(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記冷却器に着霜したと判断し且つ前記冷蔵室温度センサによって検出される前記冷蔵室の温度が所定の値よりも高い場合、前記第1送風機の運転を停止し、前記送風機カバーで前記第1送り口を塞ぎ、前記ダンパを開き、前記第2送風機を運転することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の冷蔵庫。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫1の概略構造を示す正面外観図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫1は、本体としての断熱箱体2を備え、該断熱箱体2の内部に食品等を貯蔵する貯蔵室を形成している。貯蔵室の内部は、保存温度や用途に応じて複数の収納室3〜7に区分されおり、最上段が冷蔵室3、その下段左側が製氷室4で右側が上段冷凍室5、更にその下段が下段冷凍室6、そして最下段が野菜室7である。尚、製氷室4、上段冷凍室5及び下段冷凍室6は、何れも冷凍温度域の収納室であり、以下の説明では適宜、これらをまとめて冷凍室4〜6と称する。
【0025】
断熱箱体2の前面は開口しており、前記各収納室3〜7に対応した前記開口部には、各々断熱扉8〜12が開閉自在に設けられている。断熱扉8a、8bは、冷蔵室3の前面を分割して塞ぐもので、断熱扉8aの左上下部及び断熱扉8bの右上下部が断熱箱体2に回転自在に支持されている。また、断熱扉9〜12は、各々収納容器と一体的に組み合わされ、冷蔵庫1の前方に引出自在に、断熱箱体2に支持されている。
【0026】
図2は、冷蔵庫1の概略構造を示す側面断面図である。
図2に示すように、冷蔵庫1の本体である断熱箱体2は、前面に開口部を有する鋼板製の外箱2aと、該外箱2a内に間隙を持たせて配設され、前面に開口部を有する合成樹脂製の内箱2bと、前記外箱2aと内箱2bとの間隙に充填発泡された発泡ポリウレタン製の断熱材2cと、から構成されている。尚、各断熱扉8〜12も、断熱箱体2と同様の断熱構造を採用している。
【0027】
冷蔵室3と、その下段に位置する冷凍室4〜6との間は、断熱仕切壁28によって仕切られている。冷凍室4〜6の内部の製氷室4と上段冷凍室5との間は、仕切壁(図面に表れない)によって仕切られている。また、製氷室4及び上段冷凍室5と、その下段に設けられた下段冷凍室6との間は、冷気が流通自在に連通している。そして、冷凍室4〜6と野菜室7との間は、断熱仕切壁29によって区分けされている。
【0028】
冷蔵室3の背面には、合成樹脂製の仕切体54で区画され、冷蔵室3へと冷気を供給する冷蔵室供給風路17が形成されている。冷蔵室供給風路17には、冷蔵室3に冷気を流す吹出口22が形成されている。冷蔵室供給風路17は、冷蔵室ダンパ51を介して、冷却室13の第2送り口15につながっている。冷蔵室ダンパ51は、冷蔵室3へと供給する冷気の流量を制御して、冷蔵室3内部の温度を適切に維持するためのものである。
【0029】
また、冷蔵室供給風路17の前記冷蔵室ダンパ51より下流側には、冷却室13から冷蔵室3へと冷気を流す第2送風機50が設けられている。第2送風機50は、例えば、遠心式等のターボ形送風機である。また、第2送風機50は、冷蔵室3の上方奥側に配置される。このように、第2送風機50として遠心式の送風機を採用し、食品等の出し入れが困難な冷蔵室3の上方奥側コーナー部分に配置することにより、食品収納の利便性を確保することができる。
【0030】
また、冷蔵室供給風路17は、冷蔵室3の上面にも形成され、前方へと向かって延在している。冷蔵室3の上方前部に形成された吹出口22aには、冷蔵室供給風路17から冷蔵室3へと吹き出される空気の方向を調整可能なフラップ53が配設されている。
【0031】
フラップ53の角度(開度)を適宜調節することにより、特定の部分をピンポイントに冷却することができる。また、フラップ53をスイングさせることにより、冷蔵室3内部の空気の効果的に撹拌して、温度の均一化を図り、冷却効率を高めることができる。
