(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
段階a)の前記低乳糖乳関連供給材料の供給が、UF保持液とUF透過液の形成をもたらす少なくとも1つの限外濾過(UF)段階に乳を付すこと、および、低乳糖乳関連供給材料が少なくともUF保持液のタンパク質を含むように、少なくともUF保持液のタンパク質を前記低乳糖乳関連供給材料の形成に使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
従って、本発明の一態様は、包装された低乳糖乳関連製品を製造する方法に関し、前記方法は、次の段階:
a)低乳糖乳関連供給材料を供給する段階
b)乳関連供給材料から得られる乳誘導体を高温(HT)処理に付す段階、この際、乳誘導体は140〜180℃の範囲内の温度まで加熱され、その温度範囲で長くて200ミリ秒の期間保持され、その後最終的に冷却される段階、
c)HT処理された乳誘導体から得られる低乳糖乳関連製品を包装する段階
を含む。
【0026】
本発明の状況において、用語「低乳糖乳関連供給材料」および「乳関連供給材料」は、同義的に使用される。低乳糖乳関連供給材料は、多くて3%(w/w)の乳糖を含む。
【0027】
段階a)の低乳糖乳関連供給材料は、多数の異なる方法で製造することができる。例えば、先行技術に記載される一部の低乳糖乳製品が使用され得る。例えば、特許文書の欧州特許第0203706号、米国特許第4,820,348号、国際公開第2008/000895号、米国特許出願公開第2010/055286号、米国特許出願公開第2005/214409A号、米国特許出願公開第2010/055289号、国際公開第2009/000972号、および国際公開第2009/043356号の低乳糖乳製品を参照されたい。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、乳関連供給材料は、例えば、乳糖の酵素加水分解、限外濾過を用いる乳糖の除去、ナノ濾過を用いる乳糖の除去、電気透析を用いる乳糖の除去、イオン交換クロマトグラフィーを用いる乳糖の除去、および遠心分離技術を用いる乳糖の除去からなる群から選択されるプロセス段階を用いて調製することができる。
【0029】
あるいは、乳関連供給材料は、例えば、乳糖の酵素加水分解、限外濾過を用いる乳糖の除去、ナノ濾過を用いる乳糖の除去、電気透析を用いる乳糖の除去、イオン交換クロマトグラフィーを用いる乳糖の除去、および遠心分離技術を用いる乳糖の除去からなる群から選択される少なくとも2つのプロセス段階を用いて調製することができる。
【0030】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳関連供給材料の供給は、UF保持液とUF透過液の形成をもたらす、少なくとも1つの限外濾過(UF)段階に乳を付すこと、および、乳関連供給材料が少なくともUF保持液のタンパク質を含むように、少なくともUF保持液のタンパク質を乳関連供給材料の形成に使用することを含む。UF保持液は、一般に、乳のより大きい分子の濃縮物(例えばタンパク質の濃縮物)と、より小さい分子を実質的に同じ濃度で含有する。UF透過液は、実質的にタンパク質を含まないが、水と、より小さい分子、例えば乳糖およびイオンなどを、実質的に乳中と同じ濃度で含有する。
【0031】
乳関連供給材料を調製するために使用される乳は、好ましくはウシの乳である。
【0032】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳関連供給材料の供給は、少なくとも1つのナノ濾過または逆浸透段階を含む。その段階は、水分を含む透過液および場合によって一価もしくは二価イオンの塩ももたらし、その透過液は、少なくとも1つの限外濾過の保持液に添加される。本発明のさらにより好ましい実施形態では、上記の限外濾過段階の透過液をナノ濾過または逆浸透段階に付し、ナノ濾過または逆浸透の透過液を少なくとも1つの限外濾過の保持液に添加する。
【0033】
そのようなプロセスの有用な例は、
図12および13に示される。
【0034】
図12において、乳は、限外濾過ユニット(1)にポンプで送られて、限外濾過保持液(2)および限外濾過透過液(3)に分離される。限外濾過透過液(3)は、ナノ濾過ユニット(4)にポンプで送られて、ナノ濾過保持液(6)およびナノ濾過透過液(5)に分離される。主に水および一価もしくは二価イオンの塩を含む、ナノ濾過透過液は、限外濾過透過液(3)と混合され、その混合物が乳関連供給材料として使用される。そのようなプロセスを実施するためのさらなる詳細は、国際公開第2009/043356号に見出すことができる。
【0035】
図13では、
図12のプロセスの変更形が示される。限外濾過保持液(2)およびナノ濾過透過液(5)の混合物(7)を直接乳関連供給材料として使用する代わりに、それは、限外濾過(1)とナノ濾過(4)の2回目の組合せに送られる。2回目の限外濾過保持液(2’)は、2回目のナノ濾過(5’)と組み合わされ、この混合物が乳関連供給材料として使用される。
【0036】
本発明の一部の好ましい実施形態では、段階a)の乳関連供給材料の供給には、次の段階
a1)乳を限外濾過(UF)に付し、それによってUF保持液およびUF透過液を得る段階
a2)UF透過液をナノ濾過(NF)に付し、それによってNF保持液とNF透過液を得る段階
a3)NF透過液とUF保持液を混合し、それによって低乳糖乳混合物を得る段階
a4)任意で、段階a1)〜a3)を、段階a1)の最初の乳を最後の低乳糖乳混合物に毎回置き換えて1回または2回繰り返す段階、および
a5)最後の低乳糖乳混合物を乳関連供給材料として使用する段階
が含まれる。
【0037】
乳関連供給材料を調製するために使用される乳は、例えば脱脂乳または半脱脂乳であってよい。乳関連供給材料を調製するために使用される乳の乳脂肪含有量は、多くて5%(w/w)、好ましくは、多くて(most)3.5%(w/w)、さらにより好ましくは、多くて2%(w/w)であり得る。例えば、乳関連供給材料を調製するために使用される乳の脂肪分は、多くて1.5%(w/w)であり得る。好ましくは、乳の脂肪分は、多くて0.5%(w/w)である。さらにより好ましくは、乳の脂肪分は、多くて0.1%(w/w)である。
【0038】
限外濾過およびナノ濾過プロセスは、当技術分野で周知である。ナノ濾過に使用される膜は、例えば10−3〜10−2μmの範囲内の孔径を有する。限外濾過に使用される膜は、例えば10−2〜10−1μmの範囲内の孔径を有する。
【0039】
本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、多くて3%(w/w)の乳糖を含む。例えば、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、多くて2%(w/w)の乳糖、好ましくは、多くて1%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、多くて0.5%(w/w)の乳糖を含み得る。
【0040】
さらに低いレベルの乳糖が望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、多くて0.2%(w/w)の乳糖を含む。例えば、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、多くて0.1%(w/w)の乳糖、好ましくは、多くて0.05%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、多くて0.01%(w/w)の乳糖を含み得る。
【0041】
本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、0.01〜2%(w/w)のグルコースを含む。例えば、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、0.02〜1.5%(w/w)のグルコース、好ましくは0.05〜1%(w/w)、さらにより好ましくは低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して、0.1〜0.5%(w/w)のグルコースを含み得る。
【0042】
さらに低いレベルのグルコースが望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.01〜0.5%(w/w)のグルコースを含む。例えば、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.02〜0.3%(w/w)のグルコース、好ましくは0.04〜0.2%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.05〜0.1%(w/w)のグルコースを含み得る。
【0043】
本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のガラクトースを含む。例えば、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.02〜1.5%(w/w)のガラクトース、好ましくは0.05〜1%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.1〜0.5%(w/w)のガラクトースを含み得る。
【0044】
より低いレベルのガラクトースが望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.01〜0.5%(w/w)のガラクトースを含む。例えば、低乳糖乳関連供給材料は、低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.02〜0.3%(w/w)のガラクトース、好ましくは0.04〜0.2%(w/w)、さらにより好ましくは低乳糖乳関連供給材料の総重量に対して0.05〜0.1%(w/w)のガラクトースを含み得る。
【0045】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳関連供給材料は、乳関連供給材料の総重量に対して0.5〜4%(w/w)の範囲内の単糖および二糖の総量を含む。例えば、乳関連供給材料は、乳関連供給材料の総重量に対して0.7〜3.5%(w/w)の範囲内、好ましくは1〜3.2%(w/w)の範囲内、さらにより好ましくは、乳関連供給材料の総重量に対して1〜3%(w/w)の範囲内の単糖および二糖の総量を含み得る。
【0046】
段階a)において供給される乳関連供給材料は、好ましくは液体の乳関連供給材料である。本明細書において、用語「乳関連供給材料」には、低乳糖の全乳、脱脂乳、無脂肪乳、低脂肪乳、高脂肪乳、または濃縮乳が含まれる。
【0047】
無脂肪乳は、無脂肪または脱脂乳製品である。低脂肪乳は、一般に約1%〜約2%の脂肪を含有する乳として定義される。高脂肪乳は、約3.25%の脂肪を含む場合が多い。本明細書において、用語「乳」はまた、動物および植物起源からの乳も包含することを意図する。
【0048】
乳の動物起源としては、限定されるものではないが、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、ラクダ、ラマ、ロバおよびシカが挙げられる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、乳関連供給材料は、ウシ乳を含む。
【0050】
乳の植物起源としては、限定されるものではないが、ダイズから抽出された乳が挙げられる。さらに、用語「乳関連供給材料」とは、全乳だけでなく、脱脂乳またはそれに由来するあらゆる液体成分、例えばホエイまたは乳清などもさす。「ホエイ」または「乳清」は、結局残っている乳成分、または乳に含まれる乳脂肪およびカゼインのかなりの部分が除去された乳成分を意味する。ホエイという用語は、レンネットに基づくチーズ製造の副生成物である、いわゆるスイートホエイ、および、一般にカゼイン塩またはクワルクチーズおよびクリームチーズの製造中に起こる乳の酸性化の副生成物である酸ホエイも包含する。
【0051】
本発明の実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて60% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、ダブル・クリーム(cream double)である。
【0052】
本発明のもう一つの実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて40% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、ホイッピング・クリームである。
【0053】
さらに本発明の一実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて20% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、約18% w/wの乳脂肪を含有するシングル・クリーム/テーブル・クリームである。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて4% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、一般に2〜4% w/wの乳脂肪、好ましくは約3% w/wの乳脂肪を含有する高脂肪乳である。
【0055】
本発明のさらなる実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて2% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、一般に0.7〜2% w/wの乳脂肪、好ましくは1〜1.5% w/wの乳脂肪を含有する半脱脂乳である。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて0.7 w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、通常0.1〜0.7% w/wの乳脂肪、好ましくは0.3〜0.6% w/wの乳脂肪、例えば約0.5% w/wの乳脂肪などを含有する脱脂乳である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、多くて0.1% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連供給材料の例は、0.05〜0.1% w/wの範囲内の脂肪分を有する脱脂乳である。
【0058】
本発明の状況において、組成物がX%(w/w)の指定成分を含む、含有するまたは有すると言われる場合、指定成分の重量百分率は、別に記載されていない限り、組成物の総重量に対して計算される。
【0059】
乳関連供給材料は、通常、水分を含み、例えば、少なくとも50%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも70%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも80%(w/w)の水分を含み得る。例えば、乳誘導体は、少なくとも85%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも90%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも95%(w/w)の水分を含み得る。
【0060】
本発明の特に好ましい実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、低乳糖乳を含む。乳関連供給材料は、例えば、低乳糖乳で構成され得る。
【0061】
