特許第6254549号(P6254549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254549
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20171218BHJP
   H02M 7/21 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H02M7/12 A
   H02M7/21 A
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-112150(P2015-112150)
(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公開番号】特開2016-226209(P2016-226209A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 覚
(72)【発明者】
【氏名】深田 雅一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−090544(JP,A)
【文献】 特開2003−309978(JP,A)
【文献】 特開2013−115928(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/149530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置(100,100A,100B)であって、
複数のスイッチング素子(Q1,Q2,Q3,Q4)を有し、該複数のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることで交流電力を直流電力に変換する整流回路(10)と、
前記整流回路に供給される交流電流の値(Iout)を検出する電流検出部(20)と、
前記電流検出部で検出された前記交流電流の値と、電流閾値と、の関係に基づいて前記整流回路にオン信号を送信する制御部(30)と、を備え、
前記制御部は、
前記電流閾値として、第1電流閾値と、前記第1電流閾値よりも絶対値が大きい第2電流閾値と、を少なくとも設定し、
前記交流電流の値の絶対値が前記第1電流閾値の絶対値を上回ったことに基づいて、前記複数のスイッチング素子の一部をオン状態にするために前記整流回路にオン信号を送信する一方で、
前記交流電流の値の絶対値が前記第2電流閾値の絶対値を下回ったことに基づいて、前記複数のスイッチング素子の一部をオフ状態にするために前記整流回路へのオン信号の送信を停止する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電流閾値を時間とともに前記第1電流閾値から前記第2電流閾値に漸次変化させ、
前記交流電流の値がゼロとなるタイミング、又は、前記オン信号の送信の停止から予め定められた第1所定時間後のタイミングにおいて、前記電流閾値をゼロとすることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記交流電流の値の絶対値が前記第1電流閾値の絶対値を上回ったタイミングから予め定められた第2所定時間(t0)経過後に、前記電流閾値を前記第1電流閾値から前記第2電流閾値に変更し、
前記交流電流の値の絶対値が前記第2電流閾値の絶対値を下回ったタイミングから予め定められた第3所定時間(t0)経過後に、前記電流閾値を前記第2電流閾値から前記第1電流閾値に変更することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
整流回路を用いて電力変換を行う装置として、下記特許文献1に記載のものが知られている。当該装置は、整流回路(スイッチング整流回路)が複数のスイッチング素子(スイッチ)を有しており、これらのスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって、交流電力を直流電力に変換する。
【0003】
当該装置の整流回路は、制御装置(タイミング制御装置)からオン信号(ゲート信号)を受信することで、一部のスイッチング素子をオン状態にする一方で、他のスイッチング素子をオフ状態にするように動作する。詳細には、下記特許文献1の装置では、制御装置は、交流電力の電圧と閾値との関係に基づいてオン信号を送信し、スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替えを周期的に行う。つまり、制御装置は、交流電力の電圧が閾値を上回ったことに基づいて、一部のスイッチング素子をオン状態にするために整流回路にオン信号を送信する。一方、交流電力の電圧が閾値を下回ると、制御装置は、それに基づいて当該一部のスイッチング素子をオフ状態にするために、整流回路へのオン信号の送信を停止する。
【0004】
下記特許文献1に記載の装置では、更に、整流回路へのオン信号の送信を停止する際に用いる閾値を、当該オン信号を送信する際に用いる閾値よりも小さいものとしている。これにより、当該装置は、スイッチング素子を確実にオフ状態に切り替えることが可能となり、この結果、整流回路における電流の逆流防止や電力の変換効率の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−235669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置等では、高い周波数で動作している状態で、交流電力の電圧検出や、当該検出に基づくオン信号の送信停止に遅れ時間が生じると、本来スイッチング素子をオフ状態に切り替えるべきタイミングであっても、オン状態になったままになってしまう。
【0007】
このように、スイッチング素子が不適切なタイミングでオン状態になってしまうと、整流回路において電流の逆流が生じてしまうおそれがある。このため、電力の変換効率の低下や、スイッチング素子の損傷を招くという課題があった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、整流回路のスイッチング素子を適切なタイミングでオフ状態にして、交流電力から直流電力への変換効率を向上させることが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力変換装置(100,100A,100B)は、複数のスイッチング素子(Q1,Q2,Q3,Q4)を有し、該複数のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることで交流電力を直流電力に変換する整流回路(10)と、前記整流回路に供給される交流電流の値(Iout)を検出する電流検出部(20)と、前記電流検出部で検出された前記交流電流の値と、電流閾値と、の関係に基づいて前記整流回路にオン信号を送信する制御部(30)と、を備える。前記制御部は、前記電流閾値として、第1電流閾値と、前記第1電流閾値よりも絶対値が大きい第2電流閾値と、を少なくとも設定し、前記交流電流の値の絶対値が前記第1電流閾値の絶対値を上回ったことに基づいて、前記複数のスイッチング素子の一部をオン状態にするために前記整流回路にオン信号を送信する一方で、前記交流電流の値の絶対値が前記第2電流閾値の絶対値を下回ったことに基づいて、前記複数のスイッチング素子の一部をオフ状態にするために前記整流回路へのオン信号の送信を停止する。