【0032】
冷凍室4〜6の奥側には、冷却器32で冷却された冷気を冷凍室4〜6へと流す冷凍室供給風路18が形成されている。冷凍室供給風路18の更に奥側には、冷却室13が形成されており、その内部には、庫内を循環する空気を冷却するための冷却器32(蒸発器)が配置されている。
【0033】
冷却器32は、圧縮器31、放熱器(図示せず)、膨張弁(キャピラリーチューブ)(図示せず)に冷媒配管を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成するものである。尚、本実施形態に係る冷蔵庫1では、前記冷凍サイクルの冷媒として、イソブタン(R600a)を用いている。
【0034】
また、冷蔵庫1は、冷蔵室3内部の温度を検出する冷蔵室温度センサ61、冷凍室4〜6内部の温度を検出する冷凍室温度センサ62、その他図示しない温度センサ類を備えている。また、冷蔵庫1は、断熱扉8を支持するヒンジ部に、断熱扉8の開閉を検出する扉開閉センサ63を備えている。扉開閉センサ63としては、例えば、断熱扉8の一部分によって押圧されて接点を開閉する各種スイッチを採用し得る。
【0035】
また更に、冷蔵庫1は、図示しない制御装置を備えており、該制御装置は、前記センサ類からの入力値を基に所定の演算処理を実行し、圧縮機31、第1送風機35、第2送風機50、遮蔽装置40、冷蔵室ダンパ51等の各構成機器を制御する。
【0036】
図3は、冷蔵庫1の供給風路の概略構成を示す正面略図である。
図3に示すように、冷蔵室3へと冷気を供給する冷蔵室供給風路17は、冷蔵室3の中央部において冷気を最上部へと送り、その後に両脇から下降させるように構成されている。これにより、冷蔵室3の内部全体に効率的に冷気を供給することができる。
【0037】
冷蔵庫1は、冷蔵室3から冷却室13(
図2参照)へと空気を流す帰還風路20を備えている。冷蔵室3の下部には、帰還風路20につながる開口である戻り口25が形成されている。冷蔵室3内の空気は、戻り口25を介して帰還風路20へと流れ、冷却器32の下方へと流れる。
【0038】
また、帰還風路20の前方には、冷却器32で冷却された空気を野菜室7へと流す野菜室供給風路19が形成されている。野菜室供給風路19は、冷凍室供給風路18から上方に分岐して、冷凍室4〜6の上方の断熱仕切壁28(
図2参照)の内部を経由して下方に向きを変え、冷凍室4〜6の奥を通過している。そして、断熱仕切壁29(
図2参照)を貫通して野菜室7へとつながっている。野菜室7には、野菜室供給風路19から冷気を吹き出す開口である吹出口24が形成されている。
【0039】
野菜室供給風路19には、野菜室7に供給する冷気の流れを制御する野菜室ダンパ52が設けられている。これにより、冷蔵室3の冷却とは独立して野菜室7の冷却を行うことができ、野菜室7の温度を適切に制御することができる。
【0040】
尚、野菜室供給風路19を、冷凍室供給風路18の側方または下方から分岐するよう構成しても良い。これにより、野菜室供給風路19を短くすることができ、圧力損失を低減することができる。
【0041】
また、野菜室供給風路19を冷蔵室3からの冷気を戻す帰還風路20に接続することもできる。このように、野菜室供給風路19を帰還風路20から分岐するよう構成することにより、野菜室ダンパ52を省略して低コスト化を図ることができる。
【0042】
野菜室7には、戻り口27が形成されており、野菜室7内の空気は、戻り口27から野菜室帰還風路21(
図2参照)及び戻り口16(
図2参照)を経由して冷却室13の下部へと流れる。
【0043】
図4は、冷蔵庫1の冷却室13付近の構造を示す側面断面図である。
図4に示すように、冷却室13は、断熱箱体2の内部で、冷凍室供給風路18の奥側に設けられている。冷却室13と、冷凍室供給風路18または冷凍室4〜6との間は、合成樹脂製の仕切体55によって仕切られている。即ち、冷却室13は、内箱2bと仕切体55とによって挟まれて形成された空間である。
【0044】
