げられる。
【0065】
抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21−リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸塩、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾンおよびトリミノロン、マンノース6−リン酸);
【0066】
7)抗真菌剤(例えば、フルコナゾールおよび関連化合物);
8)抗ウイルス剤(例えば、アシクロビルおよび関連薬剤、テノホビル、マラビロク、エムトリシタビン、サキナビル、イドクスウリジン、ホスホモノギ酸三ナトリウム、トリフルオロチミジン、ガンシクロビル、DDIおよびAZT);
9)細胞輸送/移動度切迫剤(例えば、コルヒチン、ビンクリスチン、サイトカラシンBおよび関連化合物);
10)ベータ遮断剤:(例えば、チモロール、ベタキソロール、アテノロール等);
11)プロスタグランジン(例えば、ラタノプロスト)
12)充血除去剤(例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、およびテトラヒドラゾリン);
13)HIV薬剤(例えば、NRTI、NRTI、プロテアーゼ阻害剤、侵入阻害剤;
14)ホルモン類(例えば、避妊用);
15)ホルモン類(例えば、ホルモン補充療法用);
16)ホルモン類(例えば、不妊、介助生殖療法(ART)、および体外受精(TVF)用)
17)免疫応答修飾剤(例えば、ムラミールジペプチドおよび関連化合物);
18)縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ(例えば、ピロカルピン、サリチル酸エゼリン、カルバコール、ジ−イソプロピルフルオロホスフェート、ヨウ化ホスホリン、および臭化デメカリウム);
19)散瞳剤(例えば、硫酸アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、オイカトロピン、およびヒドロキシアンフェタミン);
20)ペプチドおよびタンパク質(例えば、シクロスポリン、インスリン、成長ホルモン、インスリン関連因子、熱ショックタンパク質、抗体および関連化合物);
21)ステロイド系化合物(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよび関連化合物);
22)交感神経様作用剤(例えば、エピネフリン);
23)炭酸脱水酵素阻害薬;
24)失禁治療剤;および
25)局所療法に一般的に用いられる薬剤(例えば、膣管用の乳酸);
26)交感神経および/または副交感神経系に作用する薬剤;
27)抗精神病剤;および
28)抗鬱剤。
【0067】
他の薬剤の同定に関しては、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesのような標準的な薬理書に見ることができる。かかる化合物のいずれもの医薬上許容される形態:例えば、遊離塩基、医薬上許容される塩または誘導体(例えば、エステル、カルバメート、アミド)を、本発明の実施において用いることができる。例えば、医薬上許容される塩は、硫酸塩、乳酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩等を含む。
【0068】
また、本発明の種々の態様は、APIによる局所または全身性の生理学的または薬理的効果を得ることを必要とする対象を治療する方法を提供する。該方法は、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること;および薬剤デリバリーデバイスを対象に投与し、APIを薬剤デリバリーデバイスのデリバリーウィンドウと通して、対象に接触させることを含む。投与は、限定するものではないが、設置、位置決め、挿入、注入、インプラントまたは薬剤デリバリーデバイスを対象に曝すいずれもの別の方法を含み得る。
【0069】
本発明の薬剤デリバリーデバイスは、当該分野で知られた投与経路により哺乳動物の生物に投与することができる。このような投与経路は、眼内、経口、皮下、筋肉内、腹膜内、鼻内、皮膚、等を含む。さらに、1つまたはそれ以上のデバイスは、1回またはそれ以上で投与してもよく、剤は、内部コア内に含まれ得る。
【0070】
これらの投与方法およびその調製技術は、当業者によく知られている。調製技術は、レミントン薬理学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)に見ることができる。
【0071】
薬剤デリバリーシステムは、十分な期間、対象の病態の治療を可能にする条件下で投与され得る。
【0072】
局所薬剤デリバリーに関しては、デバイスは、作用部位に、またはその近くに外科的にインプラントしてもよい。本発明のデバイスに関しては、これは、例えば、目の症状、原発腫瘍、リウマチおよび関節炎の症状、ならびに慢性の痛みの治療において用いられる場合が挙げられる。
【0073】
全身性の軽減に関しては、デバイスは、皮下、筋肉内、腹腔内にインプラントされ得る。これは、デバイスが、デバイスが、全身レベルを持続し、早期の代謝を避けるためのものである場合が挙げられる。
【0074】
当業者には容易に理解できるように、量、物質および寸法は、投与方法、用いる有効薬剤、用いるポリマー、所望の放出速度等に依存する。同様に、実際の放出速度および放出期間も、上記の因子に加え、種々の因子、例えば治療すべき病態、患者の年齢および状態、投与経路ならびに当業者に明らかな他の因子に依存する。
【0075】
