(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工土壌培地の開発にあたっては、天然土壌と同等の植物育成力を達成しながら、保水性や通気性を適切に維持できる機能が求められる。特に、通気性を維持しながら高い保水性を実現することは、植物に対する水遣り回数の低減や、植物の種類に応じた最適な栽培スケジュールを実現するために重要となる。人工土壌培地の通気性及び保水性は、人工土壌粒子間に形成される隙間と深く関係し、この隙間を最適な状態に維持することで、通気性を維持しながら高い保水性を実現することができる。また、人工土壌粒子は、人工土壌粒子内に水を保持するよう構成することができるため、人工土壌粒子の保水力を調整することで、天然土壌にはないさらに高い保水性を備えた付加価値の高い人工土壌培地を実現することができる。
【0007】
特許文献1は、保水剤としてゼオライトを分散混合させたものであるが、ゼオライトはダマになり易いため、適切な通気性を維持できるとは限らない。また、水遣り等の作業中に締め固め等が生じると、人工土壌の通気性及び保水力が低下する虞がある。
【0008】
特許文献2は、粒状コンクリート破砕物と粒状ヤシチップとを混合させることにより通気性と保水性とを確保しているが、保水性は、粒状ヤシチップの水分吸放出特性に依存しているため、人工土壌全体としては一定の保水性しか維持することができず、高い保水性を実現することは困難である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数種の人工土壌粒子を含む人工土壌培地において、通気性を維持しながら高い保水性を備えることにより、栽培対象の植物に長期に亘って持続的に水分を供給することができる人工土壌培地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌培地の特徴構成は、
水分吸放出特性及びサイズが異なる第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子とを含む人工土壌培地であって、
前記第一人工土壌粒子は、前記第二人工土壌粒子より前記水分吸放出特性が高く、且つ大きいサイズに構成されていることにある。
【0011】
本構成の人工土壌培地によれば、上記構成を備えるため、各種の人工土壌粒子の水分放出特性が重畳することになり、夫々の人工土壌粒子の水分放出特性が相互に補完され、ブロードな水分放出特性が得られる。また、本構成の人工土壌培地は、第一人工土壌粒子間に形成される空間に第二人工土壌粒子が密に充填されるため、人工土壌培地に効率的に水を保持することができる。その結果、単一の人工土壌粒子からなる人工土壌培地と比較して、栽培対象の植物に長期に亘って持続的に水分を供給することが可能となり、水遣りの頻度を低減することができる。
【0012】
本発明に係る人工土壌培地において、
前記第一人工土壌粒子は繊維を集合してなる繊維塊状体として構成され、前記第二人工土壌粒子はフィラーを集合してなる多孔質体として構成されることが好ましい。
【0013】
本構成の人工土壌培地によれば、第一人工土壌粒子は繊維を集合してなる繊維塊状体として構成されることから、高い水分吸放出特性を備え、第二人工土壌粒子はフィラーを集合してなる多孔質体として構成されることから、緩やかな水分吸放出特性を備えている。本構成の人工土壌培地は、夫々の人工土壌粒子に効果的に水を保持することができ、栽培対象の植物に長期に亘って持続的に水分を供給することが可能となる。この結果、水遣りの頻度を低減することができる。
【0014】
本発明に係る人工土壌培地において、
前記第一人工土壌粒子の粒径と、前記第二人工土壌粒子の粒径との比率が、2:1〜32:1であることが好ましい。
【0015】
本構成の人工土壌培地によれば、上記構成を備えるため、人工土壌培地の十分な通気性を確保しながら、第一人工土壌粒子間に形成される空間に第二人工土壌粒子をさらに密に充填させることができる。その結果、人工土壌培地の十分な通気性を確保しながら、高い保水性を実現することができる。
【0016】
本発明に係る人工土壌培地において、
前記第一人工土壌粒子と前記第二人工土壌粒子との混合比率が、70:30〜30:70であることが好ましい。
【0017】
本構成の人工土壌粒子によれば、上記構成を備えるため、各種人工土壌粒子の水分吸放出特性が効果的に重畳することになり、夫々の人工土壌粒子の水分吸放出特性が効果的に補完され、さらにブロードな水分放出特性が得られる。その結果、栽培対象の植物に長期に亘って持続的に水分を供給することが可能となり、水遣りの頻度を大幅に低減することができる。
【0018】
本発明に係る人工土壌培地において、
前記第一人工土壌粒子及び前記第二人工土壌粒子の少なくとも何れか一方にイオン交換能を付与してあることが好ましい。
【0019】
本構成の人工土壌培地によれば、上記人工土壌粒子の少なくとも何れか一方にイオン交換能を付与してあることから優れた保肥性を示し、栽培対象の植物に対して養分を適切に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る人工土壌培地に関する実施形態を
