特許第6254835号(P6254835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254835
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/64 20060101AFI20171218BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20171218BHJP
   C08F 220/52 20060101ALI20171218BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20171218BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20171218BHJP
   C08L 39/00 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C08F220/64
   C08F220/10
   C08F220/52
   C08F226/06
   C09D5/00 Z
   C09D133/04
   C08L33/00
   C08L39/00
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-247534(P2013-247534)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105312(P2015-105312A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】境原 由次
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 哲治
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025820(JP,A)
【文献】 特開2005−097510(JP,A)
【文献】 特開平02−070705(JP,A)
【文献】 米国特許第05021525(US,A)
【文献】 特開2009−219827(JP,A)
【文献】 特表2003−506501(JP,A)
【文献】 米国特許第06841639(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00−220/70
C08F 226/00−226/12
C08L 33/00− 33/26
C08L 39/00− 39/08
C09D 5/00
C09D 133/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体及び下記一般式(2)で表される単量体から選ばれる1種以上である、疎水性不飽和単量体(A)と、下記一般式(3)で表される単量体、下記一般式(4)で表される単量体及び下記一般式(5)で表される単量体からなる群から選ばれる1種以上である、スルホベタイン基を有する不飽和単量体を含有する不飽和単量体(B)とを、水及び有機溶媒の混合溶媒中で所定の質量比で重合させ、前記所定の質量比が、疎水性不飽和単量体(A)と不飽和単量体(B)の総質量に対する疎水性不飽和単量体(A)の質量比であって、0.08以上、0.40以下であり、
下記測定方法(1)で得られる混合溶媒中の水の含有量をS質量%とした時に、混合溶媒中の水の含有量がS質量%以上、(S+10)質量%以下であり、
前記有機溶媒の20℃における水100gに対する溶解量が20g以上である、
共重合体の製造方法。
測定方法(1)
疎水性不飽和単量体(A)と不飽和単量体(B)からなる前記所定の質量比の単量体混合物15質量部を水及び前記有機溶媒からなる混合溶媒84.15質量部及び非イオン性界面活性剤0.85質量部と混合し、透過率を測定する。混合溶媒中の水の含有量を97.5質量%から2.5質量%ずつ減らして透過率を測定し、透過率が初めて90%以上となる水の含有量をS質量%とする。
【化1】


【化2】


式(1)及び(2)中、R1〜R3:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
4:炭素数1以上、22以下の炭化水素基、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
8,R9:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基を示す。
【化3】


【化4】


【化5】


式(3)〜(5)中、R10〜R12:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
13,R14:同一又は異なって、メチル基、またはエチル基、
1:炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
2:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
15〜R17:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
18,R19:同一又は異なって、メチル基、またはエチル基、
3:炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
4:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
5:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基を示す。
【請求項2】
開始剤として、水溶性重合開始剤を用いる、請求項1に記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒が、炭素数2以上4以下のエーテル、炭素数3以上4以下のケトン、炭素数1以上4以下のアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド及びアセトニトリルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の共重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により得られる共重合体からなる親水化処理剤。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により得られる共重合体と水を含有する親水化処理剤組成物。
【請求項6】
