特許第6254865号(P6254865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254865
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】センサ収容体
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/50 20100101AFI20171218BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B62M6/50
   G01L3/10 301R
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-21567(P2014-21567)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147510(P2015-147510A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】能村 敬英
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−297059(JP,A)
【文献】 特開平8−141669(JP,A)
【文献】 特開平9−195761(JP,A)
【文献】 特開2007−71365(JP,A)
【文献】 特開2004−173453(JP,A)
【文献】 特開2014−4856(JP,A)
【文献】 特開2014−4851(JP,A)
【文献】 特開2005−42830(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2460718(EP,A1)
【文献】 特開2000−335474(JP,A)
【文献】 特開2005−121507(JP,A)
【文献】 特開2010−19718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/50
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガーパイプと、該ハンガーパイプ内に固定されるセンサユニットと、から構成され、
前記センサユニットは、クランク軸と、クランク軸の周囲に配設されたトルクセンサと回転センサのいずれか一方もしくは双方からなるセンサと、センサを包囲するセンサカバーと、から構成されているセンサ収容体において、
前記センサカバーの外周面と前記ハンガーパイプの内周面のうち、いずれか一方には突起が配設され、他方には前記クランク軸の軸方向に延在し前記突起が係合する係合溝と該係合溝に連続するガイド溝が設けてあり、
前記センサユニットにおいて、前記センサカバーの端部には前記ハンガーパイプに直接固定される固定部が該センサカバーに対して相対的に回転自在に装着されており、
前記ハンガーパイプの内周面と前記センサユニットの固定部にねじ切りが設けてあり、
前記ハンガーパイプの内周面に前記センサユニットの固定部がねじ込まれて該センサユニットは該ハンガーパイプに固定されるセンサ収容体。
【請求項2】
前記センサからワイヤーハーネスが延設しており、前記ハンガーパイプに開設されたワイヤー孔を介してハンガーパイプの内側から前記ワイヤーハーネスが挿通されてハンガーパイプの外側に所定長さ延設している請求項1に記載のセンサ収容体。
【請求項3】
前記センサカバーの外周面と前記ハンガーパイプの内周面のいずれか一方には2以上のリブが設けてあり、前記ハンガーパイプ内に前記センサユニットを挿入して固定する際に前記2以上のリブがハンガーパイプとセンサユニット双方の芯合わせ作用を有している請求項1または2に記載のセンサ収容体。
【請求項4】
前記ハンガーパイプに前記突起が配設されている場合において、該突起はハンガーパイプに開設されたボルト孔にねじ込まれたボルトである請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば電動アシスト自転車に搭載されてペダルの踏力や回転数を検知するセンサを収容したセンサ収容体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車にて発生するアシスト力は、自転車の速度等に応じた規制があるため、ペダルの踏力を搭載センサにて検知し、検知結果に応じてアシスト力が随時設定される必要がある。また、搭乗者にとって良好な乗り心地(乗りあじ)を創出する観点から、ペダルの踏力のほかにもペダルの回転数を精度よく検知し、適正なアシスト力を発生させる必要がある。
