特許第6254522号(P6254522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254522
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ヒト化抗CD52抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20171218BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20171218BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20171218BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20171218BHJP
   C12N 5/16 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20171218BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K16/28
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12N5/16
   A61P35/02
   A61P25/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P9/00
   A61P21/00
   A61P29/00
   A61P3/10
   A61P37/02
   A61P37/06
   A61K39/395 N
   A61K31/7088
   A61K48/00
   G01N33/53 Y
   G01N33/53 V
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-513202(P2014-513202)
(86)(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公表番号】特表2014-518630(P2014-518630A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012060345
(87)【国際公開番号】WO2012164063
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月29日
(31)【優先権主張番号】1109238.4
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/492,005
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513225707
【氏名又は名称】アンチトープ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・デヴィッド・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジョージ・エドワード・ホルゲート
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ジョセフ・カー
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/132659(WO,A1)
【文献】 特表平02−503514(JP,A)
【文献】 特表2006−512407(JP,A)
【文献】 特表2004−510827(JP,A)
【文献】 特表2000−506723(JP,A)
【文献】 特表2007−515492(JP,A)
【文献】 特表平05−504579(JP,A)
【文献】 特表2007−534304(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1508155(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102079787(CN,A)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1995年,Vol.92, No.26,p. 11980-11984
【文献】 J. Immunol.,1999年,Vol.162, No.6,p. 3663-3671
【文献】 Bone Marrow Transplant.,2000年,Vol.26, No.1,p. 69-76
【文献】 Hutchins, Jeff T.ら,Improved biodistribution, tumor targeting, and reduced immunogenicity in mice with a γ4 variant of Campath-1H.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1995年,92(26),11980-4
【文献】 Gilliland, Lisa K.ら,Elimination of the immunogenicity of therapeutic antibodies. Journal of Immunology,Journal of Immunology,1999年,162(6),3663-3671
【文献】 Hale G.ら,CD52 antibodies for prevention of graft-versus-host disease and graft rejection following transplantation of allogeneic peripheral blood stem cells.,Bone Marrow Transplant.,2000年,26(1),69-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
C07K 16/00 − 16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列RYGMS(配列番号5)を含むCDRH1;
(ii)配列MMKTKGGRTYYPDSVKG(配列番号6)を含むCDRH2;
(iii)配列DGYY(配列番号7)を含むCDRH3;
(iv)配列KSSQSLLHSDGKTYLN(配列番号8)を含むCDRL1;
(v)配列LVSKLDS(配列番号9)を含むCDRL2;および
(vi)配列WQGTHLWT(配列番号10)を含むCDRL3
のCDR配列を含む抗CD52抗体。
【請求項2】
軽鎖可変領域用の、配列番号25〜28からなる群から選択される1つまたは複数の配列と組み合わせた、重鎖可変領域用の、配列番号20〜24からなる群から選択される1つまたは複数の可変領域配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
軽鎖可変領域用の、配列番号28と組み合わせた、重鎖可変領域用の、配列番号22を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
ヒト集団からのHLA-DRアロタイプの一分布を有する50個のヒト血液試料におけるCD4+ヘルパーT細胞応答の誘導についてインビトロにおいて試験したとき、4%以下のT細胞応答をもたらす、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
可変領域配列が、完全にヒト抗体可変領域における配列由来である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
ヒト定常領域とともに可変領域から構成される、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
ヒト重鎖定常領域がアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4または突然変異IgG定常領域のいずれかであり、ヒト軽鎖ヒト定常領域がアイソタイプカッパである、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
ヒト定常領域がIgG1およびカッパである、請求項6に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト定常領域がIgG4およびカッパである、請求項6に記載の抗体。
【請求項10】
scFvまたはFabである、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
ヒトCD52に特異的に結合し、さらに、1つまたは複数の他の分子と結合するまたは相互作用する多重特異的なタンパク質の成分である、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
原核生物細胞、真核生物細胞または哺乳動物細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の抗CD52抗体、請求項12に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13に記載のベクターを含む組成物。
【請求項17】
