(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴムラテックスの固形分とノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分を100質量%とすると、ゴムラテックスの固形分が65質量%〜97質量%と、ノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分が3質量%〜35質量%であることを特徴とする請求項1に記載の感圧接着剤組成物。
前記感圧接着剤組成物がさらにアンチブロッキング剤を含み、前記アンチブロッキング剤90質量部に対し、前記ゴムラテックスの固形分とノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分の合計が50質量部〜80質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感圧接着剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
親展葉書は、郵送時や郵便受けの中で雨や雪によって水に濡れてしまう場合がある。従来の親展葉書に用いられていた感圧接着剤は、水濡れによって剥離強度が大幅に上昇するため、係る感圧接着剤を用いた親展葉書においては、水に濡れたままの状態で保護材を剥離しようとすると、剥離強度が強すぎて容易に剥離できなかったり、基材や保護材が層間剥離を生じて破れてしまう、といった問題があった。
【0006】
本発明の課題は、水に濡れたままの状態でも保護材の剥離が容易な耐水性の親展葉書に適した感圧接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の感圧接着剤組成物は、耐水
性の親展葉書
に用いられる感圧接着剤組成物であって、樹脂成分として、ゴムラテックスとノニオン型水系ウレタン樹脂を含有し
、インク定着剤を含まず、
印刷した後に塗工することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、
前記ゴムラテックスの固形分とノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分を100質量%とすると、ゴムラテックスの固形分が65質量%〜97質量%と、ノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分が3質量%〜35質量%であること、
前記感圧接着剤組成物がさらにアンチブロッキング剤を含み、前記アンチブロッキング剤90質量部に対し、前記ゴムラテックスの固形分とノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分の合計が50質量部〜80質量部であること、
前記アンチブロッキング剤が、でんぷん及びシリカであること、
を好ましい形態として含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感圧接着剤組成物を親展葉書の基材と保護材とを圧着させる感圧接着剤として用いることにより、基材及び保護材の耐水性が向上する。さらに、本発明の感圧接着剤組成物は、水濡れによっても圧着直後の剥離強度が安定して保たれる。よって、本発明の感圧接着剤組成物を用いて基材と保護材とを圧着させた親展葉書は、水濡れによっても剥離強度の大幅な上昇が無く、基材及び保護材の耐水性の向上と相俟って、保護材を剥離する際の基材や保護材の紙破れが防止される。よって、本発明の感圧接着剤組成物を用いた親展葉書においては、受取人が保護材を剥離するまで情報が保護され、情報を読み取る際には、乾燥した状態のみならず、水に濡れた状態であっても容易に保護材を剥離して、記載された情報を読み取ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の感圧接着剤組成物について詳細に説明する。本発明の感圧接着剤組成物は、親展葉書に用いられる接着剤であって、情報が記載された基材と、係る情報を保護するための保護材との圧着に用いられる。
【0011】
本発明の感圧接着剤組成物は、樹脂成分として、ゴムラテックスとノニオン型水系ウレタン樹脂とを主成分として用い、インク定着剤を配合する際には、ゴムラテックスの固形分よりも少なく配合することを特徴とする。
【0012】
本発明に用いられるゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、天然ゴムラテックス変性体及び合成ゴムラテックスが好適に使用される。天然ゴムラテックス変性体の具体例としては、アクリル変性天然ゴムラテックス、過酸化物前加硫ラテックス等を挙げることができる。また、合成ゴムラテックスの具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。
