特許第6254902号(P6254902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 四国化成工業株式会社の特許一覧

特許6254902トリアジン化合物、該化合物の合成方法およびエポキシ樹脂組成物
<>
  • 特許6254902-トリアジン化合物、該化合物の合成方法およびエポキシ樹脂組成物 図000020
  • 特許6254902-トリアジン化合物、該化合物の合成方法およびエポキシ樹脂組成物 図000021
  • 特許6254902-トリアジン化合物、該化合物の合成方法およびエポキシ樹脂組成物 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254902
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】トリアジン化合物、該化合物の合成方法およびエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/18 20060101AFI20171218BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20171218BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20171218BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171218BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20171218BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C07D251/18 ECSP
   C08G59/50
   H01L23/30 R
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09K3/10 L
   C08L63/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-104834(P2014-104834)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-218152(P2015-218152A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熊野 岳
(72)【発明者】
【氏名】溝部 昇
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−210076(JP,A)
【文献】 特開昭61−233013(JP,A)
【文献】 特開昭63−105080(JP,A)
【文献】 特開2002−201448(JP,A)
【文献】 特開平11−144527(JP,A)
【文献】 特開昭62−100462(JP,A)
【文献】 特開2004−010487(JP,A)
【文献】 特開2004−189954(JP,A)
【文献】 特開2014−210732(JP,A)
【文献】 特開2015−131772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)または化学式(II)で示されるトリアジン化合物
【化1】
(式中、RおよびRは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。RおよびRは水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す。但し、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよく、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよい。nは1〜20の整数を表す。)
【化2】
(式中、RおよびRは前記と同様である。Rはメチレン基、酸素原子または硫黄原子を表す。但し、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよい。pおよびqは0〜20の整数を表し、rは1〜16の整数を表す。)
【請求項2】
化学式(III)で示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンと、化学式(IV)で示されるチオール化合物を反応させることを特徴とする化学式(I)で示されるトリアジン化合物の合成方法。
【化3】
【化4】
(式中、RおよびRは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。RおよびRは水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す。但し、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよく、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよい。nは1〜20の整数を表す。)
【化5】
(式中、R〜Rおよびnは、前記と同様である。)
【請求項3】
学式(III)で示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンと、化学式(V)で示されるチオール化合物を反応させることを特徴とする化学式(II)で示されるトリアジン化合物の合成方法。
【化6】
【化7】
(式中、RおよびRは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。Rはメチレン基、酸素原子または硫黄原子を表す。但し、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよく、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよい。pおよびqは0〜20の整数を表し、rは1〜16の整数を表す。)
【化8】
(式中、R、RおよびRと、p、qおよびrは、前記と同様である。)
【請求項4】
請求項1記載のトリアジン化合物または、請求項2もしくは請求項3記載の合成方法により合成されるトリアジン化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1記載のトリアジン化合物または、請求項2もしくは請求項3記載の合成方法により合成されるトリアジン化合物を含有することを特徴とする接着剤用、半導体封止剤用またはシール剤用エポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なトリアジン化合物、該化合物の合成方法およびエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等のポリマーは、熱硬化性であって且つ耐腐食性、電気絶縁性に優れているため、電子部品やプリント基板関連の分野において、接着剤、導電性ペースト、レジストインキや、封止材、絶縁材、基板用マトリックス材等の原料として、広く使用されている。
しかしながら、このようなポリマーは、マイグレーションを抑制する機能、即ち絶縁材上の配線(回路)や電極を構成する金属が、高湿度の環境下において、電位差により絶縁材上を移行する現象を抑える機能に乏しいため、電子部品やプリント基板の絶縁不良を招来すると云う問題があった。
また、それらのポリマーと、銅、銀、鉄、アルミ、パラジウム、ニッケル等の金属材料やガラス基板等の無機材料との、更なる密着性の改善も求められていた。
【0003】
このような課題を解決するための添加剤として、種々の物質が使用されているが、トリアジン骨格を有する物質が、前記のマイグレーションの抑制や、種々の金属との密着性の改善に有効であるとされている。
例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンや、その類縁体を用いる方法が、鎌形らにより提案されている(非特許文献1、特許文献1〜3)。
