(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0013】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A)ポリアミド樹脂と、
(B)アルミン酸金属塩と、
を含み、
前記(B)アルミン酸金属塩が、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して1質量部以上含まれており、
前記(B)アルミン酸金属塩中、粒子径が1μm以上であるアルミン酸金属塩の粒子が20質量%以下である。
上述した構成とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、優れた耐熱エージング性を発揮することができる。
【0014】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
((A)ポリアミド樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂(以下、ポリアミド樹脂、ポリアミド、(A)成分、(A)と記載する場合がある。)を含有する。
「ポリアミド樹脂」とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。
(A)ポリアミド樹脂としては、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、(A)ポリアミド樹脂としては、上記ポリアミドの1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0015】
(A)ポリアミド樹脂として、前記(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミドを用いる場合、(A)ポリアミド樹脂の構成成分となる単量体としてのラクタムは、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム等が挙げられる。
【0016】
(A)ポリアミド樹脂として、前記(b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミドを用いる場合、ω−アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、前記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸を用いることができる。なお、前記ラクタム又は前記ω−アミノカルボン酸は、それぞれ2種以上の単量体(前記ラクタム又は前記ω−アミノカルボン酸)を併用して縮合させたものでもよい。
【0017】
(A)ポリアミド樹脂として、前記(c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミドを用いる場合、前記ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
また、前記ジカルボン酸(単量体)としては、以下限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
前記(c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することにより得られるポリアミドを用いた場合に得られる(A)ポリアミド樹脂としては、それぞれ1種単独又は2種以上の前記ジアミン及びジカルボン酸を併用して縮合させたものでもよい。
【0019】
前記ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミドは、例えば、当モル量のジアミンとジカルボン酸を溶解させた塩水溶液を脱水縮合により重合して得られる。なお、従来公知の方法により、適した温度・圧力に調整して重合することができる。
【0020】
上記のようにして得られる本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド2Me5T(ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタラミド)、及びポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群から選ばれる1種以上のポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0021】
前記共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物等が挙げられる。
【0022】
前記ポリアミド樹脂の中でも、本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミド樹脂としては、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)及びポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが好ましく、ヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリアミド66を含む共重合体がより好ましい。
上記ポリアミド樹脂を用いることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、より優れた耐熱エージング性を発揮する傾向にある。
【0023】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂組成物中、33質量%以上95質量%以下で含有されていることが好ましく、50質量%以上75質量%以下で含有されていることがより好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記範囲で(A)ポリアミド樹脂を含有することにより、強度、耐熱性、耐薬品性、比重などに優れる傾向がある。
【0024】
ポリアミドには、ジカルボン酸とジアミンとがアミド結合により重合したポリマー鎖の末端部分(ポリマー末端)があり、アミノ末端基とカルボキシル末端基とがある。
アミノ末端基とは、アミノ基(−NH
2基)が結合したポリマー末端であり、原料のジアミンに由来する。
カルボキシル末端基とは、カルボキシル基(−COOH基)が結合したポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基濃度とカルボキシル末端基濃度との比(アミノ末端基濃度(μmol/g)/カルボキシル末端基濃度(μmol/g))は、0.2以上1.8以下であることが好ましく、0.3以上1.6以下であることが好ましく、0.4以上1.4以下であることがさらに好ましい。
前記アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度が0.2以上である場合、高い引張強度が発現する傾向にある。また、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度が1.8以下である場合、より熱滞留に安定なポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
なお、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は、重合時にアミンモノマー又はカルボン酸モノマーの添加量を調整することにより制御することができる。
