(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254802
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ハンカチ用布帛及びハンカチ
(51)【国際特許分類】
A41B 15/00 20060101AFI20171218BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20171218BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20171218BHJP
D03D 15/00 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
A41B15/00
D03D1/00 Z
D02G3/36
D03D15/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-194049(P2013-194049)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-59281(P2015-59281A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 敬
【審査官】
▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−245730(JP,A)
【文献】
特開2001−192943(JP,A)
【文献】
特開平07−279041(JP,A)
【文献】
特開2013−177708(JP,A)
【文献】
特開平09−195141(JP,A)
【文献】
特開2010−150684(JP,A)
【文献】
特開平11−050340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 15/00
D02G 3/36
D03D 1/00
D03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部に合成繊維の短繊維を配し、鞘部にセルロース短繊維を配した複重層糸を用いてなるハンカチであって、複重層糸における鞘部のセルロース短繊維及び芯部の合成繊維の比率(セルロース短繊維:合成繊維)が重量を基準として50:50〜80:20であることを特徴とするハンカチ。
【請求項2】
複重層糸の撚係数が、単糸撚の綿式撚係数(K)が2.0以上4.2以下であることを特徴とする請求項1に記載のハンカチ。
【請求項3】
複重層糸が糸染されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハンカチ。
【請求項4】
生地厚さが0.2〜1.0mm、生地目付けが50〜150g/m2であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のハンカチ。
【請求項5】
吸水性において、初期、10洗後の吸水性がいずれも10秒以内であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のハンカチ。
【請求項6】
前記複重層糸の合成繊維の短繊維の単糸繊度が、0.6〜1.7dtexであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のハンカチ。
【請求項7】
生地形状が織物であり、カバーファクター(CF)が15〜30、引裂き強さがたて、よこ共に10N以上、寸法変化率が±1%以下である請求項1〜6いずれか1項に記載のハンカチ。
【請求項8】
前記複重層糸の合成繊維の短繊維が、蛍光増白剤を含まないことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載のハンカチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形態安定性、吸水性、風合い、意匠性に優れたハンカチ用布帛及びハンカチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、形態安定性に優れ高い吸水性を有するハンカチが要望され、樹脂加工剤や触媒をスプレーまたは浸漬後、遠心脱水し、乾燥、プレス、キュアーする方法が盛んに実施されている。しかし、ホルムアルデヒドにより気相(VP)加工した製品は、形態安定性(繰り返し洗濯後のW&W性、プリーツ性、パッカリング性、保型性など)は優れるものの引張強力、引裂強力、耐摩耗性が著しく低下する問題があった。
