(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクを吐出する複数のノズル列が平行に配列されたインクジェットヘッドを有し、前記インクジェットヘッドと用紙とを相対移動しながら前記複数のノズル列のうち選択されたノズル列からインクを吐出することにより、解像度を切り替えて前記用紙に印刷するインクジェット印刷装置であって、
印刷条件に基づいて、サテライト発生の影響の度合いを示す影響度を算出する影響度算出手段と、
前記影響度算出手段により算出された影響度が所定の閾値を越えた場合に、前記印刷される用紙における画素列毎に、前記複数のノズル列のうち一部のノズル列において1列毎に順に吐出させるように前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(実施例1)
<インクジェット印刷装置の全体構成>
本発明の実施例1では、用紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に配列されたインクジェットヘッドを有し、搬送経路上で搬送された用紙に対して、画像データに基づいてインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して印刷するライン型のインクジェット印刷装置を例に挙げて説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の構成を示す構成図である。
【0029】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
【0030】
サイド給紙部10は、用紙Pが積層される給紙台11と、この給紙台11から最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、この1次給紙部12によって搬送された用紙Pを循環搬送路CR上へ搬送する2次給紙部14とを備えている。
【0031】
内部給紙部20は、用紙Pが積層される給紙台21aと、この給紙台21aから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、用紙Pが積層される給紙台21bと、この給紙台21bから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、用紙Pが積層される給紙台21cと、この給紙台21cから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22cと、用紙Pが積層される給紙台21dと、この給紙台21dから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22dとを備えている。
【0032】
このように、2次給紙部14には、サイド給紙部10及び内部給紙部20から用紙Pが搬送され、さらに、後述する反転部50からも用紙Pが搬送される。
【0033】
そのため、搬送方向における2次給紙部14の手前には、給紙された用紙Pの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して搬送されてくる経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと称し、それ以外の経路を循環搬送路CRと称している。
【0034】
印刷部30は、複数の印字ヘッドが組み込まれたインクジェットユニット31と、インクジェットユニット31の対向面に設けられた環状の搬送ベルト133とを備えており、2次給紙部14により給紙された用紙Pは、環状の搬送ベルト133内に、用紙の搬送路面の裏面に対応して設置された吸引ファン131によって搬送ベルト133上に吸引され、所定の搬送速度で搬送されながら、インクジェットユニット31から吐出されたインクにより用紙Pに印刷される。
【0035】
印刷部30により印刷された用紙Pは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって筐体内を循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された用紙Pを排紙部40へ誘導するか、又は循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。
【0036】
切り替え機構43は、用紙Pを、後述する排紙部40又は反転部50のいずれか1方へ誘導するために、切り替える。
【0037】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に用紙Pを誘導する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、切り替え機構43により排紙部40に誘導された用紙Pは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
【0038】
反転部50は、用紙Pを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ用紙Pを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へ用紙Pを搬送する反転ローラ52とを備えている。
【0039】
切り替え機構43により反転部50に誘導された用紙Pは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ搬送されることにより、循環搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された用紙Pは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより循環搬送路CR上を印刷部30へ向かって搬送される。
【0040】
また、インクジェット印刷装置1の全体を制御する制御部80を有している。この制御部80は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを制御することにより、画像データに基づいて印刷処理を実行する。
【0041】
図2は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備えるインクジェットユニット31の平面図である。
【0042】
インクジェットユニット31は、主走査方向、即ち用紙Pの搬送方向と直交する方向に2列のノズルが配列されたライン型の複数のインクジェットヘッド110,112,114を有する。
【0043】
そして、インクジェットユニット31の下部を用紙Pが副走査方向(用紙Pの搬送方向)に搬送されながら、複数のインクジェットヘッド110,112,114からインクが吐出されることにより印刷される。
【0044】
インクジェットユニット31は、ブラック(K)のインクを貯留したインクジェットヘッド110a〜110fと、シアン(C)及びマゼンダ(M)のインクを貯留したインクジェットヘッド112a〜112fと、イエロー(Y)のインクを貯留したインクジェットヘッド114a〜114fとを備えている。なお、インクジェットヘッド110a〜110fと、インクジェットヘッド112a〜112fと、インクジェットヘッド114a〜114fとは、吐出されるインク色が異なるが、同一の物理構造を有している。
