(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255164
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置
(51)【国際特許分類】
B62M 25/08 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
B62M25/08
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-89213(P2013-89213)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2013-224138(P2013-224138A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】12002844.4
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ブラト・ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ・マウリツィオ
【審査官】
山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第2105377(EP,A2)
【文献】
特開2008−213831(JP,A)
【文献】
特開2003−048593(JP,A)
【文献】
特開2003−019991(JP,A)
【文献】
特開2007−001572(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0151073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 25/04、25/08
B62K 23/00
B62J 11/00、99/00
F16H 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置(100;101;102;300;400,500,600)であって、前記自転車の走行方向(X)に対して前方に向いているハンドルバーの端部(M)に装着されるのに好適なボディ(110;111;112;310;410,510,610)と、前記ボディ(110;111;112;310;410,510,610)に装着され、上方および下方へのギアシフトをそれぞれ制御するのに好適な、対応する電気接点(121、122;121、122)に作用する2つの電気作動部材(141、151;241、251;341、361;451、461,541,551)と、を備え、
前記2つの電気作動部材(141、151;241、251;341、361;451、461)は、60°から130°の角度(α)による角度間隔を介した2つの対面方向(A1、A2;B1、B3;C2、C3)にそれぞれ従って前記ボディ(110;111;112;310;410)と面することにより、
運転者の指が前記2つの電気作動部材(141、151;241、251;341、361;451、461,541,551)の一方または他方に直接圧力をかけることにより、運転者が前記電気作動装置の操作中に手の位置をほぼ変えることなくギアシフトを実行できることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100;101;102;300;400,500,600)において、前記角度(α)が75°から110°であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置(100;101;102)において、前記対面方向の1つ(A1;B1)は、前記自転車の前記走行方向(X)と略垂直に、側方に向いていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の装置において、前記対面方向の1つ(A2;C2)は、前記自転車の前記走行方向(X)と略垂直に、上方に向いていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の装置において、前記対面方向の1つ(B3;C3)は、前記自転車の前記走行方向(X)に向いていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の装置において、前記対面方向の1つは、前記自転車の前記走行方向(X)に対して略垂直に、下方に向いていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置において、前記電気作動部材(141、151;241、251;341、361;451、461, 