特許第6254967号(P6254967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254967
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】車両用フロントピラー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   B62D25/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-40788(P2015-40788)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-159786(P2016-159786A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北口 和章
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/053080(WO,A1)
【文献】 特開2008−168778(JP,A)
【文献】 特開2005−014908(JP,A)
【文献】 特開2014−008949(JP,A)
【文献】 特開2010−013022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外側部材であるフロントピラーアウタと車体の内側部材であるルーフインナリンフォースおよびフロントピラーインナとを備え、車両前後方向を長手方向としながら該長手方向の全体に閉断面を形成する車両用フロントピラーであって、
前記フロントピラーアウタおよび前記ルーフインナリンフォースには、車幅方向の内側に向けた内側フランジがそれぞれ形成され、
前記フロントピラーインナには、車幅方向の外側に向けた外側フランジが形成されており、
前記フロントピラーは、前記フロントピラーアウタの内側フランジと前記フロントピラーインナの外側フランジとが重ね合わされた状態で接合されることによって前記閉断面が形成され、
前記ルーフインナリンフォースの内側フランジは、前記フロントピラーアウタの内側フランジに重ね合わされた状態で接合され、
前記フロントピラーインナに形成され、車両外側へ向かって開口する第1凹溝を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部、および、前記フロントピラーアウタに形成され、車両内側へ向かって開口する第2凹溝を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部の、少なくとの一方が備えられており、
前記フロントピラーインナには、車両前後方向の前側に配設されたフロントピラーインナフロントと、車両前後方向の後側に配置されたフロントピラーインナリアとが一体的に備えられており、
前記フロントピラーインナフロントには、車幅方向の内側に向けた内側フランジが形成され、
前記フロントピラーインナリアには、車幅方向の外側に向けた前記外側フランジが形成されており、
前記フロントピラーは、前記フロントピラーアウタの内側フランジと前記フロントピラーインナリアの外側フランジとが重ね合わされた状態で接合されることにより前記閉断面が形成され、
前記フロントピラーインナフロントの内側フランジには、カウルが接合されている
ことを特徴とする車両用フロントピラー。
【請求項2】
前記ルーフインナリンフォースと前記フロントピラーインナリアとは、それらが車両前後方向において重ね合わされる後側重合部を有し、該後側重合部において前記フロントピラーアウタの内側フランジに前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーインナリアの外側フランジとが接合されると共に、
前記フロントピラーインナリアと前記フロントピラーインナフロントとは、それらが車両前後方向において重ね合わされる前側重合部を有し、該前側重合部において前記フロントピラーアウタの内側フランジに前記フロントピラーインナリアの外側フランジと前記フロントピラーインナフロントの内側フランジとが接合されることで、前記閉断面が形成されている
ことを特徴とする請求項1の車両用フロントピラー。
【請求項3】
前記後側重合部には、フロントヘッダパネルと接合される前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーアウタの内側フランジとが重ね合わされた接合部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2の車両用フロントピラー。
【請求項4】
車体の外側部材であるフロントピラーアウタと車体の内側部材であるルーフインナリンフォースおよびフロントピラーインナとを備え、車両前後方向を長手方向としながら該長手方向の全体に閉断面を形成する車両用フロントピラーであって、
前記フロントピラーアウタおよび前記ルーフインナリンフォースには、車幅方向の内側に向けた内側フランジがそれぞれ形成され、
前記フロントピラーインナには、車幅方向の外側に向けた外側フランジが形成されており、
前記フロントピラーは、前記フロントピラーアウタの内側フランジと前記フロントピラーインナの外側フランジとが重ね合わされた状態で接合されることによって前記閉断面が形成され、
前記ルーフインナリンフォースの内側フランジは、前記フロントピラーアウタの内側フランジに重ね合わされた状態で接合され、
