(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255103
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】挟み込み防止機能を備えた弾性バンド結紮装置および痔核の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
A61B17/22
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-536076(P2016-536076)
(86)(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公表番号】特表2016-530943(P2016-530943A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2013066407
(87)【国際公開番号】WO2015026379
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】13/972,202
(32)【優先日】2013年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516050717
【氏名又は名称】シーアールエイチ メディカル コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】516050728
【氏名又は名称】ガッテンプラン,ミッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガッテンプラン,ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ホテノフスキー,デビッド
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05741273(US,A)
【文献】
特開昭47−012492(JP,A)
【文献】
特表2002−520113(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0063517(US,A1)
【文献】
特開平08−057052(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/064344(WO,A2)
【文献】
特開2009−297509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
痔核組織治療用の弾性バンド結紮装置であって、
内部管状部材と、
上記内部管状部材内の押子と、
上記内部管状部材内の閉塞具と、
外部管状押し出しスリーブとを備え、
上記内部管状部材は先端および後端を有し、上記内部管状部材の上記先端上に引き延ばした弾性バンドを保持し、上記先端は開口部を有し、
上記押子は上記内部管状部材の上記先端から離れて延伸するハンドルを有し、上記ハンドルは、上記押子を上記内部管状部材の上記後端から離れるように摺動させて、上記先端の上記開口部を介して上記内部管状部材内に痔核組織を引き入れるための吸引を行い、
上記閉塞具は、端部を有し、上記閉塞具の上記端部と上記内部管状部材の内面は、上記閉塞具の上記端部の外面と上記内部管状部材の上記内面との間に組織を挟み込むことを低減する挟み込み防止機構を規定し、
上記外部管状押し出しスリーブは、上記内部管状部材に対して限定的な摩擦嵌合をもたらすように設計され、上記外部管状押し出しスリーブの外端部は引き延ばした弾性バンドに隣接し、
可撓性のある挟み込み防止ワイパー部材は、上記内部管状部材の端部に連結され、上記閉塞具の上記端部の外面と上記内部管状部材の内面との間に組織が閉じ込められる、または挟み込まれることを防ぐように、上記閉塞具の上記端部の上記外面に当接し、
上記挟み込み防止ワイパー部材は可撓性があり、薄いプラスチック素材からできていることを特徴とする弾性バンド結紮装置。
【請求項2】
上記閉塞具と上記押子は一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項3】
上記閉塞具の上記端部の上記外面は、上記閉塞具の末端の先端に向かって収束し、上記閉塞具の上記端部の上記外面と、上記内部管状部材の上記内面との間に30°以下の角度を形成することを特徴とする請求項2に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項4】
上記角度が5°から25°であることを特徴とする請求項3に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項5】