【0010】
本発明では、制御部がオン信号を送信する際に用いる第1電流閾値の絶対値よりも、制御部がオン信号の送信を停止する際に用いる第2電流閾値の絶対値の方が大きい。したがって、本発明によれば、電流検出部による交流電流の値の検出や、当該検出に基づくオン信号の送信停止に遅れ時間が生じる場合であっても、それを考慮して早めのタイミングでオン信号の送信を停止することが可能となる。この結果、本発明によれば、整流回路のスイッチング素子を適切なタイミングでオフ状態にして、交流電力から直流電力への変換効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、整流回路のスイッチング素子を適切なタイミングでオフ状態にして、交流電力から直流電力への変換効率を向上させることが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置を示す回路図である。
図2】第1実施形態に係る制御部による制御の例を示すタイムチャートである。
図3】第1実施形態に係る制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る制御部による制御の例を示すタイムチャートである。
図6】第2実施形態に係る制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第3実施形態に係る制御部による制御の例を示すタイムチャートである。
図9】第3実施形態に係る制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
まず、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置100の構成の概略を説明する。電力変換装置100は、交流電源ACから供給される交流電力を直流電力に変換する装置として設けられる。電力変換装置100によって変換された直流電力は、平滑化を行うキャパシタ51及び抵抗52を有する負荷50に供給される。
【0015】
電力変換装置100は、整流回路10と、電流検出部20と、制御部30と、比較回路40と、を備えている。
【0016】
整流回路10は、その入力側が交流電源ACと電気的に接続され、その出力側が負荷50と電気的に接続される。整流回路10は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4を有している。本第1実施形態では、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4としてMOSFETを採用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、オン状態とオフ状態との切り替えが可能なスイッチング素子であれば、任意のものを採用することができる。例えば、JFET,MESFETや、IGBT、GTO、パワートランジスタ等を採用することができる。
【0017】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは直列に接続されている。また、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との間には、交流電源ACの一方の端子AC1が接続されている。また、スイッチング素子Q1と並列にダイオードD1が接続されているとともに、スイッチング素子Q2と並列にダイオードD2が接続されている。
【0018】
スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とは直列に接続されている。また、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との間には、交流電源ACの他方の端子AC2が接続されている。また、スイッチング素子Q3と並列にダイオードD3が接続されているとともに、スイッチング素子Q4と並列にダイオードD4が接続されている。
【0019】
電流検出部20は、交流電源ACと、前述した交流電源ACの他方の端子AC2との間に配置されている。電流検出部20は、交流電源ACから整流回路10に供給される交流電流を検出する。また、電流検出部20は、検出した交流電流の値(以下、これを「交流電流値」と称する)に対応する検出信号を生成し、外部に送信する。
【0020】
制御部30は、信号線L1,L2,L3,L4を介してスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4とそれぞれ電気的に接続されており、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4に制御信号を送信する機器である。詳細には、制御部30は、後述する比較回路40からの入力等に基づいて、PWM(Pulse Width Modulation)制御に従ってオン信号を生成し、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4に送信することで、それらのオン状態とオフ状態とを切り替える。この制御部30は、CPU(Central Processing Unit)を中心にプログラムの実行で動作する構成となっているが、回路素子からなるハードウェアロジックによって動作する構成としてもよい。
【0021】
比較回路40は、電流検出部20及び制御部30と電気的に接続されている回路である。比較回路40は、電流検出部20が検出した交流電流の値と、後述する電流閾値Irefとを比較するとともに、その比較結果に対応する信号を生成し、制御部30に送信する。すなわち、制御部30は、電流検出部20による交流電流の検出に基づいてオン信号を送信することになる。
【0022】
以上のように構成された電力変換装置100は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のオン状態とオフ状態とを切り替えることによって、交流電源ACから供給される交流電力の全波整流を行う。
【0023】