更に界面活性剤を含有する、請求項に記載の親水化処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化機能を有する共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面に防汚性を付与する方法としては、撥水化処理と親水化処理の相異なる方法が知られている。
【0003】
撥水化処理は、ガラス、金属、繊維等の固体表面に撥水性を持たせる表面処理を行い、水に含まれる汚れを付着させないようにする技術である。例えば、衣類を洗濯後、柔軟仕上げ剤で処理したり、スキーウェア等に撥水剤をスプレーして防水効果を持たせたり、自動車の塗装面をワックス掛けしたりすることが広く行われている。
【0004】
しかしながら、撥水化処理では、表面を完全に撥水化させることは難しく、度重なる水との接触により、水に含まれる汚れが固体表面に蓄積するため、十分な防汚効果を発揮することが難しい。
【0005】
一方、固体表面の親水化処理、すなわち、固体表面の水に対する接触角を低下させ、固体表面を水に対して濡れ易くする処理をすると、当該処理後に固体表面に付着した汚れが洗浄時に落ち易くなったり、汚れの再汚染防止効果が期待できる他、ガラス・鏡等の防曇効果、帯電防止、熱交換器のアルミニウムフィンの着霜防止、浴槽及びトイレ表面等の防汚性付与等が期待できる。
【0006】
固体表面の親水化処理剤及び方法としては、いくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、両性高分子電解質を含有する水性防汚組成物が開示されている。特許文献2には、界面活性剤及び特定のポリベタインを含有する、洗浄用又はすすぎ洗い用の組成物が開示されている。特許文献3には、特定のベタイン構造を有する重合性不飽和モノマーと特定の重合性不飽和モノマーとを共重合して得られる、アクリル樹脂、親水性架橋重合体粒子及び架橋剤を含有する親水化処理剤組成物が開示されている。
【0007】
一方、混合溶媒を用いる共重合体の製造方法として、特許文献4には水および補助溶剤からなる水性媒体において疎水性モノマーと親水性モノマーとを共重合する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−181601号公報
【特許文献2】特表2006−514150号公報
【特許文献3】特開2012−25820号公報
【特許文献4】特開平2−70705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、親水化技術を応用した商品は意外なことに少なく、広く一般に普及しているとは言いがたい。これは十分満足できる効果を有する親水化剤がないことに起因している。
【0010】
本発明は、優れた親水化能力を発揮する共重合体の製造方法を提供することを課題とする。かかる共重合体は親水化処理剤として用いることができ、また親水化処理剤組成物中に含有されうる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、疎水性不飽和単量体(A)と、スルホベタイン基を有する不飽和単量体を含有する不飽和単量体(B)とを、水及び有機溶媒の混合溶媒中で所定の質量比で重合させ、
前記所定の質量比が、疎水性不飽和単量体(A)と不飽和単量体(B)の総質量に対する疎水性不飽和単量体(A)の質量比であって、0.08以上、0.40以下であり、
下記測定方法(1)で得られる混合溶媒中の水の含有量をS質量%とした時に、混合溶媒中の水の含有量がS質量%以上、(S+10)質量%以下であり、
前記有機溶媒の20℃における水100gに対する溶解量が20g以上である、共重合体の製造方法が提供される。
測定方法(1)
疎水性不飽和単量体(A)と不飽和単量体(B)からなる前記所定の質量比の単量体混合物15質量部を水及び前記有機溶媒からなる混合溶媒84.15質量部及び非イオン性界面活性剤0.85質量部と混合し、透過率を測定する。混合溶媒中の水の含有量を97.5質量%から2.5質量%ずつ減らして透過率を測定し、透過率が初めて90%以上となる水の含有量をS質量%とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法で得られる共重合体(以下、「本発明の共重合体」ともいう)は親水化性能に優れる。従って本発明の共重合体からなる親水化処理剤及びこれを含有する親水化処理剤組成物も優れた親水化性能を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<疎水性不飽和単量体(A)>
本発明の共重合体の製造に用いられる疎水性不飽和単量体(A)は、親水化性能向上の観点から、好ましくは20℃における水100gに対する溶解量が10g以下であり、より好ましくは1g以下であり、さらに好ましくは0.1g以下である。また、疎水性不飽和単量体(A)は、同様の観点から、下記一般式(1)で表される単量体及び一般式(2)で表される単量体から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくは一般式(1)で表される単量体から選ばれる1種以上である。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
[式(1)及び(2)中、R1〜R3:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
4:炭素数1以上、22以下の炭化水素基、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
8,R9:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基を示す。]
【0017】
式(1)において、不飽和単量体の入手性の観点、親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、R1及びR2は水素原子が好ましい。R3は、同様の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R4は、同様の観点から、好ましくは炭素数1以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、ベンジル基であり、より好ましくは炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、ベンジル基であり、更に好ましくは炭素数3以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ベンジル基であり、更に好ましくは炭素数3以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ベンジル基である。
【0018】