冷却室13の上面には、冷蔵室3につながる開口である第2送り口15が形成されている。前述の通り、第2送り口15には、冷蔵室供給風路17が接続されている。このように、冷却室13の上面に冷蔵室供給風路17につながる第2送り口15を形成することにより、冷蔵室3の下部後方の冷蔵室供給風路17を、従来よりも後方へと配置することができる。これにより、冷蔵室3下部の収納スペースを広くすることができる。
【0045】
また、従来技術の冷蔵庫のように、送風機で送り出された空気を分岐して冷蔵室及び冷凍室へと供給する構成では、冷凍室ダンパを設けるために、冷凍室専用の供給風路と冷却室との間に冷凍冷蔵共通の風路を形成する必要があった。しかし、本実施形態に係る冷蔵庫1では、冷凍室供給風路と冷却室との間に冷凍冷蔵共通風路を設ける必要がないので、冷凍室4〜6の収納スペースを広く確保することができる。
【0046】
冷却室13の前方に形成される冷凍室供給風路18は、仕切体55とその前方に組み付けられる合成樹脂製の前面カバー56との間に形成された空間であり、冷却器32で冷却された冷気を流す風路となる。前面カバー56には、冷凍室4〜6に冷気を吹き出す開口である吹出口23が形成されている。
【0047】
下段冷凍室6の下部背面には、冷凍室4〜6から冷却室13へと空気を戻す戻り口26が形成されている。そして、冷却室13の下方には、前記戻り口26につながり、貯蔵室からの帰還冷気を冷却室13の内部へと吸入する、戻り口16が形成されている。
【0048】
また、冷却器32の下方には、冷却器32に付着した霜を融かして除去する除霜手段として、除霜ヒータ33が設けられている。除霜ヒータ33は、電気抵抗加熱式のヒータである。尚、除霜手段として、例えば、電気ヒータを利用しないオフサイクルデフロストや、ホットガスデフロスト等のその他の除霜方式を採用することも可能である。
【0049】
冷却室13上部の仕切体55には、冷凍室4〜6につながる開口である第1送り口14が形成されている。即ち、第1送り口14は、冷却室13と冷凍室供給風路18とを連通する開口である。第1送り口14には、冷凍室4〜6等に冷気を送り出す第1送風機35が配設されている。
【0050】
第1送風機35は、回転式のプロペラファン37と、略円筒形状の開口である風洞36aが形成されたケーシング36と、を備えた軸流送風機である。ケーシング36は、冷却室13の第1送り口14に取り付けられており、第1送風機35の吸入側と吐出側との境界になる部品である。
【0051】
そして、ケーシング36には、風洞36aと同軸に、ファン37が配設されている。尚、ファン37の吐出側端部は、風洞36aの吐出側端部、即ちケーシング36の吐出側端面より外側、即ち吐出側若しくは冷凍室供給風路18側、になるように配設されている。これにより、ファン37の回転半径方向に流れ出る吐出空気の流れ抵抗が小さくなり、少ない流動損失で冷気を送り出すことができる。
【0052】
また、冷却室13の第1送り口14の外側、即ち第1送風機35の吐出側には、第1送り口14を塞ぐための送風機カバー41を備えた遮蔽装置40が設けられている。遮蔽装置40は、その支持基体42が、例えば、第1送風機35のケーシング36に密着するよう取り付けられる。
【0053】
送風機カバー41は、冷却室13に対向する面、即ち第1送風機35に対向する面、が凹形状に成形されている(41b)。そして、凹部41bの周縁部には、支持基体42と当接する当接部41aが形成されている。これにより、送風機カバー41は、ケーシング36よりも吐出側に突き出したファン37と接触することなく、風洞36aの外側で支持基体42に当接し、第1送り口14を塞ぐことができる。
【0054】
図5(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫1の第1送風機35及び遮蔽装置40の構造を示す斜視図であり、同図(A)は、送風機カバー41を閉じた状態、同図(B)は、送風機カバー41を開いた状態を示している。尚、
図5(A)及び(B)において、送風機カバー41を開閉する機構については、図示を省略している。
【0055】