詳細には、交流電源ACから矢印C1で示される方向に交流電流が流れる場合(電流検出部20が検出する交流電流の値が正となる場合)は、制御部30は、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信する。このオン信号を受信することでスイッチング素子Q1,Q4はオン状態となるが、スイッチング素子Q2,Q3はオフ状態のままとなる。
【0024】
一方、交流電源ACから矢印C2で示される方向に交流電流が流れる場合(電流検出部20が検出する交流電流の値が負となる場合)は、制御部30は、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信する。このオン信号を受信することでスイッチング素子Q2,Q3はオン状態となるが、スイッチング素子Q1,Q4がオフ状態のままとなる。
【0025】
ところで、電流検出部20による交流電流の検出や、当該検出に基づく制御部30からのオン信号の送信停止等には、遅れ時間が生じ得る。このような要因のため、本来スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4がオフ状態に切り替わるべきタイミングでもオン状態のままになってしまうと、整流回路10において電流の逆流が生じてしまうおそれがある。このため、電力変換装置100の変換効率の低下や、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4の損傷を招くおそれがある。
【0026】
そこで、第1実施形態に係る電力変換装置100では、制御部30がオン信号を送信するタイミングと、当該オン信号の送信を停止するタイミングとに工夫がなされている。以下、図2乃至図3を参照しながら、この工夫について説明する。
【0027】
まず、図2を参照しながら、制御部30による制御の例について説明する。図2では、電流検出部20によって検出された交流電流の値Ioutの時間変化を最上段に示している。また、図2の中段には、制御部30がスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4に送信する制御信号を示している。すなわち、「オン」は、制御部30が各スイッチング素子にオン信号を送信している状態を示しており、「オフ」は、制御部30が各スイッチング素子にオン信号を送信していない状態を示している。さらに、図2の下段には、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のオン状態又はオフ状態を示している。
【0028】
制御部30は、時間とともに変化する電流閾値Irefを決定するとともに、この電流閾値Irefを比較回路40に出力する。前述したように、比較回路40では、電流検出部20が検出した交流電流値Ioutと、電流閾値Irefとを比較するとともに、その比較結果に対応する信号を生成して制御部30に送信する。制御部30は、比較回路40から受信する信号に基づいて、スイッチング素子Q1,Q4又はスイッチング素子Q2,Q3にオン信号を送信する。
【0029】
図2に基づいて説明すると、時刻t11では、電流閾値Irefはゼロである。交流電流値Ioutが、時刻t11でこの電流閾値Iref(ゼロ)を上回ると、比較回路40がこの大小関係に対応する信号を生成し、制御部30に送信する。当該信号を受信した制御部30は、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q1,Q4がオフ状態からオン状態に切り替えられる。
【0030】
時刻t11後、制御部30は、電流閾値Irefを漸次増加させる。比較回路40は、この電流閾値Irefの増加中も、交流電流値Ioutと電流閾値Irefとの比較を行う。
【0031】
時刻t12で、交流電流値Ioutが、I21まで増加した電流閾値Irefを下回ると、制御部30は、スイッチング素子Q1,Q4へのオン信号の送信を停止する。しかしながら、前述した要因のため、制御部30が当該オン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q1,Q4が実際にオフ状態になるまでに、遅れ時間が生じる。
【0032】
時刻t12から時間td1が経過した時刻t13で、スイッチング素子Q1,Q4がオン状態からオフ状態に切り替わる。すなわち、この時間td1が、制御部30がスイッチング素子Q1,Q4へのオン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q1,Q4が実際にオフ状態になるまでの遅れ時間に相当する。
【0033】
また、時刻t13では、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化する。このように、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化すること、及び、交流電流値Ioutが負の値から正の値に変化することを、「ゼロクロス」と称する。時刻t13では、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化するゼロクロスが検出されたことに基づいて、制御部30は、それまで漸次増加させていた電流閾値Irefをゼロとする。
【0034】
また、時刻t13で、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化し、且つ、電流閾値Iref(ゼロ)を下回ったことに基づいて、制御部30は、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q2,Q3がオフ状態からオン状態に切り替えられる。時刻t13で、スイッチング素子Q1,Q4のオン状態からオフ状態への切り替えと、スイッチング素子Q2,Q3のオフ状態からオン状態への切り替えが略同時に行われることから、交流電力の損失を抑制することができる。
【0035】
時刻t13後、制御部30は、電流閾値Irefを漸次減少させる。比較回路40は、この電流閾値Irefの減少中も、交流電流値Ioutと電流閾値Irefとの比較を行う。
【0036】
時刻t14で、交流電流値Ioutが、−I21まで減少した電流閾値Irefを上回ると、制御部30は、スイッチング素子Q2,Q3へのオン信号の送信を停止する。しかしながら、ここでも、制御部30が当該オン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q2,Q3が実際にオフ状態になるまでに、遅れ時間が生じる。
【0037】
時刻t14から時間td1が経過した時刻t15で、スイッチング素子Q2,Q3がオン状態からオフ状態に切り替わる。すなわち、この時間td1が、制御部30がスイッチング素子Q2,Q3へのオン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q2,Q3が実際にオフ状態になるまでの遅れ時間に相当する。