しかしながら、これらの物質は結晶性が高いために、ポリマーやポリマーの希釈に使用される有機溶剤との相溶性に乏しいと云う難点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電子情報通信学会論文誌 C, Vol.J69-C, No.1, 126-130頁(1986年)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−53531号公報
【特許文献2】特公昭63−54300号公報
【特許文献3】特公平1−19834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリマーや有機溶剤との相溶性に優れるトリアジン化合物、該化合物の合成方法および該化合物を含有するエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スルフィド(チオエーテル)結合を有するトリアジン化合物とすることにより、所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、第1の発明は、化学式(I)または化学式(II)で示されるトリアジン化合物である。
【0008】
【化1】
(式中、RおよびRは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。RおよびRは水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す。但し、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよく、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよい。nは1〜20の整数を表す。)
【0009】
【化2】
(式中、RおよびRは前記と同様である。Rはメチレン基、酸素原子または硫黄原子を表す。但し、Rが1分子中に複数ある場合、複数のRは互いに独立して同一または異なっていてもよい。pおよびqは0〜20の整数を表し、rは1〜16の整数を表す。)
【0010】
第2の発明は、化学式(III)で示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンと、化学式(IV)で示されるチオール化合物を反応させることを特徴とする前記化学式(I)で示されるトリアジン化合物の合成方法である。
【0011】
【化3】
【0012】
【化4】
(式中、R〜Rおよびnは、前記と同様である。)
【0013】
第3の発明は、前記化学式(III)で示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンと、化学式(V)で示されるチオール化合物を反応させることを特徴とする前記化学式(II)で示されるトリアジン化合物の合成方法である。
【0014】
【化5】
(式中、R、RおよびRと、p、qおよびrは、前記と同様である。)
【0015】
第4の発明は、第1の発明のトリアジン化合物または、第2の発明もしくは第3の発明の合成方法により合成されるトリアジン化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0016】
第5の発明は、第1の発明のトリアジン化合物または、第2の発明もしくは第3の発明の合成方法により合成されるトリアジン化合物を含有することを特徴とする接着剤用、半導体封止剤用またはシール剤用エポキシ樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトリアジン化合物を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等のポリマーの添加剤として使用した場合には、当該トリアジン化合物がポリマー中に溶解または均一に分散して、電子部品やプリント基板等のマイグレーションの防止や、電子部品やプリント基板を構成する金属材料および無機材料と、ポリマーとの密着性を高める効果を発揮することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、前記の化学式(I)または化学式(II)で示されるトリアジン化合物であり、分子中にスルフィド(チオエーテル)結合を有する。
【0019】
化学式(I)で示されるトリアジン化合物の例としては、
2,4−ジアミノ−6−[2−(アミノメチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(2−アミノエチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジ、
2,4−ジアミノ−6−[2−(3−アミノプロピルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(4−アミノブチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(5−アミノペンチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(6−アミノヘキシルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(8−アミノオクチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(10−アミノデシルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(18−アミノオクタデシルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(N,N−ジメチルアミノメチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[5−(N,N−ジメチルアミノ)ペンチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[6−(N,N−ジメチルアミノ)ヘキシルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[8−(N,N−ジメチルアミノ)オクチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[10−(N,N−ジメチルアミノ)デシルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[18−(N,N−ジメチルアミノ)オクタデシルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0020】
化学式(II)で示されるトリアジン化合物の例としては、
2,4−ジアミノ−6−[2−(メルカプトメチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(3−メルカプトプロピルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(4−メルカプトブチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(5−メルカプトペンチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(6−メルカプトヘキシルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(8−メルカプトオクチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(10−メルカプトデシルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−[2−(18−メルカプトオクタデシルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[2−(2−メルカプトエトキシ)エチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−(2−{2−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]エチルチオ}エチル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジアミノ−6−{2−[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0021】