図5(A)及び(B)に示すように、第1送風機35は、ファン37を回転駆動させるファンモータ38を備えている。ファンモータ38は、支持フレーム39によってケーシング36に固定されており、ファンモータ38の回転軸にはファン37が取り付けられている。
【0056】
ケーシング36の吐出側端面には、遮蔽装置40の支持基体42が密着固定されている。支持基体42は、略中央部に冷気が流通自在な開口を有する略平板状の部品である。支持基体42の冷凍室4〜6(
図4参照)側の主面42aには、送風機カバー41をファン37の回転軸方向(Z方向)に往復運動自在に支持するガイドピン46が設けられている。つまり、ファン37の回転軸方向(Z方向)に延在するガイドピン46は、送風機カバー41に形成された支持孔41bに摺動自在に嵌合している。これにより、送風機カバー41は、
図5(A)のごとく、第1送風機35に対して接近し、または
図5(B)のごとく、離隔することができる。
【0057】
図5(A)のごとく、送風機カバー41が第1送風機35に接近すると、送風機カバー41の周囲縁の当接部41aが支持基体42の主面42aに当接し、第1送風機35の空気流路を塞ぐことになる。即ち、送風機カバー41によって、冷却室13(
図4参照)の第1送り口14(
図4参照)が塞がれ、空気流路が閉じた状態となる。尚、送風機カバー41が支持基体42の主面42aに当接する構成に代えて、送風機カバー41が支持基体42の外周面またはケーシング36の吐出側端面若しくは外周面に当接する構成を採用することも可能である。
【0058】
他方、
図5(B)のごとく、送風機カバー41が第1送風機35から離隔する方向に移動すると、送風機カバー41と支持基体42との間に間隙、即ち空気が流れるための開口、が形成される。つまり、送風機カバー41を開いた状態になる。そして、矢印Vで示すように、第1送風機35によって吐出された空気が、送風機カバー41と支持基体42との間にできた開口から流れ出す。
【0059】
尚、送風機カバー41を開閉させる機構や駆動方法については種々の方法を採用することができる。例えば、モータ、ソレノイド、その他の方式によって送風機カバー41を開閉することができる。また、遮蔽装置40の支持基体42に相当する部品を前面カバー56(
図4参照)に固定し、送風機カバー41をケーシング36に当接させる構成を採用することも可能である。
【0060】
ここで、
図6(A)ないし(C)を参照して、第1送風機35周りの空気流れについて、更に詳しく説明する。
図6(A)ないし(C)は、第1送風機35としての軸流送風機周りの空気流れを解析した結果を示す説明図である。
図6(A)は、吐出側と吸入側との圧力差が12Pa、同図(B)は、同圧力差が4Pa、同図(C)は、同圧力差が2Paという条件における解析結果である。
【0061】
図6(A)ないし(C)において、符号Vは、支持基体42の主面42a(
図5参照)における風速ベクトル分布である。尚、支持基体42をケーシング36(
図5参照)に取り付けない場合、符号Vは、ケーシング36の吐出側端面における風速ベクトル分布に相当する。また、符号V1は、吸入側(紙面右側)にある面S1における風速ベクトル分布を表し、符合V2は、吐出側(紙面左側)にある面S2における風速ベクトル分布を表している。各風速ベクトルV、V1、V2は、矢印の方向を各流れの方向とし、矢印の長さを各流れの速さに比例する長さとして表現されている。尚、各図において、ファン37の上下に描かれた横線Mは、計算上使用したものであって、解析結果の説明には用いないので無視してよい。
【0062】
図6(C)に示すように、第1送風機35の吐出側と吸入側との圧力差が2Paの場合には、第1送風機35の吐出側における風速ベクトルVは、図の上下方向にやや斜めではあるが、略左側を向いていることが分かる。また、吐出側の面S2における風速ベクトルV2も、左側に突き出ている。即ち、圧力差2Paの条件においては、送風機35吐出側の空気流れは、ファン37の回転軸方向Zの速度が大きく、回転半径方向Rの速度が小さいことが分かる。換言すれば、送風機35によって吐出された空気は、主に、送風機35の前方へと流れて行く。
【0063】
ところが、