【0013】
また、本発明に用いられるノニオン型水系ウレタン樹脂は、水性媒体にウレタン樹脂が溶解もしくは分散したものであり、例えば、ウレタン樹脂微粒子を乳化剤により水性媒体中に分散させたエマルジョンタイプのノニオン型水系ウレタン樹脂が挙げられる。
【0014】
本発明において、ゴムラテックスは基材と保護材とを互いに圧着させる際の接着力を発現する成分であり、これにノニオン型水系ウレタン樹脂を加えることで、基材や保護材の表面が感圧接着剤組成物でコートされた状態をとる。その結果、基材や保護材が水に濡れた場合でも、ノニオン型水系ウレタン樹脂の乳化重合時におけるノニオン界面活性剤のHLB(Hydorophile−Lipophile Balance:親水親油バランス)値が低いので親水性が低く、圧着直後の剥離強度がほぼ保たれる。そのため、水に濡れたままで保護材を剥離しても保護材や基材の紙破れなどを起こす恐れが低くなる。
【0015】
カチオン型水系ウレタン樹脂は凝集する性質を持つことから、ゴムラテックスと組み合わせて感圧接着剤組成物とすると、カチオン型水系ウレタン樹脂がゴムラテックスと凝集して固化し、組成物中で粒を生じてしまう。そのため、係る感圧接着剤組成物では圧着力にむらを生じる上、十分な圧着力が得られないため、親展葉書用の感圧接着剤には適していない。
【0016】
また、アニオン型水系ウレタン樹脂は、該ウレタン樹脂が包含するアニオン界面活性剤の親水性により、水に溶けやすい、或いは濡れやすい性質があるため、アニオン型水系ウレタン樹脂を用いた感圧接着剤組成物は乾燥被膜が水分を取り込みやすい。そのため、アニオン型水系ウレタン樹脂を用いた感圧接着剤組成物を親展葉書に用いると、水に濡れた際に感圧接着剤組成物の界面が溶出し、感圧接着剤組成物と基材や保護材との密着が強固となることで、剥離強度の上昇が発現されると考えられる。よって、アニオン型水系ウレタン樹脂をゴムラテックスと組み合わせて感圧接着剤組成物とし、親展葉書に用いると、水濡れによって剥離強度が急激に上昇し、水に濡れた状態で剥離しようとすると基材や保護材の紙破れを生じる恐れがある。よって、アニオン型水系ウレタン樹脂は親展葉書用の感圧接着剤には適していない。
【0017】
さらに、アイオノマー型水系ウレタン樹脂は疎水性の主鎖に少量の親水性のイオン基を持つため、ゴムラテックスと組み合わせて感圧接着剤組成物とし、親展葉書に用いると、水に濡れた際に該イオン基が水を捕獲して感圧接着剤組成物が膨張し、剥離強度が急激に上昇するため水に濡れた状態で剥離しようとすると基材や保護材の紙破れを生じる恐れがあり、親展葉書用の感圧接着剤には適していない。
【0018】
従来、親展葉書用の感圧接着剤組成物には、インク定着剤としてカチオン型水溶性高分子やカチオン型オリゴマーを用いていたが、係るインク定着剤は耐水性に影響を及ぼすため、本発明では樹脂成分として上記したゴムラテックスとノニオン型水系ウレタン樹脂を主成分として用い、樹脂材料からなるインク定着剤については影響が小さくなるように、ゴムラテックスの固形分よりも少なく用いる。好ましくは、本発明においてインク定着剤を配合しない。
【0019】
本発明において、感圧接着剤組成物に含まれるゴムラテックスとノニオン型水系ウレタン樹脂の配合量は、ゴムラテックスの固形分とノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分の合計を100質量%として、ゴムラテックスの固形分が65質量%〜97質量%、ノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分が3質量%〜35質量%となるよう配合することが好ましい。ゴムラテックスの固形分が65質量%未満の場合、即ち、ノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分が35質量%を超える場合には、保護材と基材とを互いに圧着させた際の剥離強度が弱くなり、保護材が剥がれやすくなる恐れがあり、好ましくない。また、ノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分が3質量%未満の場合には、係るウレタン樹脂を用いた効果が得られにくく、水濡れによって剥離強度が大幅に上昇し、保護材を剥離する際に基材や保護材が紙破れを生じやすくなる。
【0020】
