特許第6255004号(P6255004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255004
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】エアゾール型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20171218BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61Q17/04
   A61K8/37
   A61K8/02
   A61K8/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-501469(P2015-501469)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2014053857
(87)【国際公開番号】WO2014129484
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-31162(P2013-31162)
(32)【優先日】2013年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 めぐみ
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−513090(JP,A)
【文献】 特表2005−513094(JP,A)
【文献】 特開2010−100553(JP,A)
【文献】 特開2010−235479(JP,A)
【文献】 特開2010−120871(JP,A)
【文献】 特開2017−132723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1〜3質量%
(b)プロピレングリコールと炭素数8〜10の脂肪酸とのジエステル 5〜50質量%
(c)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5〜15質量%
を含有する油中水型乳化物である原液と、噴射剤として液化ガスとを含有するエアゾール型日焼け止め化粧料であって、前記油中水型乳化物中における成分(a)と成分(b)(c)との質量比((a):(b)+(c))が1:10〜1:20の範囲であることを特徴とするエアゾール型日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記油中水型乳化物中に、さらに成分(d)シリコーン油を含有することを特徴とする請求項1記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
【請求項3】
エアゾール型日焼け止め化粧料中の油中水型乳化物と液化ガスとの充填割合が、油中水型乳化物15〜40質量%および液化ガス60〜85質量%である、請求項1または2に記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンと、特定のエステル油剤を含有する油中水型乳化物を原液とし、噴射剤として液化ガスを用いたエアゾール型日焼け止め化粧料に関し、さらに詳細には、安定性に優れるため目詰まりがなく、肌や髪に均一に噴霧することが可能であり、透明性でベタつきのないエアゾール型日焼け止め化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、太陽光線中の紫外線を遮断し、紫外線による悪影響から肌を守ることを目的とするものであり、酸化亜鉛や酸化チタン等の金属酸化物や有機紫外線吸収剤を配合することにより、高い紫外線防御効果をもつ日焼け止め化粧料が開発されている。しかしながら、金属酸化物を多量に配合すると、使用時に粉体のきしみ感が生じたり、仕上がりが白っぽく不自然になる等の問題があり、また、高い紫外線防御効果を有する有機紫外線吸収剤には、難溶性(水にも非極性油にも難溶)のものが多く、安定性の問題が生じることがあり、様々な検討がなされてきた。(例えば、特許文献1、2参照)
【0003】
一方、エアゾール型化粧料は、肌や髪の広範囲に塗布しやすく、特にスプレーである場合は、手指を化粧料で濡らすことなく、また手の届きにくい部分にも均一に塗布することが可能であるため、非常に使用性のよいものである。そのため日焼け止め化粧料としても応用されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−100553号公報
【特許文献2】特開2011−236201号公報
【特許文献3】特表2008−543939号公報
【特許文献4】特開2010−270060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアゾール型化粧料は、噴射剤である液化ガスや圧縮ガスと共存する加圧された特殊環境であるため、紫外線防御効果を有する金属酸化物等の粉体や難溶性の紫外線吸収剤が、エアゾール容器内で凝集や結晶化を起こし、その結果、紫外線防御効果が低減したり、特にスプレーである場合は、目詰まりが起こり噴射性が悪くなったり、不均一に噴霧されるという問題がある。また、液化ガスを用いた方が、より細かい噴霧粒子を形成できる。従って、本発明の課題は、液化ガスとの共存下において、高い紫外線防御能を有する難溶性の紫外線吸収剤を安定に配合することにより、紫外線防御効果が高く、肌や髪に均一に噴霧することが可能であり、ベタつきのない透明性の高いエアゾール型日焼け止め料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、難溶性紫外線吸収剤であるビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンと特定のエステル油を含有する油中水型乳化物と、液化ガスとを組み合わせて配合することにより、紫外線防御効果が高く、肌や髪に均一に噴霧することが可能であり、ベタつきのない透明性の高いエアゾール型日焼け止め料を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、以下を提供する。
[1]次の成分(a)〜(c);
(a)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1〜3質量%
(b)プロピレングリコールと炭素数8〜10の脂肪酸とのジエステル 5〜50質量%