【0045】
インクジェットヘッド110a〜110fは、主走査方向に対して平行になるように、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列された上流側のノズル列121と、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列された下流側のノズル列123とが配置されている。2列のノズル列121,123は、主走査方向のノズルの位置がそれぞれずらして設けられており、2列のノズル列121,123から同色(ここでは、ブラック)のインクが吐出されることにより、600dpiの解像度を実現する。
【0046】
また、インクジェットヘッド110a〜110fには、ブラック(K)のインクを収容するインク室が設けられており、このインク室内にはピエゾ素子が配置されている。そして、供給された駆動信号に基づいて、ピエゾ素子にインクが吐出する駆動電圧が印加されることにより、インク室に連通するノズルからブラック(K)のインクを、ドロップ単位で吐出する。なお、図示しないが、インクジェットヘッド110a〜110fには、それぞれインクの温度を測定する温度計が備えられている。
【0047】
このように、主走査方向に2列に配置されたノズル列121,123からブラック(K)のインクが吐出されることにより、600(dpi)の解像度で印字することができる。
【0048】
一方、インクジェットヘッド112a〜112fは、主走査方向に対して平行になるように、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列されシアン(C)のインクを吐出する上流側のノズル列124と、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列されマゼンダ(M)のインクを吐出する下流側のノズル列125とが1列ずつ配置されている。
【0049】
また、インクジェットヘッド112a〜112fには、それぞれシアン(C)のインクを収容するインク室と、マゼンダ(M)のインクを収容するインク室とが設けられており、このインク室内にはピエゾ素子が配置されている。そして、駆動信号に基づいてピエゾ素子にインクを吐出する駆動電圧が印加されることにより、シアン(C)、マゼンダ(M)それぞれのインク室に連通するノズルからシアン(C)、マゼンダ(M)それぞれのインクがドロップ単位で吐出される。なお、図示しないが、インクジェットヘッド112a〜112fには、それぞれインクの温度を測定する温度計が備えられている。
【0050】
このように、主走査方向に2列に配置されたノズル列124,125のうち、上流側のノズル列124からシアン(C)のインクが吐出され、下流側のノズル列125からマゼンダ(M)のインクが吐出されることにより、シアン(C)、マゼンダ(M)がそれぞれ300(dpi)の解像度で印字される。
【0051】
インクジェットヘッド114a〜114fは、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列されたノズル列が、主走査方向に対して平行になるように2列に配列されており、上流側にはイエロー(Y)のインクを吐出するノズル列127が配置され、下流側には、予備インクのノズル列128が配置されている。
【0052】
また、インクジェットヘッド114a〜114fには、イエロー(Y)のインクを収容するインク室と、予備インクを収容するインク室とが設けられており、このインク室内にはピエゾ素子が配置されている。そして、駆動信号に基づいてピエゾ素子にインクを吐出する駆動電圧が印加されることにより、イエロー(Y)、予備インク色それぞれのインク室に連通するノズルからイエロー(Y)、予備インク色それぞれのインクがドロップ単位で吐出される。なお、図示しないが、インクジェットヘッド114a〜114fには、それぞれインクの温度を測定する温度計が備えられている。
【0053】
このように、主走査方向に2列に配置されたノズル列のうち、上流側のノズル列127からイエロー(Y)のインクが吐出され、下流側のノズル列128から予備インクが吐出されることにより、イエロー(Y)、予備インク色がそれぞれ300(dpi)の解像度で印字される。
【0054】
なお、予備インクは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)でも良いし、ライトシアン(LC)やライトマゼンダ(LM)であっても良い。
【0055】
<インクジェット印刷装置1の機能構成>
次に、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の機能構成について説明する。
【0056】
図3は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の機能構成を示した図である。
【0057】
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50と、操作パネル部70と、制御部80とを備える。これらの構成のうち、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とについては、上述したので、説明を省略する。
【0058】
制御部80は、CPU81と、CPU81の動作プログラムや各種テーブル等を格納したROM82と、画像読取り部(図示せず。)が読取った画像データまたはコンピュータ装置(図示せず。)等が送信してきた画像データ、さらには操作パネル部70またはコンピュータ装置(図示せず。)からの各種印刷条件を含む印刷ジョブを記憶するRAM83を有している。
【0059】
図4は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備える制御部80のROM82に記憶されたテーブルの一例を示した図である。(a)は、ヘッドギャップとギャップ影響度Egとの関係を示すヘッドギャップテーブルの一例を示した図であり、(b)は、インクの温度と温度影響度Etとの関係を示す温度テーブルの一例を示した図であり、(c)は、画像位置と画像位置影響度Elとの関係を示す画像位置テーブルの一例を示した図である。
【0060】
図4(a)に示すように、カラム名“ヘッドギャップ”(符号151)と、カラム名“ギャップ影響度Eg”(符号152)とが関連付けられてヘッドギャップテーブルとして記憶されている。ここで、ヘッドギャップ151は、例えば、普通用紙や、封筒用紙など用紙の厚みに応じて、“a”、“b”、“c”というように段階的に設定されている。
【0061】
ヘッドギャップ151は、広いほどミストが広範囲に拡散されるので、サテライトへの影響度は大きい。そのため、a<b<cの関係が成り立つとすると、ヘッドギャップテーブルは、ヘッドギャップ151が大きい程、サテライト発生の影響の度合いを示すギャップ影響度Eg(符号:152)の値が大きくなるように、関連づけられている。
【0062】
図4(b)に示すように、カラム名“温度”(符号154)と、カラム名“温度影響度Et”(符号155)とが関連付けられて温度テーブルとして記憶されている。
【0063】
