特許第6255174号(P6255174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255174
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】感圧複写用発色シート及び感圧複写紙
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/132 20060101AFI20171218BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20171218BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20171218BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20171218BHJP
   D21H 19/84 20060101ALI20171218BHJP
   D21H 21/28 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B41M5/132
   B41M5/52 100
   D21H27/00 Z
   D21H19/10 B
   D21H19/84
   D21H21/28
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-135634(P2013-135634)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-9411(P2015-9411A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】田中 一輝
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−226160(JP,A)
【文献】 特開2004−136463(JP,A)
【文献】 特開2005−288758(JP,A)
【文献】 特開平01−275179(JP,A)
【文献】 特開2001−192998(JP,A)
【文献】 特開2001−341409(JP,A)
【文献】 特開2001−347748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙と、この基紙の表面側に塗工により形成され、水溶性高分子及びスチレンアクリル系サイズ剤を含有する印刷層と、この基紙の裏面側に形成され、発色剤及びバインダーを主成分とする発色層とを備える感圧複写用発色シートであって、
上記水溶性高分子がチキソ性係数4以上8以下かつカチオン価度0.001〜0.004のタピオカ澱粉であり、
上記印刷層が上記水溶性高分子を含有する塗工液の塗工により一部が基紙に含浸して形成されており、
透気抵抗度が60秒/100ml以上150秒/100ml以下、上記印刷層表面の表面粗さが2.1μm以上2.4μm以下、上記印刷層表面に1.4μlの蒸留水の液滴を着滴させた場合の着滴10秒後の静的接触角が95度以上120度以下であることを特徴とする感圧複写用発色シート。
【請求項2】
請求項1に記載の感圧複写用発色シートを備える感圧複写紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧複写用発色シート及び感圧複写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ノーカーボン紙とも呼称される感圧複写紙は、一般に、電子供与性有機発色剤等を内包するマイクロカプセルを主成分とした発色層を支持体の裏面に積層した上用紙と、上記発色剤との接触により顕色する電子受容性顕色剤を主成分とした顕色層を表面に積層した下用紙とを有する。この感圧複写紙は、筆記用具やプリンタ等の圧力により上用紙の発色層内のマイクロカプセルが破壊され、マイクロカプセルに内包されていた発色剤が顕色剤層に転移し、下用紙の顕色層内の顕色剤と反応することによって、上用紙に筆記、印刷等された文字等が下用紙に複写される仕組みになっている。また、この感圧複写紙としては、表面に顕色層、裏面に発色層が積層された中用紙を上用紙と下用紙との間に1枚以上備えるものも用いられる。
【0003】
上記感圧複写紙は各種伝票類に多用され、感圧複写紙を構成する各シートには、伝票の用途ごとにフォームが印刷される。この各シートへの図柄等のフォーム印刷は、従来はオフセット印刷、活版印刷等が使用されていたが、近年、インクジェット印刷の技術発展に伴って、インクジェット印刷が感圧複写紙へのフォーム印刷に適用されつつある。インクジェット印刷は、製版が不要であり、フォーマットの変更が簡単にできるため、小ロットの印刷や可変情報の印刷に適している。そのため、感圧複写紙において、宛名、宛先やバーコード等の可変情報をインクジェット印刷で行う手法が普及してきている。またフォーム印刷とは別に、中用紙及び下用紙に重ねて文字を印刷する場合、上用紙にドットプリンタによるドット印字が行われる。
【0004】
上述のようなインクジェット印刷の普及に伴い、インクジェットインクの滲みを防止し乾燥性を向上させるために澱粉を塗工した感圧複写紙用原紙が考案されている(特開2010−222754号公報参照)。
【0005】