CLLおよび他の白血病;多発性硬化症、関節リウマチ、血管炎、筋炎および糖尿病を含む自己免疫疾患;ならびに臓器移植拒絶反応および移植片対宿主疾患を含む疾患を治療するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
CLLおよび他の白血病;多発性硬化症、関節リウマチ、血管炎、筋炎および糖尿病を含む自己免疫疾患;ならびに臓器移植拒絶反応および移植片対宿主疾患を含む疾患を治療するための、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
CLLおよび他の白血病;多発性硬化症、関節リウマチ、血管炎、筋炎および糖尿病を含む自己免疫疾患;ならびに臓器移植拒絶反応および移植片対宿主疾患を含む疾患を治療するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗CD52抗体を含む組成物。
【請求項20】
ヒトCD52関連疾患の診断について、試料中のヒトCD52抗原の存在をin vitroで検出するための方法における、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD52に対する新規なヒト化抗体、およびヒト疾患を治療または予防する方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD52は、様々な正常リンパ系細胞および悪性リンパ系細胞、特にB細胞およびT細胞上に大量に見出される、グリコシル化されたグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)固定の細胞表面タンパク質である(Gilleeceら、Blood 82 807-812 (1993); Haleら、J Biol Regul Homeost Agents、15、386-391頁(2001); Rodigら、Clin Cancer Res 12、7174-7179頁(2006))。CD52は、単球、マクロファージおよび樹状細胞(DC)などの骨髄細胞上ではそれより低レベルで発現し、成熟ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球および血液幹細胞ではほとんど発現が見出されていない。また、CD52は、精巣上体および精管の上皮細胞によって産生され、生殖管を通過中に精子によって獲得される(Haleら、上述; Domagalaら、Med Sci Monit 7 325-331頁(2001))。CD52の正確な生物学的機能は不明なままであるが、いくつかの証拠は、それがT細胞の移動および共刺激に関与している可能性があることを示唆している(Masuyamaら、J Exp Med 189 979-989(1999); Watanabeら、Clin Immunol 120 247-259(2006))。
【0003】
Campath-1H(アレムツズマブ、Campath(登録商標)、MabCampath(登録商標))は、インビトロで強力な抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を示すヒト化抗ヒトCD52モノクローナル抗体である。CD52は、全ヒト末梢血リンパ球および単球/マクロファージの少なくとも95%において存在する(Hale G.ら、The CAMPATH-1 antigen (CD52)、Tissue Antigens 1990、35: 118-127)。Campath-1Hは、成熟CD52タンパク質のカルボキシ末端の4つのアミノ酸と負に帯電したGPIアンカーの一部からなるエピトープを認識する。その際立った細胞毒性効果に起因して、Campath-1Hは、インビボにおいてCD52陽性細胞を枯渇させることができ、慢性リンパ性白血病(CLL)のフロントライン治療および第三次治療のために承認されている。Campath-1Hは、関節リウマチ、血管炎、筋炎、ウェゲナー病および糖尿病を含むいくつかの自己免疫疾患の治療におけるその有用性について評価されている。Campath-1Hの最も先進的な研究は、再発寛解型多発性硬化症(MS)の治療におけるものである。これらの研究は、ヒトインターフェロンベータ-1a(Rebif(登録商標)(すなわち、インターフェロンベータ-Ia))に比べて、再発までの時間の有意な改善を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP1844074
【特許文献2】US5168062
【特許文献3】US5385839
【特許文献4】WO9859244
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gilleeceら、Blood 82 807-812 (1993)
【非特許文献2】Haleら、J Biol Regul Homeost Agents、15、386-391頁(2001)
【非特許文献3】Rodigら、Clin Cancer Res 12、7174-7179頁(2006)
【非特許文献4】Domagalaら、Med Sci Monit 7 325-331頁(2001)
【非特許文献5】Masuyamaら、J Exp Med 189 979-989(1999)
【非特許文献6】Watanabeら、Clin Immunol 120 247-259(2006)
【非特許文献7】Hale G.ら、The CAMPATH-1 antigen (CD52)、Tissue Antigens 1990、35: 118-127
【非特許文献8】Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic、Zhiqiang An編(2009) ISBN: 978-0-470-11791-0
【非特許文献9】Hortonら、Blood 116 (2010) 3004-3012頁
【非特許文献10】Natsumeら、Cancer Res 68 (2008) 3863-3872頁
【非特許文献11】KreitmanおよびPastan (1998) Adv. Drug Delivery Rev. 31:53
【非特許文献12】Shieldsら、J Biol Chem 277 (2002) 26733-26740頁
【非特許文献13】Shinkawaら、J Biol Chem 278 (2003) 3466-3473頁
【非特許文献14】Yamane-Ohnukiら、Biotechnol Bioeng 87 (2004) 614-622頁
【非特許文献15】Shieldsら、J Biol Chem 276 (2001) 6591-6604頁
【非特許文献16】Lazarら、Proc Natl Acad Sci U S A 2006; 103 (2006) 4005-4010頁
【非特許文献17】SimonsenおよびLevinson 1983、PNAS 80:2495-2499
【非特許文献18】免疫エピトープデータベースおよび分析リソース(The Immune Epitope Database and Analysis Resource)、http://www.immuneepitope.org/
【非特許文献19】Benhar I.およびReiter Y.、Current Protocols in Immunology、Unit 10.19B、Wiley Online Library、2002年5月(http://www.currentprotocols.com/protocol/im1019b)
【非特許文献20】Lei S.P.ら、J Bacteriol. 169 (1987) 4379-4383頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Campath-1Hの主な制限は、最大70%の患者で抗体を誘導する免疫原性である(Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic、Zhiqiang An編(2009) ISBN: 978-0-470-11791-0)。抗CD52抗体の臨床的有用性を改善するために、患者における際だった免疫原性を伴わない改良された抗CD52抗体を求める大きな必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒトCD52(huCD52)に対して結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンに関する。また、本発明は、少なくとも10-8Mの平衡解離定数(Kd)でヒトCD52に結合するヒト化抗体を提供する。本発明はまた、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4のいずれかの抗体重鎖を有し、または突然変異IgG定常領域、特にADCC(抗体依存性細胞傷害)もしくはCDC(補体依存性細胞傷害)を高める定常領域を用いる、ヒトCD52に特異的に結合するヒト化抗体を提供する。本発明はまた、抗体軽鎖がカッパ軽鎖であるヒト化抗体を提供する。ヒト化抗体は、配列番号20から配列番号28に記載される可変領域においてタンパク質配列をコードするヒトIgG重鎖およびヒトカッパ軽鎖の核酸によってコードされ得る。
【0008】
