(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から
図7(A)(B)に示すように、ハウジング51とこのハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61との間で機内側Aの密封流体が機外側Bへ漏洩しないようシールする密封装置101であって、回転軸61の外周に装着されるスリンガー111と、このスリンガー111の機外側Bに位置してハウジング51の軸孔52内周に装着されるリップシール部材121との組み合わせよりなる密封装置101が知られている。
【0003】
スリンガー111は、金属等の剛材製であって、回転軸61の外周面に嵌合される筒状部112と、この筒状部112の一端に設けられたシールフランジ113とを一体に有し、シールフランジ113の機外側端面113aに、回転時に遠心力による流体ポンピング作用を発揮するネジ溝114が設けられている。
【0004】
一方、リップシール部材121は、ハウジング51の軸孔52内周面に嵌合される取付環122と、この取付環122に被着されたゴム状弾性体123とを有し、このゴム状弾性体123によって、スリンガー111におけるシールフランジ113の機外側端面113aに摺動可能に接触するシールリップ(端面リップ)124が設けられている。
【0005】
上記構成の密封装置101は、シールリップ124がシールフランジ113の機外側端面113aに摺動可能に接触することにより密封流体をシールし、またシールフランジ113の機外側端面113aに設けたネジ溝114が回転時に遠心力による流体ポンピング作用を発揮して密封流体を機内側Aへ押し戻すことから、優れたシール効果を発揮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記密封装置101に対しては、以下の点で更なる機能の向上が求められる。
【0008】
すなわち上記密封装置101においては、上記したようにシールリップ124がシールフランジ113の機外側端面113aに摺動可能に接触することにより密封流体をシールするとともにシールフランジ113の機外側端面113aに設けたネジ溝114が回転時に遠心力による流体ポンピング作用を発揮して密封流体を機内側Aへ押し戻すことから優れたシール効果を発揮することができるが、その構成として、ネジ溝114がシールリップ124のリップ端と交差するように配置されている。したがって回転軸61の回転が停止して遠心力が消失し、これに伴ってネジ溝114による流体ポンピング作用が発揮されない状況になると、密封流体がネジ溝114を伝ってシールリップ124のリップ端をその外周側から内周側へ通過し、機外側Bへ漏洩すること(いわゆる静止漏れが発生すること)が懸念される。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、シールフランジに対しシールリップが摺動可能に接触し、回転時に流体ポンピング作用を発揮するネジ溝がシールフランジに設けられている密封装置において、静止漏れが発生するのを抑制することができる密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、以下の手段を採用した。
本発明の密封装置は、ハウジングと前記ハウジングに設けた軸孔に挿通する回転軸との間で機内側の密封流体が機外側へ漏洩しないようシールする密封装置であって、前記回転軸の外周に装着されるシールフランジに対し、前記ハウジングの軸孔内周に装着されるシールリップが摺動可能に接触する密封装置において、前記シールフランジにおける前記シールリップが摺動可能に接触する摺動領域をネジ溝無しの平坦面として設け、前記摺動領域の外周側に位置する外周側領域および前記摺動
領域の内周側に位置する内周側領域にそれぞれ、前記回転軸の回転時に流体ポンピング作用を発揮するネジ溝を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の密封装置によれば、シールフランジにネジ溝が設けられているが、このネジ溝は摺動領域に設けられておらず、外周側領域および内周側領域のみに設けられている。したがってネジ溝が摺動領域に設けられていないため、ネジ溝はシールリップのリップ端と交差せず、よって回転時の停止時に密封流体がネジ溝を伝ってシールリップのリップ端をその外周側から内周側へ通過すると云う事態が発生しない。したがって静止漏れが発生するのを抑制することが可能とされる。
【0012】
また、外周側領域および内周側領域にネジ溝が設けられているため、このネジ溝による流体ポンピング作用が発揮される。
