特許第6255119号(P6255119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧
特許6255119リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用
<>
  • 特許6255119-リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用 図000002
  • 特許6255119-リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用 図000003
  • 特許6255119-リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用 図000004
  • 特許6255119-リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用 図000005
  • 特許6255119-リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6255119
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/42 20060101AFI20171218BHJP
   C12P 19/14 20060101ALI20171218BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C12N9/42
   C12P19/14 A
   C12M1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-3345(P2017-3345)
(22)【出願日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年1月23日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】古賀 吏
(72)【発明者】
【氏名】木内 崇文
(72)【発明者】
【氏名】小川 健一
(72)【発明者】
【氏名】若村 修
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−265089(JP,A)
【文献】 特開平05−317073(JP,A)
【文献】 特開平07−184678(JP,A)
【文献】 特開平05−227958(JP,A)
【文献】 特開平05−115293(JP,A)
【文献】 特開昭63−226294(JP,A)
【文献】 特許第5976185(JP,B2)
【文献】 日本農芸化学会要旨集,2013年02月25日,講演番号4C11a06
【文献】 Fungal Genet. Biol., 2012, Vol. 49, pp. 388-397
【文献】 日経バイオテクONLINE;BTJ/GreenInnovationメール、2011年08月11日、[2017年02月16日検索]、インターネット<https://bio.nikkeibp.co.jp/article/bc/0010/0196/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/42
C12M 1/00
C12P 19/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法であって、
第1の糖化酵素又は第1の糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記第1の糖化酵素又は前記第1の糖化酵素生産菌由来の第1の糖化酵素に含まれるBGLを前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるリグニンに吸着させて沈殿させ、一方、前記第1の糖化酵素又は前記第1の糖化酵素生産菌由来の第1の糖化酵素に含まれるエンドグルカナーゼ及びセロビオハイドロラーゼを前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースに特異的に吸着させ、前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼが前記セルロースを分解することで、前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを培養上清中に可溶化させ、前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを含有する培養上清を回収する回収工程と、
前記培養上清と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースを加水分解させてセロビオースを生産させるセロビオース生産工程と、
前記セロビオース生産工程で得られた前記セロビオースを含む糖化液と、第2の糖化酵素生産菌とを混合して培養し、前記第2の糖化酵素生産菌に第2の糖化酵素を生産させる糖化酵素生産工程と、
を備え、前記回収工程と前記セロビオース生産工程と前記糖化酵素生産工程とはそれぞれ独立した、異なる反応工程であり、
前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌はそれぞれ少なくともセルラーゼの活性を持つ前記第1の糖化酵素及び前記第2の糖化酵素を生産する菌であり、
前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌は同じ菌種であってもよく、異なる菌種であってもよく、
前記セルラーゼはBGL、エンドグルカナーゼ、及びセロビオハイドロラーゼの活性を有する酵素混合物であることを特徴する製造方法。
【請求項2】
リグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するための方法であって、
請求項に記載の製造方法を用いて、前記第2の糖化酵素を製造した後、前記第2の糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、糖化する糖化工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するための方法であって、
請求項に記載の製造方法を用いて、糖化液を製造した後、前記糖化液と微生物とを混合し、発酵する発酵工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造装置であって、
第1の糖化酵素又は第1の糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含み、前記第1の糖化酵素又は前記第1の糖化酵素生産菌由来の第1の糖化酵素のうちエンドグルカナーゼ及びセロビオハイドロラーゼを含有する培養上清を回収するための回収槽と、
前記回収槽で得られた前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを含有する培養上清と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含むセロビオース生産槽と、
前記セロビオース生産槽で得られたセロビオースを含む糖化液と第2の糖化酵素生産菌とを含む糖化酵素生産槽と、
前記回収槽で得られた前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを含有する培養上清を前記セロビオース生産槽に送液するための配管と、を備え、
前記回収槽と前記セロビオース生産槽と前記糖化酵素生産槽とはそれぞれ独立して、異なる反応槽であり、
前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌はそれぞれ少なくともセルラーゼの活性を持つ前記第1の糖化酵素及び前記第2の糖化酵素を生産する菌であり、
前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌は同じ菌種であってもよく、異なる菌種であってもよく、
前記セルラーゼはBGL、エンドグルカナーゼ、及びセロビオハイドロラーゼの活性を有する酵素混合物であることを特徴とする製造装置。
【請求項5】
リグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するための装置であって、
請求項に記載の製造装置と、
前記製造装置で得られた第2の糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含む糖化装置と、