本発明の一部の実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、2.5〜4.5% w/wのカゼイン、0.25〜1% w/wの乳清タンパク質、および0.01〜3% w/wの乳脂肪を含む。本発明の一部の好ましい実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、2.5〜4.5% w/wのカゼイン、0.25〜1% w/wの乳清タンパク質、および0.1〜1.5% w/wの乳脂肪を含む。本発明のその他の好ましい実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、2.5〜4.5% w/wのカゼイン、0.25〜1% w/wの乳清タンパク質、および0.01〜0.1% w/wの乳脂肪を含む。
【0062】
本発明の状況において、用語「乳清タンパク質」は、ウシ生乳の非カゼインタンパク質に関する。
【0063】
本発明の方法は、好ましくは、新鮮な乳関連供給材料、すなわち、乳関連供給材料の供給源(例えば乳牛)から最近搾乳した乳による乳関連供給材料を処理するために使用することができる。例えば、乳関連供給材料は、長くて48時間経過した、すなわち、搾乳から長くて48時間のもの、より好ましくは、長くて36時間経過したもの、例えば長くて24時間経過したものであることが好ましい。
【0064】
乳関連供給材料は高品質であることが好ましく、通常、乳関連供給材料は、多くて100,000コロニー形成単位(cfu)/mL、好ましくは、多くて50,000cfu/mL、さらにより好ましくは、多くて25,000cfu/mLを含む。乳関連供給材料は、多くて10,000cfu/mL、例えば多くて7,500cfu/mLなどを含むことがさらに好ましい。
【0065】
段階a)の乳関連供給材料は、1以上の添加剤を含んでよい。例えば、1以上の添加剤は、風味を含んでよい。有用な風味は、例えば、イチゴ、チョコレート、バナナ、マンゴー、および/またはバニラである。
【0066】
あるいは、またはそれに加えて、1以上の添加剤は、1以上のビタミンを含んでよい。有用なビタミンは、例えばビタミンAおよび/またはビタミンDである。その他のビタミン類、例えばビタミンB、C、および/またはEなども有用であり得る。
【0067】
あるいは、またはそれに加えて、1以上の添加剤は、1以上のミネラルも含んでよい。有用なミネラルの例は、乳ミネラルサプリメントCapolac MM−0525(Arla Foods Ingredients Amba,Denmark)である。もう一つの有用な添加剤は、ホエイタンパク質である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、段階a)の乳関連供給材料は、低温殺菌され、場合により均質化もされたものである。
【0069】
本発明の段階b)は、前記乳関連供給材料から得られる乳誘導体を高温(HT)処理に付すことを含み、乳誘導体は140〜180℃の範囲内の温度に加熱され、その温度範囲で長くて200ミリ秒の期間保持され、その後最終的に冷却される。
【0070】
本発明の状況において、乳誘導体が乳関連供給材料から「得られる」場合、それは、乳関連供給材料の固体の少なくとも80%(w/w)が乳誘導体に含まれていることを意味する。例えば、乳関連供給材料の固体の少なくとも90%(w/w)、前記固体の好ましくは少なくとも95%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも99%(w/w)が、乳誘導体に含まれ得る。注目すべきは、乳関連供給材料の固体の一部が、乳誘導体中に乳関連供給材料中と同じ形態で存在する可能性があるか、または、それらは、例えば、加熱、酸化または酵素分解によって修飾されている可能性があることである。例えば、乳関連供給材料の固体の一部は、乳誘導体中に加水分解した形態または変性した形態で存在する可能性がある。例えば、乳関連供給材料の乳糖の一部は、例えば、乳誘導体中に、乳糖の加水分解生成物であるグルコースおよびガラクトースの形態で存在し得る。乳関連供給材料中でそれらの天然形態で存在していた一部のタンパク質は、乳誘導体中に変性形態で存在し得る。
【0071】
乳誘導体が乳関連供給材料から得られる場合、乳関連供給材料の水のかなりの量が乳誘導体に含まれていることがさらに好ましい。例えば、乳関連供給材料の水の少なくとも80%(w/w)が乳誘導体に含まれていてよい。あるいは、乳関連供給材料の水の少なくとも90%(w/w)、好ましくは少なくとも95%(w/w)、さらにより好ましくは水の少なくとも99%(w/w)、例えば乳関連供給材料の実質的に全ての水が乳誘導体に含まれていてよい。
【0072】
本発明の状況において、用語「固体」とは、全ての水が乳から除去された場合に残る分子に関する。用語「固体」には、炭水化物、タンパク質、ペプチド、乳脂肪、ミネラル、酸、ビタミンおよびその他の小型の非水分子が含まれる。
【0073】
乳誘導体は、例えばかなりの量の乳関連供給材料を含有していてよい。例えば、乳誘導体は、乳関連供給材料と同一であってよい。あるいは、乳誘導体は、乳関連供給材料から本質的になってよい。
【0074】
本発明の状況において、用語「から本質的になる」とは、言及した製品または組成物が、本発明の基本的かつ新規な特徴に物質的に影響を及ぼさないさらなる随意成分と同様に、言及した成分で構成されることを意味する。
【0075】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳誘導体を乳関連供給材料から得ることは、乳関連供給材料を酵素不活性化段階に付すことを含む。
【0076】
酵素不活性化段階は、例えば、乳関連供給材料の温度を70〜95℃の範囲内の温度に調整すること、および、乳関連供給材料の温度をその範囲内で30〜500秒の範囲内の期間保持することを含み得る。
【0077】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳誘導体を乳関連供給材料から得ることは、乳関連供給材料の乳糖の少なくとも一部を加水分解することを含む。
【0078】
乳糖の加水分解は、例えば、乳関連供給材料とラクターゼ酵素を接触させることを含み得る。
【0079】
本発明の一部の実施形態では、加水分解は、酵素不活性化段階の後に実施される。
【0080】
本発明のその他の実施形態では、酵素不活性化段階は、加水分解の後に実施される。
【0081】
本発明の一部の実施形態では、乳誘導体を乳関連供給材料から得ることは、脂質源を乳関連供給材料に添加することをさらに含む。
【0082】
本発明の一部の実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して、多くて3%(w/w)の乳糖を含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して、多くて2%(w/w)の乳糖、好ましくは、多くて1%(w/w)、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して、多くて0.5%(w/w)の乳糖を含み得る。
【0083】
さらにより低いレベルの乳糖が望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して、多くて0.2%(w/w)の乳糖を含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して、多くて0.1%(w/w)の乳糖、好ましくは、多くて0.05%(w/w)、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して、多くて0.01%(w/w)の乳糖を含み得る。
【0084】
本発明の一部の実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のグルコースを含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.02〜1.5%(w/w)のグルコース、好ましくは0.05〜1%(w/w)、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して0.1〜0.5%(w/w)のグルコースを含み得る。
【0085】
時にはより低いレベルのグルコースが望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.01〜0.5%(w/w)のグルコースを含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.02〜0.3%(w/w)のグルコース、好ましくは0.04〜0.2%(w/w)、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して0.05〜0.1%(w/w)のグルコースを含み得る。
【0086】
本発明の一部の実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のガラクトースを含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.02〜1.5%(w/w)のガラクトース、好ましくは0.05〜1%(w/w)、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して0.1〜0.5%(w/w)のガラクトースを含み得る。
【0087】
より低いレベルのガラクトースが望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.01〜0.5%(w/w)のガラクトースを含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.02〜0.3%(w/w)のガラクトース、好ましくは0.04〜0.2%(w/w)、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して0.05〜0.1%(w/w)のガラクトースを含み得る。
【0088】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.5〜4%(w/w)の範囲内の単糖および二糖の総量を含む。例えば、乳誘導体は、乳誘導体の総重量に対して0.7〜3.5%(w/w)の範囲内、好ましくは1〜3.2%(w/w)の範囲内、さらにより好ましくは、乳誘導体の総重量に対して1〜3%(w/w)の範囲内の単糖および二糖の総量を含み得る。
【0089】
本発明の一部の好ましい実施形態では、HT処理の直前の乳誘導体の温度は、60〜85℃の範囲内、好ましくは62〜80℃の範囲内、さらにより好ましくは65〜75℃の範囲内である。予備実験は、乳誘導体の温度がこれらの温度範囲内である場合、HT処理系で起こるファウリングがより少ないことを示す。
【0090】
本発明の実施形態では、乳誘導体は、段階a)の乳関連供給材料からなる。
【0091】
しかし、本発明のもう一つの実施形態では、乳関連供給材料は、1以上の添加剤、例えば乳脂肪をHT処理の前に添加されている。この場合、乳誘導体は、1以上の添加剤(例えば乳脂肪)と乳関連供給材料の両方を含む。
【0092】
本発明の実施形態では、乳誘導体は、少なくとも50%(w/w)の段階a)の乳関連供給材料、好ましくは少なくとも75%(w/w)の乳関連供給材料、さらにより好ましくは少なくとも85%(w/w)の乳関連供給材料を含む。例えば、乳誘導体は、少なくとも90%(w/w)の段階a)の乳関連供給材料、好ましくは少なくとも95%(w/w)の乳関連供給材料、さらにより好ましくは少なくとも97.5%(w/w)の乳関連供給材料を含み得る。
【0093】
乳誘導体は、通常、水分を含み、例えば、少なくとも50%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも70%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも80%(w/w)の水分を含み得る。例えば、乳誘導体は、少なくとも85%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも90%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも95%(w/w)の水分を含み得る。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、乳誘導体は、1以上の脂質源をさらに含む。
【0095】
1以上の脂質源は、例えば、植物性脂肪および/または植物油を含み得る。さらに、1以上の脂質源が植物性脂肪および/または植物油からなることがあり得る。これは、一般に、乳関連製品がいわゆるフィルドミルク、すなわち、元の乳脂肪の少なくとも一部が、植物油または植物性脂肪などの乳成分を含まない脂質源に置き換えられた乳製品の場合である。
【0096】
植物油は、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ダイズ油、パーム油、アマニ油、グレープシード油、ナタネ油、オリーブ油、ラッカセイ油およびそれらの組合せからなる群から選択される1以上の油を含み得る。
【0097】
植物性脂肪が望ましい場合、その植物性脂肪は、例えば、パーム油系植物性脂肪、パーム核油系植物性脂肪、ピーナッツバター、カカオバター、ココナッツバター、およびそれらの組合せからなる群から選択される1以上の脂肪を含み得る。
【0098】
本発明の好ましい実施形態では、1以上の脂質源は、乳脂肪源を含むか、またさらには乳脂肪源からなる。
【0099】
乳脂肪源は、例えば、クリーム、ダブル・クリーム(cream double)、無水乳脂肪、ホエイクリーム、バターオイル、バターオイル画分、およびそれらの組合せからなる群から選択される1以上の脂質源を含み得る。
【0100】
貯蔵寿命の長い乳の製造は、一般に、乳の乳脂肪画分のUHT処理を含む。本発明者らは、たとえUHT処理した乳脂肪、例えばクリームが、貯蔵寿命の長い乳に相対的に少量で添加されただけであっても、それはそれでもやはり望ましくない加熱された風味に寄与し得ることを見出した。本発明者らは、乳の長い貯蔵寿命を失うことなく、乳脂肪、例えばクリームを、通常行われるよりも軽い熱処理に付すことができることをさらに見出した。
【0101】
従って、本発明の好ましい実施形態では、1以上の脂質源、例えばクリームなどの乳脂肪源は、脂質源の温度を2〜200秒の期間、70〜100℃の範囲内の温度に調整することにより熱処理された。例えば、1以上の脂質源は、脂質源の温度を100〜200秒の期間、70〜85℃の範囲内の温度に調整することにより熱処理することができる。あるいは、1以上の脂質源は、脂質源の温度を2〜100秒の期間、85〜100℃の範囲内の温度に調整することにより熱処理することができる。
【0102】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、1以上の脂質源、例えばクリームなどの乳脂肪源は、脂質源の温度を10ミリ秒〜4秒の期間、100〜180℃の範囲内の温度に調整することにより熱処理された。
【0103】
例えば、1以上の脂質源は、脂質源の温度を0.5〜4秒の期間、100〜130℃の範囲内の温度に調整することにより熱処理することができる。あるいは、1以上の脂質源は、脂質源の温度を10ミリ秒〜0.5秒の期間、130〜180℃の範囲内の温度に調整することにより熱処理することができる。
【0104】
あるいは、段階b)の状況において記載されるHT処理は、例えば、1以上の脂質源の別々の熱処理に使用されてよい。
【0105】
段階b)のHT処理は、乳誘導体を140〜180℃、好ましくは145〜170℃、さらにより好ましくは150〜160℃の範囲内の温度に加熱することを含む。
【0106】