【0038】
また、時刻t15では、交流電流値Ioutが負の値から正の値に変化するゼロクロスが検出されたことに基づいて、制御部30は、それまで漸次増加させていた電流閾値Irefをゼロとする。
【0039】
また、時刻t15で、交流電流値Ioutが負の値から正の値に変化し、且つ、電流閾値Iref(ゼロ)を上回ったことに基づいて、制御部30は、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q1,Q4がオフ状態からオン状態に切り替えられる。時刻t15で、スイッチング素子Q2,Q3のオン状態からオフ状態への切り替えと、スイッチング素子Q1,Q4のオフ状態からオン状態への切り替えが略同時に行われることから、交流電力の損失を抑制することができる。
【0040】
時刻t15以降、制御部30は、交流電源ACの周波数に対応して、これまで説明した制御を繰り返す。すなわち、時刻t16,t17では、それぞれ交流電流値Ioutと電流閾値Irefとの関係が等しい時刻t12,t13と同様の制御を行う。
【0041】
続いて、図3を参照しながら、以上のような制御を行う制御部30が、電流閾値Irefを決定する際の処理について説明する。
【0042】
まず、制御部30は、ステップS101で、電流閾値Irefの初期値としてゼロをセットする。
【0043】
次に、制御部30は、ステップS102で、交流電流値Ioutが正の値であるか否かを判定する。すなわち、制御部30は、交流電源ACから矢印C1(図1参照)で示される方向に電流が流れているか否かを判定する。交流電流値Ioutが正の値であると判定した場合(S102:YES)、制御部30は、ステップS103の処理に進む。
【0044】
次に、制御部30は、ステップS103で、電流閾値Irefを定数Aだけ増加させる。ここで、定数Aは正の値である。
【0045】
次に、制御部30は、ステップS104で、前述したゼロクロスが検出されたか否かを判定する。ここでのゼロクロスは、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化するものである。ゼロクロスが検出されていないと判定した場合(S104:NO)、制御部30は、前述したステップS103の処理に戻る。すなわち、制御部30は、ゼロクロスが検出されたと判定する(S104:YES)まで、電流閾値Irefを定数Aだけ増加させていく。
【0046】
ゼロクロスが検出されたと判定した場合(S104:YES)、制御部30は、前述したステップS101の処理に戻る。これにより、それまで増加していた電流閾値Irefがゼロにリセットされる。
【0047】
これに対し、ステップS102で、交流電流値Ioutが正の値ではないと判定した場合(S102:NO)、すなわち、交流電源ACから矢印C2(図1参照)で示される方向に電流が流れていると判定した場合、制御部30は、ステップS105の処理に進む。
【0048】
次に、制御部30は、ステップS105で、電流閾値Irefを定数Aだけ減少させる。前述したように、定数Aは正の値である。
【0049】
次に、制御部30は、ステップS106で、前述したゼロクロスが検出されたか否かを判定する。ここでのゼロクロスは、交流電流値Ioutが負の値から正の値に変化するものである。ゼロクロスが検出されていないと判定した場合(S106:NO)、制御部30は、前述したステップS105の処理に戻る。すなわち、制御部30は、ゼロクロスが検出されたと判定する(S106:YES)まで、電流閾値Irefを定数Aだけ減少させていく。
【0050】
ゼロクロスが検出されたと判定した場合(S106:YES)、制御部30は、前述したステップS101の処理に戻る。これにより、それまで減少していた電流閾値Irefがゼロにリセットされる。
【0051】
続いて、図4を参照しながら、制御部30が整流回路10に送信する制御信号を決定する際の処理について説明する。
【0052】
まず、制御部30は、ステップS201で、交流電流値Ioutが正の値であるか否かを判定する。すなわち、制御部30は、交流電源ACから矢印C1(図1参照)で示される方向に電流が流れているか否かを判定する。交流電流値Ioutが正の値であると判定した場合(S201:YES)、制御部30は、ステップS202の処理に進む。
【0053】
次に、制御部30は、ステップS202で、交流電流値Ioutが電流閾値Irefよりも大きいか否かを判定する。制御部30は、比較回路40から受信する信号に基づいて当該判定を行う。交流電流値Ioutが電流閾値Irefよりも大きいと判定した場合(S202:YES)、制御部30は、ステップS203の処理に進む。
【0054】
次に、制御部30は、ステップS203で、スイッチング素子Q1,Q4をオン状態にするとともに、スイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30は、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信することを決定する。
【0055】
一方、ステップS202で、交流電流値Ioutが電流閾値Irefよりも大きくないと判定した場合(S202:NO)、制御部30は、ステップS204の処理に進む。
【0056】
次に、制御部30は、ステップS204で、スイッチング素子Q1,Q4及びスイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30は、オン信号の送信を行わないことを決定する。
【0057】
これに対し、ステップS201で、交流電流値Ioutが正の値ではないと判定した場合(S201:NO)、すなわち、交流電源ACから矢印C2(図1参照)で示される方向に電流が流れていると判定した場合、制御部30は、ステップS205の処理に進む。
【0058】
次に、制御部30は、ステップS205で、交流電流値Ioutが電流閾値Irefよりも小さいか否かを判定する。制御部30は、比較回路40から受信する信号に基づいて当該判定を行う。交流電流値Ioutが電流閾値Irefよりも小さいと判定した場合(S205:YES)、制御部30は、ステップS206の処理に進む。
【0059】
次に、制御部30は、ステップS206で、スイッチング素子Q1,Q4をオフ状態にするとともに、スイッチング素子Q2,Q3をオン状態にすることを決定する。すなわち、制御部30は、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信することを決定する。
【0060】
一方、ステップS205で、交流電流値Ioutが電流閾値Irefよりも小さくないと判定した場合(S205:NO)、制御部30は、ステップS207の処理に進む。
【0061】