を備えることを特徴とする製造装置。
【請求項6】
リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するための装置であって、
請求項に記載の製造装置と、
前記製造装置で得られた糖化液と微生物とを含む発酵槽と、
を備えることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法及び製造装置、リグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するための方法及び装置、並びにリグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効活用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。一般に、バイオマスからエタノール等の化合物を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質やトウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。しかしながら、これらの原料はもともと食料又は飼料として用いられており、長期的に工業用利用資源として活用することは、食料又は飼料用途との競合を引き起こし、原料価格の高騰を招く危険性がある。
【0003】
従って、非食用バイオマスをエネルギー資源として活用する技術開発が進められている。非食用バイオマスとしては、地球上に最も多く存在するセルロースがあげられるが、その大部分は芳香族ポリマーのリグニンやヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロースとして存在する。
【0004】
リグノセルロースを利用したエネルギー生産において、糖化酵素の費用はかなりの割合を占めている。そのため、糖化酵素のオンサイト生産により、糖化酵素の費用を低減することが試みられている。糖化酵素をオンサイト生産する方法として、例えば、糖化酵素生産菌を培養し、糖化酵素を得る方法等が挙げられる。糖化酵素生産菌を用いた糖化酵素の生産を高効率で行うためには、通常、高価な誘導物質であるセロビオースを必要とする。
セロビオースを必要としない糖化酵素生産菌もごくわずかに存在するが、希少であり、さらに生産される糖化酵素の比活性が低い。また、セロビオースを必要としない糖化酵素生産菌を遺伝子組換え等で新たに作り出すことも考えられるが、技術的に難しいため、現実的ではない。
【0005】
セロビオースを製造する方法としては、例えば、グルコースに耐熱性β−グルコシダーゼを添加し、加熱することで縮合反応により、セロビオース等の二糖類を製造する方法(例えば、特許文献1参照。)等が挙げられる。
【0006】
また、その他のセロビオースを製造する方法としては、例えば、セルラーゼ構成酵素(例えば、エンドグルカナーゼ(EG)、セロビオハイドロラーゼ(CBH)、及びβ−グルコシダーゼ(BGL)等)におけるセルロースへの吸着力の差を利用して、セルロースの吸着がほとんどないBGLを除去した後、酵素反応を行わせてセロビオースを得る方法(例えば、特許文献2参照。)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−227032号公報
【特許文献2】特開昭63−226294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法では、縮合反応を行わせるために、高濃度のグルコースが必要となり、コスト高になるという問題がある。
また、特許文献2に記載の方法では、原料として単体のセルロースが必要となり、コスト高になるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、安価にセロビオースが得られ、高効率な糖化酵素の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
]リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法であって、第1の糖化酵素又は第1の糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記第1の糖化酵素又は前記第1の糖化酵素生産菌由来の第1の糖化酵素に含まれるBGLを前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるリグニンに吸着させて沈殿させ、一方、前記第1の糖化酵素又は前記第1の糖化酵素生産菌由来の第1の糖化酵素に含まれるエンドグルカナーゼ及びセロビオハイドロラーゼを前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースに特異的に吸着させ、前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼが前記セルロースを分解することで、前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを培養上清中に可溶化させ、前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを含有する培養上清を回収する回収工程と、前記培養上清と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースを加水分解させてセロビオースを生産させるセロビオース生産工程と、前記セロビオース生産工程で得られた前記セロビオースを含む糖化液と、第2の糖化酵素生産菌とを混合して培養し、前記第2の糖化酵素生産菌に第2の糖化酵素を生産させる糖化酵素生産工程と、を備え、前記回収工程と前記セロビオース生産工程と前記糖化酵素生産工程とはそれぞれ独立した、異なる反応工程であり、前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌はそれぞれ少なくともセルラーゼの活性を持つ前記第1の糖化酵素及び前記第2の糖化酵素を生産する菌であり、前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌は同じ菌種であってもよく、異なる菌種であってもよく、前記セルラーゼはBGL、エンドグルカナーゼ、及びセロビオハイドロラーゼの活性を有する酵素混合物であることを特徴する製造方法。
]リグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するための方法であって、[1]記載の製造方法を用いて、前記第2の糖化酵素を製造した後、前記第2の糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、糖化する糖化工程を備えることを特徴とする製造方法。
]リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するための方法であって、[]に記載の製造方法を用いて、糖化液を製造した後、前記糖化液と微生物とを混合し、発酵する発酵工程を備えることを特徴とする製造方法。
【0011】
]リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造装置であって、第1の糖化酵素又は第1の糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含み、前記第1の糖化酵素又は前記第1の糖化酵素生産菌由来の第1の糖化酵素のうちエンドグルカナーゼ及びセロビオハイドロラーゼを含有する培養上清を回収するための回収槽と、前記回収槽で得られた前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを含有する培養上清と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含むセロビオース生産槽と、前記セロビオース生産槽で得られたセロビオースを含む糖化液と第2の糖化酵素生産菌とを含む糖化酵素生産槽と、前記回収槽で得られた前記エンドグルカナーゼ及び前記セロビオハイドロラーゼを含有する培養上清を前記セロビオース生産槽に送液するための配管と、を備え、前記回収槽と前記セロビオース生産槽と前記糖化酵素生産槽とはそれぞれ独立して、異なる反応槽であり、前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌はそれぞれ少なくともセルラーゼの活性を持つ前記第1の糖化酵素及び前記第2の糖化酵素を生産する菌であり、前記第1の糖化酵素生産菌及び前記第2の糖化酵素生産菌は同じ菌種であってもよく、異なる菌種であってもよく、前記セルラーゼはBGL、エンドグルカナーゼ、及びセロビオハイドロラーゼの活性を有する酵素混合物であることを特徴とする製造装置。
]リグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するための装置であって、[]に記載の製造装置と、前記製造装置で得られた第2の糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含む糖化装置と、を備えることを特徴とする製造装置。
]リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するための装置であって、[]に記載の製造装置と、前記製造装置で得られた糖化液と微生物とを含む発酵槽と、を備えることを特徴とする製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価にセロビオースが得られ、高効率な糖化酵素の製造方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の糖化酵素の製造装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。
図2】本発明の糖化酵素の製造装置の他の実施形態を模式的に示す概略構成図である。
図3】本発明の糖化液の製造装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。
図4】本発明のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。
図5】実施例1におけるトルコデルマ・レッセイ(Trichoderma reesei)PC−3−7株由来の糖化酵素を用いて前処理済みリグノセルロース系バイオマスを基質とした糖化反応での培養時間とグルコース及びセロビオースの生産量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「リグノセルロース系バイオマス」としては、主に、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンを含有するものであり、例えば針葉樹、広葉樹、建築廃材、林地残材、剪定廃材、稲藁、籾殻、麦藁、木材チップ、木材繊維、化学パルプ、古紙、合板等の農林産物資源、サトウキビバガス、サトウキビ茎葉、コーンストーバー等の農林産物廃棄物、農林産物加工品及び大型藻類、微細藻類等の植物組織等が挙げられ、これらに限定されない。これらのリグノセルロース系バイオマスは単独であってもよく、混合物であってもよい。
【0015】
本明細書において、「ヘミセルロース」には、キシロースなどの5つの炭素を構成単位とする五炭糖とよばれるものやマンノース、アラビノース、ガラクツロン酸などの6つの炭素を構成単位とする六炭糖とよばれるもの、さらにグルコマンナンやグルクロノキシランなどのような複合多糖等が含まれる。よって、ヘミセルロースは加水分解を受けると、炭素5つからなる五炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された五炭糖のオリゴ糖、炭素6つからなる六炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖、五炭糖の単糖と六炭糖の単糖が複数個連結されたオリゴ糖を生ずる。
「セルロース」には、6つの炭素を構成単位とする六炭糖が含まれる。よって、セルロースは加水分解を受けると、炭素6つからなる六炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖を生ずる。
一般に、ヘミセルロース又はセルロースから生ずる単糖又はオリゴ糖の構成比率や生成量は、前処理方法や原料として用いた農林産物資源、農林産物廃棄物、農林産物加工品及び大型藻類、微細藻類等の植物組織等の種類によって異なる。
【0016】
本明細書において、「前処理済みリグノセルロース系バイオマス」とは、糖化反応を効率的に行うために事前処理を行ったリグノセルロース系バイオマスを意味する。前処理方法としては、例えば、蒸気のみでの蒸煮法、イオン液体を用いる方法、ミルを用いる粉砕法などが挙げられる。また、前処理において、必要に応じて、適宜酸又はアルカリを混合させてもよい。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の中から選ばれ、これらを単独で又は組み合わせて用いてもよい。中でも工業利用には安価で手に入りやすい硫酸が特に好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの中から選ばれ、これらを単独で又は組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本明細書において、「リグノセルロース系バイオマス由来化合物」とは、リグノセルロース系バイオマスを分解して得られた単糖及びオリゴ糖を、微生物が摂取することにより生成された化合物を意味する。例えば、エタノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール等のアルコール、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、乳酸等の有機酸、イノシン、グアノシン等のヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド、カダベリン等のジアミン化合物等が挙げられる。微生物から生成された化合物が乳酸等のモノマーである場合は、重合によりポリマーに変換することもある。
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0019】
<<糖化酵素の製造方法>>
一実施形態において、本発明は、リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法であって、低β−グルコシダーゼ(BGL)糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースを加水分解させてセロビオースを生産させるセロビオース生産工程と、前記セロビオース生産工程で得られた前記セロビオースを含む糖化液と、糖化酵素生産菌とを混合して培養し、前記糖化酵素生産菌に糖化酵素を生産させる糖化酵素生産工程と、を備える製造方法を提供する。
【0020】
本実施形態の製造方法によれば、安価にセロビオースが得られ、高効率で糖化酵素を製造することができる。
【0021】
[セロビオース生産工程]
本実施形態の製造方法において、まず、低β−グルコシダーゼ(BGL)糖化酵素と、前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースを加水分解させてセロビオースを生産させる。
【0022】
セロビオース生産工程における温度としては、例えば40℃以上70℃以下であればよい。また、セロビオース生産工程における時間としては、例えば2時間以上120時間以下であればよい。また、セロビオース生産工程におけるpHとしては、例えばpH4以上7以下であればよい。また、セロビオース生産工程において、適当なpH及びセロビオースの生産に適した前処理済みリグノセルロース系バイオマスの固形分濃度となるように、適宜工業用水及びpH調整剤(酸、又はアルカリ)等を用いて調整すればよい。
【0023】
本明細書において、「糖化酵素」とは、リグノセルロース系バイオマスを単糖又はオリゴ糖単位に分解する酵素を意味し、リグノセルロース系バイオマスを単糖又はオリゴ糖にまで分解するものであればよく、主に、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの各活性を持つものであればよい。
セルラーゼは、セルロースをグルコース等の単糖又はオリゴ糖に分解するものであればよく、エンドグルカナーゼ(endoglucanase;EG)、セロビオハイドロラーゼ(cellobiohydrolase;CBH)、及びβ−グルコシダーゼ(β−glucosidase;BGL)の各活性の少なくとも1つの活性を有するものを挙げることができ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
同じくヘミセルラーゼは、ヘミセルロースをキシロース等の単糖又はオリゴ糖に分解するものであればよく、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、及びアラビノフラノシダーゼの各活性の少なくとも1つの活性を有するものを挙げることができ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
これらセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等の糖化酵素の由来は限定されることはなく、例えば、トリコデルマ(Tricoderma)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アエロモナス(Aeromonus)属、イルペックス(Irpex)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、フミコーラ(Humicola)属等の糸状菌、担子菌、細菌類等の糖化酵素生産菌由来のセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等の糖化酵素を用いることができる。
【0024】
本明細書において、「低β−グルコシダーゼ(BGL)糖化酵素」とは、β−グルコシダーゼの活性が従来の糖化酵素に含まれるBGLよりも低く、当該糖化酵素を用いた糖化反応において、グルコースが全く生産されない、又はグルコースが少量生産されるが、エンドグルカナーゼ(EG)、及びセロビオハイドロラーゼ(CBH)の活性が高いため、充分量のセロビオースが生産されるものを意味する。
上記のとおり、セルラーゼは、EG、CBH、及びBGLから構成される酵素混合物である。EGは、セルロースの非結晶領域を分子内部から切断する酵素であり、CBHは、セルロースの還元末端と非還元末端のいずれかから分解し、グルコースが2分子結合した二糖であるセロビオースを遊離させる酵素であり、BGLは、糖のβ−グリコシド結合の加水分解反応を触媒する酵素であって、セロビオースを分解し、単糖であるグルコースを遊離させる酵素である。よって、糖化酵素に含まれるBGLの活性が低いことにより、前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースを基質とした、糖化酵素中のセルラーゼによる糖化反応において、BGLによりセロビオースが単糖であるグルコースに分解されることなく、セロビオースを高効率で生産することができる。
低BGL糖化酵素に含まれるFPUあたりのBGLの活性(U/FPU)は、従来の糖化酵素に含まれるFPUあたりのBGLの活性(U/FPU)に対し、例えば、1/30倍以下であればよい。
低BGL糖化酵素に含まれるBGLの活性が、従来の糖化酵素に含まれるBGLの活性に対し、上記値の範囲であることにより、BGLによりセロビオースがグルコースに分解されることなく、セロビオースを高効率で生産することができる。
また、低BGL糖化酵素はセルラーゼの活性のみを持つものであってもよく、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの各活性を持つものであってもよい。中でも、本実施形態における低BGL糖化酵素は、セロビオースの生産に必要とされる糖化酵素はセルラーゼであるため、セルラーゼの活性のみを持つものであることが好ましい。
【0025】
セロビオース生産工程において生産されたセロビオースを含む糖化液を、続く糖化酵素生産工程において用いればよい。また、セロビオース生産工程の後に残った前処理済みリグノセルロース系バイオマス由来の固形分を多く含む残渣を、後述の<<糖化液の製造方法>>の[糖化工程]において、前処理済みリグノセルロース系バイオマス及び糖化酵素に混合させて用いてもよい。これにより、セロビオース生産工程における廃棄物が生じず、環境負荷を低減することができる。
【0026】
[低BGL糖化酵素生産工程]
(第一実施形態)
本実施形態の製造方法は、低BGL糖化酵素を得るために、さらに、前記セロビオース生産工程の前に、低BGL糖化酵素生産工程を備えていてもよい。
前記低BGL糖化酵素生産工程としては、例えば、BGLの活性が低い糖化酵素を生産する菌(以下、「低BGL糖化酵素生産菌」と称する場合がある。)を培養して、低BGL糖化酵素を得る方法等が挙げられる。
【0027】
本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程における培養温度としては、例えば、20℃以上35℃以下であればよい。また、本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程における培養時間としては、例えば4日以上10日以下であればよい。
また、本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程における培養方法としては、例えば、振とう培養、撹拌培養、撹拌振とう培養、静置培養、連続培養等が挙げられ、これらに限定されない。
【0028】
また、本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程に用いられる培地としては、低BGL糖化酵素生産菌の生存増殖に必要な成分(糖源、窒素源)等を含む培地であればよく、低BGL糖化酵素生産菌の種類により適宜選択することができる。
前記糖源としては、特別な限定はないが、新たな原料を必要としないことから、前処理済みリグノセルロース系バイオマスを用いることが好ましい。
また、前記窒素源としては、例えば、ポリペプトン、硫酸アンモニウム、肉汁、コーンスティープリカー(CSL)、大豆かす等が挙げられ、これらに限定されない。また、例えば、アンモニアを用いてリグノセルロース系バイオマスを前処理し、前処理済みリグノセルロース系バイオマスを得た場合には、当該アンモニアが窒素源となりうる。
その他、培地には目的とする低BGL糖化酵素を生産する上で必要とされる成分を添加することができる。
【0029】
前記低BGL糖化酵素生産菌としては、上述の[セロビオース生産工程]において糖化酵素生産菌として例示されたものと同様のもののうち、BGL遺伝子が破壊、又はBGL遺伝子の発現が低減されており、低BGL糖化酵素を生産可能なものであればよい。中でも、トリコデルマ(Trichoderma)属に属する糸状菌であることが好ましい。
トリコデルマ(Trichoderma)属に属する糸状菌としては、例えば、Trichoderma aggressivum、Trichoderma atroviride、Trichoderma asperellum、Trichoderma aureoviride、Trichoderma austrokoningii、Trichoderma brevicompactum、Trichoderma candidum、Trichoderma caribbaeum var.aequatoriale、Trichoderma caribbaeum var.Caribbaeum、Trichoderma catoptron、Trichoderma cremeum、Trichoderma ceramicum、Trichoderma cerinum、Trichoderma chlorosporum、Trichoderma chromospermum、Trichoderma cinnamomeum、Trichoderma citrinoviride、Trichoderma crassum、Trichoderma cremeum、Trichoderma dingleyeae、Trichoderma dorotheae、Trichoderma effusum、Trichoderma erinaceum、Trichoderma estonicum、Trichoderma fertile、Trichoderma gelatinosus、Trichoderma ghanense、Trichoderma hamatum、Trichoderma harzianum、Trichoderma helicum、Trichoderma intricatum、Trichoderma konilangbra、Trichoderma koningii、Trichoderma koningiposis、Trichoderma longibrachiatum、Trichoderma longipile、Trichoderma minutisporum、Trichoderma oblongisporum、Trichoderma ovalisporum、Trichoderma petersenii、Trichoderma phyllostahydis、Trichoderma piluliferum、Trichoderma pleuroticola、Trichoderma pleurotum、Trichoderma polysporum、Trichoderma pseudokoningii、Trichoderma pubescens、Trichoderma reesei、Trichoderma rogersonii、Trichoderma rossicum、Trichoderma saturnisporum、Trichoderma sinensis、Trichoderma sinuosum、Trichoderma sp.MA 3642、Trichoderma sp.PPRI 3559、Trichoderma spirale、Trichoderma stramineum、Trichoderma strigosum、Trichoderma stromaticum、Trichoderma surrotundum、Trichoderma taiwanense、Trichoderma thailandcum、Trichoderma thelephorucolum、Trichoderma theobromicola、Trichoderma tomentosum、Trichoderma、Trichoderma、Trichoderma、Trichoderma velutinum、Trichoderma virens、Trichoderma virideおよびTrichoderma viridescens等が挙げられ、これに限定されない。