本発明の実施形態では、段階b)のHT処理は、乳誘導体を140〜170℃、好ましくは145〜160℃、さらにより好ましくは150〜155℃の範囲内の温度に加熱することを含む。
【0107】
本発明のもう一つの実施形態では、段階b)のHT処理は、乳誘導体を150〜180℃、好ましくは155〜170℃、さらにより好ましくは160〜165℃の範囲内の温度に加熱することを含む。
【0108】
さらに本発明の一実施形態では、乳誘導体の温度は、段階b)に供給される時に、70〜75℃の範囲内の温度である。
【0109】
HT処理の高い温度は、例えば目的温度からせいぜい+/−2℃、好ましくは、せいぜい+/−1℃、さらにより好ましくは、せいぜい+/−0.5℃、例えばせいぜい+/−0.25℃など変動し得る。
【0110】
本発明の好ましい実施形態では、乳誘導体の温度は、前記HT温度範囲内で、長くて200ミリ秒、好ましくは、長くて150ミリ秒、さらにより好ましくは、長くて100ミリ秒の期間保持される。
【0111】
例えば、乳誘導体の温度は、前記HT温度範囲内で、10〜200ミリ秒、好ましくは25〜150ミリ秒、さらにより好ましくは30〜100ミリ秒の期間保持され得る。
【0112】
本発明のもう一つの実施形態では、乳誘導体の温度は、前記HT温度範囲内で、10〜100ミリ秒、好ましくは25〜90ミリ秒、さらにより好ましくは30〜70ミリ秒の期間保持される。
【0113】
プロセスパラメータと、乳誘導体の温度をHT処理温度範囲内に保持する時間(「保持時間」と呼ばれる場合もある)との関係は、一般に機器製造業者によって提供される。
【0114】
そうでない場合、保持時間は下に概説される通り決定することができる:
1.乳誘導体からの供給材料の熱容量を実験式によって計算する
2.供給材料の温度を予熱温度から所望の熱処理温度まで上昇させるための所要エネルギー(蒸気kg/時)を計算する
3.総蒸気量から所要加熱蒸気量を減算することにより、余分な蒸気(輸送に使用)を計算する
4.保持セルの正確な容積を求める
5.あらゆる容積変化(例えば加熱蒸気の縮合)を含めて、プロセスユニットの中に入り通過する材料の容積流量を求める
6.保持セルの容積を容積流量で除算することにより、保持時間を計算する。
【0115】
本発明の好ましい実施形態では、乳誘導体の加熱、保持、および冷却を含む、HT処理の継続期間は、長くて500ミリ秒、好ましくは、長くて300ミリ秒、さらにより好ましくは、長くて200ミリ秒、例えば長くて150ミリ秒などである。
【0116】
例えば、乳誘導体の加熱、保持、および冷却を含む、HT処理の継続期間は、長くて400ミリ秒、好ましくは、長くて350ミリ秒、さらにより好ましくは、長くて250ミリ秒、例えば長くて175ミリ秒などであり得る。
【0117】
乳誘導体の加熱、保持、および冷却を含む、HT処理の継続期間は、乳誘導体が少なくとも95℃である期間の継続期間として計算され得る。
【0118】
段階b)の冷却は、好ましくは乳誘導体を高くて90℃、例えば高くて70℃などの温度に冷却する。本発明の実施形態では、乳誘導体は、2〜90℃の範囲内、好ましくは70〜95℃の範囲内、さらにより好ましくは72〜85℃の範囲内の温度に冷却される。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、HT処理の冷却の継続期間は、長くて50ミリ秒、好ましくは、長くて10ミリ秒、さらにより好ましくは、長くて5ミリ秒、例えば1ミリ秒などである。
【0120】
段階b)のHT処理の加熱は、乳誘導体の温度を急速に上昇させることができなければならない。そのような急速な温度上昇は、乳誘導体を蒸気に接触させることによって達成することができる。従って、本発明の好ましい実施形態では、HT処理の加熱は、乳誘導体を蒸気に接触させることによって実施される。様々な技法が、乳誘導体を蒸気に接触させるために利用可能である。これらのうちの1つは、蒸気を加熱する液体に注入するダイレクトスチームインジェクションである。別の技法は、加熱する液体を、蒸気で満たされたチャンバの中に注入するスチームインフュージョンである。
【0121】
蒸気の温度は、一般にHT処理の所望の処理温度よりも多少高い、例えば、HT処理の所望の処理温度よりもせいぜい10℃高い、好ましくは、せいぜい5℃高い、さらにより好ましくは、せいぜい3℃高い。
【0122】
例えば、HT処理の加熱は、乳誘導体を蒸気に接触させることを含んでよく、注目すべきは、その他のエネルギー源も同様に加熱に寄与し得ることである。
【0123】
本発明の実施形態では、HT処理の加熱は、乳誘導体を電磁エネルギーに付すことを含む、または乳誘導体を電磁エネルギーに付すことからなる。有用な電磁エネルギーの例は、IR放射および/またはマイクロ波放射である。
【0124】
また、加熱した乳誘導体が、HT処理の一部として急速に冷却されることも重要であり、本発明の好ましい実施形態では、HT処理の冷却は、フラッシュ冷却を含む、またはフラッシュ冷却からなる。
【0125】
本発明の状況において、用語「フラッシュ冷却」は、熱い液体またはエアゾールを真空チャンバの中に導入する、例えば噴霧することにより得られる冷却であり、それによって液体の一部が蒸発して残りの液体を急速に冷却する。
【0126】
有用なHT処理システムの例は、例えば、Gea Niro(Denmark)のSaniheat(商標)システム、Gea Niro(Denmark)のLinient Steam Injection(LSI(商標))システムまたはInvensys APV(Denmark)のInstant Infusion System(IIS)である。
【0127】
有用なHT処理システムの例は、例えば、国際公開第2006/123,047A1号および国際公開第98/07,328号に見出され、両方とも全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
高温処理の一般的な態様は、例えば「Thermal technologies in food processing」ISBN 185573558 Xに見出され、それは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
本方法の段階c)は、HT処理された乳誘導体から得られる低乳糖乳関連製品を包装することを含む。
【0130】
本発明の状況において、乳関連製品が、HT処理された乳誘導体から「得られた」場合、それは、HT処理された乳誘導体の固体の少なくとも80%(w/w)がその乳関連製品に含まれていることを意味する。例えば、HT処理された乳誘導体の固体の少なくとも90%(w/w)が、乳関連製品に含まれていてよい。好ましくは、HT処理された乳誘導体の固体の少なくとも95%(w/w)が、乳関連製品に含まれている。さらにより好ましくは、HT処理された乳誘導体の固体の少なくとも99%(w/w)が、乳関連製品に含まれている。注目すべきは、HT処理された乳誘導体の固体の一部が、HT処理された乳誘導体中と同じ形態で乳関連製品中に存在し得ること、または、それらの一部が、例えば加熱、酸化または酵素分解により修飾されている可能性があることである。例えば、HT処理された乳誘導体の固体の一部は、乳関連製品中に加水分解形態または変性形態で存在する可能性がある。例えば、HT処理された乳誘導体の乳糖の一部は、例えば乳関連製品中に、乳糖の加水分解生成物であるグルコースおよびガラクトースの形態で存在する可能性がある。HT処理された乳誘導体中でそれらの天然形態で存在した一部のタンパク質は、乳関連製品中に変性形態で存在する可能性がある。
【0131】
乳関連製品がHT処理された乳誘導体から得られる場合、HT処理された乳誘導体のかなりの量の水が乳関連製品に含まれていることがさらに好ましい。例えば、HT処理された乳誘導体の水の少なくとも80%(w/w)が乳関連製品に含まれていてよい。あるいは、HT処理された乳誘導体の水の少なくとも90%(w/w)、好ましくは少なくとも95%(w/w)、さらにより好ましくは水の少なくとも99%(w/w)、例えばHT処理された乳誘導体の実質的に全ての水が乳関連製品に含まれていてよい。
【0132】
乳関連製品は、例えば、かなりの量のHT処理された乳誘導体を含有していてよい。例えば、乳関連製品は、HT処理された乳誘導体と同一であってよい。あるいは、乳関連製品は、HT処理された乳誘導体から本質的になってよい。
【0133】
本発明の一部の好ましい実施形態では、低乳糖乳関連製品をHT処理された乳誘導体から得ることは、HT処理された乳誘導体を酵素不活性化段階に付すことを含む。
【0134】
酵素不活性化段階は、例えば、HT処理された乳誘導体の温度を70〜95℃の範囲内の温度に調整し、HT処理された乳誘導体の温度をその範囲内で30〜500秒の範囲内の期間保持することを含み得る。
【0135】
本発明の一部の好ましい実施形態では、低乳糖乳関連製品を乳誘導体から得ることは、HT処理された乳誘導体の乳糖の少なくとも一部の加水分解を含む。
【0136】
乳糖の加水分解は、例えば、HT処理された乳誘導体をラクターゼ酵素に接触させることを含み得る。
【0137】
本発明の一部の好ましい実施形態では、加水分解は、酵素不活性化段階の後に実施される。
【0138】
本発明のその他の好ましい実施形態では、酵素不活性化段階は、加水分解の後に実施される。
【0139】
段階c)の包装は、任意の適した包装技術であってよく、任意の適した容器を本発明の乳関連製品の包装に使用してよい。
【0140】
しかし、本発明の好ましい実施形態では、段階c)の包装は無菌包装である、すなわち、乳関連製品は無菌条件下で包装される。例えば、無菌包装は、無菌充填システムを使用することによって実施されてよく、それは好ましくは乳を1以上の無菌容器に充填することを含む。
【0141】
有用な容器の例は、例えば、瓶、カートン、ブリック、および/または袋である。
【0142】
包装は、好ましくは室温以下で実施される。従って、低乳糖乳関連製品の温度は、好ましくは、包装の間、高くて30℃、好ましくは、高くて25℃、さらにより好ましくは、高くて20℃、例えば高くて10℃などである。
【0143】
包装中の低乳糖乳関連製品の温度は、例えば、2〜30℃の範囲内、好ましくは5〜25℃の範囲内であり得る。
【0144】
本発明の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、少なくとも50%(w/w)の段階b)のHT処理された乳誘導体、好ましくは少なくとも75%(w/w)の段階b)のHT処理された乳誘導体、さらにより好ましくは少なくとも85%(w/w)の段階b)のHT処理された乳誘導体を含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、少なくとも90%(w/w)の段階b)のHT処理された乳誘導体、好ましくは少なくとも95%(w/w)の段階b)のHT処理された乳誘導体、さらにより好ましくは少なくとも97.5%(w/w)の段階b)のHT処理された乳誘導体を含み得る。
【0145】
低乳糖乳関連製品は、通常、水分を含み、例えば、少なくとも50%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも60%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも70%(w/w)の水分を含み得る。例えば、低乳糖乳関連製品は、少なくとも75%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも80%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも85%(w/w)の水分を含み得る。
【0146】
本発明の好ましい実施形態では、低乳糖乳関連製品は、少なくとも90%(w/w)の水分を含む。
【0147】
さらに、低乳糖乳関連製品は、乳関連供給材料および/または乳誘導体と同じ添加剤を含んでよい。
【0148】
本発明のもう一つの態様は、本発明の方法により入手可能な乳関連製品に関する。例えば、乳関連製品は、段階b)のHT処理された乳誘導体であってよく、あるいは、それは段階c)の包装された低乳糖乳関連製品であってよい。
【0149】
貯蔵寿命の長い乳製品に関して、望ましくない酵素活性は、微生物の増殖と同様に問題のあるものであり得るので、本発明の方法は酵素不活性化段階も含むことが好ましい。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では、前記酵素不活性化段階は、処理する液体の温度を70〜95℃の範囲内の温度に30〜500秒の範囲内の期間調整することを含む。
【0151】
例えば、処理する液体の温度は、70〜80℃の範囲内の温度に30〜500秒、好ましくは40〜300秒、さらにより好ましくは50〜150秒の範囲内の期間調整され得る。
【0152】
本発明の好ましい実施形態では、処理する液体の温度は、70〜75℃の範囲内の温度に、30〜500秒、好ましくは40〜300秒、さらにより好ましくは50〜150秒の範囲内の期間調整される。
【0153】
あるいは、処理する液体の温度は、75〜85℃の範囲内の温度に、30〜500秒、好ましくは40〜300秒、さらにより好ましくは50〜150秒の範囲内の期間調整され得る。
【0154】
あるいは、処理する液体の温度は、80〜95℃の範囲内の温度に、10〜300秒、好ましくは25〜200秒、さらにより好ましくは30〜100秒の範囲内の期間調整され得る。
【0155】
そのような温度処理は、酵素、例えばプラスミンなど、ならびに酵素前駆体、例えばプラスミノゲンなどの活性を低下させることが示されている。
【0156】
酵素不活性化段階は、好ましくは、処理した液体のプラスミンとプラスミノゲンの複合活性を、未処理の液体の活性と比較して少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、さらにより好ましくは少なくとも70%低下させるべきである。
【0157】
複合活性は、乳関連製品中のプラスミンの活性と、それに加えて、プラスミノゲンをプラスミンに変換することにより獲得することのできる活性の尺度である。複合活性は実施例Iの分析Gによって求められる。
【0158】
本発明の実施形態の中には、さらにより低いレベルの複合されたプラスミンおよびプラスミノゲン活性を必要とする場合がある。そのような実施形態のために、酵素不活性化段階は、好ましくは、処理した液体のプラスミンおよびプラスミノゲンの複合活性を、未処理の液体の活性と比較して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%低下させるべきである。
【0159】
本発明の好ましい実施形態では、酵素不活性化段階は、処理した液体のプラスミンおよびプラスミノゲンの複合活性を、未処理の液体の活性と比較して少なくとも95%、好ましくは少なくとも97.5%、さらにより好ましくは少なくとも99%低下させるべきである。
【0160】
本発明の実施形態では、乳関連製品のプラスミンおよびプラスミノゲンの複合活性は、多くて8.000マイクロ単位/mL、好ましくは、多くて5.000マイクロ単位/mL、さらにより好ましくは、多くて3.000マイクロ単位/mLである。
【0161】
本発明の状況において、1単位(U)のプラスミン活性は、Chromozyme PL(トシル−Gly−Pro−Lys−4−ニトロアニリドアセテート)を基質として用いて、25℃、pH8.9で1分あたり1マイクロモルのp−ニトロアニリンを生成することのできるプラスミン活性である。
【0162】
本発明のもう一つの実施形態では、乳関連製品のプラスミンおよびプラスミノゲンの複合活性は、多くて2.500マイクロ単位/mL、好ましくは、多くて1.000マイクロ単位/mL、さらにより好ましくは、多くて750マイクロ単位/mLである。乳関連製品のプラスミンおよびプラスミノゲンの複合活性は、多くて600マイクロ単位/mL、好ましくは、多くて400マイクロ単位/mL、さらにより好ましくは、多くて200マイクロ単位/mLであることがさらに好ましい。