541,551)はそれぞれ、対応するばね(142;154)に対する、対応する作動方向に従ってニュートラルな位置から作動位置に作動可能であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、前記電気作動部材の一方(141;151)は、前記作動方向にスライド自在に、前記ボディ(110;111;112;210;310)に装着されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置において、前記電気作動部材の一方(241)は、前記作動方向が前記ボディ(110)の前記対面方向(A1)と略一致するように配置されている対応するピン(242)の周囲を回転自在に、前記ボディ(110)に装着されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項7に記載の装置において、前記電気作動部材の一方(251)は、前記作動方向が前記ボディ(110)の前記対面方向(A2)と略垂直になるように配置されている対応するピン(254)の周囲を回転自在に、前記ボディ(110)に装着されていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置において、前記ボディ(110;112;310;410)は、前記ハンドルバーの前記端部(M)に係止するバンド(190;390;490)を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置において、前記ボディ(111)は、前記ハンドルバーの前記端部(M)の内側に装着するエキスパンダ(191)を備え、前記エキスパンダ(191)は拡張可能セクタ(192)と角度自在スペース(193)とを備えることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置であって、前記ボディ(112)によって回転可能に支持されるブレーキレバー(195)をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置であって、
前記ボディ(510;610)は、前記装置が前記ハンドルバーの前記管状端部(M)に装着されるときに前記自転車の前記走行方向(X)に延びる軸(S;T)を有する円筒状貫通座部(511;611)を備え、前記円筒状貫通座部(511;611)は、前記ボディ(510;610)を前記ハンドルバーの前記管状端部(M)の外周に配設し、かつ管状端部(M)自体の内側への自由な出し入れを可能にするように構成されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、前記ボディ(510)は前記円筒状貫通座部(511)の前記軸(S)の方向に、前記円筒状貫通座部(511)自体と実質的に同じ位置まで延設されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置において、前記ボディ(610)は前記円筒状貫通座部(611)の前記軸(T)の方向に、前記円筒状貫通座部(611)自体よりも実質的にさらに先へ、片持ち梁状に延設されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、自転車のギアシフト部の作動装置の技術分野に関する。より具体的に、本発明は、自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、レース用の自転車では、性能を向上させる解決策が絶えず模索されている。特に、スピードレース、典型的にはタイムトライアルなどを対象とした自転車では、自転車のすべての構成要素が空気力学的に良好な構成をとることがとりわけ重要である。さらに、性能を向上させると考えられる要因として、あらゆる制御装置の効率性だけでなく、制御装置の作動の容易さと安全性も挙げられる。結果として、運転者は制御装置を作動させる煩わしさに妨げられることなく体を使うことに努力を集中できるようになる。
【0003】
近年では、著しく前方に向いた2つの端部を有し、運転者が胴部の位置を前方に大きく傾けた空気力学的に効率の良い姿勢を維持できる、レースに特化したハンドルバーが定着している。
【0004】
こうしたハンドルバーの定着に伴い、ブレーキとギアシフト部の両方に向けた特殊な作動装置も定着している。こうした装置は、運転者が姿勢を変えることなく簡単に作動できるようにハンドルバーのまさに端部に収容されているため、バーエンド型と一般に称される。
【0005】
また、ギアシフト部の電気式の作動装置も知られている。この電気作動装置では、運転者は、各ギアシフト部において、上方へのギアシフトを指令するためには第1のスイッチを作動させ、下方へのギアシフトを指令するためには第2のスイッチを作動させなければならない。一般的に、第1のスイッチと第2のスイッチは隣接する。
【0006】
