(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書に提供される方法を使用して処置される疾患は増殖性疾患である。
【0059】
増殖性疾患としては限定されないが、悪性、前悪性、または良性の癌が挙げられる。開示された方法を使用して処置される癌としては、例えば、固形腫瘍、リンパ腫、または白血病が挙げられる。一実施形態では、癌は、例えば、脳腫瘍(例えば、神経膠芽腫、星細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、または周辺の神経外胚葉の腫瘍のような、例えば、悪性、前悪性、または良性の脳腫瘍)、癌腫(例えば、胆嚢癌腫、気管支癌、基底細胞癌、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞未分化癌、腺腫、嚢胞腺腫など)、基底細胞癌、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、アスキン腫瘍、リンパ肉腫、神経乳頭、カポジ肉腫、皮膚線維肉腫、血管肉腫など)、形質細胞腫、頭部と頸部の腫瘍(例えば、経口、喉頭、鼻咽頭、食道など)、肝腫瘍、腎腫瘍、腎細胞腫瘍、扁平上皮癌、子宮の腫瘍、骨腫瘍、前立腺腫瘍、限定されないがHer2−および/またはER−および/またはPR−である乳腺腫瘍を含む乳腺腫瘍、膀胱腫瘍、膵臓腫瘍、子宮内膜腫瘍、扁平上皮癌、胃腫瘍、神経膠腫、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、卵巣腫瘍、頸部腫瘍、目腫瘍、中枢神経系腫瘍(例えば、原発性のCNSリンパ腫、脊柱の軸椎腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体の腺腫など)、甲状腺腫瘍、肺腫瘍(例えば、肺非小細胞癌(NSCLC)または肺小細胞癌)、白血病またはリンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞性リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連したリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄白血病(CML)、または肝細胞癌など)、多発性骨髄腫、皮膚腫瘍(例えば、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、悪性黒色腫、皮膚の黒色腫、または眼球内黒色腫のような黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、またはカポジ肉腫)、婦人科腫瘍(例えば、子宮肉腫、ファロピアン管の癌、子宮内膜の癌、頚部の癌、膣癌、外陰癌など)、ホジキン病、小腸の癌、内分泌系の癌(例えば、甲状腺、副甲状腺、または副腎などの癌)、中皮腫、尿道の癌、陰茎の癌、ゴーリン症候群に関連付けられる腫瘍(例えば、髄芽腫、髄膜腫など)、未知の起源の腫瘍;あるいはこれらのいずれかの転移であり得る。
【0060】
別の実施形態では、癌は、肺腫瘍、胸壁腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸の腫瘍、頭部と頸部の腫瘍、肝腫瘍、前立腺腫瘍、神経膠腫、多形膠芽腫、卵巣腫瘍、または甲状腺腫瘍;あるいはこれらのいずれかの転移である。
【0061】
さらに別の実施形態では、癌は、子宮内膜の腫瘍、膀胱腫瘍、多発性骨髄腫、黒色腫、腎腫瘍、肉腫、頸部腫瘍、白血病、および神経芽腫である。
【0062】
腫瘍は、本明細書で提供されるように、原発性の腫瘍または転移であることもある。
【0063】
1つの態様では、本明細書に記載される方法のいずれかで被検体に投与される医薬組成物は、カテコールブタン代謝産物である。
【0064】
本明細書で記載される方法の一実施形態において、カテコールブタンは式Iの構造を有することもあり:
【0065】
【化3】
ここで、R
1とR
2は独立してH、低級アルキル、または低級アシルであり、R
3、R
4、R
5、R
6、R
10、R
11、R
12、およびR
13は、独立してHまたは低級アルキルであり、および、R
7、R
8、およびR
9は独立してH、ヒドロキシ、低級アルコキシ、または低級アシルオキシである。さらに、式Iの薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、互変異性体、代謝産物、およびプロドラッグも含まれている。
【0066】
本明細書に記載される方法の別の実施形態において、カテコールブタンは式Iの構造を有することもあり、
【0067】
【化4】
ここで、R
5、R
10、R
6、およびR
13は独立してHであり、
R
3がHである場合、R
11は低級アルキルであり、あるいは、R
3が低級アルキルである場合、R
11はHであり、
R
4がHである場合、R
12は低級アルキルであり、あるいは、R
4が低級アルキルである場合、R
12はHであり、
R
7、R
8、およびR
9の2つはヒドロキシであり、もう1つはHであり、ヒドロキシ基の1つは3−位置にあり、別のヒドロキシ基はアルキレン置換基に対して4−位置にある。さらに、式IIの薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、互変異性体、代謝産物、およびプロドラッグも含まれている。
【0068】
本方法で使用されるカテコールブタンの非限定的な例は、例えば、NDGA、テトラグリシニル NDGA;テトラ−ジメチルグリシニルNDGAまたはその塩;および、トリ−O−メチルNDGA;ノルジヒドログアヤレト酸テトラピバラート;ノルジヒドログアヤレト酸テトラプロピオン酸塩、およびこれらのあらゆる光学構造を含む。
【0069】
本方法で使用されるカテコールブタンの非限定的な例としては、例えば、1,4−bis(3,4−ジヒドロフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−bis(3,4−ジメトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジエトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジプロポキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−bis(3,4−ジアセトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジプロピオニルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジブチロイルオキシフェニル(dibutyroyloxyphenyl))−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジバレロイルオキシフェニル(divaleroyloxyphenyl))−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジピバロイルオキシフェニル(dipivaloyloxyphenyl))−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジネオペンチルカルボキシルフェニル(dineopentylcarboxylphenyl))−2,3−ジメチルブタン;または、1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−フェニルブタン;1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(2,5−ジヒドロキシフェニル)ブタン、および、d−とl−のd−、l−のラセミ混合物、ならびに、これらのメソ異性体も挙げられる。
【0070】
一実施形態では、カテコールブタンはノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)である。
【0071】
本明細書に記載される組成物と方法の一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は式IIの構造を有することもあり、
【0072】
【化5】
ここで、R
1、R
2、R
3、またはR
4の少なくとも1つは、CH
3、グルクロニド、または硫酸塩である。
【0073】
一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は式IIIの構造を有し、
【0074】
【化6】
ここで、R
1、R
2、R
3、またはR
4の少なくとも1つは、CH
3、グルクロニド、または硫酸塩である。
【0075】
本明細書に記載される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、式IV−LXVIIのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表1で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物はリン酸エステルをさらに含むこともある。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、H、CH
3、グルクロニド、硫酸塩、またはリン酸エステルを含むこともある。さらに別の実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
4のそれぞれにおいてHを含む化合物は含まれていない。
【0094】
本明細書で提供される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物のリン酸エステルは、式LXVIII−LXXIのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表2で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。
【0096】
本明細書に記載される方法のさらに別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、式LXXII−CXXXVのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表1で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物はリン酸エステルをさらに含むこともある。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、H、CH
3、グルクロニド、硫酸塩、またはリン酸エステルを含むこともある。さらに別の実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
4のそれぞれにおいてHを含む化合物は含まれていない。
【0116】
本明細書で提供される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物のリン酸エステルは、式CXXXXVI−CXXXXVIIのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表4で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。
【0118】
一実施形態では、IV−LXVIIまたはLXXII−CXXXVの式のリン酸塩プロドラッグを含むNDGAのリン酸塩プロドラッグは、溶解度の改善と経口吸収の改善を示す。
【0119】
本実施形態の医薬組成物は、例えば、鼻腔内投与;経口投与;吸入投与;皮下投与;経皮投与;閉塞を伴うまたは伴わない動脈内投与;頭蓋内投与;脳室内投与;静脈内投与;頬側投与;腹腔内投与;眼内投与;筋肉内投与;移植投与;および、中心静脈投与などの任意の投与経路のために処方されることもある。一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は経口投与のために処方される。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は静脈内投与のために処方される。
【0120】
カテコールブタン代謝産物の投与量は経験的な手段を使用して決定されることもある。ほんの一例として、カテコールブタン代謝産物は、投与量当たり約5mg/kg乃至約375mg/kg;投与量当たり約5mg/kg乃至約250mg/kg;投与量当たり約5mg/kg乃至約200mg/kg;投与量当たり約5mg/kg乃至約150mg/kg;投与量当たり約5mg/kg乃至約100mg/kg;投与量当たり約5mg/kg乃至約75mg/kg;あるいは、投与量当たり約5mg/kg乃至約50mg/kg量で投与されることもある。あるいは、カテコールブタン代謝産物は、1日当たり約1,500mg乃至1日当たり約2,500mg;1日当たり約1,800mg乃至1日当たり約2,300mg;または、1日当たり約2,000mgの量で投与されることもある。一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、約1μM乃至約30μMの範囲の濃度で標的細胞に接触させることもある。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、約1μM乃至約10μMの範囲の濃度で標的細胞に接触させることもある。
【0121】
一実施形態では、医薬組成物は、6日に一度よりも頻繁に、または、2日に一度よりも頻繁に投与されることもある。一実施形態では、医薬組成物は4週間毎日投与される。別の実施形態では、医薬組成物は新しいサイクルを始める前に、1週間の中断を含んで3週間、毎日3回投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、1週間毎日投与され、その後1週間中断する。別の実施形態では、医薬組成物は、2週間毎日投与され、その後2週間中断する。別の実施形態では、医薬組成物は、新しいサイクルを始める前に、1日1回または2回、連続してあるいは1週間の中断を伴って投与される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は1週間に1回または1週間に2回投与される。
【0122】
<カテコールブタンとその代謝産物>
本明細書で使用されるように、用語「カテコールブタン代謝産物」は、EGFRとIGF−1Rの両方の二重のキナーゼ阻害剤である化合物(つまり、二重のキナーゼ阻害剤である単一の化合物)の代謝産物を指す。
【0123】
一実施形態では、カテコールブタンは式Iの構造を有することもあり、
【0124】
【化7】
ここで、R
1とR
2は独立してH、低級アルキル、または低級アシルであり、R
3、R
4、R
5、R
6、R
10、R
11、R
12、およびR
13は、独立してHまたは低級アルキルであり、
および、R
7、R
8、およびR
9は独立してH、ヒドロキシ、低級アルコキシ、または低級アシルオキシである。さらに、式Iの薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、互変異性体、代謝産物、およびプロドラッグも含まれている。
【0125】
別の実施形態では、カテコールブタンは式Iの構造を有することもあり、
【0126】
【化8】
ここで、R
5、R
10、R
6、およびR
13は独立してHであり、
R
3がHである場合、R
11は低級アルキルであり、あるいは、R
3が低級アルキルである場合、R
11はHであり、
R
4がHである場合、R
12は低級アルキルであり、あるいは、R
4が低級アルキルである場合、R
12はHであり、
R
7、R
8、およびR
9の2つはヒドロキシであり、もう1つはHであり、ヒドロキシ基の1つは3−位置にあり、別のヒドロキシ基はアルキレン置換基に対して4−位置にある。さらに、式Iの薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、互変異性体、代謝産物、およびプロドラッグも含まれている。
【0127】
本明細書で記載される組成物と方法の一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は式IIの構造を有することもあり、
【0128】
【化9】
ここで、R
1、R
2、R
3、またはR
4の少なくとも1つは、CH
3、グルクロニド、または硫酸塩である。
【0129】
本明細書で使用されるように、低級アルキルは一般にC
1−C
6アルキルを意味するよう意図されており、好ましくはR
3とR
4はC
1−C
3アルキルである。本明細書で使用されるように、低級アルキルはとりわけ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシルなどをさらに表わす。
【0130】
本明細書で使用されるように、低級アシルは一般に[C
1−C
6]アシルを意味するように意図されており、[C
2−C
6]アシルが好ましい。本明細書で使用されるように、低級アシルはさらに一般式RCO−、例えばアセチル(CH
3CO−)、プロビオニル(CH
3CH
2CO−)、ブチリルなど(CHCH
2CH
2CO−)を有する基を表わす。
【0131】
カテコールブタンは、フェノール化合物とその従来のエステルとエーテルの両方を対象としている。カテコールブタン化合物が例えば置換されたフェニルである場合、対応する基は、アセトキシ(CH
3CO
2−)、プロピオニルオキシ(CH
3CH
2CO
2−)、およびブチロイルオキシ(butyroyloxy)(CH
3CH
2CH
2CO
2−)である。
【0132】
化合物は、単一の光学異性体、またはそうした異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物またはジアステレオ異性体の形態であってもよい。
【0133】
一実施形態では、カテコールブタンはノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)またはその誘導体である。NDGAは、クレオソートブッシュラレアディバリカタ(Larrea divaricatta)の樹脂状エキスから作られた茶の主成分であると確認されたフェノール化合物である。
【0134】
一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は式IIIの構造を有し、
【0135】
【化10】
ここで、R
1、R
2、R
3、またはR
4の少なくとも1つは、CH
3、グルクロニド、または硫酸塩である。
【0136】
本明細書に記載される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、式IV−LXVIIのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表1で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物はリン酸エステルをさらに含むこともある。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、H、CH
3、グルクロニド、硫酸塩、またはリン酸エステルを含むこともある。本明細書で提供される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物のリン酸エステルは、式LXVIII−LXXIのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表2で提供される。
【0137】
本明細書に記載される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、式LXXII−CXXXVのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表3で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物はリン酸エステルをさらに含むこともある。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、H、CH
3、グルクロニド、硫酸塩、またはリン酸エステルを含むこともある。本明細書で提供される方法の別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物のリン酸エステルは、式CXXXXVI−CXXXXVIIのいずれか1つの構造を有することもあり、式は表4で提供される。
【0138】
R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。一実施形態では、NDGAのリン酸塩プロドラッグは溶解度の改善と経口吸収の改善を示す。
【0139】
本方法で使用されるカテコールブタン変形現象の非限定的な例としては、限定されないが、式IV−LXVIIのいずれか1つの構造を有するカテコールブタン代謝産物、あるいはそのリン酸エステルが挙げられ、式は表1で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。一実施形態では、本明細書に記載される代謝産物のリン酸エステルは、式LXVIII−LXXIのいずれか1つの構造を有し、式は表2で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。
【0140】
本方法で使用されるカテコールブタン変形現象のさらなる他の非限定的な例としては、限定されないが、式LXXII−CXXXVのいずれか1つの構造を有するカテコールブタン代謝産物、あるいはそのリン酸エステルが挙げられ、式は表3で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。一実施形態では、本明細書に記載される代謝産物のリン酸エステルは、式CXXXXVI−CXXXXIXのいずれか1つの構造を有し、式は表4で提供される。R基は、
図29で示された式中で示されるものを指す。
【0141】
本方法で使用されるカテコールブタン代謝産物の他の非限定的な例としては、限定されないが、NDGA、テトラグリシニルNDGA;テトラ−ジメチルグリシニルNDGAまたはその塩;あるいは、トリ−O−メチルNDGA;ノルジヒドログアヤレト酸テトラピバラート;ノルジヒドログアヤレト酸テトラプロピオン酸塩とそのすべての光学構造。
【0142】
本方法で使用されるカテコールブタンの非限定的な例は、例えば、1,4−bis(3,4−ジヒドロフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−bis(3,4−ジメトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジエトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジプロポキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−bis(3,4−ジアセトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジプロピオニルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジブチロイルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジバレロイルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジピバロイルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジネオペンチルカルボキシルフェニル)−2,3−ジメチルブタン;または、1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−フェニルブタン;および、1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(2,5−ジヒドロキシフェニル)ブタンが挙げられる。
【0143】
本方法で使用されるカテコールブタンの非限定的な例としては、例えば、1,4−bis(3,4−ジヒドロフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−bis(3,4−ジメトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジエトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジプロポキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−bis(3,4−ジアセトキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジプロピオニルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジブチロイルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジバレロイルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジピバロイルオキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン;1,4−bis(3,4−ジネオペンチルカルボキシルフェニル)−2,3−ジメチルブタン;または、1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−フェニルブタン;および、1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(2,5−ジヒドロキシフェニル)ブタンと、d−とl−のd−、l−のラセミ混合物、ならびに、これらのメソ異性体も挙げられる。
【0144】
当該技術で記載される他のカテコールブタンは本明細書での使用に関して企図される。例えば、米国特許5,008,294号;6291524号;または6,417,234号;米国公開出願番号20080207532号、20080096967号、20060151574号、20060141029号、および20070099847号に記載されるカテコールブタンは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0145】
標準的な化学用語の定義は、 Carey and Sundberg “Advanced Organic Chemistry 4th Ed.” Vols. A (2000) and B (2001), Plenum Press, New Yorkを含む参照文献で見られることもある。他の方法で明示されていない限り、従来技術内の質量分光法(MS)、核磁気共鳴(NMR)、高相液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外線(IR)UV/力分光法、および薬理、またはHPLC−MSが使用される。特定の定義が与えられなければ、本明細書に記載されている、分析化学、有機合成化学、医薬、薬化学、について用いた命名法と、それらの検査の方法、技術と、は当業者に既知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬剤の調整、処方、および、送達、ならびに、患者の処置に用いられ得る。反応および精製の技術は、例えば、メーカーの仕様書のキットを用いて、または、当該技術で一般に遂行されるように、または、本明細書に記載されるように、行うことができる。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野で公知の従来の方法で、および、本明細書にわたって引用および議論される様々な一般的でより具体的な参考文献で記載されるように、行うことができる。本明細書にわたって、基とその置換基は、安定した部分と化合物を提供するために当業者によって選択可能である。
【0146】
本明細書で示された化合物は互変異性体として存在することもある。互変異性体は、単結合および隣接する二重結合のスイッチを伴う、水素原子の遊走によって相互転換できる化合物である。互変異性化が可能な溶液では、互変異性体の化学平衡は存在する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒、およびpHを含むいくつかの因子に依存する。互変体の対のいくつかの例は以下を含む:
【0148】
