特許第6254927号(P6254927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254927
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04225 20160101AFI20171218BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20171218BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20171218BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20171218BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01M8/04225
   H01M8/04302
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 J
   B60L11/18 G
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-231040(P2014-231040)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-27534(P2016-27534A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-130661(P2014-130661)
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】田代 圭介
(72)【発明者】
【氏名】川島 一仁
(72)【発明者】
【氏名】内田 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政廣
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−140677(JP,A)
【文献】 特開2006−351226(JP,A)
【文献】 特開2012−15020(JP,A)
【文献】 特開2014−79067(JP,A)
【文献】 特開平6−124720(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/017474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極及び空気極を備える燃料電池で発電した電力を二次電池に充電する燃料電池システムであって、
前記燃料極に接続され、無加湿水素ガス又は加湿水素ガスのいずれか一方を供給可能に構成された燃料ガス供給管と、
前記空気極に接続され、無加湿空気ガス又は加湿空気ガスのいずれか一方を供給可能に構成された空気ガス供給管と、
前記燃料ガス供給管及び前記空気ガス供給管に流れるガス流量をそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池の起動時に、前記燃料極に前記無加湿水素ガスを供給した後に、前記空気極に前記無加湿空気ガスを供給し、その後、前記燃料極及び前記空気極のそれぞれに前記加湿水素ガス及び前記加湿空気ガスが供給されるように、前記燃料ガス供給管及び前記空気ガス供給管に流れるガス流量を制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記二次電池の充電残量を検知する充電残量検知部を更に備え、
前記制御部は、前記充電残量検知部の検知値が予め設定された第1閾値以下になった場合に、前記燃料極への前記無加湿水素ガスの供給を開始することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池で発電を開始した後、前記充電残量検知部の検知値が、前記第1閾値より大きく設定された第2閾値以上になった場合に、前記空気極への前記加湿空気ガスの供給を継続しながら、前記燃料極への前記加湿水素ガスの供給を停止することを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料極に無加湿空気ガスを供給可能な燃料極空気ガス供給管を更に備え、
前記制御部は、前記充電残量検知部の検知値が予め設定された第1閾値以下になった場合に、前記燃料極空気ガス供給管から前記燃料極に無加湿空気ガスを供給すると共に前記空気ガス供給管から前記空気極に無加湿空気ガスを供給した後、前記燃料極に前記燃料ガス供給管から前記無加湿水素ガスを供給するように制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池の起動回数を検知する起動回数検知部と、
前記燃料ガス供給管の接続先を前記燃料極から前記空気極に切り替えると共に、前記空気ガス供給管の接続先を前記空気極から前記燃料極に切り替えることが可能に構成された切替機構と
を更に備え、
前記制御部は、前記起動回数検知部の検知値が予め設定された所定回数に達した場合に、前記切替機構を作動させることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記燃料極に前記無加湿水素ガスを供給した後に、前記空気極に前記無加湿空気ガスを供給し、
前記燃料極及び前記空気極間の出力電圧が起電力に対応する第1の所定値になった後、前記出力電圧が前記第1の所定値より低く設定された第2の所定値になるように負荷側の容量を制御することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2の所定値が時間の経過に従って段階的に低下するように前記負荷側の容量を制御することを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記出力電圧を前記第2の所定値に第1の所定時間維持した後に、前記燃料極に前記加湿水素ガスを供給すると共に前記空気極に前記加湿空気ガスを供給することを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記燃料極に前記加湿水素ガスを供給すると共に前記空気極に前記加湿空気ガスを供給した後、前記負荷側の容量を増加させるように制御することを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記燃料極に前記加湿水素ガスを供給すると共に前記空気極に前記加湿空気ガスを供給した後、前記出力電圧が一定となるように前記負荷側の容量を制御することを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
燃料極及び空気極を備える燃料電池で発電した電力、又は、二次電池から供給される電力で駆動される電動機を動力源として搭載する電動車両であって、
前記燃料極に接続され、無加湿水素ガス又は加湿水素ガスのいずれか一方を燃料ガスとして前記燃料極に選択的に供給可能な燃料ガス供給管と、
前記空気極に接続され、無加湿空気ガス又は加湿空気ガスのいずれか一方を空気ガスとして前記空気極に選択的に供給可能な空気ガス供給管と、
前記燃料ガス供給管における燃料ガスの流量、及び、前記空気ガス供給管における前記空気ガスの流量をそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池の起動時に、前記燃料極に前記無加湿水素ガスを供給した後に、前記空気極に前記無加湿空気ガスを供給し、その後、前記燃料極及び前記空気極のそれぞれに前記加湿水素ガス及び前記加湿空気ガスが供給されるように、前記燃料ガス供給管及び前記空気ガス供給管に流れるガス流量を制御することを特徴とする電動車両。
【請求項12】
前記燃料電池で発電された電力を蓄積可能な複数の二次電池と、
前記燃料電池で発電された電力を前記電動機及び前記複数の二次電池に分配可能な電力制御器と
を更に備え、
前記制御部は、前記複数の二次電池のうち充電残量が多い方を前記電動機に電気的に接続すると共に、充電残量が少ない方に前記燃料電池で発電された電力を供給するように前記電力制御器を制御することを特徴とする請求項11に記載の電動車両。
【請求項13】
前記燃料電池で発電された電力を蓄積可能な二次電池と、
前記燃料電池で発電された電力を前記電動機及び前記二次電池に分配可能な電力制御器と
を更に備え、
前記制御部は、前記燃料電池で発電した電力を前記電動機に供給し、その余剰電力が前記二次電池に充電されるように前記電力制御器を制御することを特徴とする請求項11に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料極及び空気極を備える燃料電池を含む燃料電池システム、並びに、該燃料電池システムを利用した電動車両の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりに伴い、化石燃料に頼ることのないクリーンエネルギー発電が注目を集めている。この種のクリーンエネルギー発電の一つとして燃料電池を利用したものが知られている。一般的に自動車用の燃料電池は固体高分子型燃料電池が用いられており、固体高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側にPt/カーボン電極触媒からなる燃料極、空気極を設けた燃料電池電極膜に、当該電極膜をガス拡散層、セパレータの順に狭持した基本構成を備えている。この燃料電池は、燃料極に水素、空気極に空気(酸素)を供給する際に、負荷を両電極間に接続することで発電反応が開始される。この時の発電反応式は以下の通りである。

燃料極では、水素の酸化反応が行われると共に、空気極では酸素の還元反応が行われ、空気極内で水が生成される。
【0003】
このような燃料電池の応用分野として、車両に搭載した燃料電池で発電した電力で電動機を駆動することにより走行する電動車両(電気自動車及びハイブリッド電気自動車を含む)がある。この種の電動車両の分野では、一般的に、燃料電池で発電した電力を直接電動機に供給する方式が多いが、より長い航続距離を得るために、二次電池を併用した新たな方式の開発も進められている。
【0004】