【0003】
また、特許文献1(特開平10−72773号)、特許文献2(特開平10−77573号)にはメチロール化可能な活性水素を少なくとも2ケ有する環状尿素化合物及び潜在性酸性触媒類を付与されたセルロース系繊維含有繊維製品に、セルロースを架橋させることができる薬剤で気相加工することにより、引張強力、引裂強力、耐摩耗性を向上させる方法が提案されているが、セルロースを架橋させる薬剤(ホルムアルデヒドなど)を繊維内部まで浸透させるため強力の低下が顕在する。さらには、ホルムアルデヒドは人体への影響が懸念され濃度によって粘膜への刺激性を中心とした急性中毒があり、取り扱いに細心の注意が必要である。
【0004】
また、特許文献3(実開平5−80456号)、特許文献4(特開2000−345406号)には、吸水性、風合いに優れたハンカチとして天然繊維と合成繊維からなるハンカチが提案されている。特許文献3には、天然繊維と、単糸繊度が0.001〜0.5デニールの極細合成繊維とを併用し、かつクロス表面の80%以上が合成繊維で覆われるように構成したワイピングクロスは、毛羽脱落が少なく、ワイピング特性に優れるとともに吸水性、保水性、手触りや風合いに優れることが記載されている。
特許文献4には、20〜60wt%の天然繊維と、単糸繊度が0.001〜0.5デニールの極細合成繊維とを併用してなるハンカチが記載されている。特許文献4のハンカチは抗菌加工がされており、ワイピング特性に優れているとともに、吸水性、保水性、手触りや風合いが良く、ワイピング面の毛羽脱落が少なく、工業洗濯を繰り返しても抗菌性の低下が少ないと記載されている。
【0005】
しかしながらこれらの発明はいずれも、ワイピングクロスが主な用途であって、表面の毛羽脱落を低減する観点から、極細合成繊維を布帛の表面に配する構造であり、天然繊維を用いたハンカチと比較すると風合い面で劣るものであった。
【0006】
一方、天然繊維を用いたハンカチ生布では、一般に綿糸、40〜80番手(英式番手)の細番手の単糸を経糸及び緯糸に使用し、主として平織組織で製織されるが、単糸の強力が充分でなく、風合いも劣る。また、80〜160番手の双糸を使用した場合は、強力、風合いが向上するが、製造工程が増加し、製造時間が増加するのみならず、製造コストが増加するなどの欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−72773号公報
【特許文献2】特開平10−77573号公報
【特許文献3】実開平5−80456号公報
【特許文献4】特開2000−345406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、合成繊維とセルロース短繊維との混紡糸を用いたハンカチと同等の強力を有し、しかも形態安定性と風合い、吸水性に優れたハンカチ用布帛及びハンカチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、繊維の表面にはセルロース繊維の鞘部を有し、芯部には合成繊維を配した複重層糸を用いて布帛を構成することで、表面のセルロース繊維によって風合いや吸水性が良く、芯部の合成繊維によって速乾性と形態安定性が得られ、混紡糸と同等の強力を有し、意匠性に優れたハンカチ用布帛を得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
(1)芯部に合成繊維の短繊維を配し、鞘部にセルロース短繊維を配した複重層糸を用いてなるハンカチ用布帛であって、複重層糸における鞘部のセルロース短繊維及び芯部の合成繊維の比率(セルロース短繊維:合成繊維)が重量を基準として50:50〜80:20であることを特徴とするハンカチ用布帛。
(2)複重層糸の撚係数が、単糸撚の綿式撚係数(K)が2.0以上4.2以下であることを特徴とする(1)に記載のハンカチ用布帛。
(3)複重層糸が糸染されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のハンカチ用布帛。