インクジェット印刷装置1に用いられるインクは、低温では粘度が高く、高温では粘度が低いというように温度条件により粘性が変化する温度特性を有している。粘度が高いと、インクが尾を長く引いて飛翔し、サテライトとなる液滴が増加するためサテライトへの影響は大きい。そのため、温度テーブルは、温度154が低い場合に、温度影響度Etの値が大きくなるように関連づけられている。
【0064】
具体的には、温度テーブルは、温度tが温度閾値d以上の場合、温度影響度Etの値が“1”となり、温度tが温度閾値d未満の場合、温度影響度Etの値が“1.2”となるように、関連づけられている。
【0065】
図4(c)に示すように、カラム名“画像位置”(符号157)と、カラム名“画像位置El”(符号158)とが関連付けられて画像位置テーブルとして記憶されている。
【0066】
インクジェット印刷装置1は、搬送ベルト133内に吸引ファン131が設けられており、吸引ファン131の吸引により用紙Pを搬送ベルト133上に吸着させて搬送させるので、吸引ファン131による吸引により用紙を回り込むような気流が発生する。そして、インク吐出によって発生したミスト(サテライト)がこの気流に同伴し、同伴したサテライトが吐出位置とずれた場所に着弾し印刷画像が劣化する。このとき、用紙P上の最も近い端部の方向に向かって、用紙Pを回り込むように気流が発生するので、用紙Pの端部に近いほど気流の流速が速くなる。そのため、印刷される画像が、用紙Pの端部に近いほど、サテライトの影響が大きい。即ち、用紙Pの中央領域より周辺領域の方が、気流の流速が速く、サテライトの影響が大きいことになる。
【0067】
そこで、画像が中央領域にあるか、周辺領域にあるかにより、画像位置影響度El(符号:158)を決定する。
【0068】
図5は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1における画像位置を説明した図である。ここでは、画像データに特殊画像であるバーコード画像が含まれている例について説明する。
【0069】
図5に示すように、制御部80は、予め用紙P上において中央領域161と周辺領域162とを領域分割する境界160を設けている。そして、制御部80は、バーコード画像が、一部でも周辺領域162に入っている場合、該当領域にあると判定し、バーコード画像が、全部中央領域に入っている場合、該当領域にないと判定する。
【0070】
例えば、
図5に示したバーコード画像165は、全て周辺領域162内にあるので、該当領域にあると判定され、バーコード画像167についても、一部が周辺領域162にあるので、該当領域にあると判定される。
【0071】
一方、バーコード画像166は、全てが中央領域161にあるので、該当領域にないと判定される。
【0072】
そこで、
図4(c)に示した画像位置テーブルでは、画像位置157が該当領域にない場合、即ち、中央領域にある場合、画像位置影響度Elを小さくし、周辺領域にある場合、画像位置影響度Elを大きくするように、関連づけられている。
【0073】
図3に戻り、CPU81は、ROM82に格納された動作プログラムを実行することにより、本装置全体、すなわちサイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50と、操作パネル部70と等の動作を制御する。また、CPU81は、影響度算出部81aと、機器制御部81bとを実装する。
【0074】
影響度算出部81aは、印刷条件に基づいて、サテライト発生の影響の度合いを示す影響度を算出する。
【0075】
機器制御部81bは、影響度算出部81aにより算出された影響度が所定の閾値を越えた場合に、印刷される用紙Pにおける複数のノズル列(ここでは、2列のノズル列)と平行な画素列毎に、複数のノズル列のうち、直近の吐出時点からの経過時間が長い方から順に1列毎に吐出させるようにインクジェットヘッド110a〜110fの吐出タイミングを制御する。
【0076】
また、機器制御部81bは、インクジェットヘッド110a〜110fと用紙Pを搬送する搬送手段との間隔に応じて、ノズルから吐出された主たるインク滴に付随するインク量を少なくするようなサテライト対策波形の駆動信号をインクジェットヘッド110a〜110fに供給する。
【0077】
さらに、機器制御部81bは、インクジェットヘッド110a〜110fの複数のノズル列121,123のうち、吐出するノズル列以外のノズル列に対して、インクが吐出しない程度の駆動信号を供給する。例えば、上流側のノズル列121からブラック(K)のインクを吐出している間、下流側のノズル列123からインクを吐出しない程度の駆動信号をインクジェットヘッド110a〜110fに供給する。これにより、インクジェットヘッド110a〜110fの温度が低下しすぎることを防止することができる。
【0078】
操作パネル部70は、表示/入力パネル(図示しない)と、印刷を開始させるためのスタートキー、印刷を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部80に供給する。
【0079】
次に、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の詳細な処理手順について説明する。
【0080】
図6は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の処理手順を示したフローチャートである。
【0081】
図6に示すように、まず、制御部80のCPU81は、印刷が要求されたか否かを判定する(S110)。具体的には、操作パネル部70から印刷開始操作がされた場合、または図示しないコンピュータ装置から各種印刷条件を含む印刷ジョブを受信した場合にCPU81は、印刷が要求されたと判定する。
【0082】
ステップS110において、印刷が要求されたと判定された場合(YESの場合)、CPU81の影響度算出部81aは、該当画像があるか否かを判定する(S120)。印刷対象の画像データの中には、横線バーコードや二次元バーコード等のようなコードを表す特殊画像が含まれる場合があり、このような特殊画像が含まれる場合、サテライトが発生すると認識率が低下する。また、白抜き文字が含まれる場合、サテライトが発生すると文字が潰れる場合がある。そこで、印刷対象の画像データの中に、該当画像、即ち、サテライトの発生による画像劣化の影響が大きい特殊画像や白抜き画像が含まれるか否かを判定する。
【0083】
ステップS120において、該当画像がないと判定された場合(NOの場合)、CPU81は、高解像度モードを設定し(S130)、高解像度モードで印刷を実行する(S140)。具体的には、CPU81の機器制御部81bは、高解像度モード(ここでは、600dpi)を設定し、インクジェットヘッド110a〜110fは、主走査方向に上流側及び下流側の2列のノズル列121,123からブラック(K)のインクを吐出することにより、600(dpi)の解像度で印字する。また、インクジェットヘッド112a〜112fは、シアン(C)、マゼンダ(M)それぞれのインクを吐出することにより、300(dpi)の解像度で印字し、インクジェットヘッド114a〜114fとは、イエロー(Y)のインクを吐出することにより、300(dpi)の解像度で印字する。
【0084】