図6(B)に示すように、第1送風機35の吐出側と吸入側との圧力差が4Paになると、第1送風機35吐出側における風速ベクトルVは、図の上下方向への広がりがやや大きくなり、吐出側の面S2における風速ベクトルV2は短くなっている。即ち、圧力差が4Pa程度に大きくなると、第1送風機35吐出側の空気流れは、ファン37の回転半径方向Rの速度が大きくなってくる。
【0064】
更に、
図6(A)に示すように、圧力差が更に大きくなり12Paになると、第1送風機35の吐出側における風速ベクトルVは、図の略上下方向を向くようになる。また、吐出側の面S2における風速ベクトルV2は、非常に短くなっている。即ち、圧力差が12Paの条件では、第1送風機35から吐出された空気の流れは、ファン37の回転軸方向Zの速度が非常に小さく、回転半径方向Rの速度が大きくなることが分かる。換言すれば、第1送風機35から吐出された空気は、第1送風機35の前方、即ちZ方向、に向かって流れずに、回転半径方向Rに向かって流れ出ることになる。
【0065】
尚、
図6(A)ないし(C)何れの条件においても、第1送風機35吐出側の空気流れは、ファン37の回転軸を中心とした旋回流を形成している。
【0066】
以上、第1送風機35としての軸流送風機の特性について説明したが、本実施形態に係る冷蔵庫1のように、閉回路内で冷気を強制循環させる冷蔵庫においては、第1送風機35の吐出側と吸入側との圧力差は10〜12Pa程度である。つまり、
図6(A)に示すように、第1送風機35によって吐出された冷気は、第1送風機35のファン37回転半径方向Rに広がって流れる。
【0067】
そこで、
図4に示すように、本実施形態に係る送風機カバー41は、冷却運転を行う際、冷却室13から離れるように移動し、送風機カバー41と冷却室13との間に、冷気が流れるための開口を形成する。そのため、前述の通り、回転半径方向Rの流れ速度が大きい第1送風機35からの吐出空気は、ケーシング36や仕切体55に沿うように、前記開口を通じて、非常に小さい流動抵抗で、冷凍室供給風路18内へと流れ出る。
このとき、第1送風機35から前面方向へと流れる空気は、
図6(A)に示すように、当初から非常に少ないので、冷却室13から離れるように移動した送風機カバー41が風路抵抗へ及ぼす影響は、非常に小さなものとなる。
【0068】
但し、
図5(B)に示す、支持基体42の主面42aと送風機カバー41の送風機35側端面(当接部41a)との距離X、即ち空気流路となる開口を形成する距離Xは、送風機カバー41による圧力損失を増大させないために、所定の長さを確保する必要がある。具体的には、距離Xは、30mm以上、更に好ましくは、50mm以上確保すべきである。距離Xが30mmより短くなると、送風機カバー41による流動損失が大きくなり、従来技術のダンパ等を利用する場合に比べて、圧力損失を小さく抑えることが困難になる。
【0069】
他方、距離Xを50mm以上確保すれば、送風機カバー41を追加することによる圧力損失の増大は殆どなくなる。
図6(A)を参照して簡単に説明すると、図に示す吐出側の面S3は、距離X(
図5(B)参照)が50mmに相当する位置にある。尚、面S2は、距離Xが80mmの位置にある。同図より、面S3の位置まで、即ち距離Xが50mmの位置まで、開口を確保すれば、殆どの空気流れは妨げられずに該開口を通過可能なことが分かる。
【0070】
次に、
図2ないし
図5を再び参照して、以上説明の構成を備えた冷蔵庫1の動作について説明する。
【0071】
先ず、冷蔵室3を冷却する運転について説明する。
図2に示すように、圧縮機31を運転し、冷蔵室ダンパ51を開き、第2送風機50を運転することにより、冷蔵室3の冷却を行うことができる。即ち、冷却器32によって冷却された空気は、冷却室13の第2送り口15、冷蔵室ダンパ51、冷蔵室供給風路17及び吹出口22を順次通過し、冷蔵室3へと供給される。これにより、冷蔵室3の内部に貯蔵された食品等を適切な温度で冷却保存することができる。
【0072】
そして、冷蔵室3の内部に供給された循環冷気は、
図3に示すように、戻り口25から帰還風路20を経由して冷却室13の内部へと戻る。そこで、再び冷却器32によって冷却されることになる。
