特許第6254310号(P6254310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井ハイテックの特許一覧

<>
  • 特許6254310-固定子鉄心の製造方法 図000002
  • 特許6254310-固定子鉄心の製造方法 図000003
  • 特許6254310-固定子鉄心の製造方法 図000004
  • 特許6254310-固定子鉄心の製造方法 図000005
  • 特許6254310-固定子鉄心の製造方法 図000006
  • 特許6254310-固定子鉄心の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254310
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】固定子鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   H02K15/02 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-19422(P2017-19422)
(22)【出願日】2017年2月6日
(62)【分割の表示】特願2013-123944(P2013-123944)の分割
【原出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-77179(P2017-77179A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小園 武明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】緒方 萌
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−098772(JP,A)
【文献】 特開2010−268603(JP,A)
【文献】 特開2004−328986(JP,A)
【文献】 特開昭63−039444(JP,A)
【文献】 特開平10−127015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K15/02
H02K 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の環状鉄心片を積層して形成したブロック鉄心を複数個積み重ねて製造する固定子鉄心の製造方法において、
前記各ブロック鉄心を焼鈍する工程と、
前記各ブロック鉄心同士を接合して一体化する工程とを有することを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の固定子鉄心の製造方法において、前記各ブロック鉄心同士の接合は、焼鈍後の複数の前記ブロック鉄心を位置合せして行うことを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固定子鉄心の製造方法において、前記ブロック鉄心は、複数個積み重ねられて同時に焼鈍されることを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の固定子鉄心の製造方法において、前記ブロック鉄心は、一つずつ焼鈍されることを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の固定子鉄心の製造方法において、前記環状鉄心片をカシメ部を介して積層することを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項記載の固定子鉄心の製造方法において、前記環状鉄心片は、環状ヨーク片部と、該環状ヨーク片部の外周に突出して複数設けられ、前記カシメ部がそれぞれ形成された突出片部とを有し、
複数の前記ブロック鉄心が一体化された後、前記突出片部の積層により形成される突出部を、前記環状ヨーク片部の積層により形成される環状ヨーク部から除去することを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の固定子鉄心の製造方法において、前記各ブロック鉄心を、所定角度回転させて積み重ねることを特徴とする固定子鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状精度の高い固定子鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、IPMモータ(埋込構造永久磁石同期電動機)の製造においては、電磁鋼板から鉄心片を打抜き、積層して積層鉄心(固定子鉄心及び回転子鉄心)を製造している。そして、鉄心片の積層方向における接合には、例えば、カシメ、接着、溶接等の各種接合方法が採用されている。また、鉄心片を積層する際、電磁鋼板の板厚偏差の影響をなくすため、例えば、鉄心片を所定の枚数ずつ回し積みする転積が行われている。転積には、打抜き金型内でブランクダイを回転させて鉄心片を回し積みして固定子鉄心を製造する型内転積と、例えば、図5(A)に示すように、複数の鉄心片80を打抜き金型内でカシメ積層してブロック鉄心81を順次形成し、次いで、図5(B)に示すように、打抜き金型から取り出したブロック鉄心81を所定の個数回し積みし、隣り合うブロック鉄心81同士を溶接部82を介して接合して固定子鉄心83を製造する型外転積とがある。