さらに、本発明は、ヒトCD52に特異的に結合し、それによって、1つまたは複数のヒトCD4+T細胞エピトープを排除するように抗体可変領域が選択または修飾されているヒト化抗体を提供する。本発明はまた、ヒトCD52に特異的に結合し、それによって、主に既存のヒト抗体可変領域配列に完全に由来する配列のセグメントを融合することによって抗体可変領域が形成されているヒト化抗体を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、それぞれ「RYGMS」(配列番号5)、「MMKTKGGRTYYPDSVKG」(配列番号6)および「DGYY」(配列番号7)である重鎖CDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ「KSSQSLLHSDGKTYLN」(配列番号8)、「LVSKLDS」(配列番号9)および「WQGTHLWT」(配列番号10)である軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列を含む本発明のヒト化抗CD52抗体を提供する。本発明はまた、重鎖用の配列番号20から24、および軽鎖用の配列番号25から28に対応する重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む本発明のヒト化抗CD52抗体を提供する。本発明の好ましい実施形態において、重鎖用の配列番号22、および軽鎖用の配列番号28に対応する重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む本発明のヒト化抗CD52抗体が提供される。
【0010】
本発明のヒト化抗体は、配列番号5から配列番号10の上記CDR配列のいずれかと、1つまたは複数のアミノ酸の変更がヒトCD52への結合を有意に低下させないこれらのCDR配列のマイナーな改変体から構成され得る。ヒト化抗体は、CDR配列とヒト可変領域フレームワークからの配列を一緒に連結することによって作製することができ、この場合、このようなフレームワーク配列は、単一または複数の他のヒト抗体の可変領域フレームワーク配列に由来する。一般に、このようなヒト可変領域のフレームワーク配列は、CD52へのヒト化抗体の最適なまたは改善された結合に寄与する1つまたは複数の突然変異を含むことになる。本発明の好ましい実施形態において、ヒト化抗体におけるこのようなヒト可変領域フレームワーク配列は、EP1844074に記載される他のヒト抗体可変領域における配列から完全に由来する。これらの配列は、ヒト定常領域とともに、他のヒト抗体可変領域からの配列の連結されたセグメントを含む。特に、このようなヒト化抗体はまた、ヒト定常領域とともに他のヒトCDRからのCDR配列の連結されたセグメントを含む他のヒト抗体可変領域におけるCDR配列から完全に由来するCDR配列を含み、したがって、可変領域配列がヒト定常領域とともに他のヒト抗体可変領域における配列から完全に由来するヒト化抗体が作製され、これは、「完全なヒト」抗体を作製する。
【0011】
さらに、本発明は、ヒトCD52に特異的に結合するヒト化抗体を提供し、ここで、該ヒト化抗体は、原核生物細胞または真核生物細胞によって産生され、特に、哺乳動物細胞株由来の細胞、特にCHOまたはNS0細胞によって産生される。また、本発明は、Fab断片または一本鎖Fv(scFv)であるヒトCD52に特異的に結合するヒト化抗体を提供する。本発明はまた、重鎖用の配列番号20から24の配列および軽鎖用の配列番号25から28の配列からの少なくとも1つのヒト化抗体を含む多重特異的タンパク質を提供し、これにより、多重特異的タンパク質は、ヒトCD52に特異的に結合し、さらに、1つまたは複数の他の分子と結合しまたは相互作用する。異なる抗体またはタンパク質は、共有結合または非共有結合のいずれかで互いに連結され得る各々の多重特異的抗体に含まれてもよい。
【0012】
本発明は、ヒトCD52に特異的に結合するヒト化抗体(タンパク質性抗体または該抗体をコードする遺伝子のいずれかとして)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、ヒト化抗体に連結されたまたは連結されていない1つまたは複数の化学療法剤を含むことができる。
【0013】
本発明は、CLLおよび他の白血病;多発性硬化症、関節リウマチ、血管炎、筋炎、ウェゲナー病および糖尿病を含むいくつかの自己免疫疾患;ならびに臓器移植拒絶反応および移植片対宿主疾患を治療するための方法を提供し、各々の場合において、患者に、ヒトCD52に特異的に結合する有効投薬量のヒト化抗体(タンパク質性抗体または該抗体をコードする遺伝子のいずれかとして)を投与することを含み、ここで、上記抗体は、B細胞およびT細胞などのCD52+標的細胞の崩壊またはアポトーシスを引き起こす。さらに、本発明はまた、例えば、検出可能な標識に結合させたヒト化抗体を投与し、インビボにおいてヒト化抗体の結合を決定することによって、上述した疾患を診断するための方法を提供し、これは、例えば、局在化された腫瘍塊または炎症病変中のCD52+細胞の検出の基礎を与える。あるいは、本発明のヒト化抗体は、疾患を検出するための手段として、CD52+細胞についてインビトロ試験のために、さらに、治療的に使用されるヒト化抗体に結合し得る抗体についてインビトロ試験のために使用されてもよい。したがって、本発明のこのようなヒト化抗体は、インビボおよびインビトロにおける診断薬または治療薬として使用することができる。
【0014】
本発明のヒト化抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、IgEなどの様々な抗体アイソタイプもしくはこれらの混合物、またはFc受容体(例えば、Hortonら、Blood 116 (2010) 3004-3012頁)もしくは補体(例えば、Natsumeら、Cancer Res 68 (2008) 3863-3872頁)への結合を高める突然変異などのこれらのIgGの突然変異形態を包含することができる。典型的には、ヒト化抗体は、IgG1重鎖定常領域およびκ軽鎖定常領域を含む。ヒト化抗体は、完全長(例えば、IgG1/κ抗体)であってもよく、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab')2、FvもしくはscFv断片)のみを含んでもよい。
【0015】
本発明のいくつかのヒト化抗CD52抗体は、以下の特性の1つまたは複数によって特徴付けることができる: a)ヒトCD52への特異性(ヒトCD52に特異的に結合する); b)平衡解離定数(Kd)が少なくとも10-8MであるヒトCD52に対する結合親和性。
【0016】
別の態様において、本発明は、本発明のヒト化抗体または抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。したがって、本発明の抗体をコードする核酸を含む組換え発現ベクターおよびこのようなベクターでトランスフェクトされた宿主細胞もまた本発明に包含され、これらの宿主細胞を培養することによって、本発明の抗体を作製する方法も包含される。
【0017】
本発明の抗ヒトCD52ヒト化モノクローナル抗体またはこの抗原結合部分(例えば、Fab)は、誘導体化されてもよく、または別の機能的分子、例えば別のペプチドもしくはタンパク質(例えば、Fab'断片)に連結されてもよい。例えば、本発明のヒト化抗体の抗体または抗原結合部分は、1つまたは複数の他の分子実体に、(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合性会合またはその他によって)機能的に連結させることができる。例えば、ヒト化抗CD52抗体またはこの抗原結合断片は、治療的部分、例えば、細胞毒性薬、酵素的に活性な毒素またはこの断片、放射性同位体、治療的核酸または小分子抗癌薬にコンジュゲートされ得る。また、本発明の抗体は、例えば131Iなどの細胞毒性剤で例えば放射性標識された細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされてもよく、またはリボソーム不活性化タンパク質、例えばシュードモナス外毒素(PE38断片、植物毒素もしくは細菌毒素、例えばリシン、リシンのα鎖、サポリン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素またはシュードモナス(Pseudomonas)外毒素A(KreitmanおよびPastan (1998) Adv. Drug Delivery Rev. 31:53)に結合されてもよい。
【0018】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、およびヒトCD52に特異的に結合する、本発明の少なくとも1つのヒト化モノクローナル抗体またはこの抗原結合部分を含む組成物、例えば医薬組成物および診断組成物を提供する。また、いくつかの組成物は、本発明のヒト化抗体または抗原結合部分の組合せを含んでもよい。このような組成物はまた、別々の分子として1つまたは複数の他の生物学的に活性な分子との組合せ、例えば、本発明の少なくとも1つのヒト化モノクローナル抗体と別の生物学的に活性な分子の組合せを含んでもよく、または本発明の2つ以上のヒト化抗体の組合せもしくは1つまたは複数の他の生物学的に活性な分子との組合せのいずれかとして、例えば、二重特異的もしくは多重特異的分子として同じ分子における1つまたは複数の他の生物学的に活性な分子との組合せを組み合わせてもよい。
【0019】