また、末端基の濃度は、例えば、重硫酸溶媒を用いて、60℃での1H−NMR測定を行うことにより求めることができる。すなわち当該NMR測定で得られるアミノ末端基、カルボキシル末端基にそれぞれ対応するピークの積分値を求めることにより算出することができる。
具体的には、後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0025】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、1.8以上3.0以下であることが好ましく、2.2以上2.8以下であることがより好ましい。
上記硫酸相対粘度が1.8以上であることで、より機械物性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。また、上記硫酸相対粘度が3.0以下であることで、より流動性・外観に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
上記硫酸相対粘度は、(A)ポリアミド樹脂の重合時の圧力を調整することにより制御することができる。なお、上記硫酸相対粘度は、JIS K 6920に記載の方法により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0026】
((B)アルミン酸金属塩)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(B)アルミン酸金属塩(以下、(B)成分、(B)と記載する場合がある、)を含有する。
(B)アルミン酸金属塩の含有量は、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して1質量部以上である。
良好な耐熱エージング性、初期強度を得る観点から、(B)アルミン酸金属塩は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、1質量部以上5質量部以下含まれることが好ましい。同様の観点から、1質量部以上4質量部以下がより好ましく、1質量部以上3質量部以下がさらに好ましく、1.2質量部以上3質量部以下がさらにより好ましい。
(B)アルミン酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸ベリリウム、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウムが挙げられる。(B)アルミン酸金属塩としては、上記した中の1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
生産時の安定性の観点から、アルミン酸アルカリ金属塩が好ましく、アルミン酸ナトリウムがより好ましい。
【0027】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(B)アルミン酸金属塩は、当該(B)アルミン酸金属塩中、粒子径が1μm以上であるアルミン酸金属塩の粒子の含有量が20質量%以下であり、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
粒子径が1μm以上のアルミン酸金属塩の粒子の含有量が、(B)成分中、20質量%以下であることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、優れた耐熱エージング性が得られる。
ここで、アルミン酸金属塩の粒子径とは、本実施形態のポリアミド樹脂組成物中に存在するアルミン酸金属塩の粒子径である。
ポリアミド樹脂組成物中でのアルミン酸金属塩の粒子径は、例えば、ポリアミド樹脂組成物をギ酸に溶解させ、レーザー回折式粒度分布装置を用いることにより測定することができる。
【0028】
上記のように、(B)アルミン酸金属塩中、粒子径が1μm以上であるアルミン酸金属塩の粒子の含有量を20質量%以下に抑制するためには、水分の少ない状態で(B)アルミン酸金属塩と(B)ポリアミド樹脂とを混合することが有効である。例えば、押出機を用いて(B)アルミン酸金属塩を(A)ポリアミド樹脂に溶融混練する方法が挙げられる。
一方、(A)ポリアミド樹脂の縮合重合工程で(B)アルミン酸金属塩を含有させると、(B)アルミン酸金属塩が大径化するおそれがある。すなわち(A)ポリアミド樹脂の重合工程が完了し、(A)ポリアミド樹脂を取り出し、ポリアミド樹脂組成物の製造工程である溶融混練の段階で(A)成分と(B)成分とを混合することが好ましい。
【0029】
((C)ガラス繊維)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(C)ガラス繊維(以下、(C)成分、(C)と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。
(C)成分の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、5質量部以上200質量部以下とすることが好ましく、5質量部以上150質量部以下とすることがより好ましく、15質量部以上100質量部以下とすることがさらに好ましい。
上記範囲内とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の流動性及び外観特性が共に一層優れたものとなる傾向にある。
上述した(C)成分は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記ガラス繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつ重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがさらに好ましい。
【0031】
ここで、本明細書における数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の(C)ガラス繊維を任意に選択し、SEMで観察して、これらの繊維径を測定し、平均値を算出することにより数平均繊維径を求めることができる。
また、倍率1000倍のSEM写真を用いて繊維長を計測し、所定の計算式(n本の繊維長を測定した場合、重量平均繊維長=Σ(i=1→n)(n番目の繊維の繊維長)
2/Σ(i=1→n)(n番目の繊維の繊維長))により、重量平均繊維長を求めることができる。
【0032】
前記(C)ガラス繊維は、シランカップリング剤等により表面処理を行ってもよい。
前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記シランカップリング剤の中でも、樹脂との親和性の観点から、アミノシラン類がより好ましい。
【0033】
また、前記(C)ガラス繊維は、さらに集束剤を含んでいることが好ましい。
ここで、集束剤とは、ガラス繊維の表面に塗布する成分である。
集束剤としては、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。
これらの集束剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体がより好ましい。
【0034】
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。
一方、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレンやブタジエンが好ましい。
これらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0035】
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜1,000,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
【0036】
前記エポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイドなどの脂肪族エポキシ化合物;グリシドール、エポキシペンタノール、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコールなどの脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイドなどのテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイドなどの芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0037】
前記ポリカルボジイミド化合物とは、一以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物、すなわちカルボジイミド化合物を縮合することにより得られる化合物である。
前記ポリカルボジイミド化合物は、縮合度が1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。縮合度が1〜20の範囲内にある場合、良好な水溶液または水分散液が得られる。さらに、縮合度が1〜10の範囲内にある場合、一層良好な水溶液または水分散液が得られる。
また、前記ポリカルボジイミド化合物は、部分的にポリオールセグメントを持つポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。部分的にポリオールセグメントを持つことにより、ポリカルボジイミド化合物は水溶化し易くなり、ガラス繊維の集束剤として一層好適に使用可能となる。
【0038】
前記カルボジイミド化合物、すなわち上記各種カルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物は、ジイソシアネート化合物を、3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド等の公知のカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸反応させることによって得られる。
【0039】
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート、並びにそれらの混合物を用いることが可能である。
イソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
そして、これらのジイソシアネート化合物をカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が得られる。これらのうち、反応性向上の観点からジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが好適に使用可能である。
【0040】
また、モノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、またはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法などによって、末端にイソシアネート基を1つ有するポリカルボジイミド化合物が得られる。
モノイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。
上記したポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0041】
前記ポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが挙げられる。
【0042】
前記アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、樹脂との親和性の観点から重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
【0043】
前記アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーを形成する、前記「その他の共重合性モノマー」としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。
なお、上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
【0044】
上述したアクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーを共に含む)は塩の形態であってもよい。
アクリル酸のポリマーの塩としては、以下に限定されるものではないが、第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。
具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンが挙げられる。
中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、本実施形態のポリアミド樹脂組成物における機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
【0045】
上述した各種集束剤により、ガラス繊維を処理する方法としては、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与し、製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させる方法が挙げられる。
前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。
また、前記ストランドの乾燥は、切断工程後に行ってもよく、またはストランドを乾燥した後に切断工程を実施してもよい。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)成分〜(C)成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、さらにその他の成分を含有してもよい。
当該その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維、タルクなどの無機フィラー、紫外線吸収剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料、及び他の熱可塑性樹脂が挙げられる。ここで、上記したその他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施形態の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0047】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、還元性リン化合物の含有量は、リン元素の含有量に換算して200ppm以下であることが好ましい。
還元性リン化合物の含有量が、リン元素の含有量に換算して200ppm以下であることにより、(B)アルミン酸金属塩の変性が抑制されるため、より優れた耐熱エージング性を有するポリアミド樹脂組成物が得られる。