本発明の種々の態様に関連した治療に適していると考えられる具体的な症状および病状は、限定するものではないが、以下のカテゴリーに関連する症状および病状が挙げられる:高ホモシステイン血症に関連する凝固能亢進状態(例えば、高ホモシステイン血症、慢性腎不全、末期腎不全、血液透析、腹膜透析、血管性認知症、循環器疾患、卒中、脳血管障害、血栓疾患、凝固能亢進状態、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、血栓塞栓性疾患、虚血性卒中、経皮的冠動脈形成術後再狭窄(PTCA)、子癇前症、血管炎、指虚血、多発性骨壊死、網膜静脈閉塞、緑内障、流産、妊娠合併症、胎盤早期剥離、移植、糖尿病性網膜症、虚血性腸疾患、大脳静脈血栓症、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、陰茎静脈血栓症、インポテンス、中央静脈血栓症、末梢動脈障害、間欠性跛行、出血性大腸炎、放射線腸炎および大腸炎、内臓虚血、急性腸間膜虚血、慢性腸間膜虚血、高血圧、細小血管障害、巨大血管障害、再発性下腿潰瘍、頸動脈狭窄症、血管閉塞性疾患、動脈瘤、腹部大動脈瘤);血管拡張性状態(例えば、鬱血性心不全、肝肺症候群、慢性肝疾患に付随する高流量状態、片頭痛、血管性頭痛、目まい、立ちくらみ、起立不耐症、起立性低血圧、起立性低血圧、体位性起立性頻拍症候群、特発性肺線維症、肺性高血圧、血管性浮腫、血管迷走神経性失神、神経弛緩薬性悪性症候群);神経伝達物質としての機能との干渉(例えば、学習障害、学習能障害、不眠症、認知症、加齢記憶障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、軽度認識障害、アルツハイマー病、ダウン症、自閉症、パーキンソン病、うつ病、不安または不安症、アスペルガー症候群);内分泌機能との干渉(例えば、耐糖能異常、糖尿病、活動性低血糖症、メタボリック・シンドローム、低コルチゾール血症、視床下部−下垂体−副腎系機能不全、重症筋無力症候群、骨粗鬆症、自己免疫性多内分泌症候群);過敏性を誘導するN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体の刺激に起因する慢性疼痛症候群(例えば、慢性疲労症候群(CFS)、中枢性過敏症候群、狭心症、X症候群、慢性首痛症候群、慢性神経筋痛、変形性関節症、筋肉緊張性頭痛、慢性頭痛、群発性頭痛、側頭筋腱炎、副鼻腔炎、非定型顔面痛、三叉神経痛、顔面および首の疼痛症候群、顎関節症候群、突発性慢性下背部痛、子宮内膜症、有痛性腹部癒着、慢性腹痛症候群、尾骨痛、骨盤底筋痛(肛門挙筋痙攣)、多発性筋炎、ヘルペス後神経痛、多発神経根障害、多発単神経炎、反射性交感神経性ジストロフィー、神経因性疼痛、外陰部前庭炎、外陰部痛、慢性局所疼痛症候群、変形性関節症、結合組織炎、慢性内臓痛症候群、女性尿道症候群、有痛性憩室症、機能性消化不良、非潰瘍性消化不良、非びらん性胃食道逆流疾患、酸過敏食道、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛症候群、慢性尿道症候群、慢性前立腺炎、1次性月経困難、性交疼痛、月経前症候群(PMS)、外陰部痛、卵巣残遺物症候群、排卵痛、骨盤鬱血症候群、筋膜性疼痛症候群、線維筋痛多発筋痛リウマチ、ライター症候群(反応性関節炎)、関節リウマチ、脊椎関節症、機能性身体症候群、慢性局所疼痛症候群、ポリオ後症候群、機能性身体症候群);鼻および気管の障害(例えば、鼻炎、喘息、多種化学物質過敏症候群、反応性気道機能不全症候群、名詞想起困難症、シックハウス症候群、喘息、特発性肺線維症、特発性肺高血圧症高血圧);内臓平滑筋収縮機能との干渉(例えば、嚥下障害、胃不全まひ、機能性下痢、慢性便秘、慢性便秘、排尿障害、弛緩膀胱、過敏膀胱、過敏性腸症候群(IBS)、腸閉塞、慢性特発性大腸偽性腸閉塞症、オギルビー症候群);好気的代謝の阻害/虚血疾患(例えば、レストレスレッグス症候群、慢性疲労症候群);炎症の誘発(例えば、免疫機能不全症候群、多発性硬化症(MS)、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、回腸嚢炎、非特異性潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎(IBD)、セリアック病、空置大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、盲管係蹄症候群、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脂肪肝、慢性肝疾患、肝硬変、突発性細菌性腹膜炎、術後イレウス、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織障害、未分化結合組織障害、レイノー症候群、川崎症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、筋炎、多発性自己免疫症候群、シェーグレン症候群、扁平苔癬、特発性ブドウ膜炎、歯肉炎、口内炎、耳炎、壊死性腸炎、集中治療室(ICU)多臓器不全、原発性胆汁性肝硬変、特発性骨髄線維症、結節性多発動脈炎、好酸球性胸水、好酸球性胃腸炎、好酸球性食道炎、移植片対宿主疾患、グレーブス病、突発性甲状腺不全、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、膵臓炎、CREST症候群、自己免疫性胆管炎、強直性脊椎炎、アトピー性皮膚炎、白斑、強皮症、自己免疫性耳疾患、多発性血管炎重複症候群、原発性硬化性胆管炎);おーバーラップ疾患(例えば、湾岸戦争症候群、筋痛性脳脊髄炎、食物過敏症、異常調節スペクトラム症候群、心的外傷後ストレス障害(PTSD));アポトーシスおよび増殖の制御との干渉(例えば、良性腫瘍、悪性腫瘍、癌)。
【0076】
本明細書に開示される発明は、様々な活性医薬成分(API)を用いる、様々な医学的症状を治療するための様々な解剖学的分野において用いることができる。以下の例は、組み合わせを説明することを意図するものであって、限定を意味するものではない。
【0077】
膣において用いる場合、デバイスは、以下の治療において用いることができる:(1)アタザナビル、ディダノシン、エファビレンツ、エムトリシタビン、ラミブジン、ロピナビル、ネビラピン、ラルテグラビル、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、フマル酸テノホビルジソプロキシルまたはジドブジンを有するデバイスを用いる、HIVの治療またはHIVの予防(例えば、HIVを獲得する可能性を低下させる);(2)アシクロビル、ファムシクロビル、またはバラシクロビルを有するデバイスを用いる、HSVの治療またはHSVの予防(例えば、HSVを獲得する可能性を低下させる);(3)モルヒネまたはブプレノルフィンを有するデバイスを用いる、骨盤痛の治療;(4)エストロゲンおよび/またはプロゲスチンを有するデバイスを用いる、避妊;(5)エストロゲンを有するデバイスを用いる、ホルモン補充療法;および(6)プロゲステロンを有するデバイスを用いる不妊治療。