中でも、セルラーゼの分泌生産能の観点から、トリコデルマ・レッセイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)、又はトリコデルマ・ロンジブラチアタム(Trichoderma longibrachiatum)が好ましく、トリコデルマ・レッセイがより好ましい。
トリコデルマ・レッセイとして、BGL遺伝子が破壊、又はBGL遺伝子の発現が低減された株としては、例えば、トコデルマ・レッセイPC−3−7株等が挙げられ、これに限定されない。
【0030】
低BGL糖化酵素生産菌を培養した培養上清には低BGL糖化酵素が含まれるため、前記培養上清をそのまま使用してもよく、又は、前記培養上清を、例えば、遠心分離、フィルターろ過等により低BGL糖化酵素を分離及び精製して使用してもよい。
【0031】
(第二実施形態)
また、前記低BGL糖化酵素生産工程において、他の実施形態としては、例えば、糖化酵素又は糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、前記糖化酵素又は前記糖化酵素生産菌由来の糖化酵素に含まれるBGLを前記前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるリグニンに吸着させることで、低BGL糖化酵素を生産させる方法等が挙げられる。
一般的に、糖化反応において、リグニンに糖化酵素が非特異的に吸着する現象がしばしば起きる。また、セルラーゼのうち、EG及びCBHは、セルロース結合モジュール(cellulose binding module;CBM)を有し、基質であるセルロースに特異的に吸着する。一方、BGLはCBMを有しないため、リグニンへの非特異的吸着のみである。よって、前記糖化酵素に含まれるBGLを固体であるリグニンへ非特異的吸着させることにより沈殿させ、セルロースに特異的に吸着した状態のEG及びCBH等のBGL以外の糖化酵素は培養上清中に可溶化しているため、前記培養上清を回収することで、低BGL糖化酵素を生産することができる。
また、BGLはリグニンに吸着した状態であっても、活性部位が残っており、液中のセロビオースに対して糖化能力が維持されている。よって、本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程の後に残ったBGLが吸着した状態のリグニンを含む残渣を、後述の<<糖化液の製造方法>>の[糖化工程]において、前処理済みリグノセルロース系バイオマス及び糖化酵素に混合させて用いてもよい。これにより、低BGL糖化酵素生産工程における廃棄物が生じず、環境負荷を低減することができる。
【0032】
本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程における温度、時間、及びpHは、上述の[セロビオース生産工程]において例示されたものと同様である。
【0033】
本実施形態における糖化酵素としては、セルラーゼの活性のみを持つものであってもよく、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの各活性を持つものであってもよい。中でも、本実施形態における糖化酵素は、続くセロビオース生産工程において必要とされる糖化酵素はセルラーゼであるため、セルラーゼの活性のみを持つものであることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態における糖化酵素生産菌としては、上述の[セロビオース生産工程]において糖化酵素生産菌として例示されたものと同様のものが挙げられる。また、前記糖化酵素生産菌において、生産される糖化酵素は、セルラーゼの活性のみを持つものであってもよく、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの各活性を持つものであってもよい。中でも、続くセロビオース生産工程において必要とされる糖化酵素はセルラーゼであるため、本実施形態における糖化酵素生産菌としては、セルラーゼ生産菌であることが好ましい。
【0035】
(その他の実施形態)
また、前記低BGL糖化酵素生産工程において、さらに他の実施形態としては、例えば、糖化酵素又は糖化酵素生産菌由来の糖化酵素とBGL阻害剤とを混合し、前記糖化酵素又は前記糖化酵素生産菌由来の糖化酵素に含まれるBGLの活性を低減させることで、低BGL糖化酵素を生産させる方法等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の低BGL糖化酵素生産工程における温度、時間、及びpHは、上述の[セロビオース生産工程]において例示されたものと同様である。
【0037】
BGL阻害剤としては、例えば、BGLに結合し活性を低減させることで阻害するもの等が挙げられる。BGLに結合し活性を低減させることで阻害するものとしては、例えば、δ−グルコノラクトン、グルコン酸、カスタノスペルミン、コンズリトールB、コンズリトールBエポキシド等が挙げられ、これらに限定されない。
【0038】
[糖化酵素生産工程]
続いて、前記セロビオース生産工程で得られた前記セロビオースを含む糖化液と、糖化酵素生産菌とを混合して培養し、前記糖化酵素生産菌に糖化酵素を生産させる。
【0039】
糖化酵素生産工程における温度及び時間は、上述の[低BGL糖化酵素生産工程]の(第一実施形態)において例示されたものと同様である。また、糖化酵素生産工程において、前記セロビオース生産工程で得られた前記セロビオースを含む糖化液の他に、目的とする糖化酵素を生産する上で必要とされる成分(糖源、窒素源)等を添加することができる。前記糖源としては、糖を含むものであればよく、特別な限定はない。前記窒素源としては、上述の[低BGL糖化酵素生産工程]の(第一実施形態)において例示されたものと同様のものが挙げられる。
さらに、各種キシラン成分を添加することで、糖化酵素生産菌においてキシラナーゼを増産させることも可能である。
【0040】
糖化酵素生産菌としては、上述の[セロビオース生産工程]において糖化酵素生産菌として例示されたものと同様のものが挙げられる。また、前記糖化酵素生産菌において、生産される糖化酵素は、上述の[セロビオース生産工程]における定義の通り、主に、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの各活性を持つものであればよい。
【0041】
糖化酵素生産工程において生産された糖化酵素を含む培養上清は、例えば、前記培養上清から糖化酵素を分離及び精製することで糖化酵素製剤として販売してもよく、又は前記培養上清をそのまま、後述のリグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するために使用してもよい。
また、糖化酵素生産工程の後に残った前処理済みリグノセルロース系バイオマス由来の固形分を多く含む残渣を、後述の<<糖化液の製造方法>>の[糖化工程]において、前処理済みリグノセルロース系バイオマス及び糖化酵素に混合させて用いてもよい。これにより、糖化酵素生産工程における廃棄物が生じず、環境負荷を低減することができる。
【0042】
<<糖化酵素の製造装置>>
(第一実施形態)
図1は、本発明の糖化酵素の製造装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