【0163】
酵素不活性化段階は、本方法の異なる局面の間に、例えば、乳糖の加水分解の前、HT処理の前、および/または包装の前に実施されてよい。
【0164】
本明細書に述べられるように、本発明の方法は、乳糖の少なくとも一部をグルコースおよびガラクトースに加水分解する段階を含み得る。乳糖の加水分解は、例えば、乳糖をラクターゼ酵素に接触させることを含み得る。
【0165】
多数の異なるラクターゼ酵素が市販されており、有用なラクターゼ酵素の例は、例えば、Lactozym(登録商標)Pure(Novozymes,Denmark)である。
【0166】
酵素は、乳糖を含有する組成物、例えば、乳関連供給材料および/またはHT処理された乳誘導体に接触することが好ましい。
【0167】
本発明の一部の実施形態では、酵素は乳関連供給材料および/またはHT処理された乳誘導体に添加される。酵素は、例えば、乳関連供給材料および/またはHT処理された乳誘導体中に溶解した形態で、例えば、単一の酵素分子として、または酵素分子の可溶性凝集体として存在し得る。
【0168】
本発明のその他の実施形態では、ラクターゼ酵素は、乳関連供給材料および/またはHT処理された乳誘導体とは分かれているが、酵素を乳関連供給材料および/またはHT処理された乳誘導体と接触させることにより乳糖と接触させることができる。例えば、静止した固相に固定化された酵素を使用することができる。有用な静止した固相の例は、例えば、フィルター、酵素含有粒子の充填層、または類似構造である。
【0169】
あるいは、固相は、例えば液体の易流動性粒子状固相(例えば有機もしくは無機ビーズ)形成部分である。
【0170】
乳糖を加水分解する液体の温度は、望ましくない微生物の増殖を避けるために、相対的に低く保持することが好ましい。本発明の一部の実施形態では、加水分解中の液体、例えば乳関連供給材料またはHT処理された乳誘導体の温度は、1〜15℃の範囲内である。加水分解中の液体の温度は、例えば2〜12℃の範囲内、好ましくは3〜10℃の範囲内、さらにより好ましくは4〜8℃の範囲内であり得る。
【0171】
加水分解の継続期間は、それがどの形態で使用されているか(例えば固定化されているかまたは液体に添加されるか)の場合と同じように、使用された酵素活性およびウェルによって決まる。好ましくは、加水分解は長くて48時間、好ましくは長くて24時間、例えば長くて12時間などを要する。加水分解は、例えば、液体、例えば乳関連供給材料またはHT処理された乳誘導体が酵素と混合されている冷却槽で起こりうる。
【0172】
固定化技法を含む酵素の工業的使用および適した固相の種類の詳細は、"Biocatalysts and Enzyme technology", Klaus Buchholz et al., ISBN-10:3-527-30497-5, 2005, Wiley VCH Verlag GmbH、に見出すことができ、それは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
本発明者らは、予想に反して、乳糖の加水分解反応をHT処理の前に実施することにより、乳誘導体のHT処理の間に反応性単糖が存在するにもかかわらず、許容される風味を有する製品が得られたという徴候を見た。従って、本発明の好ましい実施形態では、乳糖の加水分解は、乳誘導体のHT処理よりも前に実施される。
【0174】
本発明の一部の実施形態では、乳関連製品が包装される時にラクターゼ酵素はまだなお乳関連製品中に存在し活性がある。このアプローチは、プロセスを簡略化し、加水分解槽または連続する加水分解反応器を稼動させるための時間およびコストを節約する。
【0175】
本発明のその他の実施形態では、ラクターゼ酵素は、例えば本明細書において既に述べた加熱または不活性化段階のうちの1つによるか、あるいは、さらなる加熱段階を用いて、包装の前に不活性化されている。
【0176】
本発明の一部の実施形態では、本方法は、微生物を乳関連供給材料から物理的に分離し、それにより部分的に殺菌した乳誘導体を得ることをさらに含む。この分離は、微生物を死滅させて、死んだ微生物を乳に残すだけであるその他の殺菌技法に反して、実際に微生物を乳関連供給材料から除去する。
【0177】
本発明の状況において、用語「微生物」は、例えば、細菌および細菌胞子、酵母、カビおよび真菌胞子に関する。
【0178】
物理的分離は、例えば、乳関連供給材料の微生物の少なくとも90%、好ましくは微生物の少なくとも95%、さらにより好ましくは乳関連供給材料の微生物の少なくとも99%を除去し得る。
【0179】
本発明の実施形態では、物理的分離は、前記乳関連供給材料の遠心除菌を含む。
【0180】
本発明のもう一つの実施形態では、物理的分離は、前記乳関連供給材料の精密濾過を含む。
【0181】
本発明の好ましい実施形態では、精密濾過は、孔径が0.5〜1.5μmの範囲内、好ましくは0.6〜1.4μmの範囲内、さらにより好ましくは0.8〜1.2μmの範囲内のフィルターを用いて実施される。
【0182】
これらの孔径範囲は、乳誘導体(derivate)のタンパク質組成を実質的に変えることなく、それらが乳関連供給材料の微生物の大部分を保持するので有利であることが見出された。
【0183】
本発明の実施形態では、使用されるマイクロフィルターは、クロスフローマイクロフィルターである。
【0184】
適した精密濾過システムは、例えば、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれるTetra Pak Dairy processing Handbook 2003 (ISBN 91-631-3427-6)に見出すことができる。
【0185】
さらに本発明の一実施形態では、物理的分離は、前記乳関連供給材料の遠心除菌と精密濾過の両方を含む。
【0186】
本発明の実施形態では、遠心除菌は、少なくとも1つの遠心除菌機の使用、好ましくは少なくとも2つの遠心除菌機の連続の使用、さらにより好ましくは少なくとも3つの遠心除菌機の連続の使用を含む。
【0187】
物理的分離は、好ましくは周囲温度で、周囲温度よりも下で、または周囲温度よりもわずかに上で実施される。従って、乳関連供給材料の温度は、物理的分離の間、高くて60℃、例えば、高くて40℃、例えば高くて20℃、または高くて10℃などであってよい。
【0188】
物理的分離の間の乳関連供給材料の温度は、例えば2〜60℃の範囲内、好ましくは25〜50℃の範囲内であり得る。
【0189】
1相または2相遠心除菌機を含む、適した遠心除菌機は、例えば、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれるTetra Pak Dairy processing Handbook 2003 (ISBN 91-631-3427-6)に見出すことができる。
【0190】
しかし、本発明の一部の実施形態では、乳誘導体を乳関連供給材料から得ることは、微生物を乳関連供給材料から物理的に分離することを含まない。
【0191】
本発明のその他の実施形態では、乳誘導体を乳関連供給材料から得ることは、本方法の任意の乳関連流から微生物を物理的に除去することを含まない。
【0192】
本発明の様々な例となる実施形態を
図1〜11に示す。これらの図面が、表されるプロセス実施形態の詳細を全て示すのではなく、実施形態が様々な追加の処理段階、例えば温度調整、均一化、および貯蔵などを含み得ることに注意されたい。
【0193】
図1は、乳関連供給材料がHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この場合、乳誘導体は、乳関連供給材料からなるか、または乳関連供給材料から本質的になる。段階c)から得られるHT処理された乳誘導体はその後に包装される。本発明のこの実施形態では、乳関連製品は、HT処理された乳誘導体であるか、またはHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0194】
図2は、乳関連供給材料の乳糖の少なくとも一部が加水分解される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、乳糖少なくとも一部を加水分解することにより修飾されている乳関連供給材料である。乳誘導体はHT処理に付され、結果として得られるHT処理された乳誘導体はその後包装される。本発明のこの実施形態では、乳関連製品は、HT処理された乳誘導体であるか、またはHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0195】
図3は、乳関連供給材料がHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。本発明のこの実施形態では、乳誘導体は、乳関連供給材料からなるか、または乳関連供給材料から本質的になる。その後、HT処理された乳誘導体の乳糖の少なくとも一部が加水分解される。本発明のこの実施形態では、乳関連製品は、加水分解乳糖を含有するHT処理された乳誘導体であるか、または加水分解乳糖を含有するHT処理された乳誘導体から本質的になる。加水分解の後、乳関連製品は最終的に包装される。
【0196】
図4は、乳関連供給材料が酵素不活性化段階に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。本発明のこの実施形態では、乳誘導体は、酵素不活性化乳関連供給材料であるか、または酵素不活性化乳関連供給材料から本質的になる。乳誘導体はHT処理に付され、結果として得られる製品はその後包装される。本発明のこの実施形態では、乳関連製品は、HT処理された乳誘導体からなるか、またはHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0197】
図5は、乳関連供給材料の乳糖の少なくとも一部が加水分解され、結果として得られる製品が酵素不活性化段階に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、加水分解され、酵素不活性化された乳関連供給材料である。乳誘導体は、その後HT処理に付され、包装される。本発明のこの実施形態では、乳関連製品は、HT処理された乳誘導体であるか、またはHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0198】
図6は、乳関連供給材料が酵素不活性化段階に付され、結果として得られる製品の乳糖の少なくとも一部が加水分解される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、酵素不活性化およびその後の乳糖の加水分解に付された乳関連供給材料である。乳誘導体はHT処理に付され、最終的に包装される。
【0199】
図7は、乳関連供給材料が酵素不活性化段階に付され、その後にHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態の乳誘導体は、酵素不活性化乳関連供給材料であるか、または酵素不活性化乳関連供給材料から本質的になる。HT処理の後、HT処理された乳誘導体の乳糖の少なくとも一部が加水分解され、この時点で乳糖の加水分解生成物も含有している、結果として得られる乳関連製品はその後に包装される。
【0200】
図8は、乳関連供給材料がHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、乳関連供給材料であるか、または乳関連供給材料から本質的になる。その後、結果として得られるHT処理された乳誘導体は、酵素不活性化段階に付され、包装される。この実施形態では、乳関連製品は、酵素不活性化されHT処理された乳誘導体であるか、または酵素不活性化されHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0201】
図9は、乳関連供給材料の乳糖の少なくとも一部が加水分解され、その後にHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、加水分解乳糖を含有する乳関連供給材料であるか、または乳関連供給材料から本質的になる。結果として得られるHT処理された乳誘導体は、酵素不活性化段階に付され、包装される。従って、この実施形態の乳関連製品は、酵素不活性化されHT処理された乳誘導体であるか、または酵素不活性化されHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0202】
図10は、乳関連供給材料がHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、乳関連供給材料であるか、または乳関連供給材料から本質的になる。その後、結果として得られるHT処理された乳誘導体は、最初にHT処理された乳誘導体の乳糖の少なくとも一部を加水分解する段階に付され、次に酵素不活性化段階に付され、最終的に包装される。この実施形態の乳関連製品は、加水分解され酵素不活性化されHT処理された乳誘導体であるか、または加水分解され酵素不活性化されHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0203】
図11は、乳関連供給材料がHT処理に付される、本発明の一実施形態の概略フロー図を示す。この実施形態では、乳誘導体は、乳関連供給材料であるか、または乳関連供給材料から本質的になる。その後、結果として得られるHT処理された乳誘導体は、最初に酵素不活性化段階に付され、次にHT処理された乳誘導体の乳糖の少なくとも一部を加水分解する段階に付され、最終的に製品は包装される。この実施形態の乳関連製品は酵素不活性化され加水分解されHT処理された乳誘導体であるか、または酵素不活性化され加水分解されHT処理された乳誘導体から本質的になる。
【0204】
本発明の利点は、よりCO2にやさしい、新鮮な味がする乳を提供することである。その長い貯蔵寿命と、より高い温度に対して堅牢であることによって、本乳関連製品は、5℃の代わりに周囲温度で輸送することができる。低温物流は非常にエネルギーを消費し、一般に、同程度の周囲温度の物流装備よりも相対的に多くの数の小さい冷却された荷の製品の輸送を要する。従って、本発明の乳関連製品は、同様の新鮮な味を有する先行技術の乳製品よりも低いCO2排出量で、製造され、小売業者に輸送されることができる。
【0205】
本発明者らは、驚いたことに、本方法を導入した乳加工工場が、工場が掃除しなければならなくなる前に、操業することのできる時間を本発明の方法が増加させることをさらに見出した。このことは有利であると認識され、乳製品の製造におけるコストの削減を可能にする。
【0206】
当業者には明らかなように、本方法には、1以上の追加の段階、例えば均一化段階、貯蔵段階、混合段階、温度調整段階、低温殺菌段階、サーミゼーション段階、遠心分離段階ならびにそれらの組合せなどを含めることができる。
【0207】
さらに、本発明の態様は、先行する特許請求の範囲のいずれかに従う方法により入手可能な、包装された低乳糖乳関連製品に関する。この乳関連製品は、本明細書に記載されるように容器に包装され得る。
【0208】
本発明のさらなる態様は、そのような乳関連製品、好ましくは長い貯蔵寿命および低レベルの加熱された風味を有する乳関連製品に関する。
【0209】
製品の貯蔵寿命は、一般に品質が一定の最低許容レベルよりも下に落ちることなく製品を貯蔵することのできる時間とされている。これは、あまりはっきりした正確な定義ではなく、それはかなりの程度まで「最低許容品質」の認識によって決まる。
【0210】
本発明の状況において、用語「貯蔵寿命」とは、乳関連製品を、望ましくない事象が起こる前に指定された温度で貯蔵、密封することのできる時間を意味する。
【0211】