特許文献1には、ギアシフト部のバーエンド型電気作動装置が記載されている。この装置は、ハンドルバーの円筒状チューブの理想的な延設部を形成するボディと、該ボディに隣接し、該ボディから側方に突出するギアシフト部の第1の電気作動素子および第2の電気作動素子とを備える。特許文献1に記載の装置の代替の実施形態では、このギアシフト部の第1の電気作動素子および第2の電気作動素子はボディの対向する側面方向に面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開公報EP2105377A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、既知のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置は以下の欠点を有する。2つの作動素子が互いに隣接して配置されているため、例えば敷石を敷いた舗道などの地面が平坦でない場所を走る場合など、作動部材を誤って作動させることが起こり得る。このような事態は、言うまでもなく、スポーツ競技中には好ましくない。2つ目に、例えば、特許文献1に記載されるようにギアシフト部の電気作動素子がボディの対向する側面方向に面している場合、上方へのギアシフトおよび下方へのギアシフトを指令するためには、運転者は2本の指、典型的には親指と人差し指、を使用しなければならないだけでなく、ハンドルバーのグリップを離す、または少なくともグリップの位置を変えることを強いられやすい動きを行わなければならない。これらのすべてがギアシフト部の作動を複雑化し、体を使うことに対する集中力の低下という好ましからぬ結果を招く。
【0009】
出願人は、運転者1人1人が最適な手の位置をとり、作動装置の操作中にその手の位置をほぼ変えずに維持できるようにこのタイプのギアシフト部の作動装置を特殊設計することで、該装置の全体的な効率の向上が可能であることを実現した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、その第1の態様において、請求項1に記載の装置に関する。好ましい特徴は従属請求項に提示される。
【0011】
より具体的には、自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置であって、上記自転車の走行方向に対して前方に向いているハンドルバーの端部への装着に好適なボディと、上記ボディに装着され、上方および下方へのギアシフトをそれぞれ指令するのに好適な、対応する電気接点に作用する2つの電気作動部材とを備え、上記2つの電気作動部材は、60°から130°の角度による角度間隔を介した2つの対面方向にそれぞれ従って上記ボディと面することを特徴とする。
【0012】
本明細書および下記の請求項において使用する「対面方向」という表現は、上記電気作動部材が上記ボディと接する面と垂直な方向を意味する。上記作動部材の延設部が大きく、接平面が上記作動部材のある点と他の点とで著しく異なる場合、接平面は上記作動部材の重心位置にあるものと考える。
【0013】
その結果、上記2つの作動部材は有利に、識別可能なほど十分な間隔を介するため、例えば敷石を敷いた舗道などの、地面が平坦でない場所で乗る場合に起こりやすい、作動部材を誤って作動させることも起こり得ない。
【0014】
好ましくは、上記2つの電気作動部材がそれぞれ上記ボディと面する上記2つの対面方向の間の角度は、75°から110°であり、さらにより好ましくは85°から100°である。この角度は優れた妥協点であることが判明している。実際、上記角度はグリップの位置を大きく変えることなく簡易な作動を保証できるほど小さく、誤った作動のリスクを排除できるほど大きいことが判明した。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、上記対面方向の1つは、上記自転車の上記走行方向と略垂直に、側方に向いている。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、上記対面方向の1つは、上記自転車の上記走行方向と略垂直に、上方に向いている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、上記対面方向の1つは、上記自転車の上記走行方向に向いている。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、上記対面方向の1つは、上記自転車の上記走行方向に対して略垂直に、下方に向いている。
【0019】
好ましい実施形態では、上記2つの電気作動部材の一方は、自転車の走行方向と略垂直に、側方に向いた対面方向に従って上記ボディと面し、上記2つの電気作動部材の他方は、自転車の走行方向と略垂直に、上方に向いた対面方向に従って上記ボディと面している。
【0020】
別の好ましい実施形態では、上記2つの電気作動部材の一方は、自転車の走行方向と略垂直に、側方に向いた対面方向に従って上記ボディと面し、上記2つの電気作動部材の他方は、自転車の走行方向に向いた対面方向に従って上記ボディと面している。
【0021】
さらに別の好ましい実施形態では、上記2つの電気作動部材の一方は、自転車の走行方向と略垂直に、上方に向いた対面方向に従って上記ボディと面し、上記2つの電気作動部材の他方は、自転車の走行方向に向いた対面方向に従って上記ボディと面している。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態では、上記2つの電気作動部材の一方は、自転車の走行方向と略垂直に、側方に向いた対面方向に従って上記ボディと面し、上記2つの電気作動部材の他方は、自転車の走行方向と略垂直に、下方に向いた対面方向に従って上記ボディと面している。
【0023】