これらのトリアジン化合物は、前記の化学式(III)で示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンと、前記の化学式(IV)または化学式(V)で示されるチオール化合物を、適量の反応溶媒中において、適宜の反応温度および反応時間にて反応させることにより合成することができる。
【0022】
化学式(IV)で示されるチオール化合物の例としては、
メルカプトメチルアミン、
2−メルカプトエチルアミン、
3−メルカプトプロピルアミン、
4−メルカプトブチルアミン、
5−メルカプトペンチルアミン、
6−メルカプトヘキシルアミン、
8−メルカプトオクチルアミン、
10−メルカプトデシルアミン、
18−メルカプトオクタデシルアミン、
N,N−ジメチルメルカプトメチルアミン、
N,N−ジメチル−2−メルカプトエチルアミン、
N,N−ジメチル−3−メルカプトプロピルアミン、
N,N−ジメチル−4−メルカプトブチルアミン、
N,N−ジメチル−5−メルカプトペンチルアミン、
N,N−ジメチル−6−メルカプトヘキシルアミン、
N,N−ジメチル−8−メルカプトオクチルアミン、
N,N−ジメチル−10−メルカプトデシルアミン、
N,N−ジメチル−18−メルカプトオクタデシルアミン
等が挙げられる。
【0023】
また、化学式(V)で示されるチオール化合物の例としては、
メタンジチオール、
1,2−エタンジチオール、
1,3−プロパンジチオール、
1,4−ブタンジチオール、
1,5−ペンタンジチオール、
1,6−ヘキサンジチオール、
1,8−オクタンジチオール、
1,10−デカンジチオール、
1,18−オクタデカンジチオール、
ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、
1,2−ビス(2−メルカプトエトキシ)エタン、
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド等が挙げられる。
【0024】
前記の反応溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤や、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。
【0025】
前記の反応温度については、室温〜100℃の範囲内で適宜設定することができる。また、前記の反応時間については、設定した反応温度に応じて決定されるが、0.5〜24時間とすることが好ましく、1〜6時間とすることがより好ましい。
【0026】
本発明のトリアジン化合物は、硬化剤と共に、更に必要に応じて硬化剤および硬化促進剤(硬化触媒)と共に、エポキシ化合物に配合して、エポキシ樹脂組成物とすることができる。
前記のエポキシ化合物は、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有していればよいが、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有する物質と、分子内に1つのエポキシ基を有する物質の混合物であってもよい。
【0027】
この場合における本発明のトリアジン化合物の配合量は、エポキシ化合物100重量部に対して、0.01〜150重量部の割合とすることが好ましく、0.1〜50重量部の割合とすることがより好ましい。
そして、硬化剤の配合量は、エポキシ化合物100重量部に対して、0.01〜300重量部の割合とすることが好ましく、0.1〜200重量部の割合とすることがより好ましい。
また、硬化促進剤の配合量は、エポキシ化合物100重量部に対して0.01〜2.0重量部の割合とすることが好ましく、0.1〜0.5重量部の割合とすることがより好ましい。
【0028】
前記のエポキシ化合物の例としては、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂、
フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、
脂環式エポキシ樹脂、
3′,4′−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのような環状脂環式エポキシ樹脂、
1,3,4,6−テトラグリシジルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートやヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環状エポキシ樹脂、
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
脂肪族系エポキシ樹脂、
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、
ビスフェノールS型エポキシ樹脂、
ビフェニル型エポキシ樹脂、
ジシクロ環型エポキシ樹脂、
ナフタレン型エポキシ樹脂や
ハロゲン化エポキシ樹脂等の他、
炭素−炭素二重結合およびグリシジル基を有する有機化合物と、SiH基を有するケイ素化合物との、ヒドロシリル化付加反応により得られるエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物(例えば、特開2004−99751号公報や特開2006−282988号公報に開示されたエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)が挙げられる。
なお、ここで云うエポキシ樹脂とは、硬化前のエポキシ化合物を指す。
【0029】
前記の硬化剤の例としては、
フェノール性水酸基を有する化合物、
酸無水物や
アミン類の他、
メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂末端メルカプト化合物等のメルカプタン化合物、
トリフェニルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン等の有機ホスフィン系化合物、
芳香族ホスホニウム塩、
芳香族ジアゾニウム塩、
芳香族ヨードニウム塩、
芳香族セレニウム塩等が挙げられる。
【0030】
前記のフェノール性水酸基を有する化合物の例としては、
ビスフェノールA、
ビスフェノールF、
ビスフェノールS、
テトラメチルビスフェノールA、
テトラメチルビスフェノールF、
テトラメチルビスフェノールS、
テトラクロロビスフェノールA、
テトラブロモビスフェノールA、
ジヒドロキシナフタレン、
フェノールノボラック、
クレゾールノボラック、
ビスフェノールAノボラック、
臭素化フェノールノボラック、
レゾルシノール等が挙げられる。
【0031】
前記の酸無水物の例としては、
メチルテトラヒドロ無水フタル酸、
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、
ヘキサヒドロ無水フタル酸、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、
無水トリメリット酸、
ナジック酸無水物、
ハイミック酸無水物、
メチルナジック酸無水物、
メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、
メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0032】
前記のアミン類の例としては、
ジエチレントリアミン、
トリエチレンテトラミン、
ヘキサメチレンジアミン、
ダイマー酸変性エチレンジアミン、
4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、
