特許第6255124号(P6255124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DICグラフィックス株式会社の特許一覧

特許6255124リキッドインキ組成物、印刷物及びラミネート積層体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6255124
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】リキッドインキ組成物、印刷物及びラミネート積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20171218BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20171218BHJP
【FI】
   C09D11/102
   C09D11/03
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-74489(P2017-74489)
(22)【出願日】2017年4月4日
【審査請求日】2017年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】木場 勝平
(72)【発明者】
【氏名】村上 吉成
(72)【発明者】
【氏名】ジラポーン シーモーク
(72)【発明者】
【氏名】寺本 秀康
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−065786(JP,A)
【文献】 特開2013−127038(JP,A)
【文献】 特開2014−005318(JP,A)
【文献】 特開2005−298618(JP,A)
【文献】 特許第6090520(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
C09D 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)、耐ブロッキング防止剤(B)、有機溶剤(C)、水(D)、及び顔料(E)を含有するリキッドインキ組成物であって、
前記耐ブロッキング防止剤(B)が、脂肪酸アマイド、シリカ化合物、セルロースアセートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレートからなる群から選ばれる2つ以上である事を特徴とするリキッドインキ組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(A)がポリエーテルポリオールを反応原料とするものであり、ポリウレタン樹脂(A)全量に対するポリエーテル樹脂が1〜50質量%である請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項3】
前記耐ブロッキング防止剤(B)がシリカ化合物、及び脂肪酸アマイド、セルロースアセートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートからなる群から選ばれる何れか1つである請求項1又は2に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸アマイドが、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、及びヘキサメチレンビスオレイン酸アマイドからなる群から選ばれる1つ以上である請求項1〜3の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物。
【請求項5】
更に、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)を含有する請求項1〜4の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物。
【請求項6】
前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)が水酸基を含有し、その水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、かつ前記共重合樹脂中の塩化ビニル成分の含有比率が80〜95質量%である請求項1〜5の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物。
【請求項7】
前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まない請求項1〜6の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用ラミネート用途のグラビアインキ、フレキソインキ向けリキッドインキ組成物に関する。特に、各種フィルム基材上での優れた接着性能、耐ブロッキング性及び印刷適性を発現するリキッドインキ組成物であって、かつ無機や有機のバリアコート材が塗布された各種フィルム向けにも優れた性能を有するリキッドインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
主に、軟包装材の製造に使用されるラミネート用途のリキッドインキは、ウレタン樹脂若しくはウレタンウレア樹脂が主成分として使用されている。さらに近年では、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤の使用が制限されつつある。例えば、脱トルエン型のリキッドインキには、印刷適性の観点から、溶剤として芳香族、ケトン系溶剤の代わりに酢酸エチルや酢酸プロピルなどの酢酸エステル類、イソプロピルアルコールやノルマルプロピルアルコール等のアルコール系溶剤又はそれらの混合溶剤が使用される傾向にある。
前記芳香族溶剤、ケトン系溶剤を使用しないインキの場合でも、大気中への揮発性有機化学物質(VOC)の放出は免れない。また、VOC放出量の低減のために、水を有機溶剤と併用する事が有用であり、更に前記溶剤と水の併用はインキの転移性向上にも有用である。
【0003】
一方で、軟包装パッケージで使用されるポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等から成る汎用フィルムへのグラビア印刷、又はフレキソ印刷では、夏場の高温時にフィルムを巻取りした状態で保管されるとインキ被膜が非印刷面に移行してしまうブロッキング現象によるトラブルが発生し易い。更に近年、フィルムパッケージに用いられるフィルムとして、各種バリア性を付与した高機能フィルムが増加する傾向にある。これらの高機能フィルムは、その表面に無機や有機のバリアコート剤が塗布されており、これらの高機能フィルムを原反としてした際、フィルム原反とインキの密着性が阻害される事がしばしば発生しうる。また、フィルムが巻取りされた状態で見られる前記ブッキング現象によるトラブルを誘発することも多い。これらの高機能フィルムは、食品用、電子部品用向けに内容物の変質を防止すべく空気を遮断する酸素バリア、水蒸気を遮断する水蒸気バリア等、業種・目的用途に応じて多種多様に存在し、また技術的にも非公開なものが多く、一般のフィルム印刷と比較して対応が難しいのが現状である。
高機能バリアーフィルムの中でも、透明バリアフィルムは、水蒸気、酸素などのガス透過を防ぐ機能を備えた透明フィルムであり、蒸着とコーティングの組み合わせにより優れたバリア性能を発揮することが知られている。透明蒸着フィルムは、ベースとなるフィルム上に透明な無機薄膜が蒸着プロセスで製膜された機能性フィルムである。