本発明の実施形態では、望ましくない事象は、乳関連製品が非殺菌であるとわかることである。非殺菌乳関連製品は、食品が製造、流通および貯蔵の間に維持される可能性が高い通常の非冷凍保存条件で、製品中で増殖できる微生物を含有しない製品である。非殺菌性および微生物の存在または増殖は、例えば、Marth, E. H., ed. 1978.による、Standard methods for the examination of dairy products. Am. Publ. Health Assoc., Washington, DC.中に見つけることができる。
【0212】
乳タンパク質のタンパク質分解の生成物である疎水性ペプチドは、望ましくない苦味を生じさせることが公知である。従って、本発明の実施形態では、望ましくない事象は、乳関連製品が、500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する、少なくとも1mg/Lの疎水性ペプチド、例えば少なくとも20mg/Lなど、または例えば500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する、少なくとも50mg/Lの疎水性ペプチドなどを含有しているとわかることである。
【0213】
本発明のもう一つの実施形態では、望ましくない事象は、乳関連製品が、500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する、少なくとも100mg/Lの疎水性ペプチド、例えば少なくとも200mg/Lなど、または例えば500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する、少なくとも500mg/Lの疎水性ペプチドなどを含有しているとわかることである。
【0214】
本発明のさらなる実施形態では、望ましくない事象は、乳関連製品が、500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する、少なくとも750mg/Lの疎水性ペプチド、例えば少なくとも1000mg/Lなど、または例えば500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する、少なくとも2000mg/Lの疎水性ペプチドなどを含有しているとわかることである。
【0215】
乳関連製品の、500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する疎水性ペプチドの濃度は、Kai-Ping et al, J. Agric. Food Chem. 1996, 44, 1058-1063に記載されるように求められる。乳関連製品は、サンプルとして使用し、Kai-Ping et al,に従って、入手した500〜3000g/molの分子量画分を、その後C18カラムで分析的HPLCによって分析する。結果として得られるクロマトグラムを用いて、乳関連製品の、500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する疎水性ペプチドの濃度を求める。
【0216】
さらに本発明の一実施形態では、望ましくない事象は、乳関連製品が、乳および乳製品の官能分析に関するISO 22935−1:2009、ISO 22935−2:2009、およびISO 22935−3:2009に従う官能検査を用いて、望ましくない官能特性を有しているとわかることである。官能特性、例えば外観、一貫性、臭い、および味などが試験されることが好ましい。
【0217】
貯蔵寿命の決定のために、2以上の様々な種類の望ましくない事象を組み合わせることが好ましい。
【0218】
従って、本発明の好ましい実施形態では、貯蔵寿命は、以下からなる群から選択される望ましくない事象の最初の発生によって決定される。
−乳関連製品が非殺菌であるとわかること、および
−乳関連製品が500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する少なくとも1mg/Lの疎水性ペプチドを含有しているとわかること。
【0219】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、貯蔵寿命は、以下からなる群から選択される望ましくない事象の最初の発生によって決定される。
−乳関連製品が非殺菌であるとわかること、
−乳関連製品が500〜3000g/molの範囲内の分子量を有する少なくとも1mg/Lの疎水性ペプチドを含有しているとわかること、および
−乳関連製品が望ましくない官能特性を有しているとわかること。
【0220】
本発明のさらに好ましい実施形態では、貯蔵寿命は、以下からなる群から選択される望ましくない事象の最初の発生によって決定される。
−乳関連製品が非殺菌であるとわかること、および
−乳関連製品が望ましくない官能特性を有しているとわかること。
【0221】
本発明の実施形態では、前記乳関連製品の貯蔵寿命は、25℃で保存した場合に、少なくとも30日である。
【0222】
本発明のもう一つの実施形態では、前記乳関連製品の貯蔵寿命は、包装後最初の21日を25℃で保存し、その後の時間に5℃で保存した場合に、少なくとも49日である。
【0223】
さらに本発明の一実施形態では、前記乳関連製品の貯蔵寿命は、5℃で保存した場合に、少なくとも70日である。
【0224】
本発明のさらなる実施形態では、前記乳関連製品の貯蔵寿命は、25℃で保存した場合に、少なくとも119日である。
【0225】
本発明のもう一つの実施形態では、前記乳関連製品の貯蔵寿命は、25℃で保存した場合に、少なくとも182日である。
【0226】
本発明の乳関連製品は、相対的に低い含有量の変性βラクトグロブリンを有すると思われる。例えば、変性および非変性βラクトグロブリンの両方の総量に対して、多くて50%(w/w)の乳関連製品のβラクトグロブリンが変性している可能性がある。好ましくは、多くて40%(w/w)の乳関連製品のβラクトグロブリン、好ましくは、変性および非変性βラクトグロブリンの両方の総量に対して、多くて35%(w/w)、さらにより好ましくは、多くて30%(w/w)が変性している可能性がある。
【0227】
本発明の好ましい実施形態では、変性および非変性βラクトグロブリンの両方の総量に対して、多くて30%(w/w)の乳関連製品のβラクトグロブリン、好ましくは、多くて25%(w/w)、さらにより好ましくは、多くて20%(w/w)が変性している可能性がある。
【0228】
変性の程度は、実施例Iの分析Cに従って測定される。
【0229】
本発明の実施形態では、乳関連製品は、多くて60% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、ダブル・クリーム(cream double)である。
【0230】
本発明のもう一つの実施形態では、乳関連製品は、多くて40% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、ホイッピング・クリームである。
【0231】
さらに本発明の一実施形態では、乳関連製品は、多くて20% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、18% w/wの乳脂肪を含有するテーブル・クリームである。
【0232】
本発明のさらなる実施形態では、乳関連製品は、多くて4% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、一般に2〜4% w/wの乳脂肪、好ましくは約3% w/wの乳脂肪を含有する高脂肪乳である。
【0233】
本発明のさらなる実施形態では、乳関連製品は、多くて1.5 w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、一般に0.7〜2% w/wの乳脂肪、好ましくは1〜1.5% w/wの乳脂肪を含有する半脱脂乳である。
【0234】
本発明のさらなる実施形態では、乳関連製品は、多くて0.7w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、通常、0.1〜0.7% w/wの乳脂肪、好ましくは0.3〜0.6% w/wの乳脂肪、例えば約0.5% w/wの乳脂肪などを含有する脱脂乳である。
【0235】
本発明の好ましい実施形態では、乳関連製品は、多くて0.1% w/wの乳脂肪を含む。そのような乳関連製品の一例は、0.05〜0.1% w/wの範囲内の脂肪分を有する脱脂乳である。
【0236】
本発明の一部の実施形態では、、乳関連製品は、2.5〜4.5% w/wのカゼイン、0.25〜1% w/wの乳清タンパク質、および0.01〜3% w/wの乳脂肪を含む。本発明の一部の好ましい実施形態では、乳関連製品は、2.5〜4.5% w/wのカゼイン、0.25〜1% w/wの乳清タンパク質、および0.1〜1.5% w/wの乳脂肪を含む。本発明のその他の好ましい実施形態では、乳関連製品は、2.5〜4.5% w/wのカゼイン、0.25〜1% w/wの乳清タンパク質、および0.01〜0.1% w/wの乳脂肪を含む。
【0237】
乳関連製品は、通常、水分を含み、例えば、少なくとも60%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも70%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも80%(w/w)の水分を含み得る。例えば、乳関連製品は、少なくとも85%(w/w)の水分、好ましくは少なくとも87.5%(w/w)の水分、さらにより好ましくは少なくとも90%(w/w)の水分を含み得る。
【0238】
本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、多くて3%(w/w)の乳糖を含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、多くて2%(w/w)、好ましくは、多くて1%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、多くて0.5%(w/w)の乳糖の乳糖を含み得る。
【0239】
さらに低いレベルの乳糖が望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、多くて0.2%(w/w)の乳糖を含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、多くて0.1%(w/w)の乳糖、好ましくは、多くて0.05%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、多くて0.01%(w/w)の乳糖を含み得る。
【0240】
本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して、0.01〜2%(w/w)のグルコースを含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.02〜1.5%(w/w)のグルコース、好ましくは0.05〜1%(w/w)、さらにより好ましくは低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.1〜0.5%(w/w)のグルコースを含み得る。
【0241】
時にはさらに低いレベルのグルコースが望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜0.5%(w/w)のグルコースを含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.02〜0.3%(w/w)のグルコース、好ましくは0.04〜0.2%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.05〜0.1%(w/w)のグルコースを含み得る。
【0242】
本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のガラクトースを含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.02〜1.5%(w/w)のガラクトース、好ましくは0.05〜1%(w/w)、さらにより好ましくは、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.1〜0.5%(w/w)のガラクトースを含み得る。
【0243】
より低いレベルのガラクトースが望ましい場合がある。従って、本発明の一部の実施形態では、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜0.5%(w/w)のガラクトースを含む。例えば、低乳糖乳関連製品は、低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.02〜0.3%(w/w)のガラクトース、好ましくは0.04〜0.2%(w/w)、さらにより好ましくは低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.05〜0.1%(w/w)のガラクトースを含み得る。
【0244】
乳関連製品は、本明細書において言及される添加剤のいずれかをさらに含有してよい。
【0245】
1つの例となる態様では、乳関連製品の貯蔵寿命は、35℃以下の温度で貯蔵した場合、4〜6ヶ月の範囲内である。
【0246】
2番目の例となる態様では、乳関連製品の貯蔵寿命は、8℃以下の温度で貯蔵した場合、20日〜60日の範囲内である。
【0247】
健康なウシから分泌された乳は基本的に無菌であるが、(乳牛の)乳房の外側および内側、土壌、寝床、肥料、搾乳装置および貯蔵槽を含む、多様な源からの乳への細菌の導入は通常避けられない。低温殺菌乳条例(Pasteurized Milk Ordinance)(PMO)基準に従って、個々の生産者のA等級生乳の総細菌カウント(TBC)は、100,000cfu/mLを超えるべきではないが(FDA, 2001, Grade "A" Pasteurized Milk Ordinance., U.S. Dept. of Health and Human Services, Public Health Service. Publication No. 229. Washington, DC)、細菌カウントの理想的な規格は<7500である。低温殺菌の後、推奨される細菌カウントは、20,000cfu/mlを超えるべきではない。UHT加工(例えば149℃で3秒間)の後、標準プレートカウント試験によって測定して生存する能力のある微生物/胞子はいない(Gillis et al., J Dairy Sci.1985 2875-9)。
【0248】
本発明の乳関連製品の長い貯蔵寿命は、生存可能な微生物の残留レベルが低いことに起因する。加工および包装(無菌条件下)の直後に測定した場合、製品は、コロニー形成単位/ミリリットル(cfu/ml)として測定される生存可能な胞子カウントを、多くて1,000cfu/ml、より好ましくは500cfu/ml、100cfu/ml、50cfu/ml、10cfu/ml、1cfu/mlまたは1cfu/ml未満有する。好ましくは、製品の生存可能な胞子カウントは、0〜1,000cfu/mlの間、より好ましくは0〜100cfu/mlの間、0〜50cfu/mlの間、または0〜10cfu/mlの間である。
【0249】
本発明の好ましい実施形態では、乳関連製品は、0cfu/mlを含有する、すなわち、乳関連製品は好ましくは無菌である。
【0250】