上記従来の感圧複写用原紙は、澱粉を含有する印刷層によりインクジェット印刷におけるインクの滲みがある程度改善される。しかし、印刷層の被膜性が弱いため、ドットプリンタで印字した際にインキ溶剤が裏抜けし発色濃度が低下するという不都合がある。そこで、インクジェット印刷及びドット印字双方の印刷適性に優れる感圧複写用発色シートが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−222754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、インクジェット印刷のインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字の発色濃度にも優れる感圧複写用発色シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
基紙と、この基紙の表面側に塗工により形成され、水溶性高分子を含有する印刷層と、この基紙の裏面側に形成され、発色剤及びバインダーを主成分とする発色層とを備える感圧複写用発色シートであって、
上記水溶性高分子のチキソ性係数が4以上8以下であり、
上記印刷層が上記水溶性高分子を含有する塗工液の塗工により形成されていることを特徴とする。
【0009】
当該感圧複写用発色シートは、4以上8以下のチキソ係数を有する水溶性高分子を含有する塗工液の塗工によって印刷層が形成されていることから、塗工時にブレードやロッド等からせん断力を受けることによって水溶性高分子を含有する塗工液の粘度が低下し、水溶性高分子が基紙中に部分的に沈降した後に不動化する。これにより、基紙中の塗工面側においてフィルム状の膜が形成され、バリア性が強くなるため、基紙へのドットプリントインキの浸透(裏抜け)が防止される。一方で、このフィルム状の膜は上述のように部分的に基紙に含浸しているため、基紙の塗工面側表面は繊維の空隙が残され、インクジェットインクの滲みが防止されると共に乾燥性が向上する。その結果、当該感圧複写用発色シートは、インクジェット印刷におけるインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字における発色濃度の低下を防止することができる。なお、「チキソ性」とは、一定の力を加えると粘度が低下し、静置すると元の粘度に回復する性質をいう。
【0010】
上記水溶性高分子がタピオカ澱粉を含むことが好ましい。このように、水溶性高分子としてタピオカ澱粉を用いることで、印刷層を形成する塗工液のチキソ性を容易かつ確実に向上させることが可能となり、また、タピオカ澱粉は造膜性にも優れているため、当該感圧複写用発色シートのインクジェット印刷の滲み防止性及び乾燥性、並びにドット印字の発色濃度をさらに改善することができる。
【0011】
当該感圧複写用発色シートの透気抵抗度としては、60秒/100ml以上150秒/100ml以下が好ましく、上記印刷層表面の表面粗さとしては、2.1μm以上2.4μm以下が好ましく、上記印刷層表面に1.4μlの蒸留水の液滴を着滴させた場合の着滴10秒後の静的接触角としては、95度以上120度以下が好ましい。このように、透気抵抗度、表面粗さ及び静的接触角を上記範囲内とすることで、印刷層の水分吸収性を一定範囲に制御することが可能である。これにより、当該感圧複写用発色シートにおいて、インクジェット印刷のインクが素早く吸収され高い乾燥性を発揮できると同時に、インクが過度に吸収されることが抑制されるためインクの裏抜けを防止することができる。
【0012】
また、当該感圧複写用発色シートを備える感圧複写紙は、インクジェット印刷及びドット印字で鮮明な文字等を印刷することができる。
【0013】
ここで、「チキソ性係数」とは、ハイシェア粘度計を用い、水溶性高分子を水に溶かした固形分濃度10質量%の水溶液について、25℃において、せん断速度を徐々に上昇させた場合のせん断速度5×10−1における粘度を、せん断速度10×10−1における粘度で除した値であり、数値が大きいほどチキソ性が高いことを意味する。「透気抵抗度」とは、JIS−P8117(2009)に準拠して測定される値をいう。「表面粗さ」とは、レーザー顕微鏡により測定された算術平均粗さをいう。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の感圧複写用発色シートによれば、インクジェット印刷のインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字の発色濃度にも優れるため、インクジェット印刷及びドット印字双方の印刷適性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳説する。
【0016】
本発明の感圧複写用発色シートは、基紙と、この基紙の表面側に塗工により形成され、水溶性高分子を含有する印刷層と、この基紙の裏面側に形成され、発色剤及びバインダーを主成分とする発色層とを備え、水溶性高分子のチキソ性係数が4以上8以下であり、上記印刷層が上記水溶性高分子を含有する塗工液の塗工により形成されたものである。
【0017】
以下、当該感圧複写用発色シートの基紙、印刷層及び発色層を構成するのに必須又は好適な具体的成分(原料パルプ、填料、水溶性高分子、発色剤等)、並びに当該感圧複写用発色シートの製造方法について説明する。
【0018】
<基紙>
当該感圧複写発色シートの基紙は、原料パルプを抄紙して得られる。
【0019】
(原料パルプ)
当該感圧複写用発色シートの基紙に用いられる原料パルプとしては、特に限定されるものではなく、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ;ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを使用することができる。
【0020】