【0004】
例えば、特許文献1(特許6090521号)には、顔料、ポリエーテル由来のポリウレタン樹脂と塩化ビニル共重合樹脂を特定比率とするバインダー樹脂、グリコールエーテル系溶剤と水とを含有するラミネート用グラビアインキが例示されている。
また、特許文献2(特開2016−104842)の特定の被覆処理された酸化チタンを含有する白色顔料を用いたグラビア白色インキ組成物では、耐ブロッキング対策として脂肪酸アマイドを添加してもよい旨が例示されている。
しかし、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し、耐ブロキング性を保持しつつ、被印刷体への接着性、印刷適性、ラミネート強度が両立できているとは決して言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6090521号公報
【特許文献2】特開2016−104842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し、耐ブロッキング性を保持しつつ、被印刷体への接着性、印刷適性、ラミネート強度に優れるリキッドインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リキッドインキ組成物において、バインダー樹脂、耐ブロッキング防止剤、有機溶剤、水、及び顔料を必須成分として含有することで、課題解決に有効であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、ポリウレタン樹脂(A)、耐ブロッキング防止剤(B)、有機溶剤(C)、水(D)、及び顔料(E)を必須成分として含有することを特徴とするリキッドインキ組成物に関する。
【0009】
更に、前記ポリウレタン樹脂(A)がポリエーテル樹脂を反応原料とするものであり、ポリウレタン樹脂(A)全量に対するポリエーテル樹脂が1〜50質量%であるリキッドインキ組成物に関する。
【0010】
更に、本発明は、前記耐ブロッキング防止剤(B)が、脂肪酸アマイド、シリカ化合物、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレートからなる群から選ばれる1つ以上であるリキッドインキ組成物に関する。
【0011】
更に、本発明は、前記脂肪酸アマイドが、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、及びヘキサメチレンビスオレイン酸アマイドからなる群から選ばれる1つ以上であるリキッドインキ組成物に関する。
【0012】
更に、本発明は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)を含有するリキッドインキ組成物に関する。
【0013】
更に、本発明は、前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)が水酸基を含有し、その水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、かつ前記共重合樹脂中の塩化ビニル成分の含有比率が80〜95質量%であるリキッドインキ組成物に関する。
【0014】
更に、本発明は、前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まないリキッドインキ組成物に関する。
【0015】
更に、本発明は、該リキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物に関する。
【0016】
更に、本発明は、該リキッドインキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し、耐ブロッキング性を保持しつつ、被印刷体への接着性、印刷適性、ラミネート強度に優れるリキッドインキ組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について詳細に説明する。なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示す。
【0019】
本発明は、ポリウレタン樹脂(A)、耐ブロッキング防止剤(B)、有機溶剤(C)、水(D)、及び顔料(E)を含有する事を特徴とするリキッドインキ組成物に関する。
【0020】
本発明のリキッドインキ組成物は、具体的には前記ポリウレタン樹脂等のバインダー樹脂を酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、IPAなど各種有機溶剤、各種添加剤に予め混合する。分散攪拌機にて前記溶液を攪拌しながら着色顔料を投入し更に攪拌することで着色顔料が十分分散されたインキ組成物を得る。
【0021】
本発明のリキッドインキ組成物では、ポリウレタン樹脂(A)を使用する。前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエーテルポリオールを反応原料とする事が好ましく、ポリウレタン樹脂(A)全量に対してポリエーテルポリオールを1〜50質量%の割合で使用したものが好ましい。
尚、前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が100〜3500ものであることが好ましい。詳細は後述するが、ポリエーテルポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよい。ポリエーテルポリオールを上記の範囲で含有することにより、特に高機能バリアーフィルム上での密着性が大幅に向上し、結果として耐ブロッキング性、ラミネート強度が優れるようになる。
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が100より小さいと、ポリウレタン樹脂(A)の皮膜が硬くなる傾向にありポリエステルフィルムへの接着性が低下する。数平均分子量が3500より大きい場合、ポリウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にありインキ皮膜の耐ブロッキング性が低下する。ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対してポリエーテルポリオールが1質量部未満であると、該ポリウレタン樹脂(A)のケトン、エステル、アルコール系溶剤への溶解性が低下し、高機能バリアーフィルム上での密着性が低下する傾向となる。またインキ皮膜の該溶剤への再溶解性が低下し、印刷物の調子再現性が低下する傾向となる。また50質量部を超えると、インキ皮膜が過剰に柔らかくなり、耐ブロッキングが劣る傾向と成り易い。
【0022】