【0003】
通常は、クランクアームが固定されたクランク軸がハンガーパイプに回転自在に挿通され、ハンガーパイプ内において、クランク軸の周囲にトルクセンサが取り付けられている。トルクセンサで検知された検知データはリード線を介してコントローラに送り出され、コントローラにて駆動モータが制御されるようになっている。なお、クランク軸の周囲に取り付けられるセンサとしては、トルクセンサのほかにも回転センサがあり、トルクセンサと回転センサの双方が取り付けられることによって、一層高度な制御が実行可能な電動アシスト自転車も一般に普及されている。
【0004】
ハンガーパイプとセンサの組み付け構成をより詳細に説明すると、センサはセンサカバーに収容されてセンサユニットを構成し、センサユニットとハンガーパイプが組み付けられてセンサ収容体が形成され、このセンサ収容体にクランク軸が挿通されている。
【0005】
このセンサユニットとハンガーパイプの組み付けの一例として、ハンガーパイプにセンサユニットを挿入し、この際に、センサユニットから延びたリード線の束からなるワイヤーハーネスをハンガーパイプに開設されているワイヤー孔に通した後、ハンガーパイプに対してセンサユニットを圧入もしくはねじ込むことによって双方の組み付けをおこなう方法が挙げられる。
【0006】
この組み付け方法では、ワイヤーハーネスをハンガーパイプのワイヤー孔に通した状態でセンサユニットとハンガーパイプの組み付けをおこなう必要があることから、センサユニットはハンガーパイプに対して予め規定された位置に位置決めされなければならない。そこで、センサユニットを構成するセンサカバーの外周面に係合溝を設けておき、ハンガーパイプに対してセンサユニットを位置決めした後、ハンガーパイプに開設されたボルト孔を介してボルトをねじ込み、ボルトの先端を係合溝に係合させて双方の位置決め固定が図られている。
【0007】
このセンサユニットとハンガーパイプの位置決めに関して従来の方法では、ワイヤーハーネスをワイヤー孔に通した後、センサカバーの係合溝とハンガーパイプのボルト孔もしくはボルト孔に既に挿通されているボルト)の位置決めを手探りでおこなっており、したがってこの位置決め作業に手間と時間を要していた。
【0008】
ここで、特許文献1にはトルク検出装置に関する技術が開示されているが、特にその図9,10で示す実施形態において、既述するセンサユニット相当部材とハンガーパイプの位置決めおよびボルトによる双方の組み付けが開示されており、したがって、既述する位置決めに手間と時間を要するといった同様の課題を内在する技術となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−105686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、センサユニットとハンガーパイプの位置決めが容易なセンサ収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明によるセンサ収容体は、ハンガーパイプと、該ハンガーパイプ内に固定されるセンサユニットと、から構成され、前記センサユニットは、クランク軸と、クランク軸の周囲に配設されたトルクセンサと回転センサのいずれか一方もしくは双方からなるセンサと、センサを包囲するセンサカバーと、から構成されているセンサ収容体において、センサカバーの外周面とハンガーパイプの内周面のうち、いずれか一方には突起が配設され、他方には前記突起が係合する係合溝と該係合溝に連続するガイド溝が設けてあるものである。
【0012】
本発明のセンサ収容体は、センサカバーの外周面とハンガーパイプの内周面のうち、いずれか一方には突起が設けられ、他方には突起が係合する係合溝が設けられていることのほかに、この係合溝に連続するガイド溝が設けてあることにより、突起をガイド溝で案内させながら係合溝に導くことで突起と係合溝の係合を容易に実行することができ、センサユニットとハンガーパイプの位置決めを容易におこなうことを可能としたものである。
【0013】