図1及び
図2に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0022】
<人工土壌培地>
図1は、本発明の実施形態である二種類の人工土壌粒子50a,50bを含む人工土壌培地100を概念的に示した説明図である。
図1では、人工土壌粒子50bの構造は簡略化して示してある。
図2は、人工土壌培地100を構成する人工土壌粒子50a,50bの概念図である。人工土壌粒子50は、繊維1を集合して繊維塊状体とした第一人工土壌粒子50aと、フィラー2を集合して多孔質体とした第二人工土壌粒子50bとを含む。人工土壌培地100は、異なる水分放出特性を備えた2種類の人工土壌粒子50a,50bにより構成されている。ここで、「水分吸収特性」及び「水分放出特性」とは、水分吸収量、水分吸収タイミング、水分放出量、水分放出タイミング、保水量、含水量等の水分に関連する物理量や時間で表される状態であり、本明細書では、この「水分吸収特性」及び「水分放出特性」を「水分吸放出特性」と規定する。第一人工土壌粒子50aは、繊維塊状体であるため、高い水分吸放出特性を備えている。第一人工土壌粒子50aは、人工土壌培地100中に存在する水を速やかに吸収し、人工土壌粒子間に形成される隙間3に存在する水の量が少なくなると、速やかに水を人工土壌粒子50a外に放出する。これに対して、第二人工土壌粒子50bは、緩やかな水分吸放出特性を備えている。第二人工土壌粒子50bは多孔質体であるため、人工土壌培地100中に存在する水を多孔質体の孔に徐々に吸収し、人工土壌粒子間に形成される隙間3に存在する水の量が少なくなると、水を多孔質体の孔の水の保持能力が強いため徐々に水分を放出する。つまり、人工土壌培地100は、土壌の含水量が多い場合は、繊維塊状体である第一人工土壌粒子50aが速やかに水を吸収し、人工土壌粒子50aの保水量が多くなると、多孔質体である第二人工土壌粒子50bが徐々に水を吸収する。これにより、人工土壌粒子間に形成される隙間3の気相を確保することができる。一方、土壌の含水量が少ない場合は、繊維塊状体である第一人工土壌粒子50aが速やかに水を放出し、第一人工土壌粒子50aの保持している水の量が少なくなると、多孔質体である第二人工土壌粒子50bに保持されている水が第二人工土壌粒子50b外に徐々に放出される。従って、本発明の人工土壌培地100は、非常にブロードな水分吸放出特性を備えている。
【0023】
人工土壌培地100は、
図1に示すように、第一人工土壌粒子50aの粒径が、第二人工土壌粒子50bの粒径より大きくなるように設定されている。これにより、第一人工土壌粒子50a間に、第二人工土壌粒子50bが密に充填される。一般に、天然土壌は、土壌粒子間に隙間を有しており、当該隙間が気相率に関係する。隙間のサイズが大きくなると、気相率は高くなるが、水の保持能力は低下し、植物の利用できる水が少なくなる傾向がある。一方、隙間のサイズが小さくなると、水の保持能力は高くなるが、気相率が低下して、植物の根腐れが発生する虞がある。これに対して、人工土壌培地100は、人工土壌粒子50間の隙間3のサイズを小さく設定しても、人工土壌粒子50自体に気体と水分とを保持させることができるため、天然土壌ほど気相率が低下することはない。また、人工土壌粒子50間に形成される隙間3が小さくなれば、毛細管現象により隙間3自体にも一定の水が保持されることになり、人工土壌培地100全体の保水力は更に高まることになる。
【0024】
第一人工土壌粒子50aの粒径と、第二人工土壌粒子50bの粒径との比率は、好ましくは2:1〜32:1であり、より好ましくは2:1〜7:1である。第一人工土壌粒子50aの粒径と第二人工土壌粒子50bの粒径との比率が、2:1より第二人工土壌粒子50bの方を大きくなるように設定すると、人工土壌粒子50間に形成される隙間3が大きくなり過ぎて十分な保水性が得られず、栽培植物の成長に悪影響が及ぶ虞がある。一方、第一人工土壌粒子50aの粒径と第二人工土壌粒子50bの粒径との比率が、32:1より第二人工土壌粒子50bの方を小さくなるように設定すると、人工土壌粒子50が密に充填され過ぎて、通気性が悪くなり、栽培植物の根腐れが発生する虞がある。
【0025】
第一人工土壌粒子50aと第二人工土壌粒子50bとの混合比率は、好ましくは70:30〜30:70であり、より好ましくは70:30〜50:50である。第一人工土壌粒子50aと第二人工土壌粒子50bとの混合比率が、70:30より第二人工土壌粒子50bの比率を少なくなるように設定すると、人工土壌粒子50間に形成される隙間3が大きくなり過ぎて十分な保水性が得られず、栽培植物の成長に悪影響が及ぶ虞がある。一方、第一人工土壌粒子50aと第二人工土壌粒子50bとの混合比率が、30:70より第二人工土壌粒子50bの比率を多くなるように設定すると、人工土壌粒子50が密に充填され過ぎて、通気性が悪くなり、栽培植物の根腐れが発生する虞がある。
【0026】
〔第一人工土壌粒子〕