【0078】
目に用いる場合、デバイスは、(1)シクロスポリンまたは他のカルシニューリン阻害剤を有するデバイスを用いるドライアイの治療;および(2)プロスタグランジンまたはベータ遮断剤を有するデバイスを用いる緑内障の治療に用いることができる。
【0079】
耳に用いる場合、デバイスは、(1)ゲンタマイシンまたはコルチコステロイドを有するデバイスを用いるメニエール病の治療;および(2)抗生物質、例えばフルオロキノロンを有するデバイス、またはコルチコステロイドを有するデバイスを用いる中耳炎の治療に用いることができる。
【0080】
全身性治療の場合、デバイスは、(1)シクロスポリンを有するデバイスを用いる乾癬の治療;および(2)インスリンを有するデバイスを用いる糖尿病の治療に用いることができる。
【0081】
局所治療の場合、デバイスは、抗腫瘍剤を有するデバイスを用いる腫瘍の治療に用いることができる。
【0082】
全身性治療の場合、デバイスは、制嘔吐剤を有していてもよい。
【0083】
局所治療の場合、デバイスは、コルチコステロイドを有するデバイスを用いる潰瘍性大腸炎の治療に用いることができる。
【0084】
膿瘻または鼻の症状の場合、デバイスは、(1)抗生物質またはコルチコステロイドを有するデバイスを用いる慢性副鼻腔炎の治療に用いることができる。
【0085】
CNSまたは硬膜外治療の場合、デバイスは、(1)鎮痛剤、例えばモルヒネまたはブプレノルフィンを用いる慢性の痛みの治療に用いることができる。
【0086】
病変内または腫瘍内(例えば、癌)治療に関して、デバイスは、抗腫瘍剤またはVEGF阻害剤を有するデバイスであり得る。
【0087】
また、デバイスは、直腸での使用ならびに真皮下/皮下での使用に適合し得る。
【0088】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、膣内投与に適合し得る。別の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、子宮内投与に適合し得る。種々の態様において、本発明は、膣または子宮の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療方法、あるいは膣または子宮の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、膣または子宮の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、および薬剤デリバリーデバイスを介して、治療的に有効な量の1種またはそれ以上の避妊剤を投与することを含む、避妊方法を提供する。別の態様において、本発明は、ホルモン補充療法;例えば、閉経期の兆候を治療または減少させる方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、および、薬剤デリバリーデバイスを介して、治療的に有効な量の1種またはそれ以上のホルモンを投与することを含む方法を提供する。別の態様において、本発明は、骨盤痛の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、および薬剤デリバリーデバイスを介して、治療的に有効な量の1種またはそれ以上の骨盤痛の治療用の剤を投与することを含む方法を提供する。これらの方法は、薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、膣または子宮の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。
【0089】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、抗ウイルス治療に適合する。種々の態様において、本発明は、ウイルス性の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいはウイルス性の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、ウイルス性の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。該方法は、薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、直腸の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。
【0090】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、直腸投与に適合する。種々の態様において、本発明は、直腸の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいは直腸の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、直腸の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。該方法は、薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、直腸の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。
【0091】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、目に、または目の近くへの投与に適合する。種々の態様において、デバイスは、目に、または目の近くにインプラントされる。種々の態様において、本発明は、目の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいは目の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、目の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。該方法は、徐放性薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、目の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。種々の態様において、該方法は、涙点プラグに関連するか、または涙点プラグとして構成され得、それにより、APIをデリバリーすることができる。