本発明のリキッドインキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)に必要に応じて使用される併用ポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類(1);エチレングリコール、1,2―プロパンジオール、1,3―プロパンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、2エチル−2ブチル−1,3プロパンジオール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(2);これらの低分子ポリオール類(2)と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(3);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(4);前記低分子ポリオール類(2)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(5);ポリブタジエングリコール類(6);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(7);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(8)などが挙げられる。
【0023】
なお、前記ポリエステルポリオール類(3)のなかで、ジオール類(グリコール類)と二塩基酸とから得られる高分子ジオールは、ジオール類のうち5モル%までを前記水酸基を3つ以上有する低分子ポリオール類(2)に置換することが出来る。
【0024】
本発明のリキッドインキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)に使用されるジイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5―ナフチレンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’―ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3―フェニレンジイソシアネート、1,4―フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン―1,4―ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン―1,4―ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジイソシアネート、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明のリキッドインキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジアミンなどの他、2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジーnーブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
本発明のリキッドインキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)は、例えば、ポリプロピレングリコールおよび併用ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、すなわち、ノントルエン系グラビアインキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいはポリプロピレングリコールおよび併用ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なポリウレタン樹脂を得るには、二段法によることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤のアミノ基の合計(当量比)が1/0.9〜1.3の割合になるように反応させることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3より小さいときは、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤が未反応のまま残存し、ポリウレタン樹脂が黄変したり、印刷後臭気が発生したりする場合がある。
【0027】
このようにして得られるポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、15,000〜100,000の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15,000〜80,000の範囲である。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
本発明のリキッドインキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)のインキにおける含有量は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総質量に対して4質量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25質量%以下が好ましく、更には6〜15質量%の範囲が好ましい。
【0028】
本発明のリキッドインキ組成物では、耐ブロッキング防止剤(B)を必須として使用する。耐ブロッキング防止剤(B)を添加する事で、フィルムを巻取りした状態で保管した際に見られるインキ被膜が非印刷面に移行してしまうブロッキング現象が未全に防止する事ができる。前記耐ブロッキング防止剤(B)としては、脂肪酸アマイド、シリカ化合物、セルロース系樹脂が挙げられ、これらを単独で使用しても複数組み合わせて使用してもよい。中でも脂肪酸アマイド単独、若しくは脂肪酸アマイドを含んだ組み合わせが好ましい。シリカ化合物やセルロース系樹脂は、ポリエステル(PETフィルム)、ナイロン(Nyフィルム)、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)等の汎用フィルムの耐ブロッキング性を向上させるのに有効で、脂肪酸アマイドは特に、高機能バリアーフィルム上での耐ブロッキング性の向上が図れる。脂肪酸アマイド単独、若しくは脂肪酸アマイドを含んだ組み合わせでは、汎用フィルム、高機能バリアーフィルムの両方で幅広く耐ブロッキング性をレベルアップする事が可能となる。
【0029】
前記脂肪酸アマイドとしては、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等が挙げられ、中でも、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイドがより好ましい。また、これらを単独で使用しても複数組み合わせて使用してもよい。
脂肪酸アマイドの添加量としては、インキ組成物固形分全量の0.05〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。添加量が2.0質量%を上回るとラミネート強度が低下する傾向にあり、添加量が0.05質量%を下回ると耐ブロキングの効果が低下してしまう。
【0030】
前記シリカ化合物としては、二酸化ケイ素、エポキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン等が挙げられる。中でも平均粒子径が1〜20μmの粒状二酸化ケイ素が好ましく、より好ましくは2〜10μmである。シリカ化合物の添加量としては、インキ組成物固形分全量の0.05〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0質量%である。添加量が2.0質量%を上回るとラミネート強度が低下する傾向にあり、添加量が0.05質量%を下回ると耐ブロキングの効果が低下してしまう。
【0031】