本発明のセンサ収容体の適用例としては、電動アシスト自転車のクランク軸の周囲に配設される適用例のほか、電動アシスト式の足こぎボートのクランク軸の周囲に配設される適用例、発電機の回転軸の周囲に配設される適用例など、その用途は多様である。
【0014】
また、電動アシスト自転車には、別体で成形されたハンガーパイプに車体フレームが溶接等にて接続された構造のほかにも、ハンガーパイプが車体フレームに一体成形された形態(すなわち、ハンガーパイプそのものが存在しない形態)もある。しかしながら、本明細書における「ハンガーパイプ」には、車体フレームに別体に成形されたハンガーパイプのほかにも、ハンガーパイプの存在しない車体フレームにおけるハンガーパイプ相当箇所(クランク軸が挿通されてセンサが搭載される箇所)も包含されるものとする。
【0015】
また、「クランク軸の周囲に配設されたトルクセンサと回転センサのいずれか一方もしくは双方からなるセンサ」とは、トルクセンサのみを搭載する形態、回転センサのみを搭載する形態、トルクセンサと回転センサの双方を並列搭載する形態のいずれかを意味している。トルクセンサのみならず、回転センサを搭載することで、より高度な制御が実現できる。たとえば、自転車が止まっている際に乗員がペダルに足をかけることでトルクの発生があるものの、実際にはアシスト力は一切不要である場合に、回転センサにて回転の有無、回転の状態を検知することでアシスト力の要否やより精緻なアシスト力の特定が可能となる。また、多様なギヤ比の設定の中で、タイヤの回転とクランク軸の回転の双方を確認することで、現在どの段数に入っているのかを確認できる点からも回転センサを併用する効果がある。
【0016】
センサに関してさらに言及すると、このセンサは磁歪式センサ、機械式センサのいずれであってもよい。
【0017】
また、「センサカバーの外周面とハンガーパイプの内周面のうち、いずれか一方には突起が配設され、他方には前記突起が係合する係合溝と該係合溝に連続するガイド溝が設けてある」とは、センサカバーの外周面に係合溝とガイド溝が設けられ、ハンガーパイプの内周面に突起が設けられた形態と、その逆の構成の形態のいずれか一方を意味している。
【0018】
ここで、係合溝に連続するガイド溝の形態としては、係合溝から左右に一定の勾配で延びた1段勾配の形態や、係合溝から左右に比較的急な勾配で延び、さらにそれよりも緩やかな勾配で左右に延びた2段勾配の形態などがあり、その線形も直線のほか、曲線、直線と曲線の組み合わせなど、多様な形状形態が適用できる。
【0019】
たとえば上記する2段勾配の形態によれば、突起を外側の緩い勾配で拾い、この緩い勾配から急勾配に突起を移行させて係合溝に案内することができ、より一層高い位置決め効率が享受できる。
【0020】
また、「突起」には、ボルト孔にねじ込まれるボルトのほか、ハンガーパイプの内周面もしくはセンサカバーの外周面に予め一体成形等された突起などが含まれている。
【0021】
中でも、ハンガーパイプに突起が配設されている場合において、突起はハンガーパイプに開設されたボルト孔にねじ込まれたボルトであるのが好ましい。
【0022】
ハンガーパイプ内にセンサユニットが収容されて双方の位置決めがなされ、かつ、双方の固定が図られることでハンガーパイプ内におけるセンサユニットの回転が抑止されることになるが、ボルトをねじ込む形態であれば、センサユニットの外側寸法(外径)が多様に変化した場合でもボルトによるセンサユニットの固定が可能になることがその理由である。
【0023】
また、センサユニットとハンガーパイプ双方の固定は、ハンガーパイプとセンサユニット双方の端部に固定部を設けておき、ハンガーパイプに対してセンサユニットを圧入して双方の固定部を嵌合させて固定する方法がある。また、別の方法として、ハンガーパイプの端部の固定部とセンサユニットの端部の固定部の双方にねじ切りを設けておき、双方の端部同士をねじ込んで固定する方法がある。
【0024】
中でも、双方の端部同士をねじ込み式でおこなう形態が好ましい。この形態では、センサユニットにおいて、ハンガーパイプに直接固定される固定部とセンサカバーを相対的に回転自在に構成しておくのがよい。固定部のみが回転してハンガーパイプと固定する際にセンサカバーの姿勢は回転することなく保持することができるからである。
【0025】