図2(a)の第一人工土壌粒子50aは、繊維塊状体として構成される。繊維塊状体は、複数本の繊維1を集合させたものである。繊維塊状体を構成する繊維1の間には、空隙6が形成されている。繊維塊状体は、空隙6に水分を保持することができる。従って、繊維塊状体の空隙6の状態は、繊維塊状体の保水性に関係する。空隙6の状態は、繊維塊状体を形成する際の繊維1の使用量(密度)、繊維1の種類、太さ、長さ等を変更することにより調整可能である。なお、繊維1のサイズは、太さが1〜200μmのものが好ましく、長さが0.01〜10mmのものが好ましい。
【0027】
第一人工土壌粒子50aの粒径は、2.0〜12.0mmであり、好ましくは3.0〜11.0mmであり、より好ましくは4.0〜10.0mmである。第一人工土壌粒子50aの粒径の調整は、例えば、篩による分級で行うことができる。第一人工土壌粒子50aの粒径が2.0mm未満の場合、第一人工土壌粒子50a内に保持される水の量が少なくなり、人工土壌培地100の保水性が十分高まらない虞がある。一方、第一人工土壌粒子50aの粒径が12.0mmを超えると、第一人工土壌粒子50a間に形成される空間に第二人工土壌粒子50bが細かく充填され過ぎて、通気性が悪くなる虞がある。第一人工土壌粒子50aの粒径は、例えば、光学顕微鏡観察及び画像処理法を用いて測定することができる。
【0028】
繊維塊状体は、その内部に水分を保持できるように構成するため、繊維1として親水性の繊維を使用することが好ましい。繊維1の種類は、天然繊維又は合成繊維が適宜選択される。好ましい親水性の繊維として、例えば、天然繊維として綿、羊毛、レーヨン、セルロースファイバーが挙げられ、合成繊維として、例えば、ビニロン、ウレタン、ナイロン、アセテートが挙げられ、これらのうち、綿、セルロースファイバー、及びビニロンがより好ましい。天然繊維と合成繊維とを混繊したものでも構わない。
【0029】
繊維塊状体を構成するに際し、繊維1の間に別の保水性材料(保水性材料である繊維1と区別するため、以後、第二保水性材料とする)を導入することも可能である。この場合、繊維塊状体は、本来有する繊維1間の空隙6による保水性に加え、第二保水性材料による保水力を備えることができる。第二保水性材料を繊維塊状体に導入する方法として、例えば、繊維1を造粒によって繊維塊状体を形成し、造粒中に第二保水性材料を添加する。また、繊維1の表面を第二保水性材料でコーティングしても構わない。これらの方法により繊維塊状体に導入された第二保水性材料は、繊維1間の空隙6において露出していることが好ましい。この場合、繊維塊状体は空隙6の保水力が大きく向上する。
【0030】
第二保水性材料は、吸水性を有する高分子保水材を使用することができる。例えば、ポリアクリル酸塩系ポリマー、ポリスルホン酸塩系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド系ポリマー等の合成高分子系保水性材料、ポリアスパラギン酸塩系ポリマー、ポリグルタミン酸塩系ポリマー、ポリアルギン酸塩系ポリマー、セルロース系ポリマー、デンプン等の天然高分子系保水性材料が挙げられる。これらの第二保水性材料は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。また、第二保水性材料として、珪藻土、発泡ガラス、発泡金属、活性炭、及びセラミックス等の多孔質材を使用することも可能である。
【0031】
繊維塊状体は、公知の造粒法により形成される。例えば、長繊維をカーディング装置等で引揃え、3〜10mm程度の長さに切断し、生成した繊維を転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒等の方法で造粒することにより形成する。造粒の際、繊維1に樹脂や糊等のバインダーを混合して造粒を行ってもよいが、繊維1は互いに絡まり合って固着化し易いため、バインダーを使用しない場合でも、繊維1を塊状に加工することが可能である。
【0032】
繊維塊状体を造粒するにあたり、繊維1として短繊維や、繊維パウダーを使用することも可能である。この場合、短繊維や繊維パウダーを撹拌混合造粒装置で撹拌しながらバインダーとして樹脂エマルジョンを少量ずつ投入して造粒する。これにより、繊維塊状体を形成する短繊維や繊維パウダー同士が一部で固定化され、強固な基部10を形成することができる。
【0033】
バインダーは、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、ポリ酢酸ビニル系バインダー等の合成樹脂系バインダー、デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸などの多糖類、膠などの動物性たんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0034】