次に、制御部30は、ステップS207で、スイッチング素子Q1,Q4及びスイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30は、オン信号の送信を行わないことを決定する。
【0062】
以上のように、電力変換装置100では、制御部30がオン信号を送信する際に用いる電流閾値Iref(ゼロ)の絶対値よりも、制御部がオン信号の送信を停止する際に用いる電流閾値Iref(I12,−I12)の絶対値が大きい。
【0063】
したがって、電力変換装置100によれば、電流検出部20による交流電流の検出や、当該検出に基づくオン信号の送信停止に遅れ時間td1が生じる場合であっても、それを考慮して早めのタイミングでオン信号の送信を停止することが可能となる。この結果、電力変換装置100によれば、整流回路10のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4を適切なタイミングでオフ状態にして、交流電力から直流電力への変換効率を向上させることが可能となる。
【0064】
また、電力変換装置100では、制御部30は、電流閾値Irefをゼロから時間とともにI12,−I12に漸次変化させ、交流電流値Ioutがゼロとなるタイミングにおいて、電流閾値Irefをゼロとする。
【0065】
このように電流閾値Irefを変化させることで、制御部30がオン信号を送信する際に用いる電流閾値Iref(ゼロ)の絶対値よりも、制御部30がオン信号の送信を停止する際に用いる電流閾値Iref(I12,−I12)の絶対値を大きくすることができる。また、交流電流値Ioutがゼロとなるタイミングにおいて、電流閾値Irefをゼロとすることで、交流電源ACから供給される交流電力の周波数に応じて、電流閾値Irefを周期的に変化させることが可能となる。
【0066】
また、本第1実施形態では、電流閾値Irefをゼロとするタイミングを、交流電流値Ioutがゼロとなるタイミングとしているが、これに代えて、オン信号の送信の停止から予め定められた所定時間(第1所定時間)後のタイミングとしてもよい。この場合も、同様の効果を得ることができる。
【0067】
続いて図5乃至図7を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置100A(図1参照)について説明する。この電力変換装置100Aは、その制御部30Aによる制御が、前述した第1実施形態に係る制御部30のものと異なっている。第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用いて、重複する説明は適宜省略する。
【0068】
まず、図5を参照しながら、制御部30Aによる制御の例について説明する。図5に示されるように、制御部30Aは、時間とともに変化する電流閾値Iref1,Iref2を有している。また、制御部30Aは、この電流閾値Iref1,Iref2を比較回路40に出力する。
【0069】
比較回路40では、電流検出部20が検出した交流電流値Ioutと、電流閾値Iref1,Iref2とを比較するとともに、その比較結果に基づく信号を生成して制御部30Aに送信する。制御部30Aは、比較回路40から受信する信号に基づいて、スイッチング素子Q1,Q4又はスイッチング素子Q2,Q3にオン信号を送信する。
【0070】
図5に基づいて説明すると、時刻t21では、電流閾値Iref1はI12であり、電流閾値Iref2は−I12である。交流電流値Ioutが、時刻t21で電流閾値Iref1(I12)を上回ると、比較回路40がこの大小関係に対応する信号を生成し、制御部30Aに送信する。当該信号を受信した制御部30Aは、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q1,Q4がオフ状態からオン状態に切り替えられる。
【0071】
時刻t21後、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI12のまま維持するとともに、電流閾値Iref2を−I12のまま維持する。そして、時刻t21から時間t0経過後に、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI12よりも大きいI22に変更するとともに、電流閾値Iref2を−I12よりも小さい(絶対値は大きい)−I22に変更する。比較回路40は、この電流閾値Iref1,Iref2の変更の前後に亘って、交流電流値Ioutと電流閾値Iref1,Iref2との比較を行う。
【0072】
時刻t22で、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref1(I22)を下回ると、制御部30Aは、スイッチング素子Q1,Q4へのオン信号の送信を停止する。しかしながら、前述した要因のため、制御部30Aが当該オン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q1,Q4が実際にオフ状態になるまでに、遅れ時間が生じる。
【0073】
時刻t22から時間td2が経過した時刻t23で、スイッチング素子Q1,Q4がオン状態からオフ状態に切り替わる。すなわち、この時間td2が、制御部30Aがスイッチング素子Q1,Q4へのオン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q1,Q4が実際にオフ状態になるまでの遅れ時間に相当する。時刻t23では、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化するゼロクロスが検出される。
【0074】
また、時刻t22後、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI22のまま維持するとともに、電流閾値Iref2を−I22のまま維持する。そして、時刻t22から時間t0経過後に、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI22よりも小さいI12に変更するとともに、電流閾値Iref2を−I22よりも大きい(絶対値は小さい)−I12に変更する。
【0075】
また、時刻t24で、交流電流値Ioutが負の値となり、且つ、電流閾値Iref2(−I12)を下回ったことに基づいて、制御部30Aは、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q2,Q3がオフ状態からオン状態に切り替えられる。時刻t23におけるスイッチング素子Q1,Q4のオン状態からオフ状態への切り替えから、時刻t24におけるスイッチング素子Q2,Q3のオフ状態からオン状態への切り替えまでが短時間になることから、交流電力の損失を抑制することができる。
【0076】