同様の観点から、還元性リン化合物の含有量が、リン元素の含有量に換算して100ppm以下であることがより好ましく、還元性リン化合物の含有量が、リン元素の含有量に換算して60ppm以下であることがさらに好ましく、検出限界である1ppm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂、(B)アルミン酸金属塩、必要に応じて(C)ガラス繊維、その他の成分を混合することにより製造できる。
ポリアミド樹脂組成物の製造においては、単軸又は多軸の押出機によって(A)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で、(B)アルミン酸金属塩を混練する方法を好ましく用いることができる。また、あらかじめ(B)アルミン酸金属塩の水溶液と(B)ポリアミド樹脂ペレットをよく撹拌して混合し、その後に水分を乾燥させる手法で調整したポリアミド樹脂ペレットとアルミン酸金属塩の混合物を、押出機の供給口から供給して溶融混練する方法を用いることができる。
(B)アルミン酸金属塩の分散性の観点から、(B)アルミン酸金属塩の添加は、単軸又は多軸の押出機によって、(A)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で、(B)アルミン酸金属塩を混練する方法が好ましい。
【0049】
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、上記の実施形態に係るポリアミド樹脂組成物を含む。
本実施形態の成形体は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより得られる。
本実施形態における上記成形体は、以下に限定されるものではないが、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用等の各種部品に適用することができる。
本実施形態の成形体は、上記各種部品に優れた耐熱エージング性を有する。
【実施例】
【0050】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例に係る試料を評価するための測定法は以下のとおりである。
【0051】
〔測定方法〕
(98%硫酸相対粘度(ηr))
後述する実施例及び比較例(以下、単に「各例」ともいう)における、(A)ポリアミド樹脂の98%硫酸相対粘度(ηr)は、JISK6920に従って測定した。
【0052】
(末端基濃度)
後述する実施例及び比較例における、(A)ポリアミド樹脂の末端基濃度は、重硫酸溶媒を用いて、60℃での1H−NMR測定により求めた。
この際の測定装置としては、日本電子(株)製のECA500を用いた。
すなわち、各例における(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基、カルボキシル末端基の対応ピークの積分値から末端基濃度を算出した。
【0053】
(初期引張強度)
実施例及び比較例で製造したポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠しつつ、多目的試験片(A型)の成形片を成形した。
その際、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒に設定した。
また、金型温度とシリンダー温度は、後述する(A)ポリアミド樹脂の製造例に記載した温度に設定した。
得られた多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度(MPa)を測定した。
【0054】
(耐熱エージング性)
上記の(初期引張強度)における多目的試験片(A型)を、熱風循環式オーブン内で、230℃で熱老化させた。
所定の時間ののちにオーブンから取り出し、23℃で24時間以上冷却した後、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、各引張強度(MPa)を測定した。この手法により、引張強度が半減する時間(h:hour)を求めた。
【0055】
(耐LLC性)
上記の(初期引張強度)における多目的試験片(A型)を、120℃のLLC溶液に浸漬させた。
LLC溶液として、トヨタ純正スーパーLLC50%水溶液を用いた。
所定の試験時間後、LLC溶液から試験片を取り出した後、23℃の条件下に1時間以上放置した。
その後、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、各引張強度(MPa)を測定した。
この手法により、引張強度が半減する時間(h:hour)を求めた。
【0056】
(ノッチ付きシャルピー衝撃強度)
上記の多目的試験片(A型)を切削して使用し、厚さ80mm×巾10mm×長さ4mmの試験片を用いて、ISO 179に準拠しつつ、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(kJ/m
2)を測定した。
【0057】
(色調の評価(b値))
各例に対応する多目的試験片(A型)のb値を、日本電色社製色差計ZE−2000を用いて反射法により測定した。
【0058】
(ポリアミド樹脂中のリン元素濃度及び還元性リン元素濃度)
<(1)リン元素の濃度>
試料0.5gを秤量し、濃硫酸を20mL加え、ヒーター上で湿式分解した。
冷却後、過酸化水素5mLを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mLになるまで濃縮した。
再び冷却し、純水で500mLとした。
装置はThermo Jarrell Ash製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量した。
リン元素の濃度は、この定量値を用いて、ポリアミド樹脂10
6gに対するリン元素の濃度CP(モル)で表した。
【0059】
<(2)次亜リン酸イオン、亜リン酸イオン、リン酸イオンの濃度>
試料50gに100mLの水を加え、室温で15分間の超音波処理後ろ別し、ろ液を得た後、ヒューレットパッカード社製キャピラリー電気泳動装置(HP3D)を用いて、次亜リン酸イオン、亜リン酸イオン及びリン酸イオンの濃度(モル)比率を測定した。
濃度比率の算出は、濃度が既知の次亜リン酸イオン標準液、亜リン酸イオン標準液、リン酸イオン標準液を同様に測定してキャリブレーションカーブを作成して行った。
【0060】
還元性リン元素の濃度Xは、以下の式を用いて、ポリアミド10
6gに対するリンのモル量に換算して求めた。
【0061】
還元性リン元素の濃度X=CP×(CP1+CP2)/(CP1+CP2+CP3)
CP:(1)で求めたポリアミド10
6gに対するリン元素の濃度(モル)
CP1:(2)で求めた次亜リン酸イオンの濃度(モル)比率
CP2:(2)で求めた亜リン酸イオンの濃度(モル)比率
CP3:(2)で求めたリン酸イオンの濃度(モル)比率
【0062】
((B)アルミン酸金属塩の粒子径の測定)
ポリアミド樹脂組成物10gを、10mLのギ酸(和光純薬製)に溶解させた。
その溶液を、島津製作所( 株) 製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−7000)を用いて測定した。
屈折率は金属化合物に最適な値を選択した。例えば、アルミン酸ナトリウムの場合、1.60−1.00iとした。
