(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置100は、大略的に生体センサ111と挿入部112とを有するイヤーピース110を備え、イヤーピース110はユーザの耳に装着される。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置の要部の機能ブロック図である。本実施の形態に係る生体情報測定装置100は、イヤーピース110と、制御部120と、記憶部160と、通信部140と、報知部150とを備える。生体情報測定装置100は、ユーザが挿入部112を外耳道に挿入した状態において、イヤーピース110に備えられた生体センサ111を用いて、生体情報を測定する。
【0012】
生体情報は、イヤーピース110が備える生体センサ111を使用して測定可能な任意の生体情報である。本実施の形態においては、生体情報測定装置100は、一例として、ユーザの脈拍を測定するものとして、以下説明を行う。
【0013】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るイヤーピース110における概略構成を示す図である。
図2(b)は、
図2(a)に図示したA−A断面を、矢印方向に観察した概略断面を示す図である。
図2(a)及び
図2(b)において、イヤーピース110は、左方向に向かってユーザの外耳道に挿入される。イヤーピース110は、生体センサ111と、挿入部112と、パッド113と、筺体114とを備える。生体センサ111と、挿入部112と、パッド113は、筺体114に配設される。挿入部112がユーザの外耳道に挿入されると、生体センサ111はユーザの耳甲介に対向するように配設される。
【0014】
生体センサ111は、脈波センサであり、ユーザ(生体)から、生体測定出力として脈波データを取得する。生体センサ111は、発光部111aと受光部111bとを備える。本発明の生体センサ111は、例えば発光部111aにLED(発光ダイオード:Light emitting diode)等の発光素子を備える。本発明の生体センサ111は、例えば受光部111bにPT(フォトトランジスタ:Phototransistor)又はPD(フォトダイオード:Photodiode)等の受光素子を備える。生体センサ111は、発光素子からユーザの外耳道の被検部位に測定光を照射し、受光素子で被検部位からの反射光を受光することにより脈波データを測定する。このような光による測定の場合、生体センサ111は必ずしも被測定部に接触していなくてもよい。生体センサ111の発光部111aと受光部111bとは、筺体内部に遮光用の壁を隔てて並列的に配置されている。遮光用の壁は、発光部111aから放射された光が直接受光部111bに受光されないように配置されている。生体センサ111は、保護用の透光パネルが配置され、当該透光パネルにより、生体センサ111の内部が密閉されている。
【0015】
生体センサ111は駆動部(図示せず)を備える。駆動部は制御部120で生成された測定信号に基づいて、発光素子及び受光素子を駆動させる。発光素子及び受光素子は、駆動部の駆動に基づいて発光及び受光する。駆動部は、例えば、制御部120によって駆動制御される。
【0016】
脈拍を測定する場合、発光部111aは、青(波長:400〜430nm)、あるいは緑(波長:500〜550nm)のLED又はレーザを用いる。上記波長の青や緑の光は、ヘモグロビンに吸収されやすく、血流量が多いと光の吸収量が多くなり、受光部111bの出力が弱くなる。また、赤色(波長:630〜650nm)のLEDやレーザを用いてもよい。この場合、ヘモグロビンが赤色の光を反射するため、血流量が多いと光の反射量が多くなり、受光部の出力が強くなる。受光部111bは、それぞれの波長に対応したPDが用いられる。
【0017】
挿入部112は筺体部114の外耳道挿入側に配設される。挿入部112は外耳道に挿入したときに、外耳道に当接する。ユーザは、生体センサ111が耳甲介に対向するように挿入部112を外耳道に挿入する。挿入部112は、外耳道に挿入された際、外耳道の形状に合わせて変形かつ密着する。イヤーピース110は、挿入部112が外耳道に密着することにより、耳の所定の位置に保持される。挿入部112は、常温で弾性力を有する材質で形成され、例えば、ショア硬さ30〜60程度の樹脂で構成されてもよい。挿入部112は、例えば、シリコンゴム、軟質ポリウレタン樹脂等の材質で構成されてもよい。
【0018】