時刻t24後、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI12のまま維持するとともに、電流閾値Iref2を−I12のまま維持する。そして、時刻t24から時間t0経過後に、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI12よりも大きいI22に変更するとともに、電流閾値Iref2を−I12よりも小さい(絶対値は大きい)−I22に変更する。比較回路40は、この電流閾値Iref1,Iref2の変更の前後に亘って、交流電流値Ioutと電流閾値Iref1,Iref2との比較を行う。
【0077】
時刻t25で、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2(−I22)を上回ると、制御部30Aは、スイッチング素子Q2,Q3へのオン信号の送信を停止する。しかしながら、ここでも、制御部30Aが当該オン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q2,Q3が実際にオフ状態になるまでには遅れ時間が生じる。
【0078】
時刻t25後、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI22のまま維持するとともに、電流閾値Iref2を−I22のまま維持する。そして、時刻t25から所定時間t0経過後、制御部30Aは、電流閾値Iref1をI22よりも小さいI12に変更するとともに、電流閾値Iref2を−I22よりも大きい(絶対値は小さい)−I12に変更する。比較回路40は、この電流閾値Iref1,Iref2の変更の前後に亘って、交流電流値Ioutと電流閾値Iref1,Iref2との比較を行う。
【0079】
時刻t25から時間td2が経過した時刻t26で、スイッチング素子Q2,Q3がオン状態からオフ状態に切り替わる。すなわち、この時間td2が、制御部30Aがスイッチング素子Q2,Q3へのオン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q2,Q3が実際にオフ状態になるまでの遅れ時間に相当する。時刻t26では、交流電流値Ioutが負の値から正の値に変化するゼロクロスが検出される。
【0080】
また、時刻t27で、交流電流値Ioutが正の値となり、且つ、電流閾値Iref1(I12)を上回ったことに基づいて、制御部30Aは、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q1,Q4がオフ状態からオン状態に切り替えられる。時刻t25で、スイッチング素子Q2,Q3のオン状態からオフ状態への切り替えと、スイッチング素子Q1,Q4のオフ状態からオン状態への切り替えが略同時に行われることから、交流電力の損失を抑制することができる。
【0081】
時刻t27以降、制御部30Aは、交流電源ACの周波数に対応して、これまで説明した制御を繰り返す。すなわち、時刻t28,t29,t30では、それぞれ交流電流値Ioutと電流閾値Iref1,Iref2との関係が等しい時刻t22,t23,t24と同様の制御を行う。
【0082】
続いて、図6を参照しながら、以上のような制御を行う制御部30Aが、電流閾値Iref1,Iref2を決定する際の処理について説明する。
【0083】
まず、制御部30Aは、ステップS301で、電流閾値Iref1の初期値としてI12をセットし、電流閾値Iref2の初期値として−I12をセットする。
【0084】
次に、制御部30Aは、ステップS302で、交流電流値Ioutが正の値であるか否かを判定する。すなわち、制御部30Aは、交流電源ACから矢印C1(図1参照)で示される方向に電流が流れているか否かを判定する。交流電流値Ioutが正の値であると判定した場合(S302:YES)、制御部30Aは、ステップS303の処理に進む。
【0085】
次に、制御部30Aは、ステップS303で、交流電流値Ioutが電流閾値Iref1(I12)よりも大きいか否かを判定する。交流電流値Ioutが電流閾値Iref1(I12)よりも大きくないと判定した場合(S303:NO)、制御部30Aは待機する。そして、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref1(I12)よりも大きいと判定した場合(S303:YES)、制御部30Aは、ステップS304の処理に進む。
【0086】
一方、ステップS302で、交流電流値Ioutが正の値ではないと判定した場合(S302:NO)、制御部30Aは、ステップS308の処理に進む。
【0087】
次に、制御部30Aは、ステップS308で、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2(−I12)よりも小さい(絶対値は大きい)か否かを判定する。交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2(−I12)よりも小さくないと判定した場合(S308:NO)、制御部30Aは待機する。そして、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2(−I12)よりも小さいと判定した場合(S308:YES)、制御部30Aは、ステップS304の処理に進む。
【0088】
次に、制御部30Aは、ステップS304で、時間tに定数eを加算する。この定数eは、正の値である。
【0089】
次に、制御部30Aは、ステップS305で、時間tが時間t0よりも大きいか否かを判定する。この時間t0は、予め定められた定数であり、図5を参照しながら説明した時間t0と同一のものである。時間tが時間t0よりも大きくないと判定した場合(S305:NO)、制御部30Aは、ステップS304の処理に戻る。すなわち、制御部30Aは、時間tが時間t0よりも大きいと判定する(S305:YES)まで、時間tを定数eだけ増加させていく。時間tが時間t0よりも大きい判定する(S305:YES)と、制御部30Aは、ステップS306の処理に進む。
【0090】
次に、制御部30Aは、ステップS306で、電流閾値Iref1をI22に変更し、電流閾値Iref2を−I22に変更する。
【0091】
次に、制御部30Aは、ステップS307で、前述したゼロクロスが検出されたか否かを判定する。ゼロクロスが検出されていないと判定した場合(S307:NO)、制御部30Aは待機する。
【0092】
ステップS307で、ゼロクロスが検出されたと判定した場合(S307:YES)、制御部30Aは、前述したステップS301の処理に戻る。これにより、再び電流閾値Iref1にI12がセットされ、電流閾値Iref2に−I12がセットされる。
【0093】
続いて、図7を参照しながら、制御部30Aが整流回路10に送信する制御信号を決定する際の処理について説明する。
【0094】