これらの原料パルプの中でも、基紙としての各種品質特性等をバランスよく効率的に達成するために、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等のバージンパルプ、または、上白古紙、ケント古紙、チラシ古紙、色上古氏、オフィス古紙、新聞古紙、雑誌古紙から製造された古紙パルプ(高白色度脱墨パルプ)が好ましい。具体的には、原料パルプにおいて、LBKPを70〜100質量%、NBKPを0〜10質量%、高白色度脱墨パルプ(FDIP)を0〜20質量%とすることが好ましい。一般的に針葉樹と比較して広葉樹は、繊維が短くて細いため、平坦性が生じやすく、滑らかで緻密な紙層を形成することができる。従って、原料パルプ中のLBKPの比率を70質量%以上100質量%以下と高くすることで、インクジェットインクの滲み、発色性を向上させることができ好ましい。
【0021】
また、基紙に用いる原料パルプの叩解度は、JIS−P8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に記載の方法に準拠して測定したカナディアンスタンダードフリーネス(以下CSFという)が、350ml以上470ml以下が好ましく、360ml以上450ml以下がさらに好ましい。CSFが上記上限を超えると繊維長の長いパルプの比率が高くなり、インクジェット印刷での滲みが生じやすくなるおそれや繊維同士の絡み合いが少なくなり引張強度が低下するおそれがある。一方、CSFが上記下限未満では、叩解が進み繊維長の短いパルプの比率が高まり、繊維同士の絡み合いが強くなってインクジェットインクの浸透が遅くなり乾燥性が低下するおそれがある。
【0022】
(内添サイズ剤)
当該感圧複写用発色シートの基紙には、サイズ性を向上させるために内添サイズ剤が含有されることが好ましい。この内添サイズ剤としては、特に限定されるものではなく、ロジンエマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマーサイズ剤、アルケニル無水コハク酸サイズ剤、強化ロジンサイズ剤等、スチレンアクリル系サイズ剤、の公知の種々の内添サイズ剤を使用することができる。これらの中でも、サイズ効果が高くインクジェットインクの裏抜け防止効果が高いロジンエマルジョンサイズ剤が特に好ましい。
【0023】
上記内添サイズ剤の添加量としては、対パルプ固形分あたりの質量基準で、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.7質量%以下がより好ましく、0.04質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。内添サイズ剤の添加量が上記範囲未満の場合、インクジェットインクを基紙が吸収し易くなってインクの裏抜け等が発生するおそれがある。逆に、内添サイズ剤の添加量が上記範囲を超える場合、抄紙工程において、サイズ剤内の油脂成分がドライヤー表面に付着して被膜することにより、基紙表面の光沢度及び平滑度が低下するおそれがある。また、抄紙工程内におけるスケール発生の原因となり、異物欠陥が発生するおそれがある。
【0024】
(填料)
当該感圧複写用発色シートの基紙には、上記原料パルプに、上記内添サイズ剤以外に内添の填料として従来製紙用途で用いられている填料を基紙の平滑性や不透明度を向上させるため、添加することが好ましい。この填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー、焼成クレー、合成ゼオライト、シリカ、ポリスチレンラテックス、尿素ホルマリン樹脂等が挙げられる。これら填料の中でもタルクを主成分とする填料を内添することが好ましい。タルクを用いることで、タルクの高い親油性による発色剤を包含するカプセルの定着と、遊離オイルの基紙表面への定着とによって、基紙中への発色剤の浸透が抑制され、効果的な感圧発色が得られるほか、タルクの硬度の低さによって発色汚れを防止できる。なお、タルクの使用量は、填料全量の50〜100質量%であることが好ましい。なお、用いる填料の結晶構造が紡錘型、針状、柱状、毬栗状といった鋭角な凸部を有する化合物や、硬度が高い填料、例えば軽質炭酸カルシウムは、発色汚れを生じるおそれや発色濃度も低い傾向を示すおそれがある。また、基紙中の填料の含有量は、JIS−P8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に記載の方法に準じて測定した基紙の灰分が1質量%以上6質量%以下になるように調整することが好ましく、2質量%以上5質量%以下に調整することがさらに好ましい。灰分が上記範囲未満の場合、基紙の不透明度が低下するおそれや、基紙中へ発色剤が浸透し感圧発色が低下するおそれがある。逆に、灰分が上記範囲を超える場合、パルプ繊維同士の絡み合いを阻害し、基紙の引張強度が低下するおそれがある。
【0025】
また、上記原料パルプには、本発明の効果を損なわない範囲で、サイズ剤及び填料以外で、従来製紙用途で用いられている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の各種抄紙用内添助剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加することができる。
【0026】
(表面処理剤)