乳または乳由来製品中の生存可能な胞子カウントを求めるのに適した方法は、当技術分野で公知である:例えば、標準プレートカウント試験が、Marth, E. H., ed. 1978. によりStandard methods for the examination of dairy products. Am. Publ. Health Assoc., Washington, DCに記載されている。標準的な方法に従って、乳サンプルを牛乳寒天(Oxoic)培地に播種し、30℃で3日のインキュベーションの後にコロニーをカウントする(Health protection agency (2004) Plate count test at 30 degrees C. National Standard Method D2 IlSue 3, www.hpa-standardmethods.org.uk/pdf sops.asp.)。あるいは、胞子カウントは、明視野顕微鏡およびトーマ血球計算板(Thoma counting chamber)手順を用いる直接顕微鏡計数によって求めることができる。
【0251】
乳の熱加工の間に生じた多くの揮発性合成物は、乳の加熱された、新鮮でない、硫黄のような匂いに関係していて、ほとんどの消費者に異臭とみなされる。熱処理は、生乳で辛うじて検出される異臭化合物、例えばアルデヒド、メチルケトン、および様々な硫黄化合物などをもたらす2型反応の直接的な原因であることが知られている。
【0252】
生乳中で検出される全ケトンのレベル(1%および3%の生乳1kgあたり、全ケトンはそれぞれ約6μgおよび11μg)および低温殺菌乳中で検出される全ケトンのレベルは、あまり違いがないが、UHT乳では12倍増加し得る(1%および3%のUHT乳1kgあたり、全ケトンはそれぞれ約78μgおよび120μg)。主なケトン寄与体は、2−ヘプタノンおよび2−ノナノンであり、その濃度は、生乳および低温殺菌乳サンプル中よりも、UHT乳中でそれぞれ34倍および52倍大きい。これらのレベルは、1%および3%のUHT乳1kgあたり、それぞれ約22μgおよび34μgの2−ヘプタノン;および1%および3%のUHT乳1kgあたり、それぞれ約35μgおよび53μgの2−ノナノンに相当する。その他の寄与体は、2,3−ブタンジオン、2−ペンタノン、および2−ウンデカノンである。
【0253】
芳香の影響は濃度だけでなく官能閾値にもに依存するので、臭気活性値(OAV=濃度/官能閾値)を考慮に入れる必要がある。計算された臭気活性値は、2,3−ブタンジオン、2−ヘプタノン、2−ノナノン、2−メチルプロパナール、3−メチルブタナール、ノナナール、デカナール、およびジメチルスルフィドがUHT乳の異臭の主な寄与体であることを示す。
【0254】
本発明の一部の例となる実施形態では、生乳/低温殺菌乳の天然の官能特性は、製品中の低レベルの揮発性異臭化合物によって本発明の貯蔵寿命の長い乳関連製品中に保持される。特に、加工および包装(無菌条件下)の直後に得られる乳製品の含有する、1%脂肪(または3%脂肪)乳1kgあたりの全ケトンのμgを単位として測定される、検出可能な全ケトンレベルは、多くて60(100)、より好ましくは、多くて50(80)、40(60)、30(40)、20(20)および10(10)μgの全ケトンである。好ましくは、1%脂肪(または3%脂肪)乳1kgあたりの全ケトンのμgを単位として測定される、検出可能な全ケトンレベルは、6〜60(8〜100)、より好ましくは6〜50(8〜80)、6〜40(8〜60)、6〜30(8〜40)、6〜20(8〜20)または6〜10(8〜10)μgの間の範囲内の全ケトンにある。
【0255】
本発明の一部の例となる実施形態では、加工および包装(無菌条件下)の直後に得られる乳製品の含有する、1%脂肪(または3%脂肪)乳1kgあたりの全2−ヘプタノンのμgを単位として測定される、検出可能な2−ヘプタノンレベルは、多くて15(25)、より好ましくは、多くて10(20)、7(15)、5(10)または2(5)μgの2−ヘプタノンである。好ましくは、1%脂肪(または3%脂肪)乳1kgあたりの全ケトンのμgを単位として測定される、検出可能な2−ヘプタノンレベルは、1〜15(1〜25)、より好ましくは1〜10(1〜20)、1〜7(1〜15)、1〜5(1〜10)または1〜3(1〜5)μgの間の範囲内の2−ヘプタノンにある。
【0256】
本発明の一部の例となる実施形態では、加工および包装(無菌条件下)の直後に得られる乳製品の含有する、1%脂肪(または3%脂肪)乳1kgあたりの全2−ノナノンのμgを単位として測定される、検出可能な2−ノナノンレベルは、多くて25(40)、より好ましくは、多くて20(30)、15(25)、10(15)または5(10)μgの2−ノナノンである。好ましくは、1%脂肪(または3%脂肪)乳1kgあたりの2−ノナノンのμgを単位として測定される、検出可能な2−ノナノンレベルは、0.2〜25(0.2〜40)、より好ましくは0.2〜20(0.2〜30)、0.2〜15(0.2〜25)、0.2〜10(0.2〜15)または0.2〜5(0.2〜10)μgの間の範囲内の2−ノナノンにある。
【0257】
ガスクロマトグラフィーと組み合わせたヘッドスペース固相マイクロ抽出(HSSPME)は、酪農食品中の揮発性成分の抽出および定量分析のための高速かつ信頼性のある技術を提供する(P. A. Vazquez- Landaverde et al., 2005 J. Dairy Sci. 88:3764-3772)。例えば、乳揮発性物質の質量スペクトルは、5973四重極質量分析検出器を装備したAgilent 6890 ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies,Inc.,Wilmington,DE)を用いて得ることができる。SPMEファイバーを、40mLの珀色のガラスバイアル中20gの乳サンプルのヘッドスペースに3時間35℃で曝露し、次にGC質量分析注入ポートにスプリットレス条件下で5分間挿入する。DB−5キャピラリーカラム(30m×内径0.32mm、フィルム厚1μm;J&W Scientific,Folsom,CA)によりクロマトグラフィー分離を得る。オーブン温度プログラムは、35℃で8分間維持され、4℃/分の速度で150℃まで上昇させ、次に20℃/分の速度で230℃まで上昇させ、最終的に230℃で20分間維持される。ヘリウムをキャリアガスとして2.5mL/分で使用する。インジェクター、検出器トランスファーライン、およびイオン源の温度は、それぞれ250、280、および230℃である。70eVの電圧および35〜350のm/z範囲での電子衝撃イオン化を4.51スキャン/秒で収集する。機器の制御およびデータ分析は、機能強化されたChemStationソフトウェア(Agilent Technologies,Inc.)を用いて実施される。乳中の揮発性化合物は、質量スペクトルおよび保持時間を本物の化合物のそれと比較することにより確認する。
【0258】
乳の熱処理は、ホエイタンパク質、酵素、およびビタミンの変性、分解、および不活性化を導く1型反応の原因である。メイラード反応は、そのような1型反応において重量な役割を果たす。この反応は、製品中のフロシン(ε−N−2−フロイルメチル−L−リジン)およびラクツロース(4−O−β−ガラクトピラノシル−D−フルクトース)値およびフロシン/ラクツロース比を測定することによりモニターすることができる。初期のメイラード反応において、乳糖は、タンパク質に結合したリジンと反応して、タンパク質に結合したアマドリ生成物(1−デオキシ−1−アミノ−)ラクツロシルリシンとなる。フロシンは、アマドリ生成物の酸加水分解から生じる人工アミノ酸である。従って、フロシンは、メイラード反応の程度(および進行)および利用可能なリジンを定量するための分子マーカーとして使用することができる。フロシンは、それ自体は通常乳製品中に検出可能なレベルで存在していない。
【0259】
同様に、加工および包装(無菌条件下)の直後に得られる乳製品は、乳1ミリリットル(ml)あたりのmgを単位として測定される、検出可能なラクツロースレベルを、多くて30mg/mlの乳製品、より好ましくは、多くて20、10、5、または2mg/ml含む。好ましくは、乳製品1mlあたりのラクツロースのmgを単位として測定される、検出可能なラクツロースレベルは、0〜30mg/ml、より好ましくは0〜20、0〜10、0〜5または0〜2mg/mlの間の範囲内のラクツロースにある。
【0260】
本発明の一部の好ましい実施形態では、乳関連製品は、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて80mgのフロシン値を有する。乳関連製品のフロシン値は、実施例Iの分析Fに従って決定することができる。
【0261】
例えば、乳関連製品は、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて70mgのフロシン値を有し得るか、さらにより好ましくは、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて60mgのフロシン値を有し得る。
【0262】
さらにより低いフロシン値が好ましい場合もある。従って、乳関連製品は、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて50mgのフロシン値を有し得る。例えば、乳関連製品は、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて40mgのフロシン値、またはさらにより好ましくは、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて30mgのフロシン値を有し得る。
【0263】
本発明のその他の好ましい実施形態では、乳関連製品は、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて60mgのフロシン値を有する。
【0264】
例えば、乳関連製品は、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて50mgのフロシン値、またはさらにより好ましくは、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて40mgフロシン値を有し得る。
【0265】
さらにより低いフロシン値が好ましい場合もある。従って、乳関連製品は、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて30mgのフロシン値を有し得る。例えば、乳関連製品は、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて20mgのフロシン値、またはさらにより好ましくは、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて10mgフロシン値を有し得る。
【0266】
上述のように、メイラード反応におけるアマドリ生成物の形成は、消化に利用可能なリジンの損失につながる。従って、本発明の乳関連製品の栄養価は、より低いフロシン値および従ってリジンのより高いバイオアベイラビリティに起因して、先行技術の低乳糖乳よりも優れていると認識される。
【0267】
乳中の脂溶性ビタミンは熱処理による影響は最小限であるが、水溶性ビタミンは、部分的に破壊され得る。結果的に、UHT処理はビタミンB類を10%、葉酸を15%、およびビタミンCを25%減少させる。本発明の一部の例となる実施形態の貯蔵期間の長い乳は、製造処理中に20%未満減少するビタミンC含有量を有する。
【0268】
ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、熱で損傷した乳の認識されたマーカーであり、UHT乳中のHMFのレベルは4〜16マイクロモル/lに及ぶことが報告されている。Singh et al., Lait (1989) 69 (2) 131-136.加工および包装(無菌条件下)の直後に得られる貯蔵寿命の長い乳関連製品は、乳1Lあたりのマイクロモルを単位にして測定して、HMF1lあたり多くて6マイクロモル、より好ましくは、HMF1lあたり多くて5、4、3、2または1マイクロモルの検出可能なレベルのHMFを含有する。好ましくは、乳製品1lあたりのHMFマイクロモルを単位にして測定される検出可能なHMFは、0〜6マイクロモル/l、より好ましくは0〜5、0〜4、0〜3または0〜2マイクロモル/lの間の範囲内にある。
【0269】
乳または乳由来製品中のフロシンおよびラクツロースレベルを決定するための方法は、当技術分野で公知である:HPLCまたは酵素アッセイの両方、ならびに前面蛍光分光は、Kulmyrzaev et al., 2002 in Lait 82: 725-735により記載されている。乳中のHMFレベルを決定するための方法は、Singh et al., Lait (1989) 69 (2) 131-136により記載されている。
【0270】
乳関連製品は、実施例Iに記載される1以上の分析を用いてさらに特徴付けることができる。
【0271】
乳関連製品は、例えば、25℃で保存した場合に、少なくとも119日の貯蔵寿命を有する低乳糖乳関連製品であってよく、前記低乳糖乳関連製品は、
−低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のガラクトース、
−低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のグルコース、
−低乳糖乳関連製品の総重量に対して多くて0.2%(w/w)の乳糖、
を含み、前記乳関連製品は、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて80mgのフロシン値を有する。
【0272】
本発明の好ましい実施形態では、低乳糖乳関連製品の貯蔵寿命は、25℃で保存した場合に少なくとも182日である。
【0273】
低乳糖乳関連製品は、貯蔵の間25℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて60mgのフロシン値を有し得る。
【0274】
あるいは、乳関連製品は、5℃で保存した場合に、少なくとも70日の貯蔵寿命を有する低乳糖乳関連製品であってよく、前記低乳糖乳関連製品は、
−低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のガラクトース、
−低乳糖乳関連製品の総重量に対して0.01〜2%(w/w)のグルコース、
−低乳糖乳関連製品の総重量に対して多くて0.2%(w/w)の乳糖、
を含み、前記乳関連製品は、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて60mgのフロシン値を有する。
【0275】
低乳糖乳関連製品は、例えば、貯蔵の間5℃の温度で保存した場合に、製造後49日目に、100gのタンパク質あたり、多くて50mgのフロシン値を有し得る。
【0276】
本発明のさらなる態様は、乳関連供給材料を長い貯蔵寿命を有する乳関連製品に変換するための乳加工工場に関し、前記工場は
−乳糖を乳から除去し、それにより乳関連供給材料を供給するように構成されている、乳糖低減セクション
−前記乳糖低減セクションと流体連通しているHT処理セクション(このHT処理セクションは、前記乳関連供給材料由来の乳誘導体を140〜180℃の範囲内の温度まで、多くて200ミリ秒の期間加熱し、その後に液体製品を冷却するように構成されている)および
−乳加工工場の製品を包装するための、HT処理セクションと流体連通している包装セクション
を備える。
【0277】
本発明の状況において、用語「流体連通」とは、流体連通しているセクションが、液体が1つのセクションから他のセクションへ移動することができるように配置されていることを意味する。これは、工場の該当するセクションをパイプ、およびポンプおよび/またはバルブで相互に接続することにより一般に実施される。
【0278】
乳加工工場は、本発明の方法を実施するのに適している。
【0279】
乳糖低減セクションは、一般に乳糖を乳関連供給材料から物理的に除去するように適合させた1以上のシステムを含有する。例えば、乳糖低減セクションは、
図12または
図13に表されるような一連の限外濾過システムおよびナノ濾過システムを含むことができる。