(4)生地厚さが0.2〜1.0mm、生地目付けが50〜150g/m
2であることを特徴とする(1)に記載のハンカチ用布帛。
(5)吸水性において、初期、10洗後の吸水性がいずれも10秒以内であることを特徴とする(1)に記載のハンカチ用布帛。
(6)加工工程において、温度が170〜210℃、加工時間15〜40秒間熱セットを施すことを特徴とする(1)に記載のハンカチ用布帛。
(7)生地形状が織物であり、カバーファクター(CF)が15〜30、引裂き強さが、たて、よこ共に10N以上、寸法変化率が±1%以下である(1)に記載のハンカチ用布帛。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載のハンカチ用布帛から製造された、ハンカチ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面(鞘側)にセルロース繊維を有する複重層糸を用いることによって、合成繊維とセルロース繊維とを混紡した糸からなるハンカチと比較して風合いに優れ、速乾性、寸法安定性に優れたハンカチを得ることが出来る。また、綿100%のハンカチと比較して強力が高く、意匠性に優れたハンカチを得ることができる。さらには、加工工程において熱セット加工を施すことによって寸法安定性を向上せしめることが出来、セルロースを架橋させることができる薬剤で気相加工する必要がなくなり、コスト的にも排水負荷など環境に及ぼす影響も最低限に留めることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる複重層糸は、断面が芯鞘型の二層構造をなし、芯部、鞘部共に短繊維からなるものである。芯部、鞘部共に短繊維からなるとは芯部、鞘部共に複数の短繊維が集合して形成されているという意味であり、短繊維1本から形成されているという意味ではない。また、短繊維とは連続繊維ではない短い繊維(ステープル)を指す。
【0013】
本発明で用いる複重層糸の芯部に用いられる合成繊維の短繊維を構成する素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド、ビニロン等のポリビニルアルコール系や、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどを例示することができる。好ましくはポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ナイロンである。
【0014】
また、合成繊維の短繊維には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、などが添加されていてもよい。
【0015】
本発明で用いる合成繊維の短繊維の単糸繊度、繊維長は特に限定されるものではないが、好ましくは単糸繊度として0.6〜1.7dtexが、繊維長として32〜51mmであることが望ましい。
【0016】
鞘部に用いるセルロース繊維の短繊維としては、綿、麻、竹などの植物繊維、レーヨン、リヨセル、モダール、ポリノジック、キュプラなどの溶剤紡糸セルロース繊維があげられ、中でも綿、レーヨン、リヨセルが好適である。
本発明で用いるセルロース繊維の短繊維の単糸繊度、繊維長は特に限定されるものではないが、単糸繊度として0.5〜3dtexが好ましく、0.7〜1.6dtexがより好ましい。繊維長として30〜60mmが好ましく、35〜55mmがより好ましい。複重層糸を構成する合成繊維及びセルロース繊維としていずれも短繊維を用いることにより、少なくとも一方が長繊維から得られる複重層糸に比べて、得られるハンカチをいっそう柔軟にし、風合いに優れたものとすることができる。
【0017】
本発明で用いる複重層糸は、芯部に配する合成繊維の短繊維の重量比率が、20〜50重量%であることが必要である。芯部の重量比率が50重量%以上では、鞘部のセルロース繊維の低被覆性により、風合いに劣る。また、芯部の重量比率が20重量%以下では、形態安定性に劣ることになるからである。
【0018】
本発明で用いる複重層糸の撚係数は、2.0〜4.2の範囲が好ましい。撚係数Kとは、K=Tw/√S1〔但し、Twは撚数(回/インチ)(1インチ=2.54cm)、S1は紡績糸繊度(英式綿番手)をそれぞれ示す。〕であり、撚係数を2.0〜4.2とすることにより、得られる布帛の強度を一定以上に保ちながら、風合いに優れたものとすることができる。