本実施形態の糖化酵素の製造装置10は、低BGL糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含むセロビオース生産槽11と、前記セルビオース生産槽で得られたセロビオースを含む糖化液と糖化酵素生産菌とを含む糖化酵素生産槽12と、が配管13を介して配設されている。
【0043】
セロビオース生産槽11は、低BGL糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含み、セロビオースを生産するための槽であり、特別な限定はない。セロビオース生産槽11は撹拌翼等の撹拌機構を有することが好ましい。セロビオース生産槽11の外側には、上述の[セロビオース生産工程]において例示された温度範囲となるように、例えば、温水循環式のジャケットなど温度調整装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0044】
糖化酵素生産槽12は、前記セルビオース生産槽11で得られたセロビオースを含む糖化液と糖化酵素生産菌とを含み、糖化酵素を生産するための槽であり、特別な限定はない。糖化酵素生産槽12は撹拌翼等の撹拌機構を有することが好ましい。糖化酵素生産槽12の外側には、上述の[糖化酵素生産工程]において例示された温度範囲となるように、例えば、温水循環式のジャケットなど温度調整装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0045】
配管13は、セロビオース生産槽11から得られたセロビオースを含む糖化液を糖化酵素生産槽12に送液するための配管であって、特別な限定はない。配管13の途中には、糖化酵素生産槽12へ送液する糖化液の流量を調整するためのポンプ(図示せず)、及び糖化液に含まれる固形分を分離するための固液分離装置(図示せず)等が配設されていてもよい。
【0046】
前記固液分離装置としては、固液の分離強度を調節できる装置であればよく、例えば、加わる圧力を調節することで分離強度を調節することができる装置や、篩目やフィルターの網目の大きさを変更することで分離強度を調節することができる装置、固液分離装置の運転条件は変更せずに固液分離後の固形分の一部を排出することで分離強度を下げることができる装置等が挙げられる。前記固液分離装置として具体的には、例えば、フィルタープレス、スクリュープレスや、100〜2360μmの網目である振動篩等が挙げられる。
また、配管13をセロビオース生産槽11の上部に配設した場合、セロビオース生産槽11の撹拌を停止して一定時間静置し、固形分が沈殿し、セロビオース生産槽11内で固液が分離された後に、糖化酵素生産槽12への送液を開始することにより、固形分の流出を防ぐことができる。
【0047】
図1に示す本実施形態の糖化酵素の製造装置を用いて、糖化酵素を製造する方法を以下に説明する。
まず、セロビオース生産槽11に低BGL糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを添加して混合し、前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースを加水分解させてセロビオースを含む糖化液を生産させる。次いで、配管13を介して、固液分離装置等を利用して固形分を分離し、セロビオースを含む糖化液のみを糖化酵素生産槽12へ送液する。次いで、糖化酵素生産槽12に糖化酵素生産菌を添加し、培養をすることで、セロビオースを誘導物質として、糖化酵素生産菌に糖化酵素を生産させる。生産された糖化酵素を含む培養上清は、例えば、培養上清から糖化酵素を分離及び精製することで糖化酵素製剤として販売してもよく、又は培養上清をそのまま、後述のリグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するために使用してもよい。
【0048】
(第二実施形態)
図2は、本発明の糖化酵素の製造装置の他の実施形態を模式的に示す概略構成図である。
本実施形態の糖化酵素の製造装置20は、前記セロビオース生産槽11の前に、糖化酵素又は糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含む低BGL糖化酵素生産槽14が配管15を介して配設されている点で、図1の示す糖化酵素の製造装置10と相違し、その他の構成は糖化酵素の製造装置10と同じである。
なお、以下の図2〜4において、図1に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
【0049】
低BGL糖化酵素生産槽14は、糖化酵素又は糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含み、低BGL糖化酵素を生産するための槽であって、特別な限定はない。低BGL糖化酵素生産槽14は撹拌翼等の撹拌機構を有することが好ましい。低BGL糖化酵素生産槽14の外側には、上述の[低BGL糖化酵素生産工程]において例示された温度範囲となるように、例えば、温水循環式のジャケットなど温度調整装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0050】
配管15は、低BGL糖化酵素生産槽14から得られた低BGL糖化酵素をセロビオース生産槽11に送液するための配管であって、特別な限定はない。配管13の途中には、セロビオース生産槽11へ送液する糖化液の流量を調整するためのポンプ(図示せず)、及び前処理済みリグノセルロース系バイオマス由来の固形分を分離するための固液分離装置(図示せず)等が配設されていてもよい。前記固液分離装置としては、上述の(第一実施形態)において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、配管15を低BGL糖化酵素生産槽14の上部に配設した場合、低BGL糖化酵素生産槽14の撹拌を停止して一定時間静置し、固形分が沈殿し、低BGL糖化酵素生産槽14内で固液が分離された後に、セロビオース生産槽11への送液を開始することにより、固形分の流出を防ぐことができる。
【0051】
図2に示す本実施形態の糖化酵素の製造装置を用いて、糖化酵素を製造する方法を以下に説明する。
まず、低BGL糖化酵素生産槽14に糖化酵素又は糖化酵素生産菌と前処理済みリグノセルロース系バイオマスと添加して混合し、糖化酵素又は糖化酵素生産菌由来の糖化酵素に含まれるBGLを、前処理済みリグノセルロース系バイオマスに含まれるリグニンに吸着させることで、低BGL糖化酵素を生産させる。次いで、配管15を介して、固液分離装置等を利用して固形分を分離し、低BGL糖化酵素を含む溶液のみをセロビオース生産槽11へ送液する。
糖化酵素の製造装置20は、低BGL糖化酵素を含む溶液が低BGL糖化酵素生産槽14から送液される以外は、図1に示す糖化酵素の製造装置10と同様の方法により、リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造することができる。
【0052】
本発明の糖化酵素の製造装置は、図1及び図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1及び図2に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図1及び図2に示す糖化酵素の製造装置においては、セロビオース生産槽11の前に、リグノセルロース系バイオマスを前処理するための前処理装置が配管を介して配設されていてもよい。
【0053】
前記前処理装置としては、特に限定はないが、例えば、耐酸性又は耐アルカリ性を有する加熱圧力容器、耐酸性又は耐アルカリ性を有する容器をオートクレーブのような加熱圧力装置に入れて処理する形態等が挙げられる。
【0054】
<<糖化液の製造方法>>
一実施形態として、本発明は、リグノセルロース系バイオマスから糖化液を製造するための方法であって、上述の糖化酵素の製造方法を用いて、糖化酵素を製造した後、前記糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを混合し、糖化する糖化工程を備える製造方法を提供する。
【0055】
本実施形態の糖化液の製造方法によれば、オンサイト生産により得られた糖化酵素を用いて、高効率かつ安価に糖化液を製造することができる。
本実施形態の糖化液の製造方法の各工程について、以下に詳細に説明する。
【0056】
[糖化工程]
糖化工程は、前処理済みリグノセルロース系バイオマスを基質として、上述の糖化酵素の製造方法により得られた糖化酵素を用いて、糖化反応を行う工程である。
糖化温度は、45℃以上70℃以下が好ましく、45℃以上55℃以下より好ましく、50℃が特に好ましい。また、糖化時間は12時間以上120時間以下が好ましく、24時間以上96時間以下がより好ましく、24時間以上72時間以下がさらに好ましい。