まず、制御部30Aは、ステップS401で、交流電流値Ioutが電流閾値Iref1よりも大きいか否かを判定する。交流電流値Ioutが電流閾値Iref1よりも大きくないと判定した場合(S401:NO)、制御部30Aは、ステップS402の処理に進む。
【0095】
次に、制御部30Aは、ステップS402で、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2よりも大きく、且つ、電流閾値Iref1よりも小さいか否かを判定する。交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2よりも大きく、且つ、電流閾値Iref1よりも小さいと判定した場合(S402:YES)、制御部30Aは、ステップS403の処理に進む。
【0096】
次に、制御部30Aは、ステップS403で、スイッチング素子Q1,Q4及びスイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Aは、オン信号の送信を行わないことを決定する。
【0097】
一方、ステップS402で、交流電流値Ioutが、電流閾値Iref2よりも大きく、且つ、電流閾値Iref1よりも小さい値ではないと判定した場合(S402:NO)、制御部30Aは、ステップS404の処理に進む。
【0098】
次に、制御部30Aは、ステップS404で、スイッチング素子Q1,Q4をオフ状態にするとともに、スイッチング素子Q2,Q3をオン状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Aは、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信することを決定する。
【0099】
これに対し、ステップS401で、交流電流値Ioutが電流閾値Iref1よりも大きいと判定した場合(S401:YES)、制御部30Aは、ステップS405の処理に進む。
【0100】
次に、制御部30Aは、ステップS405で、スイッチング素子Q1,Q4をオン状態にするとともに、スイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Aは、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信することを決定する。
【0101】
以上のように、電力変換装置100Aでは、制御部30Aは、交流電流値Ioutの絶対値が電流閾値Iref1(I12),Iref2(−I12)の絶対値を上回ったタイミングから予め定められた時間t0(第2所定時間)経過後に、電流閾値Iref1,Iref2をI12,−I12からI22,−I22に変更する。また、制御部30Aは、電流検出部20が検出する交流電流値Ioutの絶対値が電流閾値Iref1(I22),Iref2(−I22)の絶対値を下回ったタイミングから予め定められた時間t0(第3所定時間)経過後に、電流閾値Iref1,Iref2をI22,−I22からI12,−I12に変更する。
【0102】
このように電流閾値Iref1,Iref2を変化させることで、制御部30Aがオン信号を送信する際に用いる電流閾値Iref1(I12),Iref2(−I12)の絶対値よりも、制御部30Aがオン信号の送信を停止する際に用いる電流閾値Iref1(I22),Iref2(−I22)の絶対値を大きくすることができる。また、交流電源ACから供給される交流電力の周波数に応じて、電流閾値Iref1,Iref2を周期的に変化させることが可能となる。
【0103】
尚、本第2実施形態では、前述した第2所定時間及び第3所定時間をいずれも同一の時間t0としているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、第2所定時間と第3所定時間とが互いに異なるものであってもよい。
【0104】
続いて図8及び図9を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る電力変換装置100B(図1参照)について説明する。この電力変換装置100Bは、その制御部30Bによる制御が、前述した実施形態に係る制御部30,30Aのものと異なっている。前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を用いて、重複する説明は適宜省略する。
【0105】
まず、図8を参照しながら、制御部30Bによる制御の例について説明する。図8に示されるように、制御部30Bは、時間によらず一定な電流閾値−I23,−I13,I13,I23を有している。また、制御部30Bは、この電流閾値−I23,−I13,I13,I23を比較回路40に出力する。比較回路40では、電流検出部20が検出した交流電流値Ioutと、電流閾値−I23,−I13,I13,I23とを比較するとともに、その比較結果に基づく信号を生成して制御部30Bに送信する。制御部30Bは、比較回路40から受信する信号に基づいて、スイッチング素子Q1,Q4又はスイッチング素子Q2,Q3にオン信号を送信する。
【0106】
図8に基づいて説明すると、時刻t31で、交流電流値Ioutが電流閾値I13を上回ると、比較回路40がこの大小関係に対応する信号を生成し、制御部30Bに送信する。当該信号を受信した制御部30Bは、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q1,Q4がオフ状態からオン状態に切り替えられる。
【0107】
時刻t32で、交流電流値Ioutが電流閾値I23を下回ると、制御部30Bは、スイッチング素子Q1,Q4へのオン信号の送信を停止する。しかしながら、前述した要因のため、制御部30Bが当該オン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q1,Q4が実際にオフ状態になるまでに、遅れ時間が生じる。
【0108】
時刻t32から時間td3が経過した時刻t33で、スイッチング素子Q1,Q4がオン状態からオフ状態に切り替わる。すなわち、この時間td3が、制御部30Bがスイッチング素子Q1,Q4へのオン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q1,Q4が実際にオフ状態になるまでの遅れ時間に相当する。時刻t33では、交流電流値Ioutが正の値から負の値に変化するゼロクロスが検出される。
【0109】
また、時刻t34で、交流電流値Ioutが負の値となり、且つ、電流閾値−I13を下回った(絶対値は上回った)ことに基づいて、制御部30Bは、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信する。これにより、スイッチング素子Q2,Q3がオフ状態からオン状態に切り替えられる。時刻t33におけるスイッチング素子Q1,Q4のオン状態からオフ状態への切り替えから、時刻t34におけるスイッチング素子Q2,Q3のオフ状態からオン状態への切り替えまでが短時間になることから、交流電力の損失を抑制することができる。