【0092】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、耳に、または耳の近くへの投与に適合し得る。種々の態様において、デバイスは、耳に、または耳の近くにインプラントされる。種々の態様において、本発明は、耳毒性剤により引き起こされる、聴覚障害(または平衡障害)を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいは、内耳細胞の損傷、喪失または変性を引き起こし得る聴覚障害(または平衡障害)の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、治療的に有効な量の耳保護剤を投与することを含む方法を提供する。該方法は、徐放性薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。本発明は、薬剤デリバリーデバイスを、卵円窓の近くの耳内部に直接インプラントする方法を提供する。かかるデバイスは、内耳の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。本発明の態様によれば、哺乳動物の耳の症状を治療する方法であって、内耳に隣接する内部解剖学的部位にアクセスし、内部解剖学的部位に薬剤デリバリーシステムを設置またはインプラントする工程を含む方法を提供する。
【0093】
特別な態様において、本発明は、内耳疾患およびそれらに関連する兆候(限定するものではないが、先天性異常、例えば先天性梅毒、およびトキソプラズマ症;ウイルスまたは細菌性感染症;癌;および後天性内耳疾患、例えばメニエール病、感音難聴または中毒性難聴を含む)の治療方法を提供する。別の態様は、内耳における完全性の保持、無傷である蝸牛有毛細胞の維持に関する。したがって、その目的は、前庭有毛細胞を無傷に保つことである。かくして、局所投与により患者にゲンタマイシンを投与し、それにより、全身性投与の望ましくは副作用を回避することは有利である。より特別には、老化および騒音誘発性難聴は、本発明のより治療することができる。これらの症状に関連する蝸牛の耳道内の有毛細胞のアポトーシスが存在することが知られている。本発明によれば、この症状を、老化または騒音誘発性難聴を最小限にする、または遅らせるために、内耳に直接薬剤を投与することにより治療することができる。有用であり得る典型的な医薬化合物は、カルシウムチャンネル遮断剤、シクロスポリンならびにステロイドを含み得る。
【0094】
本発明のデバイスおよび方法はまた、有利には、メニエール病の治療に用いることができる。この疾患の治療に用いることができる具体的な薬剤は、上記に列挙したもの、および、特に限定するものではないが、血管拡張剤、利尿薬およびステロイドが挙げられる。
【0095】
本発明のデバイスおよび方法は、また、有利には、膜を越える医薬の緩やかな拡散、または例えば内リンパ嚢への拡散を可能にする。例として、限定するものではないが、内リンパ嚢に、あるいは骨中に直接穴を開け、インプラント可能な薬剤デリバリーデバイスを、その穴に固定する。デバイスは、スクリュー形状または他の自己固定可能な形状であってもよく、あるいは、縫合糸、スクリュー、ステーブルまたは他の当該分野で公知の方法により取り付けてもよい。スクリューの先は、制御下で薬剤のデリバリーを調節する浸透性ポリマーであってもよい。本発明の別の態様に従って、不浸透性薬剤デリバリーデバイスは、楕円状のウィンドウまたは円形のウィンドウ中にインプラントされ、デバイスからの薬剤は、その選択された薬剤に関する症状を治療するために、内耳に浸出することができる。
【0096】
本発明の中毒性難聴を防止または緩和する方法において、患者の聴覚および前庭系に関連する種々のパラメータを、前処理のベースライン値を確立するための当該分野でよく知られた方法により試験することができる。メチオニン保護剤の投与後、化学療法およびその後の経過において、耳毒性の影響は、慣用的な試験によりモニターすることができ、結果を、変化が観察されたかどうかを決定するために、処置前に得られたものと比較することができる。いずれかの機能障害が観察された場合、プラチナ含有化学療法剤、ループ利尿剤、アミノグリコシド抗生物質、鉄キレート剤、キニーネ、キニジン、または騒音または放射性への曝露と併用して投与される保護剤の投与量および/または回数は、プラチナ含有化学療法剤または放射性の抗腫瘍効果を衰えさせず、さらなる耳毒性の変化を減少または防止するために、調整することができる。体重減少、プラチナ含有化学療法剤または放射線による胃腸毒性、プラチナ含有化学療法剤または放射線による神経毒性、プラチナ含有化学療法剤または放射線による脱毛症、およびプラチナ含有化学療法剤または放射線による患者症状/患者生存の場合においても、同様の治療パラメータの修飾を、これらに関する保護剤の保護効果を最適化するために、適用することができる。これは、必要に応じて、プロトコルの調整を行って、治療前および治療後の値、例えば患者の体重および患者の身体的/医学的/生理学的状態等の適当な測定および比較により、達成することができる。
【0097】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、鼻腔内または鼻腔の近くへの投与に適合することができる。種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、鼻腔内または鼻腔の近くにインプラントすることができる。種々の態様において、本発明は、鼻の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいは鼻の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、目の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。該方法は、徐放性薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、鼻の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。したがって、本発明の態様は、哺乳動物の鼻または鼻腔の症状の治療方法であって、鼻腔に隣接する内部解剖学的部位にアクセスし、該内部解剖学的部位に薬剤デリバリーシステムを設置またはインプラントする工程を含む方法を提供する。