繊維塊状体の外表部には、被覆層を形成してもよい。被覆層を設けることで、繊維塊状体の急激な乾燥を防止し、水分吸放出特性をコントロールすることができる。被覆層は、水分子が通過可能な超微細孔を有する膜である。あるいは、水分が一方側から浸透して他方側に移動可能な浸透性膜とすることもできる。被覆層は、例えば、以下の方法により繊維塊状体の外表部に形成される。先ず、造粒した繊維塊状体を容器に移し、繊維塊状体の体積(占有容積)の半分程度の水を加え、繊維塊状体の空隙6に水を浸み込ませる。次に、水を浸み込ませた繊維塊状体に、繊維塊状体の体積の1/20〜1/2の樹脂エマルジョンを添加する。樹脂エマルジョンには、顔料、香料、殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、殺虫剤等の添加物を混合しておくことも可能である。次に、繊維塊状体の外表部に樹脂エマルジョンが均一に付着するように転動させながら、繊維塊状体の外表部から樹脂エマルジョンを含浸させる。このとき、繊維塊状体の中心部には水が浸み込んでいるため、樹脂エマルジョンは繊維塊状体の外表部付近で留まる。その後、樹脂エマルジョンが付着した繊維塊状体をオーブンで乾燥させ、次いで、樹脂を溶融させ、繊維塊状体の外表部付近の繊維1に樹脂を融着させて被覆層としての樹脂被膜を形成する。これにより、繊維塊状体の外表部を被覆層で被覆した第一人工土壌粒子50aが完成する。被覆層は、樹脂が溶融する際に樹脂エマルジョンに含まれていた溶媒が蒸発し、多孔質構造が形成される。得られた第一人工土壌粒子50aは、必要に応じて、乾燥及び分級が行われ、粒径が調整される。被覆層は、繊維塊状体を構成する繊維1の絡み合い部分(繊維1同士が接触する部分)を補強するように、繊維塊状体の外表部から若干内側に浸透した状態にまで厚みを形成してもよい。これにより、第一人工土壌粒子50aの強度及び耐久性を向上させることができる。被覆層の膜厚は、1〜200μmに設定され、好ましくは10〜100μmに設定され、より好ましくは20〜60μmに設定される。
【0035】
被覆層の材質は、水に不溶性で酸化され難いものが好ましく、例えば、樹脂材料が挙げられる。そのような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂材料に代えて、ポリエチレングリコール等の合成高分子系のゲル化剤、又はアルギン酸ナトリウム等の天然ゲル化剤を使用することも可能である。
【0036】
繊維塊状体及び被覆層には、イオン交換能を付与することもできる。繊維塊状体及び被覆層の少なくとも何れか一方にイオン交換能を付与することで、第一人工土壌粒子50aに植物の育成に必要な肥料成分を担持させることができるので、天然土壌と同等の植物育成力を備えた人工土壌を実現することが可能となる。
【0037】
〔第二人工土壌粒子〕
図2(b)の第二人工土壌粒子50bは、多孔質体からなる。多孔質体は、複数のフィラー2が集合して粒状に構成されたものである。複数のフィラー2は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、一粒子内でバインダー等を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していれば、複数のフィラー2が集合して粒状になったものと考えることができる。
【0038】
第二人工土壌粒子50bの粒径は、0.1〜2.0mmであり、好ましくは0.25〜2.0mmである。第二人工土壌粒子50bの粒径の調整は、例えば、篩による分級で行うことができる。第二人工土壌粒子50bの粒径が0.1mm未満の場合、第二人工土壌粒子50b間の隙間3が小さくなって排水性が低下することにより、栽培する植物が根から酸素を吸収し難くなる虞がある。一方、第二人工土壌粒子50bの粒径が2.0mmを超えると、第二人工土壌粒子50b間の隙間3が大きくなって十分な保水性が得られない虞がある。第二人工土壌粒子50bの粒径は、例えば、光学顕微鏡観察及び画像処理法を用いて測定することができる。
【0039】
第二人工土壌粒子50bの多孔質体を構成するフィラー2は、表面から内部にかけて多数の細孔4を有する。細孔4は、種々の形態を含む。例えば、フィラー2が
図1に示すゼオライトの場合、当該ゼオライトの結晶構造中に存在する空隙が細孔4である。また、フィラー2がハイドロタルサイトやベントナイト(図示せず)の場合、当該ハイドロタルサイトやベントナイトの層構造中に存在する層間が細孔4である。つまり、本発明において「細孔」とは、フィラー2の構造中に存在する空隙部、層間部、空間部等を意図し、これらは「孔状」の形態に限定されるものではない。
【0040】
フィラー2の細孔4のサイズは、サブnmオーダー乃至サブμmオーダーとなる。フィラー2が
図2(b)に示すゼオライトの場合、ゼオライトの結晶構造中に存在する空隙のサイズ(径)は、0.3〜1.3nm程度である。フィラー2がハイドロタルサイトの場合、当該ハイドロタルサイトの層構造中に存在する層間のサイズ(距離)は、0.3〜3.0nm程度である。この他に、フィラー2として有機多孔質材料を使用することもでき、その場合の細孔径は、0.1〜0.8μm程度となる。フィラー2の細孔4のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定される。