インビボ法について、ヒト化抗体またはこの抗原結合部分(もしくは本発明の二重特異的または多重特異的分子)は、CD52+細胞に関連した疾患、または本発明のヒト化抗体を用いた治療によって改善もしくは予防され得る疾患を患っているヒト対象に投与することができる。
【0020】
本発明のヒト化モノクローナル抗体組成物は、知られている他の治療法、例えば、抗癌療法、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療法または多発性硬化症などの治療法と組み合わせて投与することもできる。したがって、本発明は、薬学的な担体を伴ったヒト化抗体の医薬組成物の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象における癌または炎症疾患を治療するための方法を提供する。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、例えば、ヒトCD52関連疾患を診断するために、インビトロまたはインビボにおいて、試料中のヒトCD52抗原の存在を検出するための、本発明の抗体を用いる方法を提供する。いくつかの方法においては、これは、対照試料を伴う試験されるべき試料と、抗体とヒトCD52の間の複合体形成を可能にする条件下で、本発明のヒト化モノクローナル抗体またはこの抗原結合部分(または二重特異的もしくは多重特異的分子)を接触させることによって達成される。次に、複合体形成は試験試料において(例えば、ELISAを用いて)検出され、試験試料と対照試料の間の複合体形成におけるいずれかの統計学的に有意な増加は、試験試料中のヒトCD52抗原の存在を示す。
【0022】
本発明のヒト化抗体は、本明細書に記載されているもの以外の追加の使用または組成物を有することが当業者によって理解され、ヒト化抗体がヒトCD52抗原に結合するすべての場合において、それにより、このような使用および組成物は本発明の範囲内にあると考えられる。本発明のヒト化抗体の可変領域配列(配列番号20から配列番号28)または本発明のヒト化抗体のCDR(配列番号5から配列番号10)は、本発明のヒト化抗体の特性を有意に変更しない変形に供されてもよいことが当業者によって理解され、それにより、このような変形は本発明の範囲内にあると考えられる。さらに、ヒト化抗体の可変領域配列またはCDR配列内のいずれかのこのような変形は、本発明の範囲内であると考えられ、この場合、このような変形は本発明のヒト化配列に対して有意な相同性を有する。例えば、改変核酸は、本発明の範囲内であると決定されてもよく、この場合、これは、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸にハイブリダイズする能力によって決定される、配列番号11から配列番号19を含む配列または実質的に同一である配列を含む。一実施形態において、核酸配列は、ストリンジェントな条件下で本発明の範囲内にある核酸(例えば、配列番号11から配列番号19)にハイブリダイズする能力によって、本発明の範囲内にあると決定することができる(例えば、配列番号11から配列番号19に対して実質的に同一である)。用語「ハイブリダイズ」とは、特定のヌクレオチド配列が複合混合物(例えば、総細胞またはライブラリーDNAもしくはRNA)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でその配列に対して、分子が結合し、二重鎖を形成しまたはハイブリダイズすることを指し、ここで、特定のヌクレオチド配列は、少なくともバックグラウンドの約10倍で検出される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、規定のイオン強度pHで特定配列について、熱融点(Tm)より5〜10℃低いように選択される。また、本発明のヒト化抗体は、ADCCおよびCDCを高めるために、重鎖定常領域において修飾され得ることが理解される。ADCCを高めるために、ヒト化抗体のフコース枯渇形態は、改変CHO株、Lec13(Shieldsら、J Biol Chem 277 (2002) 26733-26740
頁)、ラットハイブリドーマ細胞株、YB2/0(Shinkawaら、J Biol Chem 278 (2003) 3466-3473頁)およびFUT8(a-1,6-フコシルトランスフェラーゼ)ノックアウトCHO細胞株(Yamane-Ohnukiら、Biotechnol Bioeng 87 (2004) 614-622頁)を含むある種の哺乳動物細胞における抗体発現によって生成させてもよい。あるいは、重鎖定常領域における突然変異は、Shieldsら、J Biol Chem 276 (2001) 6591-6604頁およびLazarら、Proc Natl Acad Sci U S A 2006; 103 (2006) 4005-4010頁によって記載されているようにADCCを高めるために使用されてもよい。あるいは、重鎖定常領域における突然変異は、例えば、混合されたヒトIgG1/IgG3アイソタイプの抗体(Natsumeら、上述)を用いて、CDCを高めるために使用されてもよい。
【0023】
当業者ならば、ヒトCD52抗原に結合する抗体が、おそらく、抗CD52抗体由来のCD4+T細胞エピトープに対する共刺激シグナルとして作用する該抗体の固有の細胞毒性に起因して、患者において基本的に免疫原性であり、よって、CD4+Tヘルパー細胞応答および免疫原性をもたらすことを、先行のどこかから、特にCampath-1Hを用いた臨床研究(Zhiqiang An、上述)から理解する。したがって、当業者は、本発明の抗体が、驚くべきことに、ヒト血液を用いたインビトロにおける研究によって決定されるように、このようなCD4+Tヘルパー細胞応答を欠いていること(実施例9参照)、およびCD4+T細胞応答が低い(ヒトT細胞アッセイにおいてT細胞応答が≦4%である)このような抗CD52抗体は新規であることを理解する。
【0024】
図の説明文中において、名称2E8またはANT01は、2E8マウスモノクローナル抗体に由来する、マウス、キメラまたはヒト化抗体に関して互換的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a図1は、重鎖用のpANT17および軽鎖用のpANT13を含む哺乳動物細胞におけるキメラおよびヒト化抗体の発現に用いられるプラスミドベクターを示す。
図1b図1は、重鎖用のpANT17および軽鎖用のpANT13を含む哺乳動物細胞におけるキメラおよびヒト化抗体の発現に用いられるプラスミドベクターを示す。
図2図2は、NS0 CD52-への結合と比較した、ヒトCD52でトランスフェクトされたNS0細胞への2E8マウスモノクローナル抗体の結合のフローサイトメトリー分析を示す。染色は、抗マウスIgG-PEコンジュゲートした抗体を用い、PEからのシグナルをY軸に示した。
図3図3は、Campath-1Hと比較した、Hut78細胞へのキメラ2E8の希釈物の結合のフローサイトメトリー分析を示す。染色は、抗ヒトIgG-PEコンジュゲートした抗体で行った。
図4図4は、Hut78細胞への結合についての、キメラ2E8およびCampath-1Hとの競合における、Campath-1H-PEを用いた競合フローサイトメトリー分析を示す。
図5図5は、REH標的細胞を用いたキメラ2E8およびCampath-1HについてのADCCアッセイにおけるエフェクター細胞として用いた5つのヒトPBMC試料からの平均細胞毒性を示す。
図6】高発現のREH標的細胞を用いたキメラ2E8およびCampath-1Hの希釈物による2つの個々のPBMCを用いることを除いて、図5の通りである。
図7】キメラ2E8およびCampath-1Hの希釈物と高発現のREH標的細胞を用いたCDCアッセイについてヒト補体を用いることを除いて、図6の通りである。
図8図8は、ビオチン化キメラ2E8と競合した、ヒト化2E8改変体の結合に関する競合CD52ペプチドELISAを示す。
図9図9は、ヒト化改変体およびCampath-1Hの希釈物の、REH細胞への結合についてのフローサイトメトリー分析を示す。
図10図10は、REH標的細胞を用いた、ヒト化2E8改変体およびCampath-1HについてのADCCアッセイにおけるエフェクター細胞として使用される4つのヒトPBMC試料由来の平均細胞毒性を示す。
図11図11は、CD52を高発現しているREH標的細胞およびヒト補体を用いたヒト化2E8改変体およびCampath-1HのCDCを示す。
図12図12は、Campath-1H-PEを、キメラ2E8、Campath-1Hおよび選択された改変体との競合において用いた、REH細胞への結合についての競合フローサイトメトリー分析を示す。
図13-1】図13は、アポトーシスおよびネクローシスによって測定した、REH細胞における抗ヒトCD52抗体の直接的な細胞毒性効果を示す。
図13-2】図13は、アポトーシスおよびネクローシスによって測定した、REH細胞における抗ヒトCD52抗体の直接的な細胞毒性効果を示す。
図14図14は、Campath-1Hとリードヒト化2E8改変体VH3/VK4(V領域、配列番号22および28)で処置した後における、Rajiヒトバーキットリンパ腫細胞を移植されたSCIDマウスのKaplan-Meierプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例)