前記セルロース系樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、ニトロセルロース等が挙げられ、中でも
セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
また、各々単独で使用しても両者を組み合わせて使用してもよい。
セルロース系樹脂の添加量としては、インキ組成物固形分全量の0.1〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。添加量が5.0質量%を上回るとラミネート強度が低下する傾向にあり、添加量が0.1質量%を下回ると耐ブロキングの効果が低下してしまう。
【0032】
本発明のリキッドインキ組成物で使用する有機溶剤(C)としては、各種有機溶剤を使用することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、n−プロパノール、イノプロパノール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0033】
本発明のリキッドインキ組成物には、揮発性成分として前記有機溶剤と共に、水(D)を含有する事が必須であり、水(D)の含有量はインキ組成物全量の10質量%未満であることが好ましい。水(D)の添加により、インキの乾燥性を制御する事ができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。更に、インキ組成物全量の1〜5質量%の範囲であることが、印刷適性が良好となることから、特に好ましい。
また、このような水(D)の添加により、使用有機溶剤成分を低減させることも可能である。水は有機溶剤に予め添加して含水の有機溶媒としてもよいし、別途特定量の水を添加してもよい。
【0034】
更に、本発明のリキッドインキ組成物では、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)を添加してもよい。
【0035】
前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)は水酸基を有することが好ましく、その水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、かつ前記共重合体樹脂中の塩化ビニル成分の含有比率が80〜95質量%である事が好ましい。塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(F)があると、インキ皮膜の凝集力が高まり、耐レトルト性が向上するばかりでなく、耐ブロッキング性も良好になる傾向にある。更に耐ブロッキング剤と併用することにより、耐ブロッキング性の向上が更に良化する。
【0036】
本発明のリキッドインキ組成物に用いられる水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、二種類の方法で得ることができる。一つは塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびビニルアルコールを適当な割合で共重合して得られる。もう一つは、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合した後、酢酸ビニルを一部ケン化することにより得られる。水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。
【0037】
リキッドインキを軟包装用ラミネートインキとして使用する場合、接着性、耐ブロッキング、ラミネート強度、ボイルレトルト適性、印刷適性、これら全ての性能を満足する必要があるため、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は適正なモノマー比率が存在する。即ち、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂に対し、塩化ビニルは80〜95質量%が好ましい。80質量%未満だと樹脂被膜の強靭さが劣り、耐ブロッキング性が低下する。95質量%を超えると樹脂被膜が硬くなりすぎ、接着性が低下する。また、ビニルアルコールから得られる水酸基価は50〜200mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g未満だと極性溶媒への溶解性が劣り、印刷適性が不良となる。200mgKOH/gを超えると耐水性が低下して、ボイル、レトルト適性が不良となる。
【0038】
本発明のリキッドインキ組成物に必要に応じて併用される樹脂の例としては、前記ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂以外の樹脂、例えば、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総質量に対して1〜25質量%が好ましく、更に好ましくは2〜15質量%である。
【0039】
本発明のリキッドインキ組成物で使用する顔料(E)としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。
【0040】
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。また、ガラスフレークまたは塊状フレークを母材とした上に金属、もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料(メタシャイン;日本板硝子株式会社)を使用できる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総質量に対して1〜50質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
本発明では更に必要に応じて、併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0042】
前記顔料(E)を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα−オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2質量%の範囲である。
【0043】
本発明のリキッドインキ組成物は、樹脂、顔料などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリウレタン樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0044】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0045】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0046】
本発明のリキッドインキ組成物の色相としては、使用する顔料の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。ボイルレトルト用インキには顔料のマイグレーション性、耐熱性を考慮して適宜選定される。各色相のベースインキは、グラビア印刷、又はフレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0047】