一方、ステップS120において、該当画像があると判定された場合(YESの場合)、CPU81の影響度算出部81aは、ギャップ影響度Egを算出する(S150)。ヘッドギャップは、用紙の種類により厚みが決まり、この用紙の厚みに応じて、ヘッドギャップが“a”、“b”、“c”のいずれかが設定されているので、影響度算出部81aは、設定されたヘッドギャップと、ROM82に記憶されたヘッドギャップテーブルとに基づいて、ギャップ影響度Egを算出する。
【0085】
次に、影響度算出部81aは、温度影響度Etを算出する(S160)。具体的には、影響度算出部81aは、インクジェットヘッド110a〜110fに設けられた温度計から、インクの温度を取得し、取得した温度とROM82に記憶された温度テーブルとに基づいて、温度影響度Etを算出する。
【0086】
そして、影響度算出部81aは、画像位置影響度Elを算出する(S170)。具体的には、影響度算出部81aは、印刷ジョブに含まれる該当画像の座標を取得し、該当画像が中央領域161又は周辺領域162のいずれにあるかを判定し、この判定結果と、ROM82に記憶された画像位置テーブルとに基づいて、画像位置影響度Elを算出する。
【0087】
次に、影響度算出部81aは、影響度を算出する(S180)。具体的には、影響度算出部81aは、取得したギャップ影響度Egと、温度影響度Etと、画像位置影響度Elとに基づいて、下記の(数式1)を用いて、影響度Eを算出する。
【0088】
影響度E=Eg×Et×El ・・・(数式1)
次に、影響度算出部81aは、ステップS180において算出された影響度Eが、影響度閾値Eth以上か否かを判定する(S190)。
【0089】
図7は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1のCPU81により算出された影響度Eの算出例を示した図である。
【0090】
図7に示すように、取得したギャップ影響度Egと、温度影響度Etと、画像位置影響度Elとを、上記(数式1)に代入することにより、影響度Eを算出している。
【0091】
影響度閾値Ethは、利用者等により予め適切な値を設定しておく必要があり、ここでは、影響度閾値Ethは“1.5”として設定されている。
【0092】
即ち、
図7に示す171,173に示した影響度Eは、影響度閾値Ethの値である“1.5”より小さいので、CPU81は、影響度Eが、影響度閾値Eth未満であると判定し、
図7に示す172に示した影響度Eは、影響度閾値Ethの値である“1.5”より大きいので、CPU81の機器制御部81bは、影響度Eが、影響度閾値Eth以上であると判定する。
【0093】
ステップS190において、影響度Eが影響度閾値Eth以上であると判定された場合(YESの場合)、CPU81の機器制御部81bは、低画解像度モードを設定する(S200)。ここで、低画解像度モードとは、印刷される用紙Pにおける画素列毎に、インクジェットヘッド110a〜110fに配置された2列のノズル列121,123のうち、1列毎に交互にノズル列から吐出させるように、上流側のノズル列121又は下流側のノズル列123から交互にブラック(K)のインクを吐出することにより、300dpiで印刷するモードのことである。
【0094】
次に、CPU81の機器制御部81bは、ヘッドギャップがヘッドギャップ閾値を越えたか否かを判定する(S210)。例えば、ヘッドギャップ閾値をHthとしたときに、予め、ヘッドギャップa,b,cと、ヘッドギャップ閾値Hthとの間で、a<b<Hth<cの関係が成り立つように、設定しておく。そして、ヘッドギャップが、“c”である場合、CPU81の機器制御部81bは、ヘッドギャップがヘッドギャップ閾値Hthを越えたと判定し、ヘッドギャップが、“a”又は“b”である場合、CPU81は、ヘッドギャップがヘッドギャップ閾値Hthを越えていないと判定する。
【0095】
ステップS210において、ヘッドギャップがヘッドギャップ閾値Hthを越えていないと判定した場合(NOの場合)、CPU81の機器制御部81bは、インクジェットヘッド110a〜110fへの駆動波形として通常波形を選択し、低画解像度モードで印刷する(S220)。
【0096】
図8(a)は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の通常波形の駆動信号とこれにより駆動されたインクジェットヘッドのインク室内におけるインクの圧力変化との関係を示す説明図である。
図8(a)において、実線は駆動信号の波形を示し、破線はインク室内におけるインクの圧力を示す。また、
図8(b)は、
図8(a)の駆動信号によってインクジェットヘッドを駆動した場合に吐出されるインクの液滴形状の変遷を示す説明図である。
【0097】
インクジェットヘッドに、
図8(a)の実線で示す駆動信号が供給されると、
図8(a)における時刻t1において、インク室内の電極に負電圧(−VA)の駆動パルスP1が印加される。すると、インク室の容積が拡大する。この結果、インク室内のインクの圧力が減少し、図示しないインクタンクからインク室にインクが流れ込む。
【0098】
駆動パルスP1の印加時間は時刻t1から時刻t2までの1ALである。AL(Acoustic Length )は、容積が拡大したインク室にインクが流入することによる圧力波が、インク室の全域を伝播してノズルに達するまでの時間、即ち、インク室の音響的共振周期の1/2である。このALは、インクジェットヘッドの構造や、インクの密度等に依存して決まるものである。
【0099】
続いて、
図8(a)における時刻t2において、インク室の電極に印加する電圧が接地電位に戻される。すると、インク室内のインクが加圧され、対応するノズルからインクが吐出される。
【0100】
インク室の電極に印加する電圧を接地電位に戻してから1.0ALが経過すると、時刻t3から時刻t4までの1.0ALの期間、インク室の電極に正電圧(VA)の駆動パルスP2が印加される。これにより、インク室の容積が縮小する。
【0101】
駆動パルスP2の印加後、時刻t4から時刻t5の間においてインク室の電極に印加する電圧を接地電位とする。
【0102】
このように、通常波形は、インク室の容積を拡大させた後、元の容積に戻し、その後容積を縮小させてから再度元の容積に戻すように電極に印加する電圧の波形である。
【0103】
CPU81は、インクジェットヘッド110a〜110fに配置された2列のノズル列121,123のうち、1列毎に交互に吐出させるように、通常波形の駆動波形を用いて、上流側のノズル列121又は下流側のノズル列123から交互にブラック(K)のインクを吐出することにより、300dpiで印刷する。
【0104】
図6に戻り、ステップS210において、ヘッドギャップがヘッドギャップ閾値Hthを越えたと判定した場合(YESの場合)、CPU81の機器制御部81bは、インクジェットヘッド110a〜110fへの駆動波形としてサテライト対策波形を選択し、低画解像度モードで印刷する(S230)。
【0105】
図9(a)は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1のサテライト対策波形の駆動信号とこれにより駆動されたインクジェットヘッドのインク室内におけるインクの圧力変化との関係を示す説明図である。
