(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態としての金属酸化物−ポリマー積層体1は、ポリマー層2と、ポリマー層2の表面に積層される金属酸化物層3とを備える。
【0016】
ポリマー層2は、略平板状に形成されている。ポリマー層2は、平面視略中央部に、厚み方向に金属酸化物層3が堆積している埋設部4が形成されている。埋設部4は、ポリマー層2の表面から厚み方向に金属酸化物層3が堆積しており、ポリマー層2の周端から内方に配置されている。
【0017】
ポリマー層2を形成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化エチレン樹脂、PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFE)などのフッ素系樹脂、例えば、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン樹脂、セルロースなどが挙げられる。好ましくは、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、より好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0019】
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0020】
これらは単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
また、ポリマー層2には、タンパク質などを含有していてもよい。
【0022】
ポリマー層2は、単層から形成されていてもよく、また、多層から形成されていてもよい。
【0023】
ポリマー層2は、好ましくは、多孔質層である。多孔質層としては、例えば、多孔質膜不織布が挙げられる。ポリマー層2が、多孔質層である場合、後述するAD法によって金属酸化物層3を確実に埋設することができる。
【0024】
ポリマー層2が不織布である場合、その製法は限定されず、例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ステッチボンド法、ニードルパンチ法、メルトブロー法、スパンレース法、スチームジェット法、熱ラミネート法などが挙げられる。
【0025】
ポリマー層2の厚みX
1は、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、15μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、250μm以下である。
【0026】
埋設部4の深さ(すなわち、後述する金属酸化物層3が厚み方向に埋設されている上下方向長さ)X
2は、例えば、0.02μm以上、50μm以下である。特に、ポリマー層2がフッ素系樹脂からなる場合、好ましくは、0.1μm以上、より好ましくは、0.5μm以上であり、また、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。また、ポリマー層2がオレフィン系樹脂からなる場合、好ましくは、3μm以上、より好ましくは、12μm以上であり、また、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、20μm以下である。
【0027】
金属酸化物層3は、略平板状に形成され、ポリマー層2の厚み方向一方面に積層されている。金属酸化物層3は、厚み方向に投影したときに、ポリマー層2に含まれるように形成されている。すなわち、金属酸化物層3は、ポリマー層2の略中央部に、ポリマー層2の周端から間隔を隔てて配置されている。
【0028】
金属酸化物層3は、金属酸化物粒子(金属酸化物粉末)からエアロゾルデポジション法(AD法)によって形成されている。
【0029】
金属酸化物粒子を構成する金属としては、例えば、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、セリア(酸化セリウム)、アルミナ、イットリア、酸化タングステン、酸化チタンなどが挙げられる。好ましくは、ジルコニア、セリアが挙げられ、より好ましくは、ジルコニアが挙げられる。
【0030】
これら金属酸化物粒子は、公知または市販のものを使用することができる。具体的には、ジルコニア粉末としては、例えば、「RC−100」(第一稀元素化学工業社製)「TZ−3Y−E」(東ソー社製)などが挙げられる。アルミナ粉末としては、例えば、商品名「AL−160SG−3」、商品名「AS−160SG−4」、商品名「AL−45−A」(いずれも昭和電工社製)などが挙げられる。イットリア粉末としては、例えば、「DTS−Y35」(フジミインコーポレーテッド社製)などが挙げられる。
【0031】
これらの金属酸化物粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0032】