【0003】
ここで、電磁鋼板から打抜いた鉄心片80には、残留歪が存在している。このため、残留歪が存在する鉄心片80を積層したブロック鉄心81を用いて固定子鉄心83を製造すると、固定子鉄心83にヒステリシス損が生じ、モータ性能が低下するという問題がある。そこで、特許文献1に記載されているように、固定子鉄心83を形成した後、固定子鉄心83に存在する残留歪を除去するため、固定子鉄心83を焼鈍する(例えば、800℃程度に加熱した後に徐冷する)ことが広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−063119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定子鉄心83の焼鈍は、図6(A)に示すように、ブロック鉄心81を溶接して形成した固定子鉄心83を台座84に載せて焼鈍炉(図示せず)に送入しているが、図6(B)に示すように、焼鈍中に固定子鉄心83が傾くという現象が発生する。これは、台座84や、台座84を支持して焼鈍炉内での移動をガイドする搬送レール(図示せず)が水平面より僅かに(θ度)傾いていることにより、固定子鉄心83に自重による偏荷重が負荷されるためである。その結果、図6(C)に示すように、焼鈍後の固定子鉄心83を断面視した場合、固定子鉄心83に設けられる回転子孔85の上端開口中心の位置と下端開口中心の位置との間には偏差δが生じ、固定子鉄心83の直角度が低下し、モータ性能に悪影響を及ぼす。そして、焼鈍後に固定子鉄心83が傾くという現象は、大きなモータトルクを得ることを目的として固定子鉄心83の積厚を大きくするほど顕著となり、固定子鉄心83の精度維持が困難になってくる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、固定子鉄心の形状精度の低下を抑制することが可能な固定子鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る固定子鉄心の製造方法は、複数枚の環状鉄心片を積層して形成したブロック鉄心を複数個積み重ねて製造する固定子鉄心の製造方法において、
前記各ブロック鉄心を焼鈍する工程と、
前記各ブロック鉄心同士を接合して一体化する工程とを有する。
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、前記各ブロック鉄心同士の接合は、焼鈍後の複数の前記ブロック鉄心を位置合せして行うのが好ましい。
【0008】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、前記ブロック鉄心を、複数個積み重ねて同時に焼鈍することができる。
また、前記ブロック鉄心を、一つずつ焼鈍することもできる。
【0009】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、前記環状鉄心片はカシメ部を介して積層することができる。
【0010】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、前記環状鉄心片は、環状ヨーク片部と、該環状ヨーク片部の外周に突出して複数設けられ、前記カシメ部がそれぞれ形成された突出片部とを有し、
複数の前記ブロック鉄心が一体化された後、前記突出片部の積層により形成される突出部を、前記環状ヨーク片部の積層により形成される環状ヨーク部から除去することが好ましい。
環状鉄心片の突出片部にカシメ部が形成されているため、環状鉄心片を積層した際、突出片部同士のカシメ接合によりブロック鉄心が形成され、ブロック鉄心の環状ヨーク部は、環状ヨーク片部が単に積み重ねられた状態となっている(環状ヨーク片部はカシメ接合していない)。
【0011】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、前記各ブロック鉄心を、所定角度回転させて積み重ねることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、焼鈍後にブロック鉄心に傾きが発生しても焼鈍後の複数のブロック鉄心を位置合せしてから接合する場合、ブロック鉄心の傾きの影響を小さくし、固定子鉄心の直角度の低下を抑制できる。
【0013】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、ブロック鉄心が、複数個積み重ねられて同時に焼鈍される場合、ブロック鉄心の焼鈍を効率的に行うことができる。
【0014】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、ブロック鉄心が、一つずつ焼鈍される場合、積厚が大きな固定子鉄心を製造する際にも、既存の焼鈍設備で製造が可能であり、焼鈍炉を大型化する等の焼鈍設備を新設する必要がなくなる。また、各ブロック鉄心に負荷される自重による偏荷重が小さくなるので、各ブロック鉄心の傾きが更に小さくなり、固定子鉄心の直角度の低下を更に抑制することができる。