【0041】
複数のフィラー2の間には、水分を保持可能なサブμmオーダー乃至サブmmオーダーの連通孔5が形成されている。連通孔5の周囲には細孔4が分散配置されている。連通孔5には主に水分が保持されるため、第二人工土壌粒子50bに一定の保水性を持たせることができる。連通孔5のサイズ(フィラー2間の距離の平均値)は、フィラー2やバインダーの種類、組成、造粒条件により変化し得るが、サブμmオーダー乃至サブmmオーダーとなる。フィラー2が
図2(b)に示すゼオライトである場合、連通孔5のサイズは、0.1〜20μmである。連通孔5のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定することができる。
【0042】
フィラー2は、第二人工土壌粒子50bが十分な保肥力を有するように、細孔4にイオン交換能が付与された材料を使用することが好ましい。この場合、イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換能が付与された材料、陰イオン交換能が付与された材料、又は両者の混合物を使用することができる。また、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の細孔4に上記のイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これをフィラー2として使用することも可能である。陽イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換性鉱物、腐植、及び陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換能が付与された材料として、陰イオン交換性鉱物、及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。
【0043】
陽イオン交換性鉱物は、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系鉱物、雲母系鉱物、バーミキュライト、ゼオライト等が挙げられる。陽イオン交換樹脂は、例えば、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ゼオライト、又はベントナイトが好ましい。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂における陽イオン交換容量は、10〜700meq/100gに設定され、好ましくは20〜700meq/100gに設定され、より好ましくは30〜700meq/100gに設定される。陽イオン交換容量が10meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陽イオン交換容量が700meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
【0044】
陰イオン交換性鉱物は、例えば、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーライト、シェーグレン石、緑青等の主骨格として複水酸化物を有する天然層状複水酸化物、合成ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様物質、アロフェン、イモゴライト、カオリン等の粘土鉱物が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ハイドロタルサイトが好ましい。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂における陰イオン交換容量は、5〜500meq/100gに設定され、好ましくは20〜500meq/100gに設定され、より好ましくは30〜500meq/100gに設定される。陰イオン交換容量が5meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陰イオン交換容量が500meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
【0045】
フィラー2がゼオライトやハイドロタルサイトのような無機天然鉱物である場合、複数のフィラー2を集合して粒状物(第二人工土壌粒子50b)を構成するために、高分子ゲル化剤のゲル化反応が好適に利用される。高分子ゲル化剤のゲル化反応として、例えば、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応、カルボキシメチルセルロース(CMC)のゲル化反応、カラギーナンなどの多糖類の二重らせん構造化反応によるゲル化反応が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不要であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こりゲル化する。本実施形態の場合、ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にフィラー2を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にフィラー2が分散した混合液を形成する。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸ゲル中にフィラー2が分散した粒状物としての人工土壌粒子50bが得られる。