金属酸化物粒子は、一次粒子から形成されていてもよく、また、一次粒子が凝集した凝集体(2次粒子)から形成されていてもよい。
【0033】
好ましくは、金属酸化物粒子は、凝集体から形成されている。これにより、取り扱い性に優れ、AD法によりポリマー層2に金属酸化物層3を確実に埋設することができる。
【0034】
金属酸化物粒子の一次粒子の平均粒子径は、例えば、30nm以上、好ましくは、50nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下である。
【0035】
金属酸化物粒子の一次粒子の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製)により測定される。
【0036】
金属酸化物粒子の凝集体(2次粒子)の平均粒子径(メジアン径)は、例えば、0.5μm以上、好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。凝集体の平均粒子径が上記下限を下回ると、AD法により、ポリマー層2に金属酸化物層3を埋設できない場合がある。一方、凝集体の平均粒子径が上記上限を上回ると、AD法によりポリマー層2に向かって噴出された金属酸化物粒子が、ポリマー層2の表面にて再凝集せずに金属酸化物層3を形成できない場合があったり、運動エネルギーが大き過ぎるために、ポリマー層2を破壊する場合がある。
【0037】
金属酸化物粒子の平均粒子径(メジアン径)は、例えば、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製)によって測定される。
【0038】
金属酸化物層3は、金属酸化物粒子以外の公知の添加物を含有することができる。このような添加物としては、ポリマー粉末などが挙げられる。添加物の含有割合は、金属酸化物粒子および添加物の総量に対して、例えば、1.0質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下、さらに好ましくは、0質量%である。すなわち、金属酸化物層3は、好ましくは、金属酸化物のみから形成される。
【0039】
次いで、このような金属酸化物−ポリマー積層体1の製造方法について、詳述する。
【0040】
この方法では、まず、ポリマー層2aを用意する(用意工程)。このとき、ポリマー層2aは、埋設部4が形成されていない。
【0041】
次いで、この方法では、ポリマー層2aの一方面(表面)に、埋設部4を形成するとともに、金属酸化物層3をエアロゾルデポジション法(AD法)により形成する(形成工程)。
【0042】
エアロゾルデポジション法(AD法・ガスデポジション法(気体堆積法))によって埋設部4とともに金属酸化物層3を形成するには、
図2に示すエアロゾルデポジション装置10が用いられる。
【0043】
エアロゾルデポジション装置10は、成膜チャンバー11、エアロゾルチャンバー12およびキャリアガス輸送装置13を備えている。
【0044】
成膜チャンバー11は、ポリマー層2aの表面に、金属酸化物層3を形成するための成膜室であって、基板ホルダー14、成膜チャンバー11内の温度を測定するための温度計(図示せず)、および、成膜チャンバー11内の圧力を測定するための圧力計(図示せず)を備えている。
【0045】
基板ホルダー14は、支柱15、台座16およびステージ17を備えている。
【0046】
支柱15は、台座16およびステージ17を連結させるために、成膜チャンバー11の天井壁を貫通して下方(鉛直方向下方)に突出するように設けられている。
【0047】
台座16は、ポリマー層2aを成膜チャンバー11内に保持および固定するために、支柱15の長手方向一端部(下端部)に設けられている。
【0048】
ステージ17は、金属酸化物層3の形成時において、ポリマー層2aを任意の方向(x方向(前後方向)、y方向(左右方向)、z方向(上下方向)およびθ方向(回転方向))に移動可能とするために、成膜チャンバー11の天井壁の上面に設けられ、支柱15の長手方向他端部(上端部)に接続されている。
【0049】
これにより、ステージ17は、支柱15を介して台座16に接続され、ステージ17により、台座16を移動可能としている。
【0050】
また、成膜チャンバー11には、メカニカルブースターポンプ18およびロータリーポンプ19が接続されている。
【0051】
メカニカルブースターポンプ18およびロータリーポンプ19は、成膜チャンバー11内を減圧するとともに、成膜チャンバー11に連結管20(後述)を介して連通されるエアロゾルチャンバー12内を減圧するため、成膜チャンバー11に、順次接続されている。
【0052】
エアロゾルチャンバー12は、金属酸化物層3の材料(すなわち、金属酸化物粒子)を貯留する貯留槽であって、振動装置21、および、エアロゾルチャンバー12内の圧力を測定するための圧力計(図示せず)を備えている。
【0053】