患者の直腸への上記弾性バンド結紮装置の進入が促進され、弾性バンドが上記痔核組織に配置された後、上記閉塞具を上記弾性バンド結紮装置内に引き入れた時の組織の挟み込みの発生率が減少するように、上記閉塞具の末端部が、上記先端に向かって直径が減少する領域を有することを特徴とする請求項1に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項6】
閉塞具の端部が、組織の挟み込みを低減する、上記閉塞具の上記先端で丸くなっている平行な壁面を有することを特徴とする請求項1に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項7】
上記弾性バンド結紮装置はさらに、係止機構を有し、上記係止機構は上記外部管状押し出しスリーブと上記内部管状部材とを係止して、上記外部管状押し出しスリーブと上記内部管状部材との間の相対的な動きを防ぐために上記外部管状押し出しスリーブの反対端部にあり、上記係止機構はタブを備え、使用中に上記タブを押すと、上記外部管状押し出しスリーブが上記内部管状部材から解放され、上記外部管状押し出しスリーブが上記内部管状部材の上記先端に向かって移動し、上記弾性バンドと接触することが可能となり、上記内部管状部材の上記先端から上記弾性バンドを外して、上記内部管状部材の上記開口部を介して延伸する痔核組織に係合することを促すことを特徴とする請求項1に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項8】
上記タブは、上記タブから上記内部管状部材に向かって横に広がる突起部を備えることを特徴とする請求項7に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項9】
上記内部管状部材は、上記内部管状部材と上記外部管状押し出しスリーブとの相対的な動きを防ぐように、上記タブが当接する係止リングを備えることを特徴とする請求項7に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項10】
上記係止リングは当接面を有することを特徴とする請求項9に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項11】
上記内部管状部材と上記外部管状押し出しスリーブとの相対的な動きを防ぐように、突起部が上記当接面と係合することを特徴とする請求項10に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項12】
上記タブを上記内部管状部材から押し離すと、上記突起部は上記当接面との当接関係から外れ、上記外部管状押し出しスリーブが、上記弾性バンド結紮装置の上記先端に向かって上記内部管状部材に対して移動可能になり、それによって弾性バンドが上記弾性バンド結紮装置の上記先端から痔核組織に押し出されることを特徴とする請求項11に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項13】
上記外部管状押し出しスリーブは、上記内部管状部材から上記タブを外すために必要とされる力を調整することができるように、上記タブに隣接する切り取り部を含むことを特徴とする請求項7に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項14】
患者の直腸への上記弾性バンド結紮装置の挿入の度合いに関する使用者への深さの指標として、上記外部管状押し出しスリーブの外周部に外周リングマーカーを備えることを特徴とする請求項1に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項15】
上記内部管状部材への弾性バンドの導入を促進する弾性バンド導入器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項16】
上記弾性バンド導入器はテーパ形状域と平面域とを有することを特徴とする請求項15に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項17】
上記弾性バンド導入器は上記テーパ形状域に沿って延伸する表面の突出部と溝とを有することを特徴とする請求項16に記載の弾性バンド結紮装置。
【請求項18】
上記弾性バンド導入器は、上記内部管状部材の末端部を収容する隙間を平面域に有していることを特徴とする請求項15に記載の弾性バンド結紮装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景技術〕