特に指示がない限り、実施例において言及されている市販の試薬は、製造業者の指示に従って使用された。実施例においておよび明細書全体を通じて、ECACC受託番号によって特定される細胞の供給源は、ヨーロピアンコレクションオブセルカルチャーズ(European Collection of Cell Cultures)(ECACC)、Salisbury、Englandである。他に定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例示的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載されている方法および材料と類似または均等なものもまた本発明の実施または試験に使用され得る。材料、方法および実施例は例示にすぎず、ある範囲に限定することを意図しない。
【0027】
(実施例1)マウスモノクローナル抗体の生成
CD52ペプチド(GQNDTSQTSSPSC)は、カスタム合成され、N末端遊離ペプチドが残るように、マレイミドカプロイル-N-ヒドロキシスクシンイミドリンカー(Mimotopes、Wirral、Cheshire UK)を介して、KLHまたはBSAのいずれかにコンジュゲートさせた。RajiおよびHuT78細胞は、ECACCから得た。CD52を発現するNS0細胞株を以下のように生成した:ヒトCD52をコードするDNA (NCBI参照配列:NM_001803.2)(N末端シグナルペプチド、C末端が置き換えられたGPIアンカーシグナルペプチドおよび成熟GPIアンカー表面ペプチドを含む完全長配列)をPCR増幅し、BglII部位およびEagI部位を介して、pANT抗体発現ベクター(図1a)にサブクローニングした。CD52遺伝子の転写は、CMV I/Eプロモーターの制御下であった(US5168062およびUS5385839、アイオワ大学)。pANT発現プラスミドは、真核細胞における選択のための、SV40プロモーターおよびポリA配列の制御下にある突然変異dhfrミニ遺伝子(SimonsenおよびLevinson 1983、PNAS 80:2495-2499)、ならびに原核生物選択のためのβ-ラクタマーゼ(ApR)遺伝子および原核生物細胞の増殖用のpMB1複製開始点を含んでいた。発現プラスミドを大腸菌(E. coli)XL1-blue(Stratageneカタログ番号200130)において増殖させた。CD52を発現する安定な細胞株は、エレクトロポレーションによってNS0細胞にトランスフェクトされ、200nMメトトレキサートによる選択下に細胞を置くことによって得られた。細胞を増殖させ、数を増やし、次に、CD52発現についてフローサイトメトリーによって試験した。CD52を高発現する細胞株を凍結し、下記のようにマウスを免疫するために使用した。
【0028】
雌性Balb/cマウスは、完全フロイントアジュバント(CFA)中の50μgのCD52ペプチド-KLHコンジュゲートを用いた腹腔内(i.p.)注射によって一次免疫され、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のCD52を発現している1×106個のRAJI細胞を用いて一次免疫された。4週間後、すべてのマウスは、PBS中の106個のHUT-78細胞のi.p.注射によって追加免疫され、さらに2週間後に追加免疫注射された。4週間後、すべてのマウスは、PBS中のCD52を発現している3×106個のNS0細胞を用いて、i.p.により3回目の追加免疫を受けた。PBS中のCD52を発現している107個のNS0細胞による2回の後続追加免疫は、2週間間隔でi.p.注射され、いくつかのマウスは、5μgのCD52ペプチド-KLHのさらなる追加免疫を与えられた。
【0029】
骨髄腫融合の3日前に、最も高い抗体力価を示した2匹のマウスは、PBS中のCD52を発現している107個のNS0細胞のi.p.追加免疫を与えられた。融合の当日に、両方のマウスを屠殺し、脾臓を取り出し、各々の全脾臓からの細胞をプールし、無血清培地中で洗浄し、2つの等しい試料に分けた。PEG媒介融合によって、脾臓細胞の半分をF0骨髄腫細胞と融合し、半分をP3X63Ag8U.1骨髄腫細胞と融合した。プレート1〜4はF0融合細胞を含み、プレート5〜8はP3X63Ag8U.1細胞を含んだ。完全な融合培地は、DMEM、2%L-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、10%ウシ胎児血清、5%のBriCloneハイブリドーマクローニング培地(National Institute for Cellular Biotechnology、Dublin、Ireland)およびヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)からなっていた。得られた融合体は、ウェル当たり200μlにて96ウェルプレートに播種された。残りの播種されていない融合細胞は、最大3日間、培養において安定化され、次に、凍結され、液体窒素に保存された。播種された融合細胞は、37℃にて5%CO2下で2週間培養され、96ウェルプレートに移され、下記のようにCD52ペプチド-KLH ELISAを用いて、分泌された抗CD52抗体の存在について試験された。24個の免疫陽性ウェルからの細胞を培養において数を増やし、CD52ペプチドELISA、NS0-CD52細胞ベースのELISAおよびフローサイトメトリーによってCD52特異的抗体について試験した。
【0030】
CD52ペプチドELISAについて、ELISAプレート(VWR、Lutterworth、UK)は、一晩4℃にて、PBS中の100μl/ウェルのCD52ペプチド-KLH、CD52ペプチド-BSA、KLHのみまたはBSAのみのいずれかの0.5μg/mlにて被覆された。プレートを洗浄し、150μl/ウェルの2%BSAを含有するPBSでブロックした。細胞培養上清または精製された抗体は、PBS/2%BSA中で希釈され、100μlが各プレートに添加され、続いて1時間、室温にてインキュベートされた。プレートをPBS-Tween(0.05%)で3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた100μl/ウェルのヤギ抗マウスIg(Fab特異的)(Sigma-Aldrich)とともに1時間インキュベートされた。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄し、次に、SigmaFast OPD基質(Sigma-Aldrich)を添加し、室温、暗所にてインキュベートし、発色させた。この反応は、50μlの3M HClを添加することにより停止させた。プレートは、Dynexプレートリーダー(Dynex、Worthing、UK)を用いて、490nmで読み取られた。CD52ペプチド特異的なハイブリドーマは、CD52ペプチド-KLHとCD52ペプチド-BSAに結合し、KLHのみおよびBSAのみのいずれにも結合しないものであった。
【0031】
NS0-CD52細胞ベースのELISAについて、3×l05細胞/ウェル(NS0野生型またはCD52を発現するNS0細胞)は、V底96ウェルプレートに播種された。プレートを遠心分離し、上清を除去し、プレートを吸収紙上にブロッティングした。ハイブリドーマ試料は、FACS緩衝液(1%BSAおよび0.05%アジ化ナトリウムを含むD-PBS)中で2分の1に希釈され、100μlは、NS0(プレート1)細胞またはNS0-CD52(プレート2)細胞のいずれかを含む2つのプレートの各々に移された。室温にて1時間のインキュベーション後、プレートを遠心分離し、遠心分離の間に200μlのFACS緩衝液中に細胞を再懸濁することによって、プレートを2回洗浄した。遠心分離後、細胞は、1:500に希釈された抗マウスIgG(Fab特異的)(Sigma)を含む100μlのFACS緩衝液中に再懸濁された。室温での1時間のインキュベーションの後、細胞を遠心分離し、PBS中に再懸濁することによって、プレートを2回洗浄した。遠心分離後、細胞を50μlのPBS中に再懸濁させ、ELISAプレートに移した。100μlのTMB基質(Invitrogen)を添加し、室温、暗所にてインキュベートし、発色させた。この反応は、50μlの3M HClを添加することにより停止させた。プレートは、Dynexプレートリーダーを用いて450nmで読み取った。CD52特異的クローンは、NS0野生型細胞と比較したとき、NS0-CD52細胞に特異的に結合したものだった。
【0032】
フローサイトメトリーについて、3×105細胞のNS0-CD52または野生型NS0は、2分の1に希釈した抗CD52ハイブリドーマ抗体、および100分の1に希釈した抗マウスIgG-PEコンジュゲート抗体(Sigma)を用いて染色された。また、マウスIgG(Sigma)は、ハイブリドーマ内に存在する異なるマウスアイソタイプについて別々の対照として含められた。細胞を1時間、4℃にて染色した。抗マウスIgG-PEコンジュゲートされた抗体のみの対照もまた含めた。細胞は、FACS緩衝液で2回洗浄され、最後に、FACS緩衝液に再懸濁され、フローサイトメトリーは、Becton Dickinson FACSCalibur(Becton Dickinson、Oxford、UK)を用いて行われた。装置設定は、関連するアイソタイプ対照抗体を分析することによって決定された。
【0033】
