特許第6254773号(P6254773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6254773-分岐管の閉止装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254773
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】分岐管の閉止装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/06 20060101AFI20171218BHJP
   F16L 55/10 20060101ALI20171218BHJP
   F16B 9/02 20060101ALI20171218BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   F16J13/06
   F16L55/10
   F16B9/02 M
   F16B9/02 K
   F16B2/08 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-108131(P2013-108131)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-228060(P2014-228060A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 利司
(72)【発明者】
【氏名】福田 ゆか
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−079897(JP,A)
【文献】 特開2013−055814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00−13/24
F16L 55/10
F16B 2/08
F16B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母管に分岐管がほぼ直交するように接続された配管構造物における前記分岐管の開口端を閉止するための分岐管の閉止装置であって、
前記開口端に装着されて当該開口端を閉じる閉止板と、
前記閉止板に取り付けられ、前記母管に巻き回される巻回し治具と、
前記閉止板が前記開口端に押し付けられるように、前記巻回し治具を締め付ける締め付け手段と、
前記締め付け手段により締め付けられた状態の前記巻回し治具を前記閉止板に固定する固定手段と、
を具備したことを特徴とする分岐配管の閉止装置。
【請求項2】
前記巻回し治具は、金属製のベルトであることを特徴とする請求項1に記載の分岐管の閉止装置。
【請求項3】
前記締め付け手段は、前記ベルトを前記分岐管の軸方向に締め付けることを特徴とする請求項2に記載の分岐管の閉止装置。
【請求項4】
前記巻回し治具は、前記母管の外周面に沿う周部と、前記周部の周方向両端部から前記閉止板に向けて延出し、前記閉止板に挿通されるロッド部と、前記ロッド部の先端部に形成された雄ねじ部と、前記雄ねじ部に螺合可能なナットと、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐管の閉止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧試験用として使用する分岐管の閉止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントや火力発電プラント等に使用される配管は、設置後に高温、高圧の蒸気や液体が通流するものであるため、使用前に所定の水圧または気圧を加えて耐圧試験を行っている。その際、耐圧試験の対象となる母管の分岐管を閉止する場合があり、分岐管の開口を閉止装置を用いて閉止している。
従来、耐圧試験用として使用する閉止装置の技術として、特許文献1,2に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された耐圧試験用管閉止治具は、分割されたパイプチャックと、パイプチャックを押すフランジと、パッキンを備えた管端閉止フランジと、を備えており、溶接を行わずに配管開口部を閉止することが可能である。
また、特許文献2に開示された耐圧容器開口部の閉止装置は、耐圧容器の開口部に閉止部を装着して耐圧試験を行うものであり、開口部に着脱自在な閉止手段として開口部の胴体側に設けた支持梁片を備え、支持梁片で開口の内側から開口を閉止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3149070号公報