本発明は弾性バンド結紮による痔核の治療に関する。より具体的には、本発明は弾性バンドの配置がよりよく制御され、装置を使用する間の患者へのより快適な治療提供する、挟み込み防止機能を有する弾性バンド結紮装置に関する。
【0002】
「一体化した閉塞具を備えた弾性バンド結紮装置および痔核の治療方法(代理人整理番号5074−17)」および「係止機構を備えた弾性バンド結紮装置および痔核の治療方法(代理人整理番号5074−19)」という発明の名称である本発明の譲受人に譲渡された特許出願が本発明と同時に出願され、上記出願の開示全体は参照によって本明細書に含まれる。
【0003】
弾性バンド結紮による痔核の治療は、通常、「歯状線」(「肛門上皮」と称される感覚のある扁平上皮と、「粘膜」と称される直腸の感覚のない内壁との結合部)より上の直腸内の痔核組織に弾性バンドを設置することを含み、この位置はほとんど感覚がない。弾性バンドに囲まれた組織は血液の供給が断たれ、退化して剥がれ落ち、剥がれ落ちた組織と弾性バンドは共に排便によって排泄される。そして、より重要なことは、この治癒過程の結果として、周辺組織も治癒することで、痔核組織の脱落が最小限となることである。この組織の治癒は痔の症状の消失に寄与する。
【0004】
弾性バンド結紮技術を利用する多数の装置が市場に存在する。例として、米国特許番号5,203,863(Bidoia)、米国特許番号5,122,149(Broome)、米国特許番号5,158,563(Cosman)および、米国特許番号5,741,273(O’Regan)が挙げられる。米国特許番号5,203,863(Bidoia)、米国特許番号5,122,149(Broome)、米国特許番号No. 5,158,563(Cosman)に開示されている装置は、一般的に、直腸鏡または肛門鏡等の器具と一緒に使用して、結紮する範囲を直接確認するように設計されている。場合によっては、直腸鏡または肛門鏡を支えるための助手を雇う必要がある。しかしながら、一般的に結紮装置よりも直径が大きいこのような観察用器具を用いることによって、患者(より具体的には、痔の症状およびその他の関連する問題を患っている人)に大きな不快感を与え得る。
【0005】
米国特許番号5,741,273(O’Regan)に開示されている装置は、結紮する位置を直接確認することなく使用される痔の治療用弾性バンド結紮装置に関する。したがって、上記装置は、直腸鏡または肛門鏡、あるいは他の種類の観察用器具や観察技術を用いることなく使用され得る。したがって、上記装置は、直腸に挿入して適切な位置に設置することを、視覚化と同時に行うことなく、またはいずれの種類の観察用器具の必要性を伴わずに行うことができるため、この方法で行われる結紮処置は患者の不快感を少なくする。また、この技術は弾性バンドをより基部近くに配置することも可能にする。これによって、技術の効果が高まると共に、不快感が減り、合併症が低減する。上記装置はその内部に組み込まれた吸引装置を有しており、2人目の手術者または吸引器への連結を必要とせずに、痔核組織を穴に引き込んで結紮する。
【0006】
通常、結紮は、S状結腸鏡、肛門鏡、直腸鏡、またはその他の種類の観察用器具等の小型の観察用器具を介して最初に部位を検査し、弾性バンドを設置すべき最適な範囲について覚えておくことによって行われる。その後、観察用器具を外して、直腸内に結紮装置を設置する。これは「ブラインド」すなわち「接触」技術として知られている。
【0007】
他の方法では、肛門鏡で範囲を視覚化し、肛門鏡の内腔を通して弾性バンドを挿入して直接結紮する。この方法は手術者が直接視認する方法を好む場合に行うことができる。これは「肛門鏡経由」すなわち「視認」技術として知られている。
【0008】
装置の先端が、結紮する部位より奥に挿入される。次に、外部管状部材(押し出しスリーブ)の外側表面にある触知可能な「隆起部」が、肛門の境界に位置しているときに、上記装置が静かに引き抜かれる。そして、治療すべき痔核の方向の位置に装置を素早く傾ける。より一般的な患者の場合、治療すべき痔核に向かって装置の「狙いをつける」前に、手術者は、より1〜2cm奥に、肛門を介して、装置を設置するように選択してもよい。
【0009】
しかしながら、従来の装置は、装置が患者に挿入されたとき、装置部品が直線運動および回転運動を行うため、柔らかい組織があると、敏感な組織を挟み込む危険性がある。医師の基本的な目標は、痔核を速やかに処置し、患者への不快感をできるだけ小さくすることである。このため、挟み込みの危険性を低減できるような装置の需要が存在する。本発明は上記の需要を満たすことを追及している。
【0010】
〔発明の簡単な説明〕
本発明は、部品の動きに沿って隙間が増大する、または、部品の動きに関わらず隙間が存在しない、痔核組織を治療するための弾性バンド結紮装置を提供する。第一の状態として、挟み込む領域が増大し、組織が自由に動けるようにすることで、挟み込みを低減する。第二の状態として、隙間が存在しないため、挟み込みが発生する可能性が無い。