ところで燃料電池を電動車両に応用するにあたり、様々な課題が存在しているが、その一つとして、燃料電池車両の走行条件が与える燃料電池の劣化をいかに抑えるかという問題がある。燃料電池に生じる主な劣化要因としては、次の3つの劣化モードがあると考えられている。1つ目は車両起動停止時に生じる劣化モードであり、2つ目は電動機に負荷変動が生じる加減速時に生じる劣化モードであり、3つ目は無負荷状態で高電圧が維持されるアイドリング時に生じる劣化モードである。
【0005】
これらの劣化モードのなかでも、車両起動停止時における劣化モードの影響が大きく、その発生メカニズムは以下のように考えられている。典型的には、燃料電池が停止状態にある場合、燃料極及び空気極は共に空気(大気)で満たされた状態にある。このような停止状態から燃料電池を起動するために燃料極に水素ガスを供給すると、燃料極では一時的に水素と空気とが共存することにより電極間に逆電流(水素イオンの逆移動)が生じると共に、燃料電池電圧が上昇する。このようなとき、空気極に一般的に用いられているPt/カーボン電極触媒のカーボン担体劣化が生じるため、燃料電池の性能低下に至る。このような起動時に生じる劣化モードを抑制するための技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1では、触媒層とガス流路との間に酸素拡散防止層を設けることによって、起動時に燃料極側に入り込んでいる酸素の拡散を妨げて燃料電池の劣化を遅延させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−212567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では燃料極側における酸素の拡散を遅らせることができても、劣化の進行自体を食い止めることができないため、根本的な解決策になっていない。また、酸素拡散防止層を設けることで燃料電池の構造が複雑になるため、コスト増加の要因となってしまう。
【0008】
また上述したように、車両起動停止時の次に影響の大きい劣化モードとして、負荷変動を伴う加減速時に生じる劣化モードがある。車両の加減速時にドライバーからの要求出力に応じて燃料電池の負荷が変動すると、燃料電池の単セル電圧は高電圧領域(0.9−1.0V)と低電圧領域(0.6−0.7V)との間を変動する。ここで燃料電池の燃料極及び空気極に用いられる電極触媒は、例えば電解質膜上のカーボン担体に白金(Pt)を担持させたものがある。この種の電極触媒では、燃料電池の単セル電圧によって白金の酸化反応又は還元反応のいずれかが生じる。例えば、車両の加速時には単セル電圧が高電圧領域から低電圧領域に降下することによって、酸化皮膜が還元される還元反応が生じる。一方、車両の減速時には、単セル電圧が低電圧領域から高電圧領域に上昇することによって、酸化皮膜が形成される酸化反応が生じる。
このように酸化還元反応が繰り返されると、電極触媒中の白金粒子はオストワルド成長による凝集やPt溶出によって、発電反応比面積が減少し、電極触媒の劣化が進行する。このような負荷変動時の電極触媒の劣化は、燃料電池の耐久寿命に大きな影響を与えるため、いかに抑制するかが問題となっている。
【0009】
また、このような負荷変動時の劣化は、変動回数が増加するに従って促進される特性がある。従来の燃料電池搭載車両は、燃料電池の出力を、車両駆動用動力源である電動機に直接的に供給する構成を有するため、ドライバーからの要求出力(負荷出力)に応じて変動回数が多くならざるを得ない。そのため、上記劣化が進行しやすいという問題がある。
【0010】
本発明の少なくとも一つの実施形態の目的は上述の問題点に鑑みなされたものであり、燃料電池の起動時又は負荷変動時に発生する劣化を効果的に抑制可能な燃料電池システム及び該燃料電池システムを搭載した電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃料電池システムでは上記課題を解決するために、燃料極及び空気極を備える燃料電池で発電した電力を二次電池に充電する燃料電池システムであって、前記燃料極に接続され、無加湿水素ガス又は加湿水素ガスのいずれか一方を供給可能に構成された燃料ガス供給管と、前記空気極に接続され、無加湿空気ガス又は加湿空気ガスのいずれか一方を供給可能に構成された空気ガス供給管と、前記燃料ガス供給管及び前記空気ガス供給管に流れるガス流量をそれぞれ制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記燃料電池の起動時に、前記燃料極に前記無加湿水素ガスを供給した後に前記加湿水素ガスが供給されるように前記燃料ガス供給管に流れるガス流量を制御することを特徴とする。
【0012】
上記(1)の構成によれば、燃料電池の起動時に燃料極に無加湿水素ガスを供給することによって、停止期間中に燃料極に侵入した空気を排出し、電極間のプロトン伝導度を低下させる(燃料電池の内部抵抗を上昇させる)。これにより、燃料電池の起動時に電極間に逆電流が発生することを防止し、劣化の発生を効果的に抑制できる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記制御部は、前記燃料極に前記無加湿水素ガスが供給された後に、前記空気極に前記無加湿空気ガスを供給し、その後、前記燃料極及び前記空気極のそれぞれに前記加湿水素ガス及び前記加湿空気ガスが供給されるように、前記燃料ガス供給管及び前記空気ガス供給管に流れるガス流量を制御する。
【0014】
上記(2)の構成によれば、燃料電池の起動時に、燃料極への無加湿水素ガス供給を開始した後に、空気極への無加湿空気ガス供給を開始する。燃料電池の起動時に一時的に発生する高電圧は、各電極の酸素分圧にも依存し、仮に燃料極に無加湿水素ガス、空気極に無加湿空気ガスを同時供給してしまうと、無加湿空気ガスの供給により空気極ので酸素分圧が増加した状態下で、燃料極では、無加湿水素ガスの供給により一時的な水素と空気の共存が生じることになるため、起動時の燃料電池電圧がより大きくなってしまう。従って、本実施形態では、このような順で各極に対して無加湿ガスを供給することで、起動時の劣化をより効果的に抑制できる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記二次電池の充電残量を検知する充電残量検知部を更に備え、前記制御部は、前記充電残量検知部の検知値が予め設定された第1閾値以下になった場合に、前記燃料極への前記無加湿水素ガスの供給を開始する。
【0016】
上記(3)の構成によれば、二次電池の充電残量が第1閾値以下になることによって不足していると判断された場合に限って、燃料電池の起動が行われる。これにより、劣化が進み易い起動動作の回数を抑制することができ、長寿命で信頼性の高い燃料電池システムを実現できる。
【0017】
尚、本実施形態に係る燃料電池システムは、起動時に無加湿ガスを各極に供給する時間を要する分だけ、従来の燃料電池システムに比べて起動時間が長くなることとなる。しかしながら、このような問題は、例えば、燃料電池の起動タイミングを規定する第1閾値を適切に設定することにより(例えば、第1閾値を従来に比べて小さく設定することで、早めに起動開始を行うことにより)解決可能である。
【0018】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、前記制御部は、前記燃料電池で発電を開始した後、前記充電残量検知部の検知値が、前記第1閾値より大きく設定された第2閾値以上になった場合に、前記空気極への前記加湿空気ガスの供給を継続しながら、前記燃料極への前記加湿水素ガスの供給を停止する。
【0019】
上記(4)の構成によれば、燃料電池で発電を開始した後、充電残量検知部の検知値が第2閾値以上になると、二次電池が十分充電されたとして燃料電池の発電を停止する。本実施形態では、このような発電停止の際に、まず、燃料極への加湿水素ガスの供給を停止する。このとき空気極には加湿空気ガスの供給が継続されているので、燃料極に残存している水素が使い切られるまで、燃料電池は少なからず発電を継続することとなる(言い換えれば、燃料極に残存している水素がなくなると、発電は停止する)。このように発電停止時に燃料極に残存した水素を使い切ることができるので、無駄に水素を排出することがなく、良好な燃費性能が得られる。
【0020】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、前記燃料極に無加湿空気ガスを供給可能な燃料極空気ガス供給管を更に備え、前記制御部は、前記充電残量検知部の検知値が予め設定された第1閾値以下になった場合に、前記燃料極空気ガス供給管から前記燃料極に無加湿空気ガスを供給すると共に前記空気ガス供給管から前記空気極に無加湿空気ガスを供給した後、前記燃料極に前記燃料ガス供給管から前記無加湿水素ガスを供給するように制御する。
【0021】
上記(5)の構成によれば、燃料電池の起動時に燃料極及び空気極に無加湿空気ガスを供給する。上述したように、燃料電池の起動時には、燃料極に無加湿水素ガスを供給することにより、電極間のプロトン伝導度を低下させる。このように逆電流を十分に抑制可能な程度にプロトン伝導度を低下させるためには、時間をかけて多量の無加湿水素ガスを供給しなければならない場合がある。本実施形態では、このような場合であっても、両極に無加湿空気ガスを供給することによって、水素消費量を抑えながら、プロトン伝導度を十分に低下させることができるので、良好な燃費性能を得ることができる。
【0022】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)の構成において、前記燃料電池の起動回数を検知する起動回数検知部と、前記燃料ガス供給管の接続先を前記燃料極から前記空気極に切り替えると共に、前記空気ガス供給管の接続先を前記空気極から前記燃料極に切り替えることが可能に構成された切替機構とを更に備え、前記制御部は、前記起動回数検知部の検知値が予め設定された所定回数に達した場合に、前記切替機構を作動させる。
【0023】
上記(6)の構成によれば、燃料電池の起動回数が所定回数に達すると、切替機構を作動させることにより、燃料ガス供給管と空気ガス供給管とを入れ替えるように制御が実施される。起動時の劣化発生時には、燃料極に比べて空気極において、電極の腐食が速く進行する。そのため、起動回数が所定回数に達すると、切替機構を作動して燃料ガス供給管と空気ガス供給管とを入れ替えることにより、燃料極と空気極とを入れ替える。これにより、一方の電極のみが腐食し続ける場合に比べて、長寿命な燃料電池システムを実現することができる。