【0280】
HT処理セクションは、本明細書において述べられる1以上のHT処理システムを含むことができ、包装セクションは、一般に市販の包装または充填システムを含有する。
【0281】
包装セクションは、好ましくは無菌充填システムである。
【0282】
上述のセクションに加えて、乳加工工場は、ポンプ、バルブ、配管、ホモジナイザー、ヒーターなどを含有することができ、これらは全て当業者に周知のユニットであり、その上市販されている。工場は、さらに、酵素活性化段階の関連で本明細書に記載される温度まで液体を加熱するように適合させた酵素不活性化セクションを含有してよい。酵素不活性化セクションは、例えば、1以上のプレート熱交換器を含んでよい。
【0283】
工場は、さらに、加水分解の関連で本明細書に記載される温度で液体中の乳糖を加水分解するように適合させた乳糖加水分解セクションを含有してよい。乳糖加水分解セクションは、例えば、温度制御槽または連続フロー酵素反応器を含んでよい。
工場は、さらに、微生物を乳関連供給材料から除去することのできる物理的分離セクション含んでよい。物理的分離セクションは、例えば本明細書において言及される1以上の精密濾過システムを含有することができ、あるいは、またはそれに加えて、それは本明細書において言及される1以上の遠心除菌機を含有することができる。
【実施例】
【0284】
実施例I:分析法
分析A:官能試験
官能プロファイルまたはQDA(Quantitative Descriptive Analysis;定量的記述分析)は、製品の官能特性、ならびに特性の強度の描写である。それは、属性のリスト(通常それらが知覚される順序で)、および各々の属性についての強度値を含む、確立された方法である。官能プロファイリングは、乳および乳製品の官能評価分析に関連するISO 13299:2003およびISO 22935−1:2009、ISO 22935−2:2009、およびISO 22935−3:200に記載されている。
【0285】
サンプル/サンプルの品質:
試験の実施が可能であるためには、試験前に利用可能な訓練用のサンプルがなくてはならない。実際の試験には、十分な量の各々のサンプルがなければならない。また、それらは代表的な品質のものでなければならない。
【0286】
1回のセッションの間に評価され得るサンプルの数は、サンプルの性質および評価される属性の量によって決まる。少数の属性しか評価されない場合には、多くのサンプルを試験に含めることができる。そして逆もまた同様である。通常、1回のセッションにおいて最大10個のサンプルが評価される。
【0287】
パネルリーダー:
パネルリーダーは、パネルの訓練、ならびに試験の企画および実施に対して責任を負う。パネルリーダーの要件は、ISO 13300−1:2006に記載されている。
【0288】
評価者:
パネルの評価者は、低濃度で風味を検出するその能力によって選出される。採用プロセスは、ISO 8586−1:1993に記載されている。彼らは、ある特定の種類の製品、この場合は乳に関して訓練されている。官能プロファイル試験の前に、パネルは、試験される製品および属性で数回訓練を受ける。この訓練の目的は、スケールを使用する統一された方法を得ること、およびスケールの意味を理解することである。
【0289】
各試験に対して、製品を評価するために6〜12人の評価者のパネルが用いられる。
【0290】
評価室:
訓練および試験が実施される部屋は、ISO 8589:2007に記載の条件を満たさなければならない。
【0291】
サンプルの提示:
サンプルは、3桁のコードを用いて盲検化して出され、出される順番は無作為化されるべきである。サンプルは、蓋の載った小型のプラスチック製ポット(www.kemikalia.se art.No.165555の「無菌サンプル瓶(Aseptisk provburk)」100ml)に入れて出される。
【0292】
スケールおよび訓練セッション:
固定されたエンドポイントを有する連続線形スケールが用いられる。エンドポイントは、それぞれ、属性が「全くない」ものを0として、属性の強度が「非常に強い」ものを10として表される。各々の評価者の任務は、スケールに印をつけて各々の属性の強度を示すことである。煮沸された/加熱された風味に関して、低い温度で低温殺菌された乳(72℃/15秒、脂肪分1.5%)のスケール上の値は0であり、貯蔵寿命が延長された(ESL)乳(ダイレクトスチームインジェクション、127℃/2秒、脂肪分1.5%)のスケール上の値は2.5であり、UHT(ダイレクトスチームインジェクション、143℃/6秒、脂肪分1.5%)のスケール上の値は7.5であることにパネルは同意した。試験の間、これらの数は評価者に示されない。
【0293】
訓練期間の間、評価者は属性の同定の方法、および、視覚、嗅覚、味覚等によりそれらを評価する方法を学ぶ。また、彼らは各々の属性を評価する共通の方法(例えばESL乳の煮沸された風味がスケール上では2.5であるなど)を確立する。また、1回以上の個人評価も訓練期間の間に行われ、各々の評価者の試験を実施する能力が評価される。
【0294】
試験:
各々のセッションは、パネルの訓練/復習から開始する。最初に、全てが明確な位置をスケール上に有する3つの既知サンプル;低い温度で低温殺菌された乳(72℃/15秒、脂肪分1.5%)、貯蔵寿命の長い乳(ダイレクトスチームインジェクション、127℃/2秒、脂肪分1.5%)、およびUHT(ダイレクトスチームインジェクション、143℃/6秒、脂肪分1.5%)を使用する。その後、パネルは1つまたは2つの未知のサンプルを受け取り、合意によってスケール上のどこに置くかを決定する(パネルの較正)。
【0295】
パネルは、評価するサンプルの数および必要であり得るその他の情報について知らされる。FIZZソフトウェアが評価に使用される。試験の間、1度に1つのサンプルが評価者に出される。パネルの任務は、次にその製品を見て/感じ/匂いを嗅ぎ/味を見て、各々の属性についてスケール上に印をつけることである。評価者が各々のサンプルに関するコメントを書くことも可能である。彼らは、属性間およびサンプル間に、水で口をすすぐべきである。
【0296】
分析Aに関する参考文献:
ISO 22935−1:2009、ISO 22935−2:2009、およびISO 22935−3:2009。これらは、乳および乳製品の官能評価分析に関する。
ISO 13299:2003 官能評価分析−方法論−官能プロファイルを確立するための一般的なガイドライン
ISO 13300−1:2006 官能評価分析−官能評価実験室のスタッフのための一般的なガイドライン−パート1:スタッフの責任
ISO 8586−1:1993 官能評価分析−評価者の選抜、訓練およびモニタリングの一般的なガイドライン−パート1:選抜された評価者
ISO 8589:2007 官能評価分析−試験室の設計のための一般的なガイドライン
Stone, H and Sidel, J.L (2004) Sensory Evaluation Practices. Tragon Corporation,
California, ISBN0-12-672690-6
【0297】
分析B−粒度分布:
乳サンプル中の粒径はMastersizer2000プログラムを実行するMalvern装置を用いて決定し、この際、平均粒子直径は、体積による平均直径(μm)によって測定される。
【0298】
分析C:変性したβ−ラクトグロブリン
加工された乳製品のβ−ラクトグロブリンの変性の程度の決定には、未加工の乳誘導体のサンプルおよび加工された乳製品のサンプルが必要である。各々のサンプルを、ISO 13875:2005(E)「液体乳−酸可溶性β−ラクトグロブリン含量の決定」に従って分析してサンプル中の酸可溶性β−ラクトグロブリンの量を決定し、サンプル1Lあたりの単位mgで表す。
【0299】
乳製品のβ−ラクトグロブリンの変性の程度(DD)は、次式により計算する:
DD=100%*(BLGr−BLGh)/BLGr
【0300】
上式で:
DDは、β−ラクトグロブリンの変性の程度(DD)である。
BLGrは、未加工の乳誘導体中のβ−ラクトグロブリン含量(mg/L)である。
BLGhは、変性の程度が関連する、加工された乳製品中のβ−ラクトグロブリン含量(mg/L)である。
【0301】
分析D:ラクツロースの決定:
乳サンプル中のラクツロース含量は、International Organisation for Standards、掲載刊行物番号:ISO11285:2004(E);IDF 175:2004(E)により定義される酵素アッセイにより測定する。
【0302】
分析E:HPLCによるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の定量
乳サンプル中のHMF含量、ならびにHMFおよびその前駆体の含量を、以下のプロトコールに従って、1組のHMF標準とともに、並行して測定する:
HMF標準:1〜60μMのヒドロキシメチルフルフラール(HMF)水溶液を、milliQ水中、0.5mMおよび1.2mMのHMF標準水溶液から調製する。
【0303】
分析する乳サンプルの調製:9%(重量/体積)水溶液を乳サンプルから調製し、次にその溶液を少なくとも1時間攪拌する。10mlのサンプルをこの溶液から取り、次にそれを50mlフラスコに移し、次にこれに5mlの0.15Mシュウ酸を加えて「乳HMFサンプル」を得る。
【0304】
サンプル前処理:「乳HMFサンプル」中の、HMF、ならびにHMFおよびその前駆体の定量はそれぞれ別々に分析し、ここでサンプルは以下の前処理を受ける:
1)「そのままの」サンプル中のHMF含量を定量する前に、「乳HMFサンプル」を室温で60分間放置する;
2)サンプル中の前駆体を含むHMF含量を定量する前に、「乳HMFサンプル」を、蓋をして60分間加熱してHMF前駆体をHMFに変換し、続いて5℃に冷却する。
【0305】
サンプルを冷却した後、5mlの40%TCA(トリクロロ酢酸)を上記前処理した各サンプルの各々、ならびに各々のHMF標準およびブランク対照サンプルに添加し、次に各々を個別に0.22μmのフィルターに通して濾過し、次にその濾液を以下のようにHPLC分析に付す。
【0306】
サンプル(体積20μL)をApexII ODS 5μm(vydac)を装備した」HPLCに注入し、溶出剤A:H2O、0.1%TFA;および溶出剤B:90%アセトニトリル、10%H2O、および0.1%TFAを含む移動相で、次の勾配で分離する。
【0307】
HMFを284nmで検出し、各々のサンプルのクロマトグラムに対してHMFピーク面積を、強制的に0.0を通るようにした検量線の傾きを計算するために使用されるHMF標準のピーク面積とともに求める。
【0308】
サンプル中のHMFは以下の通り計算する:
HMF[μg/100g]=(Samplepeakarea*MWHMF*VDissolvement)/(Slope*mSample)
【0309】
上式で:
Samplepeakarea=サンプルのクロマトグラムにおけるHMFのピーク面積
Slope=検量線の傾き
msample=秤量したサンプルの量[g]
VDissolvement=溶解全容積、(10ml)
MWHMF=126.1g/mol
【0310】
分析F−フロシン値の測定:
乳サンプルを、HCl溶液中で105℃で一晩加水分解する;1アリコートの加水分解物を用いて全窒素含量を決定する;もう一つのアリコートをC18カラムに通してフロシンを分離し、次にそれをHPLC−DADにより測定し、フロシン標準に関して定量化する。
【0311】
分析G−プラスミン/プラスミノゲンの決定:
乳サンプル中のプラスミン活性、およびウロキナーゼによるプラスミノゲン活性化後のプラスミン由来活性を、特異的な非蛍光クマリンペプチドN−スクシニル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−リシル−7−アミド−4−メチルクマリン[1]からプラスミンにより放出される蛍光生成物AMC(7−アミド−4−メチルクマリン)の濃度を測定することにより決定した。
【0312】
プラスミンおよびプラスミノゲンアッセイは、Saint Denis et al.[2]により以前に記載されたように行った。1mlの乳サンプルを、8mmol/LのEACAおよび0.4mol/LのNaClを含有する1mLの100mmol/Lトリス−HClバッファー(pH8.0)とともに37℃で10分間プレインキュベートしてカゼインミセルからプラスミンを解離させた。
【0313】
プラスミノゲンは、1mLの乳サンプルを1mLのウロキナーゼ溶液(100mmol/LのトリスHClバッファー(pH8.0)中、200 Ploug U/mLと8mmol/LのEACAおよび0.4mol/LのNaClを含有)の存在下で37℃で60分間インキュベーションすることにより、前もって活性プラスミンに変換した[3、4、5]。インキュベーションは、V字底マイクロチューブ中、37℃で行った。
【0314】
インキュベートした反応混合物は、200μlの2.0mmol/LのN−スクシニル−L−アラニル−L−フェニルアラニル−L−リシル−7−アミド−4−メチルクマリン(20% v/vジメチルスルホキシドおよび80% v/vの60mmol/Lトリス−HClバッファー(pH8.0)中、0.25mol/LのNaClとともに溶解)と混合した、200μlの調製乳サンプルで構成された。温度を37℃に安定化させるための10分間のプレインキュベーションの後、サンプル中のプラスミン、またはプラスミン由来活性に応じて5〜90分の間隔の間の3つの時点で、インキュベーションの間に放出されたAMCの蛍光を測定することにより、ペプチド加水分解の速度を決定した。
【0315】
測定ごとに、100μlの反応混合物をキュベット中で1mLの蒸留水および1mLのClarifying Reagent(登録商標)と混合し、酵素反応を停止させた。これらの段階により、乳の濁度に妨げられることなく直接的な蛍光分光測定が可能となった(ex=370nm、em=440nm)。
【0316】
プラスミノゲン含量は、ウロキナーゼによるプラスミノゲン活性化後の総プラスミン活性から生来のプラスミン活性を差し引いて計算した。各々のサンプルは二重反復で分析した。インキュベーションの間の蛍光強度の増大は、4時間まで線形的であった。乳サンプルを含まない同様の反応混合物を対照として使用して、クマリンペプチドの自然加水分解を決定した。それは全ての実験において無視できるものであった。
【0317】
分析Gに関する参考文献:
[1] Pierzchala P.A., A new fluorogenic substrate for plasmin, Biochem. J. 183(1979) 555-559.
[2] Saint-Denis T., Humbert G., Gaillard J.L, Enzymatic assays for native plasmin, plasminogen and plasminogen activators in bovine milk, J. Dairy Res. 68 (2001) 437-449.
[3] Korycka-Dahl M., Ribadeau-Dumas B., Chene N., Martal J., Plasmin activity in milk, J. Dairy Sci. 66 (1983) 704-711.
[4] Richardson B.C., Pearce K.N., The determination of plasmin in dairy products, N. Z. J. Dairy Sci. Technol. 16 (1981) 209-220.
[5] RollemaH.S.,Visser S., Poll J.K., Spectrophotometric assay of plasmin and plasminogen in bovine milk, Milchwissenschaft 38 (1983) 214-217.