【0011】
本発明の装置は、内部管状部材と、内部管状部材内の押子と、内部管状部材内の閉塞具と、外部管状押し出しスリーブとを備え、上記内部管状部材は先端および後端を有し、上記内部管状部材の上記先端上に引き延ばした弾性バンドを保持し、上記先端は開口部を有しており、上記押子は上記内部管状部材の上記先端から離れて延伸するハンドルを有し、上記ハンドルは、上記押子を上記内部管状部材の上記先端から離れるように摺動させて、上記先端の上記開口部を介して上記内部管状部材内に痔核組織を引き入れるための吸引を行い、上記閉塞具は丸みのある端部を有し、上記閉塞具の上記端部と上記内部管状部材の内面は挟み込み防止機構を規定し、上記外部管状押し出しスリーブは、上記内部管状部材に対して限定的な摩擦嵌合をもたらすように形成され、上記引き延ばした弾性バンドに隣接する上記外部管状押し出しスリーブの外端部を有する。
【0012】
挟み込み防止機構の一つの実施形態として、内部管状部材の内壁の直線と、閉塞部の丸みを有する端部の外面の直線とが成す角度は、5°から40°であり、通常45°以下である。
【0013】
挟み込み防止機構の他の実施形態として、閉塞部の端部の表面に接触し、内部管状部材の内面と閉塞部の端部の外面との間に組織が引き込まれるのを防止する、ワイパー封止が規定される。
【0014】
さらなる実施形態として、外部管状押し出しスリーブが、手術者が上記外部押し出しスリーブを上記内部管状部材の上記先端に向かって押し、上記内部管状部材に開口部を介して延びる痔核組織と係合する弾性バンドを、上記内部管状部材の先端から放出させるための、親指用押し出し器具と共に規定される。
【0015】
他の実施形態として、外部管状押し出しスリーブ係止機構は、上記外部管状押し出しスリーブを内部スリーブに係止させ、使用者によって上記外部押し出しスリーブが解放されるまで、外部スリーブと内部管状部材との相対的な動きを防ぎ、それによって弾性バンドが尚早に配置されることを防ぐように、上記外部管状押し出しスリーブに連結された手動で操作されるタブを含んでいる。
【0016】
弾性バンド押し出しスリーブは、理想的には、固くサイジングできる剛性係数を有する、滑らかな素材から製作される。しかしながら、わずかな伸長は、弾性として許容される。
【0017】
上記装置は、通常、弾性バンドを装填する段階で一般の使用者に供給される。つまり、押子(および閉塞具が存在する場合は閉塞具)を引いた状態である。このため、使用者は、弾性バンド装填用の円錐形部材を取り付け、結紮装置の本体上に弾性バンドを押し出し、そして上記弾性バンド装填用の円錐形部材を取り外すことができる。押子は挿入前に完全に押し込まれ、閉塞具の滑らかで丸みのある端部をむき出しにする。上記端部は、肛門直腸内への結紮装置の快適な移動を促す。患者の肛門へ装置を挿入した後、押子は「すぐに組織を引き抜ける」位置に引き戻される。この位置は弾性バンドを装填する段階と同じ位置であり、小さなツメ/リング上を移動した時の押子内のわずかな隆起/感触、および/または結紮装置の端部と並んだ押子上の印または結紮装置上の線または印、および/または正しい位置に到達したことを視覚的または感覚的に知らせる感触/色の変化によって表される。結紮すべき組織の位置が特定され、内部のリングが係合するまで、内部管状部材内に組織を引き抜くために押子が引き戻される。上記装置は、組織を適切に掴むことを確実に行うために、いずれかの方向に90度から180度揺動される。押し出し装置を前方に押し出す、あるいは押し出し装置を固定し、弾性バンドが配置されるまで内部管状部材を引き抜くことによって弾性バンドが配置される。そして、装置全体が引き抜かれる。
【0018】
本明細書で使用される用語「限定的な摩擦嵌合」とは、外部管状押し出しスリーブと内部管状部材とが互いに対して自由に摺動することがなく、この2つの部材が互いに対して移動するには手動による軽い圧力を必要とするように、外部管状押し出しスリーブが内部管状部材に対して十分な摩擦力をかけることを意味する。
【0019】
ある実施形態においては、上記結紮装置はプラスチック製であり、使い捨て可能である。したがって、上記装置は一度使用されると処分されるため、殺菌する必要がない。他の実施形態においては、上記結紮装置は金属製であり、使用する度に殺菌してもよい。
【0020】
本発明の使い捨ての弾性バンド結紮装置は病院で使用されてもよく、通常、いずれの形態の麻酔も患者に投与する必要がない。通常、患者の通院の度に1〜3個の弾性バンドを設置し、特に進行したケースでは、最大で合計6個の弾性バンドが必要とされ得る。
【0021】