圧入式の場合は、ハンガーパイプに対して圧入されるセンサユニットを精緻に位置合わせする必要があり、さらに、圧入のための治具や装置が必須となる。それに対し、ねじ込み式の場合は回転治具等の機具を使用する以外にも人力による作業が可能であり、また、ねじ込みに際して双方の精緻な位置決めは必要ない。また、圧入式の場合は、ハンガーパイプからセンサユニットが抜け出さないようにC-リング等を固定部に噛ます必要があるが、ねじ込み式の場合にはそのような別部材は不要である。さらに、メンテナンス等の際にハンガーパイプからセンサユニットを取り外すに当たり、圧入式で固定された場合の取り外しは容易でなく、少なくとも取り外し治具を要する一方で、ねじ込み式の場合はたとえば人力で容易に取り外しが可能である。これらがねじ込み式による固定が好ましい理由である。
【0026】
また、本発明によるセンサ収容体の他の実施の形態は、センサからワイヤーハーネスが延設しており、ハンガーパイプに開設されたワイヤー孔を介してハンガーパイプの内側から該ワイヤーハーネスが挿通されてハンガーパイプの外側に所定長さ延設しているものである。
【0027】
ここで、「ハンガーパイプに開設されたワイヤー孔を介してワイヤーハーネスがハンガーパイプの外側に所定長さ延設している」とは、ハンガーパイプの外側に延設しているワイヤーハーネスがハンガーパイプの外側にあるコントローラ等に通じていることより、ワイヤーハーネスの長さが長過ぎも短過ぎもしない、一定の長さであることを意味している。通常は雨水や泥水等がワイヤー孔を介してハンガーパイプ内に入り込まないようにワイヤー孔はワイヤーハーネスの外径と同程度か若干大きい程度に形成され、さらに、ワイヤー孔の配設位置も下方位置となるように取り付けられている。さらに、コントローラのフレーム取り付け位置も決まっていることから、ハンガーパイプの外側にワイヤーハーネスが所定長さ延設してコントローラに繋がる構成を保証する前提として、センサユニットとハンガーパイプの位置決めは規定位置に精緻におこなわれる必要がある。
【0028】
本実施の形態のセンサ収容体によれば、ハンガーパイプの外側にワイヤーハーネスが所定長さ延設してコントローラに繋がる構成を保証しながら、センサユニットとハンガーパイプの位置決めを規定位置に精緻におこなうことができる。
【0029】
また、センサカバーの外周面とハンガーパイプの内周面のいずれか一方には2以上のリブが設けてあり、ハンガーパイプ内にセンサユニットを挿入して固定する際に前記2以上のリブがハンガーパイプとセンサユニット双方の芯合わせ作用を有している形態が好ましい。
【0030】
センサカバーの外周面とハンガーパイプの内周面のいずれか一方に2以上のリブが設けてあることで、ハンガーパイプにセンサユニットを挿入した際に、双方の芯合わせを自動的におこなうことができる。そのため、双方の芯がずれていて、突起が係合溝に係合できないといった問題は生じ得ない。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から理解できるように、本発明によるセンサ収容体によれば、センサカバーの外周面とハンガーパイプの内周面のうち、いずれか一方には突起が配設され、他方には突起が係合する係合溝と係合溝に連続するガイド溝が設けてあることにより、ガイド溝に沿って突起を係合溝に案内することでハンガーパイプとセンサユニットの位置決めを容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のセンサ収容体を搭載した電動アシスト自転車の側面図である。
図2】本発明のセンサ収容体の分解斜視図である。
図3】(a)、(b)ともに、係合溝に連続するガイド溝の実施の形態を示した模式図であって、突起が案内されている状況をともに示した図である。
図4】本発明のセンサ収容体の斜視図である。
図5図4のV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明のセンサ収容体の実施の形態を説明する。なお、図示例のセンサ収容体は車体フレームと別体に成形されたハンガーパイプを構成要素とするものであるが、車体フレームと一体成形されたハンガーパイプ相当部材を構成要素とするものであってもよいことは勿論のことである。また、図示例のセンサ収容体は、ハンガーパイプにボルトからなる突起が配設され、センサユニットを構成するセンサカバーの外周面に係合溝とガイド溝が形成されたものであるが、ハンガーパイプの内周面に係合溝とガイド溝が形成され、センサユニットを構成するセンサカバーの外周面に突起が配設された形態であってもよいことは勿論のことである。