当該感圧複写用発色シートの基紙の表面には、表面強度を高め、サイズ性を向上させるため、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤が塗布されることが好ましい。表面処理剤を塗布した上に印刷層を形成することによって、インクジェットインクの裏抜け防止効果をさらに向上させることができる。この水溶性高分子としては、例えば酸化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉等のエステル化澱粉、自家変性澱粉等の変性澱粉が使用でき、その他にPVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミド等があげられ、これらは単独又は同時に用いることができる。これら水溶性高分子の中でも汎用性の高い酸化澱粉が好適に用いられる。また上記表面処理剤には、さらにサイズ効果を高めるため表面サイズ剤を配合することが好ましい。表面サイズ剤として、例えばアルキルケテンダイマー系、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタクリル酸系共重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、オレフィン系重合体等の公知の種々の表面サイズ剤を使用することができる。これらの中でも、サイズ効果が高く、発色汚れの原因とならないことや発色剤の沈み込み防止効果や塗工ムラ防止効果の面からアルキルケテンダイマー系表面サイズ剤が特に好ましい。
【0027】
上記表面処理剤に配合する表面サイズ剤の含有量としては、固形分換算で塗工液全体の0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。表面サイズ剤の含有量が上記範囲未満の場合、充分なサイズ効果が得られず発色剤の沈み込みや塗工ムラ防止効果が十分に得られないおそれがある。逆に、表面サイズ剤の含有量が上記範囲を超える場合、コストが上昇するばかりでなく、インクジェットインクの乾燥性が低下するおそれがある。
【0028】
上記表面処理剤の塗工量は、固形分として基紙の片面あたり0.3g/m以上1.5g/m以下が好ましく、さらには0.5g/m以上1.0g/m以下が好ましい。表面処理剤の塗工量が上記範囲未満の場合、表面強度が不足し、感圧複写紙用原紙から製造される感圧複写紙に印刷した際に、インキタックにて取られが発生し、白抜けが発生するおそれがある。逆に、表面処理剤の塗工量が上記範囲を超える場合、印刷層の水溶性高分子が基紙に沈降せず、インクジェットインクの滲みが発生するおそれや乾燥性が低下するおそれがある。
【0029】
<印刷層>
当該感圧複写用発色シートにおいては、基紙の表面側に、チキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子を含有する塗工液を塗工して形成される印刷層が積層されている。なお、印刷層はその一部が基紙に含浸されていてもよい。
【0030】
(水溶性高分子)
本発明では、印刷層を形成する塗工液にチキソ性を付与する目的でチキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子を含有させる。水溶性高分子のチキソ性係数は、4以上8以下であり、5以上7以下がより好ましい。水溶性高分子のチキソ性係数が上記範囲未満の場合、上述した水溶性高分子が基紙中に沈降しながら膜を形成する作用が十分得られないおそれがある。逆に、塗工液のチキソ性係数が上記範囲を超える場合、塗工液の調製が困難になるおそれや、バリア性が高くなり過ぎてインクジェットインクの乾燥性が低下するおそれがある。なお、チキソ性係数とは、ハイシェア粘度計を用い、水溶性高分子を水に溶かした固形分濃度10質量%の水溶液について、25℃において、せん断速度を徐々に上昇させた場合のせん断速度5×10−1における粘度を、せん断速度10×10−1における粘度で除した値であり、数値が大きいほどチキソ性が高いことを意味する。
【0031】
上記チキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子としては、例えば、澱粉類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合してチキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子としてもよい。これらの水溶性高分子の中でも、造膜性に優れ、チキソ性にも優れるタピオカ澱粉が特に好ましい。
【0032】
またタピオカ澱粉のカチオン化度としては、0.001〜0.004が好ましい。カチオン化度を上記範囲とすることによって、タピオカ澱粉が基紙表面に留まり易くなるため、嵩高効果を高め、インクジェットインキの吸収性や乾燥性を高めることができる。なお、カチオン化度とは、ケルダール分析法に従って澱粉1分子中の窒素原子の含有量から窒素含有量を算出し、この窒素含有量及び重量平均分子量からグルコース残基1つあたりのカチオン基導入量を算出したものである。
【0033】
チキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子の塗工液中の含有量としては、固形分換算で塗工液全体の65質量%以上85質量%以下が好ましく、70質量%以上80質量%以下がより好ましい。チキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子の含有量が上記範囲未満の場合、印刷層を形成する塗工液に十分なチキソ性を付与できないおそれがある。逆に、チキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子の含有量が上記範囲を超える場合、印刷層を形成する塗工液の粘性が高くなって基紙への塗工が困難になるおそれがある。
【0034】
上記印刷層を形成する塗工液は、上記チキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子以外の水溶性高分子を含有してもよい。この水溶性高分子としては、従来製紙用途で用いられている水溶性高分子を使用することができる。具体的には、例えば蛋白質類(カゼイン、大豆蛋白等)、ラテックス類(メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックス若しくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、これらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等)、合成樹脂系バインダー(オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等)等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0035】