【0013】
また、特に内周側領域のみならず外周側領域にもネジ溝が設けられているため、この外周側領域に設けられたネジ溝は、回転時流体ポンピング作用を発揮することにより、シールフランジを伝ってくる密封流体を摺動領域すなわちシールリップに近付かせにくくする。したがって内周側領域のみにネジ溝が設けられて外周側領域にネジ溝が設けられない場合と比較して、密封流体に対するシール性を高めることが可能とされる。
【0014】
摺動領域は、所定の径方向幅を備える環状の領域であって、本発明ではこの摺動領域にネジ溝が設けられていないため、摺動領域はネジ溝無しの平坦面とされる。したがって本発明では、ネジ溝無し平坦面が所定の径方向幅を備える環状の領域として設定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シールフランジに対しシールリップが摺動可能に接触し、回転時に流体ポンピング作用を発揮するネジ溝がシールフランジに設けられている密封装置において、静止漏れが発生するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
第1実施例・・・
図1および
図2は、本発明の実施例に係る密封装置1を示している。
【0019】
当該実施例に係る密封装置1は、ハウジング(シールハウジング)51とこのハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61との間で機内側Aの密封流体(油など)が機外側Bへ漏洩しないようにシールする密封装置(例えばエンジン用オイルシール)1であって、回転軸61の外周に装着されるスリンガー11と、スリンガー11の機外側Bに位置してハウジング51の軸孔52内周に装着されるリップシール部材21との組み合わせにより構成されている。
【0020】
スリンガー11は、金属等の剛材製であって、回転軸61の外周面に固定(嵌合)される筒状部(スリーブ部)12と、この筒状部12の一端(機内側端部)に設けられた径方向外向きのシールフランジ(フランジ部)13とを一体に有し、シールフランジ13の機外側端面13aに
図2に示すような、回転軸61の回転時に遠心力によるポンピング作用を発揮することにより密封流体を外周側(機内側A)へ向けて押し戻す作用を発揮する螺旋状のネジ溝14(14B,14C)が設けられている。矢印eは回転軸61の回転方向を示している。シールフランジ13の機外側端面13aおよびネジ溝14(14B,14C)については詳細を後述する。
【0021】
一方、リップシール部材21は、ハウジング51の軸孔52内周面に固定(嵌合)される金属等の剛材よりなる取付環22と、この取付環22に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体26とを有し、このゴム状弾性体26によって、ハウジング51の軸孔52内周面に接触することによりハウジング51および取付環22間をシールする外周シール部27と、取付環22の端面部に被着された端面被着部28と、スリンガー11におけるシールフランジ13の機外側端面13aに摺動可能に接触するシールリップ(端面リップ)29と、スリンガー11に対して非接触のグリース貯留用リップ30が一体に設けられている。シールリップ29はそのリップ端29aをもってシールフランジ13の機外側端面13aに摺動可能に接触している。端面被着部28の内周側に位置してダストリップ31が取り付けられ、このダストリップ31はファブリックよりなるものとされているが、上記ゴム状弾性体26によって一体に設けられたものであっても良い。
【0022】
取付環22は、ハウジング51の軸孔52内周面に固定(嵌合)される外周筒部23と、この外周筒部23の一端(機外側端部)に設けられた径方向内向きのフランジ部24とを一体に有している。
【0023】
また、当該実施例では特に、上記シールフランジ13の機外側端面13aおよびネジ溝14が以下のように構成されている。
【0024】
すなわち
図2に示すように、シールフランジ13はその機外側端面13aに、ネジ溝14を形成したネジ溝形成領域15を備えている。このネジ溝形成領域15は、所定の径方向幅h
0を備える環状の領域とされている。またこのネジ溝形成領域15は、シールリップ29が摺動可能に接触する摺動領域15Aと、摺動領域15Aよりも外周側の外周側領域15Bと、摺動領域15Aよりも内周側の内周側領域15Cとに分けられる。摺動領域15Aは所定の径方向幅h
1を備える環状の領域とされている。外周側領域15Bは所定の径方向幅h
2を備える環状の領域とされている。内周側領域15Cはこれも所定の径方向幅h