【特許文献2】特開2003−14123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、閉止治具を固定するためのパイプチャックの締付方向が、配管の径方向となっており、耐圧試験時に圧力がかかる配管軸方向とは異なった方向となっていた。このため、配管同士を溶接で固定する場合に比べて強度が弱いという課題があった。
また、特許文献2では、開口の内側から支持梁片で開口を閉止するものであるため、設置時に開口の縁部に対する支持梁片のかかり具合を目視できず、支持梁片の固定の確認が十分に行えないという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、溶接を行うことなく、耐圧試験時に圧力がかかる配管軸方向に分岐管の開口端を閉止でき、装着した治具の固定の確認が容易な分岐管の閉止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、母管に分岐管がほぼ直交するように接続された配管構造物における前記分岐管の開口端を閉止するための分岐管の閉止装置であって、前記分岐管の開口端に装着されて当該開口端を閉じる閉止板と、前記閉止板に取り付けられ、前記母管に巻き回される巻回し治具と、前記閉止板が前記開口端に押し付けられるように、前記巻回し治具を締め付ける締め付け手段と、前記締め付け手段により締め付けられた状態の前記巻回し治具を前記閉止板に固定する固定手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶接を行うことなく、耐圧試験時に圧力がかかる配管軸方向に分岐管の開口端を閉止でき、装着した治具の固定の確認が容易な分岐管の閉止装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る分岐管の閉止装置を用いて分岐管の開口を閉止した状態を示す斜視図である。
図2図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
図3】第1実施形態に係る分岐管の閉止装置の配管装着前の状態を示す斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る分岐管の閉止装置を用いて分岐管の開口を閉止した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る分岐管の閉止装置の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、以下の説明において、「上下」、「前後」、「左右」を言うときは、図1に示す方向を基準とする。また、分岐管の閉止装置が設けられる設備として原子力発電プラントを例示するが、本実施形態の分岐管の閉止装置が適用される設備を限定する趣旨ではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、分岐管の閉止装置は、板状を呈する金属製の閉止板1と、閉止板1に取り付けられた巻回し治具としての金属製のベルト2(以下、金属ベルト2という)と、閉止板1に対して金属ベルト2を巻き締める締め付け装置3と、を備えて構成されている。
【0012】
閉止板1は、図2に示すように、分岐管42の開口42a(開口端43)を閉止するものであり、下部には、分岐管42の開口端43(上端)が収容される収容部10が形成されている。収容部10は、分岐管42の開口端43の形状に合わせて円筒凹状に形成されている。なお、収容部10は、閉止板1の下部を前後方向に有底凹状に切り欠くことにより形成してもよい。
この収容部10には、図2に示すように、Oリング14を介して、分岐管42の開口端43が密着する状態(気密状態、水密状態)に収容される。なお、分岐管42の開口端43の密着性を高めるために、収容部10の底面に合成ゴム製のシート材等を配設してもよい。
【0013】
閉止板1の左端部には、図1に示すように、前後一対の腕部12,12が形成されている。腕部12,12は、左側方へ向けて閉止板1の左端部から突出しており、腕部12,12間には、前後方向に支軸13が支持されている。この支軸13には、金属ベルト2の一端20aが左右方向揺動可能に支持されている。
【0014】
閉止板1の上面右側には、金属ベルト2を巻き締めるための締め付け装置3が設けられている。締め付け装置3には、図1に示すように、金属ベルト2の他端20bが巻き付けられるようになっており、金属ベルト2を巻き締める装置である。巻き締める装置3は、図3に示すように、一対の支持部31,31と、回動軸32と、一対の係止ピン33,33と、ボルト34と、を備えて構成されている。一対の支持部31,31は、前後に間隔を空けて閉止板1に一体的に立設されている。支持部31,31には、回動軸32を支持する支持孔31a,31aが形成されている。