(表面サイズ剤)
本発明では、インクジェットインクの滲みを抑える目的で、表面サイズ剤を印刷層に含有させることが好ましい。このサイズ剤としては、特に限定されるものではなく、ロジン系サイズ剤、ワックス系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー(AKD)、スチレンアクリル系サイズ剤、脂肪酸エステル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、各種エマルジョンサイズ剤等の公知の種々のサイズ剤を用いることができる。これらの中でも、親水性と疎水性のバランスに優れインクジェットインクの乾燥性と滲み防止効果の両方に優れるスチレンアクリル系サイズ剤が特に好ましい。
【0036】
表面サイズ剤の含有量としては、固形分換算で塗工液全体の15質量%以上35質量%以下が好ましく、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。表面サイズ剤の含有量が上記範囲未満の場合、滲み防止効果が十分に得られないおそれがある。逆に、表面サイズ剤の含有量が上記範囲を超える場合、コストが上昇するばかりでなく滲み防止効果が向上しないほか、インクジェットインクの乾燥性が低下するおそれがある。
【0037】
(インク定着剤)
印刷層には、インクジェット印刷のインクを定着させるためのインク定着剤を含有させることができるが、塗工液のゲル化や凝集化を防ぐ観点から、インク定着剤は含有させないことが好ましい。
【0038】
(撥水剤)
印刷層にはさらに、ワックスエマルジョン、石油樹脂系エマルジョン、シリコーン系エマルジョン等の撥水剤を添加することで、印刷層の強度を向上させて、発色濃度等の印刷適性を向上させることができる。
【0039】
(耐水化剤)
印刷層にはまた、ホルマリン、グリオキザール、クロム明バン、メラミン、メラミンホルマリン、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、尿素化合物等の各種公知の耐水化剤を配合することもできる。
【0040】
印刷層には上述の成分の他に、その特性を損なわない範囲で従来公知の助剤を適宜添加してもよい。この助剤としては、例えば顔料分散剤、pH調整剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0041】
(塗工量)
印刷層を形成する塗工液の塗工量は、基紙に対して固形分換算で、0.1g/m以上1.0g/m以下が好ましく、0.2g/m以上0.8g/m以下がより好ましく、0.3g/m以上0.7g/m以下がさらに好ましい。塗工量が上記範囲未満の場合、印刷適性が低下するおそれや、ドットプリンターで印字した際にインキ溶剤が裏抜けし発色濃度が低下するおそれや、塗工液がチキソ性を有しても高分子の流動が発生しないおそれがある。逆に、塗工量が上記範囲を超える場合、塗工量が多すぎ繊維が目詰まりし、当該感圧複写用発色シートのインクジェット印刷での滲み防止性や乾燥性が低下するおそれがある。
【0042】
<発色層>
当該感圧複写用発色シートにおいては、上記基紙の裏面側(印刷層と反対側)に発色剤及びバインダーを主成分とする発色層が積層されている。
【0043】
(発色剤)
上記発色層に用いる発色剤としては、感圧複写紙の分野で通常使用される発色剤を適宜選択することができ、例えば電子供与性発色剤と疎水性液体(カプセルオイル)とを内包したマイクロカプセルを用いることができる。このマイクロカプセルは1〜10μm程度の大きさを有し、コアセルベーション法、界面重合法、in−situ法などの方法で形成することができる。また、マイクロカプセルの材質としては、例えばゼラチン、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド等を用いることができる。
【0044】
上記電子供与性発色剤は、青染料としては、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチル−3−インドリル)−4−アザフタリド、N−n−ブチル−3−[4,4’−ビス(N−メチルアニリノ)ベンズヒドリル]カルバゾール等が挙げられ、黒染料としては、例えば2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−アミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−n−プロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−4−メチルアニリノ)フルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3,7−ビスジメチルアミノベンゾイルフェノチアジン、3−N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチルー7−アニリノフルオラン等を挙げられる。
【0045】
上記疎水性液体としては、例えばジアリールエタン、ジイソプロピルナフタレン、モノイソプロピルビフェニル、イソブチルビフェニル、部分水素添加ターフェニル、塩素化パラフィン、飽和炭化水素、フタル酸エステル等が挙げられる。
【0046】