本発明においては、本発明の感圧接着剤組成物を塗工した糊面同士が保存時に接着するのを避けるために、アンチブロッキング剤を添加することが好ましい。本発明で用いられるアンチブロッキング剤としては、例えば、重炭酸カルシウム、軽炭酸カルシウム、タルク、ステアリン酸金属石けん、でんぷん、シリカ等が挙げられる。これらのうちでも、感圧接着剤組成物塗工後のレーザープリンター等による耐熱性を向上せしめるためにシリカを含有させることが好ましい。また、感圧接着剤組成物としては、でんぷんを含有させることが好ましい。
【0021】
アンチブロッキング剤は、該アンチブロッキング剤90質量部に対して、感圧接着剤組成物中のゴムラテックスの固形分とノニオン型水系ウレタン樹脂の固形分との合計が50質量部〜80質量部となるように添加することが好ましい。
【0022】
本発明の感圧接着剤組成物は、ゴムラテックスとノニオン型水系ウレタン樹脂に必要に応じてインク定着剤、アンチブロッキング剤を加えて混合して得られる。尚、塗工しやすいように必要に応じて適量の水を加えても良い。そしてグラビアコーター、フレキソ、エアナイフコーター、バーコーターなどの塗布手段により、親展葉書の基材に塗工され、二つ折りや三つ折り、或いは別途用意された保護材を塗工面に重ね合わせ、互いに圧着させて郵送される。二つ折りや三つ折りの場合には、基材と保護材とは連続した1枚の紙から構成されるが、保護材を別途用意する場合には、基材と保護材とを異なる素材で構成することも可能である。保護する情報は基材、保護材の少なくとも一方に記載されている。尚、感圧接着剤組成物は、保護材に塗工して基材を圧着させても、基材と保護材の両方に塗工してそれぞれの塗工面が相対するように重ねて圧着させても良い。
【0023】
本発明の感圧接着剤組成物を用いて親展葉書を製造する際の基材及び保護材としては、通常、葉書に用いられている用紙であれば短時間の水濡れに対して良好な耐水性が得られるが、長時間の水濡れに対する耐水性も得られる点で、湿潤層間剥離強度が30g/インチ以上の耐水紙が好ましく用いられる。特に好ましくは湿潤層間剥離強度が115g/インチ以上の耐水紙である。また、静的接触角が115度以上の撥水性を備えていることも好ましい。
【0024】
上記湿潤層間剥離強度は、試料にセロハン粘着テープ((株)共和製)を添付し、2キログラムの圧力を掛けてセロハン粘着テープを試料に接着した後、1インチ幅にカットし、水に浸漬させる。3時間後、試料を取り出し、表面の水を拭った後、3分間放置し、その後、荷重測定用試験機として「FGS−50VB−400−DM」(日本電産シンポ(株)製)、測定器として「FGP−2」(日本電産シンポ(株)製)を用い、角度90度、剥離スピード264mm/minとして剥離強度を測定する。スタート位置から20mmの剥離強度は無視し、20mm〜130mmの剥離強度を5枚の試料について測定し、平均した値を湿潤層間剥離強度とする。
【0025】
また、静的接触角とは、純水の液滴の濡れ性を示すものである。静的接触角が0度の場合、純水の濡れ性が高く、純水の液滴が試料に弾かれずに付着する。一方、静的接触角が180度の場合、純水の濡れ性が低く、純水の液滴が試料に弾かれてしまい全く付着しない。静的接触角は、公知の接触角測定装置(例えば、自動接触角測定装置CA−V型:協和界面化学(株)製)を用いて容易に測定することが可能である。本発明においては、40μLの純水を滴下して1秒後、2秒後、3秒後、4秒後、5秒後の接触角を5回ずつ測定し、その平均値をとった。
【0026】
尚、本発明の感圧接着剤組成物を塗工した面に印刷を施すと、本発明の感圧接着剤組成物はインク定着剤の含有量が少ない、或いはインク定着剤を配合していないため、インクの定着性が良くない場合がある。よって、本発明の感圧接着剤組成物は、基材や保護材の塗工面に所定の印刷を施した後に塗工することが望ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0028】
尚、実施例で用いた原料、及び実施例における評価方法は以下の通りである。また、実施例中における「%」及び「部」はいずれも「質量%」及び「質量部」である。
【0029】
〔基材及び保護材〕
耐水紙「OKレインガード(登録商標)」(王子エフテックス(株)製)
静的接触角:120度、湿潤層間剥離強度:127g/インチ
〔感圧接着剤組成物原料〕
(1)ゴムラテックス
アクリル変性天然ゴムラテックス「Q.Y ADHESIVES QY−25MG・C」(クォー・ユー化成(有)製)、固形分:50%
【0030】
(2)水系ウレタン樹脂
・ノニオン型:「スーパーフレックス(登録商標) E−2000」(第一工業製薬(株)製)
固形分:50%
・カチオン型:「スーパーフレックス 620」(第一工業製薬(株)製)
固形分:30%
・アニオン型:「スーパーフレックス 820」(第一工業製薬(株)製)
固形分:30%
・アイオノマー型:「ハイドラン APX−101H」(大日本インキ化学(株)製)