上記のすべての実施形態において、運転者は上記装置上の手のグリップの位置を大きく変えることなく、同一の指、好ましくは親指または人差し指、をわずかに動かすだけで、あるいは一方の作動部材に親指、他方の作動部材に人差し指を用いることで、2つの電気作動部材のいずれか一方を作動させ、ギアシフトを実行できる。上記の位置を前提とした場合、実際、運転者が同一の指で2つの電気作動部材を同時に作動させることは不可能であり、これにより過失による作動を有利に防ぐ。
【0024】
好ましくは、上記電気作動部材はそれぞれ、対応するばねに対する、対応する作動方向に従ってニュートラルな位置から作動位置に作動可能である。
【0025】
好ましい実施形態では、上記電気作動部材の一方は、上記作動方向にスライド自在に、上記ボディに装着されている。
【0026】
好ましい実施形態では、上記電気作動部材の一方は、上記作動方向が上記ボディの上記対面方向と略一致するように配置されている対応するピンの周囲を回転自在に、上記ボディに装着されている。
【0027】
好ましい実施形態では、上記電気作動部材の一方は、上記作動方向が上記ボディの上記対面方向と略垂直になるように配置されている対応するピンの周囲を回転自在に、上記ボディに装着されている。
【0028】
好ましい実施形態では、上記ボディは、上記ハンドルバーの上記端部に係止するバンドを備える。
【0029】
別の好ましい実施形態では、上記ボディは、上記ハンドルバーの端部の内側に装着するエキスパンダを備え、上記エキスパンダは拡張可能セクタと角度自在スペースとを備える。
【0030】
本発明は、第2の態様において、自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置であって、上記自転車の走行方向に対して前方に向いているハンドルバーの管状端部への装着に好適なボディと、上記ボディに装着され、各々がギアシフトを指令するのに好適な複数の電気作動部材とを備え、上記ボディは、上記装置が上記ハンドルバーに装着されるときに上記自転車の上記走行方向に延びる軸を有する円筒状貫通座部を備え、上記円筒状座部は、上記ボディを上記ハンドルバーの上記管状端部の外周に配設し、かつ管状端部自体の内側への自由な出し入れを可能にするように構成されることを特徴とするバーエンド型電気作動装置に関する。
【0031】
従って、自転車を組み立てる人は、独立したブレーキ装置とともに、本発明に記載の装置をギアシフト部の作動に使用できる。
【0032】
好ましい実施形態では、上記ボディは上記円筒状貫通座部の上記軸(S)の方向に、上記円筒状座部自体と実質的に同じ位置まで延設される。あるいは、上記ボディは上記円筒状貫通座部の上記軸(T)の方向に、上記円筒状座部自体よりも実質的にさらに先へ、片持ち梁状に延設される。運転者は自分の手の大きさに応じて、上記の実施形態から第1の実施形態または第2の実施形態を選択できる。ブレーキ装置を上記ギアシフト部の上記作動装置の上記作動部材に近付けて装着する可能性を考慮すると、第1の実施形態は手が大きい運転者により好適で、第2の実施形態は手が小さい運転者により好適であることは明らかである。
【0033】
添付の図面を参照しながら以下に説明する本発明の好ましい実施形態を読めば、本発明のさらなる特徴および利点はより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置を、ハンドルバーの端部に装着した斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、内部構成要素を示すために部品を取り除いた、
図1の装置の側面図である。
【
図7】
図7は、
図1の装置の電気作動部材の変形例の側面図である。
【
図8】
図8は、
図7の線VIII−VIIIで切断した断面図である。
【
図11】
図11は、
図1の装置の第1変形例を、ハンドルバーの端部に装着する前の斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る電気作動装置を、ハンドルバーの端部に装着した側面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第3の実施形態に係る電気作動装置を、ハンドルバーの端部に装着した側面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第4の実施形態に係る電気作動装置を、ハンドルバーの端部にブレーキレバーとともに装着した側面図である。
【
図16】
図16は、ブレーキレバーをハンドルバーの端部に装着する前の
図15の装置の斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の第5の実施形態に係る電気装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
なお、本明細書に記載および図示される装置は、ハンドルバーの左端部を対象とした装置であり、同一のハンドルバーの右端部には、左右対称に同一の装置(図示せず)が設けられているものとする。
【0036】
図1、
図2Aおよび
図2Bは、本発明の第1の実施形態に係る、競技用自転車(図示せず)、特にレース用自転車、のギアシフト部の電気作動装置100を示す。