図9(a)において、実線は駆動信号の波形を示し、破線はインク室内におけるインクの圧力を示す。また、
図9(b)は、
図9(a)の駆動信号によってインクジェットヘッドを駆動した場合に吐出されるインクの液滴形状の変遷を示す説明図である。
【0106】
このサテライト対策波形を用いる場合、インクジェットヘッドに、
図9(a)の実線で示す駆動信号が供給されると、
図9(a)における時刻t11において、インク室の電極に正電圧(VA)の駆動パルスP0が印加される。これにより、インク室の容積が縮小する。
【0107】
図9(a)における時刻t12において、インク室の電極に印加する電圧が接地電位に戻され、時刻t12の直後の時刻t13において、インク室の電極に負電圧(−VA)の駆動パルスP11が印加される。これにより、インク室の容積が拡大し、この結果、インク室内のインクの圧力が減少し、図示しないインクタンクからインク室にインクが流れ込む。
【0108】
なお、サテライト対策波形の駆動信号における駆動パルスP11の印加時間は、通常波形の駆動信号における駆動パルスP1の場合と同様に、時刻t13から時刻t14までの1.0ALである。
【0109】
続いて、
図9(a)における時刻t14において、インク室の電極に印加する電圧が接地電位に戻される。するとインク室内のインクが加圧され、対応するノズルからインクが吐出される。
【0110】
インク室の電極に印加する電圧を接地電位に戻してから0.4ALが経過すると、
図9(a)における時刻t15から時刻t16までの0.6ALの期間、インク室の電極に負電圧(−VA)の駆動パルスP12が印加される。これにより、インク室の容積が拡大する。
【0111】
続いて、
図9(a)における時刻t16において、インク室の電極に印加する電圧が接地電位に戻され、時刻t16からごく短時間後の時刻t17から、0.75AL後の時刻t18までの期間、インク室の電極に正電圧VBの駆動パルスP13が印加される。これにより、インク室の容積が縮小する。
【0112】
インク室の電極に正電圧VBの駆動パルスP13が印加される前、インク室内のインク圧の減少の度合いは、インク室の電極に対する駆動パルスP12の印加によって増幅されている。そこで、駆動パルスP13を印加してインク室内の容積を縮小させて加圧力を発生させることで、インク吐出後にサテライトの発生抑制のため減少の度合いが増幅されたインク室内の圧力変動周期を短くし、インク室内の圧力が通常圧力に戻る時間を早め、更に、1画素に複数のドロップを吐出するマルチドロップに備えて駆動パルスP0のような役割を担うことができる。
【0113】
駆動パルスP13の印加後、時刻t18から時刻t19の間においてインク室の電極に印加する電圧を接地電位とする。
【0114】
このように、サテライト対策波形は、インク室の容積を拡大させた後、元の容積に戻し、その後容積を再度拡大させてから再度元の容積に戻し、その上で、容積を縮小させてから再び元の容積に戻すように電極に印加する電圧の波形である。
【0115】
上述した通常波形の駆動信号では、
図8(a)の破線で示すように、インク室の電極に対する駆動パルスP1の印加開始により負圧となったインク室内のインクの圧力が、負圧のピークを越えて増加に転じて通常圧力を越え正圧のピークに達する時刻t2において、駆動パルスP1の印加が終了する。これにより、インクの吐出が開始される。そして、インクが吐出されてインク室内に生じた減圧によりインク室内のインクの圧力が、減少に転じて通常圧力を越え負圧のピークに達する時刻t3において、駆動パルスP2の印加が開始される。これにより、インク吐出後のインク室内のインクに加圧力が発生してインク圧の減圧が抑えられ、インクの残留振動が抑制される。このように残留振動を抑制させることで、前述のように、次回の吐出動作を安定して行うことができる。
【0116】
一方、ノズルから吐出される主たるインク滴に付随するインク量を少なくするようなサテライト対策波形の駆動信号では、
図9(a)の破線に示すように、インク室の電極に対する駆動パルスP0の印加開始により正圧となったインク室内のインクの圧力は、インク室に対応するノズルからインクを吐出させるには不十分な程度のものである。即ち、駆動パルスP0は、次の駆動パルスP11をインク室の電極に対して印加するのに伴いインク室の容積が拡大してインク室内のインクに負圧が生じるときに、大きな負圧が生じるよう反動を付けるためのものである。
【0117】
そして、インク室の電極に対する駆動パルスP0の印加開始により正圧となったインク室内のインクの圧力が、正圧のピークを越えて減少に転じて通常圧力に戻る時刻t12において、駆動パルスP0の印加が終了する。続いて、その直後の時刻t13において、インク室の電極に対する駆動パルスP11の印加が開始される。
【0118】
これにより、駆動パルスP0の印加によって正圧となった反動でインク室内のインクの圧力に大きな負圧が生じる。さらに、インク室の電極に対する駆動パルスP11の印加開始により負圧となったインク室内のインクの圧力が、負圧のピークAを越えて増加に転じ、通常圧力を越え正圧のピークBに達する時刻t14において、駆動パルスP11の印加が終了する。これにより、インクの吐出が開始される。
【0119】
このように、時刻t13においてインク室の電極に負電圧(−VA)の駆動パルスP11を印加するのに先立って、上述した時刻t11からt12の期間、正電圧(VA)の駆動パルスP0をインク室の電極に印加しておくことで、インク室内のインクに生じる負圧のピークAが増大される。したがって、時刻t13以後に、負圧のピークAを越えたインク室内のインクの圧力が増加に転じ通常圧力を経て正圧側に変化する際に、負圧のピークAが増大された反動で、駆動パルスP0を前もって印加しない場合に比べて、インク圧の増加の度合いが大きくなる。したがって、時刻t14に到来するインク圧の正圧のピークBが高くなり、インクの吐出性能が向上することになる。
【0120】
その後、インクが吐出されてインク室内に生じた負圧によりインク室内のインクの圧力が、減少に転じて通常圧力に戻る時刻t15において、インク室の電極に対する駆動パルスP12の印加が開始される。これにより、インク室内の減圧の度合いが増幅される。
【0121】
減少するインク室内のインクの圧力が負圧のピークCとなる時点におけるインクの液滴は、
図9(b)の液滴形状145示すように、先端が僅かに膨らんだ楕円の先頭部分に後尾部分が続く形状となる。この液滴形状145を、
図8(a)の通常波形による駆動信号でインクを吐出した場合の対応する時点における、
図8(b)に示した液滴形状141と比較すると、通常波形に比べてサテライト対策波形の方が先頭部分の膨らみが細くなっている。これは、インクの吐出開始後におけるインク室内へのインク引き込み力の増加によるものである。これにより、インク吐出時のサテライトの発生が抑えられ、印刷品質の低下や装置の汚損を抑制することができる。
【0122】
また、駆動パルスP12の印加によりインク圧の減圧の度合いを増幅させても、その前の段階で、駆動パルスP0とそれに続く駆動パルスP11との印加によりインク圧の負圧のピークAとそれに続く正圧のピークBとを増大させておくので、インクを適正に吐出させることができる。
【0123】
