(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本発明の要約
本明細書において、とりわけ使用の中でも、電気化学デバイス中で電解質溶媒としての使用のための有機シリコン(organosilicon)(OS)化合物を開示する。
【0005】
一般に、OS化合物は、環境に優しく不燃性で高温抵抗性材料である。これらの特徴は、OS材料を、エネルギー貯蔵デバイスにおける電解質溶媒、バインダ、およびコーティングとしての使用に、良好に適したものとする。OS系電解質は、一次バッテリおよび再充電可能バッテリ(すなわち、Liイオン、Li空気)、ならびにキャパシタ(すなわち、スーパー/ウルトラキャパシタ)を含む、全てのリチウム(Li)系電気化学システムと適合する。OS系電解質をLiバッテリにする設計のプロセスは、前記セル設計の限定的な変更を伴い、これらの電解質を、既存の製造プロセスおよび設備を有する、生産操業に組み入れることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において記載する前記OS化合物を、従来のLiイオンバッテリにおける前記カーボネート系溶媒システムに代わる、液体電解質溶媒として使用することができる。前記OS系溶媒は、高温でのより長寿命のための増加した熱安定性、改善された安全性のための増加した電解質引火点、高電圧カソード材料の使用を可能にしてより高いエネルギー密度を達成するための増加した電圧安定性、EDVグリッド貯蔵用途において使用される大規模Liバッテリの要件に整合するための低減されたバッテリ不良率、ならびに現在の設計に容易に導入するためのLiイオンバッテリに現在使用されている材料との適合性を含む、Liイオンバッテリにおける性能および酷使耐性(abuse tolerance)著しい改善を提供する。電気二重層キャパシタ(EDLC)デバイスはまた、OS系電解質との機能性を実証した。本明細書において記載する前記OS化合物を、OS系電解質ブレンド中で使用して、工業的、軍事的、および消費者製品デバイスにおける具体的用途の要件を満たすことができる。
【0007】
前記化合物および電解質処方物の目的および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面から、より十分に明らかとなるであろう。
本明細書において、式Iまたは式II:
【化1】
(式中、R
1、R
2、およびR
3は、同一または異なり、独立して、C
1〜C
6直鎖または分岐のアルキルおよびハロゲンからなる群から選択され;
「スペーサー」は不在であるか、あるいはC
1〜C
6直鎖または分岐のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンからなる群から選択され、「スペーサー」が不在である場合には、Yは存在し;
【0008】
Yは、不在であるか、または−(O−CH
2−CH
2)
n−および
【化2】
からなる群から選択され、
式中、各下付き文字「n」は、同一または異なり、1〜15の整数であり、下付き文字「x」は、1〜15の整数であり;および
各R
4は、同一または異なり、シアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)およびイソチオシアネート(−NCS)からなる群から選択される)
で表される化合物を記載する。
【0009】
また本明細書において、式中、「スペーサー」が存在し、Yが−(O−CH
2−CH
2)
n−である、式Iで表される化合物を具体的に開示する。さらに、本明細書において、式中、「スペーサー」が存在し、Yが
【化3】
である、化合物を具体的に開示する。
【0010】
さらに、本明細書において、式中、「スペーサー」が不在であり、Yが−(O−CH
2−CH
2)
n−である化合物を具体的に開示する。
また本明細書において、式II、III、IV、およびV:
【化4】
【0011】
(式中、R
1、R
2、およびR
3は、同一または異なり、独立して、C
1〜C
6直鎖または分岐のアルキルおよびハロゲンからなる群から選択され;「スペーサー」は、C
1〜C
6直鎖または分岐のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンからなる群から選択され;各R
4は、同一または異なり、シアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)およびイソチオシアネート(−NCS)からなる群から選択され;各下付き文字「n」は、同一または異なり、1〜15の整数であり;「x」は、1〜15の整数である)
のいずれかで示されるとおりの構造を有する化合物を開示する。また本明細書には、本明細書において記載するとおりの、1種または2種以上の式I、II、III、IV、Vで表される前記化合物を、塩と、好ましくリチウム含有塩と組み合わせて含む、電解質組成物が含まれる。
【0012】
R
1、R
2、およびR
3は、任意に、C
1〜C
3アルキル、クロロ、およびフルオロからなる群から選択されてもよく;および、R
4は、任意にシアノであってもよい。
前記化合物が、式IIを含む場合には、R
1およびR
3は、任意に、C
1〜C
3アルキル(または単に、メチル)、クロロ、およびフルオロからなる群から選択されてもよい。各「n」は、任意におよび独立して、1〜5の整数である。R
4は、任意にシアノであってもよい。
【0013】
前記化合物が、式IIIを含む場合には、R
1、R
2およびR
3は、任意に、C
1〜C
3アルキル、クロロ、およびフルオロからなる群から選択されてもよい。前記式II化合物のいくつかのバージョンにおいては、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、ハロゲンであり;前記式II化合物の他のバージョンにおいては、R
1、R
2およびR
3の少なくとも2つは、ハロゲンである。前記「スペーサー」は、任意に、C
2〜C
4直鎖または分岐のアルキレンであってもよい。R
4は、任意にシアノであってもよい。
【0014】
前記化合物が、式IVを含む場合には、R
1、R
2およびR
3は、任意に、C
1〜C
3アルキル、クロロ、およびフルオロからなる群から選択されてもよい。前記式II化合物のいくつかのバージョンにおいては、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、ハロゲンであり;前記式II化合物の他のバージョンにおいては、R
1、R
2およびR
3の少なくとも2つは、ハロゲンである。前記「スペーサー」は、任意に、C
2〜C
4直鎖または分岐のアルキレンであってもよい。R
4は、任意にシアノであってもよい。前記式II化合物の特定のバージョンにおいては、「x」は、任意に、1〜4であってもよい。
【0015】
前記化合物が、式Vを含む場合には、R
1、R
2およびR
3は、任意に、C
1〜C
3アルキル、クロロ、およびフルオロからなる群から選択されてもよい。前記式II化合物のいくつかのバージョンにおいては、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、ハロゲンであり;前記式II化合物の他のバージョンにおいては、R
1、R
2およびR
3の少なくとも2つは、ハロゲンである。前記「スペーサー」は、任意に、C
2〜C
4直鎖または分岐のアルキレンであってもよい。R
4は、任意にシアノであってもよい。前記式II化合物の特定のバージョンにおいては、「x」は、任意に、1〜4であってもよい。