【0019】
次に、本発明に用いる複重層糸を得るための方法について述べる。
本発明のハンカチ用布帛に用いる紡績糸は、例えばそれぞれの短繊維からなる粗糸を用意して、芯部に配する合成繊維の短繊維(以下、短繊維Aと称す)からなる粗糸を芯側に、鞘部に配するセルロース短繊維(以下、短繊維Bと称す)からなる粗糸を鞘側に配しながら、同時に精紡する。またはそれぞれの短繊維からなるスライバーを用意し、短繊維Aからなるスライバーを芯側に、短繊維Bからなるスライバーを鞘側に配しながら、同時に粗紡し、後に得られた複合粗糸を精紡することによって製造することが出来る。
【0020】
具体的に前者の方法では、まず一連の紡績工程によって、短繊維A、短繊維Bそれぞれの粗糸を作成する。
次にリング精紡機に各粗糸を導入し、芯側より鞘側の送出量を大きくしながら精紡する。この時、各粗糸を同一ドラフト域へ並行に導入する。導入すべき粗糸としては、基本的に芯側・鞘側それぞれ1本ずつでよいが、紡績糸の被覆性を高める観点から、複数の粗糸を鞘側へ用いて一本の芯側粗糸を覆うといった方法も採用できる。
【0021】
一方、後者の方法でも、まず、一連の紡績工程により、短繊維A、短繊維Bそれぞれのスライバーを作成する。次に、粗紡機に各スライバーを導入する。この時、各スライバーを同一ドラフト域へ並行に導入すると同時に、芯側スライバーをフライヤーヘッドから見てドラフト域の外側に、鞘側スライバーを内側に導入する。そして、芯側スライバーにおけるドラフト軸方向(但し、糸進行方向)と、芯側スライバーのフロントローラー最終ニップ点とフライヤーヘッドとを結ぶ(但し、糸進行方向)とのなす角度が、水平面に投影した際に、0〜60°の範囲を満足するように設定する。さらに、鞘側スライバーを芯側にスライバーより速い速度で供給することで、鞘側をやや弛ませる一方で、芯側をやや張った状態にする。
こうすることで、フライヤーの回転による撚りが芯側スライバーへ集中的に伝播される結果、鞘側スライバーを芯側スライバーに巻き付けることが出来る。粗糸を得た後は、公知の精紡機を用いて、精紡することで本発明の複重層糸を得ることが出来る。
本発明では、上記の工程で得られる芯鞘構造の紡績糸を用いることで、形態安定性と風合い、吸水性に優れたハンカチを得ることが出来る。
【0022】
本発明のハンカチ用布帛は、上記紡績方法で得られた複重層糸を更に糸染して使用することが好ましい。染色方法を特に限定するものではないが、糸染にはパッケージ(チーズ)染色機によるチーズ染や綛染、その他公知の技術を用いて染色することが可能である。その中において、浴比が小さく、経済的で、糸乱れがないことからパッケージ染色機による染色がより好ましい。
【0023】
染色前には必要に応じて精練、漂白、シルケット加工をし、その後染色するが、芯部に用いられる合成繊維、及び鞘部のセルロース繊維それぞれを染色することが好ましい。合成繊維、セルロース繊維を染色する染料は、それぞれに適した染料を用いれば良く、合成繊維及びセルロースを同時染色(1浴染法)もしくは、合成繊維側を染色、還元洗浄後、セルロース側を染色(2浴染法)にて染色しても良い。
【0024】
芯と鞘とを同じ色調となるように染色することが、意匠性などの観点から好ましい。本発明の複重層糸は、鞘側のセルロース繊維が表面を被覆しているが、芯も染色することによってより均一で鮮やかな色調の糸を得ることができ、意匠性の高いハンカチを得ることができる。従来のハンカチはプリントによって様々な意匠を施されることが多いが、本発明のハンカチ用布帛は、多色糸の使用や織組織の設計によって任意の意匠を施される。
【0025】
次に、紡績、糸染された複重層糸を原糸として用いてハンカチ生機を製織するが、製織機は市販、公知のドビー及びジャカード開口装置を搭載した織機で製織することが出来る。織機においても、シャットル、レピア、グリッパー、エアジェット織機等、公知の織機を用いて製織が可能である。また、ハンカチとしての機能を保持するため、カバーファクター(CF)を規定する必要がある。カバーファクター(CF)としては、15〜30の織物を製織することが望ましい。また、生地厚さが0.2〜1.0mm、生地目付けが50〜150g/m
2であることが好ましい。
【0026】