粒子径は、装置に付帯したソフトを用いて、粒子径分布を体積換算で測定して求めた。
【0063】
〔原料〕
実施例及び比較例に用いた原料は以下の通りである。
((A)ポリアミド樹脂)
<ポリアミド樹脂 A−1(PA66)>
50質量%のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の水溶液を30kg調製し、十分撹拌した。
当該ポリアミド66の原料の水溶液(以下、単に、原料の水溶液と記載する場合がある。)を、撹拌装置を有し、かつ、下部に抜出しノズルを有する70Lのオートクレーブ中に仕込んだ。
その後、50℃の温度下で十分攪拌した。
次いで、窒素で雰囲気置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力を、約1.77MPaに保持するよう、水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。
その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、さらに約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止した。
下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。
<ポリアミド樹脂A−1>の98%硫酸相対粘度は2.8であった。
また、アミノ末端基濃度は46μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は72μmol/gであった。
すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.64であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−1>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0064】
<ポリアミド樹脂A−2(PA66)>
前記原料の水溶液にアジピン酸を900g追加で添加した。その他の条件は、前記<ポリアミド樹脂A−1>と同様の製造方法により<ポリアミド樹脂A−2>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−2>の98%硫酸相対粘度は2.2であった。また、アミノ末端基濃度は33μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は107μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.3であった。なお、<ポリアミド樹脂A−2>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0065】
<ポリアミド樹脂A−3(PA66)>
前記原料の水溶液にヘキサメチレンジアミンを900g追加で添加した。その他の条件は、前記<ポリアミド樹脂A−1>と同様の製造方法により<ポリアミド樹脂A−3>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−3>の98%硫酸相対粘度は2.4であった。また、アミノ末端基濃度は78μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は52μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は1.5であった。なお、<ポリアミド樹脂A−3>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0066】
<ポリアミド樹脂A−4(PA66/6T)>
特表2013−501094号公報の製造例に従い、<ポリアミド樹脂A−4(PA66/6T)>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−4>の98%硫酸相対粘度は2.9であった。
また、アミノ末端基濃度は42μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は65μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.6であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−4>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0067】
<ポリアミド樹脂 A−5(PA610)>
特開2011−148997号公報の製造例に従い、<ポリアミド樹脂A−5(PA610)>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−5>の98%硫酸相対粘度は2.3であった。
また、アミノ末端基濃度は58μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は79μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.7であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−5>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を260℃に設定した。
【0068】
<ポリアミド樹脂A−6(PA9T)>
特開2013−40346号公報の製造例に従い、<ポリアミド樹脂A−6(PA9T)>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−6>の98%硫酸相対粘度は2.9であった。
また、アミノ末端基濃度は42μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は52μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.8であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−6>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を120℃、シリンダー温度を330℃に設定した。
【0069】
((B)アルミン酸金属塩)
<アルミン酸ナトリウムB−1>
和光純薬工業社製のアルミン酸ナトリウムを使用した。
<アルミン酸マグネシウムB−2>
シグマアルドリッチ社製のアルミン酸マグネシウムを使用した。
【0070】
((C)ガラス繊維)
(C−1 ガラス繊維)
固形分換算で、ポリウレタン樹脂を2質量%(商品名:ボンディック(登録商標)1050、大日本インキ株式会社製))、エチレン−無水マレイン酸共重合体(和光純薬工業株式会社製)を8質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを0.6質量%(商品名:KBE−903、(信越化学工業株式会社製))、潤滑剤0.1質量%(商品名:カルナウバワックス(株式会社加藤洋行製))となるように水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
上記のガラス繊維集束剤を、溶融防糸された数平均繊維径10μmのガラス繊維に対して付着させた。