振動装置21は、エアロゾルチャンバー12、および、エアロゾルチャンバー12内の金属酸化物層3の材料を振動させるための装置であって、公知の振盪器が用いられる。
【0054】
また、エアロゾルチャンバー12には、連結管20が接続されている。
【0055】
連結管20は、エアロゾル化された材料(以下、エアロゾル)を、エアロゾルチャンバー12から成膜チャンバー11に輸送するための配管であって、その一方側端部(上流側端部)がエアロゾルチャンバー12に接続されるとともに、他方側が成膜チャンバー11の底壁を貫通して台座16に向かって延びるように配置されている。また、成膜チャンバー11内において、連結管20の他方側端部(下流側端部)には、成膜ノズル22が接続されている。
【0056】
成膜ノズル22は、エアロゾルをポリマー層2aの表面に噴き付けるための噴射装置であって、成膜チャンバー11内において、噴射口が鉛直方向上側の台座16に向かうように、配置されている。具体的には、成膜ノズル22は、その噴射口が台座16と所定間隔(例えば、1mm以上、好ましくは、3mm以上であり、また、100mm以下、好ましくは、50mm以下)を隔てるように上下方向において対向配置されており、これにより、エアロゾルチャンバー12から供給されるエアロゾルを、ポリマー層2aの表面に噴き付け可能としている。
【0057】
なお、成膜ノズル22の噴射口形状としては、特に制限されず、エアロゾルの噴射量、噴射範囲などに応じて、適宜設定される。
【0058】
また、連結管20の流れ方向途中には、連結管開閉弁23が介在されている。連結管開閉弁23としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
【0059】
キャリアガス輸送装置13は、キャリアガスボンベ25を備えている。
【0060】
キャリアガスボンベ25は、例えば、酸素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、空気などのキャリアガスを貯留するボンベであって、ガス管26を介して、エアロゾルチャンバー12に接続されている。
【0061】
ガス管26は、キャリアガスをキャリアガスボンベ25からエアロゾルチャンバー12に輸送するための配管であって、その上流側端部がキャリアガスボンベ25に接続されるとともに、下流側端部がエアロゾルチャンバー12に接続されている。
【0062】
また、ガス管26の流れ方向途中には、ガス流量計27が介在されている。ガス流量計27は、ガス管26内のガスの流量を調整するとともに、その流量を検知するための装置であって、特に制限されず、公知の流量計が用いられる。
【0063】
さらに、ガス管26の流れ方向途中には、ガス流量計27よりも下流側において、ガス管開閉弁28が介在されている。ガス管開閉弁28としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
【0064】
このようなエアロゾルデポジション装置10により金属酸化物層3を形成するためには、まず、台座16に、ポリマー層2aを、金属酸化物層3を形成させる表面が成膜ノズル22側(下側)に向かうように配置する。
【0065】
一方、エアロゾルチャンバー12には、上記した金属酸化物層3の材料(金属酸化物粒子、好ましくは、金属酸化物粒子の凝集体)を投入する。
【0066】
なお、凝集体は、金属酸化物粒子の一次粒子を所定時間加熱することにより形成することができる。
【0067】
加熱温度は、金属酸化物の融点、一次粒子径などに応じて適宜決定することができ、例えば、700℃以上1500℃以下である。特に、金属酸化物としてジルコニアなどを用いた場合は、好ましくは、900℃以上、より好ましくは、950℃以上、さらに好ましくは、1100℃以上であり、また、好ましくは、1300℃以下、より好ましくは、200℃以下である。また、金属酸化物としてセリアなどを用いた場合は、好ましくは、750℃以上、より好ましくは、1000℃以上であり、また、好ましくは、1300℃以下、より好ましくは、1200℃以下である。
【0068】
加熱時間は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.25時間以上であり、また、例えば、24時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0069】
加熱条件を上記のように調整することにより、所望の粒子径の凝集体を得ることができる。
【0070】
次いで、この方法では、ガス管開閉弁28を閉とし、また、連結管開閉弁23を開とするとともに、メカニカルブースターポンプ18およびロータリーポンプ19を駆動させることにより、成膜チャンバー11内およびエアロゾルチャンバー12内を減圧する。
【0071】
成膜チャンバー11内の圧力は、例えば、5〜80Paであり、エアロゾルチャンバー12内の圧力は、例えば、5〜80Paである。
【0072】