式(2)において、不飽和単量体の入手性の観点、親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、R5及びR6は水素原子が好ましい。R7は、同様の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。R8及びR9は、同様の観点から、炭素数の合計が3以上、8以下が好ましい。また、R8及びR9は、同様の観点から、炭素数3以上、4以下のアルキル基が好ましく、より好ましくはR8及びR9のうち一方が水素原子であり、もう一方が炭素数3以上、4以下のアルキル基である。
【0019】
疎水性不飽和単量体(A)としては、具体的に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、及び(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル類や、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0020】
疎水性不飽和単量体(A)は、親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種又は2種以上である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリル又はそれらの両方を意味する。
【0021】
<スルホベタイン基を有する不飽和単量体(B)>
本発明の共重合体の製造に用いられるスルホベタイン基を有する不飽和単量体(B)は、親水化性能の向上及び重合性の観点から、下記一般式(3)で表される単量体、下記一般式(4)で表される単量体及び下記一般式(5)で表される単量体からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、同様の観点から一般式(3)で表される単量体から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
[式(3)〜(5)中、R10〜R12:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
13,R14:同一又は異なって、メチル基、またはエチル基、
1:炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
2:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
15〜R17:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基、
18,R19:同一又は異なって、メチル基、またはエチル基、
3:炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
4:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基、
5:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基を示す。]
【0026】
式(3)において、不飽和単量体の入手性の観点、及び重合性の観点から、R10及びR11は水素原子が好ましい。R12は、同様の観点から水素原子又はメチル基が好ましく、加水分解性の観点からメチル基がより好ましい。不飽和単量体の入手性の観点、及び重合性の観点から、R13及びR14はメチル基が好ましく、同様の観点からX1は炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のジメチレン基がより好ましい。X2は同様の観点から、水酸基を有してもよい炭素数3又は4のアルキレン基が好ましく、プロピレン基、ブチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基がより好ましく、プロピレン基が更に好ましい。
【0027】
式(4)において、不飽和単量体の入手性の観点、及び重合性の観点から、R15及びR16は水素原子が好ましい。R17は、同様の観点から水素原子又はメチル基が好ましい。不飽和単量体の入手性の観点、及び重合性の観点から、R18及びR19はメチル基が好ましく、同様の観点からX3は炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のジメチレン基がより好ましい。X4は同様の観点から、水酸基を有してもよい炭素数3又は4のアルキレン基が好ましく、プロピレン基、ブチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基がより好ましく、プロピレン基が更に好ましい。
【0028】
式(5)において、不飽和単量体の入手性の観点、及び重合性の観点から、X5は水酸基を有してもよい炭素数3又は4のアルキレン基が好ましく、プロピレン基、ブチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基がより好ましく、プロピレン基が更に好ましい。
【0029】
スルホベタイン基を有する不飽和単量体(B)としては、具体的に、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(4−スルホ−n−ブチル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウムベタイン、N−(4−スルホ−n−ブチル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−アクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(4−スルホ−n−ブチル)−N−アクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−アクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の一般式(3)で表される単量体や、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(4−スルホ−n−ブチル)−N−メタクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−メタクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(4−スルホ−n−ブチル)−N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の一般式(4)で表される単量体、並びに2−ビニル−1−(3−スルホプロピル)−ピリジニウムベタイン等の一般式(5)で表される単量体が挙げられる。
【0030】