本発明のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物としては、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し有用である。利用可能なプラスチックフィルムとしては、ポリエステル樹脂フィルムが特に好ましいが、その他のポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン樹脂フィルム等の表面に無機や有機のバリアコート材が塗布された種々高機能フィルムに対しても幅広く用いることができ、本発明のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体としても有用である。
前記高機能バリアーフィルムの中でも、透明バリアフィルムは、水蒸気、酸素などのガス透過を防ぐ機能を備えた透明フィルムであり、蒸着とコーティングの組み合わせにより優れたバリア性能を発揮することが知られており、本発明のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物の原反として最も好ましい。前記透明蒸着フィルムは、ベースとなるフィルム上に透明な無機薄膜が蒸着プロセスで製膜された機能性フィルムであり、ベースとなるフィルム(PET、ナイロンなど)の上に無機蒸着バリア層を設けたものであり、無機蒸着バリア層としてはアルミナ蒸着バリア層、酸化ケイ素蒸着バリア層が好ましい。また、コーティング層が積層された構造のものでもよい。
透明蒸着フィルムの一例として、大日本印刷株式会社製「IB−PET」、三菱樹脂株式会社製「テックバリア」、尾池工業株式会社製「MOS−TEB」、凸版印刷株式会社製の「GL FILM」「PRIME BARRIER」等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
なお、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
【0049】
(合成例1)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール62部(水酸基価:56.6mgKOH/g)とポリエチレングリコール38部(水酸基価:160mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート24.50部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.68質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル67.0部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン4.71部、ジ−n−ブチルアミン0.11部、酢酸エチル129.1部およびイソプロピルアルコール105.6部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P1を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P1は、樹脂固形分濃度30.3質量%、樹脂固形分のMwは54,000であった。
【0050】
(合成例2)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール77部(水酸基価:140mgKOH/g)とプロピレングリコール23部(水酸基価:278mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート44.39部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.73質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル77.7部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン8.78部、ジ−n−ブチルアミン0.11部、酢酸エチル154.7部およびイソプロピルアルコール125.2部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P2を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P2は、樹脂固形分濃度30.4質量%、樹脂固形分のMwは54,000であった。
【0051】
(合成例3)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール80部(水酸基価:56.6mgKOH/g)とネオペンチルグリコールアジペートジオール20部(水酸基価:109.8mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート22.49部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.84質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル65.96部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.25部、ジ−n−ブチルアミン0.27部、酢酸エチル131.2部およびイソプロピルアルコール106.2部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P3を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P3は、樹脂固形分濃度30.4質量%、樹脂固形分のMwは50,000であった。
【0052】
(合成例4)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール35部(水酸基価:56.6mgKOH/g)とネオペンチルグリコールアジペートジオール65部(水酸基価:109.8mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート27.62部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.84質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル68.7部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.48部、ジ−n−ブチルアミン0.4部、酢酸エチル136.8部およびイソプロピルアルコール110.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P4を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P4は、樹脂固形分濃度30.4質量%、樹脂固形分の重量平均分子量は54,000であった。
【0053】
ポリウレタン樹脂と併用して用いる水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(樹脂モノマー組成が質量%で塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5、水酸基価(mgKOH/g)=64)を酢酸エチルで15%溶液とし、これを塩酢ビ樹脂溶液Fとした。
【0054】
[実施例1]
