(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254893
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20171218BHJP
H01R 13/41 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
H01R31/08 Q
H01R13/41
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-85425(P2014-85425)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-207352(P2015-207352A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】西山 典孝
(72)【発明者】
【氏名】永野 雅生
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 隆人
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−160482(JP,U)
【文献】
実開昭61−194282(JP,U)
【文献】
実開平02−101474(JP,U)
【文献】
特開平06−349555(JP,A)
【文献】
特開平06−176832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 31/08
H01R 13/40〜13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続された複数の端子と、
前記複数の端子を互いに電気的に接続するバスバと、
前記端子を収容して位置決めする複数の端子収容室と前記バスバを収容するバスバ収容室とを有して形成されたハウジングとを備え、
前記バスバは、前記端子に形成される弾性変形可能な接点部と接触され、同一方向に延びる複数の接触片と、該複数の接触片を連結する連結部と、該連結部の幅方向の両端部から前記接触片の延出方向にそれぞれ延びる支持部とを有して形成され、該支持部には、前記バスバ収容室に係止される突起が設けられてなり、
前記接触片が前記端子の接点部と接触する位置と、前記係止突起が前記バスバ収容室に係止される位置とが、前記ハウジングの長手方向で一致するように設定されてなるコネクタ。
【請求項2】
前記バスバは、同一平面上に形成されてなる請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに係り、特に電線が接続された複数の端子を互いに接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体には、ワイヤーハーネス等の複数の電線の端末同士を電気的に接続するコネクタ(例えば、ジョイントコネクタ)が搭載されている。この種のコネクタは、例えば、電線が接続された複数の雌型の端子と、これらの端子同士を電気的に接続するバスバと、樹脂製のハウジングとを備える。ハウジングは、端子を収容する複数の端子収容室と、バスバを収容するバスバ収容室とを有して形成される。バスバは、同一方向に延びる複数の接触片を連結部で連結して形成され、各接触片には、端子の一端部に形成された弾性変形可能な接点部が接触するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、この種のコネクタのハウジングにバスバが収容された状態を示す水平断面図、
図6は、ハウジングに収容されたバスバと端子とが接続される状態を示す縦断面図である。
図5に示すように、バスバ51は、複数の接触片52と、これらを連結する連結部53とを有して形成され、連結部53の幅方向の両側には、突起54が設けられる。バスバ51は、ハウジング55のバスバ収容室56に挿入されるときに、突起54をバスバ収容室56の内壁に押し付けながら前進し、停止位置で抜け止めがなされる。
【0004】
一方、ハウジング55に形成された複数の端子収容室57には、それぞれ端子58が挿入される。
図6に示すように、端子58は、端子収容室57の設定位置でランス59に位置決めされるとともに、先端側の角筒状の接点部60にバスバ51の接触片52が挿入される。接点部60に挿入された接触片52は、接点部60の内側に折り返された弾性アーム61に押圧される。その結果、各端子58とバスバ51が接続され、端子58同士がバスバ51を介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−174432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のコネクタに使用されるハウジングは、合成樹脂等で形成されるため、温度が変化したときに、膨張や収縮による体積変化、つまり寸法変化が生じることがある。特にハウジングの長手方向(軸方向)の寸法は、他の寸法と比べて比較的大きく変化する。
【0007】
例えば、