本明細書で使用されるような用語「薬学的に許容可能な誘導体またはプロドラッグ」は、レシピエントへの投与後に、薬学的に活性な代謝物またはその残基を(直接的または間接的に)与えることができる、化合物の任意の薬学的に許容可能な塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を指す。特に好ましい誘導体またはプロドラッグは、こうした化合物が患者(例えば、経口で投与される化合物を血液に吸収させやすくするなどして)に投与される際に化合物のバイオアベイラビリティを増加させるもの、あるいは、生物学的な区分(例えば脳またはリンパ系)への親化合物の送達を増強するものである。
【0149】
本明細書で使用されるような用語「薬学的に許容可能な塩」は、指定された化合物の遊離酸と遊離塩基の生物学的効果を保持し、かつ生物学的またはそれ以外で望ましくないものではない塩を指す。本明細書に記載される化合物は、酸性の基または塩基性基を有することもあり、したがって、多くの無機塩基または有機塩基のいずれか、および無機酸と有機酸と反応することで薬学的に許容可能な塩を形成することもある。こうした塩は、化合物の最終的な隔離と精製の間に、あるいは遊離塩基形態の精製化合物を適切な有機酸または無機酸に別々に反応させて、こうして形成された塩を分離することによって、原位置で調製可能である。薬学的に許容可能な塩の例としては、化合物を、酢酸塩、アクリル酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、臭素、酪酸塩、ブチン−1、4−ジオアート(dioate)、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クロロ安息香酸塩、塩化物、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、ジグルコン酸塩(digluconate)、リン酸二水素、ジニトロ安息香酸塩、硫酸ドデシル、エタンスルホン酸塩(ethanesulfonate)、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオアート、ヒドロキシ安息香酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、モノ水素リン酸塩、1−ナフタレンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモアート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピロ硫酸塩、ピロリン酸塩、プロピオール酸塩、フタル酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、プロパンスルホン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、
セバシン酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート、ウンデカン酸塩、および、キシレンスルホン酸塩を含む塩などの鉱物または有機酸または無機塩基と反応させることによって調製された塩を含んでいる。それ自体では薬学的に許容可能ではないシュウ酸などの他の酸は、本明細書に記載の化合物およびその薬学的に許容可能な酸付加塩を得る際に中間物として有用な塩の調製に使用されることもある。例えば、Berge et al., J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1−19を参照のこと。さらに、遊離酸基を含むこともある本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩のような適切な塩基と、アンモニアと、薬学的に許容可能な有機的な1級、2級、または3級アミンと反応することもある。代表的なアルカリあるいはアルカリの土類塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などを含んでいる。塩基の具体的な例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン(choline hydroxide)、炭酸ナトリウム、N+(C1−4アルキル)
4などを含んでいる。塩基付加塩の形成に役立つ代表的な有機的なアミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどを含む。化合物は自らが含むこともあるあらゆる塩基性の窒素含有基の四級化をさらに含むことを理解されたい。水溶性および油溶性あるいは水分散性または油分散性の製品は、こうした四級化によって得られることもある。例えば、上記のBerge et al.を参照のこと。
【0150】
カテコールブタン代謝産物はさらに様々な多形性の状態で存在することができ、これらはすべて本明細書で企図されており、疾病を処置するさいにも役立つことができる。例えば、カテコールブタン代謝産物の多形体は、本明細書に記載された方法の実施形態で投与されることもある。カテコールブタン代謝産物は例えば、すべての結晶形態(多形体として知られている)を含んでいる。多形体は、化合物の同じ元素組成物の異なる結晶充填配置を含んでいる。多形体は異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、水晶形状、光学的および電気的性質、安定性、溶媒和物、ならびに溶解度を有し得る。再結晶溶媒、結晶速度、および保存温度のような様々な要因により単結晶形態が優勢となることがある。様々な多形体は医薬組成物として投与することができる。
【0151】
医薬剤形では、活性な薬剤は、薬学的に許容可能な塩の形態で投与されることもあるか、あるいは、単独で、または適切な会合で、および、他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用されることもある。以下の方法と賦形剤は単なる例示に過ぎず、なんら限定するものではない。特定の量の活性化合物を含む様々な医薬組成物を調製する方法は知られているか、あるいは当業者には明らかとなるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Ester, Pa., 18th Edition (1990).を参照のこと。
【0152】
ビヒクル、アジュバント、担体、または希釈剤のような薬学的に許容可能な賦形剤は、当該技術ではありふれたものである。適切な賦形剤のビヒクルは、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびこれらの組み合わせである。加えて、必要に応じて、ビヒクルはpH調節剤や緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などの少量の補助物質を含むこともある。こうした剤形を調製する実際の方法は知られているか、あるいは当業者には明らかであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 17th edition, 1985.を参照のこと。投与される組成物または製剤は、どんな場合も、処置されている被検体の所望の状態を達成するのに適切な薬剤の量を含む。
【0153】
活性な薬剤は、トウモロコシ油、ヒマシ油、合成脂肪酸グリセリド、高脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコールを含む野菜または他の同様の油などの水性または非水性の溶媒中へ、および、必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、および保存剤のような従来の添加物と共に、溶解、懸濁、または乳化させることによって注射用調製物へと処方され得る。
【0154】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤を含む混合物中に活性物質を含んでいる。こうした賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、自然発生のホスファチド、例えば、レシチン、または脂肪酸を含むアルキレンオキシドの縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、長鎖脂肪族アルコールを含むエチレンオキシドの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレン−オキシセタノール(oxycetanol)、または脂肪酸に由来する部分的なエステルとポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸塩などのヘキシトールとを含むエチレンオキシドの縮合生成物、または脂肪酸とヘキシトール無水物とに由来する部分的なエステルを含むエチレンオキシドの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレイン酸塩であり得る。水性懸濁液はさらに1つ以上の保存剤、例えば、エチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1つ以上の着色料、1つ以上の香料、およびスクロース、サッカリン、またはアスパルテームなどの1つ以上の甘味料を含み得る。
【0155】
医薬品は注入、例えば、ボーラス注入または持続注入によって、非経口投与のために処方され得る。注入用の製剤は、単位剤形で、例えば、追加保存剤を含むアンプルまたは複数回投与用容器内に入れることができる。組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態をとることができ、懸濁材、安定化剤、および/または分散剤などの調合剤(formulatory agent)を含むことができる。製剤は単位用量または複数回用量用の容器、例えば、密封したアンプルおよびバイアル中に入れることができ、粉末形態で、または使用の直前に無菌の液状担体、例えば、塩性または無菌の発熱物質を含まない水を加えることしか必要としない冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席の注射溶液と懸濁液は、先に記載された種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0156】
非経口投与用製剤は、製剤を所望のレシピエントの血液と等張にする酸化防止剤、バッファー、殺生物剤、静菌剤、および溶質を含む、活性化合物の水性または非水性(油性)の無菌の注射溶液;ならびに、懸濁剤と増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌の懸濁液を含む。こうした製剤で使用される適切な等張のビヒクルの例は、塩化ナトリウム注射、リンガー液、または乳酸加リンガー液を含んでいる。適切な親油性の溶媒またはビヒクルは、胡麻油などの脂肪油、あるいはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成の脂肪酸エステルを含み、あるいは、リポソームまたは他の微粒子系を用いて血液成分または1つ以上の器官に向けて化合物を標的とすることができる。溶液中の活性成分の濃度は大きく変動し得る。典型的には、溶液中の活性成分の濃度は、約1ng/ml乃至約10μg/ml、例えば、約10ng/ml乃至約1ng/mlまでである。水性の注射剤懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘性を増加させる物質を含むことができる。随意に、懸濁液は、高濃度の溶液を調製することができるように化合物の溶解度を増加させる、適切な安定化剤または薬剤をさらに含むことができる。
【0157】
医薬品もデボー製剤として処方することができる。こうした長時間作用型の製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によって、あるいは筋肉内注射によって、投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)で、あるいはイオン交換樹脂で、あるいは難溶性の誘導体、例えば難溶性の塩として、処方することができる。
【0158】
頬側投与または舌下適用について、組成物は、従来の方法で処方された錠剤、ロゼンジ、香錠、またはゲル剤の形態をとることができる。こうした組成物は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントゴムなどの風味をつけた主薬中の活性成分を含むことができる。
【0159】
医薬品は局所的に投与することができる(すなわち、非全身性の投与による)。これは、表皮または頬側口腔の外側への投与と、化合物が血液循環をあまり入らないような耳、目、および鼻の中へのこうした化合物の点滴注入とを含む。対照的に、全身投与とは経口、静脈内、腹腔内、および筋肉内の投与を指す。
【0160】
局所投与に適した医薬品としては、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、またはペースト剤、懸濁液、粉末、溶液、スプレー、エアロゾル、油、および、目、耳、または鼻への投与に適した点滴薬などの、皮膚に浸透して炎症の部位に至る液体または半液体の製剤が挙げられる。あるいは、製剤は、活性成分や随意に1つ以上の賦形剤または希釈剤を染み込ませた包帯または絆創膏などのパッチまたは手当用品を含むことができる。局所製剤中の活性成分の量は大きく変動することがある。活性成分は、局所投与のために、製剤の0.001%w/wから10%w/w、例えば、1重量%から2重量%まで含むことができる。しかしながら、活性成分は製剤の10%w/wと同量を含み得るが、好ましくは、5%w/w未満、より好ましくは0.1%乃至1%w/wを含み得る。
【0161】
口への局所投与に適した製剤は、風味をつけた主薬中の活性成分、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントゴムを含むをロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性主薬中の活性成分を含む香錠;ならびに、適切な液体担体中の活性成分を含むうがい薬、を含んでいる。
【0162】
目への局所投与に適した製剤は目薬を含み、ここで、活性成分は適切な担体、特に活性成分向けの水性の溶媒に溶解または懸濁される。
【0163】
活性な薬剤は吸入によって投与されるためにエアロゾル製剤で利用され得る。
【0164】
本実施形態の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴霧剤へと処方されることもある。
【0165】
さらに、活性な薬剤は、乳化性塩基または水溶性塩基などの様々な塩基と混合することによって坐薬にすることができる。本実施形態の化合物は坐薬によって直腸で投与されることもある。坐薬は、カカオバター、カルボワックス、およびポリエチレングリコールなどのビヒクルを含み得る。これらは体温で溶けて室温でまた凝固する。
【0166】
経口用製剤については、活性な薬剤は、単独で使用するか、あるいはラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、またはジャガイモデンプンなどの従来の添加物とともに、結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなどの結合剤とともに、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはカルボキシメチルセルロースなどの崩壊剤とともに、滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤とともに、および、必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、および香料とともに、錠剤、粉末、顆粒、またはカプセル剤を作るための適切な添加物と組み合わせて、使用することができる。含漱剤については、調製物は当該技術で従来のやり方で作ることができる。
【0167】
シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液のような経口または直腸内の投与のための単位剤形が提供されてもよく、それぞれの単位剤形、例えば、茶さじ1杯、テーブルスプーン1杯、錠剤、または、坐薬は、1つ以上の阻害剤を含むあらかじめ決められた量の組成物を含んでいる。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、通常生理食塩水、または別の薬学的に許容可能な担体中の溶液として組成物中の阻害剤を含むこともある。
【0168】
カテコールブタン代謝産物の中には水溶性の親水性化合物であるものもある。いくつかの実施形態は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤中の親水性の化合物の製剤を含み、化合物の水溶液の形態のような経口の製剤または化合物の送達は、錠剤にされる粉末として凍結乾燥および送達可能であり、あるいは化合物はカプセルに入れることができる。
【0169】
本明細書の錠剤は腸溶性錠剤であり得る。本明細書の製剤は徐放性、遅延放出性または即時放出性の製剤であり得る。
【0170】
経口製剤に含まれるカテコールブタン代謝産物の量は、被検体に投与される所望の用量に依存して調節することができる。こうした調節は当業者の技術の範囲内である。
【0171】
いくつかのカテコールブタン代謝産物は疎水性または親油性の化合物である。腸の中の親油性化合物の吸収は、水性の腸液への化合物の可溶化の速度または程度を増強することができる、薬学的に許容可能な担体を使用することで改善され得る。脂質担体は当該技術で知られている。本明細書の製剤は経口の液体として送達可能であるか、あるいは様々なタイプのカプセル剤へとカプセル化され得る。
【0172】
本実施形態は、一例では、トリアシルグリセロール中のこうした化合物の溶解によって経口送達のために処方される親油性のカテコールブタン代謝産物を含む製剤を含んでおり、製剤は経口送達のためにその後カプセルに入れられる。トリアシルグリセロールは、グリセロール分子に結合した長鎖および/または中鎖の脂肪酸を含む分子である。長鎖脂肪酸はC
14からC
24まで多岐に及び、一般的な脂肪で見られる。中鎖脂肪酸はC
6からC
12まで多岐に及び、ココナッツオイルまたはパーム核油で見られる。本明細書での使用に適したトリアシルグリセロールは、同じグリセロール分子上でエステル化された短鎖または中鎖の脂肪酸のいずれかの混合物あるいはその両方を含む、構造化した脂質を本明細書に含んでいる。
【0173】
別の実施形態では、1つ以上の界面活性剤は、カテコールブタン代謝産物と脂質の担体の混合物に加えることができ、その結果、薬は油/界面活性剤の混合物の微細液滴中にある。界面活性剤は胃腸液中の希釈時に油性の製剤を分散させるように作用し得る。
【0174】
本実施形態は、親水性の界面活性剤と油からなるマイクロエマルションの形態のカテコールブタン代謝産物の経口送達向けの製剤を含んでいる。マイクロエマルションの粒子は可溶性の油と薬を含む界面活性剤ミセルであり得る。
【0175】
経口投与に適した製剤は、それぞれがあらかじめ決められた量の活性成分を含むカプセル剤、カシェ剤、または錠剤などの分離した単位として;粉末または顆粒として;水性液または非水性の液体中の溶液または懸濁液として;あるいは、水中油型エマルションまたは油液中の油中水型エマルションとして示される。活性成分は食塊、舐剤、またはペーストとしても示すことができる。
【0176】
経口で使用することができる医薬品は、錠剤、ゼラチンで作られた押し出し型のカプセル剤、および、ゼラチンで作られた柔らかく密閉されたカプセル、およびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含む。錠剤は圧縮または成形によって、随意に1つ以上の副成分とともに作ることができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、不活性な希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋結合したポビドン、架橋結合したカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、あるいは潤滑剤、表面活性剤、または分散剤と随意に混合して、粉末または顆粒などの自由流動形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製され得る。成型された錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末の化合物の混合物を作ることによって適切な機械で作ることができる。錠剤は随意にコーティングまたは分割(scored)可能であり、内部の活性成分の遅延放出または制御放出を行うために処方可能である。錠剤は胃以外の腸の部分に放出するために任意に腸溶コーティングがなされてもよい。経口投与のためのすべての製剤はこうした投与に適した量でなければならない。押し出し型のカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/または滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および随意に安定化剤と組み合わせて活性成分を含むことができる。ソフトカプセル剤では、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体のポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶かすまたは懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。ドラジェコアには適切なコーティングが施される。この目的のために、濃縮された砂糖水を使用することができる。これは随意にアラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カーボポール(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。染料または色素を錠剤またはドラジェコーティングに加えることで、同定したり、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴づけたりすることができる。
【0177】
同様に、固体の脂質ナノ粒子調製物中のカテコールブタン代謝産物の製剤が経口投与に適している。
固体の脂質ナノ粒子は当該技術では従来の任意の方法で調製することができる。
【0178】
一実施形態では、固体の脂質ナノ粒子は、高温での溶解した脂質の均質化による高温の均質化プロセスで調製することができる。このプロセスでは、固体の脂質は溶けて、カテコールブタンは溶解した脂質に溶ける。その後、あらかじめ加熱した分散媒を、溶解した薬物を負荷した脂質と混合し、その組み合わせをホモジナイザーを用いて混合し、粗いプレエマルション(pre−emulsion)を形成する。その後、脂質の融点よりも高い温度で高圧均質化が行われて、油/水ナノエマルションが生成される。ナノエマルションは固体の脂質ナノ粒子を形成するために室温に冷まされる。
【0179】
別の実施形態では、固体の脂質ナノ粒子は低音の均質化プロセスで調製することができる。このプロセスでは、脂質は溶けて、カテコールブタン代謝産物は溶けた脂質中に溶かされる。その後、薬を負荷した脂質を、液体窒素またはドライアイスの中で凝固する。固形の薬剤の脂質を粉末粉砕機で挽いて、50−100μmの粒子を形成する。その後、脂質の粒子を冷たい水性分散媒中に分散させ、室温以下で均質化して、固体の脂質ナノ粒子を形成する。
【0180】
同様に、一例では、経口送達用のリポソームまたはミセル中の親油性のカテコールブタン代謝産物の製剤が本明細書では提供される。これらの製剤は当該技術の従来の任意の方法で作ることができる。ミセルは一般に脂質の単層小胞であり、このなかで疎水性の薬は単層上の疎水性領域と会合する。リポソームは一般にリン脂質二重層小胞である。親油性のカテコールブタン代謝産物は一般にこれらの小胞の中心に存在する。
【0181】
同様に、別の例では、静脈内投与用のカテコールブタン代謝産物の製剤が本明細書で提供される。カテコールブタンは薬学的に許容可能な担体を含んで、動物への注射のために処方されることもある。担体は限定されないが、1つ以上の可溶化剤および/または賦形剤、例えば:(a)ジメチルスルホキシド以外の水溶性の有機溶媒;ただし、水溶性の有機溶媒がプロピレングリコールである場合、プロピレングリコールは白色ワセリンのない状態、キサンタンガム(キサンタムガム(xantham gum)やキサンタムガム(xantham gum)としても知られている)がない状態、および、グリセリンまたはグリシンの少なくとも1つのない状態であり、ならびに、水溶性の有機溶媒がポリエチレングリコールである場合、ポリエチレングリコールはアスコルビン酸またはブチルヒドロキシトルエン(「BHT」)がない状態であり、ならびに、ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール400である場合、ポリエチレングリコール400はポリエチレングリコール8000のない状態であるとし、(b)シクロデキストリン;(c)イオン性、非イオン性、または両親媒性の界面活性剤であり、ただし、界面活性剤が非イオン性の界面活性剤である場合、非イオン性の界面活性剤はキサンタンガムのない状態であるとし、(d)修飾されたセルロース;(e)ヒマシ油以外の不水溶性の脂質;あるいは、担体(e)−(a)のいずれかの組み合わせ、を含んでいる。
【0182】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水溶液の形態であり得る。使用することができる許容可能なビヒクルと溶媒の中には、水、リンガー液、および等張食塩水がある。無菌の注射可能な調製物は、活性成分が油相に溶けている、無菌の注射可能な水中油型マイクロエマルションでもあり得る。例えば、活性成分は、最初にダイズ油とレシチンの混合物に溶かすことができる。その後、油剤を水とグリセロールの混合物に入れて処理することで、マイクロエマルションが形成される。注射可能な溶液またはマイクロエマルションは、局所的なボーラス大量注射によって患者の血流に加えることができる。あるいは、本化合物の一定の循環する濃度を維持するような方法で、溶液またはマイクロエマルションを投与することは有利であり得る。こうした一定の濃度を維持するために、連続的な静脈内送達装置を利用することができる。こうした装置の一例がDeltec CADD−PLUS(商標)モデル5400静脈内ポンプである。医薬組成物は筋肉内および皮下の投与のための無菌の注射可能な水性あるいは油性の懸濁液の形態をとることができる。この懸濁液は、上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、当該技術に従って処方可能である。無菌の注射可能な調製物は、無毒な非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒、例えば、1,3−ブタンジオール中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液でもあり得る。加えて、無菌の不揮発性油は溶媒または懸濁媒として慣例通りに使用される。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の不揮発性油が使用され得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は注射可能薬物の調製でも用いられる。
【0183】
同様に、脳血液関門の破壊(「BBBD」)を伴うまたは伴わない、あるいは肝動脈の化学塞栓療法などの際に閉塞を伴うまたは伴わない、動脈内投与のためのカテコールブタン代謝産物の製剤も本明細書で提供される。簡潔に言えば、カテコールブタン代謝産物が閉塞を伴う動脈内で投与される場合、標的部位につながる主要な動脈にはカテーテルが挿入され、カテコールブタン代謝産物はカテーテルを通って適用されることもある。長期間、標的部位でカテコールブタン代謝産物を保持するために、ポリビニルアルコール粒子のみを用いて、あるいはコイルと組み合わせて、動脈の塞栓血症を行うことができる。カテコールブタン代謝産物の動脈内送達は、水溶性の組成物を含むこともある。本明細書に記載の薬物または薬剤は、動脈内注射に先立って食塩水に溶かされてもよく、こうした注射はヘパリンによる処置と鎮静に先行することもある。
【0184】
当該技術における従来のものとしての脳血液関門(「BBB」)の浸透圧の破壊は、本明細書に記載の薬剤の動脈内送達を伴うこともある。こうした手順を用いて、好ましくは動脈内の送達の直前に、中枢神経系(「CNS」)への薬物の移動を増加させることができる。こうした破壊について、カテーテルは動脈、通常は脳に繋がっている浅側頭動脈に入れられ、BBBはマンニトールの溶液で破壊される。この侵襲的な処置は、患者が全身麻酔下にある間に行なわれるのが一般的である。こうした処置は、抗痙攣薬および/またはアトロピンの事前の水和と投与を必要とすることもある。