【0024】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか1構成において、前記制御部は、前記燃料極に前記無加湿水素ガスを供給すると同時或いはその後に、前記空気極に前記無加湿空気ガスを供給し、前記燃料極及び前記空気極間の出力電圧が起電力に対応する第1の所定値になった後、前記出力電圧が前記第1の所定値より低く設定された第2の所定値になるように負荷側の容量を制御する。
【0025】
上記(7)の構成によれば、制御部は、燃料極及び空気極に対して無加湿ガスを供給することにより出力電圧が第1の所定値になった後、出力電圧が第2の所定値(第1の所定値より低く、且つ、充電時の第3の所定値より高い値)になるように負荷側の容量を制御する。すなわち、出力電圧を第3の所定値に低下させて本番充電を実施する際に、出力電圧が第2の所定値を経て段階的に低下になるように制御される。これにより、負荷変動時に出力電圧が大きく変化することに起因する電極触媒の劣化を抑制することができる。
またこのような出力電圧の段階的な変化は、各電極に無加湿ガスが供給されることによって充電電流が小さな状態で実施される。このような状態は燃料電池の発電特性が低い反面、劣化感度も低い。そのため、負荷変動に伴う出力電圧による劣化も生じにくい。
このように本実施形態によれば、出力電圧の変化を劣化感度が低い状態で段階的に実施することによって、負荷変動時に生じる劣化を効果的に抑制できる。
【0026】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、前記制御部は、前記第2の所定値が時間の経過に従って段階的に低下するように前記負荷側の容量を制御する。
【0027】
上記(8)の構成によれば、出力電圧を段階的に低下させることにより、負荷変動時の出力電圧の変化を緩やかにできる。これにより、負荷変動に伴う劣化をより効果的に抑制できる。
【0028】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)又は(8)の構成において、前記制御部は、前記出力電圧を前記第3の所定値に第3の所定時間維持した後に、前記燃料極に前記加湿水素ガスを供給すると共に前記空気極に前記加湿空気ガスを供給する。
【0029】
上記(9)の構成によれば、出力電圧が第3の所定値の状態で第3所定時間維持することにより、その間に出力電圧が安定する。その後に燃料極及び空気極に加湿ガスをそれぞれ供給することにより、負荷変動時の劣化を抑制しながら、本番充電に良好に移行することができる。
【0030】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、前記制御部は、前記燃料極に前記加湿水素ガスを供給すると共に前記空気極に前記加湿空気ガスを供給した後、前記負荷側の容量を増加させるように制御する。
【0031】
上記(10)の構成によれば、燃料極及び空気極に加湿ガスを供給すると燃料電池の充電特性向上に伴って出力電圧は上昇傾向を示すが、このタイミングで負荷側の容量を増加させることによって充電電流を増加させることで、出力電圧の増加を抑制できる。これにより、出力電圧の変動が軽減され、本番充電電圧の領域内に留めることができるため、当該変動に起因する劣化を効果的に抑制できる。
【0032】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、前記制御部は、前記燃料極に前記加湿水素ガスを供給すると共に前記空気極に前記加湿空気ガスを供給した後、前記出力電圧が本番充電電圧の領域に内に収まるように前記負荷側の容量を制御する。
【0033】
上記(11)の構成によれば、本番充電への移行時に出力電圧が本番充電電圧の領域内に収まるように負荷側の容量を制御する。これにより、出力電圧の変動に起因する劣化を効果的に抑制できる。最終的に、本番充電電圧領域に内に収まった充電電流を本番充電電流として制御することで、駆動バッテリへ本番充電を開始する。
【0034】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る電動車両では上記課題を解決するために、燃料極及び空気極を備える燃料電池で発電した電力、又は、二次電池から供給される電力で駆動される電動機を動力源として搭載する電動車両であって、前記燃料極に接続され、無加湿水素ガス又は加湿水素ガスのいずれか一方を燃料ガスとして前記燃料極に選択的に供給可能な燃料ガス供給管と、前記空気極に接続され、無加湿空気ガス又は加湿空気ガスのいずれか一方を空気ガスとして前記空気極に選択的に供給可能な空気ガス供給管と、前記燃料ガス供給管における燃料ガスの流量、及び、前記空気ガス供給管における前記空気ガスの流量をそれぞれ制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記燃料電池の起動時に、前記燃料極及び前記空気極のうち少なくとも前記燃料極に対して、前記無加湿水素ガスを供給した後に前記加湿水素ガスを供給するように燃料ガスの流量を制御することを特徴とする。
【0035】
上記(12)の構成によれば、上述の燃料電池システムを利用した電動車両を実現することができる。
尚、本実施形態に係る電動車両は、上記(1)乃至(6)の構成と組み合わせることを妨げない。
【0036】
13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、前記燃料電池で発電された電力を蓄積可能な複数の二次電池と、前記燃料電池で発電された電力を前記電動機及び前記複数の二次電池に分配可能な電力制御器とを更に備え、前記制御部は、前記複数の二次電池のうち充電残量が多い方を前記電動機に電気的に接続すると共に、充電残量が少ない方に前記燃料電池で発電された電力を供給するように前記電力制御器を制御する。
【0037】
上記(13)の構成によれば、複数の二次電池のうち充電残量が多い方を用いて外部負荷である電動機を駆動する一方で、充電残量の少ない二次電池に燃料電池で発電した電力を充電できる。このように燃料電池を二次電池の充電用として機能させることで、電動車両の走行中においても必要に応じた充電が可能となり、航続距離の延長を図ることができる。
【0038】
また上述したように、本実施形態に係る燃料電池では、起動時の逆電流を抑制するために無加湿ガスを供給する時間が必要な分だけ、従来に比べて起動時間が長くなる。しかしながら、このように電動機の駆動用とは別の二次電池に対して充電することによって、起動時間の長さも問題とならなくなる。つまり、燃料電池は駆動用に使用されていない二次電池に対して充電を行うので、燃料電池の起動時間が多少長くなったとしても問題になることはない。
【0039】
補足して説明すると、これまで一般的に研究開発が行われている電動車両では、燃料電池で発電した電力を直接電動機に供給する方式が多く、この場合、車両始動時から必要電力を賄う必要があるため、迅速な起動時が求められる。一方、本実施形態のように複数の二次電池を併用する方式では、起動時間を短くする要求が比較的厳しくない。そのため、上述したように、無加湿ガスを供給する時間が必要となる燃料電池システムとの相性がよく、そのメリットを発揮しやすいと言える。
【0040】
14)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、前記燃料電池で発電された電力を蓄積可能な二次電池と、前記燃料電池で発電された電力を前記電動機及び前記二次電池に分配可能な電力制御器とを更に備え、前記制御部は、前記燃料電池で発電した電力を前記電動機に供給し、その余剰電力が前記二次電池に充電されるように前記電力制御器を制御する。
【0041】
上記(14)の構成によれば、単一の二次電池を備える場合には、燃料電池で発電した電力を直接的に電動機に供給しながら、その余剰電力を二次電池に充電することで、燃料電池1の起動回数を不必要に増加させることなく、効率的な充放電制御を行うことができる。また余剰電力を利用して電動車両の走行中での充電が可能となるので、航続距離の延長に寄与できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、燃料電池の起動時又は負荷変動時に発生する劣化を効果的に抑制可能な燃料電池システム及び該燃料電池システムを搭載した電動車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施例1に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
図2図2の燃料電池システムの制御内容を手順毎に示すフローチャートである。
図3図2の燃料電池システムに関する各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。
図4図2の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
図5】実施例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
図6図5の燃料電池システムの制御内容を示すフローチャートである。
図7図5の燃料電池システムにおける各種パラメータのタイムチャートである。
図8図5の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
図9】実施例3に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
図10】実施例4に係る燃料電池システムの制御内容を示すフローチャートである。
図11図10の燃料電池システムの各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。
図12図10の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
図13】実施例5に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