図5、6のコネクタは、ハウジング55の長手方向において、バスバ51の突起54の位置P1と、バスバ51が端子58の接点部60(弾性アーム61)と接触する位置P2との距離が比較的離れた位置に配置される。このため、ハウジング55に膨張や収縮による体積変化が生じると、P1とP2間の距離は、その距離の体積変化率に応じた寸法変化が生じ、P1に対してP2が相対移動する。すなわち、バスバ51と端子58との接触部分の位置ずれが生じる。その結果、バスバ51と端子58との間で摩擦が生じ、これらの表面のメッキが剥がれることで、バスバ51や端子58に錆が発生し、或いは、接触部分の電気抵抗が増大するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ハウジングの体積変化に伴う端子とバスバとの接触部分の位置ずれを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のコネクタは、電線が接続された複数の端子と、複数の端子を互いに電気的に接続するバスバと、端子を収容して位置決めする複数の端子収容室とバスバを収容するバスバ収容室とを有して形成されたハウジングとを備え、バスバは、端子に形成される弾性変形可能な接点部と接触され、同一方向に延びる複数の接触片と、この複数の接触片を連結する連結部と、この連結部の幅方向の両端部から接触片の延出方向にそれぞれ延びる支持部とを有して形成され、支持部には、バスバ収容室に係止される突起が設けられてなり、接触片が端子の接点部と接触する位置と、係止突起がバスバ収容室に係止される位置とが、ハウジングの長手方向で一致するように設定されてなるものとする。
【0010】
このように構成すれば、ハウジングの体積変化の影響を少なくできるから、端子とバスバとの接触状態を安定させることができ、端子とバスバの位置ずれを抑制することができる。また、バスバは、接触片と異なる支持部に突起を設けているから、突起を所望の位置に設けることが可能となり、バスバの設計自由度を高めることができる。
【0011】
この場合において、バスバは、同一平面上に形成されてなるものとする。
【0012】
これによれば、バスバの厚みを増加させることなく、所望の位置に突起を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハウジングの体積変化に伴う端子とバスバとの接触部分の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明が適用されるコネクタの分解斜視図である。
【
図2】本発明が適用されるコネクタの斜視断面図である。
【
図4】本発明が適用されるコネクタの縦断面図である。
【
図5】従来のコネクタのハウジングにバスバを組み付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用されてなるコネクタの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明が適用されるコネクタの分解斜視図である。
図2はコネクタの組み立て後の部分断面図であり、
図1のコネクタと上下を逆転させた状態を表している。
図1の矢印Xは、コネクタの前後方向(軸方向、長手方向)を示し、矢印Yは、コネクタの幅方向を示し、矢印Zは、コネクタの厚み方向を示す。なお、これらの定義は、適宜他の図面の説明にも適用する。
【0016】
本実施形態のコネクタ10は、バスバ11と、電線が接続された複数(4個)の雌型の端子12と、リテーナ13と、樹脂性のハウジング14とを備える。バスバ11は、複数の端子12を互いに電気的に接続するための金属製の導体である。ハウジング14は、バスバ11を収容するバスバ収容室15と端子12を収容する複数(4個)の端子収容室16とを有して形成される。
【0017】
ハウジング14は、前端部と後端部と側面部にそれぞれ開口を有して角筒状に形成され、前端部の開口から内側に向かってバスバ収容室15が形成され、後端部の開口から内側に向かって端子収容室16が形成される。バスバ収容室15と端子収容室16は、互いにハウジング14の長手方向で連通して形成される。端子収容室16は、隣同士が隔壁17で仕切られてハウジング14の幅方向に配列して設けられる。ハウジング14の側面部の開口は、各端子収容室16を臨むように設けられ、リテーナ13を組み付け可能に形成される。
【0018】
端子12は、金属製の板材をプレス加工して形成される。この端子12は、バスバ11と接触する接点部18と、電線19の端末の導体部分を圧着する圧着部20と、電線19の絶縁部分を圧着するバレル部21とを有して形成される。接点部18は、角筒状の筒体の内側に弾性変形可能な弾性アーム22を折り返して形成される。弾性アーム22は、バスバ11の挿入経路で山形に折り曲げて形成され、この折り曲げられた頂部23をバスバ11に押し当てて押圧可能になっている。なお、接点部18は、このような構成に限られず、バスバ11を弾性変形可能に押圧するように形成されていればよい。
【0019】
このようにして形成される各端子12は、それぞれ端子収容室16の設定位置まで挿入されると、端子収容室16の内壁から各端子12の挿入経路に延出するランス(後述)に係止される。ランスに係止された端子12は、端子収容室16の設定位置に位置決めされる。また、各端子12は、端子収容室16に位置決めされた状態で、ハウジング14の側面部の開口から組み込まれたリテーナ13に接点部18の後端が係止される。これにより、各端子12は、ランスとリテーナ13で2重に係止された状態となる。なお、リテーナ13はコネクタの構成部品として必須のものではない。
【0020】
バスバ11は、
図3に示すように、平板状の金属板材をプレス加工して形成される。このバスバ11は、同一方向に延びる複数(4本)の接触片24と、これらの接触片24を互いに連結する連結部25と、この連結部25の幅方向の両端部から接触片24の延出方向にそれぞれ延びる1対の支持部26とを有しており、これらが同一平面上に形成される。
【0021】
接触片24は、連結部25の一端面からタブ状に延出する細長の部材であり、連結部25の幅方向に設定間隔で並設される。接触片24の先端部27は、先端面に向かって断面積が減少する先窄みとなっている。各接触片24は、それぞれ端子12の接点部18に嵌入され、接触部分28に相手部材(本実施形態では、弾性アーム22の頂部23)が接触するようになっている。なお、本実施形態では、各接触片24の寸法と形状がいずれも同一であるが、寸法や形状が異なる接触片を設けることもできる。
【0022】