そして、インク室の電極に対する駆動パルスP12の印加開始後、インク室内のインクの圧力が、負圧のピークCを越えて増加に転じて通常圧力に戻る時刻t16の直後の時刻t17において、インク室の電極に対する駆動パルスP13の印加が開始される。この駆動パルスP13の印加により、インク室に対応するノズルにおいて、インクのメニスカスの振動が1回発生することになる。即ち、駆動パルスP13の印加によりノズルからインクが吐出されることはない。
【0124】
増加するインク室内のインクの圧力が正圧のピークDとなる時点におけるインクの液滴を、
図9(b)の液滴形状146に示す。この液滴形状146を、
図8(a)の通常波形による駆動信号でインクを吐出した場合の対応する時点における、
図8(b)に示す液滴形状142と比較すると、通常波形に比べてサテライト対策波形の方が後尾部分の太さが細くなっている。これは、インクの吐出開始後におけるインク室内へのインク引き込み力の増加により細くなったインクの尾が、その後さらに伸びたことによるものである。さらに、駆動パルスP13の印加開始から0.6AL後の時刻t18において駆動パルスP13の印加を終了することで、正圧のピークDを越えて減少に転じたインク室内のインクの圧力が通常圧力に戻るタイミングが早まる。これにより、駆動パルスP12の印加による負圧のピークCの増大によって変動の振幅が増したインク圧の変動周期を短縮し、次のインク吐出動作の開始を早めることができる。
【0125】
サテライト対策波形の駆動信号における駆動パルスP13の印加終了後におけるインクの液滴形状を、
図9(b)の液滴形状147に示す。この液滴形状147を、
図8(a)の通常波形による駆動信号でインクを吐出した場合の対応する時点における、
図8(b)に示す液滴形状143と比較すると、通常波形に比べてサテライト対策波形の方が後尾部分の太さが明らかに細くなっている。これも、インクの吐出開始後におけるインク室内へのインク引き込み力の増加によるものである。このようにインクの液滴の後尾部分の太さが細くなることで、その後におけるサテライトの発生が抑制される。具体的には、インクの液滴の後尾部分が細くなることで、サテライトとなるインクの液量が減り、後尾部分が分断されて発生するサテライトの粒径が小さくなる。したがって、記録紙上におけるサテライトの存在が目立たなくなり、視覚的にもサテライトの発生が抑制されたことを実感できるようになる。
【0126】
ステップS230では、CPU81は、印刷される用紙Pにおける画素列毎に、インクジェットヘッド110a〜110fに配置された2列のノズル列のうち、1列毎に交互に吐出させるように、上述したサテライト対策波形を用いて、上流側ノズル又は下流側ノズルから交互にブラック(K)のインクを吐出することにより、300dpiで印刷する。
【0127】
図10は、ステップS220又はS230において、低解像度モード(300dpi)で印刷した場合におけるインクの吐出状態を説明した図である。
図10(a)は、上流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図であり、
図10(b)は、下流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図であり、
図10(c)は、上流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図である。なお、
図10は、各ノズル及び用紙Pを模式的に示しており、ここでは、説明上、1つのインクジェットヘッドで用紙Pに印刷するように記載している。
【0128】
図10(a)に示すように、低解像度モード(300dpi)が設定されている場合、CPU81は、インクジェットヘッド110a〜110fに配置された2列のノズル列121,123のうち、いずれか一方からインクを吐出させる。ここでは、まず、上流側のノズル列121から、印刷される用紙Pにおける画素列201に、ブラック(K)のインクを吐出することにより、用紙Pに対して300dpiで印刷している。
【0129】
そして、
図10(b)に示すように、次の吐出タイミング分だけ用紙PがX1方向に搬送された後、直近の吐出時点からの経過時間が長い下流側のノズル列123から、搬送方向における画素列201の下流側の画素列203に、ブラック(K)のインクを吐出することにより、用紙Pに対して300dpiで印刷する。
【0130】
さらに、
図10(c)に示すように、次の吐出タイミング分だけ用紙PがX1方向に搬送された後、直近の吐出時点からの経過時間が長い上流側のノズル列121から、搬送方向における画素列203の下流側の画素列205に、ブラック(K)のインクを吐出することにより、用紙Pに対して300dpiで印刷する。
【0131】
このように、低解像度モード(300dpi)が設定されている場合、CPU81は、印刷される用紙Pにおける画素列毎に、インクジェットヘッド110a〜110fに配置された2列のノズル列121,123のうち、複数のノズル列のうち直近の吐出時点からの経過時間が長い方から順に1列毎に交互にノズル列から吐出させるように、上流側のノズル列121又は下流側のノズル列123から交互にブラック(K)のインクを吐出することにより、300dpiで印刷する。
【0132】
図11は、比較のため、ステップS140において、高解像度モード(600dpi)で印刷した場合におけるインクの吐出状態を説明した図である。
図11(a)は、上流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図であり、
図11(b)は、下流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図であり、
図11(c)は、上流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図であり、
図11(d)は、下流側ノズルから吐出したときの吐出状態を示した説明した図である。
【0133】
図11(a)に示すように、高解像度モード(600dpi)が設定されている場合、CPU81は、用紙Pの1画素列において、インクジェットヘッド110a〜110fに配置された2列のノズル列121,123の両方からインクを吐出させる。ここでは、まず、上流側のノズル列121から、印刷される用紙Pにおける画素列301に、ブラック(K)のインクを吐出する。
【0134】
そして、
図11(b)に示すように、用紙Pが搬送されて、印刷される用紙Pにおける画素列301の上方に下流側のノズル列123が位置したときに、下流側のノズル列123から、画素列301に、ブラック(K)のインクを吐出することにより、用紙Pに対して600dpiで印刷する。
【0135】
さらに、
図11(c)に示すように、次の吐出タイミング分だけ用紙PがX1方向に搬送され、搬送方向における画素列301の下流側の画素列303の上方に上流側のノズル列121が位置したときに、上流側のノズル列121から、画素列203にブラック(K)のインクを吐出する。
【0136】
そして、
図11(d)に示すように、用紙Pが搬送されて、印刷される用紙Pにおける画素列303の上方に下流側のノズル列123が位置したときに、下流側のノズル列123から、画素列303に、ブラック(K)のインクを吐出することにより、用紙Pに対して600dpiで印刷する。
【0137】