【0098】
種々の態様において、デバイスは、前立腺に、または前立腺の近くへの投与に適合し得る。種々の態様において、デバイスは、前立腺に、または前立腺の近くにインプラントされる。種々の態様において、本発明は、前立腺の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいは前立腺の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、前立腺の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。該方法は、徐放性薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、前立腺の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。したがって、本発明の態様は、哺乳動物の前立腺の症状の治療方法であって、前立腺に隣接する内部解剖学的部位にアクセスし、該内部解剖学的部位に薬剤デリバリーシステムを設置またはインプラントする工程を含む方法を提供する。
【0099】
種々の態様において、デバイスは、膀胱に、または膀胱の近くへの投与に適合し得る。種々の態様において、デバイスは、膀胱に、または前立腺の近くにインプラントされ得る。種々の態様において、本発明は、膀胱の病状を有するまたは兆候がある哺乳動物の治療、あるいは膀胱の病状の発生または重症化を、予防的に防止または軽減するための哺乳動物の治療方法であって、本発明の薬剤デリバリーデバイスを準備すること、薬剤デリバリーデバイスを介して、膀胱の病状を治療することができる治療的に有効な量の剤を投与することを含む方法を提供する。種々の態様において、膀胱の病状は、失禁である。該方法は、徐放性薬剤デリバリーデバイスを、薬剤を放出させるのに好ましく、剤がデバイスから所望の治療部位に通り抜けることができる箇所に配置することを含む。かかるデバイスは、膀胱の病状の治療、および有害な局所および全身性の副作用のリスクの低減のために、種々の組成の徐放性制御放出を提供する。したがって、本発明の態様は、哺乳動物の膀胱の症状の治療方法であって、膀胱に隣接する内部解剖学的部位にアクセスし、該内部解剖学的部位に薬剤デリバリーシステムを設置またはインプラントする工程を含む方法を提供する。
【0100】
種々の態様において、本発明は、薬剤デリバリーデバイスがインプラントされる解剖学的部位に接近できるように、患者の組織をより大きな規模で切断することを含む、薬剤デリバリーデバイスの外科的インプラント方法を提供する。
【0101】
種々の態様において、薬剤デリバリーデバイスは、種々の症状を治療または予防する、または発生または重症化を減少させるために皮下にインプラントすることができる。種々の態様において、デバイスは、少なくとも30日、60日、120日、150日、180日、および少なくとも1年の間、薬剤の有効濃度を維持することができる。本発明のさらに特別な態様は、長期間にわたって、患部に有効量の治療剤をデリバリーする方法を提供する。治療剤の長期デリバリーは、本発明の特定の態様である。したがって、本発明は、解剖学的部位内に置かれ、少なくとも1週間の間治療剤をデリバリーすることができる、薬剤デリバリーデバイスを含む。インプラントされた薬剤デリバリーデバイスを通る作用部位への薬剤デリバリーの期間は、数ヶ月から1年であり得る。これらの治療剤のデリバリーは、本質的には直線的であり、投与量は、数週間、数ヶ月または数年の間、治療レベルで維持することができる。
【0102】
実施例
以下の実施例は、本発明をより説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。特定の物質への言及に関して、これは、単に説明を意図するものであって、発明の限定を意図するものではない。当業者は、発明能力を発揮することなく、かつ本発明の範囲を逸脱することなく、等価の手段または反応を開発することができる。
【0103】
実施例1
テノホビルをデリバリーするためのセルロースポリマーヒドロゲルを有する膣内リング
開示した技術の1つの例として、殺菌剤であるテノホビル(TFV)を放出する、セルロース系ポリマーヒドロゲルを含有する膣内リングがある。TFVのデリバリーのための環状のプラットフォームを、
図1に示す。約15mgの薬剤のコアは、半透過性ポリマーであるポリ乳酸(PLA)でコートされ、薬物ポッドを形成する。ついで、薬剤ポッドを、ポッドを固定するキャビティおよびリングの外側の表面にポッドの一部を露出させるデリバリーウィンドウを有する予め形成したシリコーンIVR中に組み入れる。リングのセグメントは、標準的な液体シリコーン樹脂(LSR)射出成形技術を用いる単一の工程で成形した。薬剤ポッドキャビティは、リングの上部にまで伸ばした。シリコーン環のポッドキャビティ中に薬剤ポットを設置する前に、キャビティの底面のデリバリーウィンドウに、1mm直径の生検パンチを用いて、穴を開けた。ヒドロゲルを、下記するようにポッドおよび/またはキャビティに塗布し、薬剤ポッドを挿入し、室温でシリコーンを硬化させてシールした。
【0104】
カルボキシメチルセルロース−ヒドロキシエチルセルロース共重合体(CMC−HEC)
セルロース系物質の共重合体は、薬剤デリバリーの用途、および高膨張親水性ゲルを必要とする他の用途に関して報告されている
2−11。
図4に示されるようなカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)の共重合体は、
図5に示すように、CMCNaおよびHECを、ジビニルスルホン架橋剤で架橋することにより調製することができる。この反応は、多くの関連するポリマーの調製と同様に、文献
2、5、11に報告されているが、このようなヒドロゲルは、従来のように膣内リングに組み入れられておらず、本明細書に開示されるようにデリバリーウィンドウを通るウィッキング材料として用いられている。