図14図13の燃料電池システムの制御内容を示すフローチャートである。
図15図13の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
図16】実施例6、7に係る燃料電池システムの制御内容を手順毎に示すフローチャートである。
図17図1の燃料電池システムに関する各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。
図18図1の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
図19】実施例7に係る図5の燃料電池システムに関する各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。
図20】実施例7に係る図5の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0045】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、又は、「直交」等の相対的な配置関係を表す表現は、厳密にそのような相対的配置関係を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度をもって相対的に傾斜している状態も表すものとする。また例えば四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等のみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
【0046】
一方、一の構成要素を「備える」、「具備する」、「含む」又は「有する」という表現は他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0047】
(実施例1)
図1は本実施形態に係る燃料電池システム100の全体構成を示すブロック図である。
燃料電池システム100は、電解質膜2と、該電解質膜2の一面側に設けられた燃料極4と、該電解質膜2の他面側に設けられた空気極6と備える燃料電池1を有する。燃料電池1は、電解質膜2、燃料極4及び空気極6の他に、ガス拡散層、セパレータを備えた基本構成を有する単一の燃料電池が積層した燃料電池スタックとなっているが、このような構成は典型的な燃料電池の構成に倣うため、図1では図示を省略することとする。
【0048】
燃料極4の上流側には燃料ガスである水素ガスを供給するための水素ガス供給ライン8が接続されており、下流側には該水素ガスを排出するための水素ガス排出ライン10が接続されている。また空気極6の上流側には空気ガスを供給するための空気ガス供給ライン12が接続されており、下流側には該空気ガスを排出するための空気ガス排出ライン14が接続されている。
【0049】
水素ガス供給ライン8は、高圧の水素ガスを蓄積する水素ガス貯蔵タンク16に接続されている。水素ガス供給ライン8のうち水素ガス貯蔵タンク16の吐出口近傍には、水素ガスの供給ON/OFFを切り換えるための元弁18が設けられており、その下流側には元弁18を通過した水素ガスの圧力を調整するための圧力調整器20が設けられている。
【0050】
水素ガス供給ライン8は、圧力調整器20の下流側で加湿水素ガスライン22と無加湿水素ガス供給ライン24とに分岐されている。加湿水素ガスライン22上には弁26、及び、加湿器28が設けられている。弁26が開状態になると、水素ガス貯蔵タンク16から吐出された水素ガスは加湿水素ガスライン22に導入され、加湿器28によって加湿水素ガスに生成される。一方、無加湿水素ガスライン24は加湿器26をバイパスするように設けられており、弁30が開状態になると水素ガス貯蔵タンク16から吐出された湿度の低い水素ガスがそのまま無加湿水素ガスとして燃料極4に供給可能に構成されている。
【0051】
加湿水素ガス供給ライン22及び無加湿水素ガス24は下流側で互いに合流した後、燃料極4に接続されている。水素ガス供給ライン8はこのように構成されることによって、弁26及び弁30をそれぞれ開閉制御することによって、燃料極4に対して加湿水素ガス又は無加湿水素ガスを供給可能に構成されている。
【0052】
空気ガス供給ライン12は、大気を圧縮供給可能なエアコンプレッサ32に接続されている。空気ガス供給ライン12のうちエアコンプレッサ32の吐出口近傍には、空気ガスの供給ON/OFFを切り換えるための元弁34が設けられている。空気ガス供給ライン12は、元弁34の下流側に設けられた三方弁36によって加湿空気ガスライン38及び無加湿空気ガスライン40に分岐されている。加湿空気ガスライン38上には、加湿器42が設けられており、三方弁36を通過した空気ガスを加湿することによって、加湿空気ガスが生成される。一方、無加湿空気ガスライン40は加湿器42をバイパスするように設けられており、三方弁36を通過した湿度の低い空気ガスがそのまま無加湿空気ガスとして供給可能に構成されている。
【0053】
加湿空気ガス供給ライン38及び無加湿空気ガスライン40は下流側で互いに合流した後、空気極6に接続されている。空気ガス供給ライン12はこのように構成されることによって、三方弁36を開閉制御することによって、空気極6に対して加湿空気ガス又は無加湿空気ガスを供給可能に構成されている。
【0054】
空気ガス供給ライン12の一部である燃料極空気ガス供給ライン44は、エアコンプレッサ32及び元弁34間から分岐しており、燃料極4に接続されている。燃料極空気ガス供給ライン44上にはバルブ46が設けられており、当該バルブ46を開閉制御することにより、燃料極4にも無加湿空気ガスが供給可能に構成されている。
【0055】
尚、図1では、図示をわかりやすくするために、燃料極4の上流側において無加湿水素ガス供給ライン24と燃料極空気ガス供給ライン44とが独立して示されているが、実際には共通の配管であり、条件に応じて各種バルブ等を開閉することにより水素ガス又は空気ガスが流れるように構成されている。
【0056】
水素ガス排出ライン10上には排気弁48が設けられており、該排気弁48を開閉制御することにより、燃料極4の残留ガスを排出可能に構成されている。水素ガス排出ライン10から排出された残留ガスは水素ガス希釈装置50に送られ、空気ガス排出ライン14を介して排出される空気極6側の残留ガスによって希釈された後、外部に排出される。
【0057】
尚、上述したように燃料極4には水素ガスだけでなく空気ガスが供給される場合もあるため、図1では水素ガス排出ライン10に平行して空気ガスが流れるラインを示しているが、実際には一本の配管で構成されている。
【0058】
尚、空気ガス排出ライン14は加湿器42を経由するように構成されている。燃料極に比べて空気極の酸素還元反応は分極(過電圧)がより大きく、出力性能の低下を招く。そのため、空気ガスの排出側に背圧制御器72(一例として背圧弁の開度調整によって背圧制御)を設け、空気極の酸素分圧を増加させることで、酸素の拡散能を向上させ、出力性能を高める構成としている。
【0059】
また燃料極4の残留した水素ガスの一部は再循環ポンプ52が設けられたライン54を介して水素ガス供給ライン8に戻される。ライン54には三方弁56が設けられており、該三方弁56を開閉制御することによって、加湿水素ガスライン22又は無加湿水素ガス供給ライン24に再循環可能に構成されている。燃料電池の燃料に供給された水素ガスについて、一部未反応のまま排出されてしまう水素ガスがあるため、水素を再循環する機構を設けることで水素燃料利用率を高めることができる。
【0060】
このように構成された燃料電池1は、電力制御器58を介して、外部負荷60及び駆動用バッテリ62に接続されている。外部負荷60は燃料電池1で発電された電力を消費する負荷であり、本実施形態では特に電動車両の動力源として機能する駆動用モータ(電動機)である。駆動用バッテリ62a、62b(以下、2つの駆動用バッテリを総称する場合は単に符号62で示すこととする)は、燃料電池1で発電された電力を外部負荷60の駆動用電力として蓄電する二次電池である。
【0061】
駆動用バッテリ62a、62bは互いに並列に接続されており、電力制御器58によってそれぞれ燃料電池1及び外部負荷60に対して、電気的に接続・切断可能に構成されている。本実施形態では、2つの駆動用バッテリ62のうち、充電残量が大きい一方(後述する図4ではバッテリ62b)を外部負荷60に接続して駆動しつつ、充電残量が少ない他方(後述する図4ではバッテリ62a)に対して燃料電池1で発電した電力を充電するように制御される。このように燃料電池1の主機能を駆動用バッテリ62の充電になるように制御することで、電動車両の走行中での充電が可能となり、航続距離の延長を図ることができる。
【0062】
電力制御器58は、燃料電池システム100のコントロールユニットである制御部64からの指令に基づいて、燃料電池1、外部負荷60及び駆動用バッテリ62間の電気的接続状態を制御する。制御部64では、燃料電池システム100に設けられた各種センサの検知結果に基づいて、後述する各種制御が実施される。
【0063】
本実施形態では、このように制御に用いられるパラメータを取得するためのセンサ、制御器類として、以下のデバイスが設置されている。電圧センサ66は燃料電池1の燃料電池電圧Vを検知するためのデバイスであり、抵抗センサ68は燃料電池1の内部抵抗Rを検知するためのデバイスであり、SOCセンサ70は駆動用バッテリ62の充電残量SOCを検知するためのデバイスであり、背圧制御器72は空気ガス排出ライン14の背圧Pを検知するためのデバイスであり、水素濃度センサ74はそれぞれ燃料極4における水素ガス濃度CH2を検知するためのデバイスである。これらの各種センサの検知値は制御信号として制御部64に取り込まれ、後述する各種制御に利用される。
【0064】
続いて、上記構成を有する燃料電池システム100の具体的な制御内容について説明する。図2図1の燃料電池システム100の制御内容を手順毎に示すフローチャートであり、図3は、図1の燃料電池システム100に関する各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートであり、図4図1の燃料電池システム100における各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