すなわち、回転ドラムに巻き取られる途中のガラス繊維に対し、所定位置に設置されたアプリケーターを用いて、上記ガラス繊維集束剤を塗布した。次いで、これを乾燥し、上記ガラス繊維集束剤で表面処理されたガラス繊維束のロービング(ガラスロービング)を得た。その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得た。このチョップドストランドを、<ガラス繊維D−1>として使用した。
【0071】
(還元性リン酸化合物)
<次亜リン酸ナトリウム>
太平化学産業株式会社製の試薬を使用した。
【0072】
〔
参考例1〕
押出機として、二軸押出機(ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ))を用いた
。
この二軸押出機は、上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、かつ、9番目の
バレルに下流側供給口を有するものである。そして、L/D(押出機のシリンダーの長さ
/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)となっている。
この二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を、上述の((A)ポリア
ミド樹脂)の項目に記載したシリンダー温度にそれぞれ設定した。
また、スクリュー回転数を300rpmに、吐出量を25kg/時間に、それぞれ設定
した。
かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口より(
A)ポリアミド樹脂と、(B)アルミン酸金属塩と、を供給し、下流側供給口より(C)
ガラス繊維を供給し、溶融混練することで樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたポリアミド樹脂組成物を成形し、その成形片を用いて、耐熱エージング性、初
期強度、シャルピー衝撃強度を評価した。これらの評価結果等を下記表1に示す。
【0073】
〔
参考例2、実施例4〜9、12〜19、比較例1〕
表1〜表5に記載の組成に従い、その他の条件は
参考例1と同様の方法で、ポリアミド樹脂組成物を製造し、成形し、その成形片を用いて、耐熱エージング性、耐LCC性、初期強度、シャルピー衝撃強度、色調を評価した。これらの評価結果等を下記表1〜5に示す。
【0074】
〔実施例10〕
スクリュー回転数を250rpmにした。その他の条件は、
参考例1と同様の方法で、ポリアミド樹脂組成物を製造し、成形し、その成形片を用いて、耐熱エージング性、耐LCC性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0075】
〔実施例11〕
スクリュー回転数を200rpmにした。その他の条件は、
参考例1と同様の方法で、ポリアミド樹脂組成物を製造し、成形し、その成形片を用いて、耐熱エージング性、耐LCC性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0076】
〔比較例2〕
スクリュー回転数を150rpmにした。その他の条件は、
参考例1と同様の方法で、ポリアミド樹脂組成物を製造し、成形し、その成形片を用いて、耐熱エージング性、耐LCC性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0077】
〔比較例3〕
50質量%のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の水溶液を30kg調製し、十分撹拌した。
当該ポリアミド66の原料の水溶液を、撹拌装置を有し、かつ、下部に抜出しノズルを有する70Lのオートクレーブ中に仕込んだ。
続いて、アルミン酸ナトリウムを、ポリアミド樹脂100質量部に対して2質量部になるよう添加した。
その後、50℃の温度下で十分攪拌した。
次いで、窒素で雰囲気置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力を、約1.77MPaに保持するよう、水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。
その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、さらに約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止した。
下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。
当該樹脂の98%硫酸相対粘度は2.8であった。また、アミノ末端基濃度は46μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は72μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.64であった。
【0078】
〔比較例4〕
50質量%のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の水溶液を30kg調製し、十分撹拌した。
当該ポリアミド66の原料の水溶液を、撹拌装置を有し、かつ、下部に抜出しノズルを有する70Lのオートクレーブ中に仕込んだ。
続いて、アルミン酸ナトリウムを、ポリアミド樹脂100質量部に対して2質量部になるよう添加した。さらに、ポリアクリル酸アンモニウムを、ポリアミド樹脂100質量部に対して4質量部になるよう添加した。
その後、50℃の温度下で十分攪拌した。
次いで、窒素で雰囲気置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力を、約1.77MPaに保持するよう、水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。
その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、さらに約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止した。
下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。
当該樹脂の98%硫酸相対粘度は2.8であった。また、アミノ末端基濃度は46μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は72μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.64であった。
上記は、特開2007−246647号公報の実施例1に記載の手法を用いたものである。ポリアクリル酸アンモニウムを添加することで、比較例3と比較し、粒子径が1μm以上の(B)成分の量が減少した。
しかし、この手法を用いても、(A)ポリアミド樹脂と、(B)アルミン酸金属塩と、を含み、前記(B)アルミン酸金属塩が、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して1質量部以上含まれているポリアミド樹脂組成物においては、粒子径が1μm以上であるアルミン酸金属塩の粒子を20質量%以下にすることは達成できなかった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
表1〜5より、
参考例1、2、実施例4〜19のポリアミド樹脂組成物は、優れた耐熱エージング性を示すことがわかった。一方、比較例1〜4は、実施例と比較して耐熱エージング性に劣る結果となった。