3を備える環状の領域とされている。
【0025】
所定の径方向幅h
1を備える環状の摺動領域15Aにネジ溝は設けられておらず、よってこの摺動領域15Aはネジ溝を備えない平坦面とされている。したがってここに、ネジ溝を備えない平坦面が所定の径方向幅h
1を備える環状の領域として設けられている。
【0026】
これに対し、摺動領域15Aよりも外周側の外周側領域15Bおよび摺動領域15Aよりも内周側の内周側領域15Cにはそれぞれネジ溝14が設けられており、すなわち外周側領域15Bに螺旋状の外周側ネジ溝14Bが設けられるとともに内周側領域15Cに同じく螺旋状の内周側ネジ溝14Cが設けられている。外周側ネジ溝14Bは内周側ネジ溝14Cの延長線上に設けられても良い。
【0027】
上記構成の密封装置1においては、回転軸61の回転時、シールリップ29がそのリップ端29aをもってスリンガー11のシールフランジ13の機外側端面13aに摺動可能に接触することによりシール機能を発揮するほか、回転軸61とともに回転するスリンガー11がシールフランジ13による流体振り切り作用およびネジ溝14による流体ポンピング作用を発揮するため、シールリップ29およびシールフランジ13間を通過する流体があってもこれを外周側(機内側A)へ押し戻すことが可能とされ、よって優れたシール機能が発揮される。
【0028】
また、回転軸61の回転が停止すると遠心力が消失し、これに伴って上記流体振り切り作用および流体ポンピング作用が一時停止するため、一部の密封流体がネジ溝14を伝って機内側Aからシールリップ29の内周側空間32へ流出することが懸念されるが、上記密封装置1では摺動領域15Aにネジ溝は設けられておらず、ネジ溝14はシールリップ29のリップ端29aと交差していない。したがって回転軸61の停止時に密封流体がネジ溝14を伝ってシールリップ29のリップ端29aをその外周側から内周側へ通過すると云う事態が発生しないため、静止漏れが発生するのを抑制することができる。
【0029】
また、上記したように外周側領域15Bおよび内周側領域15Cにはそれぞれ外周側ネジ溝14Bおよび内周側ネジ溝14Cが設けられているため、これらのネジ溝14B,14Cによる流体ポンピング作用が発揮され、シール性が発揮される。
【0030】
また、上記密封装置1では特に、内周側領域15Cのみならず外周側領域15Bにもネジ溝14(外周側ネジ溝14B)が設けられているため、このネジ溝14(外周側ネジ溝14B)が流体ポンピング作用を発揮することにより、シールフランジ13の機外側端面13aをその外周端部から径方向内方へ向け伝ってくる密封流体を径方向外方へ向けて押し戻す。したがって密封流体が摺動領域15Aに到達しにくくなり、よってシールリップ29によるシール効果を高めることができる。
【0031】
第2実施例・・・
尚、上記第1実施例において、ネジ溝14(外周側ネジ溝14Bおよび内周側ネジ溝14C)はその平面形状(C方向矢視形状)を曲線状とされているが、このネジ溝14の平面形状は直線状であっても良い。またネジ溝14(外周側ネジ溝14Bおよび内周側ネジ溝14C)は螺旋状に限定されず、第2実施例として
図3に示すような、径方向に延びる溝が複数本(図では8本)設けられた放射状であっても良い。
【0032】
そして、このような放射状のネジ溝14(外周側ネジ溝14Bおよび内周側ネジ溝14C)は、螺旋状のネジ溝14(外周側ネジ溝14Bおよび内周側ネジ溝14C)と比較して溝長さが短いものである。したがって流体ポンピング作用によって溝内を流れる密封流体(油)がシールフランジ13の外周側へ排出される時間を短縮することができ、よってネジ溝14(外周側ネジ溝14Bおよび内周側ネジ溝14C)によるシール効果を高めることができる。
【0033】
つぎに、参考例に係る発明について説明する。
【0034】
発明が解決しようとする課題・・・・
上記従来技術に係る
図7の密封装置101において静止漏れが発生する態様として、回転軸61の回転が停止したときにハウジング51の軸孔52内にて貯留される密封流体の液面水位が関係することがある。
【0035】
すなわち、ハウジング51に設けた軸孔52およびこの軸孔52に挿通した回転軸61がその中心軸線0(
図7(B)参照)を水平方向ないし略水平方向に向けて配置されることを前提として、回転軸61の回転停止時、ハウジング51の軸孔52内に貯留される密封流体の液面水位H(
図7(B)参照)が前記中心軸線0と同等の高さ位置または中心軸線0よりも下方の高さ位置となることがある。この場合、シールフランジ113の機外側端面113aの全周に設けられたネジ溝114は、その円周上一部のみが液面水位Hよりも下方に位置して密封流体に浸漬された状態となり、よってこのネジ溝114の円周上一部においてネジ溝114を経由しての静止漏れが発生する。