固形分:45%
【0031】
(3)でんぷん
カチオン化タピオカ澱粉「マーメイド C−50」(敷島スターチ(株)製)
(4)シリカ
含水非結晶質二酸化ケイ素「Nipgel(登録商標) AZ−600」(東ソー・シリカ(株)製)
(5)インク定着剤
ポリアミン系高分子カチオン「MORIN FIX 6P」(モーリン化学工業(株)製)
【0032】
(実施例1〜5,比較例1〜5)
表1に示す組成に適量の水を加えて感圧接着剤組成物を調製し、それぞれバーコーターを用いて、塗工時の膜厚が16μmとなるように基材及び保護材に塗工後、それぞれの塗工面同士が相対するように重ねてメールシーラー「MS−9500」(大日本印刷(株)製)で圧着ローラにより圧力を加えて圧着させた。ここで、水濡れによる剥離強度の上昇を比較するために、実施例1〜5,比較例1〜4については圧着直後の剥離強度が80g/インチとなるように圧着ローラのローラギャップを調整した。また、比較例5については、圧着直後の剥離強度が50g/インチとなるように圧着ローラのローラギャップを調整した。その後、1インチ幅にカットして測定用試料とし、剥離強度を測定した。
【0033】
剥離強度の測定試験には、荷重測定用試験機として「FGS−50VB−400−DM」(日本電産シンポ(株)製)、測定器として「FGP−2」(日本電産シンポ(株)製)を用い、角度90度、剥離スピード264mm/minとして剥離強度を測定する。スタート位置から20mmの剥離強度は無視し、20mm〜130mmの剥離強度を5枚の試料について測定し、平均した値を剥離強度とする。
【0034】
測定用試料を水に浸漬し、5秒後に取り出して表面の水を拭った後、上記剥離強度の測定を行った。また、同様に測定用試料を水に浸漬し、3時間後に取り出して表面の水を拭った後、3分間放置して上記剥離強度の測定を行った。
【0035】
以上のようにして、圧着直後、5秒間湿潤後、3時間湿潤後の剥離強度を測定した。また、剥離の際に基材或いは保護材に紙破れを生じるか否かを観察した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
圧着直後の剥離強度が80g/インチに満たなかった例は、圧着ローラのローラギャップを調整して圧力条件を最大にしてもその値にしか達しなかった例である。また、圧着直後の剥離強度が80g/インチとなるように圧着ローラのローラギャップを調整しても、制御が容易ではなく、100g/インチを超える例もあった。
【0038】
また、表1において、圧着直後の剥離強度に対する5秒間湿潤後の剥離強度(5秒間湿潤後/圧着直後)の値が1.5を超す例については、水濡れによって大幅に剥離強度が上昇したことを示し、剥離の際に紙破れを生じていなくても、基材や保護材が紙破れを生じやすくなっていることを示している。
【0039】
表1に示すように、実施例1〜4では圧着直後から安定した適度な剥離強度を示し、湿潤後においても大幅な剥離強度の上昇は見られない。従って、乾燥状態のままでも、水濡れを生じても保護材が剥がれてしまう恐れが低くなる。また、水濡れによって保護材が剥離しにくくなったり、破れたりする恐れも低くなる。また、実施例5は樹脂成分中におけるゴムラテックスの含有量が少ないため、圧着直後の剥離強度が低くなったが、水濡れによっても剥離強度の大幅な上昇が見られず、ノニオン型水系ウレタン樹脂を用いた効果が見られた。
【0040】
比較例1は、ノニオン型水系ウレタン樹脂を用いていないため、水濡れによって剥離強度が大幅に上昇し、5秒間湿潤後に紙破れを生じた。
【0041】
比較例2は、カチオン型水系ウレタン樹脂を用いているため、感圧接着剤組成物中に粒を生じ、圧着力にむらがあり、圧着力自体も弱く、十分な圧着ができなかった。
【0042】
比較例3,4は、アイオノマー型或いはアニオン型の水系ウレタン樹脂を用いているため、水濡れによって5秒間湿潤後の剥離強度が大幅に上昇した。
【0043】
比較例5は、組成が実施例2に近いものの、インク定着剤をゴムラテックスの固形分よりも多く加えているため、インク定着剤の有する、インクの水分を吸着させる作用により、感圧接着剤組成物が水分を吸収し易くなり、その結果として感圧接着剤組成物が柔軟になり、圧着時に対面する感圧接着剤組成物同士の凝集力が向上することや、感圧接着剤組成物と基材や保護材との密着が強固となる作用により、剥離強度の上昇が発現した。また、インク定着剤の積極的な水分吸収作用により、吸収した水分が感圧接着剤組成物を通して基材、保護材に浸透し、基材や保護材の強度が低下して紙破れが発現し易くなる。尚、比較例5は、圧着直後の剥離強度が50g/インチとなるように圧着ローラのローラギャップを調整しているため、実施例2に比較して圧着直後の剥離強度は低くなっている。