【0037】
装置100は、いわゆるバーエンド型の装置であり、競技用自転車、さらに特にはタイムトライアルに特化した自転車、に使用されるタイプの自転車用ハンドルバーの端部Mに装着される。このようなハンドルバーでは、端部Mは自転車の走行方向Xに対して前方に向いている。運転者が従来のグリップを使用する可能性も考慮して、通常、同一のハンドルバーには従来型の端部、すなわち前方に向いていない端部を設けることもある。
【0038】
装置100は、ハンドルバーの端部Mへの装着に好適なボディ110と、ボディ110に収容される電気作動ユニット120とを備える。またボディ110は、装置100をハンドルバーの端部Mの外側に固定するバンド190を担持する。
【0039】
図3〜6を特に参照して、電気作動ユニット120は、プレート123に装着され多芯電気ケーブル124(
図1)に接続された2つの電気接点121および122と、支持プレート131に担持される2つの電気作動部材、すなわち第1の電気作動部材141および第2の電気作動部材151とを備える。ケーブル124は、ハンドルバーの端部Mの内側への装着用に設けられている。さらに
図1には、ハンドルバーの端部Mの外側への装着用に設けられたケーブル124’による代替案が破線で示されている。
【0040】
プレート123および支持プレート131は、装置100のボディ110に、複数のねじ139(
図2A)で装着、連結、固定されている。
【0041】
第1の電気作動部材141と支持プレート131との間には、運転者がギアシフト、例えば上方へのギアシフト、のバイアスをかけていないときに、第1の電気作動部材141を該部材のニュートラルな位置に弾性的に保持する一対のばね142が装着されている。具体的には、突起144が支持プレート131から、該支持プレートがプレート123と連結する側と反対側に延設されており、ばね142はそれぞれ、各突起144に形成された対応する座部143に収容される。各突起144は、該突起に伴うばね142とともに、第1の電気作動部材141に形成された対応する空洞145によって受けられるのに好適である。
【0042】
第1の電気作動部材141はさらにもう1つの空洞146を備える。該空洞は一対の空洞145の間に配置されるのが好ましい。該空洞はまた、ギアシフト、例えば上方へのギアシフト、を指令するために支持プレート131に形成された開口148を通って対応する電気接点121に作用する、第1の当接部147を受けるのに好適であることが好ましい。
【0043】
ガイド座部153が支持プレート131から、該支持プレートがプレート123に装着される側と反対側に延設されており、第2の電気作動部材151は該ガイド座部の内側にスライドするのに好適なスライド152を備える。
【0044】
第2の作動部材151と支持プレート131との間には、運転者がギアシフト、例えば上方へのギアシフト、のバイアスをかけていないときに、第2の電気作動部材151を該部材のニュートラルな位置に弾性的に保持するばね154が装着されている。具体的には、ばね154は、スライド152に形成された空洞155と、ガイド座部153の底部から上方に突出するピン156との間に装着される。
【0045】
また、スライド152は第2の当接部158に作用するのに好適な傾斜突起157を有する。第2の当接部158はギアシフト、例えば下方へのギアシフト、を指令するために、スライド可能に支持プレート131に装着され、該支持プレートからプレート123に向かって延設されて対応する電気接点122に作用する。
【0046】
図1が示すように、第1の電気作動部材141と第2の作動部材151は、60°から130°、好ましくは75°から110°、さらにより好ましくは85°から100°の角度による角度間隔を介した2つの対面方向のうち、それぞれが対応する対面方向に従って装置100のボディ110と面する。より具体的には、
図1の装着位置において、第1の電気作動部材141は、自転車の走行方向Xと略垂直に、側方に向いた対面方向A1に従ってボディ110に面し、第2の作動装置151は、自転車の走行方向Xと略垂直に、上方に向いた対面方向A2に従ってボディ110に面している。既に記載したように、対面方向A1、A2は、電気作動部材141、151がボディ110と接する面と垂直な方向である。ただし、各図において、電気作動部材151は静止位置にある状態が図示されている。従って、この方向A1、A2はそれぞれ、電気作動部材141、151において、ボディ110の外面と交差する。
【0047】
図7〜10は、本発明の装置100の電気作動ユニットの変形例を示す。この変形例は一様に参照符号220で示される。
【0048】
電気作動ユニット220は、電気作動ユニット120と全く同じように、プレート123に装着され多芯電気ケーブル124(
図1)に接続された2つの電気接点121および122と、支持プレート231に担持される第1の電気作動部材241および第2の電気作動部材251とを備える。
【0049】