CD52ペプチドELISA、NS0-CD52細胞ベースのELISAおよびフローサイトメトリーの結果から、huCD52特異的ハイブリドーマがクローニングされ、培養において数を増やし、親ストックとして凍結され、液体窒素で保存された。選択されたハイブリドーマの各々は、クローニング培地において希釈され、3ウェルあたり1つの細胞の細胞密度にて96ウェルプレートに播種された。クローニング培地は、DMEM、2%L-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、10%ウシ胎児血清、5%BriCloneハイブリドーマクローニング培地およびヒポキサンチン-チミジン(HT)からなっていた。培養物は、37℃にて5%CO2下で2週間維持され、クローニングされた細胞は、培養の1週間後に新鮮な培地を受け入れた。クローニングの2週間後、播種されたすべてのウェルからの上清を新しい96ウェルプレートに移し、上述のようにCD52ペプチドELISAおよびフローサイトメトリーを用いて抗CD52抗体の存在について試験された。陽性ウェルは、培養で数を増やし、再試験した。陽性細胞をさらに数を増やし、抗体アイソタイプについて試験した。抗CD52陽性サブクローンを凍結し、液体窒素で保存し、さらなる研究のためのモノクローナル抗体産生に使用した。
【0034】
モノクローナル抗体は、迅速ELISAマウス抗体アイソタイプキット(Perbio、Cramlington、UK)を用いてアイソタイプに分けた。抗体は、1mlのプロテインA-セファロースカラム(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)上で精製された。精製前に、チュービングとプロテインAカラムはともに、0.4MのNaOHを用いて発熱物質が除去された。カラムは、PBS pH7.4の20カラム容量で再平衡化された。ハイブリドーマ細胞培養上清を回収し、10×PBSを用いて1×PBS pH7.4に調整し、濾過滅菌した。濾過された上清は、0.5ml/分でプロテインA-セファロースカラムにポンプで通された。カラムを1×PBS pH7.4で洗浄し、IgGを無菌0.1Mクエン酸ナトリウムpH3を用いて溶出し、0.9mlの画分を回収し、0.1mlの無菌1M Tris-HCl pH9で中和した。無菌条件下で、生成物は、PBS pH7.4に緩衝液交換され、任意の溶出緩衝液を除去し、試料を濃縮した。濃縮後、抗体は、1.4の吸光係数Ec(0.1%)を用いてOD280nmによって定量した。精製された抗体は、4〜12%のNuPageゲル(Invitrogen、Paisley、UK)およびMES泳動緩衝液を用いたNovex NuPAGE電気泳動システムを使用するSDS-PAGEによって分析した。1μgの抗体は、4×NuPAGEサンプル緩衝液+ベータ-メルカプトエタノールを用いて調製され、加熱された。ゲルは、InstantBlue染色液(Expedeon、Cambridge、UK)で染色し、分子サイズは、染色されたバンドとPageRuler(商標)Plusの前染色されたタンパク質ラダー(Fermentas、York、UK)を比較することによって推定された。2つのバンドは、各抗体について同定され、検出可能な汚染は存在しなかった。精製された抗体は、上述のようにCD52ペプチドフローサイトメトリーを用いて試験された。フローサイトメトリー分析(図2)から、2E8と称されるリードモノクローナル抗体は、NS0-CD52細胞に選択的に結合することが示された。
【0035】
(実施例2)可変領域遺伝子の配列決定
総RNAは、RNAqueous-4PCRキット(Ambion、Warrington、UK)を用いて、2E8ハイブリドーマ細胞から抽出され、cDNAを合成するために使用された。マウス免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変(V)領域断片は、Table 1(表1)に示すように、縮重マウスリーダー配列プライマー(Sigma)および固有の定常ドメインプライマー(Sigma)を用いてPCRにより増幅された。得られたPCR断片は、pGEM-T Easy Iベクターシステム(Promega、Southampton、UK)にサブクローニングされ、挿入物は、ベクター特異的プライマーであるM13フォワード(Sigma)を用いて配列決定された。すべてのDNA配列決定は、Geneservice Ltd、Cambridge、UKによって行われた。得られたV領域のヌクレオチド配列はそれぞれ、重鎖および軽鎖のV領域について、配列番号1および配列番号2として示され、対応するアミノ酸配列は、配列番号3と配列番号4として示される。
【0036】
【表1】
【0037】
2E8超可変領域(CDR)の配列は以下の通りであった;
配列番号5 CDRH1 RYGMS
配列番号6 CDRH2 MMKTKGGRTYYPDSVKG
配列番号7 CDRH3 DGYY
配列番号8 CDRL1 KSSQSLLHSDGKTYLN
配列番号9 CDRL2 LVSKLDS
配列番号10 CDRL3 WQGTHLWT
【0038】
(実施例3)キメラ抗体の生成
2E8モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖V領域配列をPCR増幅し、pANT抗体発現ベクターにサブクローニングされ(図1b)、重鎖および軽鎖V領域は、それぞれ、pANT17およびpANT13にクローニングされた。重鎖V領域遺伝子は、ヒトγ1重鎖遺伝子(G1m3(G1m(f))アロタイプ)とフレームを合わせて、MluIとHindIII部位を介してpANT17にクローニングされ、軽鎖V領域遺伝子は、ヒトカッパ軽鎖定常領域遺伝子(Km3アロタイプ)とフレームを合わせて、BssHIIとBamHI部位を介してpANT13にクローニングされた。重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子の両方の転写は、CMV I/Eプロモーター(US5168062およびUS5385839、アイオワ大学)の調節下にあり、pANT17プラスミドは、真核生物細胞における選択のための、SV40プロモーターおよびポリA配列の制御下にある突然変異dhfrミニ遺伝子(SimonsenおよびLevinson 1983、PNAS 80: 2495-2499)を含んでいた。pANT17とpANT13はともに、原核生物細胞選択のためのβ-ラクタマーゼ(ApR)遺伝子および原核生物細胞における増殖のためのpMB1複製起源を含んでいた。すべてのプラスミドを大腸菌XL1-blue(Stratageneカタログ番号200130)において増殖させた。pANT発現ベクターへのクローニングのために可変領域遺伝子の増幅に使用されるプライマーをTable 2(表2)に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
次に、重鎖および軽鎖の発現構築物は、リン酸カルシウムに基づくトランスフェクションによって、HEK293細胞に一過性にコトランスフェクトされ、またはエレクトロポレーションによって、NS0細胞に安定にトランスフェクトされた。分泌された抗体は、プロテインAクロマトグラフィーによって、細胞培養上清から精製された。図3に示されるように、実施例1で詳述したフローサイトメトリー分析を用いて、2E8抗体の希釈物は、Campath-1Hと比較して、CD52+HuT78細胞への改善された結合プロファイルを示した。図4に示すように、2E8抗体は、CD52+HuT78細胞への結合についてCampath-1Hと競合させたとき、フローサイトメトリー分析によって改善された競合結合プロファイルを示した。
【0041】
(実施例4)抗体依存性の細胞媒介細胞毒性(ADCC)
ADCCアッセイは、以下のように2E8モノクローナル抗体を用いて行われた。標的細胞(REHまたはRaji細胞のいずれか)は回収され、25μM(最終)カルセイン-AM(Sigma)で予め負荷された。1時間、37℃にてカルセインを伴うインキュベーション後、細胞は、培地中で洗浄され、取り込まれなかったカルセインを除去した。1×104個の標的細胞は、図5のようにまたは図6に示されるように、最終の50μg/mlにて2E8または対照抗体を含む透明なV底プレートに添加され、1時間インキュベートし、標的細胞を予めオプソニン化した。PBMC(エフェクター細胞)は、英国国立輸血サービス(UK National Blood Transfusion Service)(アデンブルック病院(Addenbrooke's Hospital)、Cambridge、UK)から入手し、アデンブルック病院のローカルリサーチ倫理委員会によって付与された承認に従った健全な地域社会のドナーバフィーコート(24時間以内に採取された血液)から単離された。PBMCは、Lymphoprep(Axis-Shield、Dundee、UK)密度遠心分離によって、バフィーコートから単離された。5×105個のエフェクター細胞は、250μlの最終容量で、標的細胞および抗体を含むプレートの各ウェルに添加した(エフェクター細胞と標的細胞は50:1の比である)。試料は、4時間、37℃/5%CO2にてインキュベートされた。4時間後、Triton X-100は、最大溶解制御を確立するために、細胞(エフェクター細胞および/または標的細胞)を含む対照ウェルに添加された。遠心分離後、150μlの培地を96ウェル透明底黒色壁プレートに各ウェルから移し、プレート蛍光を520nmで測定した。結果は、以下のように表された:
【0042】
【数1】