(c)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5〜15質量%
を含有する油中水型乳化物である原液と、噴射剤として液化ガスとを含有するエアゾールであって、前記油中水型乳化物中における成分(a)と成分(b)及び(c)との質量比が1:10〜1:20の範囲であることを特徴とするエアゾール型日焼け止め化粧料。
[2]前記油中水型乳化物中に、さらに成分(d)シリコーン油を含有することを特徴とする[1]記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
[3]エアゾール型日焼け止め化粧料中の油中水型乳化物と液化ガスとの充填割合が、油中水型乳化物15〜40質量%および液化ガス60〜85%である、[1]または[2]に記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアゾール型日焼け止め料は、難溶性の紫外線吸収剤を安定に配合することが可能であり、そのため紫外線防御効果が高く、ベタつきもなく透明な仕上がりであり、長期に渡って噴射性が良好で、肌や髪に均一に噴霧することが可能であり、使用性に優れるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。なお、本明細書で「X〜Y」で数値範囲を表すときは、その範囲は両端の値XおよびYを含む。
本発明のエアゾール型日焼け止め化粧料は、成分(a)〜(c)を含有する油中水型乳化物である原液と、噴射剤である液化ガスとを、耐圧バルブを有する容器に充填したものである。エアゾールとしては、使用目的に応じて、スプレー(霧状)、フォーム(泡状)等の形態に調整が可能であり、噴霧してそのまま、あるいは手で伸ばして使用する。本発明においては、肌や髪に均一に噴霧できるという観点から、スプレーの形態が好ましい。そのため、エアゾール中の油中水型乳化物と液化ガスとの充填割合は、油中水型乳化物15〜40質量%(以下単に「%」と略す)、液化ガス60〜85%が好ましく、油中水型乳化物20〜30%、液化ガス70〜80%がより好ましい(油中水型乳化物と液化ガスとの合計を100%とする。)。この範囲であれば、経時においても結晶析出が認められず、エアゾール型日焼け止め化粧料としたときに安定性に優れ、均一に噴霧できるからである。
【0010】
(油中水型乳化物:原液)
本発明に用いられる成分(a)は、水にも非極性油にも難溶性の紫外線吸収剤であり、成分としては2,4−ビス−[{4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンである。INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling Name)が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンであり、市販品としては、Tinosorb S(BASF社製)が挙げられる。
【0011】
本発明の油中水型乳化物における成分(a)の含有量は1〜3%である。含有量が1%より少ないと、紫外線防御効果が低くなり、3%を超える場合は、手で伸ばす際に伸びが重くなり感触上劣るものとなる。
【0012】
本発明に用いられる成分(b)は、プロピレングリコールと炭素数8〜10の脂肪酸とのジエステルであり、25℃で液体のエステル油である。具体的には、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコールが挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0013】
本発明の油中水型乳化物における成分(b)の含有量は5〜50%であり、より好ましくは15〜40%である。含有量が5%より少ないと、成分(a)が経時で析出し、目詰まりを起こす可能性があり、50%を超える場合は、使用後の肌の油感が強くなり感触上劣るものとなる。含有量が15〜40%である場合は、均一に噴霧することができ、かつ感触上も非常に優れたものとすることができる。
【0014】
本発明に用いられる成分(c)メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、25℃で液体の紫外線吸収剤である。油中水型乳化物における成分(c)の含有量は5〜15%であり、より好ましくは7〜12%である。含有量が5%より少ないと、成分(a)が経時で析出し、目詰まりを起こす可能性があり、15%を超える場合は、ベタつきが生じて感触上劣るものとなる。含有量が7〜12%である場合は、均一に噴霧することができ、かつ感触上も非常に優れたものとすることができる。
【0015】
本発明の油中水型乳化物において、成分(a)と成分(b)及び(c)との質量比(a):(b)+(c)は、1:10〜1:20が好ましく、さらに好ましくは1:10〜1:15である。この範囲であれば、安定性に優れ、ベタつきのない化粧料が得られる。
【0016】
本発明の油中水型乳化物には、さらに成分(d)シリコーン油を配合することが可能である。成分(d)は、特に限定されないが、25℃で液状のものが好ましく、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコン、カプルリルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらを一種または二種以上を用いることができる。一般的に、紫外線吸収剤の多くはシリコーン油との相溶性に難があることが知られており、成分(a)も例外ではないため、シリコーン油の含有量はできるだけ少量であることが好ましいが、日焼け止め化粧料としての使用感を考慮すると、油中水型乳化物中に1〜20%程度、配合することが好ましい。この範囲であれば、安定性が良く、さっぱりとした使用感が得られる。成分(d)シリコーン油を配合することは、感触調整剤として汎用されるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーン粉体や、紫外線防御成分である金属酸化物のシリコーン表面処理物と併用した場合の安定性の向上という観点からも好ましい。
【0017】
また本発明の油中水型乳化物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常の化粧料に配合される成分として、成分(b)〜(d)以外の油性成分、界面活性剤、水性成分、成分(a)、(c)以外の紫外線吸収剤、粉体、水溶性高分子、保湿剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等を各種の効果の付与のために適宜、配合することができる。