【0185】
同様に、一例において、鼻腔内の送達用のカテコールブタン代謝産物の製剤と、その鼻腔内の送達とが本明細書で提供される。鼻腔内の送達は、静脈内投与によって達成することができるよりも高い脳内での活性薬剤の濃度を構築することもある。さらに、この送達方式は、薬物を受け取る被検体の肝臓と腸での初回通過代謝の問題を回避する。
【0186】
吸収することができる活性な薬剤の量は、粘液中の薬の溶解度、血清タンパク質の約95%の水溶液、糖タンパク質、脂質、および電解質からなる組成物に部分的に依存する。一般に、本明細書に記載の活性な薬剤の親油性が高まるにつれ、CSFの中の薬物濃度も増加する。
【0187】
親水性のカテコールブタン代謝産物は、食塩水、リン酸塩緩衝液、またはリン酸塩緩衝食塩水などの薬学的に許容可能な担体に溶かされることもある。一実施形態では、pH7.4の0.05Mのリン酸塩緩衝液が担体として使用され得る。
【0188】
本薬剤の鼻腔内の送達は、薬剤を投与する際に、対象の位置を調節することによって最適化されることもある。例えば、患者の頭を直立して90°、仰臥位で90°、仰臥位で45°、または仰臥位で70°と様々に位置づけることで、最大の効果を得てもよい。
【0189】
カテコールブタン代謝産物の組成物の担体は、薬学的に許容可能であり、かつ組成物の活性な薬剤と互換性をもつあらゆる材料であってもよい。担体は液体である場合、低張性であるかまたは鼻水と等張であり、約4.5乃至約7.5までのpHの範囲内であり得る。担体は粉末の形態である場合、許容可能なpH範囲内でもある。
【0190】
鼻腔内送達用の担体組成物は親油性の物質を随意に含むこともあり、これは、鼻粘膜全体での、かつ嗅覚神経経路を介した脳への活性な薬剤の吸収を増強することもある。こうした親油性の物質の例としては、限定されないが、ガングリオシドとホスファチジルセリンが挙げられる。親油性の1つまたは複数のアジュバントはミセルなどの形態で組成物に含まれることもある。
【0191】
本明細書に記載の疾患、障害、または疾病の処置のために被検体の鼻腔内の送達のための活性な薬剤の医薬組成物は、例えば、米国特許6,180,603号に記載されている当該技術ではありふれた方法で処方可能であり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本明細書に記載の組成物は、粉末、顆粒、溶液、エアロゾル、液滴、ナノ粒子、またはリポソームとして処方することができる。活性な薬剤に加えて、組成物は適切なアジュバント、バッファー、保存剤、塩を含むこともある。点鼻剤のような溶液は、酸化防止剤、バッファーなどを含むこともある。
【0192】
カテコールブタンは、カテコールブタン代謝産物を含む生分解性ポリマーの移植によるなど、所望の部位への外科的な移植による処置のために被検体に送達されることもある。
【0193】
したがって、本明細書に記載の生分解性ポリマーは、宿主組織に対していかなる毒性または悪影響を与えることなく、間質液に溶けるあらゆるポリマーあるいはコポリマーであり得る。好ましくは、ポリマーまたはポリマーを合成するモノマーは、ヒトへの投与に関して食品医薬品局によって承認される。異なる溶解特性のモノマーを有するコポリマーは、溶解の速度を制御するために1つのモノマーの割合を他のモノマーよりも大きくすることなど、分解の力学を制御するために好ましい。
【0194】
一実施形態では、ポリマーは、Fleming A. B. and Saltzman, W. M., Pharmacokinetics of the Carmustine Implant, Clin. Pharmacokinet, 41: 403−419 (2002); と、Brem, H. and Gabikian, P. (2001)に記載されているように、1,3−bis−(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸[p](CPP:SA)のコポリマーである。別の実施形態では、ポリマーは Fu, J. et al., (2002) Biomaterials, 23: 4425−4433に記載されているように、ポリエチレングリコール(「PEG」)とセバシン酸のコポリマーである。
【0195】
ポリマー送達システムは、本明細書に記載された疎水性および親水性のカテコールブタン代謝産物の送達に適用可能である。カテコールブタン代謝産物は生分解性ポリマーと組み合わされ、所望のまたは影響を受けた部位に外科的に移植されてもよい。いくつかのポリマー組成物は本明細書に記載の静脈内治療または吸入療法に使用可能である。
【0196】
カテコールブタンは全身におよび/または吸入による肺への投与によって局所的に送達されることもある。薬物の吸入送達は、実質的な全身毒性を引き起こすことなく肺組織で高い薬物濃度を達成する方法として、同様に薬物の体循環を遂行する方法として、広く受け入れられている。こうした製剤を生成するための技術は当該技術ではありふれたものである。肺疾患に対する有効性は、こうした方法で送達された疎水性または親水性のカテコールブタン代謝産物のいずれかを用いて見られることもある。
【0197】
吸入による肺送達については、カテコールブタン代謝産物は、乾燥粉末、水溶液、リポソーム、ナノ粒子、またはポリマーへと処方され、例えば、エアロゾルとして投与されることもある。親水性の製剤も同様に、全身に適用するために、肺胞の表面を通って血流へと取り込まれることもある。
【0198】
一実施形態では、本明細書に記載の活性な薬剤を含むポリマーは上のようにFu,J.et al. (2002)に記載されているように作られて使用される。例えば、本明細書に記載のポリマーは、セバシン酸とポリエチレングリコール(「PEG」)のポリマーであり得るか、あるいは、ポリ(乳酸の−co−グリコール)酸(「PLGA」)、または、ポリエチレンイミン(「PEI」)とポリ−L−リジン(「PLL」)のポリマーであり得る。
【0199】
別の実施形態では、吸入送達用のカテコールブタン代謝産物は、噴霧化の前に食塩水またはエタノールに溶かされて投与されることもある。
【0200】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の薬剤は、当該技術でありふれた方法で調製された乾燥粉末として送達される際にも有効である。
【0201】
一実施形態では、NDGA化合物の送達は、例えば、SmartMist(商標)とAERx(商標)などの薬物送達装置へ埋め込まれたマイクロプロセッサーを用いて達成されることもある。
【0202】
投与される適切な用量は、例えば、被検体の一般的な健康、被検体の年齢、疾患または疾病の状態、被検体の体重、腫瘍の大きさなど、処置される被検体に依存している。
【0203】
医薬組成物は、例えば、鼻腔内投与;経口投与;吸入投与;皮下投与;経皮投与;閉塞を伴うまたは伴わない動脈内投与;頭蓋内投与;脳室内投与;静脈内投与;頬側投与;腹腔内投与;眼内投与;筋肉内投与;移植投与;および、中心静脈投与などの投与経路のために処方されることもある。一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は経口投与のために処方される。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は静脈内投与のために処方される。
【0204】
活性な薬剤は単回用量、より典型的には複数回用量で投与されることもある。所定の薬剤の好ましい投与量は、様々な手段によって当業者により容易に決定される。他の有効量は、用量反応曲線を確立する日常的な試みによって当業者により迅速に決定され得る。薬剤の量は当然のことながら使用される特定の薬剤に依存して変わる。
【0205】
活性な薬剤の投与の頻度は、用量のように、年齢、体重、疾患の状態、健康状態、および忍患者の耐性に基づいて介護者によって決定される。したがって、薬剤は、毎日、毎週、毎月1回以上、あるいは慣例通りに決定されるように必要に応じて投与されることもある。薬剤は、数日間、数週間、数カ月間など断続的に投与されてもよく、その後、3カ月または6か月など、ある程度の時間が経つまでは投与されないこともあり、その後、再度、数日間、数週間、数カ月間投与されることもある。
【0206】
注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水、または別の薬学的に許容可能な担体中の溶液として組成物中にAPIを含むこともある。
【0207】
<治療法>
「有効な量」または「薬学的に有効な量」という用語は、所望の生物学的、治療的、および/または予防的な結果をもたらすための無毒であるが十分な量の薬剤を指す。結果は、疾患の徴候、症状、または原因の減少および/または緩和、あるいは生体系の他の所望の変質であり得る。例えば、治療用途のための「有効な量」は、それ自体の本明細書で開示されるようなカテコールブタン代謝産物の量、あるいは疾患の治療上著しい減少をもたらすのに必要とされる本明細書に記載のカテコールブタン代謝産物を含む組成物の量である。任意の個々の場合の適切な有効な量は、通例の実験を用いて当業者によって決定されることもある。
【0208】
「薬学的に許容可能」または「薬理学的に許容可能な」によって、生物学的またはそれ以外でも望ましくないものではない材料を意味しており、つまり、材料はどんな望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、あるいはそれが含まれている組成物の成分のいずれかを用いる有害の方法で相互作用することなく、個体に投与され得る。
【0209】
用語「処置すること」および本明細書で使用されるような文法的な等価物は、治療的な有益性および/または予防的な有益性を達成することを含んでいる。治療的な有益性によって、処置されている根本的な疾病の根絶または改善を意味する。処置することは望ましい薬理学的および/または生理学的な有効性を得ることも指す。効果は、疾病、疾患、またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという観点では予防的こともあれば、および/または、疾病、または疾患、ならびに/あるいは疾病または疾患の原因である有害な影響の部分的または完全な治癒の観点から治療的なこともある。したがって、「処置」は例えば、哺乳動物、特にヒトの疾病または疾患の任意の処置も包含しており、以下を含む:(a)疾病または疾患に罹りやすいがそのようにまだ診断されていない被検体において、疾病または疾患が生じることを防ぐこと;(b)その進行を妨げるなど、疾病または疾患を阻害すること、および、(C)例えば、疾病または疾患の退行を引き起こすなど、疾病または疾患を和らげる、緩和する、または改善すること。ほんの一例として、癌患者では、治療の有益性は、根本的な癌の根絶または寛解を含むこともある。同様に、治療の有益性は、患者が依然として根本的な病気で苦しんでいることもあるという事実にもかかわらず、患者に改善が見られるように、根本的な障害に関連する生理的な症状の1つ以上の根絶または寛解で達成されることもある。予防的な有益性については、たとえ疾病の診断がなされていなかったとしても、癌を発症させる危険性のある患者に、または、こうした疾病の生理的な症状の1つ以上を報告した患者に対して、1つの方法が実施されるか、あるいは、組成物が投与されてもよい。いくつかの例では、処置することは、静止状態(つまり、病気が悪化しないこと)と患者の生存期間が伸びることを意味する。投与される用量は、例えば、被検体の一般的な健康、被検体の年齢、疾患または疾病の状態、被検体の体重、腫瘍の大きさなど、処置される被検体に依存する。
【0210】
障害に苦しむ個体などに関して本明細書で使用されるような「被検体」、「患者」、または「個体」との用語は、哺乳動物と非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例は、限定されないが、哺乳動物の分類の任意のメンバーを含んでいる:ヒト、チンパンジーのようなヒト以外の霊長類、および、他の類人猿およびサル類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタのような家畜;ウサギ、イヌ、および、ネコのような家庭動物;ラット、マウスおよびモルモットのようなげっ歯類などを含む実験動物。非哺乳動物の例としては、限定されないが、鳥や魚などが挙げられる。本明細書で提供される方法と組成物のいくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0211】
本明細書で使用されるように、用語「同時投与」、「〜と組み合わせて投与される」、および、その文法的な等価物などは、一人の患者に対して選択された治療薬の投与を包含することを意味しており、同じまたは異なる投与経路によって、あるいは同じまたは異なる時に薬剤が投与される処置レジメンを含むことを意図している。いくつかの実施形態では、阻害剤は他の薬剤と同時投与される。こうした用語は、動物に対する2つ以上の薬剤の投与を包含しており、その結果、両方の薬剤および/またはその代謝産物は同時に動物の中に存在するようになる。こうした用語は、個別の組成物での同時投与、個別の組成物での異なる時間の投与、および/または、両方の薬剤が存在する組成物での投与を含んでいる。したがって、いくつかの実施形態では、阻害剤と別の薬剤は単一の組成物で投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤と他の薬剤は組成物中で混合される。さらなる実施形態では、阻害剤と別の薬剤は個別の投与量で別々の時間に投与される。
【0212】
用語「医薬組成物」は、本明細書で使用されるように、限定されないが、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤などの少なくとも1つの薬学的に許容可能な化学成分と随意に混合された、生物学的に活性な化合物を指す。
【0213】
本明細書で使用されるような用語「担体」は、細胞または組織への化合物のとり込みを促す、比較的無毒な化合物または薬剤を指す。
【0214】
用語「薬学的に許容可能な賦形剤」は、ビヒクル、アジュバントまたは希釈剤、あるいは大衆が容易に入手可能な当該芸術でありふれたものを含む他の補助物質を含んでいる。例えば、薬学的に許容可能な補助物質は、pH調節剤および緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤などを含んでいる。
【0215】
本明細書で使用されるような用語「代謝産物」は、使用されたとともに、化合物が代謝される際に形成される化合物の誘導体を指す。一態様において、本明細書ではNDGAの代謝産物のバージョンを多くのグルクロン酸抱合した(multi−glucuronididated)、メチル化した、硫酸化したバージョンが提供される。
【0216】
本明細書で使用されるような用語「活性代謝物」は、化合物が代謝される際に形成される化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。
【0217】
本明細書で使用されるような用語「代謝した」とは、特別の物質が有機体によって変化するプロセス(限定されないが、酵素によって触媒された加水分解反応や反応を含む)の合計を言う。したがって、酵素は化合物に対する特定の構造の変質をもたらすこともある。例えば、シトクロムP450は様々な酸化藩王や還元反応を触媒するが、その一方でウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、および遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の移動を触媒している。代謝についてのさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw−Hill (1996)」から得られる。
【0218】
本明細書で使用されるような用語「単位剤形」は、ヒトと動物の被検体用の単回用量として適切な物理的に別々の単位を指し、それぞれの単位は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、またはビヒクルを伴って所望の効果をもたらすのに十分な量の中で計算されたAPIのあらかじめ決められた量を含んでいる。本化合物の新規な単位剤形用の仕様は、採用される特定の化合物と達成される効果、および宿主中の各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0219】
本明細書で使用されるように、「パーセント」、「パーセンテージ」、または記号「%」は、組成物中に存在する担体の量にすべて基づいて任意の特定の構成要素に関して指示されるように、組成物中に存在する担体の量、重量/重量(w/w)、重量/容積(w/v)、または容積/容積(v/v)に基づいて組成物中の指示された成分のパーセントを意味する。したがって、異なるタイプの担体は、示されるように、100%までの量で存在することもあり、これはAPIの存在を除外するものではなく、その量は組成物中に存在する%または特定の数のmg、あるいは存在する特定の数のmg/mLとして示されることもあり、%またはmg/mLは組成物中に存在する担体の総量に基づく。特定の種類の担体は、担体の100%を占める組み合わせで存在することもある。
【0220】
カテコールブタン代謝産物ではない材料を実質的に含まないカテコールブタン代謝産物に関する「実質的に精製された」化合物。一例として、実質的に含まないとは、非カテコールブタン代謝産物材料を少なくとも約50%含まない、非カテコールブタン代謝産物材料を少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%含まない、または、少なくとも約95%含まない、ことを意味している。
【0221】
カテコールブタン代謝産物は、伝統的な療法に対して癌または他の増殖性疾患を敏感にすることができ、同様に、癌または他の増殖性疾患がこうした伝統的な療法に対する耐性を獲得した後にこれらを再度敏感にすることができる。本明細書に記載される実施形態は、細胞内のEGFRとIGF−1Rの両方を阻害する方法を提供し、該方法は、EGFRとIGF−1Rの両方の阻害が望ましい細胞を、本明細書に記載されるようなカテコールブタン代謝産物に接触させる工程を含む。本明細書に記載される化合物が二重のキナーゼ阻害剤であることから、化合物は生物学的プロセスでEGFRとIGF−1Rの役割に関する生体外の研究に役立つ研究道具である。
【0222】
本明細書には、本明細書に記載されるような有効な量のカテコールブタン代謝産物(つまり、二重のキナーゼ阻害剤である単一の化合物)を、単独で、または1つ以上の追加の活性成分(例えば、抗癌剤)および/または処置レジメン(例えば、外科手術)と組み合わせて投与することによって、増殖性疾患に苦しむ患者を処置するための化合物、医薬組成物、および方法について記載されている。
【0223】
本出願は一般に、本明細書に記載されたカテコールブタン代謝産物(またはその誘導体)を使用して疾患を処置する方法に関する。一例として、本出願は、IGF−1RとEGFRを阻害することにより増殖性疾患を処置する際に、表1と3で提供される式IV−LXVII、式LXXII−CXXXV、またはそのリン酸エステル(R基は
図29で例証された式の中で示されるものを指す)のいずれか1つの構造を有するカテコールブタン代謝産物の使用に関する。別の例として、本出願は、表2と4で提供される式LXVIII−LXXIまたは式CXXXVI−CXXXVIIのいずれか1つの構造を有する、本明細書で記載されるカテコールブタン代謝産物のリン酸エステルの使用に関する。R基は
図29で示された式の中で示されるものを指す。
【0224】
本明細書では、IGF−1RとEGFRの両方のチロシンキナーゼ活性を阻害することができる有効な量の医薬化合物を投与する工程を含む疾患を処置する方法が提供され、ここで、医薬化合物は本明細書で記載されるカテコールブタン代謝産物(つまり二重のキナーゼ阻害剤である1つの化合物)である。
【0225】
同様に、本明細書では、IGF−1RとEGFRの両方のチロシンキナーゼ活性を阻害することができる有効な量の医薬化合物を投与する工程を含む、1つ以上のEGF−R阻害剤またはIGF−1R阻害剤に対する耐性を進行させた被検体の疾患を処置する方法が提供され、ここで、医薬化合物はカテコールブタン代謝産物(つまり二重のキナーゼ阻害剤)である。
【0226】
一実施形態では、疾患は増殖性疾患である。
【0227】
増殖性疾患は、限定されないが、悪性、前悪性、または良性の癌を含む。開示された方法を使用して処置される癌は、例えば、固形腫瘍、リンパ腫、または白血病を含んでいる。1つの実施形態では、癌は、例えば、脳腫瘍(例えば、神経膠芽腫、星細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、または周辺の神経外胚葉の腫瘍のような、例えば、悪性、前悪性、または良性の脳腫瘍)、癌腫(例えば、胆嚢癌腫、気管支癌、基底細胞癌、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞未分化癌、腺腫、嚢胞腺腫など)、基底細胞癌、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、アスキン腫瘍、リンパ肉腫、神経乳頭、カポジ肉腫、皮膚線維肉腫、血管肉腫など)、形質細胞腫、頭部と頸部の腫瘍(例えば、経口、喉頭、鼻咽頭、食道、など)、肝腫瘍、腎腫瘍、腎細胞腫瘍、扁平上皮癌、子宮の腫瘍、骨腫瘍、前立腺腫瘍、限定されないがHer2−および/またはER−および/またはPR−である乳腺腫瘍を含む乳腺腫瘍、膀胱腫瘍、膵臓腫瘍、子宮内膜腫瘍、扁平上皮癌、胃腫瘍、神経膠腫、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、卵巣腫瘍、頸部腫瘍、目腫瘍、中枢神経系腫瘍(例えば、原発性のCNSリンパ腫、脊柱の軸椎腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体の腺腫など)、甲状腺腫瘍、肺腫瘍(例えば、肺非小細胞癌(NSCLC)または肺小細胞癌)、白血病またはリンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞性リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連したリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄白血病(CML)、または肝細胞癌など)、多発性骨髄腫、皮膚腫瘍(例えば、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、悪性黒色腫、皮膚の黒色腫、または眼球内黒色腫のような黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、またはカポジ肉腫)、婦人科腫瘍(例えば、子宮肉腫、ファロピアン管の癌、子宮内膜の癌、頚部の癌、膣癌、外陰癌など)、ホジキン病、小腸の癌、内分泌系の癌(例えば、甲状腺、副甲状腺、または副腎などの癌)、中皮腫、尿道の癌、陰茎の癌、ゴーリン症候群に関連付けられる腫瘍(例えば、髄芽腫、髄膜腫など)、未知の起源の腫瘍;あるいはこれらのいずれかの転移であり得る。
【0228】
別の実施形態では、癌は、肺腫瘍、胸壁腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸の腫瘍、頭部と頸部の腫瘍、肝腫瘍、前立腺腫瘍、神経膠腫、多形膠芽腫、卵巣腫瘍、または甲状腺腫瘍;あるいはこれらのいずれかの転移である。
【0229】
さらに別の実施形態では、癌は、子宮内膜の腫瘍、膀胱腫瘍、多発性骨髄腫、黒色腫、腎腫瘍、肉腫、頸部腫瘍、白血病、および神経芽腫である。
【0230】
本明細書で提供されるような腫瘍は原発性の腫瘍または転移であることもある。癌は上皮基底癌であってもよい。1つの実施形態では、腫瘍の細胞はEGFRを発現することもある。別の実施形態では、腫瘍の細胞はIGF−1Rを発現することもある。さらに別の実施形態では、腫瘍の細胞はEGFRとIGF−1Rを発現することもある。
【0231】
本明細書では、IGF−1RとEGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害することができる有効な量の医薬化合物を投与する工程を含む、悪性、前悪性、または良性の癌を処置する方法が提供され、ここで、医薬化合物はカテコールブタン代謝産物(つまり二重のキナーゼ阻害剤である単一の化合物)である。
【0232】
本明細書では、IGF−1RとEGF−Rの両方のチロシンキナーゼ活性を阻害することができるカテコールブタン代謝産物による処置のための被検体を選ぶ方法が提供され、ここで、前記被検体は、ベースラインレベルの、または、対照レベルと比較したベースラインレベルの2倍のIGF−1R、EGFR、または両方のレベルを有するものとして特定される。
【0233】
一態様では、被検体はEGFR阻害剤またはIGF−1R阻害剤で以前に処置されたことがある。
【0234】
別の態様では、被検体はEGFR阻害剤のみ、またはIGF−1R阻害剤のみによる処置に対する耐性があってもよい。
【0235】
本明細書では、癌細胞を減らし、その成長を阻害し、殺すために有効なカテコールブタン代謝産物の量に細胞を接触させる工程を含む、上皮起源の癌細胞を減らし、その成長を阻害し、または殺す方法が提供される。
【0236】
本明細書では、腫瘍のサイズ増大を阻害し、腫瘍のサイズを縮小させ、腫瘍増殖を減少させ、または、腫瘍の増殖を防ぐために、本明細書に記載された有効な量のカテコールブタン代謝産物を個体に投与する工程を含む、個体において腫瘍のサイズ増大を阻害し、腫瘍のサイズを縮小させ、腫瘍増殖を減少させ、または、腫瘍の増殖を防ぐ方法が提供される。場合によっては、腫瘍の処置は症状の静止を含み、つまり、患者を処置することによって、癌は悪化せず、患者の生存は伸びる。
【0237】
患者は、処置レジメンの前、最中、後を含む1つ以上の多くの時点で、症状に関して評価されることもある。処置は被検体の状態の改善をもたらすことがあり、以下の事象の1つ以上が生じたかどうか判断することによって評価することができる:腫瘍サイズの減少、腫瘍細胞増殖の減少、細胞の数の減少、血管新生の減少、および/またはアポプトーシスの増加。こうした事象が1つ以上発生すると、場合によっては、癌が一部または完全に排除されて、患者の生存期間が伸びることもある。あるいは、末期癌については、処置は、疾患の静止、生活の質の向上、および/または生存期間の延長をもたらすこともある。処置を評価する他の方法は当該技術で知られており、本明細書でも企図される。
【0238】
本明細書に記載された分類とステージ分類系を用いて、本明細書に記載される癌の処置を評価してもよいことを当業者は理解するであろう;さらに、他のステージ分類の図式も当該技術で知られており、本明細書に記載された方法と併せて使用されてもよい。ほんの一例として、患者の身体における癌の進行度を記載するために、悪性腫瘍のTNM分類は癌ステージ分類系として使用されてもよい。Tは、腫瘍のサイズと腫瘍が近くの組織に侵入したかどうかを記載しており、Nは含まれる所属リンパ節を記載しており、Mは遠隔転移を記載している。TNMは国際対がん連合(UICC)によって維持されており、対がん米国合同委員会(AJCC)と両院協議会と国際産婦人科連合(FIGO)によって使用されている。すべての腫瘍が例えば脳腫瘍などのTNM分類を有しているわけではないことが理解されるだろう。一般に、T(aは(0)、1−4である)は原発腫瘍のサイズまたは直接的な範囲として測定される。N(0−3)は、所属リンパ節への広がりの程度を指す:N0は腫瘍細胞が所属リンパ節にないことを意味しており、N1は腫瘍細胞が所属リンパ節に最も接近しているか少数の所属リンパ節に広がっていることを意味しており、N2は腫瘍細胞がN1とN3の間の程度まで広がっていることを意味しており;N3は腫瘍細胞が最も遠いところまで広がっているか、多くの所属リンパ節に広がっていることを意味している。M(0/1)は転移の存在を指し:M0は遠隔転移が存在しないことを意味しており;M1は転移が離れた器官(所属リンパ節を超えて)に生じたことを意味している。他のパラメータも評価されることもある。G(1−4)は癌細胞のグレードを指す(つまり、癌細胞は正常細胞に似ているように見える場合にはグレードが低く、あまり分化していないように見える場合にはグレードが高い)。R(0/1/2)は手術の完全性(つまり、癌細胞を含まないまたは癌細胞のない切除境界)を指す。L(0/1)は、リンパ管の中への浸潤を指す。V(0/1)は、静脈の中への浸潤を指す。