【0046】
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、フィラー2を添加した混合液の攪拌や、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
【0047】
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化が起きる2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的でない。
【0048】
第二人工土壌粒子50bを形成するためのフィラー2の粒状化は、上述のゲル化反応の他、バインダーを用いた造粒法によって行うこともできる。これは、例えば、フィラー2にバインダーや溶媒等を加えて混合し、混合物を造粒機に導入し、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により行うことができる。得られた造粒体は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、第二人工土壌粒子50bが完成する。また、フィラー2にバインダーを加え、さらに必要に応じて溶媒等を加えて混練し、これを乾燥してブロック状にしたものを、乳鉢及び乳棒、ハンマーミル、ロールクラッシャー等の粉砕手段で適宜粉砕して粒状物とすることも可能である。この粒状物は、そのまま第二人工土壌粒子50bとして用いることもできるが、篩にかけて所望の粒径に調整することが好ましい。
【0049】
バインダーは、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、ポリ酢酸ビニル系バインダー等の合成樹脂系バインダー、デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸などの多糖類、膠などの動物性たんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0050】
フィラー2が有機多孔質材料である場合、第二人工土壌粒子50bの形成は、バインダーを用いた上述のフィラー2の粒状化法と同様の方法で行ってもよいが、フィラー2を、当該フィラー2を構成する有機多孔質材料(高分子材料等)の融点以上の温度に加熱し、複数のフィラー2の表面同士を熱融着させて粒状化することにより、第二人工土壌粒子50bを形成することも可能である。この場合、バインダーを使用しなくても、複数のフィラー2が集合した粒状物を得ることができる。そのような有機多孔質材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、セルロール等の有機高分子材料を発泡させた有機高分子発泡体、前記有機高分子材料の粉体を加熱溶融して連続気泡構造を形成した有機高分子多孔質体が挙げられる。
【0051】
なお、図示しないが、第二人工土壌粒子50bの多孔質体の外表部に、第一人工土壌粒子50aと同様の被覆層を設けることも可能である。被覆層を設けることにより、第二人工土壌粒子50bの水分吸放出特性をより精密にコントロールすることが可能となる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の人工土壌培地を使用した実施例について説明する。実施例では、人工土壌培地の違いによる保水性及び通気性の特性の変化を測定し、評価した。第一人工土壌粒子及び第二人工土壌粒子を以下の方法で作製した。さらに、第一人工土壌粒子及び/又は第二人工土壌粒子を用いて、実施例及び比較例に供する人工土壌培地を調製した。
【0053】
〔第一人工土壌粒子の作製〕
実施例で使用する第一人工土壌粒子は、2種類の繊維を使用して異なる3種類の第一人工土壌粒子を作製し、人工土壌培地に用いた。3種類の第一人工土壌粒子を以下の方法で作製した。
【0054】
(ビニロン繊維球)
見かけの容積で1000ccのビニロン短繊維(長さ0.5mm 株式会社クラレ製)を撹拌混合造粒装置(有限会社G−Labo製)で撹拌、転動させながらポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の繊維塊状体を形成した。次いで、同じポリエチレンエマルジョンを体積の1/2となるように加えて外表部にエマルジョンが均一に付着するように転がしながら含浸させた。エマルジョンが含浸した繊維塊状体をオーブンで60℃で乾燥した後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることにより短繊維同士を固定化し、第一人工土壌粒子を得た。この第一人工土壌粒子の粒径は0.5〜11.2mmの範囲内とした。