【0018】
油性成分としては、成分(b)〜(d)以外に通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液状油、揮発性油の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、油溶性樹脂等が挙げられる。
【0019】
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャトロプスワックス、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸トリデシル、イソノナン酸イソトリデシル、安息香酸アルキル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルヘキシル、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、特定のアクリル酸アルキルメチルポリシロキサンエステル等の油溶性樹脂、等が挙げられる。これらの油性成分は必要に応じて一種または二種以上を用いることができ、なかでも安定性の観点から、安息香酸アルキル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルヘキシルが好ましい。
【0020】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。これらの界面活性剤は必要に応じて一種または二種以上を用いることができるが、油中水型乳化物とするためにHLB7以下の非イオン性界面活性剤を配合することが必須となる。なかでも安定性の観点から、ポリヒドロキシステアリン酸のエステル結合物からなる非イオン性界面活性剤、例えば、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30や、親油性シリコーン系界面活性剤、例えば、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が好ましい。
【0021】
水性成分としては、脱イオン水、蒸留水、精製水、温泉水や、ローズ水、ラベンダー水等の植物由来の水蒸気蒸留水等のいわゆる水の他、水に可溶で溶媒となりうるものであり、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類が挙げられる。
【0022】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、シリコン系等が挙げられる。具体的には、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、オキシベンゾン、4−tert−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、サリチル酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、(1,3,5)−トリアジン−2,4−ビス[{4−(2−エチルヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸及びそのナトリウム塩、ポリシリコーン−15等が挙げられる。
【0023】
粉体としては、化粧料一般に用いられている粉体であればいずれのものも使用でき、感触調整等を目的として、例えば、シリコーン粉体、タルク、セリサイト、シリカ、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンパウダーなどの粉体を使用することができる。また、紫外線防御効果を付与するために金属酸化物粉体を使用することができ、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等が挙げられ、これらを一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの粉体は、公知の表面処理方法、例えば、シリカ処理、アルミナ処理、水酸化アルミニウム処理、フッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、シラン処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アクリル樹脂処理、金属酸化物処理等の方法で表面処理していてもよい。但し、本発明においては、金属酸化物粉体を多量に配合すると、透明性の低下やきしみ感が強くなることがあるため、その配合量は油中水型乳化物中に10%以下、さらに好ましくは5%以下が好ましい。
【0024】
保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0025】
本発明の油中水型乳化物の製造方法は、特に限定されるものではなく常法により調製されるが、例えば、成分(a)を成分(b)および成分(c)に加熱溶解させ、その他油性成分および界面活性剤と混合し、水性成分を乳化して得られる。また、粉体を配合する場合には、予め油性成分または水性成分に充分に分散させた後、乳化を行うことが好ましい。
【0026】
本発明の油中水型乳化物における油性成分と水性成分の質量比(油性成分):(水性成分)は、処方によっても異なるが、例えば1:3〜3:1 が好ましく、さらに好ましくは1:2〜2:1である。また、本発明の油中水型乳化物における乳化剤の含有量は、安定に油性成分中に水性成分を乳化できる量であり、油中水型乳化物の0.1〜5%であることが好ましい。このような範囲であれば、安定的に乳化でき、経時においても結晶析出が認められず、そのためエアゾール型日焼け止め化粧料としたときに、安定性に優れ、均一に噴霧できるからである。
【0027】
(噴射剤)
本発明に用いられる液化ガスとしては、炭素数2〜5の炭化水素及びジメチルエーテルから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。炭素数2〜5の炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。それらの中でも、エアゾール容器内で、油中水型乳化物の外油相と相溶することで内水相との相互作用を低減し、長期にわたる安定性を向上する点で、親油性である炭化水素を用いることが好ましい。さらには、高温下での安全性の観点から、20℃での圧力を0.15MPaに調整した液化石油ガス(以下、LPG0.15)が好ましい。