前記フロントピラーインナに形成され、車両外側へ向かって開口する第1凹溝を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部、および、前記フロントピラーアウタに形成され、車両内側へ向かって開口する第2凹溝を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部の、少なくとの一方が備えられており、
前記後側重合部には、フロントヘッダパネルと接合される前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーアウタの内側フランジとが重ね合わされた接合部が設けられている
ことを特徴とする車両用フロントピラー。
【請求項5】
前記フロントピラーインナは、前記フロントピラーアウタに対して車両上下方向の下側に位置している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかの車両用フロントピラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の一部である車両用フロントピラーにおいて、運転者の視界を向上させるためにそのフロントピラーの幅を比較的細くすると共に、曲げ耐力を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体の外側部材であるフロントピラーアウタと車体の内側部材であるフロントピラーインナとを備え、略車両前後方向を長手方向としながらその長手方向の全体に閉断面を形成する車両用フロントピラーが知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用フロントピラーがそれである。このような車両用フロントピラーでは、ウインドシールドガラスを受けるために車両の中心側に突き出して重ねられていたフロントピラーインナのフランジおよびフロントピラーアウタのフランジに替えて、フロントピラーインナのフランジを内側へ折り返して第1フロントフランジとし、フロントピラーアウタのフランジを切り欠いてフロント側の一部を第2フラントフランジとし、それら第1フロントフランジと第2フロントフランジとを重ねた状態で閉断面を形成するとともに、その第2フロントフランジによりウインドシールドガラスを受けるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−347440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフロントピラーによれば、ウインドシールドガラスを受けるために車両の中心側に突き出して重ねられていたフロントピラーインナのフランジおよびフロントピラーアウタのフランジが廃止されて、フロントピラーアウタのフロント側の一部である第2フロントフランジによりウインドシールドガラスを受けるので、運転者の視界が向上させられている。
【0005】
しかしながら、フロントピラーインナから車両中心側へ突き出していたフランジおよびフロントピラーアウタから車両中心側へ突き出していたフランジが廃止されているため、フロントピラーの曲げ耐力がその分だけ低下し、さらなる曲げ耐力の向上が必要であるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、運転者の視界を向上させると共に十分なる曲げ耐力を有する車両用フロントピラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、本発明の要旨とするところは、(a)車体の外側部材であるフロントピラーアウタと車体の内側部材であるルーフインナリンフォースおよびフロントピラーインナとを備え、車両前後方向を長手方向としながらその長手方向の全体に閉断面を形成する車両用フロントピラーであって、(b)前記フロントピラーアウタおよび前記ルーフインナリンフォースには、車幅方向の内側に向けた内側フランジがそれぞれ形成され、(c)前記フロントピラーインナには、車幅方向の外側に向けた外側フランジが形成されており、(d)前記フロントピラーは、前記フロントピラーアウタの内側フランジと前記フロントピラーインナの外側フランジとが重ね合わされた状態で接合されることによって前記閉断面が形成され、(e)前記ルーフインナリンフォースの内側フランジは、前記フロントピラーアウタの内側フランジに重ね合わされた状態で接合され、(f)前記フロントピラーインナに形成され、車両外側へ向かって開口する第1凹溝を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部、および、前記フロントピラーアウタに形成され、車両内側へ向かって開口する第2凹溝を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部の、少なくとも一方が備えられていることにある。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の車両用フロントピラーによれば、前記フロントピラーは、前記フロントピラーアウタの内側フランジと前記フロントピラーインナの外側フランジとが重ね合わされた状態で接合されることによって前記閉断面が形成されるので、例えば前記フロントピラーインナの外側フランジに替えて車幅方向の内側に向けた内側フランジを使用する場合に比較してフロントピラーの幅が好適に細くなり運転者からのフロントピラーを介しての視界が向上させられる。また、前記ルーフインナリンフォースの内側フランジは、前記フロントピラーアウタの内側フランジに重ね合わされた状態で接合されているので、例えば前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーアウタの内側フランジとに重ね合わされた部分に車体の一部例えばフロントヘッダパネルが接合されると、前記フロントピラーと車体の一部とが接合される接合部分の強度が従来に比較して向上させられる。これによって、前記車両用フロントピラーは、運転者の視界が向上させられると共に、車体と接合される接合部分の強度が従来に比較して向上させられる。