【0016】
前記化合物の全てのバージョンにおいて、「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。フルオロおよびクロロが、好ましいハロゲン置換基である。用語「リチウム含有塩」には、これに限定されないが、LiClO
4、LiBF
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
3C、LiN(SO
2C
2F
5)
2、リチウムアルキルフルオロホスフェートおよびリチウムビス(キレート)ボレート(lithium bis(chelato)borate)が、明確に含まれる。
【0017】
また本明細書において、上記の段落において記載したとおりの、1種または2種以上の有機シリコン化合物を含む、電解質組成物を開示する。また本明細書において、かかる電解質組成物を含む電気化学デバイスを開示する。本明細書において開示する前記化合物は、全ての種類の電荷貯蔵デバイス(例えば、セル、バッテリ、キャパシタなど)における使用のための電解質の処方に大変有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、LiPF
6、LiBF
4、またはLiTFSIを含むF1S
3MNの酸化安定性を描く。
【
図2A】
図2Aは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、LiPF
6、LiBF
4、またはLiTFSIを含むF1S
3MNの還元安定性を測定するための二重反復試験(duplicate runs)を描く。
【
図2B】
図2Bは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、LiPF
6、LiBF
4、またはLiTFSIを含むF1S
3MNの還元安定性を測定するための二重反復試験を描く。
【
図3A】
図3Aは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6を含むF1S
3MNまたはF1S
3M2の還元安定性を描く。
【
図4】
図4は、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6を含むF1S
3MNまたはF1S
3M2の還元安定性を描く。
【
図5】
図5は、LiPF
6を含むF1S
3MNの熱安定性を描く。
【
図6】
図6は、LiPF
6を含むF1S
3M2の熱安定性を描く。
【
図7】
図7は、LiTFSIを含むF1S
3MNの熱安定性を描く。
【
図8】
図8は、LiBF
4を含むF1S
3MNの熱安定性を描く。
【
図9】
図9は、F1S
3MNのみ(neat)の熱安定性を描く。
【
図10】
図10は、20% ECおよびVC/LiBOBを含むDF1S
3MNの熱安定性を描く。
【
図11】
図11は、脱リチウム化(de−lithiated)NCAカソードで加熱したカーボネート対照電解質と比較した、F1S3MN電解質の改良安定性を描く。
【
図12】
図12は、30℃で、種々のCレートでの種々の電解質溶媒を含むセルの放電容量を描く。
【
図14】
図14は、55℃で、種々のCレートでの
図12に示されたものと同一の電解質溶媒を含むセルの放電容量を描く。
【
図16】
図16は、TEA−BF4を含むDF1S2MN電解質を含むEDLCデバイスの性能を描く。
【
図17】
図17は、TBP−PF6を含む種々の電解質溶媒を含むEDLCデバイスの性能を描く。
【
図18】
図18は、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6または1M LiTFSIを含む1ND1Nの酸化安定性を描く。
【
図19】
図19は、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6または1M LiTFSIを含む1ND1Nの還元安定性を描く。
【
図20A】
図20Aは、0から6Vまでのおよび6から0Vまでの、1ND1Nおよび1M LiPF
6または1M LiTFSIでのサイクル走査について、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)を描く。
図20Aは、第1サイクルを描く。
【
図20B】
図20Bは、0から6Vまでのおよび6から0Vまでの、1ND1Nおよび1M LiPF
6または1M LiTFSIでのサイクル走査について、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)を描く。
図20Bは、第2サイクルを描く。
【
図21A】
図21Aは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6を含むF1S
3MNまたは1ND1Nの酸化安定性を描く。
【
図22A】
図22Aは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiTFSIを含むF1S
3MNまたは1ND1Nの酸化安定性を描く。
【
図23】
図23は、1ND1Nのみの熱安定性を例示する質量スペクトルである。
【
図24】
図24は、LiPF
6を含む1ND1Nの熱安定性を例示する質量スペクトルである。
【
図25A】
図25Aは、24〜30m/zにおける、
図24に関して記載されるとおりの前記質量スペクトルプロファイルのクローズアップを描く。
【
図25B】
図25Bは、49〜55m/zにおける、
図24に関して記載されるとおりの前記質量スペクトルプロファイルのクローズアップを描く。
【
図26】
図26は、LiTFSI、ビニレンカーボネート(VC)およびリチウムビス(オキサレート)ボレート(lithium bis(oxalato)borate)(LiBOB)を含む1ND1Nの熱安定性を描く。
【
図27】
図27は、LiBF
4を含む1ND1Nの熱安定性を描く。
【
図28】
図28は、種々のCレートでの種々の電解質溶媒を含むセルの放電容量を描く。
【
図29】
図29は、第1サイクルを第50サイクルと比較した、種々の他の電解質溶媒を含むセルの放電容量を描く。
【
図30A】
図30Aは、種々のCレートでの1ND1N−LiPF
6系電解質を含むセルの放電容量を描く。
【
図30B】
図30Bは、種々のCレートでの1ND1N−LiTFSI系電解質を含むセルの放電容量を描く。
【
図31】
図31は、ピーク帰属された、1ND1Nの(CDCl
3中での)
1H−NMRスペクトルである。
【
図32】
図32は、ピーク帰属された、F1S
3MNの(CDCl
3中での)
1H−NMRスペクトルである。
【
図33】
図33は、ピーク帰属された、DF1S
2MNの(CDCl
3中での)
1H−NMRスペクトルである。
【
図34】
図34は、ピーク帰属された、DF1S
3MNの(CDCl
3中での)
1H−NMRスペクトルである。
【
図35】
図35は、ピーク帰属された、F1S
3cMNの(CDCl
3中での)
1H−NMRスペクトルである。
【
図36】
図36は、ピーク帰属された、1S
3MNの(CDCl
3中での)
1H−NMRスペクトルである。
【0019】
本発明の詳細な説明
説明全体にわたって、多数の簡単な省略(shorthand abbreviation)を使用して、種々の有機シリコン化合物をより容易に指定する。以下の約束(convention)を使用する:
nNDnN化合物は、一般式:
【化5】
(式中、R
1およびR
3は、同一または異なり、独立して、C
1〜C