【0105】
ヒドロゲルの調製
CMC−HEC共重合体を、CMCNa(Fluka、 Visc.=400〜1000mPa・s)およびHEC(Aldrich、Mw=250kDa)を、ジビニルスルホン(DVS)で架橋することにより調製した
2、4。典型的な調製において、125μLのDVS(Aldrich)を、25mLの脱イオンH
2O(dH
2O)に溶解した。DVS溶液に、0.375gのCMCNaおよび0.125gのHEC(3:1比)を加えて、約2%w/vポリマー溶液を得た。ポリマー溶液を一晩撹拌して、確実に、完全に溶解させ、ついで、1mLのdH
2O中の0.5MのKOHを加えて、架橋反応を開始させた。ゲル形成は、24時間以内に生じる。KOHの添加後直ぐに、FTIR分析用のゲルを、テフロン(Teflon)シート上に薄い層として広げ、空気中で乾燥して、薄いフィルムとした。IVRへの組み入れに関しては、2つの方法:ゲル乾燥および系内ゲル形成を用いた。
【0106】
ヒドロゲルの乾燥
乾燥CMC−HEC顆粒を、50mLのビーカー中で24時間以上ゲルを形成させることにより得た。過剰の架橋材および他の未反応の物質を、ビーカー中の水の置換により、典型的には、ゲルの5倍の重量での置換を48時間で3回行うことにより、除去した。ビーカーから水を除き、アセトンで置換して、必要に応じて乾燥した。アセトンを、新しいもの(ヒドロゲルの重量の2倍)に置き換え、全ての水を確実に除去した。アセトンを空気中で蒸発させて、得られたポリマー物質を40℃で乾燥して、粗パウダーを得た。
【0107】
系内ゲル形成
ヒドロゲルを、
図6に示すように、IVR薬剤ポッドキャビティ中で直接形成した。KOHを添加した直後に、75〜100μLのゲル溶液の一定分量を、空の薬剤ポッドキャビティに加え、デリバリーウィンドウおよびポッドキャビティの底面の両方を満たした。ポッドキャビティおよびデリバリーウィンドウを、パラフィルム(Parafilm)ラップでシールした。24時間硬化させた後、パラフィルムを除去し、ゲルをdH
2Oで洗浄して、過剰のDVSおよびKOHを除去した。ついで、薬剤ポッドを、ヒドロゲルの上部にあるキャビティ上に置き、室温で硬化するシリコーン(Nusil MED1−4213)でシールした。
【0108】
CMC−HEC共重合体の特徴付け
カルボキシメチルセルロース−ヒドロキシエチルセルロース共重合体に関して、上記したように架橋することにより、テフロン表面に薄いフィルムとして成形することができ、または乾燥して、磨りつぶして顆粒、ソフトパウダーとすることができる粘性ゲル溶液をもたらす。乾燥したCMC−HECヒドロゲル成形膜のFTIRスペクトルを、
図7に示す。KOHを添加して架橋反応を開始した直後に、CMC−HECポリマー溶液をテフロン上滴下して広げることにより、フィルムを調製した。フィルムにカバーをし、24時間硬化させ、ついで、カバーをせずに、乾燥させた。サランラップフィルム(Saran Wrap film)に類似した乾燥フィルムを、テフロン表面からはぎ取り、フィルムの透過により直接FTIRスペクトルを得た。さらに、フィルムをNMRスペクトルによるフィルムの特徴付けを試みたが、ヒドロゲルを、適当な重水素溶媒(D
2O、CD
3OD、DMSO−d6、およびCD
3CN)に溶解することはできなかった。
【0109】
CMCNa−HECヒドロゲルを含有するIVRからのTFVのインビトロ放出
ヒドロゲル含有IVRセグメントから、VFSへのTFVの放出を、ヒドロゲルを含まないIVRセグメントからの放出と比較した。
図8は、ヒドロゲルを含まないIVRと比較した、CMC−HEC含有IVRにおける、時間の関数としてのTFV累積放出を示す。ヒドロゲルは、デリバリーウィンドウを満たすウィッキング材料として機能し、薬剤ポッド中に水を引き入れ、放出までのラグタイムを減らす。ヒドロゲルは、IVRにおいて多くの役割:IVRからの放出速度のばらつきを減少させる;リングからのTFVの放出速度を変更する(即ち、材料、インプラント設計およびAPIに応じて、増加または減少させる);元々のリング設計において観察されたTFV放出の所期のラグタイムを排除する;およびデリバリーウィンドウを満たし、所望の放出速度に影響を与え得るウィンドウ内での物質の堆積を防止することを含む役割を果たしている。本発明者らは、ヒドロゲルは、IVRからIVRへの放出速度のばらつきを抑制するだろうと予測したが、ヒドロゲルなしのものと比較して、予期できない劇的な放出速度の増加(ヒドロゲルなしでは24μg/日、ヒドロゲル有りでは100μg/日)およびヒドロゲルIVRが放出を開始するまでのラグタイムの消失が観察された。これらのCMCNa−HECヒドロゲルIVRの特徴は、これらが、(a)薬剤放出を増加させる新しいメカニズムを提供し、および(b)IVRの挿入時から、治療薬剤レベルに達するまでの遅れを排除するので、重要である。治療的に活性な量の薬剤を放出する能力は、放出されるようにシリコーンマトリックスを通って拡散しなければならない典型的なマトリックスIVR設計においては解決できない。本発明の設計を有するIVRは、複数のパラメータ:ヒドロゲル組成物および物理特性(粘度、架橋の程度)、薬剤ポッドの数、およびデリバリーウィンドウの大きさにより、薬剤放出速度の正確な制御を可能にする。ヒドロゲル不含IVRにおいて典型的に存在する放出開始までのラグタイムは、初期に空気が満たされている場合のデリバリーウィンドウの濡れ性のばらつきによるものであろうと思われる。
【0110】
実施例2
テレホビルをデリバリーするための、ポリビニルアルコール−アクリレート(PVA−MA)共重合体ヒドロゲルを有する膣内リング
開示された技術の第2の例として、殺菌剤であるテノホビルを放出する、ポリビニルアルコール−アクリレート(PVA−MA)ポリマーヒドロゲルを含む膣内リングがある。PVA−MAヒドロゲルIVRのリングプラットホームは、CMCNa−HECポリマーの代わりにPVA−MAを用いること以外は、CMCNa−HECに関する上記と同じである。
【0111】
ポリビニルアルコール−アクリレート(PVA−MA)ポリマーヒドロゲルの調製および特徴付け
PVA−MAマクロマー合成
ポリビニルアルコールを、Martens、etal.