スルホベタイン基を有する不飽和単量体(B)は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点、及び重合性の観点から、好ましくはN−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(4−スルホ−n−ブチル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、2−ビニル−1−(3−スルホプロピル)−ピリジニウムベタインから選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはN−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインである。
【0031】
<共重合体の製造法>
本発明によれば、疎水性不飽和単量体(A)とスルホベタイン基を有する不飽和単量体を含有する不飽和単量体(B)とは、水及び有機溶媒の混合溶媒中で、所定の質量比で重合される。ここで所定の質量比とは、疎水性不飽和単量体(A)と不飽和単量体(B)の総質量に対する疎水性不飽和単量体(A)の質量比であって、0.08以上、0.40以下の値を有する。
【0032】
親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、上記所定の質量比は0.08以上であり、好ましくは0.10以上であり、同様の観点から0.40以下であり、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下、更に好ましくは0.20以下である。
【0033】
重合に用いる有機溶媒は、親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、20℃における水100gに対する溶解量が20g以上である。有機溶媒の20℃における水100gに対する溶解量は、好ましくは50g以上、より好ましくは100g以上、さらに好ましくは300g以上、より更に好ましくはあらゆる比率で溶解することである。
【0034】
具体的には、炭素数2以上4以下のエーテル、炭素数3以上4以下のケトン、炭素数1以上4以下のアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、アセトニトリルからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。エーテル系有機溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられ、ケトン系有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルコール系有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。重合性及び親水化性能向上の観点から、5℃から重合時の温度の範囲内において、あらゆる混合比で水と混和する有機溶媒であることが好ましい。親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、炭素数1以上4以下のアルコール又は炭素数3以上4以下のケトンが好ましく、エタノール又はアセトンがより好ましい。
【0035】
本発明によれば、水及び上記有機溶媒の混合溶媒中の水の含有量は、下記測定方法(1)で得られる混合溶媒中の水の含有量をS質量%とした時に、混合溶媒中のS質量%以上、(S+10)質量%以下である。
【0036】
測定方法(1)
疎水性不飽和単量体(A)と不飽和単量体(B)からなる上記所定の質量比の単量体混合物15質量部を水及び上記有機溶媒からなる混合溶媒84.15質量部及び非イオン性界面活性剤0.85質量部と混合し、透過率を測定する。混合溶媒中の水の含有量を97.5質量%から2.5質量%ずつ減らして透過率を測定し、透過率が初めて90%以上となる水の含有量をS質量%とする。
ここで非イオン性界面活性剤は、アルキル基の炭素数が12であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が9モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0037】
上記混合溶媒中の水の含有量は、親水化処理剤又は親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、S+6.0質量%以上が好ましく、S+6.5質量%以上がより好ましく、またS+9.0質量%以下が好ましく、S+8.5質量%以下がより好ましい。同様の観点から、S+6.0質量%〜S+10.0質量%が好ましく、S+6.5質量%〜S+10.0質量%がより好ましく、S+6.5質量%〜S+9.0質量%がさらに好ましく、S+6.5質量%〜S+8.5質量%がよりさらに好ましい。
【0038】
上記混合溶媒中の水の含有量は、固体表面を均一に処理する観点から、S+1.0質量%以上が好ましく、またS+7.0質量%以下が好ましく、S+6.5質量%以下がより好ましく、S+6.0質量%以下がさらに好ましい。同様の観点から、S質量%〜S+7.0質量%が好ましく、S質量%〜S+6.5質量%がより好ましく、S質量%〜S+6.0質量%がさらに好ましく、S+1.0質量%〜S+6.0質量%がよりさらに好ましい。
【0039】
重合開始剤は特に限定されるものではなく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’―アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤等が挙げられる。しかしながら共重合体の水への溶解性の観点からは水溶性の重合開始剤が好ましく、2,2’―アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩又は過硫酸塩がより好ましく、過硫酸塩がさらに好ましく、過硫酸アンモニウムがよりさらに好ましい。また必要に応じて、連鎖移動剤等を用いることもできる。連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類が挙げられる。
【0040】
重合反応の温度は、用いる重合開始剤、混合溶媒に用いる有機溶媒の種類等により適宜選択できるが、生産性の観点から50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。同様の観点から110℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、85℃以下がさらに好ましい。
【0041】
<親水化処理剤>
本発明の共重合体は親水化処理剤として用いることができる。即ち本発明によれば、親水化処理剤の製造方法が提供される。