他の実施形態においては、本発明の結紮装置は、当該装置の先端への弾性バンドの導入を促進する分離可能な弾性バンド導入器を備えてもよい。ある実施形態においては、弾性バンド導入器は、一般的な円錐形であり、テーパ形状の前部と、内部管状部材の先端と連結可能となるように形成された後部と、前部および後部との間に配置され、内部管状部材の先端の外形に対応する外形を有している中央部とを備えている。弾性バンド導入器は、使用者の指が弾性バンドの下に入って弾性バンドを導入器に付けたり、および/または導入器から外したりすることを可能にする縦に延伸する表面の溝を備えてもよい。使用においては、導入器の後端は内部管状部材の先端に連結され、弾性バンドはテーパ形状の前部上および中央部上を回転して、内部管状部材の先端に移動する。内部管状部材の先端に弾性バンドが設置されると、結紮装置を使用する前に導入器が取り外される。
【0022】
プラスチック製の結紮装置においては、他の特徴として、押子が内部管状部材から引き抜かれるのを防ぐために、内部管状部材の基端部の内側にプラスチック製の固定された保持用リングを使用することが挙げられる。これによって、器具が消毒され再利用される可能性が防止される。使用の度に殺菌することができるステンレス等の金属製の結紮装置の場合は、装置を再利用してもよい。
【0023】
また、プラスチック製の結紮装置に関する更なる特徴として、洗浄すると不透明になる、内側がわずかに粗く処理されたプラスチック、すなわちPlexiglas SL7等の素材を内部管状部材の内側に使用することが挙げられる。これによって、この結紮装置が患者に使用されており、再利用すべきでないという視覚的な指標がもたらされる。
【0024】
本発明の更なる特徴は、痔核組織の治療を必要とする患者の痔核組織の治療方法にある。上記方法は、(a)本発明の弾性バンド結紮装置を準備する工程と、(b)内部管状部材の先端上に少なくとも1つの弾性バンドを付ける工程と、(c)弾性バンドを1つ備えている装置を患者の直腸内に挿入する工程と、(d)痔核組織に対して一直線上になるように、上記装置の端部の開口部を配置して上記装置の位置を調整する工程と、(e)押子を引いて痔核組織の吸引を行い、上記開口部を介して痔核組織を内部管状部材内に引き入れる工程と、(f)外部管状押し出しスリーブを押して、弾性バンドと外部管状押し出しスリーブとを係合させて弾性バンドを痔核組織に促し、押子をこの位置で係止して、より多くの組織が内部管状部材内に移動できるように、係合した結紮装置を固定する工程とを含み、(g)上記外部管状押し出しスリーブを押して、弾性バンドと外部管状押し出しスリーブとを係合させる、または内部管状部材を静かに引き抜きながら、外部管状押し出しスリーブを固定させて、弾性バンドと外部管状押し出しスリーブとを係合させることにより、弾性バンドを痔核組織に促す工程を選択的に含む。
【0025】
本発明のさらなる態様においては、ラテックスアレルギー反応を示す、または示し得る患者の治療において使用される非ラテックス弾性バンドが提供される。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の結紮装置の第1の実施形態の横断面図である。
【0027】
図2Aは、外部押し出しスリーブの係止機構の拡大側面図である。
【0028】
図2Bは、上記装置の端部の断面図であり、閉塞具の端部が上記装置の端部から部分的に突出していることを示している。
【0029】
図3Aは、上記外部押し出しスリーブの斜視図であり、上記係止機構のタブおよび当該係止機構の拡大挿入図を示している。
【0030】
図3Bは、上記外部押し出しスリーブの側面図である。
【0031】
図3Cは、上記外部押し出しスリーブの上面図である。
【0032】
図3Dは、
図3の3D−3D線に沿った上記外部押し出しスリーブの断面図である。
【0033】
図3Eは、上記外部押し出しスリーブの末端部から見た図である。
【0034】
図3Fは、上記外部押し出しスリーブの基端部から見た図である。
【0035】
図4は、内部管状部材の側面図であり、上記内部管状部材の外周にある係止リングを示している。
【0036】
図5Aは、本発明の結紮装置のある実施形態の側面図であり、上記内部管状部材の端部から延伸する閉塞具と、上記内部管状部材の外周の係止リングと係合した上記外部押し出しスリーブの係止機構とを示している(上記装置の末端部に隣接する弾性バンド導入器も示されている)。
【0037】
図5Bは、
図5Aに示す上記装置の末端部から見た図である。
【0038】
図6Aは、表面の突出部および溝を示す弾性バンド導入器の斜視図である。
【0039】
図6Bは、
図6Aの弾性バンド導入器の側面図である。
【0040】
図6Cは、