【0036】
したがって、このような状況下で使用される密封装置101では、液面水位Hよりも下方に位置する円周上一部のネジ溝114において静止漏れが発生しないように対策を講じることにより、静止漏れの発生を抑制することが可能となる。
【0037】
また、本発明に関連する他の従来技術として、上記特許文献4に掲載された内燃機関におけるピストン停止位置制御方法に係る技術がある。
【0038】
この技術は、内燃機関のピストン停止位置制御方法において、停止直前の吸気行程にある気筒に、外部装置から圧縮空気を予め設定又は算出したタイミングで導入して、ピストンを吸気行程の次の行程である圧縮行程の下死点近傍に留めるとするものであって、この技術によれば、回転軸(クランクシャフト)が常に一定の回転位置で停止する(回転軸の特定の円周上一箇所が常に12時位置(上死点位置)で停止する)ことになる。
【0039】
参考例に係る発明は以上の点に鑑みて、シールリップがシールフランジに対し摺動可能に接触するとともに回転時に流体ポンピング作用を発揮するネジ溝がシールフランジに設けられている密封装置において、静止漏れが発生するのを抑制することができる密封装置を提供することを目的とする。また、中心軸線を水平方向ないし略水平方向に向けた回転軸の回転が停止したときの密封流体の液面水位が前記中心軸線と同等の高さ位置または前記中心軸線よりも下方の高さ位置となる状況下で使用される密封装置において、静止漏れが発生するのを抑制することができる密封装置を提供することを目的とする。
【0040】
課題を解決するための手段・・・・
参考例に係る発明は上記目的を達成するため、以下の手段を採用した。
すなわち参考例に係る発明は、ハウジングと前記ハウジングに設けた軸孔に挿通する回転軸との間で機内側の密封流体が機外側へ漏洩しないようシールする密封装置であって、前記回転軸の外周に装着されるシールフランジに対し、前記ハウジングの軸孔内周に装着されるシールリップが摺動可能に接触し、前記回転軸の回転時に流体ポンピング作用を発揮するネジ溝が前記シールリップのリップ端と交差するように前記シールフランジに設けられている密封装置において、前記ネジ溝を、前記シールフランジにおける円周上の半分ないし略半分の領域に設け、残る円周上の半分ないし略半分の領域をネジ溝無しの平坦面としたことを特徴とする密封装置である。
【0041】
この参考例に係る発明によれば、ネジ溝がシールフランジにおける円周上の半分ないし略半分の領域のみに設けられ、残る円周上の半分ないし略半分の領域はネジ溝無しの平坦面とされている。したがってネジ溝を設けた領域(ネジ溝形成領域)が液面水位よりも上方に位置するとともにネジ溝無しの平坦面領域が液面水位よりも下方に位置するよう回転軸の回転が停止することにより、ネジ溝は密封流体に浸漬された状態とならない。したがってネジ溝を経由しての静止漏れが発生するのを抑制することが可能とされる。
【0042】
発明の効果・・・・
参考例に係る発明によれば、シールリップがシールフランジに対し摺動可能に接触するとともに回転時に流体ポンピング作用を発揮するネジ溝がシールフランジに設けられている密封装置において、静止漏れが発生するのを抑制することができる。また、中心軸線を水平方向ないし略水平方向に向けた回転軸の回転が停止したときの密封流体の液面水位が前記中心軸線と同等の高さ位置または前記中心軸線よりも下方の高さ位置となる状況下で使用される密封装置において、静止漏れが発生するのを抑制することができる。
【0043】
発明を実施するための形態・・・・
つぎに参考例に係る発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0044】
図4は、参考例に係る発明の実施例に係る密封装置1を示している。当該実施例に係る密封装置1は、ハウジング(シールハウジング)51とこのハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61との間で機内側Aの密封流体(油など)が機外側Bへ漏洩しないようにシールする密封装置(例えばエンジン用オイルシール)1であって、回転軸61の外周に装着されるスリンガー11と、スリンガー11の機外側Bに位置してハウジング51の軸孔52内周に装着されるリップシール部材21との組み合わせにより構成されている。
【0045】