【0015】
回動軸32は、円柱状を呈しており、両端部が支持孔31a,31aに挿入されて支持部31,31に回動可能に支持されている。回動軸32の後部には、ボルト34の雄ねじ(不図示)が螺合される雌ねじ(不図示)が形成されている。なお、回動軸32は、例えば、図示しない抜け止めピン等を介設することにより支持孔31a,31aから脱落しないように設けられている。
【0016】
係止ピン33,33は、回動軸32の周面の軸方向に間隔を空けて一体的に立設されている。これにより、回動軸32を回動させると、係止ピン33,33は、回動軸32と一体となって軸周りに回動する。この係止ピン33,33は、金属ベルト2の係止孔25,25の形成位置に対応して設けられており、係止ピン33,33には、金属ベルト2の係止孔25,25を引っ掛け可能となっている。
【0017】
ボルト34は、回動軸32の雌ねじ(不図示)に螺合されて回動軸32に一体に固定されている。ボルト34は、回動軸32を回動させるためのレンチ等の工具(不図示)を装着する部分として機能する。なお、ボルト34の螺合を利用して、回動操作用のレバー等を回動軸32に取り付けてもよい。
このような締め付け装置3は、金属ベルト2を分岐管42の軸方向に沿って締め付けるようになっている。
【0018】
閉止板1の右側部1aには、図3に示すように、2つのボルト穴1b,1bが形成されている。このボルト穴1b,1bには、金属ベルト2の係止孔25,25に対応して設けられており、金属ベルト2の他端側を閉止板1に固定するための固定手段としての固定用ボルト1c,1cが螺合可能である。
【0019】
金属ベルト2は、金属製の平板状部材21を連結軸22を用いて相互に連結してなり、キャタピラ状を呈している。金属ベルト2の一端20aは、閉止板1の左端部の支軸13に支持されており、図3に示すように、配管構造物40への非装着時には閉止板1の下方に自重で垂れ下がる状態となる。
本実施形態では、平板状部材21として、長さの異なる2種類の平板状部材21a,21bを用いている。平板状部材21aは、相対的に平板状部材21bよりも長く形成されており(幅広に形成されており)、主として配管構造物40に巻き付けられる部分に使用されている。平板状部材21bは、相対的に平板状部材21aよりも短く形成されており(幅狭に形成されており)、金属ベルト2の他端20b側の閉止板1に固定される部分および締め付け装置3に巻き付けられる部分に使用されている。
【0020】
平板状部材21bには、板厚方向に貫通する2つの係止孔25,25が形成されている。係止孔25,25は、締め付け装置3の回動軸32の係止ピン33,33に対応して形成されており、係止ピン33,33を挿通可能に設けられている。また、係止孔25,25は、固定用ボルト1c,1cを挿通可能に設けられている。
【0021】
次に、配管構造物40に対する分岐管の閉止装置の装着手順について説明する。
ここで、配管構造物40としては、母管41の軸線に対して分岐管42の軸線がほぼ直交するように接続されてなるほぼT字状のものを例示して説明する。
はじめに、図3に示すように、分岐管42の上方から分岐管42の開口端43に閉止板1の下面を近づけ、閉止板1の収容部10に開口端43を収容するようにして、開口端43上に閉止板1を載せる。
なお、開口端43の周囲には予めOリング14を装着しておく。
【0022】
その後、閉止板1の左端部から下方へ垂れ下がった金属ベルト2の他端20b(下端部)を把持し、母管41の外面に沿わせるようにして金属ベルト2を巻き回し、他端20bを締め付け装置3に向けて持ち上げる。
そして、締め付け装置3の回動軸32の係止ピン33,33に、金属ベルト2の他端20bの係止孔25,25を合わせて、係止ピン33,33を係止孔25,25に挿通し、回動軸32に金属ベルト2の他端20bを引っ掛ける。
【0023】
その後、締め付け装置3のボルト34をレンチ等を用いて回動させ、金属ベルト2を巻き締める。そうすると、金属ベルト2が母管41の外周面に密着して、閉止板1が開口端43に押し付けられる状態となる。この状態で、閉止板1の右側部1aのボルト穴1b,1bに対応する位置にある金属ベルト2の係止孔25,25に、固定用ボルト1c,1cを挿入し、これをボルト穴1b,1bに締め付ける。
これにより、閉止板1が分岐管42の開口端43に押し付けられる状態が維持され、分岐管42が閉止板1によって気密(液密)に閉止される。
【0024】