パッド113は、筺体部114の外耳道挿入側と逆の端に係合される。パッド113は、ユーザの装着性を高めるために、シリコンゴム、軟質ポリウレタン樹脂等の常温で弾性力を有する材質で構成できる。パッド113は、耳珠の裏側及び対耳珠の裏側部分と当接し、上述の挿入部112と共に、イヤーピース110を耳の所定の位置に保持させる。一方、耳甲介と筺体114及び生体センサ111で囲まれた空間は、パッド113の外周部分により外部からの光が入りにくい状態となっている。パッド113の一部は、生体センサ111の周辺に配設されていてもよい。パッド113は、生体センサ111の表面より耳甲介側に盛り上がっていてもよい。例えば、
図2(b)に示す通り、パッド113は生体センサ111の表面より、耳甲介側に厚みtmm盛り上がっている。厚みtmmは、例えば0.5〜3mm程度である。パッド113は、生体センサ111の周りで耳甲介周辺に接触する。パッド113は、生体センサ111で生体情報を取得する際に、外部の光が受光部111bで受光されることを防止する。パッド113は、より遮光性を向上させるために、例えば黒色のシリコンゴム等の遮光性材料で構成してもよい。パッド113は、中空構造にして、ユーザの耳甲介腔(耳甲介、耳珠裏側、対耳珠裏側で囲まれた部分)の大きさに変形しやすくしてもよい。パッド113は、ユーザが激しい運動をしても、イヤーピース110が所定の位置からずれることを防止する。さらに、パッド113は、受光部111bに外部から光が入ることを防止する。従って、本発明の生体情報取得装置は、より精度の高い生体情報の取得が可能となる。
【0019】
筺体114は、イヤーピース110を耳に装着する際に、外耳道挿入側に挿入部112が係合されている。筺体114は、イヤーピース110を耳に装着する際に、耳甲介に対向する面に生体センサ111が配設されている。筺体114は、イヤーピース110を耳に装着する際に、外耳道挿入側と逆の端にパッド113が係合されている。筺体114はベント115(空気孔)が設けられている。ベント115は、イヤーピース110を装着する際に、外耳道から耳の外側に通じる空気孔である。ベント115は、筺体114に穴を形成してもよいし、筺体114の一部を凹ませて形成してもよい。筺体114にベント115を設けることにより、生体情報を測定しながら外の音を聞くことができ、ユーザの安全性が向上する。筺体114は、例えばポリカーボネート樹脂やアミン系樹脂等の樹脂で構成できる。本実施形態においては、筺体114、挿入部112、パッド113を係合してイヤーピース110を構成したが、本発明はこれに限ることなく、筺体114、挿入部112、パッド113を、同一の材料を用いて一体成形してもよい。
【0020】
なお、イヤーピース110内部及び外部には、生体センサ111からの出力信号や、生体センサ111へ電力を供給するための各種配線が配置されている(図示せず)。
【0021】
再び
図1を参照すると、制御部120は、生体情報測定装置100全体の動作を制御するプロセッサである。制御部120は、ユーザが生体情報の測定を行う際に、生体センサ111が取得した脈波データに基づいて、生体情報としての脈拍を測定する。
【0022】
例えば、制御部120は、生体測定出力である脈波データが生体情報の測定に使用可能な許容範囲であるか否かを判断する。制御部120は、脈波データが許容範囲でないと判断した場合、報知部150からエラーの報知を行う。一方、制御部120は、脈波データが許容範囲であると判断した場合、報知部150から測定開始の報知を行う。
【0023】
記憶部160は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ等で構成することができ、各種情報や生体情報測定装置100を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部160は、例えば、生体センサ111が取得する脈波データが生体情報の測定に使用可能か否かの判断基準となる許容範囲に係る情報(閾値)を記憶する。
【0024】
通信部140は、有線又はBluetooth(登録商標)等の無線により、携帯電話機と接続して通信を行う。生体情報測定装置100は、例えば、制御部120が測定した生体情報を、通信部140を介して携帯電話機200に送信する。
【0025】
報知部150は、例えば、画像、文字若しくは発光等による視覚的な方法、音声等の聴覚的な方法、又はそれらの組み合わせにより、制御部120の制御に基づいて、ユーザに報知を行う。報知部150は、視覚的な方法で報知を行う場合、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等の表示デバイスにより構成された表示デバイスに、画像又は文字を表示することにより報知を行う。報知部150は、例えば、生体センサ111とは別に構成されたLED等の発光素子が発光することにより報知を行ってもよい。なお、報知部150が行う報知は、視覚的又は聴覚的な方法に限られず、ユーザが認識可能な任意の方法であってもよい。