(バインダー)
発色層に用いるバインダーとしては、例えば澱粉類、セルロース誘導体、ラテックス類、合成樹脂系バインダール等を用いることができる。
【0047】
発色剤の含有量としては、バインダー100質量部に対して10質量部以上25質量部以下が好ましく、12質量部以上23質量部以下がより好ましい。発色剤の含有量が上記範囲未満の場合、当該感圧複写用発色シートが十分な複写機能を有さないおそれがある。逆に、発色剤の含有量が上記範囲を超える場合、コストが上昇するばかりで複写機能は向上しないほか、印刷層の強度等が低下するおそれがある。
【0048】
発色層には、マイクロカプセルを保護するためのステー材を添加することが好ましい。このステー材のサイズとしては、マイクロカプセル粒子径の1.5〜4倍が好ましい。ステー材の材質としては、例えば澱粉、セルロース等を用いることができる。
【0049】
発色層には上述の成分の他に、従来公知の助剤を適宜添加してもよい。この助剤としては、例えば流動性変性剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤等を挙げることができる。
【0050】
発色層の塗工量としては、例えば1g/m以上5g/m以下とすることができる。
【0051】
<感圧複写用発色シートの物性>
当該感圧複写用発色シートの透気抵抗度としては、60秒/100ml以上150秒/100ml以下が好ましく、80秒/100ml以上140秒/100ml以下がより好ましく、100秒/100ml以上130秒/100ml以下がさらに好ましい。透気抵抗度が上記範囲未満の場合、ドットプリントインキの裏抜けが生じ易くなるおそれがある。逆に、透気抵抗度が上記範囲を超える場合、インクジェットインクの乾燥性が低下するおそれがある。透気抵抗度は、例えば原料パルプの種類、配合量、フリーネス、印刷層に用いる塗工液中の水溶性高分子の種類、塗工量等で調整することができる。
【0052】
当該感圧複写用発色シートの表面(印刷層表面)の表面粗さとしては、2.1μm以上2.4μm以下が好ましく、2.2μm以上2.3μm以下がより好ましい。表面粗さが上記範囲を超える場合、印刷の鮮明性が低下するおそれがある。逆に、表面粗さが上記範囲未満の場合、当該感圧複写用発色シートの製造が困難になるおそれがある。なお、表面粗さとは、レーザー顕微鏡により測定される算術平均粗さである。表面粗さは、例えば原料パルプの種類、配合量、フリーネス、印刷層に用いる塗工液中の水溶性高分子の種類、塗工量等で調整することができる。
【0053】
当該感圧複写用発色シートの表面(印刷層表面)の静的接触角としては、95度以上120度以下が好ましく、100度以上120度以下がより好ましく、105度以上115度以下がさらに好ましい。静的接触角が上記範囲未満の場合、インクジェットインクの吸収性が高くなって、インクジェットインクの滲みや裏抜けが生じ易くなるおそれがある。逆に、静的接触角が上記範囲を超える場合、インクジェットインクの吸収性が低下し、当該感圧複写用発色シートのインクジェットインクの乾燥性、印刷適性等が低下するおそれがある。なお、静的接触角とは、1.4μlの蒸留水の液滴を表面に着滴させ、着滴10秒後の静的接触角を計測したものである。当該感圧複写用発色シートの表面(印刷層表面)の静的接触角は、例えば印刷層に用いる塗工液中の水溶性高分子の種類や表面サイズ剤の種類、配合量、塗工量や基紙に内添、外添するサイズ剤の種類、量等で調整できる。
【0054】
<感圧複写用発色シートの製造方法>
当該感圧複写用発色シートは、通常の製紙に用いられる抄紙方法によって製造することができる。この抄紙方法としては、特に限定されるものではなく、公知のワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びコーターパートを有する抄紙工程、コーターパートを有する塗工工程を用いることができる。
【0055】
上記ワイヤーパートで用いられるフォーマーとしては、例えば、長網フォーマー、長網フォーマーとオントップフォーマーとを組み合わせたもの、ツインワイヤーフォーマー等を用いることができる。これらの中でも、ヘッドボックスから噴出された紙料を2枚のワイヤーで挟み込んで両面から脱水するギャップフォーマーが特に好ましい。このギャップフォーマーを用いることによって、湿紙に表裏差が生じることを防止することができる。
【0056】
上記プレスパートに用いられるプレス機としては、例えば、ストレートスルー型、インバー型、リバース型等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上の組合せを適宜用いることができる。これらの中でも、紙を保持し易く断紙が生じ難いオープンドロー部を有さないストレートスルー型が特に好ましい。また、上記プレスパートに用いられる脱水方式としては、例えば、サクションロール方式、グルーブドプレス方式、シュープレス方式等を用いることができる。これらの中でも、脱水性及び平滑性を向上することができるシュープレス方式が特に好ましい。
【0057】
上記ドライヤーパートに用いられるドライヤーとしては、例えばシングルデッキドライヤー、ダブルデッキドライヤー等を用いることができる。これらの中でも、断紙が生じ難く乾燥の効率が高いオープンドロー部を有さないシングルデッキドライヤーが特に好ましい。
【0058】
上記コーターパートにおいて、基紙に表面処理剤層を形成する塗工液を塗工する方法としては、特に限定されず、例えば2ロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、エアナイフコーター等を適宜使用することができる。また、カレンダー装置としては、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備を用いることができる。