【0057】
また、糖化工程において、上述の<<糖化酵素の製造方法>>の[セロビオース生産工程]の後に残った前処理済みリグノセルロース系バイオマス由来の固形分を多く含む残渣を、前処理済みリグノセルロース系バイオマス及び糖化酵素に混合させて用いてもよい。前記残渣には、未糖化のセルロース及びヘミセルロース、並びに低BGL糖化酵素が含まれるため、糖化工程において、未糖化のセルロース及びヘミセルロース、並びに低BGL糖化酵素を糖化反応に利用することができる。また、これにより、前記[セロビオース生産工程]における廃棄物が生じず、環境負荷を低減することができる。
【0058】
また、糖化工程において、上述の<<糖化酵素の製造方法>>の[低BGL糖化酵素生産工程](第二実施形態)の後に残ったBGLが吸着した状態のリグニンを含む残渣を、前処理済みリグノセルロース系バイオマス及び糖化酵素に混合させて用いてもよい。前記残渣には、BGLが吸着した状態のリグニンが含まれており、BGLはリグニンに吸着した状態であっても、活性部位が残っており、液中のセロビオースに対して糖化能力が維持されているため、溶液中に含まれるセロビオースを効率的にグルコースへ分解することができる。また、これにより、前記[低BGL糖化酵素生産工程]における廃棄物が生じず、環境負荷を低減することができる。
【0059】
本実施形態において、糖化工程の前にリグノセルロース系バイオマスを糖化酵素による糖化反応を行いやすくするために前処理を行う前処理工程を備えていてもよい。
【0060】
[前処理工程]
前処理工程は、続く糖化工程において、糖化反応を効率的に行うためにリグノセルロース系バイオマスを前処理する工程である。
前処理方法としては、例えば、蒸気のみでの蒸煮法、イオン液体を用いる方法、ミルを用いる粉砕法などが挙げられる。また、前処理工程において、必要に応じて、適宜酸又はアルカリを混合させてもよい。前記酸及び前記アルカリとしては、上述の「前処理済みリグノセルロース系バイオマス」の定義の際に例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0061】
本実施形態の糖化液の製造方法において得られた糖化液は、糖化液から不純物を取り除き精製して、精糖蜜として販売してもよく、又は、前記糖化液をそのまま、後述のリグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するために用いてもよい。
【0062】
<<糖化液の製造装置>>
図3は、本発明の糖化液の製造装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。
本実施形態の糖化液の製造装置100は、糖化酵素の製造装置10と、前記糖化酵素の製造装置10で得られた糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含む糖化装置101と、が配管102を介して配設されている。
【0063】
糖化装置101は、前記糖化酵素の製造装置10で得られた糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを含み、単糖を生成する糖化反応を行うための装置であり、特別な制限はない。例えば、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型などを挙げられ、これらに限定されない。
糖化装置101内の温度を一定に保つために、糖化装置101の外側に温水循環式のジャケットなど温度調整装置を備えていてもよい。
【0064】
配管102は、糖化酵素生産槽12から得られた糖化酵素を糖化装置101に送液するための配管であって、特別な限定はない。配管102の途中には、糖化装置101へ送液する糖化酵素を含む溶液の流量を調整するためのポンプ(図示せず)、及び溶液に含まれる固形分を分離するための固液分離装置(図示せず)等が配設されていてもよい。前記固液分離装置としては、上述の<<糖化酵素の製造装置>>の(第一実施形態)において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0065】
図3に示す本実施形態の糖化液の製造装置を用いて、糖化液を製造する方法を以下に説明する。
糖化酵素を製造するまでは、図1に示す糖化酵素の製造装置10と同様の方法により、糖化酵素を製造することできる。また、前処理装置を用いて、リグノセルロース系バイオマスを物理的又は化学的な処理を施し、形状を微細化する、又はオリゴ糖に分解する等して糖化酵素処理しやすい状態にして前処理済みリグノセルロース系バイオマスを準備しておく。次いで、糖化装置101に糖化酵素と前処理済みリグノセルロース系バイオマスとを添加して混合し、糖化反応を行うことでグルコースやキシロース等の単糖又はより小さなオリゴ糖に分解させて、糖化液を生産させる。生産された糖化液は、例えば、固形分を分離及び精製することで精糖蜜として販売してもよく、又は糖化液をそのまま、後述のリグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するために使用してもよい。
【0066】
本発明の糖化液の製造装置は、図3に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図3に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図3に示す糖化液の製造装置においては、糖化装置101の前に、リグノセルロース系バイオマスを前処理するための前処理装置が配管を介して配設されていてもよい。前記前処理装置としては、上述の<<糖化酵素の製造装置>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、例えば、図3に示す糖化液の製造装置においては、糖化酵素の製造装置10の代わりに、糖化酵素の製造装置20を備えていてもよい。さらに、糖化酵素の製造装置20を備えている場合、例えば、低BGL糖化酵素生産槽からBGLが吸着した状態のリグニンを含む残渣を糖化装置101に送液するために、低BGL糖化酵素生産槽の底面、又は側面の下部から糖化装置101にかけて配管を備えていてもよい。
また、例えば、図3に示す糖化液の製造装置において、セロビオース生産槽11から前処理済みリグノセルロース系バイオマス由来の固形分を多く含む残渣を送液するために、セロビオース生産槽11の底面、又は側面の下部から糖化装置101にかけて配管を備えていてもよい。
【0067】
<<リグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造方法>>
一実施形態として、本発明は、リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造するための方法であって、上述の糖化液の製造方法を用いて、糖化液を製造した後、前記糖化液と微生物とを混合し、発酵する発酵工程を備える製造方法を提供する。
【0068】
本実施形態のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造方法によれば、オンサイト生産により得られた糖化液を用いて、高効率かつ安価にリグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造することができる。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造方法の各工程について、以下に詳細に説明する。
【0069】
[発酵工程]
まず、前記糖化液の製造方法において得られた糖化液と微生物とを添加し、撹拌しながら発酵を行う。また、前記糖化液の製造方法において得られた糖化液のみを用いてもよく、前記糖化液の製造方法において得られた糖化液及び糖化残渣両方を用いてもよい。中でも、糖化残渣には未糖化のセルロース及びヘミセルロース等の多糖、並びに糖化残渣に吸着した状態の糖化酵素が含まれるため、発酵工程においても糖化工程を同時に行い、微生物による発酵における基質となる単糖及びオリゴ糖を生成することができることから、前記糖化液の製造方法において得られた糖化液及び糖化残渣両方を用いることが好ましい。
発酵温度は、25℃以上50℃以下が好ましく、28℃以上35℃以下がより好ましく、32℃が特に好ましい。また、発酵時間は、24時間以上120時間以下が好ましく、24時間以上96時間以下がより好ましく、24時間以上72時間以下がさらに好ましい。
【0070】