図6Bの6C−6C線に沿った弾性バンド導入器の断面図である。
【0041】
図7は、上記外部押し出しスリーブの係止機構を示している上記装置の側面図である。
【0042】
図8は、上記装置の内部に部分的に引き込まれた閉塞具を示している上記装置の断面図である。
【0043】
図9は、上記装置の内部に完全に引き込まれた閉塞具を示している上記装置の断面図である。
【0044】
図10は、上記装置の端部から突出している閉塞具を示している上記装置の断面図である。
【0045】
図11は、上記装置の末端部の弾性バンド導入器を示している断面図である。
【0047】
図13および
図14は、異なる形状の閉塞具の端部を示している他の実施形態の側面図である。
【0048】
図15は、
図14の15−15線に沿った断面図である。
【0049】
図16は、
図15の丸で囲んだ部分の断面図である。
【0050】
図17は、
図16の丸で囲んだ部分の断面図である。
【0051】
図18および
図19は、異なる形状の閉塞具の端部を示している他の実施形態の側面図である。
【0052】
図20は、
図19の20−20線に沿った断面図である。
【0053】
図21は、
図20の丸で囲んだ部分の断面図である。
【0054】
図22は、
図21の丸で囲んだ部分の断面図である。
【0055】
〔発明の詳細な説明〕
図を参照すると、
図1は全体的に部材番号2と示される、本発明の結紮装置の第1の実施形態を示している。上記結紮装置は、内面9を有する収束管状部6と、一体的に形成された平らな円筒部8とを有するプラスチック製の内部管状部材4を備えている。収束管状部6は、後端10と先端12とを有し、引き延ばした弾性バンド14を上記収束管状部の先端12上に保持する。
【0056】
図1に示す実施形態においては、内部管状部材4は、後端10から先端12まで連続的に延伸し、患者の直腸への挿入を促すのに十分な長さを有する収束管状形状を有している。
【0057】
押子16は、円筒部8内に摺動可能に配置され、中央軸部18と、軸部18の一方の端部のヘッド20と、軸部18の他方の端部にあるハンドル22とを有しており、内部管状部材4の先端12から離れるように伸展する。ヘッド20は、通常、ゴム製であり、円筒部8の内壁に密閉係合するように形成される。
図1に示す実施形態においては、円筒部8の内壁24に密閉係合するために、ヘッド20に密閉部材23が設置されている。
【0058】
図1に示す実施形態においては、押子16は、内部管状部材の内部に配置される閉塞具26と一体的に形成される。上記閉塞具は丸みのある端部28を備え、上記端部は、
図1に示すように、押子の移動によって、開口部13を介して内部管状部材の端部12を超えて突出してもよく、または
図8および
図9に示すように、内部管状部材の内部に位置してもよい(下記に説明する)。閉塞具の目的は、患者の直腸に挿入された時、結紮装置の進入を促すことである。
【0059】
ハンドル22は、押子16が内部管状部材4の先端12から離れるように摺動することを可能にし、先端12の開口部13を介して内部管状部材4内へ痔核組織を引き込むための吸引をもたらす。開口部13の直径は、内部管状部材4の直径よりわずかに小さくてもよい。他の実施形態においては、円筒部8および内部管状部材4はまとめて結合された別々の部材であってもよい。
【0060】
プラスチック製の外部管状押し出しスリーブ30は、平らな円筒部32、および内部管状部材4の収束部のテーパ形状に対応しているテーパ形状管状部34が提供されている。外部管状押し出しスリーブ30は、内部管状部材4の長さにわたって限定的に摩擦嵌合し、引き延ばした弾性バンド14に隣接する外端部36と、係止装置40を備えた反対端部38とを有している。
【0061】
全体的に部材番号40と示される
図2Aに示す係止機構は、内部管状部材4の外表面に備わる係止リング44と係合可能なタブ42を含んでいる。係止リングは、内部管状部材の外面に対して90度の角度で伸びている当接面48を有している。タブ42は、タブ42から90度の角度で突出し、当接面48に当接している突起部46を備えており、それによって外部押し出しスリーブが装置先端へ移動することが防止される。タブ42を内部管状部材4から押し離すと、突起部46が当接面48との当接関係から外れ、これによって、外部押し出しスリーブが内部管状部材4に対して装置先端に向かって移動可能になる。その結果、外部押し出しスリーブが、装置の先端から弾性バンドを押し外して痔核組織に付けることが可能となる。係止機構40は、外部押し出しスリーブの装置先端への移動によって起こる弾性バンドの意図しない配置が、外部押し出しスリーブが使用者によって解放されるまで確実に起こらないようにする。
【0062】