以上説明した本実施形態の分岐管の閉止装置によれば、溶接を行うことなく、分岐管42の開口端43を閉止することができる。
また、金属ベルト2を締め付けることにより、閉止板1は、分岐管42の開口端43に密着するようになっており、耐圧試験時に圧力がかかる配管軸方向に分岐管42の開口端43が閉止されることとなるので、気密(液密)性に優れ、母管41の耐圧試験を好適に行うことができる。
さらに、金属ベルト2は、閉止板1の上面に設けられた締め付け装置3に巻き締められ、閉止板1の右側部1aに固定用ボルト1c,1cで固定されるので、金属ベルト2の固定の確認が容易であり、扱い易く装着性に優れている。
【0025】
なお、閉止板1の右側部1aのボルト穴1b,1bと金属ベルト2の係止孔25,25とが位置ずれを生じている場合には、閉止板1の収容部10の底面に、合成ゴム製の板状スペーサ(不図示)を適宜枚数介在させることで、前記位置ずれを補正することが可能である。
【0026】
また、金属ベルト2で巻き締める構成であるので、剛性が高く、巻き締め状態が好適に維持され、耐圧試験を好適に行うことができる。
また、金属ベルト2で巻き締める構成であるので、配管構造物40の大きさが異なる場合でも、適宜対応する係止孔25,25を利用して固定用ボルト1c,1cを閉止板1のボルト穴1b,1bに螺合することができ、種々の大きさの配管構造物40において分岐管42の開口端43を閉止することができる。
【0027】
(第2実施形態)
図4に第2実施形態に係る分岐管の閉止装置を示す。なお、図4では、配管構造物40を断面で表している。
本実施形態は、巻回し治具として母管41に巻き回される∪字形のボルト50を備え、∪字形のボルト50を閉止板1Aに締め付けることで、配管構造物40の分岐管42の開口端43を閉止するようにした点が異なる。
【0028】
∪字形のボルト50は、母管41の外周面に沿う周部としての湾曲部52と、湾曲部52の周方向両端から閉止板に向けて延出するロッド部53,53と、ロッド部53,53の上端部に形成された雄ねじ部51,51(締め付け手段)と、を備えてなる。雄ねじ部51,51には、ナット55,55(締め付け手段、固定手段)が螺合可能である。
閉止板1Aには、ロッド部53,53が挿通される挿通孔1d,1dが形成されている。閉止板1Aの下部には、分岐管42の開口端43(上端)が収容される収容部10が形成されている。収容部10は、分岐管42の開口端43の形状に合わせて円筒凹状に形成されている。
【0029】
本実施形態の分岐管の閉止装置を配管構造物40に装着する際には、まず、分岐管42の開口端43が閉止板1Aの収容部10に収容されるように開口端43に閉止板1Aを載せ、母管41の下方から∪字形のボルト50を母管41に装着し、ロッド部53,53を閉止板1Aの挿通孔1d,1dに挿通する。その後、閉止板1Aの上面から突出した雄ねじ部51,51にナット55,55をそれぞれ螺合して、締め付ける。そうすると、∪字形のボルト50の湾曲部52が母管41の外周面に密着して、閉止板1A(収容部10)が開口端43に押し付けられる状態となる。これにより、∪字形のボルト30の締め付けにより、分岐管42の開口端43が閉止される。
【0030】
本実施形態によれば、∪字形のボルト50を用いた簡単な締め付けにより、溶接を行うことなく、分岐管42の開口端43を閉止することができる。
また、∪字形のボルト50をナット55で締め付けることにより、閉止板1Aは、分岐管42の開口端43に密着するようになっており、耐圧試験時に圧力がかかる配管軸方向に分岐管42の開口端43が閉止されることとなるので、気密(液密)性に優れ、母管41の耐圧試験を好適に行うことができる。
さらに、∪字形のボルト50は、ナット55,55で締め付けられるだけの構成であるので、∪字形のボルト50の固定の確認が容易であり、扱い易く装着性に優れている。
なお、∪字形のボルト50は、分岐管42を挟むように母管41の軸方向(前後方向)に複数用いて閉止を行ってもよい。このように構成することで、閉止状態が安定し、耐圧試験をより好適に実施することができる。
【0031】
前記第1実施形態では、巻回し治具として金属ベルト2を用いたが、これに限定されるものではなく、伸縮性を有する合成ゴム等のベルトを用いて、閉止板1に分岐管42の開口端43が密着するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 閉止板
2 金属ベルト(巻き回し治具)
3 締め付け装置(締め付け手段)
40 配管構造物
41 母管
42 分岐管
43 開口端
50 ∪字形のボルト50(巻き回し治具)
51 雄ねじ部(締め付け手段)
52 湾曲部
53 ロッド部
55 ナット(締め付け手段)
図1
図2
図3
図4