12の方法の改良法を用いて、PVAヒドロキシル基をグリシジルメタクリレート(GMA)でエステル化することにより、アクリレート基で修飾した。置換の程度(D.S.)は、PVA骨格におけるヒドロキシル基の総量に対するアクリレート基の割合であり、反応に用いるGMAおよびPVAの相対比により制御される。マクロマーは、2つの異なるPVA分子量(18および63.5kDa)で、マクロマーを調製した。典型的な調製法において、1gのPVA(Sigma)を、25mLのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解した。穏やかな加熱を必要とした。PVA溶液に、0.5gのジメチルアミノピリジン(DMAP)を加えた。溶液に、アルゴン(Ar)を拡散させて、O
2を除去し、反応液をAr雰囲気下に保持した。グリシジルメタクリレートを、所望のD.S.に基づいた化学量論量を加え、溶液を暗所で48時間撹拌し、Al箔中にフラスコを包み込んで、反応液を光りから保護した。48時間後、DMAPを、980μLの濃HClで中和して、メタクリレートエステルのアルカリ加水分解を防止した。
【0112】
マクロマーは、dH
2Oに対して透析することにより精製して、未反応のGMAおよびDMAPを除去した。透析は、12、000g/molの分子量除去能を有する透析チューブにおいて、毎日dH
2Oを2回換えて、2日間行った。D.S.が5%以下のアクリレートに関しては、マクロマーは水溶性である。D.S.が5%より大きいものは、マクロマーは、白色ワックス状固体として沈殿する。D.S.の値は、核磁気共鳴(NMR)分光法により測定した。マクロマー試料を、DMSO−d6中に溶解し、
1H−NMRスペクトルを、Varian Mercury 300MHz装置で取得した。D.S.の値は、4.07−4.20ppmでの非置換メチン基の積分値に対する、ビニルプロトンのピークの積分値(5.50および6.20ppmでのピークの積分値の平均)の比(パーセント表記)として計算される。
【0113】
PVA−MAマクロマーの架橋
架橋反応を、DMSO(D.S.>5%)またはH
2O(D.S.≦5%)中の約9%w/vのマクロマー溶液で行った。光重合開始剤として2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェノール]−2−メチル−1−プロパノン(Aldrich)を、0.05%w/vで加えた。次いで、マクロマー溶液を、IVRの薬剤キャビティ/デリバリーウィンドウ中に、CMCNa−HECに関して記載したようにマイクロピペットを用いて加え、あるいは、ガラスプレート上にピペットで取って、薄いフィルム状のディスクを形成した。光化学架橋反応を、XeランプUVガン(λ=355nm)を用いて、1〜15分間マクロマー試料に照射することにより行った。マクロマー溶液(非架橋)をまた、製造後および光化学的に架橋した後に、IVRのデリバリーウィンドウ中に、所定の位置の薬剤ポッドと一緒に加えてもよい。架橋反応は、
図9に示す。
【0114】
PVA−MA共重合体の特徴付け
架橋反応の前に、DMSO中のPVA−MAマクロマー溶液を、薄いフィルムに形成し、または、IVRのデリバリーウィンドウおよび薬物ポッドキャビティ中に滴下して充填した。溶液の粘度を、溶液中のPVA−MAの濃度により制御し、すぐに流れる溶液から、粘性のある、シロップ状の稠度に変化させた。3種のPVA−MAマクロマーを、PVA(5%または10%)に対するGMAの相対量またはPVA平均分子量(18または63.5kDa)を変化させることにより、調製した。PVA、GMAおよびPVA−MAマクロマーのFTIRスペクトルを、
図10に示す。これらのスペクトルは、PVAスペクトルが、1700cm
−1領域でのC=O伸縮バンドを含んでおらず、PVA−MAマクロマーが、ヒドロキシル基のアクリレート基への置換を示す1710cm
−1でのバンドを示すことから、マクロマーの形成を明確に示している。
【0115】
PVA骨格におけるアクリレート置換の程度は、上記のようにNMR分光法により測定した。置換のパーセントは、δ
H4〜5ppmでのPVA骨格プロトンの積分値に対する、δ
H5〜6ppmでの2つのアクリレートプロトンの平均積分値の比で与えられる。3種のマクロマーの
1H−NMRスペクトルを、理論的なおよび測定値したアクリレート置換パーセンテージと共に
図11に示す。
【0116】
PVA−MA共重合体架橋
PVA−MAマクロマーの架橋を、FTIR分光法を用いて調べた。
図12は、UV架橋の前と15分後でのPVA−MA成形膜のFTIRスペクトルを示す。スペクトルは、溶媒を用いずにフィルムを透過することにより取得した;かくして、マクロマー溶液スペクトルにおけるDMSO吸収により観察されるC=C伸縮バンドは、フィルムにおいて明らかである。1708cm
−1でのアクリレート基由来のカルボキシル伸縮は、C=C結合との共役が消失するので架橋に伴い、1718cm
−1にシフトした。架橋反応を
図6に示す。1635cm