【0009】
また、本発明の車両用フロントピラーによれば、前記フロントピラーインナに形成され、車両外側へ向かって開口する第1凹溝を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部、および、前記フロントピラーアウタに形成され、車両内側へ向かって開口する第2凹溝を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部の、少なくとも一方が備えられているので、第1凸条部および第2凸条部の少なくとも一方による剛性向上作用により前記フロントピラーの曲げ耐力が一層高められる。
【0010】
ここで、好適には、前記フロントピラーインナは、前記フロントピラーアウタに対して車両上下方向の下側に位置している。このため、前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーアウタの内側フランジとが隙間無く重ね合わされた状態で接合されるので、接合部分の強度が一層高められる。例えばその重ね合わせ部分に車体の一部例えばフロントヘッダパネルが接合されると、前記フロントピラーと車体の一部とが接合される接合部分の強度が従来に比較して一層向上させられる。
【0011】
また、好適には、(a)前記フロントピラーインナには、車両前後方向の前側に配設されたフロントピラーインナフロントと、車両前後方向の後側に配置されたフロントピラーインナリアとが一体的に備えられており、(b)前記フロントピラーインナフロントには、車幅方向の内側に向けた内側フランジが形成され、(c)前記フロントピラーインナリアには、車幅方向の外側に向けた前記外側フランジが形成されており、(d)前記フロントピラーは、前記フロントピラーアウタの内側フランジと前記フロントピラーインナリアの外側フランジとが重ね合わされた状態で接合されることにより前記閉断面が形成され、(e)前記フロントピラーインナフロントの内側フランジには、カウルが接合されている。このため、前記フロントピラーインナに一体的に備えられた前記フロントピラーインナフロントの内側フランジにカウルが接合されるので、例えば前記フロントピラーインナに切欠を設けて一体に外側フランジと内側フランジとを形成させてその内側フランジにカウルを接合させるものに比較して、前記フロントピラーと前記カウルとが接合される接合部分の強度が好適に向上させられる。
【0012】
また、好適には、(a)前記ルーフインナリンフォースと前記フロントピラーインナリアとは、それらが車両前後方向において重ね合わされる後側重合部を有し、その後側重合部において前記フロントピラーアウタの内側フランジに前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーインナリアの外側フランジとが接合されると共に、(b)前記フロントピラーインナリアと前記フロントピラーインナフロントとは、それらが車両前後方向において重ね合わされる前側重合部を有し、その前側重合部において前記フロントピラーアウタの内側フランジに前記フロントピラーインナリアの外側フランジと前記フロントピラーインナフロントの内側フランジとが接合されることで、前記閉断面が形成されている。このため、前記ルーフインナリンフォースと前記フロントピラーインナリアとが繋ぎ合わされる後側重合部において、前記フロントピラーアウタと前記ルーフインナリンフォースと前記フロントピラーインナリアとが互いに重なり合いながら接合されると共に、前記フロントピラーインナリアと前記フロントピラーインナフロントとが繋ぎ合わされる前側重合部において、前記フロントピラーアウタと前記フロントピラーインナリアと前記フロントピラーインナフロントとが互いに重なり合いながら接合されるので、フロントピラーの繋ぎ部分の曲げ耐力の低下が好適に抑制される。
【0013】
また、好適には、前記後側重合部には、フロントヘッダパネルと接合される前記ルーフインナリンフォースの内側フランジと前記フロントピラーアウタの内側フランジとが重ね合わされた接合部が設けられている。このため、前記フロントヘッダパネルを前記フロントピラーを構成する2つの骨格部材すなわち前記ルーフインナリンフォースおよび前記フロントピラーアウタと一緒に接合できるので、接合強度を確保し易く前記フロントヘッダパネルへの荷重分散性や車体剛性を効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が好適に適用された車両用フロントピラーを示す斜視図である。
図2図1の車両用フロントピラーからフロントピラーアウタを取り外した状態を示す斜視図である。
図3図1の車両用フロントピラーにおけるそのフロントピラーとフロントヘッダパネルとの接合された部分を拡大して示す斜視図である。
図4図1および図3のIV−IV視断面図である。
図5図1のV−V視断面図である。