C(1−4)は、Vの確実性(品質)の変更遺伝子を指す。
【0239】
<乳癌>
一態様において、本明細書では、乳腺中の管組織中の腺管癌、Her2−および/またはER−および/またはPR−である乳癌といった乳癌を処置する方法が本明細書で提供される。
【0240】
本明細書に記載された方法によって処置され得る複数の種類の乳癌が存在する。上皮内小葉癌と腺管上皮内癌は、それぞれ小葉と管中で進行した乳癌であるが、胸を囲む脂肪組織または身体の他の領域には広がっていない、乳癌である。浸潤性(または侵襲性)の小葉癌と腺管癌は、それぞれ小葉と管中で進行し、胸の脂肪組織および/または身体の他の部分にまで広がっている癌である。該方法による処置から利益を得る他の乳癌は、髄様癌、膠質癌、管状癌、および炎症性乳癌である。
【0241】
一実施形態では、乳癌はTNM系によってステージ分類される。予後は、ステージ分類の結果を密接に関係しており、ステージ分類を用いてさらに臨床試験と臨床研修の両方における処置に患者を割り当てる。
【0242】
簡潔に言えば、ステージ分類のための情報は以下のとおりである:
【0243】
TX:原発腫瘍は評価することができない。T0:腫瘍の証拠はない。Tis:上皮内癌、浸潤なし;T1:腫瘍は2cm以下である;T2:腫瘍は2cm以上だが5cm以下である;T3:腫瘍は5cm以上である;T4:胸壁または皮膚にまで成長している任意のサイズの腫瘍、あるいは炎症性乳癌。
【0244】
NX:近くのリンパ節は評価することができない。N0:癌は所属リンパ節には広がっていない。N1:癌は、1〜3つの腋窩リンパ節または1つの内胸リンパ節に広がっている。N2:癌は、4〜9つの腋窩リンパ節または多くの内胸リンパ節に広がっている。N3:以下の1つが適用される:癌は10以上の腋窩リンパ節に広がっている、あるいは、癌は鎖骨(鎖骨)下のリンパ節に広がっている、あるいは、癌は鎖骨の上のリンパ節に広がっている、あるいは、癌は腋窩リンパ節を含んでおり、内胸リンパ節を肥大させている、あるいは、癌は4つ以上の腋窩リンパ節を含んでいる、あるいは、センチネルリンパ節生検で微量の癌が内胸リンパ節で見つかっている。
【0245】
MX:遠く離れた広がり(転移)の存在を評価することはできない。M0:遠く離れた広がりはない。M1:遠く離れた器官への広がり(鎖骨上リンパ節は含まない)が生じている。
【0246】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌処置の組み合わせによって、乳癌患者に有益な効果を与え得る。
【0247】
<卵巣癌>
別の態様では、上皮の卵巣腫瘍を含む卵巣癌を処置する方法が本明細書で提供される。好ましくは、該方法は以下から選択される卵巣癌を処置する:卵巣中の腺癌と、卵巣から腹腔へ移動した腺癌。
【0248】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性の処置の組み合わせによって、卵巣癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0249】
<子宮頚部癌>
別の態様では、該方法は子宮頚部癌、好ましくは頚部上皮中の腺癌を処置する。この癌には2つの主要な種類がある:扁平上皮癌と腺癌。前者はすべての子宮頚部癌の約80−90%を構成し、子宮頚部外膜(膣に近い部分)と子宮頚内膜(子宮に近い部分)が交わる場所で進行する。後者は子宮頚内膜の粘液生成腺細胞で進行する。子宮頚部癌の中にはこれら両方の特性を持つものもあり、腺扁平上皮癌または混合癌と呼ばれる。
【0250】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、子宮頚部癌患者に有益な効果をもたらすることもある。
【0251】
<前立腺癌>
1つの他の態様では、前立腺癌、好ましくは以下から選択される前立腺癌を処置する方法が本明細書で提供される:完全に骨に移動した腺癌または腺癌。前立腺癌は尿道の最初の部分を囲む男性の前立腺器官で進行する。前立腺は複数の細胞型を持っているが、腫瘍の99%は、精液を作り出すことに関与している腺細胞中で進行する腺癌である。
【0252】
前立腺癌をステージ分類するために一般に使用される2つの分類表がある。最も一般的なものはTNM系であり、これは腫瘍のサイズ、関係しているリンパ節の範囲、および任意の転移(遠くへの広がり)を評価する。他の多くの癌のように、これらは4つのステージ(I−IV)に分類されることが多い。さほど一般的には使用されないが、別の分類表はWhitmore−Jewett分類である。
【0253】
簡潔に言えば、ステージ1疾患は、良性前立腺肥大のような他の理由で前立腺の組織を取り除いた際にサンプルの小片で偶然見つかった癌であり、細胞が正常細胞に非常によく似ており、腺は検査する指を正常に感じる。ステージ2では、前立腺の中でより多くが含まれ、腺の内部でしこりを感じることがある。ステージ3では、腫瘍は前立腺被膜を介して広がっており、腺の表面上でしこりを感じることがある。ステージ4の疾患では、腫瘍は近くの構造に侵入したか、あるいはリンパ節または他の器官に広がっている。グレードは、疾患の潜在的破壊力と最終的な予後を評価する生検(Gleason)からの細胞含量と組織構造に基づく。
【0254】
本明細書で提供された方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはcatカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、前立腺癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0255】
<膵癌>
別の態様では、膵癌、好ましくは以下から選択される膵癌を処置する方法が本明細書で提供される:膵管組織中の類上皮癌腫と膵管中の腺癌。最も一般的なタイプの膵癌は腺癌であり、これは膵管の内側で生じる。
【0256】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、膵癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0257】
<膀胱癌>
別の態様では、膀胱癌、好ましくは膀胱中の移行上皮癌を処置する方法が本明細書で提供される。膀胱癌は、膀胱に沿って並ぶ尿路上皮細胞の尿路上皮の癌(移行細胞癌)または腫瘍である。膀胱癌の残りの例は扁平上皮細胞癌、腺癌、および小さな細胞癌である。尿路上皮癌のいくつかの亜型は、それらが非侵襲性または侵襲性であるかどうか、および小突起性または水平であるかどうかに依存して存在している。非侵襲性の腫瘍は膀胱の最も内側の層である尿路上皮にあり、侵襲性の腫瘍は尿路上皮から膀胱の主な筋肉壁のより深い層まで広がっている。侵襲性の小突起性の尿路上皮癌は細い指のような突起であり、これは膀胱のくぼんだ中心に分岐して、膀胱壁に向かって外側にも成長する、非侵襲性の小突起性の尿路上皮腫瘍は膀胱の中心に向かって成長する。非侵襲性の水平な尿路上皮腫瘍(水平な上皮内癌とも呼ばれる)は、膀胱の内部の中空部分に近い細胞の層に制限されているが、侵襲性の水平な尿路上皮癌は膀胱のより深い層、特に筋肉層に侵入する。
【0258】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、膀胱癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0259】
<急性骨髄性白血病>
別の態様において、本明細書では、急性骨髄性白血病(AML)、好ましくは末梢血中の急性の前骨髄球性白血病を処置する方法が提供される。AMLは骨髄の中で始まるが、リンパ節、肝臓、脾臓、中枢神経系、および精巣を含む他の身体部分に広がり得る。これはすぐに進行するという意味で急性であり、数か月以内に処置しなければ致命的になることもある。AMLは未熟な骨髄細胞、通常、顆粒球または単球を特徴とし、これらは再生と蓄積を繰り返す。
【0260】
限定されないが、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄白血病、ヘアリー・セル白血病、骨髄形成異常、および骨髄増殖性疾患を含む、本明細書で提供される方法によって処置することができる他のタイプの白血病がある。
【0261】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、白血病患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0262】
<肺癌>
別の態様では、肺癌を処置する方法が本明細書で提供される。最も一般的なタイプの肺癌は肺非小細胞癌(NSCLC)であり、これは肺癌のおよそ80−85%を占め、扁平上皮細胞癌、腺癌、および大細胞未分化癌に分割される。肺小細胞癌は肺癌の15−20%を占める。
【0263】
肺癌のステージ分類はその元々のソースからの癌の広がり程度の事前評価である。これは肺癌の予後と可能な治療に影響を与える重要な因子である。肺非小細胞癌はIA(「1つのA」;最良の予後)からIV(「4」;最悪の予後)までステージ分類される。肺非小細胞癌は胸の2分の1に限定されていれば、限定的なステージとして分類され、放射線療法分野の範囲であり、そうでなければ、それは進行期である。
【0264】
肺癌はEUS(超音波内視鏡検査)またはTNMを使用して行なわれることもある。肺非小細胞癌の患者の事前評価の一部のステージ分類。こうした患者は、予後と処置を考慮するプロセスの一部としてステージ分類を受ける。AJCCはTNMステージ分類とその後のさらなる分類を推奨している。
【0266】
TX:原発腫瘍は評価することができないか、あるいは、痰または気管支肺胞洗浄では悪性細胞があるが、画像化または気管支鏡検査では見られない;
【0269】
T1:肺または臓側胸膜によって囲まれる最大寸法が3cm未満の腫瘍、および主気管支へと気管支鏡侵入しない。
【0270】
T2:以下のいずれかの腫瘍:最大寸法が3cm以上;主気管支に伸びており(ただし、気管分岐部から2cm以上離れている)、閉塞性肺炎(ただし、全肺を含まず)。
【0271】
T3:以下のいずれかの腫瘍:胸壁、横隔膜、縦隔胸膜、または壁側心膜の侵入;主気管支内に、気管分岐部の2cm以内に伸びているが、気管分岐部を含んでいない;および、全肺の閉塞性肺炎。
【0272】
T4:以下のいずれかの腫瘍:縦隔、心臓、大きな血管、気管、食道、脊椎、または気管分岐部の侵入;同じ葉の中の別の腫瘍小結節;および、悪性胸水。
【0273】
リンパ節(N):NX:リンパ節を評価することはできない;N0:リンパ節は含まれていない;N1:同側の気管支周囲または同側の肺門リンパ節への転移;N2:同側の縦隔リンパ節または気管分岐部リンパ節への転移;および、N3:以下のいずれかへの転移:同側の鎖骨上リンパ節;同側の斜角筋リンパ節;および、反対側のリンパ節。
【0274】
遠隔転移(M):MX:遠隔転移は評価することができない;M0:遠隔転移はない。および、M1:遠隔転移は存在する。
【0275】
本明細書に提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、肺癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0276】
<皮膚癌>
別の態様では、皮膚癌を処置する方法が本明細書で提供される。皮膚中で始まる複数の種類の癌がある。最も一般的なタイプは基底細胞癌と扁平上皮癌であり、これらは非黒色腫皮膚癌である。紫外線角化症は扁平上皮癌にしばしば悪化する皮膚の疾病である。非黒色腫皮膚癌は他の身体部分にはめったに広がらない。皮膚癌の最もまれな形態である黒色腫は、近くの組織に侵入して、他の身体部分に広がる可能性が高い。
【0277】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、皮膚癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0278】
<目の癌、網膜芽細胞腫>
別の態様では、目の網膜芽細胞腫を処置する方法が本明細書で提供される。網膜芽細胞腫は網膜の悪性腫瘍である。網膜芽細胞腫はどんな年齢でも生じることがあり、一般的に5歳未満の小児で最も頻繁に生じる。腫瘍は片目のみでまたは両眼で生じることもある。網膜芽細胞腫は一般に目に制限され、近くの組織または他の身体部分には広がらない。
【0279】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、目網膜芽細胞腫患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0280】
<目の癌、眼球内黒色腫>
別の態様では、眼内の(目)黒色腫を処置する方法が本明細書で提供される。まれな癌である眼球内黒色腫は、癌細胞が葡萄膜と呼ばれる目の部分で見られる疾患である。葡萄膜は虹彩、毛様体、および脈絡膜を含んでいる。眼球内黒色腫は中年の人で最も頻繁に生じる。
【0281】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、眼球内黒色腫患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0282】
<子宮内膜癌>
別の態様では、子宮内膜癌を処置する方法が本明細書で提供される。子宮内膜癌は、子宮の内壁である子宮内膜で始まる癌である。子宮と子宮内膜の癌の例のいくつかは、限定されないが、腺癌、腺棘細胞腫、腺扁平上皮癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞腺癌、子宮肉腫、間質性肉腫、悪性混合中胚葉性腫瘍、および平滑筋肉腫を含む。
【0283】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、子宮内膜癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0284】
<肝臓癌>
別の態様では、原発性肝癌(肝臓で始まる癌)を処置する方法が本明細書で提供される。原発性肝癌は成体と小児の両方で生じることがある。
【0285】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、肝臓癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0286】
<腎臓癌>
別の態様では、腎臓癌を処置する方法が本明細書で提供される。腎臓癌(腎細胞癌または腎腺癌とも呼ばれる)は、腎臓の細管の裏で悪性細胞が見られる疾患である。
【0287】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、腎臓癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0288】
<甲状腺癌>
別の態様では、甲状腺癌を処置する方法が本明細書で提供される。甲状腺癌は、癌(悪性腫瘍)細胞が甲状腺の組織で見つかる疾患である。4つの主要なタイプの甲状腺癌は、乳頭状、濾胞状、髄質性、および未分化である。
【0289】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、甲状腺癌患者に有益な効果をもたらすこともある。
【0290】
<エイズ関連の癌>
本明細書では、限定されないが、エイズ関連リンパ腫とカポジ肉腫を含むエイズ関連癌を処置する方法が提供される。本明細書で提供される方法は、カテコールブタンの投与、あるいはカテコールブタン代謝産物の投与の組み合わせ、カテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、エイズ関連の癌に対して有益な効果をもたらすこともある。
【0291】
<エイズ関連リンパ腫>
別の態様では、エイズ関連リンパ腫を処置する方法が本明細書で提供される。エイズ関連リンパ腫は、エイズ(AIDS)を抱える患者のリンパ系で悪性細胞が生じる疾患である。エイズは身体の免疫系を攻撃して弱めるヒト免疫不全ウィルス(HIV)によって引き起こされる。免疫系は身体に侵入する感染や疾患と戦うことができない。HIV疾患を抱えた人々は、感染、リンパ腫、および他のタイプの癌を進行させるリスクが高い。リンパ腫はリンパ系の白血球に影響を与える癌である。リンパ腫は2つの一般的なタイプ:ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に区分される。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の双方ともAIDS患者で生じることもあるが、非ホジキンリンパ腫の方が一般的である。エイズ患者が非ホジキンリンパ腫を抱えているとき、それはエイズ関連リンパ腫と呼ばれる。非ホジキンリンパ腫は無痛性(成長が遅い)なこともあれば、攻撃的(成長が早い)なこともある。エイズ関連リンパ腫は通常攻撃的である。3つの主要なタイプのエイズ関連リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽球性リンパ腫、および小型非切れ込み核細胞性リンパ腫である。
【0292】
エイズ関連リンパ腫の処置は、エイズの処置とリンパ腫の処置を組み合わせる。エイズの患者は免疫系がぜい弱であり、処置はさらなる損害を引き起こす可能性がある。この理由で、エイズ関連リンパ腫を抱える患者は通常、エイズを抱えていないリンパ腫患者よりも低用量の薬物で処置される。高活性抗レトロウイルス剤療法(HAART)はHIVの進行を遅らせるために使用される。重篤になる可能性もある感染を防いで処置する医薬も使用される。
【0293】
<カポジ肉腫>
別の態様では、カポジ肉腫を処置する方法が本明細書で提供される。カポジ肉腫は、口、鼻、および肛門に沿って並んだ皮下または粘膜の下の組織で癌細胞が見つかる疾患である。古典的なカポジ肉腫は通常、ユダヤ人、イタリア人、または地中海の家系の中年男性で生じる。この種のカポジ肉腫は、ゆっくりと、ときには10〜15年かけて進行する。カポジ肉腫が、免疫抑制薬をとっている人々に生じることもある。後天性免疫不全症候群(AIDS)を抱える患者のカポジ肉腫は流行性カポジ肉腫と呼ばれる。エイズの人々のカポジ肉腫は通常、他の種類のカポジ肉腫よりも速く広がり、身体の多くの部分でしばしば見つかっている。
【0294】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、カポジ肉腫に有益な効果をもたらすこともある。
【0295】
<ウイルスによって引き起こされた癌>
別の態様では、ウイルスによって引き起こされた癌を処置する方法が本明細書で提供される。いくつかの一般的なウイルスは明らかに、あるいは、おそらく、特定の悪性腫瘍の病因学における原因因子である。こうしたウイルスは通常潜伏期を規定するか、あるいは持続感染になるものも少数ある。腫瘍形成は、重篤なウイルス用量または免疫調節の危険などを反映する感染した宿主におけるウイルスの活性化レベルの上昇におそらく関連付けられている。主要なウイルス悪性系は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス、および肝細胞癌;ヒトリンパ親和性の1型ウイルス(HTLV−1)と成人T細胞白血病/リンパ腫;および、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)と子宮頚部癌を含んでいる。一般に、こうした悪性腫瘍は人生の比較的早い時期に生じ、典型的には中年期またはそれよりも前にピークを迎える。
【0296】
<ウイルスに引き起こされた肝細胞癌>
HBVとHCV、ならびに肝細胞癌または肝臓癌の双方の間の因果関係は、実質的な疫学的証拠によって確立される。双方は細胞死とその後の再生を引き起こすことによって肝臓での慢性的な複製によって作用するように見える。
【0297】
<ウイルスによって引き起こされる成人T細胞白血病/リンパ腫>
HTLV−1と成人T細胞白血病(ATL)の間の関連性は定着している。世界中で見られる他の腫瘍ウイルスとは異なり、HTLV−1は地理的に非常に制限されており、主として南日本、カリブ海、西および中央アフリカ、ならびに南太平洋諸島で見られる。因果関係を立証する証拠は、担体の中のATLのほとんどすべての症例においてウイルス−ゲノムのモノクローナルの統合を含んでいる。HTLV−1に関連する悪性についての危険因子は、周産期感染、高ウイルス負荷、および男性であることであると思われている。成人T細胞白血病は血液と骨髄の癌である。
【0298】
<ウイルスによって引き起こされる子宮頚部癌>
ヒトパピローマウイルス(HPV)を含む頚部の感染は子宮頚部癌の最も一般的な原因である。しかしながら、HPV感染に罹ったすべての女性が子宮頚部癌になるわけではない。子宮頚部癌は通常ゆっくりと発症する。癌が頚部に現われる前に、頚部の細胞は異形成として知られている変化を経験し、正常でない細胞が頚部の組織に現われ始める。その後、癌細胞は増大して頚部の深部や周辺領域に広がり始める。
【0299】
本明細書に提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、ウイルスにより引き起こされた癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0300】
<中枢神経系(CNS)癌>
脳と脊髄腫瘍は、中枢神経系(CNS)の主成分である頭蓋または骨のような脊柱の内部で見られる組織の異常成長である。良性腫瘍は非癌性であり、悪性腫瘍は癌性である。CNSは、堅い四肢の骨(つまり頭蓋と脊柱)内に収容されるため、良性であれ悪性であれどのような異常成長も感受性の高い組織に圧力をかけ、機能を低下させる可能性がある。脳または脊髄から始まる腫瘍は原発腫瘍と呼ばれる。ほとんどの原発腫瘍はニューロンを囲んで支持する細胞中の制御不可能な成長によって引き起こされる。少数の個体では、原発腫瘍は、特定の遺伝病(例えば、神経線維腫症、結節硬化症)、あるいは、放射線または癌を引き起こす化学製品に対する暴露の結果生じることもある。ほとんどの原発腫瘍の原因は依然として謎である。
【0301】
脳と脊柱の腫瘍を分析する、最初のテストは神経学的検査である。特別な画像化技術(コンピューター断層撮影、および磁気共鳴画像、陽電子射出断層撮影法)も使用される。臨床検査はEEGと脊椎穿刺を含んでいる。疑わしい腫瘍から組織のサンプルを得る外科手術手技である生検は、医者が腫瘍のタイプを診断するのを助ける。
【0302】
腫瘍は腫瘍の起源のように見える細胞の種類によって分類される。成人において最も一般的な原発性の脳腫瘍は、脳血液関門を構築するとともに中枢神経系の栄養に貢献する、星状細胞と呼ばれる脳の細胞から来る。こうした腫瘍は神経膠腫(星細胞腫、未分化星細胞腫、または多形膠芽腫)と呼ばれ、すべての原発性の中枢神経系腫瘍の65%を占める。腫瘍のいくつかは、限定されないが、希突起神経膠腫、脳室上衣細胞腫、髄膜腫、リンパ腫、シュワン細胞腫、および髄芽腫である。
【0303】
<CNSの神経上皮腫瘍>
星細胞腫のような星状細胞腫;半球、間脳、眼、脳幹、小脳などの未分化(悪性)星細胞腫;多形膠芽腫;半球、間脳、眼、脳幹、小脳などの毛様細胞性星状細胞腫;上衣下巨細胞星状細胞腫;および、多形黄色星細胞腫。希突起神経膠腫などの乏突起細胞腫;および、未分化(悪性)希突起神経膠腫。脳室上衣細胞腫などの脳室上衣細胞腫瘍;未分化上衣細胞腫;粘液乳頭状上衣腫;および、上衣下腫。混合型乏突起星細胞腫などの混合型神経膠腫;未分化(悪性)乏突起星細胞腫;および、それ以外のもの(例えば、上衣(ependymo)−星状細胞腫)。極性海綿芽腫などの起源の不確かな神経上皮の腫瘍;星状芽細胞腫;および、大脳神経膠腫症。脈絡叢乳頭腫などの脈絡叢の腫瘍;および、脈絡叢癌(未分化脈絡叢乳頭腫)。神経細胞系および混合神経細胞・膠細胞腫瘍;小脳の形成障害の神経節細胞腫(レルミット・デュクロ病);神経節膠腫;未分化の(悪性)神経節膠腫;線維形成性乳児星細胞腫などの線維形成性乳児神経節膠腫;中枢性神経細胞腫;胚芽異形成性神経上皮腫瘍;嗅神経芽腫(感覚神経芽腫)。松果体細胞腫などの松果体の実質腫瘍;松果体芽腫;および、混合型松果体細胞腫/松果体芽腫。髄様上皮腫のような神経芽細胞または神経膠芽細胞の成分(胚芽腫)を含む腫瘍;髄芽腫などの多能性分化を含む原始神経外胚葉性腫瘍;大脳の原始神経外胚葉性腫瘍;神経芽腫;網膜芽細胞腫;
および、上衣芽腫。
【0304】
<他のCNS新生物>
下垂体腺腫などのトルコ鞍部腫瘍;下垂体癌;および、頭蓋咽頭腫。原発性の悪性リンパ腫などの造血器腫瘍;形質細胞腫;および、顆粒球性肉腫。胚細胞腫などの胚細胞性腫瘍;胎児性癌;卵黄嚢腫瘍(内胚葉洞腫瘍);絨毛癌;奇形腫;および、混合胚細胞性腫瘍。髄膜腫などの髄膜の腫瘍;異型の髄膜腫;また未分化の(悪性)髄膜腫。良性の間葉系のような髄膜の非髄膜上皮性腫瘍;悪性の間葉系;原発性のメラニン細胞病変;造血性新生物;および、血管芽腫(毛状の血管芽腫)などの不確かな組織形成の腫瘍。シュワン細胞腫(ノイリノーマ、神経鞘腫)などの頭蓋と脊髄神経の腫瘍;神経線維腫;類上皮の、間葉系の、または上皮の分化などの悪性末梢神経鞘腫(悪性シュワン細胞腫)、および黒色症。局所腫瘍からの局所伸展;傍神経節腫(非クロム親和性傍神経細胞腫)など;脊索腫;脊索腫;軟骨肉腫;および、癌腫。転移性腫瘍、未分類の腫瘍および嚢腫、ならびにラトケ嚢胞など病変;類表皮;類皮;第3脳室コロイド嚢胞;腸性嚢胞;神経膠の嚢腫;顆粒細胞腫(分離腫、下垂体細胞腫);視床下部のニューロンの過誤腫;鼻の神経膠の異所形成;および、プラスマ細胞肉芽腫。
【0305】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、CNS新生物に有益な効果をもたらすこともある。
【0306】
<末梢神経系(PN)癌>
末梢神経系は、脳と脊髄から分かれた神経からなる。これらの神経はCNSと身体部分の間に通信ネットワークを形成する。末梢神経系は、体性神経系と自律神経系とにさらに細分される。体性神経系は、皮膚と筋肉に達するとともに意識的な活動に関与する神経からなる。自律神経系は、心臓、胃、および腸のような内臓器官にCNSを接続する神経からなる。自律神経系は無意識の活動を調停する。
【0307】
聴神経腫は、第8脳神経または内耳神経とも呼ばれるバランス神経から発生する良性の繊維の成長である。このような腫瘍は他の身体部分に広がったり転移したりしないことを意味して、非悪性である。こうした腫瘍の位置は、脳幹中の重要な大脳中枢に隣接している頭蓋の内部深くにある。腫瘍は拡大すると、生活機能に関係する構造を囲むことを含む。大部分の場合、こうした腫瘍は数年かけてゆっくりと成長する。
【0308】
悪性末梢神経鞘腫(MPNST)は、神経繊維腫とシュワン細胞腫などの良性軟組織腫瘍に対する悪性の相当物である。悪性末梢神経鞘腫は深い軟組織内に最も多くあり、通常は神経幹のすぐそばにある。最も一般的な部位は坐骨神経、腕神経叢、および仙骨神経叢を含んでいる。最も一般的な症状は通常生検を促す疼痛である。成体の中の三叉神経の感覚枝から通常発生する、まれで、攻撃的で、致命的な眼窩腫瘍である。悪性のPNS腫瘍は神経に沿って広がって脳を包み、ほとんどの患者は臨床診断の5年以内に死ぬ。MPNSTは、類上皮の特性、間葉系の特性、または腺の特性を含む3つの主要なカテゴリーに分類されることもある。MPNSTのいくらかは、限定されないが、軟骨の分化を含む皮下の悪性の類上皮のシュワン細胞腫、腺の悪性シュワン腫、神経外鞘の分化を含む悪性末梢神経鞘腫、ラブドイド特徴を含む皮膚の類上皮悪性髄鞘腫瘍、表在性類上皮MPNST、トリトン腫瘍(横紋筋芽細胞の分化を含むMPNST)、横紋筋芽細胞の分化を含むシュワン細胞腫を含んでいる。まれなMPNSTのケースは、多くの肉腫の組織のタイプ、特に骨肉腫、軟骨肉腫、および血管肉腫を含んでいる。これらは軟組織の悪性間葉腫と区別することができないときはしばしばある。
【0309】
他のタイプのPNS癌は、限定されないが、悪性繊維細胞腫、悪性線維性組織球腫、悪性髄膜腫、悪性中皮腫、および悪性ミュラー管混合腫瘍を含む。
【0310】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、PNS癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0311】
<口腔と口腔咽頭癌>
中枢神経系(CNS)癌の患者の管理は依然として困難な課題である。下咽頭癌、喉頭癌、上咽頭癌、口腔咽頭癌などの癌は本明細書に記載の化合物を用いて処置されることもある。
【0312】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、口腔と口腔咽頭癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0313】
<胃癌>