【0042】
<親水化処理剤組成物>
【0043】
[共重合体]
また本発明によれば、本発明の共重合体及び水を含有する、親水化処理剤組成物が提供される。親水化処理剤組成物において、本発明の共重合体は1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
親水化処理剤組成物中の本発明の共重合体の含有量は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、増粘により均一な処理が抑制され、親水化性能が低下するのを防止する観点から、好ましくは5質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0045】
[界面活性剤]
親水化処理剤組成物は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を用いることにより、親水化処理剤組成物が固体表面に濡れ広がりやすくなり、親水化性能が向上する。また、固体表面に汚れ物質、特に疎水性の高い例えば油性の汚れ物質が付着している場合には、界面活性剤を用いることにより、界面活性剤により疎水性の高い汚れ物質が除去され、固体表面の親水化性能が向上する。
【0046】
親水化処理剤組成物中の界面活性剤の含有量は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、共重合体の固体表面への吸着が阻害され、親水化性能が低下するのを防止する観点から、好ましくは30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。さらに抑泡の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.3質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0047】
用いられる界面活性剤としては、通常液体洗浄剤に用いられる界面活性剤であれば特に限定はない。界面活性剤としては陰イオン性、非イオン性、陽イオン性及び両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前述の観点から、疎水性部位としてアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましく、その炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは炭素数10以上であり、その上限は、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。
【0048】
(陰イオン性界面活性剤)
陰イオン性界面活性剤としては、疎水性部位を有する硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩、及びアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;炭素数8以上16以下の高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩等が挙げられる。
【0049】
これらの陰イオン性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス−2硫酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(ラウレス−4,5酢酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ラウレス−2スルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸アルキルエステル塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム(ココイルグルタミン酸ナトリウム)等のアシルグルタミン酸塩、アシルイセチオネート、及びアシルメチルタウレートから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及び高級脂肪酸塩から選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
【0050】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0051】
これらの非イオン性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、及びアルキルグリコシドから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルキルグルコシドから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0052】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
これらの両性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−酢酸ベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタインがより好ましい。
【0054】
(陽イオン性界面活性剤)
陽イオン性界面活性剤としては、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12以上、28以下、好ましくは炭素数16以上、22以下の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩が挙げられる。
【0055】
具体的には、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、オクダデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等の長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩等の長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム塩等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ステアリルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミンの酸塩等のモノ長鎖アルキルジメチルアミン塩が挙げられる。
【0056】
これらの陽イオン性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩が好ましい。