図6図1図3のVI−VI視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明が好適に適用されたフロントピラー(車両用フロントピラー)10を示す斜視図である。図1に示すように、フロントピラー10は、車両前後方向を長手方向としながらその長手方向の全体に閉断面を形成する車体の一部であり、そのフロントピラー10の車両前後方向の後側の端部が図示しない長手状の車体の一部であるルーフサイドレールに連結され、そのフロントピラー10の車両前後方向の前側の端部が図示しないカウルトップパネル(カウル)に連結されている。図1では、フロントピラー10と同様に構成された、フロントピラー10とは車幅方向の反対側に位置する他方のフロントピラーが省略されている。また、フロントピラー10は、鋼板からプレス加工された複数個のプレス部品が相互に溶接されることにより一体的に構成されている。なお、図1を含む各図において、矢印FRは車両前後方向における前側方向を示す矢印であり、矢印RRは車両前後方向における後側方向を示す矢印であり、矢印INは車幅方向における内側方向を示す矢印であり、矢印OUTは車幅方向における外側方向を示す矢印であり、矢印UPは車両上下方向における上側方向を示す矢印であり、矢印DOWNは車両上下方向における下側方向を示す矢印である。
【0017】
図1から図3に示すように、フロントピラー10には、そのフロントピラー10における車幅方向の外側に配置され車両前後方向に伸長した長手状の骨格部材(車体の外側部材)であるフロントピラーアウタ14と、そのフロントピラー10における車幅方向の内側に配置され車両前後方向に伸長した長手状の骨格部材(車体の内側部材)であるフロントピラーインナ16と、フロントピラー10における車幅方向の内側に配置され、フロントピラーインナ16に続いて車両前後方向に伸長した長手状の骨格部材(車体の内側部材)であるルーフインナリンフォース18とが一体的に備えられている。なお、図2は、図1に示されたフロントピラー10からフロントピラーアウタ14が取り外された状態を示す斜視図である。また、図3では、フロントピラー10の車体外板部を構成するサイドアウタパネル(サイメンアウタ)19の一部が一点鎖線で示されている。
【0018】
フロントピラーインナ16は、図2に示すように、そのフロントピラーインナ16における車両前後方向の後方側に配設され車両前後方向に伸長した長手状のフロントピラーインナリア20と、その長手状のフロントピラーインナリア20の車両前後方向の前方側の端部に固定されたフロントピラーインナフロント22とを一体的に備えている。
【0019】
長手状のフロントピラーアウタ14は、鋼板等の平板状部材から例えばプレス加工等によって成形されたものであり、そのフロントピラーアウタ14には、図4から図6に示すように、そのフロントピラーアウタ14の車幅方向の外側に配置され車両前後方向に伸長された外側壁部14aと、その外側壁部14aの車両上下方向の下側の端部から車両上下方向の下側に向けて曲げられた板状の下側フランジ14bと、外側壁部14aの車両上下方向の上側の端部から車幅方向の内側に向けて曲げられた板状の内側フランジ14cとが一体に備えられている。そして、フロントピラーアウタ14の外側壁部14aには、車両内側へ向かって開口する第2凹溝G2を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部14pがフロントピラーアウタ14の長手方向に沿って形成されている。その第2凸条部14pは、フロントピラーアウタ14曲げ耐力を向上させるためのものである。
【0020】
長手状のフロントピラーインナリア20は、鋼板等の平板状部材から例えばプレス加工等によって成形されたものであり、そのフロントピラーインナリア20には、図2図3図5に示すように、そのフロントピラーインナリア20の車幅方向の内側に配置され車両前後方向に伸長された板状の内側壁部20aと、その内側壁部20aの車両上下方向の下側の端部から下側に向けて曲げられた板状の下側フランジ20bと、内側壁部20aの車両上下方向の上側の端部から車幅方向の外側に向けて曲げられた板状の外側フランジ20cとが一体に備えられている。そして、フロントピラーインナリア20の内側壁部20aには、車両外側へ向かって開口する第1凹溝G1を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部20pがフロントピラーインナリア20の長手方向に沿って形成されている。その第1凸条部20pは、フロントピラーインナリア20の曲げ耐力を向上させるためのものである。
【0021】
フロントピラーインナフロント22は、鋼板等の平板状部材から例えばプレス加工等によって成形されたものであり、そのフロントピラーインナフロント22には、図2図6に示すように、フロントピラーインナリア20の内側壁部20aに隣接した板状の壁部22aと、その壁部22aの車両上下方向の下側の端部からフロントピラーインナリア20の下側フランジ20bに隣接するように曲げられた板状の下側フランジ22bと、壁部22aの車両上下方向の上側の端部からフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとは反対側すなわち車幅方向の内側に向けて曲げられた板状の内側フランジ22cとが一体に備えられている。
【0022】
長手状のルーフインナリンフォース18は、鋼板等の平板状部材から例えばプレス加工等によって成形されたものであり、そのルーフインナリンフォース18には、図2から図4に示すように、フロントピラーインナリア20の内側壁部20aに隣接した板状の壁部18aと、その壁部18aの車両上下方向の下側の端部からフロントピラーインナリア20の下側フランジ20bに隣接するように曲げられた板状の下側フランジ18bと、壁部18aの車両上下方向の上側の端部からフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとは反対側すなわち車幅方向の内側に向けて曲げられた板状の内側フランジ18cとが一体に備えられている。
【0023】