【0059】
当該感圧複写用感圧発色シートは、さらに、上記基紙の一方の面に印刷層を形成する塗工液と、他方の面に発色層を形成する塗工液とをコーターパートで塗工する塗工工程を有する。上記コーターパートにおいて、基紙に印刷層を形成する塗工液を塗工する方法としては、特に限定されず、例えばゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコーター、ショートドウェルコーター、ロッドコーター、ロールコーター、サイズプレスコーター、カーテンコーター等の塗工装置を用いることができる。これら塗工装置の中でも塗工液にブレード又はロッドによってせん断力が加わるブレードコーター、ロッドコーター又はショートドウェルコーターを用いることが特に好ましい。印刷層を形成する塗工液として、少なくともチキソ性係数が4以上8以下の水溶性高分子、特に好ましくはタピオカ澱粉を含有する塗工液をブレードコーター、ロッドコーター又はショートドウェルコーターのいずれかを用い塗工することで、より容易にインクジェット印刷のインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字の発色濃度にも優れる感圧複写用発色シートが得られ好ましい。この感圧複写用感圧発色シートは、前述の通り、インクジェット適性を有する基紙との組み合わせにおいて、さらに容易にインクジェット印刷のインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字の発色濃度にも優れる。
【0060】
また、上記印刷層を形成する塗工液の塗工速度としては、300m/min以上1,000m/min以下であることが好ましい。塗工速度が上記範囲未満の場合、塗工液に十分なせん断力が加わらず、塗工液がチキソ性を有しても高分子の流動が発生しないおそれがある。逆に、塗工速度が上記範囲を超える場合、均質な印刷層が形成できないおそれがある。
【0061】
上記コーターパートにおいて、基紙に発色層を形成する塗料を塗工する方法としては特に限定されず、例えばエアナイフコーター、カーテンコーター等を用いることができる。
【0062】
<感圧複写紙>
このように当該感圧複写用発色シートは、インクジェット印刷のインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字の発色濃度にも優れる。そのため、当該感圧複写用発色シートを上用紙として備える感圧複写紙は、インクジェット印刷及びドット印字で文字等を好適に印刷することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
なお、本実施例で行った品質及び性能の評価方法は以下のとおりである。
【0065】
[チキソ性係数]
ハイシェア粘度計(型式:HR-801C 熊谷理機工業株式会社製)を使用し、濃度10質量%、温度25℃の水溶性高分子の水溶液を用い、ボブE、せん断速度5×10−1における粘度Vと、せん断速度10×10−1における粘度Vとを計測した。このVをVで除した値をチキソ性係数とした。なお、V及びVはせん断速度を上昇させながら計測した値である。
【0066】
[透気抵抗度(単位:秒/100ml)]
JIS−P8117(2009)に記載の「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠してガーレー試験機を用いて測定した。
【0067】
[表面粗さ(単位:μm)]
レーザー顕微鏡(型式:LEXT OLS4000 オリンパス株式会社製)を用いて、算術平均粗さを測定した。
【0068】
[静的接触角(単位:度)]
1.4μlの蒸留水の液滴をシート表面に着滴させ、着滴10秒後の静的接触角を接触角測定装置(型番:DCA‐VZ 協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。
【0069】
[滲み(インクジェット印刷)]
感圧複写用発色シート表面にインクジェットインク(サイテックス1040)及びプリンタ(型番:MP520 キャノン株式会社製)を用いてインクジェット印刷を行った場合の滲みを以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
◎:滲みが発生しない。
○:若干滲みが発生する。
△:多少滲みが発生する。
×:大きな滲みが発生し、実使用に適さない。
【0070】
[印字濃度(インクジェット印刷)]
感圧複写用発色シート表面に上記条件でインクジェット印刷を行った場合の印字濃度を以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
感圧複写用発色シート表面にインクジェットインク(サイテックス1040)及びプリンタ(型番:MP520 キャノン株式会社製)を用いてインクジェット印刷を行った場合の濃度をマクベス反射濃度計(型番:DM−620 大日本スクリーン製造株式会社製)で測定した。
◎:1.5以上
○:1.4以上〜1.5未満
△:1.3以上〜1.4未満
×:1.3未満
【0071】
[裏抜け(インクジェット印刷)]
感圧複写用発色シート表面に上記条件でインクジェット印刷を行った場合のインク裏抜けを以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
◎:インクの裏抜けがなく、裏面から印字が見えない。
○:インクの裏抜けはあるが、裏面からでは印字内容が分からない。
△:インクの裏抜けがあり、裏面から印字内容が分かる。
×:インクの裏抜けがあり、裏面からも印字内容がはっきりと分かり、実使用に適さない。
【0072】
[乾燥性(インクジェット印刷)]