【0110】
時刻t35で、交流電流値Ioutが、電流閾値−I23を上回る(絶対値は下回る)と、制御部30Bは、スイッチング素子Q2,Q3へのオン信号の送信を停止する。しかしながら、ここでも、当該オン信号の送信停止から、スイッチング素子Q2,Q3が実際にオフ状態になるまでには遅れ時間が生じる。
【0111】
時刻t35から時間td3が経過した時刻t36で、スイッチング素子Q2,Q3がオン状態からオフ状態に切り替わる。すなわち、この時間td3が、制御部30Aがスイッチング素子Q2,Q3へのオン信号の送信を停止したタイミングから、スイッチング素子Q2,Q3が実際にオフ状態になるまでの遅れ時間に相当する。時刻t36では、交流電流値Ioutが負の値から正の値に変化するゼロクロスが検出される。
【0112】
時刻t36以降、制御部30は、交流電源ACの周波数に対応して、これまで説明した制御を繰り返す。すなわち、時刻t37,t38,t39,t40では、それぞれ交流電流値Ioutと電流閾値I23,−I13との関係が等しい時刻t31,t32,t33,t34と同様の制御を行う。
【0113】
続いて、図9を参照しながら、制御部30Bが整流回路10に送信する制御信号を決定する際の処理について説明する。
【0114】
まず、制御部30は、ステップS501で、交流電流値Ioutが電流閾値−I13よりも大きく、且つ、電流閾値I13よりも小さいか否かを判定する。交流電流値Ioutが電流閾値−I13よりも大きく、且つ、電流閾値I13よりも小さい値ではないと判定した場合(S501:NO)、制御部30は、ステップS502の処理に進む。
【0115】
次に、制御部30Bは、ステップS502で、交流電流値Ioutが電流閾値I13よりも大きいか否かを判定する。交流電流値Ioutが電流閾値I13よりも大きいと判定した場合(S502:YES)、制御部30Bは、ステップS503の処理に進む。
【0116】
次に、制御部30Bは、ステップS503で、交流電流値Ioutが電流閾値I23よりも大きい状態から小さい状態へと変化したか(交流電流値Ioutが電流閾値I23を下回ったか)否かを判定する。交流電流値Ioutがこのように変化したと判定した場合(S503:YES)、制御部30Bは、ステップS504の処理に進む。
【0117】
次に、制御部30Bは、ステップS504で、スイッチング素子Q1,Q4及びスイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Bは、オン信号の送信を行わないことを決定する。
【0118】
一方、ステップS503で、交流電流値Ioutが電流閾値I23よりも大きい状態から小さい状態へと変化していないと判定した場合(S503:NO)、制御部30Bは、ステップS505の処理に進む。
【0119】
次に、制御部30Bは、ステップS505で、スイッチング素子Q1,Q4をオン状態にするとともに、スイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Bは、スイッチング素子Q1,Q4のみにオン信号を送信することを決定する。
【0120】
これに対し、ステップS502で、交流電流値Ioutが電流閾値I13よりも大きくないと判定した場合(S502:NO)、制御部30Bは、ステップS506の処理に進む。
【0121】
次に、制御部30Bは、ステップS506で、交流電流値Ioutが電流閾値−I13よりも小さいか否かを判定する。交流電流値Ioutが電流閾値−I13よりも小さいと判定した場合(S506:YES)、制御部30Bは、ステップS507の処理に進む。
【0122】
次に、制御部30Bは、ステップS507で、交流電流値Ioutが電流閾値−I23よりも小さい状態から大きい状態へと変化したか(交流電流値Ioutが電流閾値−I23を上回ったか)否かを判定する。交流電流値Ioutがこのように変化したと判定した場合(S507:YES)、制御部30Bは、ステップS508の処理に進む。
【0123】
次に、制御部30Bは、ステップS508で、スイッチング素子Q1,Q4及びスイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Bは、オン信号の送信を行わないことを決定する。
【0124】
一方、ステップS507で、交流電流値Ioutが電流閾値−I23よりも小さい状態から大きい状態へと変化していないと判定した場合(S506:NO)、制御部30Bは、ステップS509の処理に進む。
【0125】
次に、制御部30Bは、ステップS509で、スイッチング素子Q1,Q4をオフ状態にするとともに、スイッチング素子Q2,Q3をオン状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Bは、スイッチング素子Q2,Q3のみにオン信号を送信することを決定する。
【0126】
また、ステップS501で、交流電流値Ioutが電流閾値−I13よりも大きく、且つ、電流閾値I13よりも小さい値であると判定した場合(S501:YES)、制御部30Bは、ステップS510の処理に進む。さらに、ステップS506で、交流電流値Ioutが電流閾値−I13よりも小さくないと判定した場合(S506:NO)も、制御部30Bは、ステップS510の処理に進む。
【0127】
次に、制御部30Bは、ステップS510で、スイッチング素子Q1,Q4及びスイッチング素子Q2,Q3をオフ状態にすることを決定する。すなわち、制御部30Bは、オン信号の送信を行わないことを決定する。
【0128】
以上のように、電力変換装置100Bでは、制御部30Bがオン信号を送信する際に用いる電流閾値I13,−I13の絶対値よりも、制御部30Bがオン信号の送信を停止する際に用いる電流閾値I23,−I23の絶対値の方が大きい。したがって、電力変換装置100Bによれば、電流検出部20による交流電流の検出や、当該検出に基づくオン信号の送信停止に遅れ時間td3が生じる場合であっても、それを考慮して早めのタイミングでオン信号の送信を停止することが可能となる。この結果、整流回路のスイッチング素子を適切なタイミングでオフ状態にして、交流電力から直流電力への変換効率を向上させることが可能となる。
【0129】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0130】
10:整流回路
20:電流検出部
30,30A,30B:制御部
100,100A,100B:電力変換装置
Q1,Q2,Q3,Q4:スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9