表1に示すポリウレタン樹脂溶液P1(固形分30%)を25部、耐ブロッキング剤(B−1−1、固形分100%)エチレンビスオレイン酸アマイドを0.15部、水酸基を有する塩酢ビ樹脂溶液K(固形分15%)10部、酸化チタン顔料35部(石原産業(株)社製R780)、イソプロピルアルコール10部、酢酸エチル16.85部からなる水を除いた混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェノン社製)を用いて混練し、得られた白色練肉ベースインキに更に水3部を添加し、本発明のリキッド白インキを作成した。
【0055】
[実施例2〜24、及び比較例1〜8]
実施例2〜24、比較例1〜8についても表1〜4に示す配合にて、実施例1と同様の手順にてリキッドインキを製造した。
尚、各々の耐ブロキング剤について、
耐ブロッキング防止剤(B−1−1)エチレンビスオレイン酸アマイド:固形分100%
耐ブロッキング防止剤(B−1−2)ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド:固形分100%
耐ブロッキング防止剤(B−1−3)パルチミン酸アマイド/ステアリン酸アマイド=1/1:固形分100%
(シリカ)
耐ブロッキング防止剤(B−2)サイリシア430(富士シリア化学(株)製、平均粒子径4.1μm):固形分100%
耐ブロッキング剤(B−3)セルロースアセテートプロピオネート:固形分20%
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、アセチル基含有量2.5質量%、プロピオニル基含有率45質量%、水酸基含有率2.6重量%、ガラス転移温度142℃の、イーストマンケミカル社製「CAP−504−0.2」を以下の比率にて溶解したものを使用した。

セルロースアセテートプロピオネート樹脂 20質量%
酢酸エチル 40質量%
イソプロピルアルコール 40質量%

また、比較例1〜6については水を無添加とした。
【0056】
1)耐カスレ性(印刷適性:二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム))
得られたリキッド白インキの粘度を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=50/50の混合有機溶剤で希釈し、25℃にてザーンカップ#3(離合社製)で16秒になるように希釈した。得られたリキッド白インキを、版深度25μmを有するレーザーグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製 E−5100 厚さ12μm)の処理面に印刷を行った。そして、印刷物の印刷部分へのインキの転移度(カスレ度)を次の3段階で目視評価した。カスレ試験は、グラビア版の円周600mmφで300m/分の印刷速度での評価を行った。

○:カスレが発生していない。
△:少しカスレが発生している。
×:カスレが多発している。
【0057】
2)接着性(各種バリアフィルム)
得られたリキッド白インキの粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、表1〜4に示す各種バリアフィルム(W、X、Y、Z)で作製した印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を次の3段階で目視判定した。

○:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
△:印刷皮膜の50〜80%がフィルムに残った。
×:印刷皮膜の50%以下がフィルムに残った。
【0058】
3)耐ブロッキング性(二軸延伸ポリプロピレンフィルム/各種バリアフィルム)
2)の接着性の評価と同様に作製した二軸延伸ポリプロピレン(OPPフィルム)フィルムによる印刷物、及び2)の各種バリアフィルムによる印刷物の、印刷面と非印刷面が接触するようにフィルムを重ね合わせ、10kgf/cmの加重をかけ、40℃の環境下に12時間経時させ、取り出し後、非印刷面へのインキの転移の状態を、次の3段階で目視評価した。
評価対象のOPPフィルムは、東洋紡(株)製 P2161(厚み:20μm)を使用した。
○:非印刷面へのインキの転移量0%で転移が見られない
△:20%未満の転移が見られる
×:転移量20%以上が転移している
【0059】
4)ラミネート強度の測定(PETフィルム)
2)の接着性の評価と同様に作成した二軸延伸ポリエステルフィルムの印刷物にウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX−703VL/KR−90(DIC製)にてドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によって無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、R−CPP:東レ合成フィルム社製 ZK−75 50μm)を積層し、40℃で5日間エージング施し、ラミネート物を得た後、15mm幅に切り出し引っ張り速度300mm/分で90度剥離試験を行った。
二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム:東洋紡績株式会社製 E−5100 厚さ12μm)
【0060】
表1〜4に、各リキッド白インキの配合、及び評価結果を記す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】

評価対象のバリアフィルム
W:大日本印刷(株)製 アルミナ蒸着透明PETフィルム IB−PET−PUB(厚み:12μm)
X:三菱樹脂(株)製 シリカ蒸着透明PETフィルム テックバリア TX−R(厚み:12μm)
Y:尾池工業(株)製 シリカ蒸着透明PETフィルム MOS−TEB(厚み:12μm)
Z:凸版印刷(株)製 酸化アルミニウム蒸着透明PETフィルム GL−ARH(厚み:12μm)

評価対象のOPPフィルム
U:東洋紡(株)製 P2161(厚み:20μm)
【0065】
表中のFCとはFILM CUTの略語であり、測定中にラミネート物が剥離する前にフィルムが破断していることを表す。ラミネート強度がフィルム強度を上回るほど高く、優れていることを示す。
実施例では汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し、耐ブロキング性を保持しつつ、被印刷体への接着性、印刷適性、ラミネート強度に優れるリキッドインキ組成物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、多種多様なバリア処理が成された高機能フィルムであっても、高い接着性と耐ブロック性を発現し、更にOPPフィルム上での高い押出しラミネート強度を有する軟包装用ラミネート用途のリキッドインキ組成物として食品包材・サニタリー・コスメ・電子部品等工業製品向け用途に幅広く展開され得る。
【要約】
【課題】本発明の課題は、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し、耐ブロキング性を保持しつつ、被印刷体への接着性、印刷適性、ラミネート強度に優れるリキッドインキ組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の解決手段は、ポリウレタン樹脂(A)、耐ブロッキング防止剤(B)、有機溶剤(C)、水(D)、及び顔料(E)を必須成分として含有することを特徴とするリキッドインキ組成物。
【選択図】なし