胃癌は、胃の内膜の細胞変化の結果である。3つの主要なタイプの胃癌:リンパ腫、胃の間質性腫瘍、およびカルチノイド腫瘍がある。リンパ腫は、胃の壁でしばしば見られる免疫系組織の癌である。胃の間質性腫瘍は胃壁の組織から生じる。カルチノイド腫瘍は胃のホルモン産生細胞の腫瘍である。胃癌の原因は依然として議論されている。遺伝と環境(食事、喫煙など)の組み合わせがある程度の役割を果たしていると考えられている。
【0314】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、胃癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0315】
<精巣癌>
精巣癌は、典型的には若者の1つまたは両方の睾丸で進行する癌である。睾丸の癌は生殖細胞として知られている特定の細胞の中で進行する。男性で生じる2つの主要なタイプの胚細胞性腫瘍(GCT)は、セミノーマ(60%)と非セミノーマ(40%)である。腫瘍は睾丸の支持的でかつホルモンを産生する組織(または間質)で発生することもある。こうした腫瘍は生殖腺間質腫として知られている。2つの主要なタイプはライジッヒ細胞腫とセルトリ細胞腫である。二次的な精巣腫瘍は、別の器官で始まり、その後睾丸へと広がる腫瘍である。リンパ腫は最も一般的な二次的な精巣癌である。
【0316】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、精巣癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0317】
<胸腺癌>
胸腺は、咽喉の基部から心臓の前面まで広がる、胸の上部/前部にある小さな器官である。胸腺は2つの主要なタイプの細胞である、胸腺上皮細胞とリンパ球を含んでいる。胸腺上皮細胞は胸腺腫と胸腺癌の発端となるものであり得る。リンパ球は、胸腺またはリンパ節のどちらにあっても、悪性となってホジキン病と非ホジキンリンパ腫と呼ばれる癌へと進行する可能性がある。胸腺は、クルチツキー(Kulchitsky)細胞と呼ばれる別のさほど一般的ではないタイプの細胞、または特定のホルモンを通常放出する神経内分泌細胞も含んでいる。こうした細胞は、同じタイプのホルモンをしばしば放出するとともに身体の他の場所で神経内分泌細胞から発生する他の腫瘍に似ている、カルチノイドまたはカルチノイド腫瘍と呼ばれる癌を生じさせ得る。
【0318】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、胸腺癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0319】
本明細書では、IGF−1RとEGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害することができる有効な量の医薬化合物を投与する工程を含む、皮膚の疾病を処置する方法が提供され、ここで、医薬化合物はカテコールブタン代謝産物である。
【0320】
1つの態様では、皮膚の疾病は、例えば、腫瘍、紫外線角化症、ざ瘡、乾癬、皮膚創傷、疣贅、細菌感染、真菌感染、またはウイルス感染である。ウイルス感染としては、限定されないが、HIV感染、HPV感染、およびHSV感染が挙げられる。腫瘍としては、限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、およびカポジ肉腫が挙げられる。
【0321】
<結腸癌と結腸直腸癌>
結腸癌または大腸癌と呼ばれる結腸直腸癌は、結腸、直腸、および虫垂に癌腫瘍を含んでいる。世界中で年間655,000人がなくなっており、これは、3番目に多い癌の形態であり、西洋世界では癌関連死の2番目に多い死亡原因である。多くの結腸直腸癌は結腸中の腺腫様ポリープから発生すると考えられている。こうしたキノコのような腫れは通常良性であるが、中には時間が経つにつれて癌へと進行するものもある。
【0322】
別の実施形態では、デュークス分類を用いて、A−Dのステージに基づき結腸直腸癌を分類する。ステージAは、粘膜に制限される(つまり、腸壁を通って侵入していない)結腸直腸癌を指す。ステージB1は筋固有層(muscularis propria)に及びつつあるが広がっていない(つまり、リンパ節には侵入していない)ことをいう。ステージB2の癌は、筋固有層に広がったが広がりきってはいない、(つまり、リンパ節には侵入していない)こと。ステージC1は筋固有層に及んだが広がってはいない(つまり、リンパ節は含まれている)癌を指し、ステージC2は固有筋に及ぶとともに広がっている(つまり、リンパ節は含まれている)癌を指す。ステージDは広がっている遠隔転移を指す。TNM系を用いて、当該技術分野で知られている既知の従来の手段に従って結腸直腸癌をステージ分類することもある。
【0323】
本明細書で提供される方法は、カテコールブタン代謝産物の投与、またはカテコールブタン代謝産物の投与と1つ以上の抗癌性処置の組み合わせによって、結腸直腸癌に有益な効果をもたらすこともある。
【0324】
<炎症性疾患>
本明細書に記載された組成物は、様々なタイプの関節炎と炎症性腸感染のような炎症性疾患の処置にも使用されてもよい。
【0325】
炎症性疾患は、ロイコトリエンが主要な役割を果たすことが知られているまたは関係があるとされてきたすべての疾患を含むことを意図している。本明細書に記載される化合物によって有効に処置され得る炎症性疾患の非限定的な例としては、制限されないが、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、スチル病、嚢胞性繊維症、慢性閉塞性肺疾患および炎症性腸感染(潰瘍性大腸炎とクローン病など)、喘息、アレルギー性鼻炎、炎症性疼痛、成人呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、皮膚の炎症、ならびに、とりわけ、アテローム性動脈硬化/動脈硬化症、およびその後の冠動脈疾患につながる、ウイルスによって引き起こされた炎症(CMVまたはヘルペスウイルス科の他のメンバーによって引き起こされた)が挙げられる。
【0326】
<投薬>
医師または獣医は、EGFRとIGF−1Rの両方を阻害するのに必要とされる「有効な量」(ED50)の組成物を容易に決定し処方することができる。例えば、医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために、かつ所望の治療効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させるために、必要とされるよりも低いレベルで組成物中で使用される化合物の投与量を開始することができる。
【0327】
本明細書で使用されるような「治療上有効な量」とは、器官または組織で所望の治療的または予防的な効果を少なくとも部分的に達成する量である。一例において、疾患の予防処置および/または治療処置をもたらす阻害剤の量は、それ自体固定されない。投与される阻害剤の量は、疾患の種類、疾患の範囲、および疾患に苦しむ哺乳動物の種のサイズに応じて変わる。
【0328】
一実施形態は、本明細書に記載される疾病、疾患、または障害を処置するための薬物を作るために、本明細書に記載される組成物の使用を企図している。薬物は、処置を必要とする患者/被検体の肉体的な特徴に基づいて処方可能であり、疾病、疾患、または障害のステージに基づいて単一の製剤または複数の製剤で処方可能である。薬物は病院またはクリニックに分配するのに適切なラベルを備えた適切なパッケージで包むことができ、ラベルは本明細書に記載される疾患を抱えた被検体を処置することの指標のためのものである。薬物は単一または複数の単位としてパッケージ化され得る。組成物の投与量と投与のための指示は、本明細書で別記されるようなパッケージに含めることができる。
【0329】
本実施形態の医薬組成物は、例えば、鼻腔内投与;経口投与;吸入投与;皮下投与;経皮投与;閉塞を伴うまたは伴わない動脈内投与;頭蓋内投与;脳室内投与;静脈内投与;頬側投与;腹腔内投与;眼内投与;筋肉内投与;移植投与;および、中心静脈投与などの任意の投与経路による投与量のために処方されることもある。一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は経口投与のために処方される。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は静脈内投与のために処方される。
【0330】
カテコールブタン代謝産物は、1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約375mg/kg;1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約250mg/kg;1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約200mg/kg;1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約150mg/kg;1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約100mg/kg;1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約75mg/kg;または、1回の投与量当たり約5mg/kg乃至約50mg/kgの量で投与されることもある。あるいは、カテコールブタン代謝産物は、1日当たり約1,500mg乃至1日当たり約2,500mg、1日当たり約1,800mg乃至1日当たり約2,300mg;または、1日当たり約2,000mgの量のカテコールブタン代謝産物の一定の用量を投与されることもある。一実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、約1μM乃至約30μMの範囲の濃度で標的細胞に接触させてもよい。別の実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、約1μM乃至約10μMの範囲の濃度で標的細胞に接触させてもよい。
【0331】
別の実施形態では、NDGAは異なる投与でおよび投与スケジュール、例えば、(1)1−28日目に1日2回の経口投与で投与されることもある。処置は疾患の進行または受け入れがたい毒性のない状態で28日ごとに繰り返す;(2)一日一度の2000mgの経口投与;(3)1−5日目のIV、疾患の進行または受け入れがたい毒性のない状態で処置は28日ごとに繰り返す;(4)20mg/cm3の腫瘍容積の標的に対する開始スケジュールを含む用量漸増、および、新しい患者コホートは4週間にわたって、毎週の投与までスケジュールを延長する。用量漸増は、耐性を仮定して、コホートが6週間、最終的には8週間にわたって処置されるように継続する。(5)24時間の毎週のIV、用量は、1時間当たり25mg乃至最大で1時間当たり200mg(24時間で4800mg)で増大させつつ、3〜6人の患者の5つのコホートで段階的に増加させながら100mg/時間(24時間で2400mg)で始まる;(6)頚部への局所適用;および、(7)28日ごとに5日連続してIV注入による用量漸増。
【0332】
一実施形態では、医薬組成物は、一定の期間にわたって6日ごとに一度よりも頻繁に、または、一定の期間にわたって2日ごとに一度よりも頻繁に投与されることもある。一実施形態では、医薬組成物は、4週間毎日投与される。別の実施形態では、医薬組成物は新しいサイクルを始める前に、1週間の中断を含んで3週間、毎日3回投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、1週間毎日投与され、その後1週間中断する。別の実施形態では、医薬組成物は、2週間毎日投与され、その後2週間中断する。別の実施形態では、医薬組成物は、新しいサイクルを始める前に、1日1回または2回、連続してあるいは1週間の中断を伴って投与される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は1週間に1回または1週間に2回投与される。当業者は、必要に応じて、処置のサイクルを考慮する場合、患者は評価されることもあり、必要に応じて処置が繰り返されてもよいことを理解するであろう。
【0333】
様々な実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、遊離塩基、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、多形体、エステル、互変異性体、またはプロドラッグとして調製されることもある。同様に、カテコールブタン代謝産物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、多形体、エステル、互変異性体、またはプロドラッグを含む医薬組成物も本明細書に記載されている。本明細書に記載される化合物と組成物は、標準的な薬務に従って、医薬組成物中で、単独で、または薬学的に許容可能な担体、賦形剤、あるいは希釈剤と組み合わせて投与されることもある。
【0334】
投与量、サイクル、サイクルのスケジュール前述の例と実施形態に加えて、別の化学療法化合物を含む化合物の同時投与、放射線療法、または手術のための前述の投与量、サイクル、およびサイクルのスケジュールは本明細書で企図されており、患者、癌の種類、および/または資格を有する医療専門家によって決定されるような適切な治療スケジュールに従って投与され得る。
【0335】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるカテコールブタン代謝産物の用量の治療上等価な量が使用される。
【0336】
様々な実施形態では、カテコールブタン代謝産物は患者に対する毒性を最小限に抑えるように投薬される。いくつかの実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、ヒト患者における特別な薬物動態学的(PK)パラメータを提供するのに適したやり方で投薬される。いくつかの実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、カテコールブタン代謝産物の特別な最高血中濃度(C
max)を提供するのに適したやり方で投薬される。いくつかの実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、カテコールブタン代謝産物の最高血中濃度が得られる、特別な時間(T
max)を提供するのに適したやり方で投薬される。いくつかの実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、カテコールブタン代謝産物に関する血漿濃度曲線(AUC)の下の特別な領域を提供するのに適したやり方で投薬される。いくつかの実施形態では、カテコールブタン代謝産物は、カテコールブタン代謝産物に関する特別なクリアランス率(CL/F)または特別な半減期(T
1/2)を提供するやり方で投薬される。本明細書で別段の定めがない限り、特許請求の範囲を含む本明細書で列挙されたPKパラメータは、同じ投薬スケジュール下で少なくとも3人の患者のコホートに対する平均的なPK値を指す。したがって、別段の定めがない限り:AUC=少なくとも3人の患者のコホートに関する平均的なAUC;C
max=少なくとも3人の患者のコホートに関する平均的なC
max;T
max=少なくとも3人の患者のコホートに関する平均的なT
max;T
1/2=少なくとも3人の患者のコホートに関する平均的なT
1/2;および、CL/F=少なくとも3人の患者のコホートに関する平均的なCL/Fを意味する。いくつかの実施形態では、平均は、少なくとも6人の患者、または少なくとも12人の患者、または少なくとも24人の患者、または少なくとも36人の患者のコホートである。平均的なPK値以外が意図したものである場合、その値が個体にのみ関連することを示唆している。同様に、AUCは別段の定めのない限り、標準的なクリアランスモデル後に無限に推定された、少なくとも3人の患者のコホートに関する平均的なAUCを指す。特定の時間のAUCが意図される場合、始まり(x)と終わり(y)の時間は、「AUC」に対する接尾語の名称によって示される(例えばAUCx、y)。一実施形態では、NDGAの溶解度は腸液中の約8μg/mLである。
【0337】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、患者は、NDGAの代謝産物の投与を受けない患者よりも、NDGAの代謝産物の投与後の方が、少なくとも約2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、または50倍以上、前記増殖性疾患または炎症性疾患の1つ以上の症状の改善を示している。
【0338】
本明細書に記載される方法の別の実施形態では、患者は、プラセボを投与した患者よりも、NDGAの代謝産物の投与後の方が、少なくとも約2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、または50倍以上、前記増殖性疾患または炎症性疾患の1つ以上の症状の改善を示している。
【0339】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、患者は、NDGAの代謝産物の投与を受けない患者よりも、NDGAの代謝産物の投与後の方が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上、前記増殖性疾患または炎症性疾患の1つ以上の症状の改善を示している。
【0340】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、患者は、プラセボを投与した患者よりも、NDGAの代謝産物の投与後の方が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上、前記増殖性疾患または炎症性疾患の1つ以上の症状の改善を示している。
【0341】
<事前評価と診断法>
以下を含むカテコールブタンを用いる処置のために被検体を選ぶ方法が本明細書で提供される:(a)前記被検体から得られたサンプル中のカテコールブタン代謝産物の濃度を測定する工程;および、(b)(a)のカテコールブタン代謝産物の濃度が少なくとも約0.5μg/mLよりも高い場合にのみ、前記被検体に疾患または障害の処置用のカテコールブタンを投与する工程。
【0342】
本明細書では、本明細書に記載される化合物を用いる処置のために被検体を選ぶ方法が提供され、該方法は、(a)前記被検体から得られたサンプル中のカテコールブタン代謝産物の濃度を測定する工程;および、(b)(a)のカテコールブタン代謝産物の濃度が約0.5未満μg/mLである場合に、カテコールブタン代謝産物および/またはそのリン酸エステルを前記被検体に投与する工程、を含む。
【0343】
一実施形態では、試験されるサンプルは、限定されないが、血液、血漿、血清、痰、唾液、脳脊髄液、汗、尿、涙、および腫瘍組織、細胞抽出物、組織、ならびに器官抽出物を含む組織抽出物を含む、患者から抽出され得る任意の液体である。
【0344】
測定は、サンプル中の1つ以上の代謝産物が定量的または半定量的に測定され得るあらゆる方法を含んでもよい。一実施形態では、測定は、質量分光法(MS)、核磁気共鳴(NMR)、高相液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外線(IR)UV/Vis分光法、HPLC−MS、ELISA、または任意の抗体に基づくアッセイを含む。
【0345】
サンプルは、処置の開始に先立って1回以上、処置中の1回以上の時点の間、または、処置を止めた後に1回以上、患者から得られることもある。患者は、本明細書または以下の実施例に記載の方法のいずれかを使用して、処置の有効性に関してモニターされることもある。
【0346】
こうした方法の1つの非限定的な例では、測定は以下を含む:高解像度の正確な質量測定による質量分析を含む、1つ以上の代謝産物のレベルを半定量的に測定する工程;前記方法は、事前スキャン、高解像度(HRMS)でゆっくりとした調査スキャンを行なうためのFT分析器、同時に、データ依存収集(DDA)事象を用いてMS(n)のデータを獲得するためのLTQイオントリップ(ion trip)を含む。DDAは、決定事象と、親の質量リスト(parent mass list)に載っている事前スキャンで検出された2つの最も強力なイオンを選択するための2つのMS
2プロダクトイオンスキャンを含む。データはMetworks(商標)ソフトウェア(v 1.3.0、Thermo)を使用して処理されてもよく、データは2つの工程を使用して処理される:(1)「SUB」ファイルの生成に結びつく 分析されたサンプルからの対照サンプル(ブランクマトリックス中の溶媒対照)のクロマトグラムの差分。このファイルは、分析されたサンプルに特有の成分のピークと、対照サンプル中よりも少なくとも2倍高い(S/N比率)分析されたサンプル中の強度を含む成分のピークを含んでいる。(2)「SUB」(「chro」サーチ)中にある主要な特有のピークのサーチは、包括的な代謝産物の検出と最終的には「SUB」ファイルについて行われ、自動検出の結果が評価される。
【0347】
こうした方法を使用した被検体の事前評価の後、被検体は、本明細書に記載される1つ以上のカテコールブタン代謝産物を投与されることもあれば、以下に詳細に記載されるような1以上の様々な抗悪性腫瘍性化学療法剤、化学防止剤(chemopreventive agent)、副作用制限剤、および/または、抗悪性腫瘍処置(例えば、外科手術)を施されることもある。
【0348】
<併用療法>
本明細書に記載された実施形態の一態様は、処置レジメンの異なる組み合わせを使用して、癌を処置する方法を提供する。例えば、こうしたカテコールブタン代謝産物化合物は、1つ以上の様々な抗悪性腫瘍化学療法剤、化学防止剤、副作用制限剤、および/または、抗悪性腫瘍処置(例えば、外科手術)と組み合わせた。
【0349】
本明細書で提供されるこうした方法のいずれかにおいて、被検体は1つ以上の追加の抗癌剤をさらに投与されることもある。上に記載されたように、これらの追加の癌治療は、例えば、手術、放射線療法、化学療法剤の投与、およびこれらの方法の任意の2つまたはすべての組み合わせであり得る。併用療法は連続してまたは同時に生じることもあり、併用はネオアジュバント治療またはアジュバント療法であってもよい。抗癌剤としては、限定されないが、DNA損傷剤、トポイソメラーゼ阻害剤、および有糸分裂阻害剤が挙げられる。多くの化学療法薬が当該技術では知られており、本明細書に記載された化合物と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、化学療法薬は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、挿入用抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗ホルモン、血管形成阻害剤、および抗アンドロゲンからなる群から選ばれる。
【0350】
一実施形態では、処置される対象は、EGFR阻害剤だけ、IGF−1R阻害剤だけあるいはEGFR阻害剤を備えた処置とIGF−1R阻害剤に強いこともある。
【0351】
本明細書で使用されるように、用語「癌の処置」、「癌治療」などは、切断、研磨、除去(物理的または化学的な手段、あるいは物理的または化学的な手段の組み合わせによる)、縫合、レーザー処置(lasering)、あるいは体内組織および器官をそれ以外の方法で物理的に変化させることなどの手術、放射線療法、化学療法剤の投与、ならびに、これらの方法の任意の2つまたはすべての組み合わせといった処置を包含する。複合療法は連続してまたは同時に生じてもよい。手術に先立って施される放射線療法および/または化学療法のような処置は、ネオアジュバント治療と呼ばれる。外科手術後に施される放射線療法および/または化学療法のような処置は本明細書では合併療法と呼ばれる。癌治療に使用され得る手術の例はとしては、限定されないが、前立腺全摘除術、寒冷療法、乳房切除術、乳腺腫瘍摘出術、経尿道的前立腺切除術などが挙げられる。
【0352】
多くの化学療法剤が知られており、多種多様な作用機序によって作用する。いくつかの非限定的な実施形態では、化学療法剤は、細胞毒性薬、抗増殖剤、標的薬剤(キナーゼ阻害剤と細胞周期制御因子など)、プロテアーゼ阻害剤、または生物学的薬剤(サイトカイン、ワクチン、ウイルス剤、ならびに、BCG、ホルモン、モノクローナル抗体、およびsiRNAなどの他の免疫賦活剤)である。化学療法剤の投与を含む併用療法の特徴は、使用されている薬剤のタイプに依存する。
【0353】
複合療法が企図される場合、阻害剤が組み合わせの特別な性質によって制限されることを意図していない。例えば、阻害剤は、化学的なハイブリッドと同様に単純な混合物として組み合わせて投与されることもある。後者の一例は、化合物が標的担体または活性な医薬品に共有結合する場合である。
共有結合は、限定されないが、市販の架橋化合物の使用を介するなど多くの方法で遂行することができる。
【0354】
本明細書で使用されるように、用語「薬学的な組み合わせ」、「追加の治療を施すこと」「追加の治療薬を投与すること」などは、2以上の活性成分の混合または組み合わせに由来する薬学的な治療を指し、活性成分の固定されたおよび固定されていない組み合わせを含んでいる。用語「固定された組み合わせ」とは、阻害剤と少なくとも1つの共薬剤(co−agent)の両方が単一の実体または投与量の形態で患者に同時に投与されることを指す。用語「固定されていない組み合わせ」とは、阻害剤と少なくとも1つの共薬剤が、可変の介入時間制限を設けて、同時に、平行して、または連続して別々の実体として患者に投与され、こうした投与は患者の身体中で有効なレベルの2つ以上の化合物を提供する。これらは、さらにカクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0355】
本明細書で使用されるように、用語「同時投与」、「と組み合わせて処理される」、または、その文法的な等価物などは、一人の患者に対して選択された治療薬の投与を包含することを意味しており、同じまたは異なる投与経路によって、あるいは同じまたは異なる時間に薬剤が投与される処置レジメンを含むことを意図している。いくつかの実施形態では、阻害剤は他の薬剤とともに同時投与される。これらの用語は、動物に対する2つ以上の薬剤の投与を含んでおり、両方の薬剤および/またはその代謝産物は同時に動物中に存在する。これらは、別々の組成物での投与、別々の組成物での異なる時間での投与、および/または、両方の薬剤がいる組成物中投与中の異なる回に投与に同時の投与を含んでいる。したがって、いくつかの実施形態では、阻害剤とその他の薬剤は単一の組成物中で投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤とその他の薬剤は組成物中で混合される。
【0356】
本明細書で使用されるように、「抗癌剤または抗癌処置」は、限定されないが、被検体に対する化学療法剤、核酸損傷剤、核酸損傷処置、抗癌性抗体、抗増殖性の薬剤、または抗増殖性の処置を指す。当業者は、以下に列挙された治療レジメンの項目は従来の治療を表すが、本実施形態は、本明細書に特別に開示されない他の既知の治療レジメンを包含することを理解するであろう。
【0357】
本方法で使用される適切な抗悪性腫瘍化学療法剤としては、限定されないが、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然の抗悪性腫瘍剤、抗腫瘍性ホルモン薬、血管形成阻害剤、分化試薬、RNA阻害剤、抗体または免疫療法剤、遺伝子治療剤、小分子酵素阻害剤、生体応答修飾物質、および抗転移薬が挙げられる。
【0358】
<アルキル化剤>
アルキル化剤は癌細胞のDNAのような高分子のアルキル化によって作用することが知られており、通常は強い求電子である。この活性はDNA合成と細胞分裂を妨害することがある。本明細書での使用に適したアルキル化試薬の例としては、ナイトロジェンマスタードと、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブチル、エストラムスチン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、およびウラシルマスタードを含むそのアナログと誘導体が挙げられる。アルキル化剤の他の例としては、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルマスティン、ロムスチン、およびストレプトゾシン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジンとテモゾロミド)、エチレンイミン/メチルメラミン(例えば、アルトレタミンとチオテパ)、およびメチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)が挙げられる。カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチンを含むアルキル化様の類似の白金含有薬が、アルキル化剤のグループに含まれる。