スリンガー11は、金属等の剛材製であって、回転軸61の外周面に固定(嵌合)される筒状部(スリーブ部)12と、この筒状部12の一端(機内側端部)に設けられた径方向外向きのシールフランジ(フランジ部)13とを一体に有し、シールフランジ13の機外側端面13aに
図5に示すような、回転軸61の回転時に遠心力によるポンピング作用を発揮することにより密封流体を外周側(機内側A)へ向けて押し戻す作用を発揮する螺旋状のネジ溝14が設けられている。矢印eは回転軸61の回転方向を示している。シールフランジ13の機外側端面13aおよびネジ溝14については詳細を後述する。
【0046】
一方、リップシール部材21は、ハウジング51の軸孔52内周面に固定(嵌合)される金属等の剛材よりなる取付環22と、この取付環22に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体26とを有し、このゴム状弾性体26によって、ハウジング51の軸孔52内周面に接触することによりハウジング51および取付環22間をシールする外周シール部27と、取付環22の端面部に被着された端面被着部28と、スリンガー11におけるシールフランジ13の機外側端面13aに摺動可能に接触するシールリップ(端面リップ)29と、スリンガー11に対して非接触のグリース貯留用リップ30が一体に設けられている。シールリップ29はそのリップ端29aをもってシールフランジ13の機外側端面13aに摺動可能に接触している。端面被着部28の内周側に位置してダストリップ31が取り付けられ、このダストリップ31はファブリックよりなるものとされているが、上記ゴム状弾性体26によって一体に設けられたものであっても良い。
【0047】
取付環22は、ハウジング51の軸孔52内周面に固定(嵌合)される外周筒部23と、この外周筒部23の一端(機外側端部)に設けられた径方向内向きのフランジ部24とを一体に有している。
【0048】
また、当該実施例では特に、上記シールフランジ13の機外側端面13aおよびネジ溝14が以下のように構成されている。
【0049】
すなわち
図5に示すように、ネジ溝14が、シールフランジ13の機外側端面13aにおける円周上の半分(180度)ないし略半分(略180度)の領域のみに設けられ、残る円周上の半分(180度)ないし略半分(略180度)の領域はネジ溝無しの平坦面とされている。したがってシールフランジ13の機外側端面13aは、ネジ溝14を設けたネジ溝形成領域15と、ネジ溝無しの平坦面とされたネジ溝非形成領域16との組み合わせとされている。ネジ溝14の形状としては、ネジ溝14をシールフランジ13の機外側端面13aの全周に亙って設ける場合と同様の形状とされ、すなわちネジ溝14を全周に亙って設ける態様にて設計し、製作に際しその半分の半周分のみをネジ加工する。
【0050】
上記構成の密封装置1においては、ネジ溝14がシールフランジ13の機外側端面13aにおける円周上の半分ないし略半分の領域のみに設けられ、残る円周上の半分ないし略半分の領域はネジ溝無しの平坦面とされているため、
図6に示すようにネジ溝形成領域15が液面水位Hよりも上方に位置するとともにネジ溝非形成領域16が液面水位Hよりも下方に位置するよう回転軸61の回転が停止することにより、ネジ溝14は密封流体に浸漬された状態とならない。したがってネジ溝14を経由しての静止漏れが発生するのを抑制することができる。
【0051】
尚、
図6に示したように上記密封装置1は、中心軸線0を水平方向ないし略水平方向に向けた回転軸61の回転が停止したときの密封流体の液面水位Hが中心軸線0と同等の高さ位置または中心軸線0よりも下方の高さ位置となる状況下で使用されることを予定しており、更に、回転軸61が常に一定の回転位置で停止する(回転軸61の特定の円周上一箇所61Pが常に12時位置(上死点位置)で停止する)構造を備える回転機器に装着使用されることを予定している。したがって上記回転軸61における特定の円周上一箇所61Pがネジ溝形成領域15の円周上中央部に位置するように回転軸61に対しスリンガー11を装着する。このため、スリンガー11には回転軸61に対する円周上の位置決め手段を設けておくのが好ましく、
図6の例では、スリンガー11の内周面に位置決め用突起17が設けられ、この突起17が、回転軸61の外周面に設けた位置決め用凹部62に係合することにより円周上の位置決めがなされている。回転軸61が常に一定の回転位置で停止する構造は、内燃機関のピストン停止位置制御方法において、停止直前の吸気行程にある気筒に、外部装置から圧縮空気を予め設定又は算出したタイミングで導入して、ピストンを吸気行程の次の行程である圧縮行程の下死点近傍に留める技術(内燃機関におけるピストン停止位置制御方)などにより実現される。