【0065】
尚、図3では各種パラメータとして、(a)燃料極4への空気ガス供給量、(b)空気極6への空気ガス供給量、(c)燃料極4への水素ガス供給量、(d)燃料極4における水素濃度(水素濃度センサ74の検知値CH2)、(e)燃料電池1の内部抵抗(抵抗センサ68の検知値R)、(f)燃料電池1の燃料電池電圧(電圧センサ66の検知値V)、(g)燃料電池1の出力、(h)駆動用バッテリ62の充電残量(SOCセンサ70の検知値SOC)、(i)EV出力、(j)走行出力を示している。ここで、走行出力は、外部負荷(電動機)60から出力されるドライバーの出力要求に応じた駆動力を指し、EV出力は、その要求出力に対応した駆動バッテリからの駆動バッテリ出力を意味する。
【0066】
まず制御部64は燃料電池起動条件が成立したか否かを判定する(ステップS101)。燃料電池起動条件は、燃料電池1による発電を開始するか否かを判定するための条件であり、具体的には、制御部64がSOCセンサ70の検知値を取得することにより、駆動用バッテリ62の充電残量が所定閾値(無加湿H供給判定SOC1:図3(h)を参照)以下である場合に成立したと判定される。燃料電池起動条件が成立しない場合(ステップS101:NO)、すなわち駆動用バッテリ62の充電残量がSOC1より大きい場合は、駆動用バッテリ62に十分な電力が残っているため、燃料電池1による発電は不要と判断し、燃料電池1を起動しない。これにより、燃料電池1の作動回数を少なく抑えることができるので、燃料電池1の長寿命化を図ることができる。
【0067】
本実施例では図3(h)に示されているように、駆動用バッテリ62の充電残量が所定閾値SOC1以下となる時刻t0において、燃料電池起動条件が成立した場合が示されている。尚、無加湿H供給判定SOC1は駆動用バッテリ62のフル充電時を100%とすると、例えば20−50%の範囲で設定されることが好ましい。
【0068】
燃料電池起動条件が成立すると(ステップS101:YES)、制御部64は第1起動開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS102)。第1起動開始条件は、具体的には、燃料極4に設置された水素濃度センサ74の検知値CH2が所定閾値(無加湿H供給判定濃度CH21:図3(d)を参照)以下である場合に成立したと判定される。第1起動開始条件が成立した場合(ステップS102:YES)、すなわち燃料極4の水素濃度が閾値CH21以下である場合、制御部64は燃料極4に空気が残存していると考えられるため、燃料極4に対して無加湿水素ガスを供給する(ステップS103)。
【0069】
燃料電池システム100を起動する際には、燃料電池システム100の停止期間中に、燃料極4に大気が侵入することにより酸素が残存している場合がある。このような残存空気は、逆電流が発生する原因となる。そのため、本実施形態では、燃料極4の水素濃度が低いことにより残存空気が存在すると判定された場合には、起動時に燃料極4に無加湿水素ガスを供給する。これにより、電極間の逆電流の発生を防止し、起動時における劣化発生を効果的に抑制できる。
【0070】
尚、ステップS103における無加湿水素ガスの供給は、制御部64によって、元弁18を開状態にし、圧力調整器20を減圧状態にし、弁26を閉状態にし、弁30を開状態にし、再循環ポンプ52を作動状態にし、三方弁56を無加湿水素ガス供給ライン24側に開状態に設定することによって実施される。尚、排気弁48は基本的に閉状態であるが、空気極6からクロスリークしてくる窒素や水分などの不純物が濃縮してきた場合のみ開状態に切り換えるとよい。
【0071】
一方、第1起動開始条件が成立しない場合(ステップS102:NO)、制御部64は燃料極4に残留空気が少ないため、ステップS103〜ステップ106における操作は不要であると判断し、次の処理(S107)に進める。このように、燃料極4に残留空気が多く残っている場合に限って無加湿水素ガスの供給を行うことにより、水素ガスの使用量を削減し、燃費性能を向上でき、ステップS103〜ステップS106を省略する分だけ、燃料電池1の起動時間を短縮することもできる。また、第1起動開始条件が成立しない場合では(ステップS102:NO)、燃料極4に加湿水素ガス、空気極6に加湿空気ガスを供給することになるが(S107)、このような時、燃料極4の水素は十分に残存しており、加湿ガスを供給した場合であっても、逆電流による燃料電池の劣化は生じ難くなるため、ステップ103〜ステップ106の省略が可能になる。
【0072】
尚、ステップS102では燃料極4の水素濃度のみに基づいて第1起動開始条件を判定しているが、これに代えて又は加えて、電圧センサ66の検知値V(燃料電池1の燃料電池電圧)が所定閾値(無加湿H供給判定燃料電池電圧V1:図3(f)を参照)以上であるか否か、抵抗センサ68の検知値Rが所定閾値(無加湿H供給判定内部抵抗R1:図3(e)を参照)以上であるか否かに基づいて判定することで、制御精度を向上させてもよい。
【0073】
続いて制御部64は、第2起動開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS104)。第2起動開始条件は、具体的には、燃料極4に設置された水素濃度センサ74の検知値が所定閾値(無加湿空気極Air供給判定濃度CH22:図3(d)を参照)以上である場合に成立すると判定される。これに代えて又は加えて、電圧センサ66の検知値V(燃料電池1の燃料電池電圧)が所定閾値(無加湿空気極Air供給判定燃料電池電圧V2:図3(f)を参照)以上であるか否かに基づいて判定することで、制御精度を向上させてもよい。
【0074】
第2起動開始条件が成立した場合(ステップS104:YES)、制御部64は空気極6に対して無加湿空気ガスを供給する(ステップS105)。このように第2起動開始条件(S104)成立後、空気極6に無加湿空気ガスを供給することにより、燃料極内部は十分に水素ガスで満たされた状態の下、無加湿空気ガスが供給されることになる。そのため、燃料極では、前記無加湿水素ガスの供給により一時的な水素と空気の共存が生じていない状態を形成していることになり、無加湿空気ガス供給後に伴う燃料電池電圧上昇をより抑制することができる。その結果、空気極6に用いられている電極触媒(一般的にPt/カーボン)の劣化が進行することを効果的に防止できる。
【0075】
ステップS103で燃料極4に無加湿水素ガスが供給されると共に、ステップS105で空気極6に無加湿空気ガスが供給される様子を模式的に示したのが図4(b)である。
【0076】
尚、ステップS105における無加湿空気ガスの供給は、制御部64によって、エアコンプレッサ32を作動状態、元弁34を開状態、三方弁36を無加湿空気ライン側に開状態に設定することによって実施される。
【0077】
一方、第2起動開始条件が成立しない場合(ステップS104:NO)、制御部64は燃料極4に対して十分な水素ガスが満たされていないと判定するため、無加湿空気ガスの供給は開始されず、第2起動開始条件(S104)が成立するまで、無加湿水素ガスの供給を継続する。このように、燃料極4に十分な水素ガスを満たしたとみなす成立条件を設けることで、燃料電池の劣化進行を効果的に防止できる。
【0078】
尚、本実施例のように燃料電池1の起動時に、燃料極4及び空気極6の両方に無加湿ガスを供給することが好ましいが、いずれか一方に無加湿ガスを供給してもよい。この場合、両極に無加湿ガスを供給する場合に比べて効果度合いは低下するものの、一方の電極側から乾燥状態にすることが可能であるため、少なからず同様の効果を得ることができる。
【0079】
続いて制御部64は、発電準備完了条件が成立したか否かを判定する(ステップS106)。発電準備完了条件は、具体的には、ステップS103及びS105の開始から所定時間(加湿ガス供給判定時間T1:図3(b)を参照)が経過し、且つ、電圧センサ66の検知値Vが所定閾値(加湿H加湿Air供給判定燃料電池電圧V3:図3(f)を参照)以上になったか否かに基づいて判定する。
【0080】
発電準備完了条件が成立すると(ステップS106:YES)、制御部64は燃料極4に加湿水素ガスを供給すると共に、空気極6に加湿空気ガスをそれぞれ同時もしくは順に供給する(ステップS107、加湿水素ガス、無加湿水素ガスの供給手順は限定しない)。ステップS107の様子を模式的に示したのが図4(c)である。このように加湿ガスを各極に対して供給することにより、燃料電池1を構成する電解質膜や結合剤のプロトン伝導度が増大し、発電準備がなされる。加湿水素ガス、加湿空気ガスの供給手順は、早期に発電&充電開始(S109)させる観点から、同時供給がより好ましい。
【0081】
尚、ステップS107における加湿水素ガスの供給は、具体的には、制御部64によって、弁26を開状態に切り換えると共に弁30を閉状態に切り換えることによって実施される。またステップS107における加湿空気ガスの供給は、具体的には、制御部64によって、三方弁36を無加湿空気ガス供給ライン40側から加湿空気ガスライン38側に切り換えることによって実施される。
【0082】
このように発電準備が完了すると、制御部64は発電開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS108)。発電開始条件は、具体的には、抵抗センサ68の検知値Rが所定閾値(FC発電開始判定内部抵抗R2:図3(e)を参照)以下であるか否かに基づいて判定する。発電開始条件が成立すると(ステップS108:YES)、制御部64は電力制御器58に指令を出すことによって、燃料電池1を充電残量が少ない駆動用バッテリ62aに電気的に接続することにより、燃料電池1で発電された電力を充電する(ステップS109)。ステップS109の様子を模式的に示したのが図4(d)である。
【0083】
尚、ステップS108では燃料電池1の内部抵抗Rのみに基づいて発電開始条件を判定しているが、これに代えて又は加えて、電圧センサ66の検知値Vが所定閾値(FC発電開始判定電圧V4:図3(f)を参照)以上であるか否か、ステップS107が実施された後に所定時間(発電開始時間T2:図3(b)を参照)経過して燃料電池1の状態が安定したか否かに基づいて判定することで、より精度のよい判定を行ってもよい。