4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等や、
2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
【0033】
前記の硬化促進剤の例としては、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物、
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、
トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、
テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオネート等のホスホニウム化合物、
テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5−テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、
酢酸鉛、オクチル酸錫、ヘキサン酸コバルト等の脂肪族カルボン酸金属塩等が挙げられる。
なお、これらの物質のうちの一部は、前述の硬化剤としても使用される。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて非晶性シリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレー、タルク、ケイ酸カルシウム、酸化チタン等の無機充填材、セルロース、ガラス繊維、ボロン繊維、炭素繊維等の繊維状充填材、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化鉄、金、銀、アルミニウム粉、鉄粉、ニッケル、銅、亜鉛、クロム、半田、ナノサイズの金属結晶、金属間化合物等の導電性充填材、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の各種ポリマーの他、
エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族ポリオール、脂肪族または芳香族カルボン酸化合物、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、シラン系等のカップリング剤、無機充填材の表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、耐衝撃性改良剤、揺変性付与剤、界面活性剤、表面張力低下剤、消泡剤、沈降防止剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、離型剤、蛍光剤等の添加剤を配合することができる。
【0035】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、該エポキシ樹脂組成物の溶剤(溶液)化や粘度調整の為に、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶剤、ブチルグリシジルエーテル、N,N′−グリシジル−o−トルイジン、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の反応性希釈剤、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジベート、石油系溶剤等の非反応性の希釈剤を配合することができる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その調製方法に特に制限はなく、前述の各成分を所定量計り取って撹拌混合することにより調製される。例えば、予備混合の後、ロール混練機、ニーダーや押出機等を用いて、混合あるいは溶融混練することにより調製することもできる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化方法に特に制限はなく、密閉式硬化炉や連続硬化が可能なトンネル炉等の従来公知の硬化装置を使用することができる。加熱源についても特に制約されることなく、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法を採用することができる。硬化温度および硬化時間は、適宜設定すればよい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物を使用する用途に特に制限はなく、樹脂製材料が使用される様々な分野、製品に適用することが可能であり、電気・電子材料用途、建築用途、土木用途、自動車用途、医療材料用途等に広く使用できる。
【0039】
例えば、電気・電子材料用途における例としては、接着剤、シール材、封止材、絶縁材料、熱伝導性材料、ホットメルト材料、塗料、ポッティング剤等が挙げられるが、より具体的には、プリント配線基板、層間絶縁膜、配線被覆膜等の電子部品の封止材料や層形成材料、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等の表示装置の形成材料、レジスト材料、バッファーコート膜等の半導体装置の形成材料、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等の光学部品の形成材料が挙げられる。
【0040】
また、建築用途における材料の例としては、各種金属パネル・サイディングボード等の外装材の目地用シール材、コーティング材、プライマー等、外装材・下地材・天井材と内装材の間に使用するシール材、接着剤、注入材、制振材、防音材、電磁波遮蔽用導電性材料、パテ材等、外壁材・下地材へのタイル・石材接着用の接着剤、各種床への木質フローリング材・高分子材料系床シート・床タイル接着用の接着剤、粘着剤等、各種外装材・内装材のクラック補修用注入材等が挙げられ、土木用途における材料の例としては、道路・橋梁・トンネル・防波堤・各種コンクリート製品の目地用シール材、コーティング材、プライマー、塗料、注入材、パテ材、型取材、吹付材等が挙げられ、自動車用途における材料の例としては、自動車ボディーのシール材、コーティング材、緩衝材、制振材、防音材、吹付材等、自動車内装用の接着剤、粘着材、コーティング材、発泡材料等、自動車部品のシール材、接着剤等、トラック・バス等の各種鋼板継ぎ目用のシール材、接着剤、コーティング材等が挙げられ、医療材料用途における例としては、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例の合成試験に使用した主原料は、以下のとおりである。
【0042】
[主原料]
・2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン:四国化成工業社製
・2−メルカプトエチルアミン:東京化成工業社製
・1,2−ビス(2−メルカプトエトキシ)エタン:同上
・ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド:同上
【0043】
〔実施例1〕
<2,4−ジアミノ−6−[2−(2−アミノエチルチオ)エチル]−1,3,5−トリアジンの合成>
温度計を備えた100mLフラスコに、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン6.86g(50.0mmol)、2−メルカプトエチルアミン3.86g(50.0mmol)およびメタノール50mLを投入して、反応液を調製した。
この反応液を攪拌しながら、65℃にて1時間反応を行い、続いて、反応液を減圧下にて濃縮して、白色の結晶10.70g(収率100%)を得た。
【0044】
得られた結晶の融点およびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:126〜128℃
1H-NMR(d6-DMSO) δ:6.63 (br, 4H), 2.80 (t, 2H), 2.67 (t, 2H), 2.58 (t, 2H), 2.50 (t, 2H), 1.61 (br, 2H).