フロントピラー10において、ルーフインナリンフォース18とフロントピラーインナリア20とは、図2および図3に示すように、それらルーフインナリンフォース18における車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナリア20における車両前後方向の後側の端部とが車両前後方向において一体的に重ね合わされた後側重合部Aを有している。なお、上記後側重合部Aにおいて、ルーフインナリンフォース18における車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナリア20における車両前後方向の後側の端部とは例えば抵抗溶接等によって接合されている。また、上記後側重合部Aは、図4に示すように、ルーフインナリンフォース18の壁部18aにおける車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナリア20の内側壁部20aにおける車両前後方向の後側の端部とが重ね合わされ、且つルーフインナリンフォース18の下側フランジ18bにおける車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナリア20の下側フランジ20bにおける車両前後方向の後側の端部とが重ね合わされた部分である。
【0024】
また、フロントピラー10において、フロントピラーインナリア20とフロントピラーインナフロント22とは、図2に示すように、それらフロントピラーインナリア20における車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナフロント22における車両前後方向の後側の端部とが車両前後方向において一体的に重ね合わされた前側重合部Bを有している。なお、上記前側重合部Bにおいて、フロントピラーインナリア20における車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナフロント22における車両前後方向の後側の端部とは例えば抵抗溶接等によって接合されている。また、上記前側重合部Bは、図6に示すように、フロントピラーインナリア20の内側壁部20aにおける車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナフロント22の壁部22aにおける車両前後方向の後側の端部とが重ね合わされ、且つフロントピラーインナリア20の下側フランジ20bにおける車両前後方向の前側の端部とフロントピラーインナフロント22の下側フランジ22bにおける車両前後方向の後側の端部とが重ね合わされた部分である。
【0025】
フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cは、図1図3に示すように、ルーフインナリンフォース18の内側フランジ18c、フロントピラーインナリア20の外側フランジ20c、フロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cを覆うようにすなわちそれらルーフインナリンフォース18の内側フランジ18c、フロントピラーインナリア20の外側フランジ20c、フロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cに重ね合うように配設されている。また、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cには、前記後側重合部Aにおけるルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとにそれぞれ重ね合うように車幅方向の幅寸法W1が比較的大きく形成された第1幅広部14dと、前記前側重合部Bにおけるフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとフロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cとにそれぞれ重ね合うように幅寸法W1が比較的大きく形成された第2幅広部14eと、それら第1幅広部14dと第2幅広部14eとの間に連結され、それら第1幅広部14dおよび第2幅広部14eの幅寸法W1より小さく形成された幅狭部14fとが一体に備えられている。
【0026】
長手状のフロントピラー10では、そのフロントピラー10の車両前後方向の後側の端部すなわち前記後側重合部Aにおいて、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cの第1幅広部14dにルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとが例えば抵抗溶接等によって接合されることで、図4に示すようにフロントピラーアウタ14とフロントピラーインナリア20とルーフインナリンフォース18とに囲まれた閉断面が形成される。また、長手状のフロントピラー10では、そのフロントピラー10の車両前後方向の前側の端部すなわち前記前側重合部Bにおいて、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cの第2幅広部14eにフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとフロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cとが例えば抵抗溶接等によって接合されることで、図6に示すようにフロントピラーアウタ14とフロントピラーインナリア20とフロントピラーインナフロント22とに囲まれた閉断面が形成される。