6アルキルからなる群から選択され、R
2は、同一または異なり、独立して、シアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)およびイソチオシアネート(−NCS)からなる群から選択され、2つの下付き文字「n」は、同一または異なり、独立して、1〜15の範囲の整数である)
を有する。よって、例えば、1ND1Nは、式中、R
1およびR
3が、メチル(すなわち、C
1)であり、両方の下付き文字「n」が1である、化合物である。
【0020】
FnSnNM化合物は、一般式:
【化6】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、同一または異なり、独立して、C
1〜C
6アルキル(好ましくは、メチル)およびハロゲン(好ましくは、F)からなる群から選択され、「スペーサー」は、C1〜C6直鎖または分岐の二価の炭化水素(すなわち、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン)であり、R
4は、シアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)およびイソチオシアネート(−NCS)からなる群から選択される)
を有する。SnMNに指定される前記化合物は、同一の構造を有し、式中、R
1、R
2およびR
3は、同一または異なり、独立して、C
1〜C
6アルキル(好ましくは、メチル)からなる群から選択される。
【0021】
本明細書において開示される関連化合物は、以下:
【化7】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、同一または異なり、独立して、C
1〜C
6アルキル(好ましくは、メチル)およびハロゲン(好ましくは、F)からなる群から選択され、「スペーサー」は、C1〜C6直鎖または分岐の二価の炭化水素(すなわち、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン)であり、R
4は、シアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)およびイソチオシアネート(−NCS)からなる群から選択され、「x」は、1〜15の、好ましくは、1〜4の整数である)
の構造を有する。
【0022】
本明細書において開示される化合物を、多数の異なる経路により作製することができる。前記化合物を製作するのに使用することができる一般的アプローチは、以下のとおりである:
【化8】
前記種々のR基は、本明細書において定義されるとおりであり、「n」は、正の整数である。
【0023】
本明細書において開示される化合物をまた、以下のアプローチを介して製作することができる:
【化9】
【0024】
本明細書において開示される化合物をまた、以下の反応スキームを含む、多数の具体的な経路により作製することができる:
【化10】
【0025】
LiTFSIは、いくつかの国際的供給元により供給される市販品である:
【化11】
本明細書において記載する要素および方法ステップを、明確に記載されているか否かにかかわらず、あらゆる組み合わせで使用することができる。
参照された組み合わせがなされた意味により反対となることを明示しない限りまたは明確に示さない限り(unless otherwise specified or clearly implied to the contrary by the context in which the referenced combination is made)、本明細書において使用されるとおりの方法ステップの全ての組み合わせを、あらゆる順番で実施することができる。
【0026】
本明細書において使用するとおり、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が明確に指示しない限り、複数指示語(plural referent)が含まれる。
本明細書において使用するとおり、数値範囲には、明確に開示されているか否かにかかわらず、各数値およびその範囲内に含まれる数値の部分集合が含まれることを意図する。さらに、これらの数値範囲は、その範囲のあらゆる数値または部分集合を対象とする請求項についてのサポートを提供するものと解釈されなければならない。例えば、1〜10の開示は、2〜8の、3〜7の、5〜6の1〜9の、3.6〜4.6の、3.5〜9.9などの範囲をサポートするものと解釈されなければならない。
【0027】
本明細書において引用される、全ての特許、特許公報、およびピアレビュー公報(all patents, patent publications, and peer−reviewed publications)(すなわち、「引用文献」)は、各個別の引用文献が、明確におよび個別に、参照により組み込まれたものと同程度に、参照により明確に組み込まれる。本開示および前記組み込まれた引用文献の間に矛盾がある場合には、本開示がコントロールする。
【0028】
本明細書において開示される前記化合物および組成物は、本明細書において例示されて記載される、特定の構成および部分の配置を制限するものではないが、特許請求の範囲内にある場合には(as come within the scope of the claims)、それらのかかる改変形態を包含する。
【0029】
本明細書において開示される化合物は、例えば、シアノ(R−C≡N)、シアネート(R−O−C≡N)、イソシアネート(R−N=C=O)、チオシアネート(R−S−C≡N)および/またはイソチオシアネート(R−N=C=S)などの炭素−窒素二重または三重結合を含む、1つまたは2つ以上の末端置換基の形態で共通の構造的特徴を有する、有機シリコン化合物である。前記好ましい化合物には、以下の構造:
【化12】
が含まれる。
【0030】
上記の構造は、全て末端シアノ基と共に描かれる。これは、簡潔さの目的のためのみである。前記シアノ部位の位置に、末端シアネート、イソシアネート、またはチオシアネート部位を有する類縁化合物(analogous compounds)は、明確に、本開示の範囲内にある。同様に、ハロゲン化化合物を、フッ素化化合物として上記に描く。前記フッ素原子の位置に、他のハロゲン置換基(塩素、臭素、および/またはヨウ素)を有する類縁化合物は、明確に、本開示の範囲内にある。列挙した各化合物について、2つの代替的な体系名を付与する(各対の名前の第1番目は、ニトリルとしての基本的主要部(fundamental core)を指定し;第2番目は、シランとしての基本的主要部を指定する)。さらに、各化合物には、簡単な指定が与えられており、ここで、DF=ジフルオロ、TF=トリフルオロ、および「Sn」は、前記シリコン原子および前記末端シアネート、イソシアネート、またはチオシアネート部位の間の前記アルキレンスペーサーを指定し、「n」は、前記スペーサーにおける炭素原子の数を表す。選択された有機シリコン(OS)化合物の物性を、表1に提示する。
【0031】
表1に示すとおり、フッ素の追加およびスペーサー長の減少に伴い、粘度が減少し、導電性が高くなり、および引火点が低くなる。
表1.物性(20% EC、添加剤、1M LiPF
6を含む)
【表1】
【0032】
【化13】
【0033】
1ND2、1ND1、1ND1NおよびF1S
3MNのみ、およびこれらの溶媒を含む電解質溶液の物性を、表2に示す:
表2.溶媒および電解質の物性
【表2】
【0034】