弾性バンド押し出し器具が動かないように係止された状態で一般使用者に装置が供給される。使用者は、通常通り、装填用円錐形部材を取り付け、弾性バンドを装填し、潤滑する。装置を挿入して組織の位置を特定する。係止リングが係合するまで押子を引き、揺動させて部材の噛み合いが正しいかどうか確認する(係止要素は結紮装置本体に対する弾性バンド押し出し器具の自由な揺動は防止しない)。弾性バンド押し出し器具の親指用の縁に対してわずかに圧力が掛けられ、親指用の縁の角度によって、係合/係止した歯が解放され得る。弾性バンド押し出し器具が前方に進むことで、弾性バンドが解放されて配置される。弾性バンド押し出し器具は、(汚れた器具が離れないようにするために)引き戻して、係止機構に再び係合させることができる。押子が前方に押し進むことで部材が解放され、そして装置が取り外される。
【0063】
最終的な係合量を決定する必要があるが、係合時の静荷重は、2ポンドが望ましい。係合を解放する親指用の縁の最終的な角度を決定する必要がある。カチッという音が係合を確認するうえで望ましいが、開放は無音に近いことが好ましい。
【0064】
図2Bは内部管状部材端4の末端部の断面図を示しており、閉塞具の端部28が開口部13から部分的に突出している。端部28の外面11は閉塞具の末端の先端に向かって収束し、閉塞具の端部28の外面11と内部管状部材4の内面9との間に5〜25度の角度を形成する。この特徴は、閉塞具26が内部管状部材に対して動いた時(特に、閉塞具が内部管状部材4に引き込まれた時)の組織の挟み込みを低減させることに寄与する。この挟み込み防止の特徴は、構成要素が一緒に動いた時に隙間を増やすことを可能にし、あるいは構成要素が一緒に動いた時に隙間を無くすことを可能とする。それによって、閉塞具の端部が内部管状部材4から現れた時、または閉塞具の端部が内部管状部材4内に引き込まれた時に組織が挟み込まれるリスクが最小化される。例示した構成においては、挟み込み領域が増えて、部材が自由に離れることができることで挟み込みが減少する。
図2Bに示すように、端部28の外面と内部管状部材の内面との角度は、通常、5〜25度(例えば5〜10度)の範囲であり、および通常、約30度以下である。
【0065】
図3Aはタブ42と突起部46とを示している。タブ42を内部管状部材から外すために必要な力を調整できるようにするために切り取り部47´および47´´が備わっている。切り取り部を有さない構成において力が最高となり、切り取り部が深く広くなるにつれ力が減少する。
【0066】
図3Bは、外部押し出しスリーブ30の側面図であり、
図3Cは外部押し出しスリーブ30の上面図である。
図3Dは
図3Cの3D−3D線に沿った外部押し出しスリーブ30の断面図であり、
図3Eは外部押し出しスリーブ30の末端部から見た図である。
図3Fは外部押し出しスリーブ30の基端部から見た図である。
【0067】
図4はその外周に係止リング44が配置された内部管状部材4を示している。係止リングの形状は
図2Aに大きく詳細に示されている。
【0068】
図5Aは、外部管状押し出しスリーブ30の外周部に配置された外周リングマーカー50を示している。これは、患者の直腸への装置の挿入の度合いに関する使用者への深さの指標となる。また、
図5Aは内部管状部材の端部から突出している閉塞具26も示している。
図5Bは、
図5Aに示す装置の末端部から見た図である。
【0069】
図6A〜6Cは弾性バンド導入器60を示している。
図6Aは表面の突出部61と溝63とを示す弾性バンド導入器60の斜視図である。
図6Bは
図6Aの弾性バンド導入器の側面図であり、
図6Cは
図6Bの6C−6C線に沿った弾性バンド導入器の断面図である。導入器60のテーパ形状表面65は、内部管状部材4に向かって弾性バンドを押し出す前に、導入器の平面域67に向かって弾性バンドを回転移動させることによって、導入器への弾性バンドの装填を促進させる。
【0070】
図7は係止機構40と、切り取り部47´および47´´とを示す装置の側面図を示している。
図7に示す実施形態においては、係止機構40は内部管状部材4の係止リング44と係合している。
【0071】
図8は、内部管状部材4内に部分的に引き込まれた閉塞具26を示す装置の断面図であり、
図9は内部管状部材4内に完全に引き込まれた閉塞具26を示す装置の断面図である。
図10は内部管状部材4の端部から突出している閉塞具26を示す装置の断面図である。
【0072】
図11は内部管状部材4の末端部にある弾性バンド導入器60の断面図であり、ここでは内部管状部材4の端部が導入器60の隙間69内に収容されている。このようにして、平面域67に装填された弾性バンド14が、外部管状押し出しスリーブ30の末端部の下流である内部管状部材の外面に回転移動する。
【0073】