【0034】
(センサ収容体の実施の形態)
まず、図1を参照して本発明のセンサ収容体を搭載した電動アシスト自転車の構成を概説する。
【0035】
図示する電動アシスト自転車は、前輪W1,後輪W2が車体フレームFを構成するフロントフォークとチェーンステーに取り付けられ、サドルを支持する車体フレームF(シートチューブ)には電動装置用のバッテリーBとコントローラCRが取り付けられている。シートチューブの下端にはハンガーパイプ10が取り付けられ、ハンガーパイプ10にクランク軸CSが挿通され、クランク軸CSの左右にペダルを備えたクランクアームCAが取り付けられている。さらに、クランク軸CSの一端に駆動プーリS1が、後輪W2には従動プーリS2がそれぞれ取り付けられ、これら2つのプーリS1,S2間にベルトが架け渡されて大略構成されている。
【0036】
次に、図2〜5を参照してセンサ収容体の実施の形態をその組み付け方法とともに説明する。なお、図2,4,5では、ハンガーパイプ10と車体フレームFとの接続構造を省略し、ハンガーパイプのみを図示している。
【0037】
センサ収容体100(図4参照)は、図2で示すように、ハンガーパイプ10と、ハンガーパイプ10内に位置決めされた状態で固定されるセンサユニット20から構成される。
【0038】
ハンガーパイプ10は、アルミニウムもしくはその合金からなる筒体であり、筒体にはワイヤーハーネス4が挿通されるワイヤー孔1aと、ボルト2(突起)が螺合されるボルト孔1bが開設されており、さらに、筒体の端部の内周面にはねじ切りを備えた固定部1cがあり、この固定部1cにセンサユニット20がねじ込まれて固定されるようになっている。
【0039】
センサユニット20は、クランク軸CSと、その周囲に配設された磁歪軸5aと検出コイル5bからなる磁歪式のトルクセンサ5と(図5参照)、これらを包囲する樹脂製もしくはアルミニウム製のセンサカバー3と、から大略構成されている。なお、クランク軸CSの左右端CS1にクランクアームCAが取り付けられる。
【0040】
ここで、図5を参照してセンサユニット20の構成をより詳細に説明すると、磁歪式のトルクセンサ5は磁歪軸5aの一端5a1がクランク軸CSにねじ止めされており、したがって磁歪軸5aがクランク軸CSとともに回転するようになっている。一方、磁歪軸5aの他端側には駆動プーリS1が取り付けられており、駆動プーリS1に回転が伝えられるようになっている。
【0041】
また、磁歪軸5aとセンサカバー3はベアリング6を介して相対回転自在に組み付けられている。なお、回転センサをさらに搭載する場合は、磁歪式のトルクセンサ5の側方に回転センサが併設されることになる。
【0042】
クランクアームからクランク軸CSにトルクが作用すると、磁歪軸5aにトルクの大小に応じた捩り力が生じる。磁歪軸5aに捩り力が生じると、磁歪軸5aに止着されている不図示の磁歪箔にトルクの大小に応じた歪みが生じることになる。磁歪箔に歪が生じると、磁歪箔を構成する磁性材料の透磁率が変化し、透磁率の変化によって検出コイル5bに誘起されるインダクタンスが変化する。検出コイル5bに誘起されるインダクタンスの変化を検出することにより、クランク軸CSに作用するトルクの検出をおこなうことができる。
【0043】
図2に戻り、センサカバー3の端部には、ハンガーパイプ10の固定部1cに直接固定されるねじ切りを備えた固定部3cがセンサカバー3に対して相対回転自在(Y方向)に装着されている。
【0044】
また、センサカバー3の外周面には、ハンガーパイプ10のボルト孔1bに螺合されたボルト2が係合する係合溝3aと、この係合溝3aに連続するガイド溝3bが形成されている。
【0045】
ここで、ガイド溝3bは、図3aで詳細に示すように、係合溝3aから左右に比較的急な勾配(角度θ2)で延びるテーパー部3b2と、さらにそれよりも緩やかな勾配(角度θ1)で左右に延びるテーパー部3b1からなる2段勾配の溝である。
【0046】
なお、図3bで示すように、係合溝3aから左右に一定の勾配で延びるテーパー部3b’からなる1段勾配の溝であってもよい。また、図示を省略するが、曲線から形成されたガイド溝を適用してもよい。