−1でのC=C伸縮は、アクリレートビニル基での架橋に伴い消失する。1600cm
−1(芳香環C−C伸縮)および1660cm
−1(C=O伸縮)でのバンドは、光重合開始剤(PI)由来であり、非架橋フィルムにおいては存在しなかった。
【0117】
照射時間に応じたPVA−MAマクロマーのFTIRスペクトルの変化を、
図13に示す。ここに、C=C伸縮バンドは、照射時間の増加に伴い、ビニル基が他のPVA鎖のOHと反応して、エーテル架橋を形成するので、減少した。アクリレート由来のC=O伸縮は、アクリレートビニル基のC=C結合との共役が消失するので、高エネルギー側にシフトする。
【0118】
PVA−MAヒドロゲルIVRからのテノホビルのインビトロ放出
図14は、PVA−MAヒドロゲルを含むIVRのセットの平均累積放出を示す。3種のIVRは、架橋を有しないPVA−MA共重合体を含んでおり、3種は、15分間のUV光での光分解を用いる、デリバリーウィンドウの系内で架橋したPVA−MAを有していた。PVA−MAヒドロゲルは、他の同一のCMC−HECヒドロゲルを有するIVRと同程度に速くはTFVを放出しない。カルボキシメチルセルロースは、超吸収物質であり、PVAよりも水溶液でより一層の濡れ性を与え、デリバリーウィンドウを通る速いTFV移動により適した「ウィッキング材料」マトリックスを提供できる可能性があると予測される。PVA−MA IVRに関して、放出速度の初期のラグが、非架橋試料においては観察されるが、架橋試料においては有意に減少する。しかしながら、PVA−MAヒドロゲルは、架橋の程度の制御を可能にし、ヒドロゲルで修飾することにより、CMCNa−HECヒドロゲルよりもより厳密な薬剤放出速度の制御を可能にする。PVA−MAシステムにおいては、架橋の程度は、PVAポリマー中のメタクリレート置換の程度(総ポリマー質量あたりの%MA)、PVAポリマー出発物質のサイズ(D.S.と同様に、PVA鎖当たりの架橋部位の総数を測定する)、およびPVA−MAマクロマーへのUV照射の長さ(実際に架橋する入手可能な架橋部位のフラクションを測定する)により、測定することができる。
【0119】
実施例1および2の比較
図15は、3つすべてのヒドロゲルIVRおよび非ヒドロゲルIVRに関する、TFVの平均累積放出を一緒にプロットしたものを示す。非架橋PVA−MA IVRは、ヒドロゲルを有しないIVRとほぼ同じ速度で放出する。これは、PVA−MAマクロマーが溶解し、デリバリーウィンドウから急速に除去され、その結果、本質的に非ヒドロゲルIVRになることを示している。架橋したPVA−MAは、非架橋PVA−MA IVRと比較して、二倍の放出速度で放出し、CMC−HECヒドロゲルIVRは、架橋したPVA−MA IVRの速度の二倍の速度で放出する。
【0120】
参考文献
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12. Martens, P.; Anseth, K. S. 「Characterization of hydrogels formed from acrylate modified poly(vinyl alcohol) macromers.」 Polymer 2000, 41, 7715.
【0121】
これらの説明は、直接的に上記実施態様を記載するが、当業者は、本明細書に示しかつ記載された特定の実施態様に対して改変及び/変形を発想し得ると理解される。この記載の範囲内にあるいかなるそのような改変や変形は、本発明に含まれることを意図している。特記しない限り、明細書および特許請求の範囲中の単語およびフレーズは、本発明が属する分野の当業者に対して共通かつ汎用の意味であることを意図している。
【0122】
本願の出願時に出願人に知られていた上記の本発明の種々の態様の記載は、説明のために与えられ、これを意図している。本記載は、本発明を、開示した形態に厳密に限定することを意図するものではなく、上記技術に照らして多くの改変および変形が可能である。記載の態様は、本発明の原理およびその実際の適用を説明するためのものであり、かつ、本発明を種々の態様で利用できるように、また、特定の用途に適するように種々の改変を加えて利用できるようにするためのものである。したがって、本発明は、発明を実行するために開示された特定の態様に限定されない。
【0123】
本発明の特定の態様を、示し、記載しているが、本明細書に記載の技術に基づいて、本発明およびより広い範囲のその態様から逸脱することなく、変更および改変を行えることは、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨および範囲内にある限り、これらすべての変更および改変もその範囲内に包含する。一般的に、本明細書において用いられる用語は、「オープン」な用語(例えば、「含む」は、「特に限定するものではないが、・・・を含む」として理解されるべきであり、「有する」は、「少なくとも・・・を有する」と理解されるべきである、など)を意図していることは、当業者には理解できるだろう。