このように、
図10に示した低解像度モード(300dpi)で印刷している場合、
図11に示した高解像度モード(600dpi)で印刷している場合と比較して、消費電力を低減することができると共に、ドット数が少ない分、単位面積当たりに吐出するドット数が少ないので、インク滴に付随するサテライトも少なくなり良好な印刷画像を得ることができる。なお、低解像度モード(300dpi)で印刷する場合、画像品質向上のために、高解像度モード(600dpi)で印刷する場合と比較して1画素当たりのドロップ数を上げるようにしてもよい。
【0138】
また、上流側のノズル列121又は下流側のノズル列123から交互にブラック(K)のインクを吐出するので、高解像度モード(600dpi)で印刷している場合と比較して発熱量が低いので、用紙Pを印刷する周期である駆動周期を短くすることができる。具体的には、高解像度モード(600dpi)で印刷している場合、発熱量が多いのでインクの温度が上昇しやすい。そのため、インクの温度が上昇過ぎないように、所定の時間間隔を空けて、用紙Pを搬送し印刷する必要がある。
【0139】
本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1では、上流側のノズル列121又は下流側のノズル列123から交互にブラック(K)のインクを吐出するので、発熱量が少なくインクの温度が上昇し難いので、用紙Pを搬送する間隔を短くすることができ、駆動周期を短くすることができる。また、上流側のノズル列121または下流側のノズル列123のいずれか一方のみで印刷する場合に比べても発熱量が少なくインクの温度が上昇し難いので、用紙Pを印刷する周期を早めることができる。
【0140】
なお、本発明の実施例1では、それぞれ2列に配置されたノズル列を有するインクジェットヘッド110,112,114を備えたインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明したが、ノズル列は2列に限らず、3列以上であってもよい。
【0141】
例えば、上流側のノズル列121と下流側のノズル列123との間に中間位置のノズル列が設けられている場合、上流側のノズル列121から、ブラック(K)のインクを吐出し、次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、直近の吐出時点からの経過時間が長い中間位置のノズル列からブラック(K)のインクを吐出し、さらに次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、直近の吐出時点からの経過時間が長い下流側のノズル列123から、ブラック(K)のインクを吐出することにより、用紙Pに対して300dpiで印刷するようにしてもよい。これにより、ノズル列が、3列以上である場合においても、1列毎に順にノズル列から吐出させることができる。
【0142】
さらに、ノズル列が3列以上ある場合、ここでは、印刷される用紙Pにおける画素列毎に、3列のノズル列のうち直近の吐出時点からの経過時間が長い方から順に1列毎に吐出させるようにインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するようにしたが、これに限らない。
【0143】
印刷される用紙Pにおける画素列毎に、3列のノズル列のうち2列のノズル列において1列毎に順に吐出させるようにインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するようにしてもよい。
【0144】
例えば、上流側のノズル列と、中間位置のノズル列と、下流側のノズル列とが設けられていた場合、上流側のノズル列からブラック(K)のインクを吐出し、次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、中間位置のノズル列からブラック(K)のインクを吐出し、さらに次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、上流側のノズル列からブラック(K)のインクを吐出するようにする。即ち、下流側のノズル列を使用することなく、インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御する。
【0145】
これにより、例えば、下流側のノズル列のインク詰まりなどが発生した場合に、残りのノズル列から吐出することにより印刷を継続ことができる。
【0146】
さらに、ノズル列毎にインク温度を測定する温度計を設け、印刷される用紙Pにおける画素列毎に、3列のノズル列のうち、温度計により測定されたインク温度が所定の閾値を越えない範囲内で、一つのノズル列から連続して吐出し、温度計により測定されたインク温度が所定の閾値を越えた場合に、その他のノズル列から順にインクを吐出するようにインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するようにしてもよい。
【0147】
例えば、上流側のノズル列と、中間位置のノズル列と、下流側のノズル列とが設けられていた場合、上流側のノズル列からブラック(K)のインクを吐出し、次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、上流側のノズル列に対応するインク温度が所定の閾値を越えていない場合、上流側のノズル列からブラック(K)のインクを継続して吐出する。
【0148】
一方、上流側のノズル列に対応するインク温度が所定の閾値を越えた場合に、中間位置のノズル列からブラック(K)のインクを吐出する。
【0149】
そして、次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、中間位置のノズル列に対応するインク温度が所定の閾値を越えていない場合、中間位置のノズル列からブラック(K)のインクを継続して吐出する。
【0150】
一方、中間位置のノズル列に対応するインク温度が所定の閾値を越えた場合に、下流側のノズル列からブラック(K)のインクを吐出する。
【0151】
そして、次の吐出タイミング分だけ用紙Pが搬送された後、下流側のノズル列に対応するインク温度が所定の閾値を越えていない場合、下流側のノズル列からブラック(K)のインクを継続して吐出する。
【0152】
一方、下流側のノズル列に対応するインク温度が所定の閾値を越えた場合に、上流側のノズル列からブラック(K)のインクを吐出する。このように、3列のノズル列のうち、温度計により測定されたインク温度が所定の閾値を越えない範囲内で、一つのノズル列から連続して吐出するようにインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するようにしてもよい。
【0153】
(実施例2)
本発明の実施例1では、取得したギャップ影響度Egと、温度影響度Etと、画像位置影響度Elとに基づいて、影響度Eを算出するインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明した。
【0154】
本発明の実施例2では、さらに、該当画像影響度に基づいて、影響度Eを算出するインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明する。