【0043】
図5は、キメラ2E8について有意に高められたADCCを示す標的CD52+REH細胞について、キメラ2E8(「ANT01」)およびCampath-1Hのために5人のヒトドナーからのPBMCについて平均ADCCを示す。続いて、CD52を高発現する改変体REH細胞株は、FACSによって単離され、親REH細胞と比較して、およそ2倍のCampath-1Hの結合を示した。図6は、2つの個々のドナーからのPBMCを用いて、高CD52+REH細胞に対するADCCについてのキメラ2E8およびCampath-1Hの希釈系列を示す。また、これは、Campath-1Hと比較して、キメラ2E8について有意に高められたADCCプロファイルを示す。
【0044】
(実施例5)補体依存性細胞毒性(CDC)
CDCアッセイは、次の通り、2E8モノクローナル抗体において実施された。標的細胞(REH細胞またはRaji細胞のいずれか)を回収し、5×104細胞/ウェルは、黒色壁の透明平底96ウェルプレートに添加された。図7に示す通りの最終濃度の2E8または対照抗体を、活性または熱不活性化(60℃にて30分間)されたヒト血清(Pathway Diagnostics Ltd、Dorking、UK)のいずれかとともにウェルごとに添加した(25%最終血清濃度)。試料は、3時間、37℃/5%CO2にてインキュベートされた。3時間後、Triton X-100は、最大溶解制御を確立するために対照細胞を含むウェルに添加された。Prestoblue(10倍)細胞生存率試薬(Invitrogen)は、アッセイ増殖培地で希釈され、PrestoBlueの最終10分の1希釈物を得るために各ウェルに添加された。1時間、37℃/5%CO2でのインキュベーション後、プレート蛍光は590nmにて測定された。結果は、以下のように表された:
【0045】
【数2】
【0046】
図7は、Campath-1Hと比較したキメラ2E8について有意に高められたCDCプロファイルを示す。
【0047】
(実施例6)ヒト化抗体の生成
ヒト化抗体は、EP1844074に記載される方法を用いて生成させた(Antitope Ltd)。マウス2E8 V領域の構造モデルは、スイスPDBを用いて製造され、抗体のCD52結合特性に重要である可能性のある重要なアミノ酸(「拘束残基」)を特定するために分析された。ヒトV領域配列のデータベースは、ヒト化抗体の設計に使用される拘束残基の各々を含むヒトV領域配列のセグメントを特定するために使用された。典型的には、2つ以上の代替のV領域配列セグメントは、2E8についてヒト化抗CD52V領域配列の広範の可能な配列をもたらす各拘束残基を提供するために使用された。次に、これらの配列は、Fothergillら(WO9859244、譲受人Eclagen Ltd)において記載されているインシリコ分析によって、非生殖系列MHCクラスIIペプチドの結合の予測について分析され、また、「免疫エピトープデータベースおよび分析リソース(The Immune Epitope Database and Analysis Resource)」、http://www.immuneepitope.org/を含むデータベースを用いて、既知のCD4+T細胞エピトープについて分析された。予測された非生殖系列MHCクラスII結合ペプチドを有するまたはT細胞エピトープデータベースに対して有意なヒットを有するV領域配列を廃棄した。これは、V領域配列の縮小セットをもたらした。次に、V領域配列セグメントの選択された組合せは、ヒト化重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を生成するために組み合わせられた。5つの重鎖配列と4つの軽鎖配列(それぞれ、VH1からVH5およびVκ1からVκ4と称される)は、2E8(それぞれ、配列番号20から24および25から28)について選択された。
【0048】
ヒト化改変体のV領域をコードするDNAを合成し、実施例3に記載されるように発現ベクターpANT17およびpANT13(図1)にサブクローニングした。ヒト化VHおよびVκ鎖のすべての組合せ(すなわち、2E8について全20対)は、HEK293に一過性にトランスフェクトされ、さらに、NS0細胞にトランスフェクトされた。抗体は、実施例3に記載されるように、培養上清からプロテインAクロマトグラフィーによって精製された。
【0049】
(実施例7)ヒト化抗体の分析
CD52ペプチドに対するHEK由来およびNS0由来の2E8ヒト化改変体の結合は、親キメラ抗体に対する競合ELISAにおいて評価された。親2E8キメラ抗体は、Biotin Tag(商標)マイクロビオチン化キット(Sigma-Aldrich)を用いてビオチン化された。96ウェルのMaxiSorpプレート(Nunc)は、4℃で一晩、ダルベッコPBS(PAA Laboratories、Yeovil、UK)(最終体積100μl)中の0.025μg/mlのCD52ペプチド-KLHを用いて被覆された。プレートは、1時間、室温にてダルベッコPBS-2%BSAでブロックされた。プレートは、洗浄緩衝液(ダルベッコPBS中0.05%Tween20)で3回洗浄された。様々な濃度の試験ヒト化抗体は、ビオチン化親キメラ抗体(最終濃度0.035μg/ml)と予め混合され、続いて、CD52ペプチド-KLHプレート(最終体積100μl)に添加された。すべての試料を2点測定で試験した。プレートは、1時間、室温でインキュベートされ、洗浄緩衝液で3回洗浄された。1000分の1に希釈したストレプトアビジンHRP(Sigma-Aldrich)の100μlを添加し、1時間、室温にてインキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、100μlのTMB基質(Invitrogen)を添加し、室温、暗所にてインキュベートし、発色させた。3MのHClを50μl添加することによって反応を停止させた。プレートをDynexプレートリーダーを用いて450nmで読み取った。
【0050】
図8に示されるように、すべてのリードヒト化2E8改変体は、親キメラ抗体と類似した競合的結合プロファイルを示した。その後、ヒト化改変体は、実施例1に詳述されるフローサイトメトリーによって結合について試験され、実施例4に記載されるようにADCCについて試験され、実施例5に記載されるようにCDCについて試験された。図9に示されるように、ヒト化改変体は、REH細胞への結合について、Campath-1Hに対するフローサイトメトリーによる改善された結合プロファイルを示した。図10および図11に示されるように、ヒト化改変体はまた、Campath-1Hと比較して、50:1の標的:エフェクター細胞比にてADCCについてREH標的細胞またはCDCについて高CD52+REH細胞株(実施例4に記載される)を用いると、改善されたADCCおよびCDCプロファイルを示した。
【0051】
(実施例8)scFvおよびFabの生成
実施例6からのヒト化2E8改変体はscFvに変換され、pCANTAB5EベクターRPAS発現モジュール(Amersham Pharmacia Biotech、Little Chalfont、UK)を用いて、Benhar I.およびReiter Y.、Current Protocols in Immunology、Unit 10.19B、Wiley Online Library、2002年5月(http://www.currentprotocols.com/protocol/im1019b)に記載されるように、M13ファージディスプレイベクターにクローニングされた。ヒト化VHおよびVK遺伝子をプライマーを用いて増幅し、末端SfiIおよびNotI制限部位、内部Gly4SerリンカーおよびC末端his6タグを提供した。scFv構築物は、SfiI-NotI断片としてpCANTAB5Eベクターに挿入され、大腸菌HB2151に形質転換され、ペリプラズムおよび部分的には増殖培地に搬出されるscFvをもたらした。scFvは、HIS-Select HFカートリッジ(Sigma-Aldrich)を用いて、ニッケル-キレートアフィニティークロマトグラフィーによって増殖培地から精製された。精製された2E8 scFvは、CD52ペプチドへの結合について、実施例7に詳述される競合アッセイにおいて試験され、すべてのヒト化scFvはCD52ペプチドに対して競合結合を示した。また、実施例6からのヒト化2E8改変体は、増幅されたヒト化VHおよびVK遺伝子をCH1およびCκ定常領域遺伝子を用いてさらに増幅した以外は、scFvに用いられた方法を用いてFabに変換して、VH-CH1およびVK-Cκ断片を形成させ、これらを、プライマーを用いてさらに増幅させて、これらの断片を、上流VH-CH1遺伝子断片と下流VK-Cκ遺伝子断片の間の22アミノ酸のpelBリーダー配列(Lei S.P.ら、J Bacteriol. 169 (1987) 4379-4383頁)と連結させて、ジシストロニックなFab遺伝子をもたらした。ヒト化2E8改変体からのFabを生成し、scFvについて上記のように精製し、実施例7に詳述したようにCD52ペプチド競合アッセイにおいて試験した。すべてのヒト化Fabは、CD52ペプチドへの競合結合を示した。
【0052】
(実施例9)CD4+T細胞応答の分析