本明細書において開示される前記有機シリコン化合物に加えて、本発明の電解質組成物は、従来の非シリコン共溶媒を含んでもよい。例えば、本発明の電解質組成物は、例えば、アセトニトリル、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、またはエチルメチルカーボネート(EMC)などの、ニトリルおよびカーボネートを含んでもよい。前記例の電解質組成物には、これに限定されないが、約1wt%〜約40wt%を含む、広範な濃度範囲で、非シリコン共溶媒が含まれてもよい。好適な共溶媒濃度の例には、約1wt%、約5wt%、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%、約40wt%、またはあらゆる前記量の間の範囲およびあらゆる前記量が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例
F1S
3MN合成:
スキーム1は、F1S
3MNについての合成スキームを描く。[F]は、例えば、HF、NH
4FHF、または他のフッ素化剤などのフッ素化剤を示す。NH
4FHFを、好ましくは、実験室規模での合成のためのフッ素化剤として使用する。HFを使用する場合には、唯一の副生成物は、HClである。前記合成されたF1S
3MN化合物を、前記固体塩からヘキサンで洗浄し、蒸留して、CaOで乾燥して、再度蒸留する。
【化14】
【0036】
スキーム2は、NH
4FHFをフッ素化剤として使用する、F1S
3MNについての合成スキームを描く。Karstedt触媒(白金(0)−1,3−ジビニルー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体溶液、Cat.番号479519、シグマアルドリッチ、St.Louis、MO)を使用することにより、第2級炭素上で約3%置換が起こり、isoF1S
3MNが生成する。前記isoF1S
3MNは、F1S
3MNより低い沸点を有し、そのほとんどを分留により分離することができる。
【化15】
【0037】
スキーム3は、Cl1S
3MN中間体を使用する、F1S
3MNについての代替的でより短い合成スキームを描く。前記Cl1S
3MN中間体を、Gelest,Inc(製品コード SIC2452.0,11 East Steel Road,Morrisville,PA)により得ることができる。前記Cl1S
3MN中間体により、合成中に費やされる時間が減少する。
【化16】
【0038】
スキーム4は、F1S
3MNについてのさらに別の合成スキームを描く。スキーム1と同様に、[F]は、例えば、HF、NH
4FHF、または他のフッ素化剤などのフッ素化剤を示す。この合成スキームにおけるフッ素化剤としてのHFの使用により、固体副生成物は生じないため、ヘキサン抽出および固体のろ過を必要としない。唯一の副生成物は、HClである。
【化17】
【0039】
スキーム5は、F1S
3MNについてのさらに別の合成スキームを描く。スキーム1と同様に、[F]は、例えば、HF、NH
4FHF、または他のフッ素化剤などのフッ素化剤を示す。
【化18】
【0040】
F1S
3MNの合成:
前記好ましい経路において、アリルシアニドを、少量のKarstedt触媒とともに、約100℃まで加熱する。ジメチルクロロシランを適加して、4時間還流した。室温まで冷却した後、室温で、1mol当量のフッ化水素アンモニウムを使用して、前記混合物をフッ素化した。冷ヘキサンを前記混合物に添加し、固体をろ別し、前記溶媒を蒸発させた。酸化カルシウムを粗生成物に添加し、真空下、45〜55℃で、0.4Torrで蒸留して、所望の生成物である、F1S
3MNを得た。
【0041】
有機シリコン材料の電気化学的安定性の決定:
計算化学法を使用して、種々の有機シリコン分子の電気化学特性を計算した。我々は、密度汎関数理論(DFT)分子軌道計算のためにアイオワ州立大学のGordon研究グループにより開発された、GAMESSプログラムを使用した。化合物の酸化および還元電位に相関する、HOMO(最高被占軌道)およびLUMO(最低空軌道)エネルギーレベルを、B3LYP/DZVレベルで計算した。
【0042】
有機シリコン溶媒を含む電解質の酸化安定性を、三極式セル中で、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)またはサイクリックボルタンメトリー(CV)を使用して決定した。対電極および参照電極の両方としてリチウム金属を有する白金マイクロ電極を、作用電極として使用した。前記系の電位を、開路電圧(OCV)から6または8V(vs. Li/Li+)まで、10mV/sの走査速度で増加させた。得られた電流密度(mA/cm2)を、酸化反応(すなわち、より低い酸化安定性)を示す、より高い電流で各電位において記録した。前記リニアスイープボルタンメトリーについては、最終電位として8Vを使用して、より広範な電圧範囲にわたって、前記材料の基本的な酸化安定性を評価した。前記再クリックボルタンメトリーについては、6Vを使用して、従来のバッテリ用途に、より関係する電位下で、前記材料を複数の走査にわたって評価した。複数の走査を前記サイクリックボルタンメトリー実験において行い、観測されたあらゆる反応の可逆性/不可逆性を決定した。
【0043】
有機シリコン溶媒を含む電解質の還元安定性を、三極式セル中で、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)を使用して決定した。ガラス状炭素電極を、対電極および参照電極の両方としてリチウム金属を有する作用電極として使用した。前記系の電位を、開路電圧(OCV、典型的には3V)から0.1V(vs. Li/Li+)まで、10mV/sの走査速度で減少させた。得られた電流密度(mA/cm
2)を、還元反応(すなわち、より低い還元安定性)を示す、より大きな電流で各電位において記録した。2回の走査を行い、前記還元プロセスが可逆的または不可逆的(不動態化するもの)であるか否かを評価した。
【0044】
F1S
3MNの電気化学的安定性:
示されていないが、F1S
3MNおよびF1S
3M2についての分子軌道図により、最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)間のエネルギー差は、F1S
3MNについてのもの(9.07eV)がF1S
3M2についてのもの(8.20eV)より大きいことが明らかにされる。F1S
3MNはまた、F1S
3M2(−6.84eV)より高い酸化電位(−8.75eV)を有する。
【0045】
図1Aおよび1Bは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、LiPF
6、LiBF
4、またはLiTFSIを含むF1S
3MNの酸化安定性を描く。酸化安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。
図1Bは、
図1Aにおいて示されたものと同一のデータのクローズアップを描く。前記F1S
3MN−LiPF
6電解質は、最良の酸化安定性を示し、F1S
3MN−LiBF
4およびF1S
3MN−LiTFSIそれぞれについて、6.8Vおよび6.2Vで1mA/cm
2での電流密度と比較して、7.3Vで1mA/cm
2の電流密度を有した。
【0046】
図2Aおよび2Bは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、LiPF
6、LiBF
4、またはLiTFSIを含むF1S
3MNの還元安定性を描く。還元安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。