【0026】
なお、制御部120は、例えば、通信部140を介して接続された携帯電話機200の表示部260に画像又は文字を表示することにより報知を行ってもよい。この場合、生体情報測定装置100は、報知部150を備えなくてもよい。
【0027】
なお、制御部120、記憶部160、報知部150及び通信部140は、イヤーピース110内に備えていてもよい。また、生体情報測定装置100は、少なくとも挿入部112及び生体センサ111を備えていればよく、制御部120、記憶部160、及び報知部は携帯電話機200に備えられていてもよい。
【0028】
携帯電話機200は、例えばスマートフォンであり、生体情報測定装置100に接続される。携帯電話機200は、携帯電話機制御部220と、通信部240と、表示部260と、入力部270とを備える。
【0029】
携帯電話機制御部220は、携帯電話機200全体の動作を制御するプロセッサである。携帯電話機制御部220は、例えば、生体情報測定装置100が測定した生体情報を表示部260に表示させる。
【0030】
通信部240は、有線又は無線により、生体情報測定装置100と接続して通信を行う。携帯電話機200は、例えば、生体情報測定装置100が測定した生体情報を、通信部240を介して受信する。
【0031】
表示部260は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。表示部260は、生体情報測定装置100が測定した生体情報を表示する。ユーザは、表示部260の表示を確認することにより、自らの生体情報を知ることができる。
【0032】
入力部270は、ユーザからの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタン(操作キー)から構成される。入力部270をタッチスクリーンにより構成し、表示部260の一部にユーザからの操作入力を受け付ける入力領域を表示して、ユーザによるタッチ操作入力を受け付けてもよい。
【0033】
図3(a)は耳の構造を示す概略図である。
図3(b)は
図2に示すイヤーピース110を耳に装着した状態を示す図である。本発明の生体情報測定装置100は、イヤーピース110における挿入部112が、外耳道340に挿入された状態で、生体センサ111が耳甲介310に対向するように配置されて、生体情報を測定する。発光部111aは耳甲介に向かって光を放射する。放射された光は、耳甲介で反射もしくは散乱し、受光部111bで受光される。反射光の強度は脈拍に同期して変動する。この反射光強度の変動を脈波として観察することにより、脈拍を得ることができる。耳甲介は、例えば外耳道内壁と比べて、被測定部が広い。従って、生体センサ111の配置の自由度は大きくなる。例えば、発光部111aを耳甲介に密着させずに離した状態に配置することにより、光はより広い領域に放射することができる。また、耳甲介は、例えば外耳道内壁と比べて、平らである。従って、反射する光の方向が一定となり、受光部111bは安定して強い光を受光することができる。このように、広い領域の生体情報を強い光で受光できるので、より生体情報の測定精度を向上することができる。また、耳甲介と生体センサ111で囲まれる空間は、外部から光が入りにくいため、より生体情報の測定精度を向上することができる。
【0034】
図4(a)は、従来の生体情報測定装置が取得した脈波データの一例を示す図である。
図4(b)は、本発明の第1実施形態に係る生体センサ111が取得した脈波データの一例を示す図である。脈波データを示す図は、横軸に時間、縦軸に光の受光強度をプロットした図である。従来の生体情報測定装置は、発光部と受光部を備える生体センサを対耳珠裏側に当接させ、脈波データを取得するものである。脈波データは、被験者が生体情報測定装置を装着したまま5分間所定の運動をした後に、測定された。
図4(a)と
図4(b)とを比較すると、
図4(a)の脈波データのピークの周期は不安定で、振幅が小さく、一定していない。それに対して、
図4(b)の脈波データのピークの周期は安定し、振幅は大きく、一定している。第1実施形態に係る生体センサ111が取得した脈波データは、測定精度がよいことが明らかである。測定後、従来の生体情報測定装置の装着状況を確認したところ、対耳珠裏側に当接されていた生体センサがずれており、外からの光が受光部に入る状態となっていた。それに対し、本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置の装着状況は安定していた。
【0035】