【0028】
本発明のエアゾールの充填方法としては、特に限定されないが、常法により調製した前記油中水型乳化物を耐圧容器に充填し、容器にエアゾールバルブを固着した後、該バルブを通じて液化ガスを注入する。さらに、前記エアゾールバルブに目的に応じた噴射部材を取り付けることによりエアゾール製品となる。また、油中水型乳化物の粘度等によっては、充填過程における均質化のため、油中水型乳化物を形成するための油相と水相や粉体等を、別々に充填してから液化ガスを注入してもよい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0030】
実施例1〜6及び比較例1〜8:
表1に示す組成および下記製法にてエアゾール型日焼け止め化粧料を調製した。得られた化粧料に対して下記の方法により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
A:成分(1)〜(3)および(6)〜(8)を加熱溶解する。
B:Aに成分(4)〜(5)および(9)、(10)を混合した後、(11)を均一に分散させる。
C:成分(12)〜(16)を混合し、Bに添加し乳化を行い、原液を得た。
D:Cで得られた原液9gを透明ガラス製およびアルミ製の耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 21gを耐圧容器に充填し、エアゾール型日焼け止め化粧料を得た。
【0033】
(評価方法1:結晶の析出)
実施例1〜6及び比較例1〜8のエアゾール組成物を、透明ガラス製の耐圧容器に充填し、経時安定性の加速試験として−20℃で2週間放置後、25℃に戻したサンプルの結晶析出の有無を目視で確認した。
[判定基準]
(判定):(評価)
○ : 結晶析出が認められない。
× : 結晶析出が認められる。
【0034】
(評価方法2:目詰まりのなさ)
実施例1〜6及び比較例1〜8のエアゾール組成物を、アルミ製の耐圧容器(仕様;ステム:0.4m径、ハウジング:0.8×0.55mm径、ボタン:0.5mm径)に充填し、5℃および40℃にそれぞれ1ヶ月保管したサンプルを室温に戻し、25℃において10秒間隔で噴射し、最後まで使用したときの噴霧性について、下記の評価基準で評価した。
[判定基準]
(判定):(評価)
○ : 最後まで均一な噴霧状態にて使用できた。
× : 噴霧状態が不均一で、途中で目詰まりを起こして使用できなくなった。
【0035】
(評価方法3:透明性)
実施例1〜6及び比較例1〜8のエアゾール組成物30gを、アルミ製の耐圧容器に充填し、10cmの黒色毛束に15cm離れた位置から3秒間噴射し、直後の仕上がり状態を目視で観察した。
[判定基準]
(判定):(評価)
○ : 透明に仕上がる。
× : 白っぽさが目立つ。
【0036】
(評価方法4:ベタつきのなさ)
化粧品評価専門パネル20名に、実施例1〜6及び比較例1〜8のエアゾール組成物を左前腕に3秒間噴霧した後、手で伸ばして使用してもらい、使用中から使用後にかけての「ベタつきのなさ」について、各自が下記の評価基準に従って5段階評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を下記の判定基準に従って判定した。
[評価基準]
(評点):(結果)
5点 : 非常に良好
4点 : 良好
3点 : 普通
2点 : やや不良
1点 : 不良
[判定基準]
(判定):(評点の平均点)
◎ : 4.5〜5.0点
○ : 3.5〜4.5点未満
△ : 2.0〜3.5点未満
× : 1.0〜2.0点未満
【0037】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜6のエアゾール型日焼け止め化粧料は、いずれもビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの析出がみられず、低温においても、高温においても、安定性に優れたものであり、感触上もベタつきのない、使用性に優れたものであった。
これに対し、成分(B)の代わりに異なるエステル油を配合した比較例1〜3はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの結晶析出が認められ、安定性上問題のあるものであり、トリエチルヘキサノインおよびオクタン酸セチルに関しては、感触上も劣るものであった。成分(B)が多い比較例4は、ベタつきがあり感触上劣るものであった。成分(C)を配合していない比較例5は、結晶の析出が認められ、成分(C)が多い比較例6は、感触上劣るものであった。成分(A):成分(B)+(C)の含有比が外れる場合は、結晶の析出が認められ、安定性上問題のあるものであった。
以上の結果より、本発明の各成分を組み合わせることにより、安定性に優れ、ベタつきのないエアゾール型日焼け止め料を得られることが示された。
【0038】
実施例7:エアゾール型日焼け止め料
(原液成分) (%)
1.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

2.ジカプリン酸プロピレングリコール 30
3.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.5
4.デカメチルシクロペンタシロキサン 5
5.フェノキシエタノール 0.3
6.セスキステアリン酸ソルビタン 0.25
7.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.5
8.疎水化処理微粒子酸化チタン (注1) 5
9.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3
10.トリエタノールアミン 1.68
11.ジプロピレングリコール 5
12.精製水 38.77
(注1)微粒子酸化チタンMTY-110M3S (テイカ株式会社製)
【0039】
(製造方法)
A:成分(8)を適量の成分(2)および成分(7)で分散する。
B:成分(1)〜(3)を加熱溶解する。
C:Aに成分(4)〜(6)およびBを混合し、均一に分散させる。
D:成分(9)〜(12)を混合し、Cに添加して乳化し、原液を得る。