また、長手状のフロントピラー10では、そのフロントピラー10の中間部において、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cの幅狭部14fとフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとが重ね合わされた状態で例えば抵抗溶接等によって接合されることで、図5に示すようにフロントピラーアウタ14とフロントピラーインナリア20とに囲まれた閉断面が形成される。なお、フロントピラーアウタ14の下側フランジ14bとフロントピラーインナリア20の下側フランジ20bとが重ね合わされた状態で例えば抵抗溶接等により接合されている。これによって、長手状のフロントピラー10は、フロントピラーアウタ14、フロントピラーインナリア20、フロントピラーインナフロント22、ルーフインナリンフォース18によってその長手方向の全体に閉断面が形成される。なお、図3から図6には、フロントピラーアウタ14、フロントピラーインナリア20、フロントピラーインナフロント22、ルーフインナリンフォース18を接合するために用いられた抵抗溶接によって、フロントピラー10に形成された溶接痕Cが示されている。また、フロントピラー10の車両前後方向の前側の端部におけるフロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cには、図示しないカウルトップパネルが例えば抵抗溶接等によって接合されている。
【0027】
図3に示すように、フロントピラー10の車両前後方向の後側の端部すなわち前記後側重合部Aには、長手状のフロントヘッダパネル24と接合するためにルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cの第1幅広部14dとが重ね合わされた接合部Dが設けられている。上記接合部Dでは、ルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cの第1幅広部14dとが重ね合わされた状態で例えば抵抗溶接等によって接合されている。上記長手状のフロントヘッダパネル24は、フロントピラー10とそのフロントピラー10と同様の車幅方向の反対側に位置する他方のフロントピラーとの間に接合されるものであり、フロントヘッダパネル24には、図示しないフロントガラスの上側縁部が配置される。
【0028】
また、図3に示すように、フロントヘッダパネル24には、そのフロントヘッダパネル24の車両前後方向の前側に形成された長手板状の前側フランジ24aと、フロントヘッダパネル24の車両前後方向の後側に形成された長手板状の後側フランジ24bとが一体に備えられており、それら前側フランジ24aと後側フランジ24bとの車幅方向における外側の端部がそれぞれフロントピラー10の接合部Dに例えば抵抗溶接等によって接合される。
【0029】
上述のように、本実施例のフロントピラー10によれば、フロントピラー10は、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cとフロントピラーインナ16に備えられたフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとが重ね合わされた状態で接合されることによって閉断面が形成されるので、例えばフロントピラーインナの外側フランジに替えて車幅方向の内側に向けた内側フランジを使用する場合に比較してフロントピラー10の幅が好適に細くなり運転者からのフロントピラー10を介しての視界が向上させられる。また、ルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cは、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cに重ね合わされた状態で接合されているので、例えばルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cとに重ね合わされた部分に車体の一部例えばフロントヘッダパネル24が接合されると、フロントピラー10と車体の一部とが接合される接合部分の強度が従来に比較して向上させられる。これによって、フロントピラー10は、運転者の視界が向上させられると共に、車体と接合される接合部分の強度が従来に比較して向上させられる。
【0030】
また、本実施例のフロントピラー10によれば、フロントピラーアウタ14には、車両外側へ向かって開口する第1凹溝を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部20pが形成され、フロントピラーインナ16(フロントピラーインナリア20、フロントピラーインナフロント22)には、車両内側へ向かって開口する第2凹溝を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部14pが形成されているので、第1凸条部20pおよび第2凸条部14pによる剛性向上作用によりフロントピラー10の曲げ耐力が一層高められる。
【0031】
また、本実施例のフロントピラー10によれば、フロントピラーインナ16(フロントピラーインナリア20、フロントピラーインナフロント22)は、前記フロントピラーアウタ14に対して車両上下方向の下側に位置している。すなわち、図3から図6に示されるように、フロントピラーインナリア20の外側フランジ20cがフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cの下側に位置させられ、フロントピラーインナリア20の下側フランジ20bがフロントピラーアウタ14の下側フランジ14bの下側に位置させられている。このため、ルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cとが隙間無く重ね合わされた状態で接合されるので、接合部分の強度が一層高められる。例えばその重ね合わせ部分に車体の一部例えばフロントヘッダパネル24が接合されると、前記フロントピラーと車体の一部とが接合される接合部分の強度が従来に比較して一層向上させられる。