使用する微生物としては、目的のリグノセルロース系バイオマス由来化合物を生成できるものであれば、特別な限定はない。具体的には、酵母や細菌等が挙げられ、遺伝子組換え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組換え微生物とは、アルコール等の目的のリグノセルロース系バイオマス由来化合物への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、アルコール等の目的のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の生成を可能にしたものである。遺伝子組換え微生物としては、例えば、アルコール発酵性を有する遺伝子組換え大腸菌等が挙げられる。
また、微生物は微生物を含む培養液をそのまま使用してもよく、又は、微生物を含む培養液を遠心分離により濃縮したもの、乾燥状態のもの等を適宜使用してよい。
使用する微生物の量は、微生物の増殖速度、発酵槽の大きさ、及び発酵に用いる糖化液の量等を元に算出すればよい。
【0071】
本実施形態において、発酵工程の後に得られたリグノセルロース系バイオマス由来化合物の純度を上げるために精製を行う精製工程を備えていてもよい。
【0072】
[精製工程]
精製工程は、発酵工程において得られた発酵液に含まれるリグノセルロース系バイオマス化合物を精製するための工程である。
精製方法としては、リグノセルロース系バイオマス化合物がアルコール類である場合は、例えば、前記発酵液を蒸留する方法等が挙げられる。また、リグノセルロース系バイオマス化合物がアミノ酸類である場合は、例えば、イオン交換法、活性炭を用いた異物の吸着除去法等が挙げられる。
【0073】
<<リグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置>>
図4は、本発明のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置1Aは、糖化液の製造装置100と、前記糖化液の製造装置100で得られた糖化液と微生物とを含む発酵槽103とが、配管104を介して配設されている。
【0074】
発酵槽103は、糖化液の製造装置100で得られた糖化液に、微生物を植菌し、発酵槽するための槽であって、特別な限定はない。前記発酵槽としては、例えば、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等を挙げられ、これらに限定されない。
また、発酵槽103内の温度を一定に保つために、発酵槽103の外側に温水循環式のジャケットなど温度調整装置を備えていてもよい。
【0075】
配管104は、糖化装置101から得られた糖化液、又は糖化液及び糖化残渣を発酵槽103に送液するための配管であって、特別な限定はない。配管104の途中には、発酵槽103へ送液する糖化液、又は糖化液及び糖化残渣の流量を調整するためのポンプ(図示せず)、並びに糖化液に含まれる固形分を調整するための固液分離装置(図示せず)等が配設されていてもよい。前記固液分離装置としては、上述の<<糖化酵素の製造装置>>の(第一実施形態)において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0076】
図4に示す本実施形態のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置を用いて、リグノセルロース系バイオマス由来化合物を製造する方法を以下に説明する。
糖化液を製造するまでは、図3に示す糖化液の製造装置100と同様の方法により、糖化液を製造することできる。次いで、発酵槽103に糖化液、又は糖化液及び糖化残渣と微生物とを添加し、撹拌しながら発酵を行う。次いで、得られた発酵液に含まれる所望のリグノセルロース系バイオマス由来化合物を分離又は精製するために、必要に応じて、蒸留塔等の精製装置へ送液される。
【0077】
本発明のリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置は、図4に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図3に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図4に示すリグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置においては、発酵槽103の後に配管を介して精製装置を備えていてもよい。前記精製装置としては、例えば、蒸留塔、分離ろ過膜、遠心分離機が挙げられ、これらに限定されない。
【実施例】
【0078】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
(1)基質溶液の調製
1本の100mL容量の三角フラスコに、乾燥重量2gの前処理済みリグノセルロース系バイオマスを入れて、50mMのクエン酸緩衝液(pH5.0)を加えて、固形分10%の基質溶液20gを調製した。
【0080】
(2)トルコデルマ・レッセイ(Trichoderma reesei)PC−3−7株によるセロビオースの生産
次いで、予め培養していたトルコデルマ・レッセイ(Trichoderma reesei)PC−3−7株の低BGL糖化酵素を含む培養液を、4FPU(Filter Paper Unit)/g−dry BMとなるように、(1)で調製した基質溶液に添加した。なお、「4FPU/g−dryBM」とは、1gの乾燥前処理済みリグノセルロース系バイオマスに対して、フィルターペーパー分解活性量が4となるような酵素量を示している。次いで、撹拌数60rpm、50℃の条件で、48時間糖化反応を行った。培養開始から24時間後及び48時間後に、少量のサンプルを採取し、高速液体クロマトグラフィー(SHIMADZU社製、HPLC還元糖システム)およびAsahipak MH2p−50 4Eカラム(shodex社製)を用いて、セロビオース濃度及びグルコース濃度を計測した。結果を図5に示す。
【0081】
図5から、培養開始から24時間後及び48時間後において、約16〜17g/Lのセロビオースが得られることが明らかとなった。また、培養開始から24時間後よりも48時間後において、グルコース濃度が約11g/Lから約14g/Lまで増加していることから、トルコデルマ・レッセイPC−3−7株の培養液に含まれる少量のBGLによって、セロビオースの一部がグルコースに分解されたが、低BGL糖化酵素に含まれるCBH及びEGの割合が多いため、セロビオースの生産量が多く、充分量のセロビオースが得られたと推察された。
【0082】
以上のことから、低BGL糖化酵素を用いることで、前処理済みリグノセルロース系バイオマスからセロビオースが得られることが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、安価にセロビオースが得られ、高効率な糖化酵素の製造方法及び装置を提供することができる。また、得られた糖化酵素を用いて、リグノセルロース系バイオマスから糖化液、さらに所望のリグノセルロース系バイオマス由来化合物を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1A…リグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造装置、10、20…糖化酵素の製造装置、11…セロビオース生産槽、12…糖化酵素生産槽、13,15,102,104…配管、14…低BGL糖化酵素製造装置、100…糖化液の製造装置、101…糖化装置、103…発酵槽。
【要約】
【課題】安価にセロビオースが得られ、高効率な糖化酵素の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明は、リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造方法であって、低β−グルコシダーゼ(BGL)糖化酵素を用いて、セルロースを含む原料を加水分解し、セロビオースを生産させるセロビオース生産工程と、前記セロビオース生産工程で得られた前記セロビオース及びグルコースの混合溶液と、微生物とを混合して培養し、前記微生物に糖化酵素を生産させる糖化酵素生産工程と、を備える。本発明は、リグノセルロース系バイオマスを糖化するための糖化酵素の製造装置であって、低BGL糖化酵素と、セルロースを含む原料とを含むセロビオース生産槽と、前記セロビオース生産槽で得られたセロビオース及びグルコースの混合溶液と、微生物とを含む糖化酵素生産槽と、を備える。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5