【0318】
実施例II:低乳糖加水分解乳製品(HT処理後に加水分解、周囲温度貯蔵)
低い温度で低温殺菌した脱脂乳(72℃で15秒)を、10℃にて濃縮係数2で限外濾過(UF)し、それにより水、乳糖および脱脂乳のその他の小分子を含有するUF透過液、および脱脂乳のタンパク質画分ならびに水および乳糖などのより小さい分子を含有するUF保持液を作製した。このUF透過液をその後10℃にて濃縮係数4でナノ濾過(NF)し、それにより水と小型のイオンを含有するNF透過液、および乳糖と水分を含有するNF保持液を作製した。
【0319】
UF保持液およびNF透過液は、5℃で合わせて混合して低乳糖乳供給材料を得た。供給材料の脂肪含量を、高い温度で低温殺菌されたクリームを添加することにより、約1.5%(w/w)に調整した。
【0320】
この供給材料は、約1.5%(w/w)の乳脂肪、約4.1%(w/w)のタンパク質、および約2.4%(w/w)の乳糖を含有していた。供給材料の乾物含量は約9%(w/w)であった。
【0321】
供給材料を、酵素不活性化段階(85℃で120秒間、または90℃で120秒間の間接的加熱)に付し、その後にスチームインフュージョン(Instant Infusion System,Invensys APV,Denmark)を用いて155℃の温度で約0.1秒間加熱した。熱処理した供給材料を、その後に80±3℃まで冷却し、無菌的に均質化した(2段階160/40bar)。製品をさらに5℃まで冷却し、乳製品をガラス瓶に無菌的に充填する前に、濾過滅菌されたラクターゼ(Maxilact LG2000)を添加して0.0167%(w/w)の濃度にした。
【0322】
包装した乳製品は、周囲温度で180日間貯蔵した。貯蔵7日後の、乳糖含量は0.01%(w/w)未満であった。
【0323】
このようにして、1.5%(w/w)の乳脂肪、4.1%(w/w)のタンパク質、0.01%(w/w)未満の乳糖、および約3%(w/w)の炭水化物(グルコースおよびガラクトース)を含有する低乳糖乳製品を調製した。乾物含量は9.1〜9.2%(w/w)であった。
【0324】
メイラード反応
乳製品における栄養価およびメイラード反応の進行を、貯蔵中のフロシン値をモニタリングすることにより測定した。フロシン値は、実施例Iの分析Fに記載されるように決定した。得られた結果を、標準的な脱脂乳、乳糖加水分解脱脂乳、ならびに国際特許出願公開第2009/000972号の実施例3および実施例4に開示される乳製品と比較した。
【0325】
国際公開第2009/000972号の実施例3および4による乳製品を、限外濾過およびナノ濾過を用いて調製し、乳糖含量が低い乳ベース(<0.5%)、および乳糖画分を得た。これらの2画分は、別々に熱処理し(直接的UHT、146℃で4秒)、その後に合わせた。乳ベースと乳糖画分の熱処理は別々に行われるので、フロシン形成およびメイラード反応は低下すると報告される。
【0326】
図14は、国際公開第2009/000972号の実施例3および4の乳製品および対照乳と比較した、実施例IIの乳関連製品のフロシン値を示す。炭水化物およびタンパク質が別々に熱処理されていないにもかかわらず、実施例IIで製造された乳製品は、同程度の先行技術の乳製品よりもかなり低いフロシン値を有した。
【0327】
プラスミン活性の測定
本発明の乳製品におけるタンパク質分解活性を、プラスミン活性を分析する(分析G)ことによりモニタリングした。
【0328】
貯蔵中にタンパク質分解は観察されなかった。従って、プラスミン系は、本実施例に記載される加工によって効果的に不活性化された。
【0329】
結論
本発明の乳製品の驚くほど低いフロシン値は、本発明の低乳糖乳製品が、先行技術の低乳糖乳よりも、メイラード反応に関連する官能上の欠点、および特に長期貯蔵中に起こる官能上の欠点を有する傾向が少ないことを実証している。メイラード反応においてアマドリ生成物が形成されることにより、消化に利用可能なリジンの損失がもたらされる。従って、実施例IIの乳製品の栄養価は、リジンのバイオアベイラビリティがより高いために、先行技術の低乳糖乳よりもより優れていることがさらに認識される。
【0330】
実施例III:低乳糖加水分解乳製品(HT処理前に加水分解、周囲温度貯蔵)
2種類の他の低乳糖乳製品を、実施例IIに概略を説明したように、乳糖の加水分解を熱処理の前に実施することによることを除いて製造した。
【0331】
従って、熱処理の前に、供給材料を槽に移し、ラクターゼ(Maxilact LG2000)を添加して終濃度を0.175%(w/w)とした。乳糖の加水分解は、10±1℃で20時間を越えて乳糖濃度が0.01%(w/w)未満に達するまで行った。この後、低乳糖供給材料を同じ酵素不活性化段階および実施例IIに記載される熱処理に付した。
【0332】
製品をガラス瓶に無菌充填し、暗所にて周囲温度で180日間貯蔵した。
【0333】
このようにして、1.4%(w/w)の乳脂肪、3.7%(w/w)のタンパク質、0.01%(w/w)未満の乳糖、および約3%(w/w)の炭水化物を含む、炭水化物を低減し、乳糖を加水分解した乳製品を調製した。乾物含量は8.3〜8.4%(w/w)であった。
【0334】
メイラード反応:
図15は、本発明の低乳糖乳製品のフロシン値を示す。フロシン形成およびメイラード反応は、加水分解が熱処理の前に実施された場合に増加するように思われる。実施例IIIの乳関連製品のフロシン値は、実施例IIの乳関連製品のものよりもわずかに高かったが、しかし、国際公開第2009/000972号の実施例3および4に開示されるフロシン値よりもさらに大幅に低かった。
【0335】
タンパク質分解活性:
プラスミン系は、実施例IIIの乳関連製品において不活性化され(20μU/ml未満)、貯蔵中にタンパク質分解は観察されなかった。
【0336】
官能試験:
実施例IIIで調製された乳関連製品は両方とも、180日目に消費者の許容する味を有し、対照(UHT処理、加水分解乳)よりも異臭の程度が低いようであった。
【0337】
結論:
熱処理前の加水分解は、後で加水分解した乳製品と比較して還元糖の量がより多いために、メイラード反応の程度を増大させる。実施例Iの乳製品と比較して、本発明の乳製品フロシン値における差は驚くほど低く、このことは、プロセスにおける加水分解段階は、結果として得られる乳製品の官能的品質および栄養価が大きく変化することなく熱処理段階の前または後に置くことができることを示す。
【0338】
実施例IV:低乳糖加水分解乳製品(HT処理前に加水分解、低温貯蔵)
実施例IIIと同様に、乳製品のための低乳糖供給材料を熱処理の前に加水分解した。この低乳糖供給材料を酵素不活性化段階(74℃で30秒間の間接的加熱)に付し、その後にスチームインフュージョンを用いて155℃の温度で約0.1秒間加熱した。
【0339】
熱処理した供給材料を、約67℃まで冷却し、無菌的に均質化した(2段階160/40bar)。製品をさらに5℃まで冷却し、ガラス瓶に無菌充填した。製品を、冷(5〜8℃)暗所で60日間貯蔵した。
【0340】
このようにして、1.4%(w/w)の脂肪分、3.8%(w/w)のタンパク質、0.01%(w/w)未満の乳糖、および約3%(w/w)の炭水化物を含む低乳糖乳製品を調製した。乾物含量は8.4%(w/w)であった。
【0341】
メイラード反応:
乳製品のフロシン値を測定することにより、メイラード反応の進行および乳製品の栄養価をモニタリングした。フロシン値は、炭水化物を低減および加水分解したESL乳(Kallioinen,H., Tossavainen, 0. (2009): Changes during storage of lactose hydrolyzed extended shelf life milk. DMZ, Lebensmittelindustrie und Milchwissenschaft 130(14): 47-50)と比較した。
乳製品は、貯蔵期間中、ESL対照よりもわずかに低いフロシン値を示した。
【0342】
タンパク質分解活性:
乳製品中のプラスミン活性はかなり低下したが、プラスミンは完全には不活性化しなかった。しかし、貯蔵期間中、タンパク質分解または苦味は認められなかった。
【0343】
β−ラクトグロブリンの変性:
β−ラクトグロブリンの変性の程度を、実施例Iの分析Cに従って決定した。本発明の乳製品のβ−ラクトグロブリンの変性の程度は31.4%であった。
【0344】
官能試験:
乳製品の官能的品質を、貯蔵後7、28および60日目に、低乳糖ESL乳(ダイレクトスチームインジェクション、127℃で2秒間)と比較した。あらゆる官能プロファイリングの比較のために、新しく製造したESL対照を使用した。
乳製品は新鮮な対照と比較して等しい官能的品質を示し、60日間の全貯蔵期間中、その新鮮な味を維持した。
【0345】
結論:
全貯蔵期間中の本発明の乳製品の低いフロシン値および良好な官能特性は、本発明の乳製品が、先行技術の低乳糖乳製品よりも、品質のいかなる低減もなく驚くほど長い貯蔵寿命を有することを示す。
【0346】
実施例V:低乳糖加水分解乳製品(HT処理後に加水分解、周囲温度貯蔵)
実施例IIと同様の2種類の乳製品を、変更したプロセスを使用して、異なる製造工場で製造した。低乳糖供給材料は、約1.8%(w/w)の脂肪分、約3.8%(w/w)のタンパク質、および約2.7%(w/w)の乳糖を含有した。供給材料の乾物含量は、約9.3%(w/w)であった。
【0347】
供給材料を、酵素不活性化段階(85℃で120秒間、または90℃で120秒間の間接的加熱)に付した。次に、供給材料を72℃まで冷却し、その後にスチームインフュージョンを用いて155℃の温度で約0.1秒間加熱した。熱処理した供給材料を、71℃まで冷却し、無菌的に均質化した(2段階160/40bar)。製品を約20℃までさらに冷却し、濾過滅菌したラクターゼ(Maxilact LG1000)を添加して終濃度を0.02%(w/w)とした。乳製品は、Tetra Bric包装に無菌充填した。
【0348】
包装した乳製品は、周囲温度で保存した。貯蔵7日後の、乳糖含量は0.01%(w/w)未満であった。
【0349】
このようにして、1.8%(w/w)の脂肪分、約3.9%(w/w)のタンパク質、0.01%(w/w)未満の乳糖、および約3%(w/w)の炭水化物を含有する2種類の低乳糖乳製品を調製した。乾物含量は、9.4%(w/w)であった。
【0350】
メイラード反応
図16は、国際公開第2009/000972号(‘972号)の実施例3および4の乳製品および対照乳と比較した、本発明の低乳糖乳製品のフロシン値を示す。実施例IIの乳製品と比較して、前記乳製品は、より高いフロシン含量を示す。これは、製品の熱負荷の増大をもたらす酵素不活性化段階の後に製品を冷却することに起因し得る。
実施例Vの乳製品は、観察した貯蔵期間中に、対照と比較して、なお明らかに低いフロシン値を有していた。
【0351】
タンパク質分解活性:
プラスミン系は、実施例Vの乳関連製品において、効果的に不活性化され(20μU/ml未満)、貯蔵期間中にタンパク質分解は観察されなかった。
【0352】
官能試験:
乳製品の官能プロファイリングを、貯蔵後7、28および60日目に実施した。本発明の乳製品は、特に加熱済の風味、および乳風味に関して、UHT対照よりもさらに良好な官能特性を有していた。非公式の官能試験(4名のパネルを用いる)を製造後84日目に実施したところ、本発明の乳製品はなお良好な消費者の許容する味を有していることが確認された。
【0353】
結論:
本発明の乳製品の驚くほど低いフロシン値は、本発明の低乳糖乳製品が、先行技術の低乳糖乳よりも、メイラード反応に関連する官能上の欠点を有する傾向が少ないことを実証している。異なる加工工場、および熱処理前の冷却段階は、実施例IIの乳製品と比較して、本発明の乳製品のフロシン値のわずかな上昇をもたらした。しかし、冷却段階は、乳製品のスチームインフュージョン熱処理と均質化の両方に最適な温度をもたらした。それに加えて、製品の官能的品質は、対照よりも優れていることが見出された。
【0354】
より良好なフロシン値に加えて、このプロセスは先行技術で用いられるプロセスよりも単純で堅牢である。国際特許出願公開第2009/000972号に記載されるプロセスと比較して、実施例V(および本明細書に記載される他の実施例)に記載されるプロセスは、供給材料が乳ベースと乳糖画分に分離されて高温処理の後に再び混合されることがないので、より少ないエネルギーを要し、二次汚染の傾向がない。
【0355】
実施例VI:低乳糖加水分解乳製品(HT処理前に加水分解、低温貯蔵)
実施例IVに加えて、実施例Vに記載されるものと同じプロセスおよび加工工場で2つの乳製品を製造した。
【0356】
低乳糖供給材料は、1.8%(w/w)の脂肪分、約3.9%(w/w)のタンパク質、および約2.8%(w/w)の乳糖を含有した。供給材料の乾物含量は、約9.5%(w/w)であった。熱処理の前に、供給材料を槽に移し、ラクターゼ(Maxilact LG5000)を添加して終濃度を0.07%(w/w)とした。乳糖の加水分解を、10±1℃で20時間を越えて実施し、乳糖濃度は0.01%(w/w)未満に達した。
【0357】
低乳糖供給材料を、酵素不活性化段階(74℃で45秒間、または80℃で45秒間の間接的加熱)に付した。この後、供給材料を72℃まで冷却し、その後にスチームインフュージョンを用いて155℃の温度で約0.1秒間加熱した。熱処理した供給材料を71℃まで冷却し、無菌的に均質化した(2段階160/40bar)。製品をさらに約8℃まで冷却し、Tetra Bric包装に無菌的に充填した。製品は、冷蔵貯蔵した(5〜8℃)。
【0358】
このようにして、1.8%(w/w)の脂肪分、約4%(w/w)のタンパク質、0.01%(w/w)未満の乳糖、および約3%(w/w)の炭水化物を含有する2種類の低乳糖乳製品を調製した。乾物含量は、9.5%(w/w)であった。
【0359】
メイラード反応:
本発明の乳製品のフロシン値は、観察した60日の貯蔵期間中、新しく製造したESL対照のフロシン値と同様であった。
【0360】
タンパク質分解活性:
乳製品中のプラスミン活性はかなり低下したが、しかしプラスミンは完全には不活性化されなかった。貯蔵期間中、タンパク質分解または苦味は認められなかった。
【0361】
β−ラクトグロブリンの変性
β−ラクトグロブリンの変性の程度は、実施例Iの分析Cに従って決定し、本発明の乳製品のβ−ラクトグロブリンの変性の程度はそれぞれ41および45%であった。
【0362】
官能試験:
実施例IVの乳製品と同様に、本発明の乳製品を、新しく製造した低乳糖ESL対照と比較した。官能プロファイリングを、貯蔵後7、28および60日目に実施した。貯蔵期間を通して、乳製品は、驚くことに、新鮮なESL対照と類似した官能特性を有していた。非公式の官能試験(4人のパネルを用いる)を製造後98日目に実施したところ、本発明の乳製品はなお良好な消費者の許容する味を有していることが確認された。
【0363】
結論:
全貯蔵期間中の、本発明の乳製品の低いフロシン値および良好な官能特性は、本発明の乳製品が、先行技術の低乳糖乳製品よりも、品質が低下することなく、驚くほど長い貯蔵寿命を有することを示す。