【0047】
図2に戻り、ハンガーパイプ10にボルト2を螺合しておき、センサユニット20をハンガーパイプ10に挿入していく(X1方向)。
【0048】
この挿入に当たり、検出コイル5bから延びて端部にコネクタ4bを備えたリード線4aの束からなるワイヤーハーネス4を、ハンガーパイプ10の内側からワイヤー孔1aを介して外側に引き出す。
【0049】
ワイヤーハーネス4を外側に引き出した後、このワイヤーハーネス4と検出コイル5bとの接続部をワイヤー孔1aに対して所定の位置関係に合わせるべく、また、このワイヤーハーネス4がハンガーパイプ10から所定長さ(図4で示す所定長さt)だけ延びた状態を形成するべく、ハンガーパイプ10に対するセンサユニット20の位置決めをおこなう。
【0050】
この位置決めに際し、センサユニット20を構成するセンサカバー3の外周面には2以上(たとえば3つの)のリブ3dがセンサカバー3の周方向にたとえば120度間隔に設けてあり、したがって、センサユニット20をハンガーパイプ10に挿入した際に自動的にセンサユニット20とハンガーパイプ10双方の芯合わせが実現できる。
【0051】
ワイヤーハーネス4をワイヤー孔1aから引き出した際に、ハンガーパイプ10に対するセンサユニット20の粗い位置合わせは既にできており、図3aで示すように、勾配の緩い左右いずれかのテーパー部3b1の途中位置にボルト2が位置している。
【0052】
次に、ハンガーパイプ10の固定部1cに対してセンサユニット20の固定部3cをねじ込むと、図3aで示すように、テーパー部3b1がボルト2に摺接した状態でボルト2からの反力を受けることでセンサカバー3がその周方向に動き、センサカバー3が動くことでボルト2はテーパー部3b1からテーパー部3b2に移行する(Z方向)。センサユニット20の固定部3cをさらにねじ込むと、センサカバー3がさらにその周方向に動くことでボルト2は係合溝3aに導かれ、ハンガーパイプ10に対するセンサユニット20の位置決めが実現される。すなわち、この状態において、ワイヤーハーネス4と検出コイル5bとの接続部をワイヤー孔1aに対して所定の位置関係に合わせることができ、また、ワイヤーハーネス4がハンガーパイプ10から所定長さだけ延びた状態が形成される。
【0053】
このようにハンガーパイプ10に対してセンサユニット20を所定の位置に位置決めした状態で、センサユニット20の固定部3cをハンガーパイプ10の固定部1cにねじ込み、図2で示すようにハンガーパイプ10の他端からワン7aを挿入することにより(X2方向)、ハンガーパイプ10とセンサユニット20が固定されてセンサ収容体100が形成される。
【0054】
なお、図3bで示す1段勾配の形態においても、同様にハンガーパイプ10に対するセンサユニット20のねじ込みにより、自動的にハンガーパイプ10に対してセンサユニット20を所定の位置に位置決めした状態で双方の固定が図られる。
【0055】
このように、図示するセンサ収容体100によれば、ハンガーパイプ10のボルト孔1bに螺合されたボルト2からセンサカバー3の外周面に形成されたガイド溝3bが反力を受け、この反力によってセンサカバー3がその周方向に動き、センサカバー3が動くことでボルト2をガイド溝3bに沿って移動させて係合溝3aに導くことにより、ハンガーパイプ10に対するセンサユニット20の精緻な位置決めを容易かつ短時間におこなうことができる。
【0056】
また、このセンサ収容体100は、センサカバー3の外周面に対して、係合溝3aに連続するガイド溝3bを設けた改良構造ゆえに、センサ収容体100の製作コストを何ら高騰させるものではない。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1a…ワイヤー孔、1b…ボルト孔、1c…固定部、2…突起(ボルト)、3…センサカバー、3a…係合溝、3b…ガイド溝、3c…固定部、3d…リブ、4…ワイヤーハーネス、4a…リード線、4b…コネクタ、5…トルクセンサ(磁歪式のトルクセンサ)、5a…磁歪軸、5a1…固定端、5b…検出コイル、6…ベアリング、10…ハンガーパイプ、20…センサユニット、100…センサ収容体、F…車体フレーム、S1…駆動プーリ、S2…従動プーリ、B…バッテリー、CR…コントローラ、CS…クランク軸、CA…クランクアーム
図1
図2
図3
図4
図5