図2Aおよび2Bは、2つの別々の走査である。前記F1S
3MN−LiPF
6電解質は、最良の還元安定性を示した。
【0047】
図3Aおよび3Bは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6を含むF1S
3MNまたはF1S
3M2の酸化安定性を描く。酸化安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。
図3Bは、
図3Aにおいて示されたものと同一のデータのクローズアップを描く。F1S
3MNは、F1S
3M2に関して、改善された酸化安定性を実証した。
【0048】
図4は、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、LiPF
6を含むカーボネート対照電解質と比較した、1M LiPF
6を含むF1S
3MNまたはF1S
3M2の還元安定性を、2つの別々の走査で描く。還元安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。F1S
3MNは、F1S
3M2と比較して、還元に対するより小さい抵抗性を実証した。
【0049】
溶媒のみ&処方された電解質の熱安定性の決定:
前記有機シリコン溶媒のみおよび前記電解質組成物の両方の熱安定性を、以下のとおり決定した:およそ0.75mLの液体サンプルをアルゴンパージ下で、密封セル中で加熱した。電子衝撃質量スペクトル法(EI−MS)を使用して、あらゆる気相不純物および/または分解生成物を、極めて低レベルで検出することができる、大気サンプリング質量計(atmospheric sampling mass spectrometer)へ前記アルゴンパージを導入した。前記サンプルを、バッテリ用途に適切な、予め決定された温度レベル(30、55、70、100、125、150、175、および200℃)で1時間保持した。前記気相分解生成物を、前記EI−MSから得られたフラグメンテーションパターンをNIST標準(NIST standards)と比較することにより同定した。熱実験(および全ての気相生成物の検出/回収)に続いて、残留する液体サンプルを、分解の程度の定量分析のために、NMRスペクトル計により分析した。複数種の核を試験して、前記有機シリコン溶媒、あらゆるカーボネート共溶媒、全ての添加剤、および(存在する場合には)前記リチウム塩を含む、前記系の全ての構成要素を完全に分析した。
【0050】
F1S
3MNの熱安定性:
図5は、LiPF
6を含むF1S
3MNの熱安定性を描く。F1S
3MN−LiPF
6電解質(バッチ ZP815−01)を、30℃〜175℃の範囲の温度に曝露して、電子衝撃質量スペクトル法(EI−MS)および核磁気共鳴スペクトル法(NMR)により、気体および液体分解生成物のそれぞれについて分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。F1S
3MNは、175℃まで顕著な気相および/または液相分解を示さなかった。Me
2SiF
2は、81m/zで、100〜125℃の温度で現れ、MeSiF
3は、85m/zで、150〜175℃の温度で現れた。しかしながら、前記81m/zおよび85m/zピークは、100〜175℃で一貫性なく現れた。さらに、
1H−NMR分析は、175℃までの加熱後の分解を示さなかった。したがって、F1S
3MNは、175℃までの一貫した分解(consistent decomposition)を示さない。なお、本出願人は、
図5の縦軸の範囲を0.0%〜3.5%とした
図5Bを、別途提出する用意がある。
【0051】
図6は、LiPF
6を含むF1S
3M2の熱安定性を描く。F1S
3M2−LiPF
6電解質を、30℃〜150℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。F1S
3M2は、温度≧125℃での分解を示した。分解生成物は、Me
2SiF
2および1,4−ジオキサンを含むものであった。
1H−NMR分析は、150℃で、およそ6%の分解を示した。
図5に関して検討されたものと組み合わせたこれらの結果は、F1S
3MNが、F1S
3M2より熱的に安定であることを示す。
【0052】
図7は、LiTFSIを含むF1S
3MNの熱安定性を描く。F1S
3MN−LiTFSI電解質を、30℃〜185℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。気相ピークは、温度≧150℃で観測された。117および102におけるピークは、F1S
3MN−LiBF
4電解質および溶媒のみについて観測されたパターンに一致した(
図8および9参照)。
【0053】
図8は、LiBF
4を含むF1S
3MNの熱安定性を描く。F1S
3MN−LiBF
4電解質を、30℃〜200℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。気相ピークは、温度≧175℃で観測された。117および102におけるピークは、溶媒のみおよびF1S
3MN−LiTFSI電解質について観測されたパターンに一致した(
図7および9参照)。
1H NMR分析は、フッ素化分解副生成物がないことを示し、<0.5%の非フッ素化加水分解生成物を示した。
【0054】
図9は、F1S
3MNのみの熱安定性を描く。F1S
3MN電解質を、30℃〜195℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。気相ピークは、温度≧150℃で観測された。150℃で、Me
2SiF
2が観測されたが(96/81 m/z)、他のピークは、この生成物とは関係のないものであった。
1H NMR分析は、フッ素化分解副生成物がないことを示し、<0.5%の加水分解を示した。
上記データは、F1S
3MNが、LiPF
6と最も熱的に安定なOS溶媒であることを示す。
【0056】
市販の3−シアノプロピルジクロロメチルシラン(CAS番号 1190−16−5;シグマアルドリッチ、St.Louis、MO、米国)を、室温で、アンモニウムビフルオリドでフッ素化した。冷ヘキサンを、次いで前記混合物に添加した。前記固体をろ別し、前記溶媒を蒸発させた。酸化カルシウムを粗生成物に添加した。前記溶媒を、真空下、35〜45℃で、0.4Torrで蒸留して、極めて高純度(〜99.8%)の所望の生成物を、およそ90%の収率で得た。
【0058】
アクリロニトリルを、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび酸化銅(I)とフラスコ中で混合し、60℃まで加熱した。ジクロロメチルシランを次いで滴加し、一晩還流した。室温まで冷却した後、前記混合物を、真空下(43℃、0.2Torr)で蒸留して、前記ジクロロ中間体(DCl1S
2MN)を得た。前記中間体を、室温で、1.2mol当量のフッ化水素アンモニウムを使用して、または130℃で、1.2mol当量のフッ化水素ナトリウムを使用して、フッ素化した。ジクロロメタンを次いで添加し、前記固体をろ別した。前記溶媒を蒸発させ、粗生成物を、真空下で蒸留した。トリエチルアミンおよび分子ふるいを前記生成物に添加して、真空下、25〜33℃で、0.1Torrで蒸留して、極度に高純度(>99%)の所望の生成物を、およそ75%の収率で得た。
【0059】
DF1S
3MNの熱安定性:
図10は、LiPF
6を含むDF1S
3MNの熱安定性を描く。DF1S
3MN−LiPF