【0359】
<代謝拮抗薬>
代謝拮抗性の抗悪性腫瘍薬は、天然の代謝産物と構造上類似しており、核酸とタンパク質の合成のような癌細胞の正常な代謝プロセスに関与する。これらは天然の代謝産物とは十分に異なり、癌細胞の代謝プロセスに干渉する。本方法で使用される適切な代謝拮抗性の抗悪性腫瘍薬は、それらが影響を与える代謝プロセスに従って分類可能であり、限定されないが、葉酸、ピリミジン、プリン、およびシチジンのアナログと誘導体を含み得る。本明細書での使用に適した薬剤の葉酸グループのメンバーとしては、限定されないが、メトトレキセート(アメトプテリン)、ペメトレキセド、およびそのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適したピリミジン剤としては、限定されないが、シタラビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル)、カペシタビン、ゲムシタビン、およびそのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適したプリン剤としては、限定されないが、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン)、ペントスタチン、チオグアニン、クラドリビン、およびそのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適したシチジン剤としては、限定されないが、シタラビン(シトシンアラビノシド)、アザシチジン(5−アザシチジン)、およびそのアナログと誘導体が挙げられる。
【0360】
<天然の抗悪性腫瘍薬>
天然の抗悪性腫瘍薬は、有糸分裂阻害薬、抗菌性の抗悪性腫瘍薬、カンプトテシンアナログ、および酵素を含む。本明細書での使用に適した有糸分裂阻害薬としては、限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンのようなビンカアルカロイドとそのアナログと誘導体が挙げられる。これらはマダガスカルツルニチニチソウという植物に由来し、M相について細胞周期に通常特有であり、癌細胞の微小管中のチューブリンに結合する。本明細書での使用に適した他の有糸分裂阻害薬はポドフィロトキシンであり、これは限定されないが、エトポシド、テニポシド、およびそのアナログと誘導体を含む。こうした試薬は主に細胞周期のG2相と後のS相を標的とする。
【0361】
同様に、抗菌性の抗悪性腫瘍薬が天然の抗悪性腫瘍薬に含まれている。抗菌性の抗悪性腫瘍薬は、通常癌細胞DNAと相互に作用することで抗腫瘍特性を有する抗菌薬である。本明細書での使用に適した抗菌性の抗悪性腫瘍薬としては、限定されないが、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ペントスタチン、プリカマイシン、およびそのアナログと誘導体が挙げられる。
【0362】
天然の抗悪性腫瘍薬の分類は、本明細書での使用に適したカンプトテシンのアナログと誘導体も含んでおり、カンプトテシントポテカン、およびイリノテカンを含んでいる。こうした薬剤は主として核酵素トポイソメラーゼIを標的とすることによって作用する。天然の抗悪性腫瘍薬下の別のサブクラスは、酵素、L−アスパラギナーゼ、およびその変異体である。L−アスパラギナーゼは、アスパラギン酸とアンモニアへとアスパラギンを循環させる加水分解を触媒することによって、L型アスパラギンのいくつかの癌細胞から奪うことで作用する。
【0363】
<抗腫瘍性ホルモン薬>
抗腫瘍性ホルモン薬は、前立腺組織、胸組織、子宮内膜組織、卵巣組織、リンパ腫、および白血病に関連するホルモン依存性癌細胞に主に作用する。こうした組織は、グルココルチコイド、プロゲスチン、エストロゲン、およびアンドロゲンなどのクラスの薬剤に反応して依存することもある。アゴニストまたはアンタゴニストであるアナログと誘導体の両方とも腫瘍を処置するのに適している。本明細書での使用に適したグルココルチコイド・アゴニスト/アンタゴニストの例としては、デクサメタゾーン、コルチゾール、コルチコステロン、プレドニゾン、ミフェプリストン(RU486)、それらのアナログおよび誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適した薬剤のプロゲスチンアゴニスト/アンタゴニストのサブクラスとしては、限定されないが、ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ミフェプリストン(RU486)、ZK98299、それらのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適した薬剤のエストロゲン・アゴニスト/アンタゴニストのサブクラスの例としては限定されないが、エストロゲン、タモキシフェン、トレミフェン、RU58668、SR16234、ZD164384、ZK191703、フルベストラント、それらのアナログと誘導体が挙げられる。エストロゲンの産生を阻害する本明細書での使用に適したアロマターゼ阻害薬の例としては、限定されないが、アンドロステンジオン、ホルメスタン、エキセメスタン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、レトロゾール、それらのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適した薬剤のアンドロゲン・アゴニスト/アンタゴニストのサブクラスの例としては、限定されないが、テストステロン、ジヒドロテストステロン、フルオキシメステロン、テストラクトン、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト/アンタゴニスト(例えば、リュープロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン)、ジエチルスチルベストロール、アバレリックス、シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、それらのアナログと誘導体が挙げられる。
【0364】
<血管形成阻害剤>
血管形成阻害剤は腫瘍の血管新生を阻害することにより作用する。血管形成阻害剤は、RNA機能を標的とする小分子薬、抗体薬、および薬剤を含む多種多様な薬剤を包含する。本明細書での使用に適した血管形成阻害剤の例としては、限定されないが、ラニビズマブ、ベバシズマブ、SU11248、PTK787、ZK222584、CEP−7055、アンギオザイム(angiozyme)、ダルテパリン、サリドマイド、スラミン、CC−5013、コンブレタスタチン A4リン酸塩、LY317615、大豆イソフラボン、AE−941、インターフェロンアルファ、PTK787/ZK 222584、ZD6474、EMD121974、ZD6474、BAY543−9006、セレコキシブ、臭化水素酸ハロフジノン、ベバシズマブ、それらのアナログ、変異体、または誘導体が挙げられる。
【0365】
<分化試薬>
分化剤は癌細胞の分化を引き起こす機構によって腫瘍の増殖を阻害する。本明細書での使用に適したこうした薬剤のそのような1つのサブクラスとしては、限定されないが、ビタミンAアナログまたはレチノイド、および、ペルオキシソーム増殖因子によって活性化された受容体アゴニスト(PPAR)が挙げられる。本明細書での使用に適したレチノイドとしては、限定されないが、ビタミンA、ビタミンAアルデヒド(レチナール)、レチン酸、フェンレチニド、9−cis−レチノイド酸、13−シス−レチノイド酸、オールトランス型レチノイン酸、イソトレチノイン、トレチノイン、レチニルパルミテート、それらのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適したPPARのアゴニストの例としては、限定されないが、トログリタゾン、シグリタゾン、テサグリタザル、それらのアナログと誘導体が挙げられる。
【0366】
<RNA阻害剤>
特定のRNA阻害剤は、癌表現型に関係しているメッセンジャーRNA(「mRNA」)の発現または翻訳を阻害するために利用されることもある。本明細書での使用に適したそのような薬剤の例としては、限定されないが、短鎖干渉RNA(「siRNA」)、リボザイム、およびアンチセンスのオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書での使用に適したRNA阻害剤の特定の例としては、限定されないが、Cand5、Sirna−027、ホミビルセン、およびアンギオザイムが挙げられる。
【0367】
<抗体/免疫療法剤>
抗体薬は、癌細胞の中で選択的に発現された標的に結合し、標的に関連する細胞を殺すために抱合体を利用することができるか、あるいは癌細胞を破壊するために身体の免疫反応を誘発することができる。免疫療法剤はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体で構成され得る。抗体はヒト以外の動物(例えばマウス)と人間的要素で構成されるか、あるいは完全に人間的要素(「ヒト化抗体」)で構成されることもある。本明細書での使用に適したモノクローナルの免疫療法剤の例としては、限定されないが、CD−20タンパク質を標的とするリツキシマブ、トシツモマブ、イブリツモマブが挙げられる。本明細書での使用に適した他の例としては、トラスツズマブ、エドレコロマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、癌胎児抗原抗体、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、マパツズマブ、パニツムマブ、EMD 72000、TheraCIM hR3、2C4、HGS−TR2J、およびHGS−ETR2が挙げられる。
【0368】
<遺伝子治療薬>
遺伝子治療薬は、患者の細胞の特定のセットに遺伝子のコピーを挿入し、癌細胞と非癌細胞の両方を標的とすることができる。遺伝子治療のゴールは、変化した遺伝子を機能的な遺伝子に取り替えること、癌に対する患者の免疫反応を刺激すること、化学療法に対して癌細胞をより敏感すること、癌細胞に「自殺」遺伝子を入れること、あるいは、血管形成を阻害することであり得る。遺伝子は、ウイルス、リポソーム、または他の担体またはベクターを使用して、標的細胞に送達されることもある。これは保因者の組成物を患者に直接注入することにより、あるいは生体外で、感染細胞を患者に導入することにより、行われることもある。こうした組成物は本方法で使用するのにしている。
【0369】
<小分子酵素阻害剤>
特定の小分子治療薬は、表皮成長因子受容体(「EGFR」)などの特定の細胞受容体、または血管内皮細胞増殖因子受容体(「VEGFR」)のチロシンキナーゼ酵素活性または下流の情報伝達シグナルを標的とすることができる。小分子治療によるこうした標的化は抗癌効果をもたらすことがある。本明細書での使用に適したこうした薬剤の例としては、限定されないが、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、ZD6474、ソラフェニブ(BAY 43−9006)、ERB−569、またそれらのアナログと誘導体が挙げられる。
【0370】
<生体応答修飾物質>
特定のタンパク質または小分子薬は、直接的な抗腫瘍効果または間接的な効果によって抗癌治療で使用することができる。本明細書での使用に適した直接作用する薬剤の例としては、限定されないが、レチノイドやレチの井戸誘導体などの分化試薬が挙げられる。本明細書での使用に適した間接的に作用する薬剤の例としては、限定されないが、インターフェロン、インターロイキン、造血成長因子(例えば、エリトロポイエチン)、および抗体(モノクローナルおよびポリクローナル)などの免疫系または他の系を修飾または増強する薬剤が挙げられる。
【0371】
<プロテアーゼ阻害剤>
1つ以上のプロテアーゼ阻害剤が本明細書に記載された化合物と組み合わせて使用されてもよい。一実施形態では、プロテアーゼ阻害剤は、低溶解性の化合物(例えばアンプレナビル)であり、本明細書に記載の化合物(例えばリン酸塩プロドラッグ)は、低溶解性の化合物(例えばアンプレナビル)の吸収を改善するために投与されることもある。リン酸塩は腸細胞の表面で裂けて、迅速に吸収される遊離薬物の局所的な過飽和溶液を形成する。
【0372】
<抗転移薬>
癌細胞が腫瘍の部位から身体のまわりの他の位置へ広がるプロセスは、癌転移と呼ばれる。特定の薬剤は癌細胞の広がりを阻害することを目的とした抗転移特性を備えている。本明細書での使用に適したこうした薬剤の例としては、限定されないが、マリマスタット、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、エルロチニブ、MMI−166、GRN163L、ハンターキラーペプチド(hunter−killer peptides)、メタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤、そのアナログ、誘導体、および変異体が挙げられる。
【0373】
<化学防止剤>
特定の医薬用剤は、癌の初期の発生を防ぐため、あるいは、再発または転移を防ぐために使用することができる。カテコールブタン代謝産物を含む1つ以上の他の制癌剤と組み合わせてこうした化学防止剤を用いた投与は、癌の再発を処置または防ぐように作用することができる。本明細書での使用に適した化学防止剤の例としては、限定されないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、tibolone、ビスフォスフォネート、イバンドロンエート、エストロゲン受容体修飾薬、アロマターゼ阻害薬(レトロゾール、アナストロゾール)、黄体ホルモン放出ホルモン類似体、ゴセレリン、ビタミンA、レチナール、レチン酸、フェンレチニド、9−cis−レチノイド酸、13−cis−レチノイド酸、オールトランス型レチノイン酸、イソトレチノイン、トレチノイド(tretinoid)、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、ポリフェノール、ポリフェノールE、緑茶抽出物、葉酸、グルカル酸、インターフェロンアルファ、アネトールジチオールチオン、亜鉛、ピリドキシン、フィナステリド、ドキサゾシン、セレニウム、インドール−3−カルビノール(carbinal)、アルファ−ジフルオロメチルオルニチン、カロチノイド、β−カロテン、リコピン、酸化防止剤、コエンザイムQ10、フラボノイド、ケルセチン、クルクミン、カテキン、エピガロカテキンガレート、N−アセチルシステイン、インドール−3−カルビノール、イノシトール6リン酸、イソフラボン、グルコン酸、ローズマリー、大豆、ノコギリパルメット、およびカルシウムが挙げられる。
【0374】
<副作用を制限する薬剤>
カテコールブタン代謝産物単独で、または他の抗悪性腫瘍化合物と組み合わせた癌の処置は、抗悪性腫瘍薬によって作られた副作用を緩和することができる医薬用剤の投与が伴うこともある。本明細書での使用に適したこうした薬剤としては、限定されないが、制吐薬、抗粘膜炎性薬、疼痛管理薬、感染制御薬、および抗貧血薬/抗血小板減少薬が挙げられる。本明細書での使用に適した制吐薬の例としては、限定されないが、5−ヒドロキシトリプタミン3受容体アンタゴニスト、メトクロプラミド、ステロイド、ロラゼパム、オンダンセトロン、カンナビノイド、それらのアナログと誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適した抗粘膜炎性薬の例としては、限定されないが、パリフェルミン(角化細胞成長因子)、グルカゴン様のペプチド−2、テデュグルチド、L−グルタミン、アミホスチン、および繊維芽細胞成長因子20が挙げられる。本明細書での使用に適した疼痛管理薬の例としては、限定されないが、オピオイド、アヘン製剤、および非ステロイド性の抗炎症化合物が挙げられる。本明細書での使用に適した感染の制御に使用される薬剤の例としては、限定されないが、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、リンコマイシン、マクロライド、バンコマイシン、カルバペネム、モノバクタム、フルオロキノロン、スルホンアミド、ニトロフラントインなどの抗菌薬とそのアナログおよび誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適した化学療法に関連する貧血または血小板減少症を処置することができる薬剤の例としては、限定されないが、エリトロポイエチンおよびトロンボポイエチンが挙げられる。
【0375】
さらに、カテコールブタン代謝産物と本明細書に記載された他の化合物と組み合わせて使用するのに適したいくつかの他の治療も利用可能である。例えば、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 11th ed. Brunton LL, Lazo JS, and Parker KL, ed. McGraw−Hill, New York, 2006を参照のこと。
【0376】
<卵巣癌>
一実施形態において、癌は卵巣癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、化学療法(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンなどの、ドキソルビシン、ドキシル、ゲムシタビン、ルビテカン(Rubitecan)、および白金ベースの化学療法薬)、メルファラン、パクリタキセル、トポテカンとイリノテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、タキサンベースの治療、ホルモン、放射線療法、全身低温症、フェノクソディオール(Phenoxodial)などのイソフラボン誘導体、エポチロンなどの細胞毒性マクロライド、ベバシズマブのような血管形成阻害剤、トラスツズマブのようなシグナル伝達阻害剤、遺伝子治療、RNAi治療、免疫療法、モノクローナル抗体、ラパマイシンなどのホスファチジルイノシトール様のキナーゼ阻害剤、またはその任意の組み合わせである。さらに別の実施形態では、治療処置はVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例は、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、VEGF−Trap、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ、およびパゾパニブが挙げられる。
【0377】
<肝臓癌>
一実施形態では、癌は肝臓癌であり、1つ以上の抗癌処置は、例えば、手術、免疫療法、放射線療法、化学療法、および経皮的エタノール注入である。使用され得る手術のタイプは、冷凍外科、肝部分切除、肝全摘、および高周波アブレーションである。放射線療法は、外部ビーム放射線療法、近距離照射療法、放射線増感剤、または放射標識抗体であってもよい。他のタイプの処置は温熱療法と免疫療法を含んでいる。
【0378】
<皮膚癌>
異なるタイプの処置は、手術、放射線療法、化学療法、および光力学療法を含む、非黒色腫と非黒色腫皮膚癌と紫外線角化症の患者に利用可能なものである。皮膚癌の処置に関するいくつかの可能な手術のオプションは、モース顕微鏡手術、単純な切除、電気乾固および掻爬術、冷凍外科、レーザー外科療法である。放射線療法は外部ビーム放射線療法または近距離照射療法であってもよい。治験でテストされている他のタイプの処置は、生物学的製剤療法または免疫療法、化学免疫療法、フルオロウラシルを備えた局所的の化学療法および光力学療法である。
【0379】
<子宮内膜癌>
一実施形態では、癌は子宮内膜癌であり、1つ以上の抗癌性処置は、例えば、外科手術、放射線療法、化学療法、遺伝子治療、光力学療法、血管新生抑制治療、および免疫療法、またはこれらの組み合わせである。
【0380】
<腎癌/腎臓癌>
一実施形態では、癌は腎癌/腎臓癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、化学療法、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、VEGF−Trap、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ、パゾパニブ、インターフェロンアルファ、IL−2、またはその任意の組み合わせである。
【0381】
<精巣癌>
一実施形態では、癌は精巣癌であり、1つ以上の抗癌性の処置は、例えば、外科手術、免疫療法、化学療法、放射線療法、化学療法と放射線療法または生物学的治療の組み合わせである。いくつかの薬は精巣癌を処置するために典型的に使用される:プラチノール(Platinol)(シスプラチン)、ベプシドまたはVP−16(エトポシド)とブレノキサン(Blenoxane)(硫酸ブレオマイシン)。
さらに、Ifex(イホスファミド)、Velban(硫酸ビンブラスチン)やそれ以外のものが使用されてもよい。
【0382】
<胃癌>
一実施形態では、癌は精巣癌であり、1つ以上の抗癌性の処置は、例えば、外科手術、免疫療法、化学療法、放射線療法、化学療法と放射線療法の組み合わせあるいは生物学の治療である。
【0383】
<胸腺癌>
一実施形態では、癌は胸腺癌である。また、1つあるいはより抗癌性の処置は、例えば手術、免疫療法、化学療法、放射線療法、化学療法と放射線療法または生物学的治療の組み合わせである。胸腺腫と胸腺の癌の処置で使用される抗癌薬は、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、イホスファミド、およびコルチコステロイド(プレドニゾン)である。しばしば、これらの薬物はその有効性を増加させるために組み合わせて与えられる。胸腺癌を処置するために使用される組み合わせは、シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシドとシクロホスファミド、ならびに、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびビンクリスチンの組み合わせを含んでいる。
【0384】
<骨髄腫>
一実施形態では、癌は骨髄腫であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、放射線療法、VELCADE(登録商標)、レナリドミド、またはサリドマイド、あるいはその組み合わせである。一実施形態では、治療処置はVELCADE(登録商標)である。これらの治療のいずれかの投与量は当該技術で知られており、それに応じて併用療法で調節することができる。
【0385】
<前立腺癌>
一実施形態では、癌は前立腺癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、放射線療法(例えば、外部のビームまたは近距離照射療法)、ホルモンの欠乏(アンドロゲン抑制)、熱ショックタンパク質90(HSP90)阻害剤、化学療法(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、サトラプラチン、およびオキサリプラチン、タキサン、エストラムスチンなどのドセタセル、白金ベースの化学療法)、プレドニゾンまたはプレドニゾロン、スタチンなどのコレステロール低下剤、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、RNAi治療、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)(GVAXとしても知られている)を分泌するように遺伝子組み換えされた完全腫瘍細胞、またはその任意の組み合わせである。さらに別の実施形態では、1つ以上の治療処置はVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、VEGF−Trap、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ、およびパゾパニブを含んでいる。
【0386】
<肺癌>
一実施形態では、癌は肺癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、放射線療法(例えば、胸部放射線療法、荷電粒子による放射線療法、ウラシル・テガフールおよび白金ベースの化学療法(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)、および、ビノレルビン、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、抗上皮成長因子受容体抗体(例えば、セツキシマブ)、抗血管内皮細胞増殖因子抗体(例えば、ベバシズマブ)、チロシンキナーゼの小分子阻害剤、肺癌細胞の増殖に関与するタンパク質の直接の阻害剤、オーロラ・キナーゼ阻害剤、レーザーによって引き起こされる熱療法、RNAi治療、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)(GVAXとしても知られている)を分泌するように遺伝子組み換えされた完全腫瘍細胞、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、VEGF−Trap、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブおよびパゾパニブ、あるいは任意の組み合わせである。追加の治療処置はタキソールとペメトレキセドを含んでいる。これらの治療のいずれかの投与量は当該技術で知られており、それに応じて併用療法で調節することができる。
【0387】
<乳癌>
一実施形態では、癌は乳癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、モノクローナル抗体(例えば、Her−2抗体、ハーセプチン、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ、およびパゾパニブ)、単一の薬剤化学療法または併用化学療法(例えば、アントラサイクリンベースとタキサンベースの多剤化学療法、タキソール、あるいは、内分泌腺の操作を含むまたは含まない、PMRTを含むまたは含まない、標的に特異的なトラスツズマブ、ビノレルビン)などのアジュバント化学療法、VEGF−Trap、ゼローダ、タキソテール、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ゼローダ、タキソテール、タモキシフェンとラロキシフェンのような選択的エストロゲン受容体修飾薬、トリロスタンのようなアロステリックなエストロゲン受容体修飾薬、放射(例えば、間質放射線治療、Mammosite装置、3−次元の等角外部放射、および術中照射)、全身合成を抑制するアロマターゼ阻害薬(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、およびレトロゾール)、RNAi治療、テムシロリムス(CCI779)などの免疫抑制性かつ抗増殖性である、ラパマイシンの静脈内アナログ、あるいは任意の組み合わせである。これらの治療のいずれかの投与量は当該技術で知られており、それに応じて併用療法で調節することができる。
【0388】
<結腸癌>