【0155】
図12は、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1の処理手順を示したフローチャートである。なお、
図12に示したフローチャートに示した処理ステップのうち、
図6に示したフローチャートと同じ処理ステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略し、本発明の実施例2に特有の処理ステップのみ説明する。
【0156】
図12に示すように、影響度算出部81aは、温度影響度Etを算出すると(S160)、該当画像影響度Epを算出する(S310)。
【0157】
図13(a)は、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1が備える制御部80のROM82に記憶された、該当画像の存在と、該当画像影響度Epとの関係を示す該当画像テーブルの一例を示した図である。
【0158】
図13(a)に示すように、カラム名“該当画像”(符号181)と、カラム名“該当画像影響度Ep”(符号182)とが関連付けられて該当画像テーブルとして記憶されている。ここで、該当画像181とは、上述したように、例えば、サテライトの発生による画像劣化の影響が大きい特殊画像や白抜き画像のことを示している。この該当画像が含まれている場合、サテライトへの影響度は大きいため、該当画像181が、“ない”場合より、“ある”場合の方が、サテライト発生の影響の度合いを示す該当画像影響度Ep(符号182)の値が高くなるように、関連づけられている。
【0159】
そこで、影響度算出部81aは、印刷ジョブの画像データに該当画像が含まれるか否かを判定し、この判定結果と、ROM82に記憶された該当画像テーブルとに基づいて、該当画像影響度Epを算出する。
【0160】
図12に戻り、影響度算出部81aは、画像位置影響度Elを算出する(S330)。
【0161】
図13(b)は、画像位置と画像位置影響度Elとの関係を示す画像位置テーブルの一例を示した図である。
【0162】
図13(b)に示すように、カラム名“画像位置”(符号157)と、カラム名“画像位置影響度El”(符号158)とが関連付けられて画像位置テーブルとして記憶されている。用紙P上の最も近い端部の方向に向かって、用紙Pを回り込むように気流が発生するので、印刷される画像が、用紙Pの端部に近いほど、サテライトの影響が大きい。
【0163】
そこで、画像が中央領域にあるか、周辺領域にあるかにより、画像位置影響度El(符号:158)を決定する。さらに、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1が備えるROM82に記憶された画像位置テーブルでは、該当画像影響度Epが“1”である場合、即ち、印刷ジョブの画像データに該当画像が含まれない場合には、サテライトの影響は小さいので、画像が該当以外か該当領域かにかかわらず、画像位置影響度Elの値を“1”とするように、関連づけられている。
【0164】
影響度算出部81aは、印刷ジョブに含まれる該当画像の座標を取得し、該当画像が中央領域161又は周辺領域162のいずれにあるかを判定し、この判定結果と、該当画像影響度Epの値と、ROM82に記憶された画像位置テーブルとに基づいて、画像位置影響度Elを算出する。
【0165】
次に、影響度算出部81aは、影響度を算出する(S330)。具体的には、影響度算出部81aは、取得したギャップ影響度Egと、温度影響度Etと、該当画像影響度Epと、画像位置影響度Elとに基づいて、下記の(数式2)を用いて、影響度Eを算出する。
【0166】
影響度E=Eg×Et×Ep×El ・・・(数式2)
図14は、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1のCPU81により算出された影響度Eの算出例を示した図である。
【0167】
図14に示すように、取得したギャップ影響度Egと、温度影響度Etと、該当画像影響度Epと、画像位置影響度Elとを、上記(数式2)に代入することにより、影響度Eを算出している。
【0168】
影響度閾値Ethは、利用者等により予め適切な値を設定しておく必要があり、ここでは、影響度閾値Ethは“2.0”として設定されている。
【0169】
即ち、
図13に示す174,176に示した影響度Eは、影響度閾値Ethの値である“2.0”より小さいので、CPU81は、影響度Eが、影響度閾値Eth未満であると判定し、
図13に示す175に示した影響度Eは、影響度閾値Ethの値である“2.0”より大きいので、CPU81は、影響度Eが、影響度閾値Eth以上であると判定する。
【0170】
以上のように、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1によれば、さらに、該当画像影響度Epに基づいて、影響度Eを算出するので、該当画像影響度Epを含めたより精度の高い影響度Eを算出することができる。
【0171】
なお、本発明の実施例1及び実施例2では、用紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に配列されたインクジェットヘッドを有し、搬送経路上で搬送された用紙に対して、画像データに基づいてインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して印刷するライン型のインクジェット印刷装置を例に挙げて説明したが、これに限らない。
【0172】
用紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に移動するインクジェットヘッドを有し、搬送された用紙に対して、画像データに基づいてインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して印刷するシリアル型のインクジェット印刷装置でもよい。
【0173】
シリアル型のインクジェット印刷装置では、用紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に移動する1つのインクジェットヘッドに、用紙の搬送方向(副走査方向)に対して平行になるように複数のノズル列を配列されており、複数のノズル列毎に副走査方向のノズルの位置をそれぞれずらして設けられ、搬送された用紙が停止しているときに、インクジェットヘッドを主走査方向に移動しながら、用紙に対して複数のノズル列のうち少なくとも1列のノズル列からインクを吐出する。
【0174】
このようなシリアル型のインクジェット印刷装置の場合においても、影響度算出部81aにより算出された影響度が所定の閾値を越えた場合に、複数のノズル列のうち、1列毎に交互に吐出させるようにインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するので、サテライト発生の影響度合いに応じた適切な解像度を選択し、生産性を低下させることなくサテライト発生を低減して印刷を行うことができる。
【0175】
即ち、インクジェットヘッドは、複数のノズル列が平行に配列され、用紙Pに対して相対移動しながら複数のノズル列のうち少なくとも1列のノズル列からインクを吐出するように構成されていればよい。