【0073】
ここで、冷却室13には、
図2に示すように、冷凍室4〜6につながる第1送り口14と、冷蔵室3につながる第2送り口15と、が形成されているので、冷凍室4〜6の冷却とは独立して冷蔵室3の冷却運転を行うことができる。具体的には、送風機カバー41で第1送り口を塞ぎ、第1送風機35の運転を停止した状態で、冷蔵室ダンパ51を開き、第2送風機50を運転することにより、冷蔵室3のみに冷気を供給することができる。
【0074】
また、第2送り口15を冷却室13の上面に形成することにより、冷却室13から冷蔵室供給風路17へと略直線状に風路を形成することができる。そのため、従来の冷蔵庫のように、冷却室13の前方に設けられた一つの送風機によって冷気を冷却室13から前方に吐出し、その冷気の一部を分岐して後方斜め上方にある供給風路へと流す構成に比べ、流れ損失を低減することができる。
【0075】
次に、冷凍室4〜6を冷却する運転について説明する。
図2に示すように、圧縮機31を運転し、第1送風機35を運転し、送風機カバー41を開くことにより、冷凍室4〜6の冷却を行うことができる。詳しくは、送風機カバー41は、
図5(B)のごとく第1送風機35から離れた状態となる。これにより、冷却器32によって冷却された空気は、冷却室13の第1送り口14に配設された第1送風機35によって送り出され、冷凍室供給風路18及び吹出口23を順次通過し、冷凍室4〜6へと供給される。
【0076】
その結果、冷凍室4〜6の内部に貯蔵された食品等を適切な温度で冷却保存することができる。そして、冷凍室4〜6内部の空気は、下段冷凍室6の奥に形成された戻り口26を通り、冷却室13の戻り口16を介して、冷却室13の内部へと流れる。
【0077】
ここで、冷凍室4〜6の冷却運転は、冷蔵室3の冷却とは独立して行うことができる。即ち、第2送風機50を停止して冷蔵室ダンパ51を閉じ、送風機カバー41を開けて第1送風機35を運転することにより、冷凍室4〜6のみに冷気を供給することができる。
【0078】
次に、野菜室7への冷気の供給について説明する。第1送風機によって冷凍室供給風路18に送り出された空気の一部は、野菜室ダンパ52を開くことにより
図3に示す野菜室供給風路19へと流れ、吹出口24から野菜室7へと吐出される。これにより、野菜室7内を冷却することができる。そして、野菜室7を循環した冷気は、
図2に示す戻り口27から野菜室帰還風路21及び冷却室13の戻り口16を順次経て、冷却室13へと戻される。
【0079】
以上説明の通り、冷蔵庫1では、一つの冷却器32で冷却された冷気を各貯蔵室3〜7に夫々独立して、少ない圧力損失で効率良く供給することができる。これにより、冷蔵室3及び冷凍室4〜6を各々の冷却負荷に応じて好適に冷却することができるようになる。
【0080】
また、本発明の冷蔵庫1によれば、一つの冷却器32のみで、二つの冷却器を備えた従来技術の冷蔵庫のように、冷蔵室3と冷凍室4〜6とを交互に冷却することができる。ここで、冷蔵庫1は、複雑な冷媒回路や回路切り替え制御を必要としないので、少ない熱損失で高効率に各貯蔵室3〜7を冷却することができる。
【0081】
また、冷蔵庫1では冷蔵専用の冷却器を必要としないので、冷蔵室3を広くできる。また、冷気を供給すべき貯蔵室の目標保冷温度に応じて冷却器32による冷却温度(冷媒の蒸発温度)を調整することにより、冷凍サイクルの効率を更に向上させることができる。
【0082】
また更に、冷蔵室3及び冷凍室4〜6の温度を各々検出する冷蔵室温度センサ61及び冷凍室温度センサ62を備え、冷蔵室温度センサ61によって検出される冷蔵室3の温度に基づき第2送風機50の回転数を制御し、冷凍室温度センサ62によって検出される冷凍室4〜6の温度に基づき第1送風機35の回転数を制御しても良い。これにより、冷蔵室3及び冷凍室4〜6に各々適切な量の冷気を供給することができる。
【0083】
次に、
図2、
図4及び
図5を参照して、除霜運転時の動作について説明する。冷却運転を継続すると、冷却器32の空気側伝熱面に霜が付着し、伝熱を妨げ、空気流路を塞ぐことになる。そこで、冷媒蒸発温度の低下等から着霜を判断し、或いは除霜タイマー等によって判断し、冷却器32に付着した霜を取るための除霜冷却運転または除霜運転を開始する。