6電解質(ZP990−01)を、30℃〜150℃の温度に曝露して、電子衝撃質量スペクトル法(EI−MS)および核磁気共鳴スペクトル法(NMR)により、気体および液体分解生成物のそれぞれについて分析した。DF1S
3MNは、150℃まで、顕著な気相および/または液相分解を示さなかった。
【0060】
熱的酷使耐性についての示差走査熱量測定(DSC)評価:
脱リチウム化カソード材料の存在下で、F1S
3MNおよびカーボネート系電解質でDSC測定を行い、フルセル形式(full cell format)での安全上の利点(safety advantage)と解釈し得る、潜在的熱的酷使耐性効果(potential thermal abuse tolerance effects)を評価した。より高い開始(onset)温度、より小さい総熱出力およびより小さいピーク熱出力は、全て、フル形式セル(full format cell)における改善された熱的酷使耐性挙動を示唆する効果である。
【0061】
図11は、LiPF
6および種々のカーボネート共溶媒を含むF1S
3MNの熱安定性を描き、LiPF
6を含むカーボネート対照電解質と比較する。各電解質を含むセルを4.25Vに充電して、次いで解体した。前記リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)カソードを、ジエチレンカーボネートでリンスして、乾燥した。5mgの活物質および調製したばかりの(fresh)2mgの電解質を含む各サンプルを、ステンレス鋼DSC受け皿(pan)中に密封した。2℃/分でのDSC走査は、前記カーボネート対照電解質が、いかなる前記有機シリコン電解質ブレンドより、ずっと低い開始温度で反応したことを示した。さらに、有機シリコンがEMCについて置換された前記電解質は、前記対照電解質よりずっと低いピーク熱出力を有する。
【0062】
電解質の調製:
電解質のブレンドを、無水分(<5ppm)および無酸素(<20ppm)のアルゴングローブボックスの内部で完了させる。溶媒、塩、および添加剤を含む全ての電解質構成要素を、ブレンド前に適切に乾燥して、前記グローブボックス中に貯蔵する。溶媒の水分(solvent moisture)を、定期的にKarl Fischer測定によりモニタして、水分レベルを<20ppmに維持することを確保する。一般的に、溶媒をまず別々のバイアル中に秤量し、均一になるまで混合する。70%の前記溶媒をメスフラスコに添加する。リチウム(または他の)塩をゆっくりと添加して、磁気撹拌子で溶解が完了するまで撹拌する。次いで、あらゆる他の添加剤(例えば、VC、LiBOBなど)をゆっくりと添加し、前記溶液が均一になるまで撹拌する。前記撹拌子を除去して、前記残留する溶媒の一部を添加して定量要件を完了する(complete the volumetric requirement)。前記撹拌子を前記メスフラスコ中に戻し、前記電解質を、均一になるまで撹拌する。ブレンドが完了した後、前記電解質を、貯蔵用の、乾燥したバイアルまたは代替の容器に分注する。
【0063】
リチウムイオンセル中でのF1S
3MNの性能:
図12は、30℃で、種々の電解質溶媒を含むセルの放電容量を描く。3種の異なる電解質溶媒を、リチウムイオンセル中で、2032−サイズのコインセルアセンブリ(
図13におけるもののとおりのアセンブリ層)中の異なるCレートでの一連のサイクルにわたって試験し、前記アセンブリは、グラファイトアノード、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)カソード、およびCelgard,LLC(Charlotte,NC)製の「2500」タイプセパレータを含むものであった。前記3種の電解質溶媒は:(1)1:1の体積のエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含む、対照EPA6カーボネート電解質(三角);(2)79% F1S
3MN、20% EC、1M LiPF
6、および固体電解質相間(SEI)形成添加剤を含む、F1S
3MN系電解質(四角);および(3)79% F1S
3M2、20% EC、1M LiPF
6、およびSEI−形成添加剤を含む、F1S
3M2系電解質(丸)、であった。
図12に示されるとおり、前記F1S
3MN系電解質は、4CレートでEPA6に等しい。
【0064】
図14は、55℃での、
図12に示して説明したものと同一の電解質を含むセルの放電容量を描く。前記セルを同じ方式でアセンブリして、C/2レートでサイクルした。
図14に示すとおり、前記F1S
3MN系溶媒は、前記カーボネート対照および前記F1S
3M2系電解質の両方と比較して、55℃で、サイクル安定性を向上させた。
【0065】
電気二重層キャパシタセルにおけるF1S
3MNおよびDF1S
2MNの性能:
対称電気二重層キャパシタ(EDLC)を、
図15に描かれるとおりのCR2032コインセルにアセンブリした。ガラスファイバセパレータ(AP40、Merck Millipore)を、2片のAC繊維電極間に挟み、100μL電解質を前記セパレータに添加した。テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEA−BF
4、Alfa Aesar、99%)およびテトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(TBP−PF
6、シグマアルドリッチ、≧99%)を、前記塩として使用した。F1S
3MN(99.4%)およびDF1S
2MN(99.8%)の有機シリコン溶媒を、Silatronixにより作製した。アセトニトリル(AN、シグマアルドリッチ、無水物、99.8%)を共溶媒として使用した。
【0066】
Calgon carbon製のZorflex FM10 100%活性炭素(AC)繊維を、両方の電極に使用した。FM10は、1000〜2000m2/gの表面積、0.5mmの厚さ、および120g/m2の面密度を有する。前記AC繊維をパンチして、直径15mmのディスクにして、いかなるバインダまたは導電性添加剤もなく、電極として直接使用した。
【0067】
EDLCセルの性能を、Biologic BMP300ポテンショスタットを使用して、サイクリックボルタンメトリー(CV)により試験した。対照としての炉内の温度は、±0.1℃の変化である(The temperature as control in an oven with variation as±0.1℃)。前記EDLCセルの前記サイクリックボルタンメトリー(CV)応答を、0〜3Vで、10mV/sの走査速度で行った。正規化された比容量であるCは、以下の方程式[1,2]:
【数1】
(式中、iは電流であり、vは走査速度であり、mは1つの電極の質量である)
により誘導される。
【0068】
図16は、TEA−BF
4塩を含むOS電解質を有するEDLCセルのサイクリックボルタモグラムを示す。電解質ZX1193は、70体積パーセントのDF1S
2MNおよび30体積パーセントのアセトニトリル中に溶解された、1.0M TEA−BF
4を含むものであった。電解質ZX1190は、60:40の体積で、ブレンドされたDF1S
2MNおよびアセトニトリル溶媒中に溶解された0.8M TEA−BF
4を含むものであった。両方の電解質処方物を有する前記EDLCセルは、横軸0に対して規則的対称的特徴を示し、前記セルの非酸化還元または誘導電流特性を示した。
【0069】
図17は、TBP−PF