ハンカチ生機の製織には上述の複重層糸を100%用いてもよいし、他種の糸と交織することも可能である。他種の糸としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、綿、絹、毛、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等が用いられていても良い。交織する他種糸の割合は、20%以下であることが好ましい。すなわち本発明のハンカチ用布帛中、複重層糸の割合は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%であることが特に好ましい。ハンカチ用布帛中の複重層糸の割合を80%以上とすることにより、ハンカチの加工時に皺の発生をいっそう抑えることができるとともに、形態安定性、吸水性、速乾性、意匠性等にいっそう優れたものとすることができる。
【0027】
得られた織物は、以下の工程により加工を行う。毛焼工程においては、織物表面上の毛羽を燃焼により除去する。毛焼工程はピリング防止に効果的であり、風合いや光沢を改善する。毛焼の方法はプロパンガス、ブタンガスを使用するバーナーによるガス式毛焼が望ましい。次工程の糊抜きではオープンソーパーやロータリーソーパーを用いて油剤や糊剤等の精練除去等を施す。糊抜剤はあらかじめ経糸糊剤の成分を調査し、アミラーゼなどの酵素糊抜剤、過硫酸塩、亜臭素酸塩などの酸化糊抜剤等のうち、最適な糊抜剤を選択使用すると良い。糸染工程において、シルケット加工を施していない場合、糊抜工程後に光沢向上、幅セット、防縮性付与のために加工する。その後洗浄し、柔軟仕上げ剤を付与、最後の工程として、形態安定化、幅固定、防縮、しわ除去、風合改善等を目的にヒートセット機による熱セット加工を施す。ヒートセット条件は、芯部の合成繊維に適した条件で行うが、温度170〜210℃×加工時間15〜40秒間とすることができ、180℃〜210℃×20秒程度がより好ましい。
【0028】
上述の工程によってハンカチ用布帛は製造される。製造されたハンカチ用布帛は、裁断、縫製を含む公知の工程を経て、最終商品であるハンカチとなる。本発明では、上述の構成の複重層糸を上述の工程に供することによって、合成繊維とセルロース短繊維の混紡糸を用いたハンカチと同等の強力を有し、しかも形態安定性と風合い、吸水性に優れたハンカチを得ることが出来る。
【実施例】
【0029】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例及び比較例における測定及び計算方法は、次の通りである。
(1)カバーファクター
カバーファクターは下記の式で算出した。
【数1】
【0030】
(2)引裂き強さ
JIS L 1096(一般織物試験方法)D法(ペンジュラム法)に準じ、6.3cm×10cmの試験片をたて方向及びよこ方向にそれぞれ5枚採取し、試験片をエレメンドルフ形引裂き試験機に取り付け、試験片の両つかみの中央で直角に2cmの切れ目を入れる。荷重をかけて切れ目の残り4.3cmを、たて方向、よこ方向に引裂いた時に示す荷重強さ(N)を測定し、それぞれの平均値を算出した。
【0031】
(3)寸法変化率
JIS L 1096(一般織物試験方法)G法(電気洗濯機法)に準じ、経40cm、緯40cmの試料を経方向と緯方向の寸法を測定した後、JIS L 0217 103法に従って洗濯、脱水を行い、経方向が垂直に、緯方向が水平になるように吊り下げ、一昼夜乾燥した後、経方向と緯方向の寸法を再度測定し、下記の式で寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=[(洗濯前の寸法−洗濯後の寸法)/洗濯前の寸法]×100
【0032】
(4)吸水性
JIS L 1907(繊維製品の吸水性試験方法)の滴下法に準じ、試験片上10mmの高さから水を1滴(約0.04ml)滴下し、水滴が試験片に到達してから水の鏡面反射が完全になくなるまでの時間を測定した時間である。試験片として、初期の吸水性については洗濯前の試験片を、10洗後の吸水性については、JIS L 0217 103法に従って10回洗濯後、脱水を行い、経方向が垂直に、緯方向が水平になるように吊り下げ、一昼夜乾燥した後の試験片を、それぞれ用いた。
【0033】
(5)ピリング