第1の電気作動部材241は、支持プレート231の、該支持プレートがプレート123と連結する側に対して反対側に、第1のピン242を介してヒンジ接続される突起243を有する。さらに、第1の電気作動部材241は空洞246を有する。該空洞は、ギアシフト、例えば上方へのギアシフト、を指令するために支持プレート231に形成された開口248を通って対応する電気接点121に作用する、第1の当接部247を受けるのに好適である。
【0050】
第2の電気作動部材251はタング252を備える。該タングは、その端部253において、支持プレート231の、該支持プレートがプレート123と連結する側と反対側に、第2のピン254を介してヒンジ接続される。タング252は、ギアシフト、例えば下方へのギアシフト、を指令するために対応する電気接点122に作用する、第2の当接部256を収容する座部255を有する。
【0051】
図11は、上記の実施形態に係る電気作動装置の第1の変形例101を示す。装置101が装置100と異なるのは、装置101がバンドの代わりに、ハンドルバーの端部Mの内側への固定用にボディ111に装着されたエキスパンダ191(エキスパンダ自体は既知であるため、詳述は省略する)を備えるという点だけである。エキスパンダ191は、拡張可能セクタ(splayable sector)192と、該セクタ間に設けられる角度自在スペース(free angular space)193とを備える。その他の特徴はすべて装置100の特徴と同一であるため、詳しい説明および図示は省略する。
【0052】
図12は、上記の実施形態に係る電気作動装置の第2の変形例102を示す。装置102が装置100と異なるのは、装置102がボディ112によって回転可能に支持されるブレーキレバー195を含むという点だけである。その他の特徴はすべて装置100の特徴と同一であるため、詳しい説明および図示は省略する。
【0053】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る、競技用自転車(図示せず)、特にレース用自転車、のギアシフト部の電気作動装置300を示す。
【0054】
装置300は、ハンドルバーの端部Mへの装着に好適なボディ310と、ボディ310の内側に複数のねじ339で固定され、第1の電気作動部材341および第2の電気作動部材361とを具備する電気作動ユニット320とを備える。ボディ310は、装置300をハンドルバーの端部Mに固定するバンド390を担持する。
【0055】
装置300は、ボディ310と電気作動部材341および361との対面方向において、装置100と装置100の変形例101および102と異なる。より具体的には、
図13の装着位置において、第1の電気作動部材341は、自転車の走行方向Xと略垂直に、側方に向いた対面方向B1に従ってボディ310と面し、第2の作動装置361は、自転車の走行方向Xと略一致した対面方向B3に従ってボディ310と面する。
【0056】
図14は、本発明の第3の実施形態に係る、競技用自転車(図示せず)、特にレース用自転車、のギアシフト部の電気作動装置400を示す。
【0057】
装置400は、ハンドルバーの端部Mへの装着に好適なボディ410と、ボディ410の内側に複数のねじ439で固定され、第1の電気作動部材451および第2の電気作動部材461とを具備する電気作動ユニット420とを備える。ボディ410は、装置400をハンドルバーの端部Mに固定するバンド490を担持する。
【0058】
装置400は、ボディ410と電気作動部材451および461との対面方向において、装置100と装置100の変形例101および102と異なる。より具体的には、
図14の装着位置において、第1の電気作動部材451は、自転車の走行方向Xと略垂直に、上方に向いた対面方向C2に従ってボディ410と面し、第2の作動装置461は、自転車の走行方向Xと略一致した対面方向C3に従ってボディ410と面する。
【0059】
次に
図1を参照して、自転車のギアシフト部のバーエンド型電気作動装置100の動作について説明する。当然ながら、装置100に関して記載した内容は、装置100の2つの変形例101および102と代替の実施形態300および400にも、必要な変更を加えた上で有効である。
【0060】
運転者は、上方または下方へのギアシフトを実行しようとするとき、指(典型的には親指または人差し指)で電気作動部材を二者択一的に操作することになる。
【0061】
装置100が、
図3〜6を参照して図示および記載された電気作動ユニット120を装着する場合、上方へのギアシフトを指令するには、運転者は、指を用いて、第1の電気作動部材141に圧力をかける。これにより、第1の電気作動部材141が、第1の電気作動部材141とボディ110との対面方向A1と略一致する作動方向に従って、ニュートラルな位置から作動位置へと動く。
【0062】
第1の電気作動部材141がニュートラルな位置から作動位置に動くと、ばね142が圧縮され、結果として第1の当接部147が動く。これにより、第1の当接部147が電気接点121に作用し、その結果、電気接点121が上方ギアシフト電気信号を送信する。このギアシフトを実行する信号の管理方法自体は当該技術分野において周知であるため、説明は省略する。
【0063】