1対の支持部26は、接触片24の配列方向の両側に設けられ、接触片24と比べて幅方向の厚みが大きく、接触片24よりも高い剛性を有している。各支持部26の外側の側面、つまり、接触片24と反対側の側面には、それぞれ2つの突起29a,29bが突出して設けられる。突起29a,29bは、平面視するとほぼ直角三角形をなしており、支持部26の延出方向に斜面が形成される。また、突起29a,29bは、接触片24の延出方向(ハウジング11の前後方向)において、これらの中央が、各接触片24の接触部分28と同じ位置になるように位置付けられている。バスバ11は、各接触片24の突起29a,29bを含めた最大幅寸法L1が、バスバ収容室15の幅方向の内法寸法よりも大きく設定される。
【0023】
次に、バスバ11と端子12の組付手順と組付後の構成について、
図2、4を参照して説明する。
図4は、
図2に対応するコネクタ11全体の縦断面図である。
図2に示すように、バスバ収容室は、互いに仕切られた複数の空間が幅方向に並設されている。バスバ11は、各接触片24と支持部26とがそれぞれ別々の空間に挿入される。
【0024】
バスバ11は、支持部26がバスバ収容室15の内壁に突起29a,29bを押し付けながら停止位置(バスバ収容室15の奥の端面とバスバ11の支持部26の先端部とが当接する位置)まで挿入される。この場合、バスバ収容室15の内壁は、突起29a,29bが通過するときに凹状に変形するが、通過後は変形がある程度復帰するため、突起29a,29bが内壁に係止される。これにより、バスバ11は、突起29a,29bを介してハウジング14に保持される。なお、バスバ収容室15の内壁には、突起29a,29bが係合する凹部が形成されていてもよい。
【0025】
続いて、電線19が接続された各端子12がハウジング14の端子収容室16に挿入される。
図4に示すように、各端子12は、端子収容室16の停止位置において、接点部18にバスバ11の接触片24が嵌入されるとともに、接点部18がランス30を乗り越えて端子収容室16に位置決めされる。そして、バスバ11の各接触片24は、接点部18の弾性アーム22に押し付けられる格好で、各端子12に接続される。これにより、各端子12はバスバ11を介して互いに電気的に接続される。なお、ハウジング14には、リテーナ13が組み付けられることで、端子12の位置決めがより確実になされる。
【0026】
図2、4は、ハウジング14の長手方向において、バスバ11がハウジング14に固定される位置(突起29a,29bがバスバ収容室15に係止される位置)をP1、バスバ11の接触片24(接触部分28)が端子12の接点部18(頂部23)と接触する位置をP2として表している。本実施形態のコネクタ10は、P1とP2とがハウジング14の長手方向で一致するように設定される。
【0027】
ここで、P1は、ハウジング14の長手方向に1個の突起29が設けられるときは、その突起29の位置を意味するが、ハウジング14の長手方向に複数の突起29が設けられるときは、長手方向の両端の突起29の内側の領域を意味するものとする。本実施形態では、2個の突起29a,29bの中央の位置をP1として設定する。
【0028】
一方、P2は、バスバ11の接触片24と端子12の接点部18とが1箇所で接触するときは、その接触部分の位置を意味するが、ハウジング14の長手方向の複数箇所で接触するときは、長手方向の両端の接触部分の内側の領域を意味するものとする。本実施形態では、接触片24の接触部分28の位置をP2として設定する。
【0029】
以上述べたように、本実施形態のコネクタ10は、バスバ11が、連結部25から接触片24の延出方向に延びる支持部26に突起29を有して形成されるから、P1とP2をハウジング14の長手方向で一致させることができる。これによれば、ハウジング14の長手方向でP1とP2との距離がゼロになり、ハウジングの体積変化に伴うP1とP2の相対移動距離を短くすることができるから、バスバ11と端子12との位置ずれが抑制され、これらの接触状態を安定させることができる。したがって、バスバ11と端子12との摩擦によるメッキの剥がれを防ぐことができ、錆の発生や電気抵抗の増加を防ぐことができるから、コネクタ10の電気的な信頼性を高めることができる。
【0030】
また、本実施形態のバスバ11は、接触片24とは別の支持部26に突起29を設けているから、突起29を所望の位置に設けることができ、バスバ11と端子12の設計自由度を高めることができる。また、このような支持部26に突起29を設けることで、例えば、突起29と端子12との干渉を避けるために、端子12の構造が複雑になるのを防ぐことができるから、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態のバスバ11は、同一平面上に形成されるから、バスバ11の厚みを変えることなく、所望の位置に突起29を設けることができる。したがって、コネクタ10の厚みを増やすことなく、コネクタ10の電気的な信頼性を確保することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記の実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記の実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0033】
例えば、上記の実施形態では、バスバ11の1対の支持部26にそれぞれ2個の突起29a,29bを設ける例を説明したが、突起29は、各支持部26に1個ずつ設けてもよいし、3個以上設けてもよい。また、上記の実施形態では、各接触部24の寸法と形状がいずれも同一に設定させているが、互いに異なる寸法や形状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 コネクタ
11 バスバ
12 端子
14 ハウジング
15 バスバ収容室
16 端子収容室
18 接点部
19 電線
24 接触片
25 連結部
26 支持部
29a,29b 突起