【0084】
燃料電池1が発電している間、制御部64は第1発電終了条件が成立するか否かを監視する(ステップS110)。第1発電終了条件は、具体的には、SOCセンサ70の検知値が所定閾値(FC発電終了判定SOC2:図3(h)を参照)に達したか否かに基づいて判定する。
【0085】
第1発電終了条件が成立すると(ステップS110:YES)、制御部64は燃料極4への加湿水素ガスの供給を停止する(ステップS111)。ステップS111は、具体的には制御部64が、元弁18を閉状態にし、圧力調整器20を停止状態にし、弁26を開状態にし、再循環ポンプ52を停止状態にすることによって実施される。ステップS111の様子を模式的に示したのが図4(e)である。
【0086】
すなわち、第1発電終了条件が成立した時点では、空気極6への加湿空気ガスの供給は継続したままであるため、燃料電池1は燃料極4に残存している加湿水素ガスを利用して発電を継続することができる。つまり、第1発電終了条件の成立後も燃料極4に水素ガスが残っている間、燃料電池1は少なからず発電を継続する。このように、本実施形態では先に加湿水素ガスの供給を停止することで、燃料極4に残存した水素ガスを無駄なく使いきることができ、良好な燃費性能が得られる。
【0087】
続いて制御部64は、第2発電終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS112)。第2発電終了条件では、制御部64は、電圧センサ66の検知値Vが所定閾値(無加湿空気極Air供給判定燃料電池電圧V5:図3(f)を参照)以下になったか否かを判定する。第2発電終了条件が成立すると(ステップS112:YES)、制御部64は外部負荷60を電気的に隔離すると共に、空気極6に供給されている加湿空気ガスを無加湿空気ガスに切り換える(ステップS114)。これにより、空気極6に無加湿空気ガスを燃料極4より先に供給することによって、電極間のプロトン伝導度を低下(内部抵抗の増大)させ、逆電流が流れにくい条件を形成させる。
【0088】
尚、ステップS114における無加湿空気ガスへの切替は、制御部64によって三方弁36を加湿空気ガス供給ライン38側から無加湿空気ガスライン40側に切り換えることによって実施される。ステップS114の様子を模式的に示したのが図4(f)である。
【0089】
続いて制御部64は、第3発電終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS115)。第3発電終了条件は、抵抗センサ68の検知値Rが所定閾値(無加湿燃料極Air供給判定内部抵抗R3:図3(e)を参照)以上に到達したか否かを判定する。第3発電終了条件が成立すると(ステップS115:YES)、制御部64は、空気極6への無加湿空気ガスの供給を停止すると共に、燃料極4に無加湿空気ガスを供給する(ステップS116)。
【0090】
尚、ステップS116における空気極6への無加湿空気ガスの供給停止は、元弁34を閉状態に切り換えることによって実施される。またステップS116における燃料極4への無加湿空気ガスの供給は、バルブ46を開状態にすることで、ライン44を介して実施される。
【0091】
そして制御部64は完全停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS117)。完全停止条件は、燃料極4に設置された水素濃度センサ74の検知値が所定閾値(完全停止判定H濃度CH23:図3(d)を参照)に到達し、且つ、ステップS116の実施から所定時間(完全停止時間T3:図3(b)を参照)が経過したか否かにより、成否が判定される。
【0092】
完全停止条件が成立した場合(ステップS117:YES)、制御部64は、燃料極4への無加湿空気ガスの供給を停止し、両極に空気雰囲気を形成することにより、燃料電池システム100を完全停止させる(ステップS118)。ステップS118では、具体的にはエアコンプレッサ32を停止状態にし、水素ガス排気弁48を閉状態にし、バルブ46を閉状態に設定することにより実施される。このように完全停止時に各極を空気ガスで満たして乾燥させることで、例えば寒冷地で残留水分が凍結して膨張することによって、内部の各種構造体を壊して故障することを防止できる。また、次回の起動時においても燃料電池1は乾燥状態になっているため、起動時間を短縮することが可能である。
【0093】
以上説明したように本実施形態に係る燃料電池システム100によれば、燃料電池1の起動時に燃料極4及び空気極6に無加湿ガスを供給することによって、電極間のプロトン伝導度を低下(内部抵抗の増大)させる。これにより、起動時に生じる逆電流を防止し、劣化発生を効果的に抑制できる。
【0094】
(実施例2)
ここで図5は本実施例に係る燃料電池システム200の概略構成を示す模式図であり、図6図5の燃料電池システム200の制御内容を示すフローチャートであり、図7図5の燃料電池システム200における各種パラメータのタイムチャートであり、図8図5の燃料電池システム200における各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
【0095】
図5に示すように、燃料電池システム200は駆動用バッテリ62を一つのみ有している点において、上述の燃料電池システム100と異なっている。燃料電池システム200を起動する際には、上述の燃料電池システム100と同様に、まず燃料電池起動条件が成立したか否か(SOCが無加湿水素Hガス供給判定SOC1以下であるか否か)を判定し(ステップS201)、該燃料電池起動条件が成立した場合に、燃料電池1を起動する(ステップS202)。
【0096】
燃料電池1が起動すると(詳細な起動過程については、実施例1(図2等を参照)と同様であるので詳細な説明は割愛する)、燃料電池1で発電された電力は外部負荷60に供給される(ステップS203)。そして、制御部64は燃料電池1に余剰電力があるか否かを判定し(ステップS204)、余剰電力がある場合、その余剰電力を駆動用バッテリ62に充電する(ステップS205)。すなわち、図7(g)においてハッチングで示した領域分が、余剰電力として駆動用バッテリ62に充電される。
【0097】
以上説明したように本実施形態に係る燃料電池システム200によれば、単一の駆動用バッテリ62を備える場合には、燃料電池1で発電した電力を直接的に電動機である外部負荷60に供給しながら、その余剰電力を駆動用バッテリ62に充電することで、燃料電池1の起動回数を不必要に増加させることなく、効率的な充放電制御を行うことができる。また余剰電力を利用して電動車両の走行中での充電が可能となるので、航続距離の延長に寄与する。
【0098】
(実施例3)
図9は本実施形態に係る燃料電池システム300の全体構成を示すブロック図である。尚、図9では上述した他の実施形態と共通する箇所には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略することとする。
【0099】
前述の燃料電池システム100、200では、水素ガス供給ライン8は圧力調整器20の下流側で加湿水素ガスライン22と無加湿水素ガス供給ライン24とに分岐されていたが(図1図5を参照)、本実施形態では、水素ガス供給ライン8は無加湿水素ガス供給ラインのみから構成されており、加湿水素ガスラインが存在していない。すなわち、水素ガス供給ライン8側には加湿器が設けられていない。
【0100】
燃料電池システム300の制御内容は、基本的には実施例1と同様であるが(図2を参照)、ステップS107において発電準備を行う際には、燃料極4に無加湿水素ガスの供給を継続しながら、空気極6のみに加湿空気ガスを供給するように変更する点でのみ異なることとなる。このように上記実施例は、加湿器が少ないシンプルな構成を有する場合についても適用可能である。
【0101】
(実施例4)
本実施例に係る燃料電池システム400は、上述の実施例1に係る燃料電池システム100と同じ構造を有するが(図1を参照)、起動時に追加の制御が加わる点において異なる。図10は本実施例に係る燃料電池システム400の制御内容を示すフローチャートであり、図11図10の燃料電池システム400の各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートであり、図12図10の燃料電池システム400における各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
【0102】
まず制御部64は上記ステップS101と同様に、燃料電池起動条件が成立したか否かを判定する(ステップS401)。燃料電池起動条件が成立すると(ステップS401:YES)、制御部64はプレ起動開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS402)。プレ起動開始条件は、燃料極4及び空気極6に設置されたそれぞれの水素濃度センサ74の検出値が所定閾値(無加湿空気ガス供給判定濃度CH0:図11(d)を参照)以下であるか否かに基づいて判定する。
【0103】
尚、ステップS402ではプレ起動開始条件を水素濃度のみに基づいて判定しているが、これに加えて又は代えて、抵抗センサ68の検知値が所定閾値(無加湿Air供給判定内部抵抗R0:図11(e)を参照)以下であるか否かに基づいて判定することによって、より精度のよい判定を行ってもよい。
【0104】
プレ起動開始条件が成立すると(ステップS402:YES)、制御部64は燃料極4及び空気極6に無加湿空気ガスをそれぞれ供給する(ステップS403)。ステップS403では具体的には、制御部64がエアコンプレッサ16を作動状態、弁26を閉状態、弁30を開状態、元弁34を開状態、三方弁36を無加湿空気ガスライン側に開状態、バルブ46を開状態、排気弁48を開状態に制御することによって実施される。
尚、ステップS403において、燃料極4及び空気極6に無加湿空気ガスが供給されている様子を模式的に示しているのが、図12(b)である。
【0105】