【0032】
また、本実施例のフロントピラー10によれば、フロントピラーインナ16には、車両前後方向の前側に配設されたフロントピラーインナフロント22と、車両前後方向の後側に配置されたフロントピラーインナリア20とが一体的に備えられており、フロントピラーインナフロント22には、車幅方向の内側に向けた内側フランジ22cが形成され、フロントピラーインナリア20には、車幅方向の外側に向けた外側フランジ20cが形成されており、フロントピラー10は、フロントピラーアウタ14の内側フランジ14cとフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとが重ね合わされた状態で接合されることにより前記閉断面が形成され、フロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cには、図示しないカウルトップパネルが接合されている。このため、フロントピラーインナ16に一体的に備えられたフロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cに図示しないカウルトップパネルが接合されるので、例えばフロントピラーインナ16に切欠を設けて一体に外側フランジと内側フランジとを形成させてその内側フランジにカウルトップパネルを接合させるものに比較して、フロントピラー10と図示しないカウルトップパネルとが接合される接合部分の強度が好適に向上させられる。
【0033】
また、本実施例のフロントピラー10によれば、ルーフインナリンフォース18とフロントピラーインナリア20とは、それらが車両前後方向において重ね合わされる後側重合部Aを有し、その後側重合部Aにおいてフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cにルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとが接合されると共に、フロントピラーインナリア20とフロントピラーインナフロント22とは、それらが車両前後方向において重ね合わされる前側重合部Bを有し、その前側重合部Bにおいてフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cにフロントピラーインナリア20の外側フランジ20cとフロントピラーインナフロント22の内側フランジ22cとが接合されることで、前記閉断面が形成されている。このため、ルーフインナリンフォース18とフロントピラーインナリア20とが繋ぎ合わされる後側重合部Aにおいて、フロントピラーアウタ14とルーフインナリンフォース18とフロントピラーインナリア20とが互いに重なり合いながら接合されると共に、フロントピラーインナリア20とフロントピラーインナフロント22とが繋ぎ合わされる前側重合部Bにおいて、フロントピラーアウタ14とフロントピラーインナリア20とフロントピラーインナフロント22とが互いに重なり合いながら接合されるので、フロントピラー10の繋ぎ部分の曲げ耐力の低下が好適に抑制される。
【0034】
また、本実施例のフロントピラー10によれば、後側重合部Aには、フロントヘッダパネル24と接合されるルーフインナリンフォース18の内側フランジ18cとフロントピラーアウタ14の内側フランジ14cとが重ね合わされた接合部Dが設けられている。このため、フロントヘッダパネル24を、フロントピラー10を構成する2つの骨格部材すなわちルーフインナリンフォース18およびフロントピラーアウタ14と一緒に接合できるので、接合強度を確保し易くフロントヘッダパネル24への荷重分散性や車体剛性を効果的に確保することができる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0036】
たとえば、前述の実施例のフロントピラー10では、フロントピラーアウタ14に、車両外側へ向かって開口する第1凹溝を形成するために車両内側に向かって突き出す第1凸条部20pが形成され、フロントピラーインナ16(フロントピラーインナリア20、フロントピラーインナフロント22)に、車両内側へ向かって開口する第2凹溝を形成するために車両外側に向かって突き出す第2凸条部14pが形成されていたが、第1凸条部20pおよび第2凸条部14pの両方が設けられる必要はなく、いずれか一方が設けられていても一応の曲げ耐力向上効果が得られる。要するに、第1凸条部20pおよび第2凸条部14pの少なくとも一方が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0037】
10:フロントピラー(車両用フロントピラー)
14:フロントピラーアウタ
14c:内側フランジ
14p:第2凸条部
16:フロントピラーインナ
18:ルーフインナリンフォース
18c:内側フランジ
20:フロントピラーインナリア
20c:外側フランジ
20p:第1凸条部
22:フロントピラーインナフロント
22c:内側フランジ
24:フロントヘッダパネル
A:後側重合部
B:前側重合部
C:溶接痕
G1:第1凹溝
G2:第2凹溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6