一方、下方へのギアシフトを指令するには、運転者は、同じく指で、第2の電気作動部材151に圧力をかける。これにより、第2の電気作動部材151が、第2の電気作動部材151とボディ110との対面方向A2と略一致する作動方向に従って、ニュートラルな位置から作動位置へと動く。
【0064】
第2の電気作動部材151がニュートラルな位置から作動位置に動くと、ガイド座部153にスライド152がスライドして、結果としてばね154が圧縮され、突起157が第2の当接部158に作用する。その結果、当接部158が電気接点122に作用し、電気接点122が下方ギアシフト電気信号を送信する。このギアシフトを実行する信号の管理方法自体は当該技術分野において周知であるため、説明は省略する。
【0065】
装置100が、
図7〜10を参照して図示および記載された電気作動ユニット220を装着する場合、上方へのギアシフトを指令するには、運転者は、指で、第1の電気作動部材241を操作する。これにより、第1の電気作動部材241が、第1のピン242を軸としてニュートラルな位置と作動位置との間を回転する。このとき、第1の電気作動部材241の作動方向は、同様の第1の電気作動部材141とボディ110との対面方向A1と略一致する。
【0066】
第1の電気作動部材241がニュートラルな位置と作動位置との間を回転すると、第1の当接部247が動く。これにより、当接部247が電気接点121に作用し、電気接点121が上方ギアシフト電気信号を送信する。このギアシフトを実行する信号の管理方法自体は当該技術分野において周知であるため、説明は省略する。
【0067】
一方、下方へのギアシフトを指令するには、運転者は、同じく指で、第2の電気作動部材251を操作する。これにより、第2の電気作動部材251が、第2のピン254を軸としてニュートラルな位置と作動位置との間を回転する。このとき、第2の電気作動部材251の作動方向は、同様の第2の電気作動部材151とボディ110との対面方向A2に略垂直である。
【0068】
第2の作動部材251がニュートラルな位置と作動位置との間を回転すると、第2の当接部256が動く。これにより、第2の当接部256が電気接点122に作用し、電気接点122が下方ギアシフト電気信号を送信する。
【0069】
装置100(または101または102または300または400)の特有の動作によって、運転者は、手と該装置を一体的に、空気力学的に好適な位置に維持しながら、同じ指、例えば親指、を用いて、上方または下方へのギアシフトを指令できる。さらに、親指を少し回して第1または第2の作動部材まで移動させ、親指に圧力をかけるまたは親指を回すだけで望み通りのギアシフトを実行できるため、運転者はギアシフトの実行中に上記の手の位置をほぼ維持できる。
【0070】
さらに、これらの2つの作動部材は十分な間隔を介するため、有利に識別可能であり、例えば舗道などの地面が平坦でない場所で乗る場合に起こりやすい、作動部材を誤って作動させることも起こり得ない。
【0071】
図15〜17は、本発明の第4の実施形態に係る、競技用自転車(図示せず)、特にレース用自転車、のギアシフト部の電気作動装置500を示す。
【0072】
装置500は、ハンドルバーの端部Mへの装着に好適なボディ510と、該ボディの内側に複数のねじ539で固定され、電気作動部材541および551を具備する電気作動ユニット520とを備える。ボディ510は、装置500をハンドルバーの端部Mに固定するバンド590を担持する。
【0073】
装置500は、ボディ510が、ハンドルバーの管状端部Mを使用時に受けるのに好適な円筒状貫通座部511を備える点で、装置100と異なる。円筒状貫通座部511は、装置500がハンドルバーMに装着されるときに、自転車の走行方向Xに延びる軸Sを有する。円筒状座部511は、ボディ510をハンドルバーの管状端部Mの外周に配設し、かつ管状端部M自体の内側への自由な出し入れを可能にするように構成される。ボディ510は円筒状貫通座部511の軸Sの方向に、円筒状座部自体と実質的に同じ位置まで延設される。その他の特徴はすべて装置100の特徴と同一であるため、詳しい説明および図示は省略する。
【0074】
ボディ510のこうした特殊な構成によって、独立ブレーキレバー595を端部Mの内側に装着できる。このために、ブレーキレバー595は略円筒状ボディ596を備え、該ボディには、ハンドルバーの端部Mの内側への挿入および固定用のエキスパンダ597(エキスパンダ自体は既知であるため、詳述は省略する)が装着される。
【0075】
図18〜21は、本発明の第5の実施形態に係る、競技用自転車(図示せず)、特にレース用自転車、のギアシフト部の電気作動装置600を示す。装置600は、第1の電気作動部材641および第2の電気作動部材651を備え、装置500とは、円筒状貫通座部611を設けたボディ610の構成が異なる。ボディ610は円筒状貫通座部611の軸Tの方向に、円筒状座部自体よりも実質的にさらに先へ、片持ち梁状に延設される。その他の特徴はすべて装置500の特徴と同一であるため、詳しい説明および図示は省略する。
【0076】
ボディ610のこうした特殊な構成によって、ブレーキレバー695を、ブレーキレバー695が装置600のボディ610に部分的に隣接するように、管状端部Mの内側に装着できる。