感圧複写用発色シート表面に上記条件でのインクジェットによるベタ部印刷を行った直後に印刷面をテッシュペーパーで擦り、紙面上のインクの伸びを以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
◎:拭取りした紙面にインクの伸びがない。
○:拭取りした紙面にインクの伸びが殆どない。
△:拭取りした紙面にインクの伸びが少しある。
×:拭取りした紙面にインクの伸びがあり、実使用に適さない。
【0073】
[発色性(ドット印字)]
感圧複写用の下用紙縦182mm×横128mm(大王製紙株式会社製、ニューマイクロペーパー40番手)の顕色剤塗布面と感圧複写用発色シートの発色剤塗布面とが対向するように重ね合わせ感圧複写紙とした。この感圧複写紙を用いてドットプリンタ(型番:PC−PR−201/65 日本電気株式会社製)を用いて、インクリボンなしで印字圧2の条件でベタ面印刷した。次にガラス板に、上記ドットプリンタ印刷した感圧複写紙を下用紙の顕色剤塗布面の反対側が下になるように置き、感圧複写用発色シートの印刷層の上にインクリボン(型番:VP1800RP セイコーエプソン株式会社製)を重ね、さらに重さ5kg(底部縦25cm×横20cm)を置いた状態で、140℃のオーブンに入れて2時間放置した。その後、オーブンから取り出し、下用紙のベタ面を以下の基準で目視評価した。
◎:発色部分がわずかに消えているが、十分目視確認できる。
○:発色部分がやや消えているが、目視確認可能。
△:発色部分がほとんど消えているが、確認できる。
×:発色部分が完全に消えており、実使用に適さない。
【0074】
[実施例1]
LBKP95質量%、NBKP5質量%を混合しフリーネス410mlとなるようにDDRで叩解して原料パルプスラリーを調整した。次に、基紙の灰分が3質量%となるようにタルクを添加し、硫酸バンドを原料パルプのpHが5.8となるよう添加し、ロジンエマルジョンサイズ剤(商品名:AL−1309 星光PMC株式会社製)をパルプ固形分に対し固形分で4kg/トン添加し、多筒式ツインワイヤー抄紙機にて基紙を抄紙した。次に酸化澱粉(コーンスターチ)(商品名:酸化澱粉MS#3600 日本食品化工株式会社製)とアルキルケテンダイマー系表面サイズ剤(商品名:SE2395 星光PMC株式会社製)とを配合した塗工液を調製し、ゲートロールコーターにて片面あたりの塗工量が固形分で0.7g/mとなるように基紙の両面にこの塗工液を塗工し、乾燥して基紙を製造した。なお、塗工液において酸化澱粉の含有量が97質量%、表面サイズ剤の含有量が3質量%となるように配合した。得られた基紙の坪量をJIS−P8124(2011)に記載の「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定したところ、40g/mであった。
【0075】
次に、水溶性高分子としてのタピオカ澱粉(商品名:フィルムコート370 日本エヌネスシー株式会社製)と、スチレンアクリル系表面サイズ剤(商品名:ハーサイズJK−03−225)ハリマ化成株式会社製)とを混合させた塗工液を調製した。なお、塗工液においてタピオカ澱粉の含有量が75質量%、表面サイズ剤の含有量が25質量%となるように配合した。
【0076】
なお、上記タピオカ澱粉のチキソ係数は、6.0であった。
【0077】
上記基紙の表面にブレードコーターを用いて基紙に対して固形分換算で0.4g/mの量の塗工液を表面に塗工して印刷層を形成し、実施例1の感圧複写用発色シートを得た。また、印刷層の反対面に発色剤を固形分換算で3.0g/m塗工した。なお、表面(印刷層側の面)における表面粗さは2.2μmであった。
【0078】
[実施例2〜12、比較例1〜3]
水溶性高分子の種類及び塗工液中含有量、表面サイズ剤の種類及び塗工液中含有量、塗工液の塗工量、並びに印刷層塗工方法を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の条件で、実施例2〜12の感圧複写用発色シートを得た。なお、塗工液に配合する表面サイズ剤として、実施例8ではアルキルケテンダイマー系表面サイズ剤(商品名:SE2380、星光PMC株式会社製)を用い、実施例9ではワックス系表面サイズ剤(商品名:サイズパインW-116H、荒川化学工業株式会社製)を用いた。また、塗工液に配合する水溶性高分子として、実施例10ではPVA(商品名:クラレポバールPVA205 株式会社クラレ製)を用い、実施例11では酸化澱粉(コーンスターチ)(商品名:酸化澱粉MS#3600 日本食品化工株式会社社製)とタピオカ澱粉(商品名:フィルムコート370 日本エヌネスシー株式会社製)とを固形分比で1:1に配合したものを用い、比較例2では酸化澱粉(コーンスターチ)(商品名:酸化澱粉MS#3600 日本食品化工株式会社社製)を用い、比較例3ではカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンPR 第一工業製薬株式会社製)を用いた。比較例1では塗工液として表面サイズ剤のみを塗工した。
【0079】
上述した方法にて得られた各感圧複写用発色シートの品質及び性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示されるように、実施例1〜12の感圧複写用発色シートは、インクジェットインクの滲みが抑えられ、十分な印字濃度を奏し、インクの裏抜け防止性及び乾燥性に優れており、さらにドット印字の発色性にも優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明の感圧複写用発色シート及び感圧複写紙は、インクジェット印刷のインクの滲み防止性及び乾燥性に優れ、かつドット印字の発色濃度にも優れるため、インクジェット印刷及びドット印字双方の印刷適性に優れる。