【0015】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、環状鉄心片を、カシメ部を介して積層する場合、ブロック鉄心の製造が容易となる。
【0016】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、環状鉄心片が、環状ヨーク片部と、環状ヨーク片部の外周に突出して複数設けられ、カシメ部がそれぞれ形成された突出片部とを有し、複数のブロック鉄心が一体化された後、突出片部の積層により形成される突出部を、環状ヨーク片部の積層により形成される環状ヨーク部から除去する場合、環状ヨーク部にカシメ部が存在しないので、環状ヨーク部の積層により形成される固定子鉄心にもカシメ部が存在せず、固定子鉄心において層間短絡による鉄損の増加がなくなる。
【0017】
本発明に係る固定子鉄心の製造方法において、各ブロック鉄心を、所定角度回転させて積み重ねる場合、電磁鋼板の板厚偏差の影響で環状鉄心片に板厚偏差が存在してブロック鉄心の高さに偏差が発生していても、固定子鉄心の高さに偏差が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)〜(D)は本発明の第1の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法の説明図である。
図2】(A)〜(C)は本発明の第2の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法の説明図である。
図3】本発明の第1、第2の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法の変形例の説明図である。
図4】(A)〜(C)は本発明の第3の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法の説明図である。
図5】(A)、(B)は従来例に係る固定子鉄心の製造方法の説明図である。
図6】(A)〜(C)は、従来例に係る固定子鉄心の製造方法において、焼鈍前、焼鈍中、及び焼鈍後のそれぞれの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の第1の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法は、図1(A)〜(D)に示すように、複数枚の環状鉄心片10を積層して形成したブロック鉄心11を複数個積み重ねて製造する固定子鉄心12の製造方法であって、各ブロック鉄心11を焼鈍する工程と、焼鈍後のブロック鉄心11の中央部に形成される回転子用空間部13内に配置される垂直部の一例である断面円形のポスト14を基準として、複数のブロック鉄心11を位置合せして垂直に積み重ねる工程と、積み重ねたブロック鉄心11の隣り合うブロック鉄心11同士を溶接(接合の一例)して、ブロック鉄心11を一体化する工程とを有する。以下、詳細に説明する。
【0020】
環状鉄心片10を、厚みが、例えば、0.5mm以下の電磁鋼板(図示せず)から打ち抜いて形成し、打ち抜いた複数枚の環状鉄心片10を順次積層してブロック鉄心11を形成する。ここで、電磁鋼板から環状鉄心片10を打ち抜く際、環状鉄心片10の所定位置にカシメ部(図示せず)を同時に形成するので、環状鉄心片10を打抜き金型内で積層すると、下層の環状鉄心片10のカシメ部と上層の環状鉄心片10のカシメ部との間にカシメ接合が形成(カシメ積層)される。その結果、ブロック鉄心11の中央部には、環状鉄心片10の中央部に設けられた孔が連続して形成される回転子用空間部13が設けられる。
【0021】
図1(A)に示すように、ブロック鉄心11を、焼鈍台座15に複数個(例えば、固定子鉄心12の形成に必要な個数)積み重ね、焼鈍台座15と共に図示しない焼鈍炉の入口から炉内に送入する。送入された焼鈍台座15は、焼鈍炉内に設置された搬送レール(図示せず)の上を焼鈍炉の出口に向けて移動し、この間に焼鈍が行われる。ブロック鉄心11を焼鈍台座15に複数個積み重ねて同時に焼鈍することで、ブロック鉄心11の焼鈍を効率的に行うことができる。
【0022】
焼鈍台座15は水平面より僅かに(θ度)傾いているので、積み重ねられたブロック鉄心11は、偏荷重が負荷された状態で焼鈍されることになる。その結果、焼鈍台座15上に積み重ねたブロック鉄心11は、焼鈍後では図1(B)に示すように、焼鈍台座15上で傾いた状態になり、最上部に配置されたブロック鉄心11に形成された回転子用空間部13の上端開口中心の位置と、最下部に配置されたブロック鉄心11に形成された回転子用空間部13の下端開口中心の位置との間には偏差δ1が生じている。ここで、ブロック鉄心11に負荷される偏荷重は、自重と上側に積み重ねた各ブロック鉄心11の重量との総和となるので、下側に配置されるブロック鉄心11ほど大きな偏荷重が加わる。このため、焼鈍後のブロック鉄心11に形成された回転子用空間部13の上端開口中心位置と下端開口中心位置との間のずれは、焼鈍時に最上部に配置されたブロック鉄心11において最小となり、下側に配置されるブロック鉄心11ほど大きくなる。