図12は本発明の装置に用いられる一体化した押子16と閉塞具26の側面図である。前述したように、押子と閉塞具は別々の部材であってもよく、または
図12に示すように1つの部品として一体的に形成されてもよい。丸みのある端部28は患者の直腸への結紮装置のより快適な進入を促す。
【0074】
図13および14は異なる形状の閉塞具26の端部を示す他の実施形態の側面図である。この実施形態においては、閉塞具の末端部は、先端に向かって縮小する直径の領域26´を有しており、これによって患者の直腸への装置の進入をさらに促進し、痔核組織に弾性バンドを配置した後、閉塞具を装置内に引き入れた時の組織の挟み込みの発生率を減少させる。
【0075】
図15は
図14の15−15線に沿った断面図である。
図16は閉塞具の先端に向かって縮小する直径の領域26´をより詳細に示している、
図15の丸で囲まれた部分の断面図である。
【0076】
図17は他の実施形態を示す、
図16の丸で囲まれた部分の断面図であり、ここでは薄いプラスチック材料が好適である可撓性のある挟み込み防止ワイパー部材70が内部管状部材4の端部に連結され、または内部管状部材4の端部と一体的に形成される。可撓性のある挟み込み防止部材70は、閉塞具の端部の外面に当接し、閉塞具の端部の外面と内部管状部材4の内面との間に組織が閉じ込められたり、挟み込まれたりするのを防ぐように配置される。
【0077】
図18および19は異なる形状の閉塞具の端部を示す他の実施形態の側面図である。この実施形態においては、端部72は閉塞具の先端76において丸みを有する平行な壁面74を有し、これによって組織の挟み込みの発生率が減少する。
【0078】
図20は
図19の20−20線に沿った断面図である。
図21は閉塞具の先端72が構成された領域をより詳細に示す、
図20の丸で囲まれた部分の断面図である。
【0079】
図22は更に他の実施形態を示す、
図21の丸で囲まれた部分の断面図であり、ここでは薄いプラスチック材料が好適である可撓性のある挟み込み防止ワイパー部材80が内部管状部材4の端部に連結され、または内部管状部材4の端部と一体的に形成される。可撓性のある挟み込み防止部材80は、閉塞具の端部72の外面に当接し、閉塞具の端部72の外面と内部管状部材4の内面との間に組織が閉じ込められたり、挟み込まれたりするのを防ぐように配置される。
【0080】
本発明は、現在のところ最も実用的かつ好ましいと考えられる実施形態と関連して説明されており、本発明は開示された実施形態に限定されるべきではないばかりか、むしろ添付の請求項の趣旨および範囲に含まれる様々な変形および同等の形態を包含することを意図していると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】本発明の結紮装置の第1の実施形態の横断面図である。
【
図2A】外部押し出しスリーブの係止機構の拡大側面図である。
【
図2B】上記装置の端部の断面図であり、閉塞具の端部が上記装置の端部から部分的に突出していることを示している。
【
図3A】上記外部押し出しスリーブの斜視図であり、上記係止機構のタブおよび当該係止機構の拡大挿入図を示している。
【
図3B】上記外部押し出しスリーブの側面図である。
【
図3C】上記外部押し出しスリーブの上面図である。
【
図3D】
図3の3D−3D線に沿った上記外部押し出しスリーブの断面図である。
【
図3E】上記外部押し出しスリーブの末端部から見た図である。
【
図3F】上記外部押し出しスリーブの基端部から見た図である。
【
図4】内部管状部材の側面図であり、上記内部管状部材の外周にある係止リングを示している。
【
図5A】本発明の結紮装置のある実施形態の側面図であり、上記内部管状部材の端部から延伸する閉塞具と、上記内部管状部材の外周の係止リングと係合した上記外部押し出しスリーブの係止機構とを示している(上記装置の末端部に隣接する弾性バンド導入器も示されている)。
【
図6A】表面の突出部および溝を示す弾性バンド導入器の斜視図である。
【
図6C】
図6Bの6C−6C線に沿った弾性バンド導入器の断面図である。
【
図7】上記外部押し出しスリーブの係止機構を示している上記装置の側面図である。
【
図8】上記装置の内部に部分的に引き込まれた閉塞具を示している上記装置の断面図である。
【
図9】上記装置の内部に完全に引き込まれた閉塞具を示している上記装置の断面図である。
【
図10】上記装置の端部から突出している閉塞具を示している上記装置の断面図である。
【
図11】上記装置の末端部の弾性バンド導入器を示している断面図である。
【
図13-14】異なる形状の閉塞具の端部を示している他の実施形態の側面図である。
【
図18-19】異なる形状の閉塞具の端部を示している他の実施形態の側面図である。