【0057】
[その他の成分]
親水化処理剤組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ2−アクリルアミド―2−メチルプロパンスルホン酸、ポリp−スチレンスルホン酸等の多価カルボン酸;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の溶剤;NaCl等の親水化処理剤の水への溶解性を向上させる塩;トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、尿素等の可溶化剤;粘土鉱物、水溶性高分子化合物等の粘度調整剤(但し、本発明の共重合体であるものを除く);方解石、珪石、リン酸カルシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム、ポリエチレン、ナイロン、ポリスチレン等の水不溶性研磨剤;グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;カチオン化セルロース等の感触向上剤(但し、本発明の共重合体であるものを除く);炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等のアルカリビルダー;酵素、色素、香料、防腐・防かび剤等を添加することができる。
【0058】
<親水化処理剤組成物の製造>
親水化処理剤組成物は、本発明の共重合体、水及び必要に応じて前述した界面活性剤や多価有機酸等のその他の成分を加えて、公知の方法により攪拌、混合することにより得ることができる。
親水化処理剤組成物は、固体表面の種類や処理目的に応じて、適宜組成割合を調整することができる。また、濃厚溶液を調製しておき、使用時に希釈して用いることもできる。
【0059】
得られる親水化処理剤組成物の20℃におけるpHは、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。pH調節剤としては、塩酸、硫酸等の無機酸や、前述の有機酸等の酸剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等の無機アルカリ化合物、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ化合物等のアルカリ剤が挙げられる。また、酸剤とアルカリ剤を組み合わせて緩衝剤系として用いることもできる。
【0060】
<親水化処理方法>
本発明により得られる親水化処理剤組成物は、固体表面に接触させることにより、固体表面を親水化処理することができる。ここで「固体表面」の「固体」とは、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維;毛髪、爪、歯等の固体を意味する。
本発明方法を適用しうる好適な固体表面としては、疎水性硬質表面、更にセラミックス、金属、合成樹脂から選ばれる1種又は2種以上の疎水性硬質表面が挙げられる。ここで、疎水性硬質表面とは、水に対する静止接触角が70°以上であることを意味し、親水性硬質表面とは70°未満であることを意味する。なお、静止接触角は、実施例に記載の方法で測定することができる。
また、親水化処理剤組成物は、取扱いの安定性の観点から、水溶液であることが好ましい。
【0061】
固体表面と親水化処理剤組成物の接触方法は、特に限定されない。例えば、次の(i)〜(iii)の方法等が挙げられる。
(i)親水化処理剤組成物に固体を浸漬させる方法
(ii)親水化処理剤組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(iii)親水化処理剤組成物で常法に従い固体表面を洗浄する方法
【0062】
固体表面を親水化処理剤組成物で親水化処理する温度は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点、処理方法の容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
【0063】
前記(i)の方法において、浸漬する時間は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点及び経済性の観点から、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下である。
【0064】
前記(ii)の方法において、親水化処理剤組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法は、固体表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。親水化処理剤組成物を固体表面にスプレー等で噴霧した後、乾燥する方法が好ましい。必要に応じて、噴霧した後、水ですすいでもよい。また、噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。固体表面に噴霧又は塗布する親水化処理剤組成物の量は、例えば、本発明の共重合体の含有量が0.5質量%の親水化処理剤組成物の場合、好ましくは10cm2あたり0.01mL以上0.1mL以下である。
【0065】
前記(iii)の方法において、親水化処理剤組成物は本発明の共重合体及び界面活性剤を含有する洗浄剤組成物の形態で使用し、固体表面と接触させることが好ましい。かかる洗浄剤組成物の形態とする場合、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、そのpHは4以上が好ましく、そして、10以下、更に8以下が好ましい。界面活性剤としては、前述したものを使用することができる。
【0066】
親水化処理剤組成物により親水化処理された固体表面の水に対する静止接触角は、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下、更に好ましくは30°以下、より更に好ましくは25°以下である。また、親水化処理剤組成物により親水化処理された固体表面は、親水化性能を高める観点から、均一に処理されていることが好ましい。表面処理の均一性は、処理後の固体表面を目視で観察することにより判断できる。
【実施例】
【0067】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「%」は「質量%」を意味する。
(1)S質量%の測定方法