続いて、制御部64は上述のステップS102と同様に、第1起動開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS404)。第1起動開始条件では、具体的には、燃料極4に設置された水素濃度センサ74の検知値が閾値(無加湿水素ガス供給判定濃度CH1:図11(d)を参照)以下であるか否かに基づいて判定される。第1起動開始条件が成立した場合(ステップS404:YES)、すなわち燃料極4の水素濃度が閾値以下である場合、制御部64は燃料極4に空気が残存していると考えられるため、燃料極4に対して無加湿水素ガスを供給すると共に、空気極6への無加湿空気ガスの供給を停止する(ステップS405)。これに加えて又は代えて、抵抗センサ68の検知値が所定閾値(無加湿H供給判定内部抵抗R1:図11(e)を参照)以上であるか否かに基づいて判定することによって、より精度のよい判定を行ってもよい。
尚、ステップS405において、燃料極4に無加湿水素ガスが供給されている様子を模式的に示しているのが、図12(c)である。
【0106】
尚、ステップS405の動作は、制御部64によって、元弁18を開状態にし、圧力調整器20を減圧状態にし、エアコンプレッサ32を停止状態にし、バルブ46を閉状態にし、再循環ポンプ52を作動状態にし、三方弁56を無加湿水素ガスライン方向に開状態にすることにより実施される。尚、排気弁48は基本的に閉状態であるが、空気極6からクロスリークしてくる窒素や水分などの不純物が濃縮してきた場合のみ開状態に切り換えるとよい。
【0107】
ステップS405が実施されると、実施例1(図2参照)におけるステップS103を完了した状態と同じとなり、以下、図10に示すように、ステップS104以降と同様の処理が実施されることとなる。
【0108】
このように本実施例では、燃料電池1の起動時に燃料極4及び空気極6に無加湿空気ガスを供給する。上述したように、燃料電池1の起動時には、燃料極4に無加湿水素ガスを供給して燃料電池1の電極間のプロトン伝導度を低下(内部抵抗の増大)させるが、逆電流を十分抑制可能な程度にプロトン伝導度を低下させるためには、時間をかけて多量の無加湿水素ガスを供給しなければならない場合がある。本実施例では、このような場合であっても、両極に無加湿空気ガスを供給することによって、水素ガスの消費量を抑えながら、プロトン伝導度を低下できる。
【0109】
(実施例5)
図13は本実施例に係る燃料電池システム500の全体構成を示すブロック図であり、図14図13の燃料電池システム500の制御内容を示すフローチャートである。
【0110】
尚、燃料電池システム500は上述の燃料電池システム100と基本的な構成を有するため、以下では、燃料電池システム100と異なる点のみ説明することとし、重複する説明は適宜省略する。
【0111】
まず図13に示すように、水素ガス供給ライン8のうち加湿水素ガス供給ライン22と無加湿水素ガス供給ライン24との合流点80の下流側には三方弁82が接続されている。三方弁82はまた燃料極4及び空気極6に接続されており、制御部64によって制御されることによって、水素ガス供給ライン8を燃料極4及び空気極6のいずれか一方に連通可能に構成されている。
【0112】
空気ガス供給ライン12のうち加湿空気ガス供給ライン38と無加湿空気ガス供給ライン40との合流点84の下流側には三方弁86が接続されている。三方弁86はまた燃料極4及び空気極6に接続されており、制御部64によって制御されることによって、空気ガス供給ライン12を燃料極4及び空気極6のいずれか一方に連通可能に構成されている。
【0113】
燃料極4の排出側には三方弁88が接続されており、空気極6の排出側には三方弁90が接続されている。三方弁88及び90は制御部64によって制御されることにより、それぞれ燃料極4及び空気極6を水素ガス排出ライン10及び空気ガス排出ライン14のいずれか一方に接続可能に構成されている。
【0114】
続いて本実施例に係る燃料電池システム500の制御内容について図14を参照して説明する。
制御部64は、不図示のメモリなどの記憶部にアクセスすることにより燃料電池1の過去の起動回数を読み込み(ステップS501)、該起動回数が所定閾値(切替判定回数)以上であるか否かを判定する(ステップS502)。その結果、起動回数が所定閾値以上である場合(ステップS502:YES)、制御部64は燃料極4及び空気極6の切替制御を実施し(ステップS503)、起動開始制御を実施する(ステップS504)。一方、起動回数が所定閾値未満である場合(ステップS502:NO)、制御部64は切替制御を実施することなく、起動開始制御を実施する(ステップS504)。
【0115】
尚、ステップS504における起動開始制御は、前述の各実施例で説明した制御内容を意味しており、ここでは重複する説明は省略することとする。
【0116】
ここで図15は、図13の燃料電池システム500における切替制御の様子を模式的に示す図である。図15(a)は切替制御実施前の状態を示しており、水素ガス供給ライン8、水素ガス排出ライン10がそれぞれ燃料極4の上流側、下流側に接続されていると共に、空気ガス供給ライン12、空気ガス排出ライン14がそれぞれ空気極6の上流側、下流側に接続されている。
【0117】
一方、図15(b)は制御部64によって三方弁82、86、88、90を切り換えることによって切替制御が実施された後の状態を示している。図15(b)では、水素ガス供給ライン8、水素ガス排出ライン10がそれぞれ空気極6の上流側、下流側に接続されていると共に、空気ガス供給ライン12、空気ガス排出ライン14がそれぞれ燃料極4の上流側、下流側に接続されている。
【0118】
本実施例では、燃料極4及び空気極6は互いに同様の構成を有しており、このように供給・排出される水素ガス・空気ガスを入れ替えることにより、実質的に燃料極4と空気極6と入れ替え可能に構成されている。
【0119】
このように本実施例によれば、燃料電池1の起動回数が所定回数に達すると、切替機構(三方弁82、86、88、90)を制御することにより、水素ガスの供給・排出ラインと空気ガスの供給・排出ラインとを入れ替える。起動時の劣化発生時には、燃料極4に比べて空気極6において、電極の腐食が速く進行する。そのため、起動回数が所定回数に達すると、切替機構を作動して水素ガスの流路と空気ガスの流路とを入れ替えることにより、実質的に燃料極4と空気極6とを入れ替える。これにより、一方の電極のみが腐食し続ける場合に比べて、長寿命な燃料電池システムを実現することができる。
【0120】
(実施例6)
続いて図16乃至図18を参照して、実施例6について説明する。本実施例に係る燃料電池システムは、図1を参照して前述したシステムと同様であり、特段の記載がない限りにおいて、重複する説明は適宜省略することとする。本実施例では、電力制御器58は例えばインバータやDC/DCコンバータを含んで構成されており、燃料電池1の負荷側の容量が可変に構成されている。
【0121】
図16は実施例6に係る燃料電池システムの制御内容を手順毎に示すフローチャートであり、図17図16の燃料電池システムに関する各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートであり、図18図16の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
【0122】
本実施例に係る燃料電池システムは、初期状態において非充電状態にある。このとき、電力制御器58は、燃料電池1が負荷である駆動バッテリ62から切り離されるように制御されている。本実施形態では図18に示されるように、燃料電池システムは2つの駆動バッテリ62a及び62bが備えられており、一方の駆動バッテリ62aに対して燃料電池1から充電を行うと共に、駆動バッテリ62bは外部負荷60に接続されている。すなわち、外部負荷60は駆動バッテリ62bの電力を消費するため、その間に、駆動バッテリ62aは必要に応じて燃料電池1から充電可能に構成されている。
【0123】
まず制御部64はSOCセンサ70の検知信号を取得することによって、充電対象である駆動バッテリ62aの充電残量SOCが無加湿H2・Air供給判定SOC1以下であるか否かを判定する(ステップS601)。ここで無加湿H2・Air供給判定SOC1は、充電対象である駆動バッテリ62aに対して充電の必要性があるか否かを判定するための閾値であり、以下に説明する一連の充電制御を開始するか否かを判定する閾値として機能するものである。
尚、無加湿H2・Air供給判定SOC1の具体的な数値は、燃料電池1の充電性能及び充電先である駆動バッテリ62の蓄電性能に応じて適宜設定される。
【0124】
駆動バッテリ62aの充電残量SOCが無加湿H2・Air供給判定SOC1以下である場合(ステップS601:YES)、制御部64は駆動バッテリ62aの残量が不足しているため、充電を実施する必要があると判断する。この場合、制御部64は燃料極4に無加湿水素ガスを供給すると共に空気極6に無加湿空気ガスを供給する(ステップS602)。
尚、本実施例では、燃料極4に無加湿水素ガスを供給すると同時に空気極6に無加湿空気ガスを供給しているが、前述の実施例のように、燃料極4に無加湿水素ガスを供給した後に、空気極6に無加湿空気ガスを供給してもよい。
【0125】
一方、駆動バッテリ62aの充電残量SOCが無加湿H2・Air供給判定SOC1より大きい場合(ステップS1:NO)、制御部64は駆動バッテリ62aに十分な残量があるため、充電の必要がないと判断し、燃料電池システムの起動を終了する(END)。
【0126】
続いて、制御部64は燃料電池1の出力電圧(燃料極4及び空気極6間の電位差)Vが第1の所定値V1以上であり、且つ、燃料極4及び空気極6への無加湿ガスの供給時間Tが第1の所定時間T1に到達したか否かを判定する(ステップS603)。ここで第1の所定値V1は燃料電池1の起電力に対応するものとして予め規定される。また第1の所定時間T1は、次の処理ステップに進むまでの適当な待機時間である。第1の所定値V1は、負荷を接続していない開回路状態の電圧値(約0.85V以上)を指す。
【0127】
ステップS603が成立した場合、制御部64は燃料電池1の出力電圧Vが第2の所定値V2になるように負荷側の容量を調整する(ステップS604)。ここで、第2の所定値V2は第1の所定値V1より低く、且つ、後述する第3の所定値V3より大きくなるように予め設定されている。このような出力電圧Vの調整は、制御部64が電力制御器58が備えるインバータやDC/DCコンバータを操作することにより、燃料電池1の負荷側の容量を制御することで実施される。具体的には、初期状態でゼロであった負荷側の容量を増加させることによって、微小な充電電流(第1電流I1)を生じさせる。これに伴い、出力電圧Vは第1の所定値V1から第2の所定値V2に降下する。