【0084】
先ず、冷却器32に付着した霜の潜熱を利用して冷蔵室3の冷却を行う除霜冷却運転について説明する。除霜冷却運転を行う場合、圧縮機31の運転を停止し、第1送風機35を停止する。そして、
図5(A)に示すように、送風機カバー41を閉じた状態にする。そして、冷蔵室ダンパ51を開き、第2送風機50を運転する。
【0085】
これにより、冷蔵室3と冷却室13との間で空気を循環させ、該循環空気によって冷却器32に付着した霜を融かすことができる。即ち、除霜ヒータ33による加熱を行うことなく除霜を行うことができる。同時に、圧縮機31を運転することなく霜の融解熱を利用して冷蔵室3の冷却を行うことができる。
【0086】
つまり、本発明の冷蔵庫1によれば、除霜のためのヒータ入力、及び冷却のための圧縮機入力を削減でき、冷蔵庫1の消費電力を少なくして総合的な冷却効率を高めることができる。また、除霜によって湿度の高い冷気を冷蔵室3に供給することができるので、そこに貯蔵される食品等の乾燥を防止し、鮮度を保持する効果を高めることができる。尚、冷凍室供給風路18を経由せずに野菜室7へと冷気を供給する供給風路を設けることにより、野菜室7についても、除霜潜熱による冷却及び水分補給が可能となる。
【0087】
ここで、前述の除霜冷却運転は、冷却器32に着霜したと判断し且つ冷蔵室3の温度が所定の値よりも高い場合に行うこととする。冷却器32の着霜を検出しても、冷蔵室3の温度が所定の値よりも低い場合には、冷蔵室3の冷却は不要であるので、除霜冷却運転を行わず、除霜ヒータ33を利用した通常の除霜運転を行う。
【0088】
通常の除霜運転では、圧縮機31を停止し、除霜ヒータ33に通電し、冷却器32に付着した霜を融かす。この際、送風機カバー41で第1送り口14を塞ぎ、冷蔵室ダンパ51で第2送り口15を閉じる。これにより、除霜ヒータ33によって暖められた冷却室13内の空気が冷蔵室供給風路17及び冷凍室供給風路18へと流れ出ることを防止できる。その結果、冷蔵庫1の冷却効率を向上させることができる。
【0089】
また、冷却器32の霜取りが完了すると、除霜ヒータ33の通電を止め、圧縮機31を起動し、冷凍回路による冷却を開始する。そして、冷却器32及び冷却室13が所定の温度まで冷却されたことを検出した後、或いはタイマー等で所定の時間が経過した後、送風機カバー41または冷蔵室ダンパ51を開き、第1送風機35または第2送風機50の運転を開始する。これにより、除霜熱による影響を出来るだけ小さく抑え、冷却運転を再開することができる。
【0090】
次に、
図2を参照して、エアカーテンを形成する運転について説明する。使用者が断熱扉8を開けると、扉開閉センサ63によって断熱扉8が開かれたことが検出される。冷蔵庫1の制御装置は、断熱扉8の開状態を検出すると、冷蔵室ダンパ51を開き、第2送風機50を運転し、且つフラップ53を開く。
【0091】
これにより、冷蔵室3の上面前部に形成された吹出口22aから下方に向かって冷気が吹き出され、冷蔵室3の前面開口にエアカーテンが形成される。ここで、フラップ53の角度(開度)を調節することにより、冷蔵室3の内部から庫外に冷気が漏れることを防止するための好適なエアカーテンを形成することができる。
【0092】
その後、使用者が断熱扉8を閉めると、扉開閉センサ63によって断熱扉8が閉じられたことが検出される。断熱扉8の閉状態を検出すると、冷蔵庫1の制御装置は、前述した通常の冷却運転を行う。
【0093】
尚、断熱扉8が閉じてから所定の時間、第2送風機50の運転を継続し、フラップ53をスイングさせても良い。これにより、断熱扉8を開いたことによって暖められた冷蔵室3の内部、特に断熱扉8の内側の収納ポケット57を効率良く冷却することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態に係る冷蔵庫について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。