20mLのスクリュー管に、対応する実施例及び比較例と同じ所定質量比の疎水性不飽和単量体(A)および不飽和単量体(B)を合わせて1.50g、イオン交換水97.5質量%および所定の有機溶媒2.5質量%の混合溶媒を8.415g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン109P」(花王(株)製)0.085g、直径2cmのスターラーチップを入れ、1000rpmで30分間撹拌した。続いて、2分間超音波処理した後、ただちに紫外可視分光光度計「UV−2550」(島津製作所製)にて、25℃における波長600nmの光の透過率を測定し、不飽和単量体未添加の混合溶媒の透過率を100%とした時の相対透過率を求めた。混合溶媒中の水の含有量を97.5質量%から2.5質量%ずつ減らして同様にして透過率を測定し、透過率が初めて90%以上となる水の含有量をS質量%と決定した。
【0068】
共重合体の製造に用いた疎水性不飽和単量体(A)及びスルホベタイン基を有する不飽和単量体(B)を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1
撹拌機(テフロン(登録商標)製60mm三日月翼使用)、窒素導入管、温度計を備えた300mL4つ口セパラブルフラスコに、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン(SBMA、シグマアルドリッチ製)24.6g、メタクリル酸n−ブチル(BMA、和光純薬工業(株)製)5.37g、混合溶媒としてエタノール46g及びイオン交換水72gを入れ、200rpmで撹拌しながら、窒素ガスを100mL/分で30分間吹き込み、窒素置換を行った。次に、70℃まで昇温し、エタノール2.0g、2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65、和光純薬工業(株)製)0.156gを加え、重合を開始した。4時間後冷却し、80℃で17時間減圧乾燥することで白色固体の共重合体を得た。
【0071】
実施例2〜10、比較例1〜7
不飽和単量体や混合溶媒を表2に示す通りに変更した他は、実施例1と同様に行い、白色固体の共重合体を得た。
【0072】
実施例11
重合開始剤をV−65からt−ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、日本油脂(株)製)0.879gに変更した他は、実施例1と同様に行い、白色固体の共重合体を得た。
【0073】
実施例12
撹拌機(テフロン(登録商標)製60mm三日月翼使用)、窒素導入管、温度計を備えた300mL4つ口セパラブルフラスコに、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウムベタイン(SBMA、シグマアルドリッチ製)24.6g、メタクリル酸n−ブチル(BMA、和光純薬工業(株)製)5.37g、混合溶媒としてエタノール48g及びイオン交換水67gを入れ、200rpmで撹拌しながら、窒素ガスを100mL/分で30分間吹き込み、窒素置換を行った。次に、70℃まで昇温し、イオン交換水5g、2、2’―アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩(V−50、和光純薬工業(株)製)0.512gを加え、重合を開始した。4時間後冷却し、80℃で17時間減圧乾燥することで白色固体の共重合体を得た。
【0074】
実施例13
重合開始剤をV−50から過硫酸アンモニウム(APS、シグマアルドリッチ製)0.575gに変更した他は、実施例12と同様に行い、共重合体の白色固体を得た。
【0075】
試験例1(接触角及び均一性の評価)
実施例1〜13及び比較例1〜7の共重合体を用いて、下記の親水化処理剤組成物1を調製し、接触角を測定した。
予め清浄にしたテストピース「塩化ビニルテストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:硬質ポリ塩化ビニル、25mm×75mm)を水平に固定し、ポリマー溶液1mLを滴下して5分間静置した後、イオン交換水約200mLで軽くすすいで風乾した。風乾後のテストピースの表面の処理部分を目視で観察し、表面処理の均一性を評価した。このテストピースの表面の処理部分のイオン交換水に対する静止接触角を、自動接触角計「DM−500」(協和界面科学株式会社製)を用いて、添加量10μL、添加6秒後の条件にて測定した。測定は2枚のテストピースを用いて、1枚のテストピース当たり5回行い、10回の測定値の平均値を用いた。
【0076】
親水化処理剤組成物1の組成
本発明の共重合体:0.5質量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:7.5質量%
ミリスチン酸ナトリウム:1質量%、
炭素数12〜16の直鎖アルキル基、エチレンオキサイド平均付加モル数4.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩:1.5質量%
炭素数12〜16の直鎖アルキル基、エチレンオキサイド平均付加モル数10のポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.5質量%
炭素数12〜16の直鎖アルキルポリグルコース(平均糖縮合度1〜2):1.5質量%
ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−酢酸ベタイン:2質量%
炭素数12〜16の直鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:1質量%
クエン酸:0.5質量%
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム:2.5質量%
水:残部
接触角が小さいほど、親水化性能に優れる。実施例1〜10について行った均一性評価と共に、結果を表2及び表3に示す。
【0077】
試験例2(透過率の測定)
実施例1、13〜15の共重合体を用いて、親水化処理剤組成物1及び2を調製し、各親水化処理剤組成物の透過率を測定した。紫外可視分光光度計「UV−2550」(島津製作所製)にて、25℃における波長600nmの光の透過率を測定し、共重合体未添加の溶液の透過率を100%とした時の相対透過率を求めた。親水化処理剤組成物1は、試験例1で用いたものと同じである。親水化処理剤組成物2は、本発明の共重合体0.5質量%を含有した0.1mol/L塩化ナトリウム水溶液である。透過率が大きいほど、本発明の共重合体の溶解性又は分散性に優れる。結果を表3に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
表2及び表3から明らかなように、本発明の共重合体からなる親水化処理剤を含有する親水化処理剤組成物は接触角が小さく、親水化性能に優れる。
また、表3から明らかなように、水溶性重合開始剤を用いた実施例12及び13の親水化処理剤組成物は、溶解性又は分散性に優れ、親水化処理剤組成物の製剤化の汎用性に優れる。