JIS L 1076(織物及び編物のピリング試験方法)A法(ICI形試験機を用いる方法)に準じ、経方向、緯方向それぞれ2枚採取した10cm×12cmの試験片を特殊ゴム管に捲きつけ、縫い合わせて両端をビニールテープで止め、試験機の回転ボックスに入れ、連続10時間回転後にピリング判定標準写真を並べて比較判定し、試験結果は小数点以下1桁を0又は5に丸めて求めた数値である。
【0034】
(6)風合い
官能検査により以下の通り評価した。
ソフト:○、普通:△、固い:×。
【0035】
(実施例1)
芯成分として、繊度1.45dtex、繊維長38mmのポリエステル短繊維スライバー(A)を、鞘成分として繊度1.15dtexの綿(B)を用意した後、各スライバーを粗紡機に導入し、フライヤーヘッドから見て、(A)をドラフト域外側に、(B)を内側に配置して各々をドラフトし、後に(A)を芯側、(B)を鞘側に配しながら、両者を重ね合わせ、芯の重量比率が40%、鞘の重量比率が60%の複合粗糸を得た。そして、得られた複合粗糸を通常の条件で精紡し、撚数22.8回/インチ、撚方向Z、太さ40番手(英式綿番手)の複重層糸を得た。その原糸を多数の孔を空けたポリプロピレン製チューブにソフトワインドし、高圧パッケージ染織機を用いて精練、シルケット加工処理を施した後、綿側を反応染料、ポリエステル側を分散染料により染色、フィックス処理、湯洗、水洗、油剤付与を実施後、脱水、乾燥後にリワインドを実施し、複数色の糸染パッケージを得た。
上記、糸染した複重層糸を織物設計した経糸配列に従い、部分整経機にて整経した後、ビームに巻取り、糊付けを施し、高速エアジェット織機にて経糸密度110本/インチ、緯糸密度が98本/インチになるよう製織して2/2の綾組織、織幅45インチ、カバーファクター(CF)が24.9のハンカチ生布を得た。
その後、得られたハンカチ生布を毛焼、糊抜、柔軟剤付与後、ヒートセットにて190℃で20秒間熱セットを施した。
【0036】
(実施例2)
実施例1において、芯の重量比率が20%、鞘の重量比率が80%、撚数27.9回/インチ、撚方向Z、太さ60番手(英式綿番手)の複重層糸を得、高速エアジェット織機にて経糸密度138本/インチ、緯糸密度が125本/インチになるよう製織して2/2の綾組織、織幅45インチ、カバーファクター(CF)が25.5であること以外は、同条件にて加工してハンカチ生地を得た。
【0037】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステル短繊維スライバー(A)及び綿(B)をそれぞれ単独でスライバーに紡績した後、重量比40:60にて練条工程でスライバー混紡し、得られた混紡粗糸を通常の条件で精紡すること以外は、同条件にて加工してハンカチ生地を得た。
【0038】
(比較例2)
実施例1において、綿100%スライバーを通常の条件で精紡すること以外は、同条件にて加工してハンカチ生地を得た。
【0039】
(比較例3)
実施例2において、綿100%スライバーを通常の条件で精紡すること以外は、同条件にて加工してハンカチ生地を得た。
【0040】
上記、実施例及び比較例にて得られたハンカチ生地を評価し、評価結果を表1に記す。
【表1】
【0041】
実施例1、2のハンカチは寸法変化率がいずれも−0.7%以下であるのに対して、綿ハンカチ(比較例2,3)は−0.8〜−1.2%であった。つまり、本発明のハンカチは、綿ハンカチと比較して形態安定性に優れることがわかる。また実施例1,2のハンカチは、通常の混紡での紡績糸(比較例1)と比較して、ピリング性及び風合いに優れた効果を得ることが出来る。
【0042】
また、引裂き強さを同番手の糸からなるハンカチ生地同士で比較すると、実施例1(40/1番手、複重層糸)は比較例1(40/1番手、混紡糸)よりも、たて・よこ共に引裂き強さが高かった。同様に実施例2(60/1番手、複重層糸)は比較例3(60/1番手、綿)よりも、たて・よこ共に引裂き強さが高かった。
つまり本発明のハンカチは次の効果を奏することができる。
【0043】
合成繊維を芯に配し、表面に出ないため、複重層糸では綿100%のハンカチ生地と同等のピリング性能を有する。
【0044】
熱セット性に優れた合成繊維を配するため、洗濯後の寸法安定性に優れる。
【0045】
セルロース繊維が高混率で、細い番手を使用することでより風合いに優れる。
【0046】
鞘部にセルロース繊維を配することで、風合いに優れ、色調においても通常の混紡糸と比較してより鮮やかである。