一実施形態では、癌は結腸癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、放射線療法、および化学療法(例えば、5−フルオロウラシル、レバミソール、ロイコボリンまたはセムスチン(メチルCCNU))、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリジン−4−カルボキサミド、および他の関連するカルボキサミド抗癌薬;非トポイソメラーゼII阻害剤、イリノテカン、リポソームトポテカン、制癌剤(例えば、パクリタキセルまたはドセタセル)のタキサンクラス、キサンテノン酢酸クラス(例えば、5,6−ジメチルアンテノン(dimethylanthenone)−4−酢酸PMAA)の化合物、ラミナリン、部位選択的なサイクリックAMPアナログ(例えば、8−クロロアデノシン3’,5’−環状リン酸塩)、Cox−2のピラノインドール阻害剤、Cox−2のカルバゾール阻害剤、Cox−2のテトラヒドロカルバゾール阻害剤、Cox−2のインデン阻害剤 NSAIDSの局所的な阻害剤(例えば、アントラニル酸、アスピリン(5−アセチルサリチル酸)、アゾジザル(azodisal)ナトリウム、カルボ複素環酸、カプロフェン、クロラムブチル、ジクロフェナク、フェンブフェン、フェンクロフェナク(fenclofenac)、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、フルプロフェン(fluprofen)、フロセミド、金チオリンゴ酸ナトリウム、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロナゾラク、ロキソプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メルファラン、ナプロキセン、ペニシラミン、フェニル酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、サラゾスルファピリジン、スリンダク、トルメチン、ピラゾロンブタゾン プロパゾン(propazone)NSAIDs、メロキシカム、オキシカム、ピロキシカム、フェルデン、ピロキシカム・ベータシクロデキストラン(cyclodextran)、テノキシカム、エトドラク、およびオキサプロジン)、HER−2/neuの阻害剤、RNAi治療、GM−CSF、モノクローナル抗体(例えば、抗Her−2/neu抗体、抗CEA抗体、A33(HB 8779)、100−210(HB 11764)および100−310(HB 11028))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、VEGF−Trap、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ パゾパニブ、およびアービタックス)、ベクティビックス、ホルモン療法、ピリミジンアミン、カンプトテシン誘導体(例えば、CPT−11)、フォリン酸(FA)、ゲムシタビン、Ara−C、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンなどの白金ベースの化学療法、cGMPに特有のホスホジエステラーゼ阻害薬、またはその任意の組み合わせである。これらの治療のいずれかの投与量は当該技術で知られており、それに応じて併用療法で調節することができる。
【0389】
<膵癌>
一実施形態では、癌は膵癌であり、1つ以上の治療処置は、外科手術、放射線療法(RT)、フルオロウラシル(5−FU)とRT、全身治療、ステント挿入、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ゲムシタビンとRT、セツキシマブ、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、化学照射、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、またはその任意の組み合わせである。これらの治療のいずれかの投与量は当該技術で知られており、それに応じて併用療法で調節することができる。
【0390】
<子宮頚部癌>
一実施形態では、癌は子宮頚部癌であり、1つ以上の抗癌性処置としては、限定されないが、外科手術、免疫療法、放射線療法、および化学療法が挙げられる。いくつかの可能な外科手術の選択肢は、冷凍外科、子宮摘出、および広汎性子宮全摘である。子宮頚部癌患者のための放射線療法は、外部ビーム放射線療法または近距離照射療法を含んでいる。子宮頚部癌を処置するために化学療法の一部として投与されることもある抗癌剤は、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、イリノテカン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、マイトマイシン、イホスファミド、フルオロウラシル、エトポシド、メトトレキセート、およびその組み合わせを含んでいる。
【0391】
<甲状腺癌>
一実施形態では、癌は甲状腺癌であり、1つ以上の抗癌性処置としては、限定されないが、外科手術、免疫療法、放射線療法、ホルモン療法、および化学療法が挙げられる。外科手術は甲状腺癌の最も一般的な処置である。甲状腺癌の処置に対するいくつかの可能な外科的オプションは、肺葉切除術、甲状腺のほぼ全摘術、甲状腺全切除、およびリンパ節郭清である。放射線療法は外的放射線療法であることもあれば、放射性ヨウ素を含む液体の摂取を必要とすることもある。ホルモン療法は、癌細胞が成長するのを防ぐためにホルモンを使用する。甲状腺癌を処置する際に、ホルモンは、身体が癌細胞を成長させ得る他のホルモンを作るのを防ぐために、使用可能である。
【0392】
<EGFR阻害剤抵抗性とEGFR阻害剤>
表皮成長因子受容体(EGFR)またはそのリガンドTGFαの過剰発現は、例えば、胸、肺、および頭頚部の癌に関連付けられることが多く、これらの腫瘍の悪性腫瘍の原因と考えられている。EGFR活性化を阻む抗体と同様に、抗腫瘍薬として使用されるEGFRのキナーゼ活性を阻害する化合物の開発は、膨大な研究努力が費やされる領域である。
【0393】
その受容体EGFRを介して作用する上皮成長因子(EGF)は、上皮細胞用の分裂促進因子および生存の因子である(Rheinwald, J. G. and Green, H., 1977, Nature 265, 421; Rodeck, U. et al., 1997, J. Cell Science 110, 113)。したがって、化学療法でEGFR阻害剤を使用すると、皮膚や、角膜および胃腸管の内部などの他の上皮組織の正常な再生に干渉することになる:皮膚とG1管などの増殖組織に対する毒性は、細胞毒性薬の用量制限的な副作用であることが多い。こうした毒性は、数ある症状の中でも、皮疹、下痢、角膜菲薄化、毛の衰退または抜け毛、毛包の異形成、変性、壊死、または炎症、小胞内の表皮の増殖、あるいは損傷後の治癒の失敗または治癒の遅れとして現れることもある。
【0394】
本明細書で使用されるように、用語「EGFR阻害剤」は、当該技術で現在知られている、または将来的に特定されるであろうあらゆるEGFR阻害剤を指し、患者への投与後、その天然のリガンドのEGFRへの結合に由来する下流の生物学的効果のいずれかを含む、患者のEGFRの活性化に関連した生物活性の阻害をもたらすあらゆる実体を含んでいる。こうしたEGFR阻害剤は、EGFR活性化、あるいは患者の癌の治療に適切なEGFR活性化の下流での生物学的効果のいずれかを阻むことができるあらゆる薬剤を含んでいる。こうした阻害剤は受容体の細胞内ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって、作用することができる。あるいは、そのような阻害剤は、EGFR受容体またはその一部のリガンド結合部位またはその一部を占めることにより作用することができ、それによって、受容体をその天然リガンドに近づくことができないようにすることで、正常な生物活性が妨げられるまたは減らされる。EGFR阻害剤としては、限定されないが、低分子量の阻害剤、抗体、または抗体フラグメント、アンチセンス構築物、および、リボザイムが挙げられる。好ましい実施形態では、EGFR阻害剤は、特にヒトEGFRに結合する小さな有機分子または抗体である。
【0395】
本方法によって使用することができるEGFR阻害剤はとしては、限定されないが、キナゾリンEGFR阻害剤、ピリド−ピリミジンEGFR阻害剤、ピリミド−ピリミジンEGFR阻害剤、ピロロ−ピリミジンEGFR阻害剤、ピラゾロ−ピリミジンEGFR阻害剤、フェニルアミノ−ピリミジンEGFR阻害剤、オキシンドールEGFR阻害剤、インドロカルバゾール(indolocarbazole)EGFR阻害剤、フタラジンEGFR阻害剤、イソフラボンEGFR阻害剤、キノロン(quinalone)EGFR阻害剤、および、チロホスチンEGFR阻害剤として当該技術で分類されるものが挙げられる。
【0396】
本方法を実施する際に有用な低分子量EGFR阻害剤の非限定的な例としては、以下の特許公報に記載のEGFR阻害剤のいずれかと、こうしたEGFR阻害剤の薬学的に許容可能な塩と溶媒和物すべてが挙げられる:1992年12月30日に公開されたヨーロッパ特許出願EP 520722;1993年10月20日に公開されたヨーロッパ特許出願EP 566226;1996年10月31日に公開されたPCT国際公開WO 96/33980;1998年5月5日に発行された米国特許5,747,498;1996年10月3日に公開されたPCT国際公開WO 96/30347;1997年8月6日に公開されたヨーロッパ特許出願EP 787772;1997年8月21日に公開されたPCT国際公開WO 97/30034;1997年8月21日に公開されたPCT国際公開WO 97/30044;1997年10月23日に公開されたPCT国際公開WO 97/38994;1997年12月31日に公開されたPCT国際公開WO 97/49688;1998年4月22日に公開されたヨーロッパ特許出願EP 837063;1998年1月22日に公開されたPCT国際公開WO 98/02434;1997年10月23日に公開されたPCT国際公開WO 97/38983;1995年7月27日に公開されたPCT国際公開WO 95/19774;1995年7月27日に公開されたPCT国際公開WO 95/19970;1997年4月17日に公開されたPCT国際公開WO 97/13771;1998年1月22日に公開されたPCT国際公開WO 98/02437;1998年1月22日に公開されたPCT国際公開WO 98/02438;1997年9月12日に公開されたPCT国際公開WO 97/32881;1998年1月29日に公開されたドイツ特許出願DE 19629652;1998年8月6日に公開されたPCT国際公開WO 98/33798;1997年9月12日に公開されたPCT国際公開WO 97/32880;1997年9月12日に公開されたPCT国際公開WO 97/32880;1995年11月15日に公開されたヨーロッパ特許出願EP 682027;197 年1月23日に公開されたPCT国際公開WO 97/02266;1997年7月31日に公開されたPCT国際公開WO 97/27199;1998年2月26日に公開されたPCT国際公開WO 98/07726;1997年9月25日に公開されたPCT国際公開WO 97/34895;1996年10月10日に公開されたPCT国際公開WO 96/31510;1998年4月9日に公開されたPCT国際公開WO 98/14449;1998年4月9日に公開されたPCT国際公開WO 98/14450;1998年4月9日に公開されたPCT国際公開WO 98/14451;1995年4月13日に公開されたPCT国際公開WO 95/09847;1997年5月29日に公開されたPCT国際公開WO 97/19065;1998年4月30日に公開されたPCT国際公開WO 98/17662;1998年8月4日に発行された米国特許5,789,427;1997年7月22日に公開された米国特許5,650,415;1997年8月12日に発行された米国特許5,656,643た;1999年7月15日に公開されたPCT国際公開WO 99/35146;1999年7月15日に公開されたPCT国際公開WO 99/35132;1999年2月18日に公開されたPCT国際公開WO 99/07701;および、1992年11月26日に公開されたPCT国際公開WO 92/20642。低分子量EGFR阻害剤の追加の非限定的な例としては、Traxler, P., 1998, Exp. Opin. Ther. Patents 8(12):1599−1625に記載のEGFR阻害剤のいずれかが挙げられる。
【0397】
本方法によって使用することができる低分子量EGFR阻害剤の特定の好ましい例としては、[6,7−bis(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(1998年5月5日に発行された米国特許5,747,498とMoyer et al., 1997, supra);Cl−1033とPD183805(Sherwood et al., 1999, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 40:723);および、ZD1839(Woodburn et al., 1997, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 38:633)。
【0398】
抗体ベースのEGFR阻害剤は、その天然リガンドによってEGFR活性化を部分的または完全に阻むことができる、任意の抗EGFR抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。抗体ベースのEGFR阻害剤の非限定的な例は、Modjtahedi, H., et al., 1993, Br. J. Cancer 67:247−253; Teramoto, T., et al., 1996, Cancer 77:639−645; Goldstein et al., 1995, Clin. Cancer Res. 1:1311−1318; Huang, S. M., et al., 1999, Cancer Res. 15:59(8):1935−40; and Yang, X., et al., 1999, Cancer Res. 59:1236−1243に記載されたものを含む。したがって、EGFR阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang, 1999 supra)、またはMab C225(ATCC Accession No. HB−8508)、またはその結合特異性を有する抗体あるいは抗原結合フラグメントであり得る。抗体ベースのEGFR阻害剤の他の例としては、例えば、TARCEVA(登録商標)(エルロチニブ)、アービタックス(登録商標)(セツキシマブ)、およびIressa(登録商標)(ゲフィチニブ)が挙げられる。
【0399】
さらなる抗体ベースのEGFR阻害剤は、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、羊、およびマウスから選択された宿主動物に適切な抗原またはエピトープを投与することによって、既知の方法によって作ることができる。当該技術で既知の様々なアジュバントを用いて、抗体産生(例えば、水酸化アルミニウム、完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなど)を改善することができる。
【0400】
市販の他の阻害剤は本明細書での使用について企図される。
【0401】
本明細書で記載された化合物のみによる、または、他の抗悪性腫瘍化合物と組み合わせによる癌の処置は、抗悪性腫瘍薬によって及ぼされる副作用を緩和することができる医薬用剤の投与を伴うこともある。本明細書での使用に適したこうした薬剤としては、限定されないが、制吐薬、抗粘膜炎性薬、疼痛管理薬、感染制御因子、および抗貧血薬/抗血小板減少薬が挙げられる。本明細書での使用に適した制吐薬の例としては、限定されないが、5−ヒドロキシトリプタミン3受容体アンタゴニスト、メトクロプラミド、ステロイド、ロラゼパム、オンダンセトロン、カンナビノイド、それらのアナログ、および誘導体が挙げられる。本明細書での使用に適した抗粘膜炎性薬の例としては、限定されないが、パリフェルミン(角化細胞成長因子)、グルカゴン様ペプチド−2、テデュグルチド、L−グルタミン、アミホスチン、および繊維芽細胞成長因子20が挙げられる。本明細書での使用に適した疼痛管理薬の例としては、限定されないが、オピオイド、オピエート、および非ステロイド性の抗炎症化合物が挙げられる。本明細書での使用に適した感染の制御に使用される薬剤の例としては、限定されないが、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、リンコマイシン、マクロライド、バンコマイシン、カルバペネム、モノバクタム、フルオロキノロン、スルホンアミド、ニトロフラントイン、それらのアナログおよび誘導体などの抗菌薬が挙げられる。本明細書での使用に適した化学療法に関連した貧血または血小板減少症を処置することができる薬剤の例としては、限定されないが、エリトロポイエチンおよびトロンボポイエチンが挙げられる。
【0402】
本明細書で記載された化合物や本明細書で記載される他の化合物と組み合わせて使用されるいくつかのそれ以外の適切な治療も利用可能である。例えば、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 11th ed. Brunton LL, Lazo JS, and Parker KL, ed. McGraw−Hill, New York, 2006.を参照のこと。
【実施例】
【0403】
本出願は、本出願の典型的な実施形態として提供される以下の非限定的な例を参照することでより良く理解されることもある。以下の例はより完全に実施形態を例証するために提示されるが、本出願の広範な範囲を制限するものと解釈されてはならない。本出願の特定の実施形態が本明細書に示され記載されている一方で、こうした実施形態がほんの一例として提供されていることは明らかである。多くの変化、変更、および置換が実施形態を逸脱することなく当業者に思い浮かぶこともある;本明細書で記載される実施形態の様々な代替物は本明細書で記載される方法を実施する際に用いられることもあるということに留意されたい。
【0404】
<実施例1:NDGAキナーゼのアロステリック結合部位の構造ベースの予測>
活性な形態のIGF1−R、EGFR、c−Metの3つのX線の結晶構造を、タンパク質構造データバンク(PDB)から選択し、構造分析を行うために完全な原子模型に変換した。3つのキナーゼの各々に共通したアロステリックな3つのポケットを同定した。アロステリックなポケットは、N末端葉、基質結合クレフト、およびC末端葉中のアルファCの隣に位置する。リガンドのドッキングとスコアリングを用いて3つのポケットのどれがNDGA結合ポケットかを同定した。基質結合ポケットがNDGA結合ポケットである可能性が最も高いことが分かった。
【0405】
<結果>
X線結晶構造選択
PDBを採掘して、この研究に関するIGF1R、EGFR、およびc−Metのヒト・キナーゼ・ドメイン構造を見つけた。この研究については、以下のキナーゼ構造:3Q6W(c−Met)
1、1M17(EGFR)
2、および1K3A(IGF1R)
3(データは示されていない)を用いて作業することにした。こうした構造はその活性な立体構造形態、導出および配列適用範囲に基づいて選択した。構造の各々はATPポケット中のリガンドで同時結晶化され、N末端葉はアルファC乃至ベータ3の塩橋によって密閉され、活性化ループが命じられる。構造(IGF1R−PDB 1K3A)の1つは活性化ループに結合したペプチドを有する。異常なPDB 3Q6W(残基1240−1243)の4つの残基セグメントを、標準的なICMタンパク質モデリングプロトコル
4−6を用いてリモデリングした。
【0406】
ポテンシャルNDGAアロステリック結合ポケットの同定
NDGAはIGF1R、EGFR、および、c−Metに結合するため、各構造に共通のポケットがあると仮定することは合理的である。ここで、リガンド結合ポケットを同定して、有望な結合部位を決定した。
【0407】
ポケットファインダー方法
水素原子を3つのキナーゼ構造の各々に加えて、AsnとGlnの側鎖の正確な配向を決定した。ヒスチジン残基を最適化して最良の配向とプロトン化状態を決定し、正確な電荷をAsp、Glu、Lys、およびArgに加えて、すべての水分子とHet原子を除去した。
【0408】
MolSoftのICMPocketFinder algorithm
7,8を用いて、3つのキナーゼX線結晶構造中のポテンシャルリガンド結合ポケットを同定した。ICMPocketFinder方法はレナード・ジョーンズポテンシャルの形質転換に基づき、結合ポテンシャルのグリッドマップを構築して、こうしたマップに即した等ポテンシャル面の構築に基づいてリガンド結合ポケットの位置とサイズを決定する。「ドラッガビリティ(druggability)」特性と小分子を結合させるポテンシャル傾向についてポケットを評価した。
【0409】
標的キナーゼ中の同定された3つの保存されたポケット
c−Met、EGFR、およびIGF1R(データは示していない)中の同じ位置で3つのアロステリックポケットを見つけた。
【0410】
アルファCポケットは、アルファCとベータ9乃至ベータ10のループの間のキナーゼのN末端領域に位置する。
【0411】
基質ポケットは、活性化ループとベータ7とベータ10の部位に位置する。
【0412】
C末端ポケットは、アルファF乃至アルファGとアルファG乃至アルファHのループによって形成される。このポケットはATPポケットと活性化ループの両方から離れている。
【0413】
リガンドドッキングによるNDGA結合ポケットの予測
リガンドドッキングとスコアリングを用いて、3つのアロステリックポケット(アルファC、基質、およびC末端)のどれがNDGAと結合するかを同定した。このシリカ内での手法により、NDGAが各ポケットにどれくらいよく収まるかに関する予測が得られる。
【0414】
アロステリックポケットへのNDGAのドッキング
5つのタイプの相互作用のポテンシャルは、3つのキナーゼ中の3つのポケットの各々を表わしていた。ポテンシャルは以下を含んでいた:(i)水素原子プローブに関するファンデルワールスポテンシャル;(ii)重原子プローブ(1.7Å半径の一般的な炭素)ファンデルワースポテンシャル;(iii)最適化した静電項(electrostatic term);(iv) 疎水項(hydrophobic terms);および、(v)水素結合での配向性の優先度を反映する孤立電子対ベースのポテンシャル。エネルギー項は、溶媒和自由エネルギーとエントロピー寄与を説明するために、追加された項を含む全原子の真空力場(vacuum force field)ECEPP/3に基づく。立体構造のサンプリングは、偏りのある確率モンテカルロ(Biased probability MOnte Carlo)(BPMC)方法4に基づき、これは、任意に内部の座標空間中の立体構造をランダムに選択し、その後、以前の位置とは無関係であるがあらかじめ定められた連続確率分布に従って新しいランダムな位置に対する工程を作る。それぞれのランダムな工程の後、十分な局所的な最小化により手順の効率は著しく改善される。ICMプログラムは、受容体分野での可撓性を有するリガンド全体の大域的な最適化に依存し、複数のタイプの大規模のランダムな動きを勾配の局所的な最小化と検索履歴機構と組み合わせる。
【0415】
NDGAポケットの区別−基質ポケットの優先
いったんリガンドが各ポケットにドッキングさせると、その後スコアを計算してリガンドが各ポケットにどれくらいよく収まっているかを決定する。スコアリングの関数は、リガンドと受容体の間の結合自由エネルギーの正確な近似値を与え、力場に基づいた異なるエネルギー項の関するである。ICMスコアリング関数
9は、以下のパラメータ(i)リガンドの内力場エネルギー、(ii)結合状態と非結合状態のリガンドのエントロピー喪失、(iii)リガンド受容体水素結合相互作用、(iv)結合状態と非結合状態の間の極性および非極性の溶媒和エネルギー差、(v)静電エネルギー、(vi)疎水性のエネルギー、および(vii)水素結合供与体または受容体脱溶媒に従って重み付けされる。ICMスコアが低ければ低いほど、NDGAリガンドがそのポケットに結合する予測は優れている。
【0416】
表5は、3つのキナーゼ構造中のポケットの各々のICMドッキングスコアを示す。スコアの差は劇的なものではないが、基質結合ポケットにドッキングしたNDGAについてはスコアは一貫してより優れている。
【0417】
【表16】
【0418】
IGF1Rおよびc−Met中のリガンドのポーズは、結晶構造(データは示されていない)で見られる基質ペプチド結合ポーズによくマッチしている。ドッキングしたポーズは、IGF1R結晶構造に結合した基質ペプチド(データは示されていない)によくマッチしている。
【0419】
基質結合ポケットに対するNDGAモノグルクロニドと一硫酸塩のドッキング
表6は、基質結合ポケット中のNDGA、NDGAモノグルクロニド、およびNDGA一硫酸塩の結合スコアの比較を示す。
【0420】
モデルは、カテコール環へのモノグルクロニドまたは硫酸塩の追加では、結合に対する有害な効果を改善したり、これを有したりすることはないことを示唆しており、結合スコアはNDGAで得られたものに類似していた(しかしわずかに低かった)。ドッキングスコアはリガンド結合剤と非結合剤を識別することを主目的としており、したがって、有意な詳細なSARが利用可能でない限り、実験的に決定された結合親和力によってリガンドをランク付けすることはできない。
【0421】
【表17】
【0422】
基質結合ポケットに対するNDGA代謝産物のドッキング
表7は、基質結合ポケット中のNDGAまたはその代謝産物の結合スコアの比較を示す(G=Gluc、M=メチル、およびS=硫酸塩)。
【0423】
【化12】
【0424】
【表18】
【0425】
この研究で使用されるMolSoftのICM技術に関して
すべてのポケット・モデリングはMolSoftのICMデスクトップモデリングソフトウェアパッケージを使用して行われた。ICMは分子のオブジェクトの内部座標(IC)表示に基づき、分子
4,5の共有結合幾何学を自然に反映する。方法は、正確な内部座標の力場と非常に効率的な立体構造状態のサンプリングアルゴリズムBPMC
4によって支援される。ICMは、可撓性を有するタンパク質の配座解析とリガンドとのその相互作用に関して今日利用可能な最も高度なモデリングツールの1つである。このソフトウェアはアカデミックな研究の研究所だけでなく製薬会社やバイオ技術会社で世界的に使用されている。
【0426】
結論
NDGAの予測される結合ポケットは、活性化ループ(データは示されていない)に近い基質結合部位にある。キナーゼの生物学的および構造的な知識に基づいて、この研究で見つかった3つの共通するポケットから、基質結合部位はアロステリック阻害剤が結合する最も可能性の高く効果的な部位であることは明らかである。例えば、C末端ポケット中の阻害剤の結合がどのようにして基質結合を引き裂き得るのかは不確かである。アルファCポケットはN末端葉の移動に干渉することもあるため優れた部位である可能性が高いが、それぞれの場合で、ドッキングスコアは基質結合ポケットでより優れていた。さらに、IGF1Rおよびc−Met中のNDGAのドッキングしたポーズが、基質(データは示されていない)で見られる相互作用にどれほど良くマッチするかということも好意的なものである。
【0427】
<実施例2:オスのCD−1マウス中の経口投与後のNDGAの代謝産物プロファイリング:投薬、サンプリング、および分析>
目的
この研究の目的は、オスのCD−1マウス中の経口投薬後の試験化合物NDGAの代謝産物のプロファイリングを行い、生体外での全血の安定性を決定することであった。
【0428】
概要
投薬した動物の血漿サンプル中で多くの代謝産物を検出した。高解像度の正確な質量測定と獲得したMS/MSのデータの結果に基づいて、検出された代謝産物は複雑な第II相物質代謝(接合)によって生じるように思われる。
【0429】
代謝産物の半定量の血漿濃度対時間の結果により、代謝産物を3つのグループ:親試験化合物の濃度を映す「最初に形成された」グループ;その濃度が調査された時間間隔で増加していく「後に形成された」グループ;および、「のこぎりのような」パターンをもたらす腸肝の再循環の妥当な被検体、に分けることができる。結果を表8にまとめる。
【0430】
【表19-1】
【0431】
【表19-2】
【0432】
CD−1マウス(3匹の動物からプールした)の採取した新鮮な全血中のNDGAの安定性の決定の結果を表9にまとめる。
【0433】
【表20】
【0434】
NF−ピークは見られず
全血から調製されたサンプル中のNDGAのMS信号は、非常に低いように思われ、おそらく回復がぜい弱であることを示している可能性がある(結果を参照)。生体外で全血中でインキュベーション後、推定上の代謝産物はまったく検出されなかった。
【0435】
<実験>
投薬液は20mg/mLの名目上の濃度で調製された;詳細な記載は付録Iで示される。HPLC−MSを用いて確立された有効濃度は名目上の84.9%+/−8.9%)であり、研究プロトコルに従って許容可能な範囲内であった。動物への投薬と血液の採取は研究プロトコルによって行なわれた;詳細は付録IIで示される。投薬された動物では悪影響は観察されなかった。血漿サンプルは研究プロトコルによる血液から調製された。安定させた(アスコルビン酸で)血漿サンプルのアリコートを、タンパク質沈澱反応のために、内部標準(それぞれ500ng/mLのメトプロロール、プロプラノロール、およびワルファリン)の混合物を含有するMeCN(1:3比率)で処置した。遠心分離後に、以下に記載するようなLC高解像度の正確な質量分析(HRAMS)を直接使用して透明な上澄みを分析した。
【0436】