6塩を含む、ZX 1170電解質およびZX 1184電解質を有するEDLCセルのサイクリックボルタモグラムを示す。電解質ZX 1170は、F1S
3MN中に溶解された1.2M TBP−PF
6を有し、電解質ZX 1184は、DF1S
2MN中に溶解された1.2M TBP−PF
6を有する。非酸化還元または誘導電流特性をまた、電解質ZX 1170および1184処方物の両方を有する、前記EDLCセルから観測することができる。
【0070】
1ND1N合成:
スキーム6は、1ND1Nについての合成スキームを描く。1ND1Nは、ナトリウム(Na)、酸化カルシウム(CaO)、または水素化カルシウム(CaH
2)により、化学的に乾燥することはできない。
【化21】
【0071】
1ND1Nの電気化学的安定性:
示されていないが、1ND1Nおよび1ND1についての分子軌道図により、最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)間のエネルギー差は、1ND1Nについては、7.88eV(LUMO=0.21eV;HOMO=−7.88eV)であり、1ND1については、8.36eV(LUMO=1.63eV;HOMO=−6.73eV)であることが明らかとなる。1ND1Nは、高い酸化安定性を有するが、1ND1より低い還元抵抗性を有する。
【0072】
図18は、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6または1M LiTFSIを含む1ND1Nの酸化安定性を描く。酸化安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。
【0073】
図19は、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6または1M LiTFSIを含む1ND1Nの還元安定性を描く。還元安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。各電解質について、2つの別々の走査を示す。
【0074】
図20Aおよび20Bは、0から6Vまでのおよび6から0Vまでの、1ND1Nおよび1M LiPF
6または1M LiTFSIでのサイクル走査について、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)を描く。
図20Aは、第1サイクルを描く。
図20Bは、第2サイクルを描く。
図21Aおよび21Bは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiPF
6を含むF1S
3MNまたは1ND1Nの酸化安定性を描く。酸化安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。
図21Bは、
図21Aにおいて示されたものと同一のデータのクローズアップを描く。前記F1S
3MN−LiPF
6電解質は、7.3Vで1mA/cm
2の電流密度を有し、前記1ND1N−LiPF
6電解質は、7.2Vで1mA/cm
2の電流密度を有した。
【0075】
図22Aおよび22Bは、電圧(V vs. Li/Li
+)に対する電流密度(mA/cm
2)における、1M LiTFSIを含むF1S
3MNまたは1ND1Nの酸化安定性を描く。酸化安定性を、室温で、Ptとしての作用電極、Liとしての対電極、Li/Li
+としての参照電極により、10mV/sの走査速度で試験した。
図22Bは、
図22Aにおいて示されたものと同一のデータのクローズアップを描く。前記F1S
3MN−LiTFSI電解質は、6.2Vで1mA/cm
2の電流密度を有し、前記1ND1N−LiTFSI電解質は、6.5Vで1mA/cm
2の電流密度を有した。
【0076】
1ND1Nの熱安定性:
図23は、1ND1Nのみの熱安定性を描く。1ND1Nを、30℃〜189℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。1ND1Nは、189℃まで液相および/または気相分解生成物を示さなかった。
1H NMRは、〜5%の分解を示した。
【0077】
図23は、LiPF
6を含む1ND1Nの熱安定性を描く。1ND1N−LiPF
6電解質を、30℃〜150℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。1ND1Nは、≧70℃での気相分解を示したが、150℃まで活発な(vigorous)反応は観測されなかった。Me
2SiF
2(81m/z)(96g/mol)およびアクリロニトリル(53g/mol)と疑われる52/53 m/zにおけるピークが、125〜150℃で現れた。150℃では、1,4−ジオキサンの気体は観測されなかった。
1H NMR分析は、125℃で50.6%の1ND1Nが残留し、150℃で58%が残留することを示した。125℃では、39.7%のフッ素化生成物であるF1NM1N(vs. 未加熱サンプル中の2.3%)、1.6%のMe
2SiF
2(vs. 未加熱サンプル中の0%)、および2.95%の加水分解(vs. 未加熱サンプル中の5.5%)が観測された。150℃では、41%のフッ素化生成物であるF1NM1N(vs. 未加熱サンプル中の2.3%)、1.7%のMe
2SiF
2(vs. 未加熱サンプル中の0%)、および5.0%の加水分解(vs. 未加熱サンプル中の5.5%)が観測された。
【0078】
125〜150℃で1ND1N−LiPF
6を加熱した際に52/53 m/zにおいて観測された前記ピークを同定するために、加熱した1ND1N−LiPF
6についての質量スペクトルプロファイルを、2−プロペンニトリルおよびシアン化水素についてのアメリカ国立標準技術研究所(NIST)標準の質量スペクトルプロファイルと比較した。
図25Aは、24〜30m/zにおける、
図24に関して記載されるとおりの前記質量スペクトルプロファイルのクローズアップを描く。
図25Bは、49〜55m/zにおける、
図24に関して記載されるとおりの前記質量スペクトルプロファイルのクローズアップを描く。
図25Aおよび25Bにおいて顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。
図25Bの51、52、および53m/zにおける前記ピークは、アクリロニトリルが存在する可能性を示す。前記NISTのスペクトルにおける26および27m/zのピークの存在により、HCNの存在を、確実に肯定することまたは否定すること(definitively confirmed or disconfirmed)はできない。
図25Aにおける前記スペクトルは、26m/zでは、27m/zと比較してより大きなピーク強度を示し、これは、アクリロニトリルの存在を支持する。しかしながら、27m/zにおける前記ピークの大きさは、アクリロニトリル単独について見込まれるものより大きい。
【0079】
図26は、LiTFSI、ビニレンカーボネート(VC)およびリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)を含む1ND1Nの熱安定性を描く。1ND1N−LiTFSI−VC−LiBOBを、30℃〜185℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。1ND1N−LiTFSI−VC−LiBOBは、185℃まで気相分解生成物を示さなかった。
1H NMRは、3%(未加熱サンプルにおけるもの)から18.7%(加熱後)への加水分解の増加を示し、これは、前記NMR分析が行われる前の遅れによるものと考えられた。