【0128】
このように、燃料極4及び空気極6に対して無加湿ガスを供給することにより出力電圧Vが第1の所定値V1になった後、出力電圧Vが第2の所定値V2になるように負荷側の容量を制御する。すなわち、出力電圧Vを後述する第3の所定値V3に低下させて本番充電を実施する際に、出力電圧Vが第2の所定値V2を経て段階的に低下になるように制御される。これにより、負荷変動時に出力電圧が大きく変化することに起因する電極触媒の劣化を抑制することができる。
【0129】
またこのような出力電圧Vの段階的な変化は、各電極に無加湿ガスが供給されることによって充電電流が小さな状態で実施される。このような状態は燃料電池の発電特性が低い反面、劣化感度も低い。そのため、負荷変動に伴う出力電圧による劣化も生じにくい。
【0130】
尚、このように負荷側の容量を調整することによって、燃料電池1の内部抵抗は次第に低下すると共に第1電流I1が流れる。このとき、燃料極4及び空気極6では、供給されている無加湿ガスに含まれる少量の水分利用、または、少なからず発電反応(例えば、自動車用に主に用いられる固体高分子型燃料電池では、燃料極4においてH→2H+2e、空気極6においてO +4H+4e→2HOの反応)が行われ、生成水が生み出される。発生した生成水は、燃料極4及び空気極6の湿潤化に貢献するため、後述する本番充電までの所要時間を効果的に短縮できる。
【0131】
続いて制御部64は、ステップS604が開始されてから第2の所定時間(第一電流保持時間)T2が経過したか否かを判定する(ステップS605)。第2の所定時間T2が経過すると(ステップS605:YES)、制御部64は、燃料電池1の出力電圧Vが第3の所定値V3になるように負荷側の容量を制御する(ステップS606)。ここで第3の所定値V3は、上述の第1の所定値V1及び第2の所定値V2に比べて低い電圧値である。
【0132】
このような出力電圧Vの調整は、制御部64が電力制御器58が備えるインバータやDC/DCコンバータを操作することにより、燃料電池1の負荷側の容量を制御することで実施される。具体的には、ステップS604で第1電流I1に対応するように設定されている負荷側の容量を更に増加させることによって、充電電流が第2電流I2になるように制御される。これにより、出力電圧Vは第2の所定値V2から第3の所定値V3に降下する。
【0133】
続いて制御部64は、ステップS606が開始されてから第3の所定時間(第2電流保持時間)T3が経過したか否かを判定する(ステップS607)。そして第3の所定時間T3が経過すると(ステップS607:YES)、制御部64は燃料極4に加湿水素ガスを供給すると共に、空気極6に加湿空気ガスを供給する(ステップS608)。これにより、燃料電池1の湿潤化が大きく促進され、燃料電池1の内部抵抗が減少すると共に、充電電流が第2電流から第3電流に増加する。ここで、第3電流は、燃料極4及び空気極6への加湿ガスの供給量が時間経過と共に増加するに従って増大する(第3電流I3)。
【0134】
ここで加湿ガスの供給が開始されると、制御部64は燃料電池1の出力電圧Vが略一定になるように、負荷側の容量を制御する。一般的に充電電流が増加すると出力電圧が低下するが、このような出力電圧の変動は、電極触媒の劣化要因となる。そこで本実施形態では、電力制御器58を制御することによって、負荷側の容量を調整し、出力電圧の変動を抑制する。図16の例では、充電電流(第3電流I3)は第2電流I2から本番の充電電流に向かって急激に増加しているが、電力制御器58を制御することによって、出力電圧は第3の所定値V3に維持されている。
【0135】
続いて内部抵抗が所定内部抵抗値以下であり、且つ、出力電圧Vが所定燃料電池電圧領域内であるかを判定し(ステップS609)、当該条件が成立するタイミングで本番充電を開始する(ステップS610)。充電電流(第3電流I3)は、最終的に本番充電燃料電池電流に達し、駆動バッテリ62aに対して迅速に充電(本番充電)される。このような本番充電は、駆動バッテリ62aの充電残量SOCが充電制御終了判定SOC2に到達するまで継続され、一定の充電電流によって充電することが好ましい(ステップS611)。
このように本番充電では大きな充電電流で充電することで、駆動バッテリ62aが目標充電量になるまでに要する時間(充電時間)が短縮可能になる。その結果、駆動バッテリ62a、bの充電総回数の低減に繋がる。これは、充電制御中、駆動バッテリ62bは走行出力によってSOCが低下しており、駆動バッテリ62aの充電時間が長くなることで、比較的早い段階で駆動バッテリ62bへの充電制御を開始すること繋がってしまい、必然的に燃料電池の充電制御回数が増加してしまう。そのため、大きな充電電流による短時間充電が充電総回数の低減には必要な手段である。
【0136】
このように燃料電池1によって駆動バッテリ62aを充電する際に、燃料電池1の出力電圧Vを段階的に変化させることで、燃料電池1の出力電圧Vが高電圧領域から低電圧領域に向かって大きく一気に降下することを防止でき、これに起因する電極触媒の劣化を効果的に抑制できる。
尚、上記実施例では、充電電流が2段階に変化する場合について例示したが、より多段階に変化させてもよい。
(実施例7)
【0137】
図19乃至図20を参照して、実施例7について説明する。本実施例に係る燃料電池システムは、単一駆動バッテリ構成を成す当該システムを指し、代表例として図5を参照とする燃料電池システムとしている。
【0138】
燃料電池システムの制御内容を手順毎に示すフローチャートについては図16と同様であり、図19図16の燃料電池システムに関する各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートであり、図20図16の燃料電池システムにおける各種ガス及び電力の流れを簡易的に示す模式図である。
【0139】
本実施例に係る燃料電池システムは、初期状態において非充電状態にあり、駆動バッテリ62が単一の構成を成している当該システムを指す。本実施形態では図20に示されるように、燃料電池システムは単一の駆動バッテリ62が備えられており、実施例6の際に前述した第3電流I3までは駆動用バッテリ62からの走行出力を燃料電池1がアシストする形として機能し、本番充電以降では、駆動バッテリ62が充電制御終了判定SOC2まで到達するまで、燃料電池1が一時的に駆動用として機能する。この時、燃料電池1からの余剰電力分を充電出力として駆動バッテリ62へ充電する。駆動バッテリ62を充電している間、燃料電池1は駆動用として機能しているため負荷変動が生じることになる。しかし、この負荷変動は燃料電池1が稼動しているため主に0.6V〜0.8Vの電圧領域であることが想定され、充電制御開始段階の様(S602、S603)な高い単セル電圧領域(0.9〜1.0V)となる開回路電圧から低い単セル電圧領域(0.6〜0.7V)へと電圧降下する出力電圧の変化は回避されるため、充電制御開始時の劣化事象に比べて、劣化影響度は小さく弊害はない。
【0140】
以降の制御手順は、実施例6のフローチャート図16と同様であるため省略し、駆動バッテリ62が充電制御終了判定SOC2に到達するまで燃料電池1は稼動する。
【0141】
尚、実施例6では、燃料電池1の出力電圧Vを段階的に制御することによって、従来のように一気に変化させる場合に比べて本番充電を実施するまでに要する時間を要することとなる。しかしながら、燃料電池1の充電先である駆動バッテリ62aは、外部負荷60に接続されていない。すなわち、燃料電池1は、外部負荷60の出力要求に直接的に応じることなく、外部負荷60が接続されていない駆動バッテリ62aに対して充電できる。そのため、本番充電を実施するまでに要する時間が長くなったとしても、何ら弊害はなく、実施例7においても同様である。
【0142】
これは、実施例6の場合、例えば外部負荷60が電気自動車の走行用モータである場合には、燃料電池1は電気自動車が走行することによって駆動バッテリ62a及び62bのいずれかの充電残量が減った場合に充電を実施すればよいため、駆動バッテリ62a及び62bの充電残量を補完する役割を有する、いわゆる実施例6はレンジエクステンダーとして機能できることを意味する。これにより、燃料電池の制御設計の自由度が向上できる。また、実施例7においても、駆動バッテリ62出力を駆動用とし、燃料電池1は駆動バッテリ62の充電を主とするレンジエクステンダー機能として構成しているため、実施例7の際に前述した当該制御が可能となる。
【0143】
以上説明したように、本実施例によれば、燃料電池の負荷変動時に発生する劣化を効果的に抑制可能な燃料電池システム及び該燃料電池システムを搭載した電動車両を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本開示は、燃料極及び空気極を備える燃料電池を含む燃料電池システム、並びに、該燃料電池システムを利用した電動車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0145】
1 燃料電池
2 電解質膜
4 燃料極
6 空気極
8 水素ガス供給ライン
10 水素ガス排出ライン
12 空気ガス供給ライン
14 空気ガス排出ライン
16 水素ガス貯蔵タンク
18、34 元弁
20 圧力調整器
22 加湿水素ガス供給ライン
24 無加湿水素ガス供給ライン
26、30 弁
28 加湿器
32 エアコンプレッサ
36、56 三方弁
38 加湿空気ガス供給ライン
40 無加湿空気ガス供給ライン
42 加湿器
44 燃料極空気ガス供給ライン
46 バルブ
48 排気弁
50 水素ガス希釈装置
52 再循環ポンプ
54 ライン
58 電力制御器
60 外部負荷(電動機)
62 駆動用バッテリ
64 制御部
66 電圧センサ
68 抵抗センサ
70 SOCセンサ
72 背圧制御器
74 水素濃度センサ
80、84 合流点
82、86、88、90 三方弁
100 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20