PBMCは、英国国立輸血サービス(アデンブルック病院、Cambridge、UK)から入手し、アデンブルック病院のローカルリサーチ倫理委員会によって付与された承認に従った健全な地域社会のドナーバフィーコート(24時間以内に採取された血液)から単離された。PBMCは、Lymphoprep(Axis-shield、Dundee、UK)密度遠心分離によってバフィーコートから単離され、CD8+T細胞は、CD8+ RosetteSep(商標)(StemCell Technologies Inc、London、UK)を用いて枯渇させた。ドナーは、HLA SSP-PCRに基づく組織タイピングキット(Biotest、Solihull、UK)を用いて、HLA-DRハプロタイプを同定することによって特徴付けられた。リコール抗原破傷風毒素を含む抗原を制御するためのT細胞応答はまた決定された(KLH Pierce、Cramlingtom、UK、インフルエンザAおよびエプスタインバーウイルスに由来するペプチド)。次に、PBMCを凍結し、必要になるまで液体窒素に保存した。
【0053】
単球由来樹状細胞(DC)を調製するために、50個の異なるドナーPBMCを選択し、総世界人口の頻度に類似したHLA-DRアロタイプとHLA-DQアロタイプの頻度の分布を提供した。PBMCをAIM-V(登録商標)培地中で回復させ、CD14+細胞は、Miltenyi CD14マイクロビーズおよびLSカラム(Miltenyi Biotech、Oxford、UK)を用いて単離した。単球は、1000U/mlのIL-4と1000U/mlのGM-CSFを補足したAIM-V(登録商標)(「DC培地」)中に再懸濁され、4〜6×106PBMC/mlとし、次に、24ウェルプレートに分けた(最終培地体積2ml)。2日目に、半分の体積のDC培地交換によって細胞に栄養を与えた。3日目までに、単球は、半成熟DCに分化し、40μg/mlのCampath-1H、キメラ2E8抗体、ヒト化2E8抗体、100μg/mlのKLHまたは培地のみのいずれかでプレインキュベートされた。半成熟DCは、24時間、抗原とともにインキュベートされ、その後、過剰の試験抗体は、細胞を2回洗浄し、50ng/mlのTNF-α(Peprotech、London、UK)を補足したDC培地に再懸濁することによって除去された。7日目に、半分の体積のDC培地(50ng/mlのTNFαが補足されている)交換によってDCに栄養を与え、その後、8日目に成熟DCを回収した。回収された成熟DCをカウントし、生存率をトリパンブルー色素排除を用いて評価した。次に、DCをγ線照射(4000rad)し、AIM-V培地中に2×105細胞/mlで再懸濁し、その後、ELISpotアッセイおよび増殖アッセイに使用した。さらに、8日目に、新鮮なCD4+T細胞もまた調製した。CD4+T細胞を精製するために、PBMCをAIM-V(登録商標)培地中で回復させ、CD4+細胞は、Miltenyi CD4マイクロビーズおよびLSカラム(Miltenyi Biotech、Oxford、UK)を用いて単離し、2×106細胞/mlにてAIM-V(登録商標)培地に再懸濁させた。
【0054】
8日目に、T細胞増殖アッセイを確立し、それにより、1×105個の自家CD4+T細胞は、96ウェルのU底プレートにおいて、(10:1の比で)1×104ヒト化2E8またはキメラ2E8抗体を負荷したDCに添加され、最終体積が200μl/ウェルになるようにAIM-V(登録商標)培地を添加した。14日目に、25μlのAIMV中で6時間、ウェルあたり1μCi[3H](Perkin Elmer、Beaconsfield、UK)でアッセイプレートをパルスし、その後、TomTec Mach III(Hamden CT、USA)細胞ハーベスターを用いて、フィルターマット(Perkin Elmer)に回収した。各ウェルについて1分あたりのカウント数(cpm)は、1450 Microbeta Wallac Trilux液体シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)上のMeltilex(商標)(Perkin Elmer)シンチレーションカウンティングによって、Paraluxの低バックグラウンドカウンティングにおいて決定された。各抗体試料について1分あたりカウントは、培地のみの対照に標準化された。
【0055】
ELISpotアッセイについて、ELISpotプレート(Millipore、Watford、UK)は、PBS中の100μl/ウェルのIL-2捕捉抗体(R&D Systems、Abingdon、UK)を用いて被覆された。次に、プレートをPBS中で2回洗浄し、ブロック緩衝液(PBS中の1%BSA(Sigma))中で一晩インキュベートし、AIM V(登録商標)培地中で洗浄した。8日目に、1×105個の自家CD4+T細胞は、96ウェルのELISpotプレート中の1×104抗原負荷DC(10:1の比)に添加された。すべての調製物は、6点測定の培養物において試験された。各ドナーのPBMCについて、陰性対照(AIM V(登録商標)培地のみ)、細胞無しの対照およびPHA(10μg/ml)陽性対照もまた含めた。
【0056】
さらなる7日間のインキュベーション期間後、ELISpotプレートは、以下の通りに発色させた。dH2O中とPBS中で3回の連続洗浄した後、PBS/1%BSA中の100μlの濾過されたビオチン化検出抗体(R&D Systems、Abingdon、UK)を添加した。37℃にて1.5時間のインキュベーション後、プレートをさらにPBSで3回洗浄し、PBS/1%BSA中の100μlの濾過されたストレプトアビジン-AP(R&D Systems)を1時間(室温でのインキュベーション)添加した。
【0057】
ストレプトアビジン-APを廃棄し、プレートをPBS中で4回洗浄した。BCIP/NBT(R&D Systems)を各ウェルに添加し、30分間、室温にてインキュベートした。スポット発色は、ウェルとウェルの裏側をdH2Oを用いて3回洗浄することによって停止させた。乾燥させたプレートはImmunoscan(商標)アナライザー上でスキャンされ、ウェルあたりのスポット(spw)はImmunoscan(商標)バージョン4ソフトウェアを用いて決定された。
【0058】
増殖とIL-2 ELISpotアッセイの両方について、結果は、陽性T細胞応答について2以上(SI≧2.0)のSIの閾値を用いて、培地のみの対照に対する試験抗体についてのcpm(増殖アッセイ)またはスポット(ELISpotアッセイ)の比率として定義される刺激指数(SI)として表された。データは、Campath-1Hとキメラ2E8抗体は、試験された50個のドナーPBMCのうち10以上(≧20%)、T細胞応答を誘導し、一方、ヒト化2E8抗体は、50個のドナーのうち2を超えて(≦4%)、T細胞応答を誘導しないことを示した。これは、V領域からT細胞応答の除去におけるヒト化プロセスの有効性を実証した。
【0059】
(実施例10)直接的な細胞毒性アッセイ
抗ヒトCD52抗体の直接的な細胞毒性効果は、それぞれ、アポトーシスおよびネクローシスのマーカーとして、アネキシンV/ヨウ化プロピジウムの共染色を用いて評価された。1×105個のREH細胞は、100μg/mlの抗ヒトCD52試験抗体またはアイソタイプが合致した対照抗体±100μg/mlのF(ab')2架橋抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-006-008)(最終体積600μl)の存在下で播種された。細胞は、PBS/2%BSA中の洗浄前に72時間インキュベートされ、その後、製造業者による推奨プロトコール(Invitrogen、カタログ番号V13245)に従って、アネキシンV/ヨウ化プロピジウムによる共染色を行った。スキャッタープロットは、FACS分析を用いて作成され、生細胞(未染色)、アポトーシス細胞(FL1、アネキシンV陽性)およびネクローシス細胞(FL1、アネキシンV陽性&FL3、ヨウ化プロピジウム陽性)の定量について、3つの領域に分けられた。図13に示すように、ヒト化2E8抗体は、REH標的細胞のCampath-1Hと比較して増加したアポトーシスおよびネクローシスを示し、ヒト化抗体からのネクローシス細胞%が>40%であるのに対して、Campath-1Hについて19.9%であった。
【0060】
(実施例11)腫瘍動物モデル
腫瘍動物モデルは、腫瘍増殖の阻害における抗ヒトCD52抗体のインビボ分析のために使用された。モデルにおいて、Rajiヒトバーキットリンパ腫細胞はSCIDマウスおよび抗ヒトCD52抗体で処置された動物に移植された。7週齢の雌性Fox Chase SCIDマウス(Charles River、Morrisville、North Carolina、USA)は、ボーラス尾静脈(i.v.)注射を介して、1×106個のRaji細胞(American Type Culture Collection、0.2mL細胞懸濁液)を注射された。抗ヒトCD52試験抗体またはアイソタイプが合致した対照抗体は、各々、腫瘍細胞注射の3日後から開始して、7回投薬について隔日で1日1回、腹腔内(i.p.)投与された。10mL/kg(0.20mL/20gマウス)の投薬容積は、各動物の体重に合わせて調整され、週2回決定された。図14に示した結果は、Campath-1Hと比較した、リードVH3/VK4抗CD52抗体(V領域、配列番号22と28)による、1と10mg/kg投薬量の両方で改善された生存率を実証した。
【0061】
配列
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]