E:Dで得られた原液6gをアルミ製耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 24gを耐圧容器に充填し、エアゾール型日焼け止め化粧料を得た。
【0040】
実施例7は、噴射直後はエアゾールの付着部分が白っぽく見えるが、すぐに透明化し、また、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの析出が認められず、目詰まりもなく、感触上ベタつきのないエアゾール型日焼け止め料であった。
【0041】
実施例8:エアゾール型日焼け止め料
(原液成分) (%)
1.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

2.ジカプリル酸プロピレングリコール 25
3.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.5
4.ポリシリコーン−15 3
5.安息香酸アルキル(C12−C15) 5
6.セバシン酸ジイソプロピル (注2) 5
7.ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30 0.2
8.ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2 0.1
9.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.2
10.シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛 (注3) 5
11.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3
12.トリエタノールアミン 1.68
13.エタノール 15
14.精製水 26.32
(注2)IPSE (日本精化株式会社製)
(注3)FINEX−50S−LP2 (堺化学社製)
【0042】
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)を加熱溶解する。
B:Aに成分(4)〜(10)を混合し、均一に分散させる。
C:成分(11)〜(14)を混合し、Bに添加し、乳化する。
D:Cで得られた原液9gをアルミ製耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 21gを耐圧容器に充填し、エアゾール型日焼け止め化粧料を得た。
【0043】
実施例8は、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの析出が認められず、感触上ベタつきのないエアゾール型日焼け止め料であった。
【0044】
実施例9:エアゾール型日焼け止め料
(原液成分) (%)
1.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

2.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル (注4)

3.ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール 20
4.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10
5.ジメチコン (注5) 5
6.セバシン酸ジエチルヘキシル (注6) 5
7.ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30 0.25
8.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.25
9.エタノール 15
10.精製水 40.5
(注4)UVINUL A PLUS (BASF社製)
(注5)SH200C FLUID 6CS(東レ・ダウコーニング社製)
(注6)Neosolue−EHS (日本精化株式会社製)
【0045】
(製造方法)
A:成分(1)〜(4)を加熱溶解する。
B:Aに成分(5)〜(8)を混合し、均一に分散させる。
C:成分(9)〜(10)を混合し、Bに添加し、乳化する。
D:Cで得られた原液9gをアルミ製耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 15gおよびジメチルエーテル 6gを耐圧容器に充填し、エアゾール型日焼け止め化粧料を得た。
【0046】
実施例9は、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの析出が認められず、感触上ベタつきのないエアゾール型日焼け止め料であった。
【0047】
実施例10:エアゾール型日焼け止め料
(原液成分) (%)
1.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

2.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル (注4)
3.3
3.ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール 40
4.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.5
5.ポリシリコーン−15 3
6.ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30 0.25
7.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.25
8.フェノキシエタノール 0.5
9.ポリメチルシルセスキオキサン 5
10.ジプロピレングリコール 5
11.メチルパラベン 0.15
12.精製水 32.05
【0048】
(製造方法)
A:成分(1)〜(4)を加熱溶解する。
B:Aに成分(5)〜(8)を混合した後、(9)を均一に分散させる。
C:成分(10)〜(12)を混合し、Bに添加し乳化を行い、原液を得た。
D:Cで得られた原液9gを透明ガラス製およびアルミ製の耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 21gを耐圧容器に充填し、エアゾール型日焼け止め化粧料を得た。
【0049】
実施例10は、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの析出が認められず、感触上ベタつきのないエアゾール型日焼け止め料であった。