【0023】
焼鈍後の傾斜したブロック鉄心11を、図1(C)に示すように、組立台座16に垂直に設けられた円柱状のポスト14が、ブロック鉄心11の中央部に形成されている回転子用空間部13を挿通するように位置合せを行いながら組立台座16上に積み重ねる。傾斜したブロック鉄心11の回転子用空間部13にポスト14を挿通させると、ポスト14の外周面は、ブロック鉄心11に形成された回転子用空間部13の上端開口の一部及び下端開口の一部とそれぞれ当接することになり、ポスト14を基準としてブロック鉄心11は位置決めされる。ここで、ブロック鉄心11を組立台座16上で積み重ねる場合、ブロック鉄心11は、所定角度回転させて積み重ねる。これにより、電磁鋼板の板厚偏差の影響で環状鉄心片10に板厚偏差が存在してブロック鉄心11の高さに偏差が発生していても、固定子鉄心12の高さに偏差が発生することを抑制できる。
【0024】
組立台座16上に積み重ねたブロック鉄心11を、例えば、上下方向から押圧した状態で隣り合うブロック鉄心11同士をスポット溶接し、図1(D)に示すように、ブロック鉄心11間に溶接部17を形成してブロック鉄心11を一体化する。これにより、固定子鉄心12が形成される。一体化した各ブロック鉄心11(固定子鉄心12)では、各ブロック鉄心11がポスト14を基準として位置決めされているので、最上部に配置したブロック鉄心11に形成された回転子用空間部13の上端開口中心位置と、最下部に配置したブロック鉄心11に形成された回転子用空間部13の下端開口中心位置の偏差δ2は、焼鈍後の積み重ねられたブロック鉄心11に発生した偏差δ1(図1(B)参照)より小さくなる。従って、焼鈍により各ブロック鉄心11に傾きが発生しても、固定子鉄心12において、各ブロック鉄心11の傾きの影響(偏差δ2)を小さくすることができ、固定子鉄心12の直角度の低下を抑制できる。
【0025】
図2(A)〜(C)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法は、第1の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法と比較して、固定子鉄心18の形成に使用する複数のブロック鉄心19を、一つずつ焼鈍することが特徴となっている。このため、ブロック鉄心19を一つずつ焼鈍することについての作用について説明する。なお、第1の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法において、同一の構成部材には同一の符号を付して説明は省略する。
【0026】
焼鈍台座15は水平面に対して僅かに(θ度)傾いているので、焼鈍中、ブロック鉄心19には自重による偏荷重が加わるが、このときの偏荷重は、1個のブロック鉄心19の自重に基くものとなる。このため、焼鈍後のブロック鉄心19に形成された回転子用空間部13の上端開口中心位置と下端開口中心位置との間のずれ量δ3は、第1の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法において、焼鈍時に最上部に配置されたブロック鉄心11に生じたずれ量と略一致する。
【0027】
焼鈍後の傾斜したブロック鉄心19を、図2(B)に示すように、組立台座16に垂直に設けられた円柱状のポスト14が、ブロック鉄心19の中央部に形成されている回転子用空間部13を挿通するように位置合せを行いながら、組立台座16上に所定角度回転させて積み重ねる。これにより、傾斜したブロック鉄心19に形成された回転子用空間部13の上端開口の一部及び下端開口の一部とポスト14の外周面がそれぞれ当接することになり、ポスト14を基準としてブロック鉄心19は位置決めされると共に、電磁鋼板の板厚偏差の影響で環状鉄心片10に板厚偏差が存在してブロック鉄心19の高さに偏差が発生していても、固定子鉄心18の高さに偏差が発生することを抑制できる。
【0028】
組立台座16上に積み重ねたブロック鉄心19を、例えば、上下方向から押圧した状態で隣り合うブロック鉄心19同士をスポット溶接し、図2(C)に示すように、ブロック鉄心19間に溶接部20を形成してブロック鉄心19を一体化する。これにより、固定子鉄心18が形成される。一体化した各ブロック鉄心19(固定子鉄心18)では、各ブロック鉄心19がポスト14を基準として位置決めされているので、各ブロック鉄心19の回転子用空間部13において、上端開口中心位置及び下端開口中心位置は、それぞれ略同軸上にあり、固定子鉄心18の上端開口中心位置と下端開口中心位置の偏差δ3は、図1(D)に示す偏差δ2より小さい。従って、焼鈍により各ブロック鉄心19に発生する傾きを抑制して(偏差δ3を小さくして)、固定子鉄心18の直角度の低下を更に抑制できる。
【0029】
第1、第2の実施の形態では、焼鈍後のブロック鉄心11、19を位置決めしてブロック鉄心11、19を垂直に積み重ねて、隣り合うブロック鉄心11、19同士をスポット溶接し、ブロック鉄心11、19間に溶接部17、20を形成してブロック鉄心11、19を一体化したが、図3に示すように、垂直に積み重ねたブロック鉄心11、19の周方向に沿った複数位置において、各環状鉄心片10を積層方向に全溶接し、溶接ビード部21を形成してブロック鉄心11、19を一体化して固定子鉄心12、18を構成してもよい。