【0055】
(セルロース繊維球)
セルロースファイバー(アボセルB800、昭和化学工業株式会社製)をカーディング装置で引きそろえ、3〜10mm程度の長さに切断して、回転する2枚の板の間に入れて転がさせながら、ポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の繊維塊状体を形成した。次いで、同じポリエチレンエマルジョンを体積の1/2となるように加えて外表部にエマルジョンが均一に付着するように転がしながら含浸させた。エマルジョンが含浸した繊維塊状体をオーブンで60℃で乾燥した後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることにより、セルロースファイバー同士を固定化し、第一人工土壌粒子を得た。この第一人工土壌粒子のサイズは〜8mmの範囲となるように調製した。
【0056】
(セルロース・ビニロン混繊球)
セルロースファイバー(アボセルB800、昭和化学工業株式会社製)をカーディング装置で引きそろえ、3〜10mm程度の長さに切断した。次いで、回転する2枚の板の間にセルロースファイバーとビニロン短繊維(長さ0.5mm 株式会社クラレ製)とを同量添加して転がさせながら、ポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の繊維塊状体を形成した。次いで、同じポリエチレンエマルジョンを体積の1/2となるように加えて外表部にエマルジョンが均一に付着するように転がしながら含浸させた。エマルジョンが含浸した繊維塊状体をオーブンで60℃で乾燥した後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることにより、繊維同士を固定化し、第一人工土壌粒子を得た。この第一人工土壌粒子のサイズは0.5〜1mmの範囲となるように調製した。
【0057】
〔第二人工土壌粒子の作製〕
フィラーとしてゼオライト及びハイドロタルサイトを使用し、アルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムを使用し、多価金属イオン水溶液として5%塩化カルシウム水溶液を使用した。和光純薬工業株式会社製の試薬アルギン酸ナトリウムを水に溶解させて濃度0.5%の水溶液を調製し、アルギン酸ナトリウム0.5%水溶液100重量部に株式会社エコウエル製の人工ゼオライト「琉球ライト600」10重量部、及び和光純薬工業株式会社製の試薬ハイドロタルサイト10重量部を添加して混合した。混合液を5%塩化カルシウム水溶液中に1滴/秒の速度で滴下した。滴下した液滴が粒子状にゲル化した後、粒子状ゲルを回収して水洗し、55℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させた。また、0.1mmより小さい粒径の人工土壌粒子を作製する場合は、乾燥させた粒状物を乳鉢等で粉砕して作製した。この人工土壌粒子の粒径は11.2mm以下とした。
【0058】
〔異なる人工土壌粒子の組合せによる人工土壌培地の保水性及び通気性の評価〕
実施例1〜10の人工土壌培地は、第一人工土壌粒子の粒径が第二人工土壌粒子の粒径よりも大きくなるように調製した。比較例1〜9の人工土壌培地は、第一人工土壌粒子又は第二人工土壌粒子の何れか単独で調製したもの、あるいは、第二人工土壌粒子の粒径が第一人工土壌粒子の粒径よりも大きくなるように調製したものを使用した。各実施例及び比較例の詳細を、以下に示す。
(1)実施例1:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径8〜11.2mm、第二人工土壌粒子を粒径1〜2mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(2)実施例2:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径8〜11.2mm、第二人工土壌粒子を粒径0.1〜0.5mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(3)実施例3:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径2〜4mm、第二人工土壌粒子を粒径0.5〜2mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(4)実施例4:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径2〜11.2mm、第二人工土壌粒子を粒径0.5〜2mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(5)実施例5:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径2〜11.2mm、第二人工土壌粒子を粒径0.5〜1mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(6)実施例6:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径4〜6mm、第二人工土壌粒子を粒径0.5〜1mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を30:70に調製した。