また、この結晶のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化学式(I-1)で示される標題のトリアジン化合物であるものと同定した。
【0045】
【化6】
【0046】
〔実施例2〕
<2,4−ジアミノ−6−(2−{2−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]エチルチオ}エチル)−1,3,5−トリアジンの合成>
温度計を備えた100mLフラスコに、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン6.86g(20.0mmol)、1,2−ビス(2−メルカプトエトキシ)エタン22.6g(100.0mmol)およびメタノール20mLを投入して、反応液を調製した。
この反応液を攪拌しながら、65℃にて1時間反応を行い、続いて、反応液を減圧下にて濃縮した後、トルエン50mLを投入し、室温下で30分間撹拌した。分液操作により下層を抽出し、減圧下にて濃縮し、透明の液体6.07g(収率95%)を得た。
【0047】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(d6-DMSO) δ:6.60 (br, 4H), 3.47-3.56 (m, 8H), 2.82 (t, 2H), 2.58-2.66 (m, 6H), 2.30 (s, 1H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(II-1)で示される標題のトリアジン化合物であるものと同定した。
【0048】
【化7】
【0049】
〔実施例3〕
<2,4−ジアミノ−6−{2−[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]エチル}−1,3,5−トリアジンの合成>
1,2−ビス(2−メルカプトエトキシ)エタン22.6g(100.0mmol)の代わりに、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド13.7g(100.0mmol)を使用した以外は、実施例2と同様の操作を行って、透明の液体5.65g(収率97%)を得た。
【0050】
得られた液体H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(d6-DMSO) δ:6.59 (br, 4H), 2.86 (t, 2H), 2.68-2.75 (m, 8H), 2.59 (t, 2H), 2.48-2.52 (m, 1H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(II-2)で示される標題のトリアジン化合物であるものと同定した。
【0051】
【化8】
【0052】
〔実施例4〕
<有機溶剤に対する溶解性の評価試験>
本発明のトリアジン化合物(実施例1〜3)と、当該トリアジン化合物の前駆体である2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンについて、種々の有機溶剤に対する溶解性を評価した(試験番号1〜4)。
評価試験の操作手順は、以下のとおりである。
室温にて、トリアジン化合物100mgと有機溶剤2mLを試験管に投入して攪拌し、有機溶剤に対するトリアジン化合物の溶解性を目視にて観察した。
そして、トリアジン化合物が室温にて完溶した場合を○と判定し、室温では完溶しないが70℃では完溶した場合を△と判定し、70℃にても完溶しない場合を×と判定した。
なお、有機溶剤として、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)および酢酸エチルを使用した。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0053】
【表1】
【0054】
これらの結果によると、本発明のトリアジン化合物は、前駆体の2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンに比べて、有機溶剤に対する溶解性が優れているものと認められる。
従って、本発明のトリアジン化合物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等のポリマーとの相溶性に優れていることが期待される。
【0055】
〔実施例5〕
<エポキシ樹脂組成物(組成物1〜4)の調製および接着性の評価試験>
エポキシ化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:jER828)100重量部、硬化剤として、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名:2E4MZ)0.5重量部、フィラーとして、シリカ(エボニック社製、商品名:アエロジル300)4重量部、表2に示したトリアジン化合物5重量部を計量し、自転公転ミキサー(シンキー社製、商品名:あわとり錬太郎)にて5分間攪拌混合し、1分間脱泡してエポキシ樹脂組成物を調製した(組成物1〜3)。
トリアジン化合物を使用しない以外は、前述の場合と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した(組成物4)。
これらの組成物を、各々、鋼板に均一に塗布し、60℃/4時間の条件にて加熱し、続いて150℃/4時間の条件にて加熱硬化させた後、引張せん断接着力を測定して(JIS K6850)、鋼板に対する接着性(密着性)を評価した。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0056】
【表2】
【0057】
これらの結果によると、組成物1〜3の硬化物は、組成物4の硬化物に比べて、鋼板に対する優れた接着性能を有しているものと認められる。
従って、本発明のトリアジン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物を、接着剤、半導体封止剤またはシール剤として使用した場合には、金属材料や無機材料に対する優れた接着力を発揮することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】実施例1で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
図2】実施例2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
図3】実施例3で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のトリアジン化合物を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等のポリマーの添加剤として使用した場合には、当該トリアジン化合物がポリマー中に溶解または均一に分散して、電子部品やプリント基板等のマイグレーションを抑制し、また、電子部品やプリント基板を構成する銅、銀、鉄、アルミ、パラジウム、およびニッケル等の金属材料および各種無機材料と、ポリマーとの密着性を高める効果を発揮することが期待されるので、本発明の産業上の有用性は多大である。
図1
図2
図3