【0030】
図4(A)〜(C)に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法は、第1、第2の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法と比較して、環状鉄心片22の形成方法が異なることが特徴となっている。このため、形成した環状鉄心片22の作用について説明する。
厚みが、例えば、0.5mm以下の電磁鋼板(図示せず)から打ち抜いて形成する環状鉄心片22は、環状ヨーク片部23と、環状ヨーク片部23の半径方向内側に周方向に沿って等間隔に形成された磁極片部26と、環状ヨーク片部23の外周に突出して複数設けられ、カシメ部24がそれぞれ形成された突出片部25とを有している。ここで、突出片部25は、環状ヨーク片部23から半抜き、又は打ち抜かれた後、環状ヨーク片部23に対して打ち戻され、突出片部25と環状ヨーク片部23は連結状態となっている。そして、打ち抜き形成した環状鉄心片22を打抜き金型内で積層すると、下層の環状鉄心片22のカシメ部24と上層の環状鉄心片22のカシメ部24との間にカシメ接合が形成され、ブロック鉄心27が形成される。ここで、ブロック鉄心27は、環状ヨーク片部23の積層により形成される環状ヨーク部28と、突出片部25の積層により形成される突出部29と、磁極片部26の積層により形成される磁極部30とを有し、複数の磁極部30で囲まれた内側領域には、回転子用空間部31が形成されている。
【0031】
形成したブロック鉄心27を、第2の実施の形態に係る固定子鉄心の製造方法と同様に焼鈍台座15に一つずつ載置し、焼鈍する。焼鈍台座15は水平面に対して僅かに傾いているので、焼鈍中、ブロック鉄心27には自重による偏荷重が加わり、焼鈍後のブロック鉄心27に形成された回転子用空間部31の上端開口中心位置と下端開口中心位置との間にはずれが生じる。このため、焼鈍後の傾斜したブロック鉄心27を、組立台座16に垂直に設けられた円柱状のポスト14が、ブロック鉄心27の中央部に形成されている回転子用空間部13を挿通するように位置合せを行いながら、組立台座16上に所定角度回転させて積み重ねる。これにより、ポスト14を基準としてブロック鉄心27は位置合せされ、焼鈍により各ブロック鉄心27に傾きが発生していても各ブロック鉄心27を垂直に積み重ねることができ、固定子鉄心32(図4(C)参照)の直角度の低下を抑制できると共に、電磁鋼板の板厚偏差の影響で環状鉄心片22に板厚偏差が存在してブロック鉄心27の高さに偏差が発生していても、固定子鉄心32の高さに偏差が発生することを抑制できる。
【0032】
組立台座16上に積み重ねたブロック鉄心27を、例えば、上下方向から押圧した状態で、積み重ねたブロック鉄心27の周方向に沿った複数位置において、各環状鉄心片22を積層方向に全溶接し、図4(B)に示すように、溶接ビード部33を形成して複数のブロック鉄心27を一体化すると、各ブロック鉄心27の環状ヨーク部28、突出部29、及び磁極部30もそれぞれ当接して一体化する。ここで、打ち抜き形成された突出片部25は、環状ヨーク片部23に押し戻しされて打ち抜き部(切断部)を介して連結状態となっているため、積み重ねたブロック鉄心27において、最下層の環状ヨーク部28を下方から支えて、最上部の突出部29を下方に向けて押圧すると、突出部29を下方に向けてスライドさせることができ、環状ヨーク部28から突出部29を除去して、図4(C)に示すように、積み重なった環状ヨーク部28及び磁極部30から構成される固定子鉄心32を形成することができる。
【0033】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、電磁鋼板から打ち抜いた環状鉄心片を、一定角度回転させながら積層して、ブロック鉄心を形成することもできる。
焼鈍後のブロック鉄心を組立台座上で垂直に積み重ねる場合、磁極部間に形成される複数のスロット部の一部において、ブロック鉄心に当接するようなポスト状の垂直部を組立台座に複数設け、位置決めの基準としてもよい。
また、突出片部を環状ヨーク片部から半抜きせず又は打ち抜かずに環状鉄心片を積層し、ブロック鉄心を一体化した後、突出部を切断して除去してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10:環状鉄心片、11:ブロック鉄心、12:固定子鉄心、13:回転子用空間部、14:ポスト、15:焼鈍台座、16:組立台座、17:溶接部、18:固定子鉄心、19:ブロック鉄心、20:溶接部、21:溶接ビード部、22:環状鉄心片、23:環状ヨーク片部、24:カシメ部、25:突出片部、26:磁極片部、27:ブロック鉄心、28:環状ヨーク部、29:突出部、30:磁極部、31:回転子用空間部、32:固定子鉄心、33:溶接ビード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6