(7)実施例7:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径2〜4mm、第二人工土壌粒子を粒径0.1〜0.5mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を70:30に調製した。
(8)実施例8:第一人工土壌粒子(セルロース繊維球)を粒径4〜6mm、第二人工土壌粒子を粒径0.5〜1mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(9)実施例9:第一人工土壌粒子(セルロース繊維球)を粒径2〜4mm、第二人工土壌粒子を粒径0.1〜0.5mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を30:70に調製した。
(10)実施例10:第一人工土壌粒子(セルロース・ビニロン混繊球)を粒径4〜6mm、第二人工土壌粒子を粒径0.5〜1mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を70:30に調製した。
(11)比較例1:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径8〜11.2mmに作製し、第一人工土壌粒子100%で人工土壌培地を調製した。
(12)比較例2:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径2〜4mmに作製し、第一人工土壌粒子100%で人工土壌培地を調製した。
(13)比較例3:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径0.5〜1mmに作製し、第一人工土壌粒子100%で人工土壌培地を調製した。
(14)比較例4:第一人工土壌粒子(セルロース繊維球)を粒径5.6〜8mmに作製し、第一人工土壌粒子100%で人工土壌培地を調製した。
(15)比較例5:第二人工土壌粒子を粒径1〜2mmに作製し、第二人工土壌粒子100%で人工土壌培地を調製した。
(16)比較例6:第二人工土壌粒子を粒径0.1mm以下に作製し、第二人工土壌粒子100%で人工土壌培地を調製した。
(17)比較例7:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径2〜4mm、第二人工土壌粒子を粒径3.35〜5.6mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合を50:50に調製した。
(18)比較例8:第一人工土壌粒子(ビニロン繊維球)を粒径0.5〜2mm、第二人工土壌粒子を粒径1〜2mmに作製し、第一人工土壌粒子と第二人工土壌粒子との配合割合が50:50に調製した。
(19)比較例9:市販のピートモスの土壌(グリーンメール社製)を使用した。
【0059】
<試験内容>
(1)保水性:クロマト管(径:30mm、長さ:300mm)に試験対象の土壌150ccを充填し、クロマト管の上部から水を100ml滴下し、クロマト管の下部より水を抜き、3分間クロマト管から落水しなくなった時の重量を測定し、予め測定しておいた試験対象の土壌の重量を差し引いた。これを、試験対象の土壌100ccに対する保水量に換算した。
(2)通気性:通気性に使用した土壌は、上記保水性を測定した試験対象の土壌をカラムに充填したまま24時間放置し、自然乾燥させたものを使用した。試験方法としては、クロマト管上部から水を100ml滴下し、クロマト管の下部から水が50g排出されるまでの時間を測定した。
上記方法に従って、各人工土壌培地の保水性及び通気性の評価を行った。結果を以下の表に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
<試験結果>
表に示すように、実施例1〜10の人工土壌培地は、比較例1〜9の土壌培地と比較して、一定の通気性(1000秒未満)を維持しながら、高い保水性(人工土壌培地100ccあたり水分45cc以上)を確保することができ、通気性と保水性とが高い次元でバランスされていることが示された。これに対して、第一人工土壌粒子又は第二人工土壌粒子を単独で使用した比較例1〜6の人工土壌培地は、通気性又は保水性のどちらかの結果が悪く、通気性と保水性とをバランスさせることができなかった。また、第一人工土壌粒子よりも第二人工土壌粒子を大きく作製した比較例7及び8の人工土壌培地に関しては、高い通気性は確保できたが、保水性の向上は認められなかった。