プールされた全血(n=3動物)中の試験化合物NDGAのインキュベーションは、研究プロトコルに従って60分間+37°Cで実行された。アリコートを、タンパク質沈澱反応のために、内部標準(それぞれ500ng/mLのメトプロロール、プロプラノロール、およびワルファリン)の混合物を含有するMeCN(1:3比率)で処置した。遠心分離後に、上澄みを、以下に記載するようなLC−HRAMSを使用して分析した。
【0437】
<代謝産物プロファイリング:導入>
サンプルはHPLCを使用して分離させ、2つの固定相を評価した:ACEペンタフルオロフェニル(pentaflurophenyl)C18(Phenomenex)およびdC18(Waters)。構成要素の溶出は、一定のレベルのAcOH(0.1%)で水中でMeCN/MeOH(1/1)の直線勾配を使用して行われた。
【0438】
溶出した成分はイオン化し(正モードと負モード;別々の注入で)、生成されたイオンをLTQ Orbitrapハイブリッド道具を使用して調査した。MSの道具は、線形のイオントラップ(LTQ)と高解像度FT質量分析器(Orbitrap)を組み合わせたものである。
【0439】
調査MSスキャンを、Rs=30,000(m/z範囲150−900μ)の解像度で操作されたOrbitrap FT分析器上で行った。このサイクルはFT事前スキャンで始まる。この事前スキャンでは、FT分析器は高習得率かつ低解像度(Rs=7500)で操作され、結果を用いて調査の高解像度スキャン用の最適なパラメータを計算する。事前スキャンはHPLC溶離液の中にあるすべてのイオンの対応するm/z値を戻す。
【0440】
事前スキャン後、FT分析器は高解像度(HRMS)で低速な調査スキャンを行う準備ができている。並行して、LTQイオントラップは、データ依存性の習得(DDA)事象を使用して、MS(n)データを得る準備ができている。DDAは決定事象と2つのMS
2製品イオンスキャンからなる。決定事象は親の質量リストに載っている事前スキャンで検出された2つの最も強力なイオンを選択する。
【0441】
詳細な方法情報を含む自動的に生成されたPDFファイルが別々に送られる。
【0442】
データはMetworks(商標)ソフトウェア(v1.3.0,Thermo)を使用して処理された。データ処理は2つの工程で構成される:
1)「SUB」ファイル(付録II)の形成をもたらす、分析されたサンプルからの対照サンプル(ブランクのマトリックス中の溶媒対照)のクロマトグラムの減法。このファイルは、分析されたサンプルに特有の成分のピークと、対照サンプル中のものよりも少なくとも2倍高い(S/N比率)分析されたサンプル中の強度を含む成分のピークとを含んでいる。
2)包括的な代謝産物の検出用の「SUB」(「chro」サーチ)中にある主要なユニークなピークのサーチ。
【0443】
最後に、「SUB」ファイルと自動検出の結果を手動の評価にかけた。
【0444】
<結果と代謝産物の検出>
トリプルクアッド(triple quad)機器で以前に得られた結果に似て、LTQ−Orbitrap機器での負のモードにおける検出は、正モードにおける検出と比較して、親化合物と推定上の代謝産物の両方について見かけ上の感度が非常に高い結果となった。したがって、別段の定めのない限り、代謝産物検出のすべての結果は負のモードで得られた。
【0445】
推定上の代謝産物を検出するためのデータ処理はすべての時点を用いて行われた。親化合物のピークはすべてのサンプル中で検出された。実例として、
図1は、データ点全体の親化合物のピークのイオン抽出クロマトグラム(XIC)を示す。
【0446】
曲線下面積手法を使用する代謝産物の相対存在量の決定
生成された代謝産物の半定量比較について、検出された代謝産物と親化合物対内部標準のピーク面積の比率を用いて、代謝産物形成の動力学を構築し、台形近似を用いて対応するAUCを計算した。
表10は結果を示す。
【0447】
【表21-1】
【0448】
【表21-2】
【0449】
視覚化する目的で、
図19は、代謝産物と試験化合物(各分析物の最も高い濃度が100%であるようにそれ自体に正規化された各化合物)の正規化レベルを示す。
【0450】
図30は、代謝産物と親化合物(各分析物の最も高い濃度が100%であるようにそれ自体に正規化された各化合物)の正規化レベルを示す。上に記載されたものとは別の実験から。
【0451】
<推定上の代謝産物の結論、検出、および構造解析>
多くの代謝産物が投薬された動物の血漿サンプル中で検出された。HRAMS測定と取得したMS
2データの結果に基づいて、検出された代謝産物はすべて複雑な第II相代謝(接合)の産物であるように割り当てられた。代謝産物の血漿濃度の半定量決定の結果により、代謝産物を3つのグループ−親試験化合物の濃度を映す「最初に形成された」グループ;その濃度が調査された時間間隔にわたって増加した「後に形成された」グループ;および、「のこぎりのような」パターンをもたらす腸肝の再循環の妥当な被検体、に分割することができる。
【0452】
<結果、全血安定性の決定、および推定上の代謝産物の検出>
CD−1マウス(3匹の動物からプールした)の採取した新鮮な全血中のNDGAの安定性の決定の結果を表11にまとめる。
【0453】
【表22】
【0454】
NF−ピークは見つからず
全血から調製されたサンプル中のNDGAのMS信号は、非常に低く、恐らく回復が貧弱であるように見える。説明目的のために、
図20は、T=0分のサンプル中のTT100のピークと内部標準(ワルファリン)のピークを記録されたHRAMSスペクトルと並行して示す。
【0455】
<結論、全血安定性の決定、および推定上の代謝産物の検出>
試験化合物NDGAは全血サンプル中で不安定なように見える。しかしながら、得られた定量的結果は(推定上の代謝産物の検出の結果と同様に)全血からのNDGAの起こり得る貧弱な回復によっては否定的な影響を受けることがある。全血からの回復の最適化は最新の研究プロトコルの範囲外であった。
【0456】
<投薬液の調製と分析>
投薬液は、QTRAP 4000器具で実施されたLCを標的としたEPI方法を使用して分析された。2つの複製物が2つの標準サンプル(100%名目上)と並行して注入された。投薬液の測定された濃度は84.9+/−8.9%であり、標準100+/−4.7%であった。測定された濃度は許容範囲内である。
【0457】
<追加の推定上の代謝産物の全イオン電流クロマトグラムと調査MSスペクトル>
「SUB」ファイル(T=1時間)の全イオン電流(TIC)跡は、それぞれのケースで上方の枠の中に示される;下方の枠は異なる保持時間間隔用のHRAMSスペクトルを示す(青線によって示される)。追加の推定上の代謝産物の妥当なピークは赤い矢印によって示される(
図21−23を参照)。
【0458】
【表23】
【0459】
【表24】
【0460】
【表25】
【0461】
【表26】
【0462】
【表27】
【0463】
【表28】
【0464】
【表29-1】
【0465】
【表29-2】
【0466】
【表29-3】
【0467】
【表30】
【0468】
【表31】
【0469】
<実施例3:オスのCD−1マウス中の経口投与後のNDGAの暴露の決定>
概要
血漿レベルはオスのCD−1マウス中のNDGAの経口服用後にLC−MS/MSによって決定された。試験化合物は、個別のグループにおけるDI水中の0.5%MCと0.5%NaCMCから100mg/kgで投薬された。個々のおよび平均の血漿濃度は表8と10に提供される。
【0470】
分析的な方法論
(分析用原液調製物)
分析用原液(1mg/mLの遊離薬物)をDMSO中で調製した。
【0471】
(水準と品質管理調製物)
基準は試験化合物の独立して調製された原液から作られた。基準とQCは、水中の0.1Mアスコルビン酸10%を含む抗凝血薬としてK2EDTAを含有するオスのCD−1マウス血漿で調製された。
基準は、段階希釈によって、1000、500、100、50、10、5、1、および0.5ng/mLの濃度で調製された。基準は研究サンプルを同じように処理された。
【0472】
(サンプル抽出)
血漿サンプルはアセトニトリル沈澱反応を用いて手動で抽出された。すべてのサンプルを氷の上で溶かし、調製の間に氷上で保持した。
【0473】
【表32】
【0474】
【表33】
【0475】
【表34】
【0476】
【表35】
【0477】
【表36】
【0478】
結果
(観察と副作用)
マウス#187は、研究中におそらくストレスが原因で、30分間サンプルを採取して5分以内に死んだ。この研究では、オスのCD−1マウスにNDGAを経口投与後、他の悪影響は観察されなかった。
【0479】
(投薬液分析)
投薬液は以下で概説される方法を使用してLC−MS/MSによって分析された。測定された投薬液の濃度は表12に示される。投薬液はマウスの血漿へ3回繰り返して希釈され、研究サンプルと並行して分析された。濃度はすべて遊離薬物のmg/mLとして表現される。
【0480】
(血漿サンプル分析)
試験化合物のための個々のおよび平均の血漿濃度が表13と14に示される。すべてのデータを遊離薬物のng/mLとして表現される。定量化の限界未満のサンプルは平均の計算では使用しなかった。
血漿濃度対時間データを
図24と25でプロットする。
【0481】
【表37】
【0482】
【表38】
【0483】
【表39】
【0484】
<実施例4:ヒト乳腺癌の生体内処置>
カテコールブタン代謝産物の生体内の抗腫瘍効果が、MX−1(ヒト乳腺癌)細胞に対して決定される。
【0485】
生後6〜8週間で、重さが20〜35グラムのオスまたはメスの無胸腺BALB/cマウスを使用する。MX−1細胞を標準RPMI−1640培地で培養し、ヌードマウスの側腹部で皮下に移植して、腫瘍株を広める。ヌードマウスに25mgのMX−1固形腫瘍破片を移植する。25−100mm
2の範囲に達する腫瘍を実験のために用いる。試験化合物(0.1mL)は腫瘍に直接注入される。
【0486】
腫瘍を定期的に測定して、腫瘍の長さ(L)×幅(W)×高さ(H)の製品の半分を用いることによってその重量を決定した。この処置を最初の処置後60日まで、またはすべてのマウスが死ぬまで一定の間隔で繰り返す。腫瘍の証拠を示さないマウスを60日間維持して腫瘍再発の可能性を評価し、このとき腫瘍の特性(もしあれば)を記録する。
【0487】
<実施例5:あらかじめ作られたヒト乳癌腫瘍の抗癌治療>
本明細書に記載されたカテコールブタン代謝産物の効果は、SCIDマウスに移植されたヒトの皮膚中のあらかじめ形成されたヒト乳癌腫瘍に対するその抗癌効果に関して評価することができる。
【0488】
簡潔に言えば、移植片が炎症、収縮、または拒絶の兆候を何も示さなかった場合、MCF−7細胞(0.1mlのPBS中の8x10
6細胞)は、SCIDマウスに移植されたヒトの全層皮膚へと皮内に移植される。明確な容易に分かる腫瘍(ほとんどの場合での直径3〜6mm)が現われるまで、マウスは未処置のままにしておく。明瞭な腫瘍を抱えたマウスは治療の研究のためのグループに分ける。対照動物には尾静脈を介して静脈内に(i.v.)無菌のPBSを投与する。試験動物のグループ(1つのグループ当たり4匹のマウス)に尾静脈を介して5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、または50mg/kgのカテコールブタン代謝産物を静脈内に(i.v.)投与する。投与は以下のとおりである:1週間に一度;1週間に2度;1週間の中断を伴って3週間にわたって1日3度;1週間の中断を伴って3週間にわたって1日2度;あるいは、1週間の中断を伴って3週間にわたって1日1度。
【0489】
EGFR阻害剤、IGF−1R阻害剤、またはその両方を含むカテコールブタン代謝産物の併用療法の試験に、マウスのさらなるグループを加えてもよい。
【0490】
処置中に、腫瘍のサイズと病的状態についてマウスを毎日モニターする。電子秤(OHAUS(商標)モデルGT210)を使用して週に2回マウスの重さを計る。腫瘍サイズは、OptoDemo(商標)ソフトウェア(Fowler co.)を使用して、コンピューターに接続された電子カリパス(PRO−MAX 6インチカリパス;マサチューセッツ州ニュートンのFowler Co.)を使用して、1週間に3回測定する。測定された腫瘍の直径は以下の式を使用して腫瘍容積に変換される:V=長さ×幅×高さ×pi/6。マウスの異なるグループを比較するためのデータの統計分析は、スチューデントのt検定を使用して行なわれる。
【0491】
<実施例6:卵巣癌のためのSCIDマウスモデル>
卵巣癌を処置するカテコールブタン代謝産物の能力を決定するために、卵巣癌細胞株がSCIDマウスの中で使用されてもよい。
【0492】
簡潔に言えば、卵巣癌細胞は卵巣腫瘍を生成するためにSCIDマウスへ注入される。定着腫瘍を運ぶマウスの基はi.vによって処置される。カテコールブタン代謝産物の用量(5mg/kgの体重からスタートして)を拡大する投与。対照動物は無菌のPBSで処置される。マウスの追加の基はEGFR阻害剤、IGF−1R阻害剤あるいは両方を備えたカテコールブタン代謝産物の併用のためにテストするために付け加えられることもある。
【0493】
マウスはモニターされる。また、腫瘍の増殖は週単位で動物の犠牲によって測定される。上に記載されたように、腫瘍が測定される。
【0494】
<実施例7:腎臓癌のためのSCIDマウスモデル>
カテコールブタン代謝産物が腎臓癌を処置する能力を決定するために、腎臓癌細胞株はSCIDマウス中で使用される。
【0495】
簡潔に言えば、腎臓癌細胞をSCIDマウスへ移植することで腎腫瘍を生成する。確定された腫瘍を抱えたマウスのグループはi.vによって処置される。カテコールブタン代謝産物の漸増用量(5mg/kgの体重から始まる)の投与。対照動物は無菌のPBSで処置される。マウスのさらなるグループが、EGFR阻害剤、IGF−1R阻害剤、またはその両方を含むカテコールブタン代謝産物の併用療法のための試験に加えられることもある。
【0496】
マウスはモニターされ、腫瘍の増殖は週単位で動物を犠牲にして測定される。上に記載されたように腫瘍は測定される。
【0497】
<実施例8:癌細胞株におけるNDGAの抗増殖活性の評価>
生体外の研究を用いて、肺癌細胞株H1975、A427、およびA549に対する、単一の試験化合物、NDGAの抗増殖活性を評価することもある。
【0498】
最初の研究は、癌細胞株中の化合物の抗増殖活性を測定する。第2の研究は、癌細胞株中のマウス血漿活性での試験薬の抗増殖性を評価する。MTT細胞増殖および/またはCyQuant(商標)アッセイがこの目的に使用されてもよい。
【0499】
MTT分析(Invitrogen)は、テトラゾリウム染料、MTTを、その不溶性のホルマザンに還元して紫の色を与える細胞の酵素の活性を測定するための比色測定法である。この分析はNAD(P)H−依存性の細胞のオキシドレダクターゼ酵素によって細胞の代謝活性を測定し、定義された条件下で生細胞(細胞増殖)の数を反映することもある。テトラゾリウム染料アッセイを用いて、潜在的な薬剤と有毒物質の細胞毒性(生細胞の喪失)または細胞増殖抑制性の活性(増殖性状態から休止状態までの変化)を測定することもできる。
【0500】
CyQuant(商標)アッセイ(Invitrogen)は、酸化防止剤の活性を抗増殖性の活性と区別するために使用されてもよい。簡潔に言えば、アッセイは細胞の核酸への結合後の染料蛍光増強に基づく。細胞はCyQUANT(商標)−GR染料を含んでいるバッファーの付加によって溶解され、洗浄工程、増殖培養液の変化、または長いインキュベーションもない。結果として生じる螢光はサンプル中の細胞の数に比例し、フルオレセイン・フィルタ・キットを装備したTD−700蛍光測定器を直接使用して測定される。CyQUANT(商標)アッセイは、ニュートラルレッドまたはメチレンブルーアッセイよりもはるかに少ない細胞数を検出可能である。(2,3,4)テトラゾリウム染料のホルマザン(5)製品または3Hチミジン取込みアッセイへの転換に依存する手順とは異なり、(6)CyQUANT(商標)方法は迅速で、細胞の代謝活性に依存しない。したがって、細胞を分析前に冷凍させることができ、経時変化アッセイは容易であり、広範に異なる時間間隔で得られるサンプルから取得したデータは直接比較することができる。
【0501】
(A.肺癌細胞株中の試験薬の抗増殖活性)
A.1.新鮮なH1975、A427、およびA549細胞を、ATCCによって推奨された標準手順と媒体を使用して溶かして拡張する。
【0502】
A.2.ほぼ1x104細胞を、96ウェルのマイクロタイタープレート中の適切な数のウェルに200μlの容量で蒔き、組織培養インキュベータ(37°C/5%CO2)中に一晩中置く。
【0503】
A.3.翌日、NDGAまたはその代謝産物を、0、1、3、10、30、100、および300μMの濃度で三通りのウェルに加える。カンプトテシンまたは別の「標準的な」抗増殖薬で処置したウェルに加えて、未処理のウェルを対照として用いる。
【0504】
A.4.プレートを標準的な組織培養インキュベータで72時間インキュベートする。インキュベーションの完了時、売主によって推奨されるようなCyQuant(商標)試薬を使用して1つのウェル当たりの相対的な細胞の数を決定する。
【0505】
A.5.結果をExcelスプレッドシートにコンパイルする。試験されたすべての細胞株に対するIC50値は、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して(可能であれば)決定される。
【0506】
(B.マウスの血漿/血清中の細胞へ投与されたNDGAまたはその代謝産物の抗増殖活性)
B.1.プールしたマウス血漿は、5匹のBALB/cマウスの末端血によって得られる。抗凝血薬を用いずに心臓穿刺によって血液を採取して凝固させる。
血漿を血液サンプルから取り除き、プールし、氷の上で保存し、遠心分離によって澄ます。
【0507】
B.2.マウス血漿の影響を決定するために、パイロット実験はH1975、A427およびA549細胞の成長上で3つの細胞株すべてで行なわれる。マウス血漿をFBSのない増殖培養液に加え、10%、25%、50%、および100%(媒体なし)の最終濃度にする。
【0508】
B.3.上の工程A.3のように、細胞を蒔き、三組のウェルをマウス血漿で処置した。CyQuant(商標)試薬を使用して、血漿で72時間インキュベーションした後に細胞成長を測定する。
【0509】
B.4.工程B.4で決定された条件を用いて、マウス血漿に添加されたNDGAまたはその代謝産物の抗増殖活性を試験する。この実験については、上記のようにプールして調製した5匹のマウスから血漿を採取する。0、1、3、10、30、100、および300μMでNDGAまたはその代謝産物を含むマウス血漿の適切な濃度を備えた媒体を、3つの細胞株の各々を含む三組のウェルに加える。プレートを72時間インキュベートし、CyQuant(商標)試薬を使用して細胞成長を測定する。
【0510】
B.5.試験されたすべての細胞株のIC50値は、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して(可能であれば)決定する。
【0511】
(C.NDGAで処置されたマウスからの細胞に投与されたNDGAまたはその代謝産物の抗増殖活性)
C.1.Bのパートに続いて、マウスからの血漿をNDGAまたはその代謝産物で処置する。
【0512】
C.2.NDGAまたはその代謝産物を0.5%メチルセルロース中の20mg/mLの懸濁液として処方し、300mg/kgの単回用量で5匹のBALB/cマウスに経口で投与する。
【0513】
C.3.工程C.2からの5匹のマウス(NDGAまたはその代謝産物で処置されていない5匹のマウスとともに)をすべて投薬後2時間で犠牲にする。血液は抗凝血薬を用いずに心臓穿刺によって採取し、凝固させる。血漿を血液サンプルから取り除き、プールし、氷の上で保存し、遠心分離によって澄ます。
【0514】
C.4.H1975、A427、およびA549細胞をパートAで記載したように蒔いて、NDGAまたはその代謝産物で処置したマウスからの血漿で処置した。使用される血清の濃度はTRIACTによって指定され、パートBに基づく。細胞を72時間培養して、その時に行なわれたCyQuant(商標)アッセイを行う。
【0515】
C.5.試験したすべての細胞株のIC50値はGraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して決定する。
【0516】
<実施例9:NSCLC細胞株の細胞生存/増殖に対する代謝産物の効果>
以下の実験は、2つのアッセイフォーマットにマウスの血清がある状態で、3つのNSCLC細胞株中の細胞生存/増殖に対するNDGAまたはその代謝産物の効果を測定したものである。
【0517】
(A:薬物を添加した未処置のマウスからの10%血清)
細胞増殖/生存に対するNDGAまたはその代謝産物の効果は、未処置マウスから得られた10%のマウス血清の存在下で培養された3つのNSCLC細胞株の中で測定された。
【0518】
簡潔に言えば、1−300mMの濃度でNDGAまたはその代謝産物を添加した未処置マウスからの媒体中で細胞を72時間培養した。細胞の数の差はCyQuant(商標)アッセイ(Invitrogen)を使用して測定された。
【0519】
H1975、A427、A549細胞を96ウェルプレートにおいて1x104細胞/ウェルで播種し、37°Cで一晩インキュベートした。
【0520】
24時間後、三組のウェルを、0、1、3、10、30、100、および、300mMの濃度でNDGAまたはその代謝産物でそれぞれ生体外で添加した10%のマウス血清で処置した。
【0521】
並行して、1セットの三組のウェルを、300mg/kgのNDGAまたはその代謝産物を投与した5匹のマウスから得られた10%のプールしたマウス血清で処置して、2時間後に犠牲にした。
【0522】
プレートを37°Cで72時間インキュベートして、CyQuant(商標)試薬を用いてウェル当たりの相対的な細胞数を決定した。分子装置プレートリーダーを使用して蛍光を測定した。
【0523】
CyQuant(商標)アッセイを、細胞平板培養(「最初」)の24時間後に、および、NDGAまたはその代謝産物のない10%のマウス血清あるいは10%のFBS(対照)への72時間の暴露後に、行った。
【0524】
10%のFBSで培養された細胞と比較して、10%のマウス血清の存在下での細胞成長は、A427、A549、およびH9175細胞中の未処置の細胞では22%、14%、および6%減少した(データは示されていない)。
【0525】
10%のFBSを含む媒体と比較すると、未処置のマウスからの10%の血清を増殖培養液に加えることで、細胞増殖の適度な阻害(平均14%)を引き起こした(データは示されていない)。
【0526】
NDGAまたはその代謝産物は、10%のマウス血清中で培養された細胞の細胞数の用量に関連する減少を引き起こした。
【0527】
細胞増殖の減少は、10mMのNDGAまたはその代謝産物の濃度で、および試験された(300mM)NDGAまたはその代謝産物の最大濃度で観察され、すべての細胞株を平均化すると細胞数は33%減少した(データは示されていない)。
【0528】
NDGAまたはその代謝産物は、薬物を添加した10%のマウス血清の存在下で培養されると、細胞増殖を阻害し、および/またはNSCLC株において用量に関連したやり方で細胞毒性を引き起こすことが観察された。
【0529】
(B:マウス血清中のTT−100の薬力学分析)
マウスは、処置の2時間後に採取した0.5%のCMCと血清中で300mg/kgのNDGAまたはその代謝産物を経口で投与された。
【0530】
5匹の動物からの血清をプールし、10%の濃度で培地と混合させ、細胞を72時間インキュベートした。その後、細胞数をCyQuant(商標)アッセイを使用して決定した。
【0531】
ビヒクル対照(VC)および300mg/kgのNDGAまたはその代謝産物を投与したマウスからの血清で処置されたNSCLC細胞の細胞数の差を決定した(データは示されていない)。10%の血清中で培養した細胞の細胞数の差をt検定によって比較した。P値は以下のとおりである:A427、p=0.009;A549、p=0.133;および、H9175、p=0.744。
【0532】
処置されたマウスからの10%の血清がある状態での培養後の細胞の数は、2つの細胞株で減少することが分かった。1つ(A427)では、減少は統計的に有意(p=.009)であったが、もう一方(A549)では、p値は0.05レベル(p=0.133)で有意ではなかった。
【0533】
本出願の態様は、その精神や本質的な特徴を逸脱することなく、他の形態で具体化されることもあれば、他の方法で実行されることもある。したがって、本開示はあらゆる点で例証されたもので限定するものではないとみなされるべきであり、等価物の意味と範囲内のものである変化は本明細書に包含されることを意図している。
【0534】
<引用文>
1.Rickert, K. W. et al.Structural basis for selective small molecule kinase inhibition of activated c−Met.J. Biol.Chem. 286, 11218−11225 (2011).
2.Stamos, J., Sliwkowski, M. X. & Eigenbrot, C. Structure of the epidermal growth factor receptor kinase domain alone and in complex with a 4−anilinoquinazoline inhibitor.J. Biol.Chem. 277, 46265−46272 (2002).
3.Favelyukis, S., Till, J. H., Hubbard, S. R. & Miller, W. T. Structure and autoregulation of the insulin−like growth factor 1 receptor kinase.Nat.Struct.Biol. 8, 1058−1063 (2001).
4.Abagyan, R. & Totrov, M. Biased probability Monte Carlo conformational searches and electrostatic calculations for peptides and proteins.J. Mol.Biol. 235, 983−1002 (1994).
5.Abagyan, R., Totrov, M. & Kuznetsov, D. ICM−A new method for protein modeling and design:
Applications to docking and structure prediction from the distorted native conformation.Journal of Computational Chemistry 15, 488−506 (1994).
6.Arnautova, Y. A., Abagyan, R. A. & Totrov, M. Development of a new physics−based internal coordinate mechanics force field and its application to protein loop modeling.Proteins 79, 477−498 (2011).
7.An, J., Totrov, M. & Abagyan, R. Comprehensive identification of ’druggable’ protein ligand binding sites.Genome Inform 15, 31−41 (2004).
8.Kufareva, I., Ilatovskiy, A. V. & Abagyan, R. Pocketome:an encyclopedia of small−molecule binding sites in 4D.Nucleic Acids Res.40, D535−540 (2012).
9.Totrov, M. & Abagyan, R. Derivation of sensitive discrimination potential for virtual ligand screening.in Proceedings of the third annual international conference on Computational molecular biology 312− 320 (ACM, 1999).doi:10.1145/299432.299509
10.Blecha, J. E. et al.Inhibition of IGF−1R and lipoxygenase by nordihydroguaiaretic acid (NDGA) analogs.Bioorg.Med.Chem. Lett.17, 4026−4029 (2007).