図5は本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置と従来の生体情報測定装置とにおける、脈拍測定結果を比較する図である。測定は男32人、女18人、計50人の脈拍測定を行った。従来の生体情報測定装置は、指先で測定する従来方式1と、対耳珠裏側で測定する従来方式2とを用いた。安静状態の被験者の脈拍を測定した。被験者の状態が変わらないように、被験者毎に3つの方式を連続して測定した。
【0036】
脈拍取得率は、脈拍が測定できた確率である。本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置においては100%の脈拍取得率であった。従来方式1では、指先の血行不良により脈波を検知できないことによるエラーが発生し、脈拍取得率は96%であった。従来方式2では、耳の大きさが合わず対耳珠裏側に当接できないことによるエラーが発生し、脈拍取得率は92%であった。
【0037】
脈拍平均値は、取得された50人分の脈拍の平均値である。従来方式2は、他の方式と比べて脈拍平均値が高く、測定の精度の点で課題があることが予想される。一般に知られるコホート研究では、11463人の脈拍平均値は62±9.5という結果が示されている。本発明の生体情報測定装置で測定した脈拍平均値は70.2であった。コホート研究による脈拍平均値の範囲内であることから、生体情報測定装置で測定値は信頼性があると判断できる。
【0038】
図6は、本発明の第2実施形態に係る生体情報測定装置における断面概略形状を示す図である。以下、本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置と同じ点については、詳細説明を省略し、異なる点について説明する。
【0039】
第2実施形態に係る生体情報測定装置はスピーカ136を備える。スピーカ136は、振動板137及び駆動部138により構成される。スピーカ136は、筺体134bに保持され、筺体134bは筺体134aと係合されている。筺体134aのベント135aと、筺体134bのベント135bはつながっている。イヤーピース130を耳に装着すると、ベントは外耳道から耳の外側に通じている。ベントを設けることにより、スピーカで音楽を聴きながら、外の音を聞くことができるので、ユーザの安全性が向上する。
【0040】
スピーカ136が発生する音は、挿入部132の外耳道への挿入方向、すなわちユーザの耳内に伝達する。駆動部138は、携帯電話機200で生成された音の音信号に基づいて、振動板137を振動させる。振動板137は、駆動部138の駆動に基づいて振動し、音を再生する。駆動部138は、例えば、制御部120によって駆動制御される。
【0041】
振動板137の振動方向を矢印で示す。挿入部132の外耳道への挿入方向と振動板137の振動方向とは、略平行となるように、スピーカ136は配置される。略平行は振動板137の振動方向と挿入部132の挿入方向とのなす角θは0〜10度の範囲である。このように配置することにより、音の反射が少なくなる。さらに、音の振動が耳の鼓膜に伝わりやすくなる。また、イヤーピース130を耳に装着すると、スピーカは耳の外に配置されるため、イヤーピースの装着感を損なうことなく、スピーカ136は大きいものを選択できる。
【0042】
なお、本発明のスピーカの配置はこれに限ることなく、筺体134aの生体センサ131が配設される逆の端に配設してもよい。
【0043】
上記実施の形態においては、生体情報測定装置は、脈拍を測定するものとして説明したが、測定される生体情報はこれに限られない。測定される生体情報は、例えば、血流速度でもよい。血流速度を測定する場合は、たとえば赤外光(波長:1.31マイクロメートル、あるいは1.55マイクロメートル)のレーザを用いて、ドップラーシフトにより生じた波長の変化から相対的な血流速度を検出する。測定される生体情報は、例えば、体温でもよい。体温は、例えば、耳甲介から外部へ向かう熱放射(赤外線)により検出される。体温は、例えば、サーミスタを用いて検出される。生体情報として血流速度及び体温を測定する場合は、パッド113は遮光部材として機能すると共に、断熱部材としても機能する。パッド113を備えることにより、外部温度の影響を受けにくく、安定した生体情報の測定が可能となる。
【0044】
測定される生体情報は、例えば、血圧、血中酸素量でもよい。また、測定される生体情報は1つに限らず、複数のセンサを組み合わせて、複数の生体情報を測定してもよい。
【0045】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各部材等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段や部材等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。