【0080】
図27は、LiBF
4を含む1ND1Nの熱安定性を描く。1ND1N−LiBF
4を、30℃〜125℃の範囲の温度に曝露して、質量スペクトル法により、分解生成物について分析した。顕著に現れたピークの温度に注釈を付ける。気相生成物は、≧30℃で発生した。見込みどおり、Me
2SiF
2(81m/z)(96g/mol)が観測された。アクリロニトリルは観測されなかった。
1H NMRは、3.7%の加水分解および34.2%のフッ素化生成物(3セットのピーク)を示した。
19F NMRは、前記系における全てのFが、Siに結合していることを示した。BF
4は残留していなかった。Fは不十分で、1ND1Nは完全には分解されなかった(4M Fに対して、〜5M 1ND1N)。
【0081】
質量スペクトル法により、加熱された1ND1N−LiBF
4サンプルにおいては、アクリロニトリルは観測されなかった一方で、未加熱対照においては観測された(70ppm)。これは、室温において、1ND1NがLiBF
4とは安定的ではないことを示す。NMR分析は、以下の表に示すとおり、加熱はほとんど分解を増加させないことを明らかにした:
【表3】
【0082】
セル中の1ND1Nの性能:
図28は、種々のCレートでの種々の電解質を含むセルの放電容量を描く。前記電解質溶媒は:(1)1ND1N;(2)20% エチレンカーボネート(EC)共溶媒との1ND1N(1ND1N_EC);および(3)20% EC共溶媒との1ND2(1ND2_EC)、であった。全ての処方物はまた、SEI−形成添加剤および1M LiPF
6塩を含むものであった。
図28に示すとおり、20% EC共溶媒は、1ND1Nの性能を改善した。20% EC共溶媒により、1ND1Nは、全てのCレートで、1ND2と比較して、低下した性能を示した。
【0083】
図29は、種々の他の電解質溶媒を含むセルの放電容量を描く。前記電解質溶媒は:(1)20% EC共溶媒、1M LiPF
6およびSEI−形成添加剤を含む1ND1N(1ND1N−EC−LiPF
6、
図29において、1ND1N_ECとして示す);(2)20% EC共溶媒、1M LiTFSIおよびSEI−形成添加剤を含む1ND1N(1ND1N−EC−LiTFSI、
図29において、1ND1N_Tとして示す);および(3)20% EC共溶媒、1M LiPF
6およびSEI−形成添加剤を含む1ND2(1ND2−EC−LiPF6、
図29において、CP597−07として示す)、であった。前記1ND1N−EC−LiPF
6の組み合わせおよび1ND1N−EC−LiTFSIの組み合わせは、前記1ND2−EC−LiPF
6の組み合わせに適合する性能を示した。
【0084】
図30Aおよび30Bは、種々のCレートでの1ND1N−LiPF
6系電解質または1ND1N−LiTFSI系電解質をそれぞれ含むセルの放電容量を描く。各実験について、Saft America(Cockeysville,MD)のNCAカソード、グラファイトアノード、およびCelgard,LLC(Charlotte,NC)製の2500セパレータを有する、CR2032コインセルを使用した。前記セルを、定電流/定電圧(CCCV)方式で、C/5、C/2、1Cまたは2Cレートで4.1Vまで充電した。前記セルを、充電されたものと同じレートで、各サイクルを3.0Vまで定電流で放電した。
図30Aにおいて、前記1ND1N−LiPF
6系電解質溶液は、1M LiPF
6および1ND1Nを含むもの(バッチ ZP780−01)であり、充電/放電を、30℃または55℃で行った。
図30Bにおいて、前記1ND1N−LiTFSI系電解質溶液は、1M LiTFSIおよび1ND1Nを含むもの(バッチ ZP781−01)であり、充電/放電を、30℃、55℃、または70℃で行った。
図30Aおよび38Bにおいて示すとおり、前記1ND1N−LiTFSI系電解質は、前記1ND1N−LiPF
6系電解質より良好なレート能(rate capability)を示した。
【0085】
OS溶媒および電解質溶液の物性:
上記の表1は、選択された有機シリコン(OS)化合物(1S
3MN、F1S
3MN、F1S
3cMN、DF1S
3MN、DF1S
2MN、およびF1S
3M2)の、溶媒のみとしてのおよび処方された電解質溶液としての物性を示す。上記の表2は、1ND1N、1ND1、1ND2、およびF1S
3MNのみの、ならびにそれらを含む種々の電解質組成物の、物性を示す。両方の表において、導電性は、mS/cmの単位を有し、粘度は、cPの単位を有し、引火点は、セ氏温度の単位である。
【0086】
1ND1N、1ND1N、DF1S
2MN、DF1S
3MN、F1S
3cMN、および1S
3MNについて、CDCl
3中で取得したプロトン(
1H)NMRスペクトルを、
図31〜36それぞれにおいて提示する。選択された、フッ素原子を含む化合物について、
19F NMRデータを、CDCl
3およびDMSO−d
6中で回収した。結果は、以下の一覧である:
CDCl3中の19F−NMR
F1S
3MN −162.3ppm、
1J(
19F,
29Si)=280Hz
isoF1S
3MN −166.6ppm、
1J(
19F,
29Si)=284Hz
DF1S
3MN −135.3ppm、
1J(
19F,
29Si)=296Hz
TF1S
3MN −136.8ppm、
1J(
19F,
29Si)=280Hz
DF1S
2MN −135.2ppm、
1J(
19F,
29Si)=296Hz
DMSO−d6中の19F−NMR
F1S
3MN −159.2ppm、
1J(
19F,
29Si)=279Hz
【0087】
結論:
F1S
3MNおよび1ND1Nは、両方とも、Liイオンバッテリ中の電解質溶媒としての使用に好適である。F1S
3MNおよびDF1S
2MNは、EDLCデバイス中の電解質溶媒としての機能を実証した。
F1S
3MNは、試験をした全ての塩と、極めて高い熱安定性(
1H NMRにより測定したもの)を示す。F1S
3MNは、分解が観測されずに、LiPF
6を含む、あらゆるOSのうち最も高い熱安定性を示す(175℃)。F1S
3MNは、溶媒のみで、LiBF
4を含む、およびLiTFSIを含む、気相生成物を生成する。これらの気相生成物は、F1S
3MN蒸発の低レベルに起因するものと考えることができる。F1S
3MNは、F1S
3M2と比較して、増加した電圧安定性(広いウィンドーを有する、より高い酸化電位)を示す。F1S
3MNは、4Cのレートまで、EPA6として同等の性能を提供する。LiBOBは、共溶媒なしで、F1S
3MN中で制限された溶解性を有する(<0.03M)が、LiBOB溶解性は、共溶媒(すなわち、20% EC)の使用により改善される(>0.1M)。F1S
3MNの分解生成物は、Me
2SiF
2およびMeSiF
3であり、その両方は気体である。
【0088】
1ND1Nは、溶媒のみとして、およびLiTFSI電解質と組み合わせて、185〜190℃まで気相分解を示さない。1ND1NのLiTFSI電解質との組み合わせは、70℃およびそれより高い温度まで有望性がある(show promise)。LiPF
6を含む1ND1Nは、LiPF
6を含む1ND1または1ND2のいずれかとのものより、熱的に安定である。それは、125℃より高い温度でアクリロニトリルを形成する。他の非スペーサー化合物と同様に、1ND1Nは、室温でLiBF
4と反応する。しかしながら、Fは不十分で、前記1ND1Nは完全には分解されず、アクリロニトリルを形成しない。1ND1Nのレート性能は、1ND2よりわずかに低い。