次いで、この方法では、金属酸化物層3の材料を、エアロゾルチャンバー12内において、振動装置21により振動させるとともに、ガス管開閉弁28を開として、キャリアガスボンベ25からキャリアガスをエアロゾルチャンバー12に供給する。これにより、金属酸化物層3の材料をエアロゾル化させるとともに、発生したエアロゾルを、連結管20を介して成膜ノズル22に輸送することができる。
【0073】
また、ガス流量計27により調整されるキャリアガスの流量は、例えば、1L/分以上、好ましくは、3L/分以上であり、また、例えば、20L/分以下、好ましくは、18L/分以下である。
【0074】
次いで、この方法では、材料を、成膜ノズル22の噴射口からポリマー層2aの表面に向けて噴射する。
【0075】
エアロゾル噴射中のエアロゾルチャンバー12内の圧力は、例えば、50Pa以上、好ましくは、1000Pa以上であり、また、例えば、80000Pa以下、好ましくは、50000Pa以下である。
【0076】
成膜チャンバー11内の圧力は、例えば、10Pa以上、好ましくは、30Pa以上であり、また、例えば、1000Pa以下、好ましくは、800Pa以下である。
【0077】
また、エアロゾル噴射中のエアロゾルチャンバー12内の温度は、例えば、0〜50℃℃である。
【0078】
また、エアロゾル噴射中、好ましくは、ステージ17を適宜移動させることにより、ポリマー層2aの表面に均等にエアロゾルを噴き付ける。
【0079】
このような場合において、ステージ17の移動速度(すなわち、成膜ノズル22の移動速度)は、例えば、0.1mm/秒以上、好ましくは、0.2mm/秒以上であり、また、例えば、100mm/秒以下、好ましくは、20mm/秒以下である。
【0080】
材料が、ポリマー層2aの表面に向けて噴射されると、その材料がポリマー層2aの表面をアタックする。このアタックにより、ポリマー層2aに埋設部4が形成される。そして、材料が凝集体である場合には、凝集体はアタックしたときに、一旦、一次粒子に分裂し、埋設部4に埋設されながら、再凝集して、金属酸化物層3を形成する。
【0081】
これにより、ポリマー層2の表面(鉛直方向下側)に、金属酸化物層3を形成することができる。具体的には、金属酸化物層3の一部(厚み方向一端部、具体的には、上端部)が、厚み方向においてポリマー層2の埋設部4に埋設されている。
【0082】
金属酸化物層3の厚さX
3は、例えば、0.1μm以上50μm以下である。特に、金属酸化物層3が積層されるポリマー層2がフッ素系樹脂である場合、好ましくは、0.3μm以上、より好ましくは、0.8μm以上であり、また、好ましくは、10μm以下、より好ましくは、5μm以下である。また、ポリマー層2がオレフィン系樹脂である場合、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、12μm以上であり、また、好ましくは、25μm以下、より好ましくは、20μm以下である。
【0083】
金属酸化物層3の露出部における厚さX
4(つまり、X
3からX
2を差し引いた厚さ)は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.3μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下、より好ましくは、1.0μm未満である。
【0084】
このように製造された金属酸化物−ポリマー積層体1では、金属酸化物層3がエアロゾルデポジション法に形成され、金属酸化物層3の一部が、厚み方向において、ポリマー層2に埋設されているため、金属酸化物層3がポリマー層2に強固に積層され、金属酸化物層3とポリマー層2との密着性が優れる。これにより、金属酸化物−ポリマー積層体1の欠陥の減少、すなわち、歩留まりが向上するとともに、金属酸化物−ポリマー積層体1の耐久性などが優れる。
【0085】
この金属酸化物−ポリマー積層体1は、種々の用途に用いることができる。例えば、電子部品用基板、フレキシブル電子機器、電子光学部品、センサー部品、医療機器、ガス・液体分離膜などの用途に好適に用いることができる。
【0086】
また、金属酸化物粒子の凝集体を用いてAD法によりポリマー層2に金属酸化物層3を形成すると、凝集体がポリマー層2の表面に強い衝撃を与え、ポリマー層2の表面を削り、埋設部4を確実に設けることができる。そして、凝集体は、ポリマー層2の表面に衝突した際に一次粒子に分裂し、その後、再凝集して金属酸化物層3を形成する。これによって、より密着性の高い金属酸化物−ポリマー積層体1を得ることができる。
【0087】
なお、
図1の実施形態では、金属酸化物層3の一部が埋設部4に埋設されているが、例えば、図示しないが、金属酸化物層3の全部を埋設部4に埋設することもできる。
【0088】
また、
図1の実施形態では、ポリマー層2の平面視略中央部に金属酸化物層3が形成されているが、例えば、図示しないが、平面視において、ポリマー層2の端縁部に金属酸化物層3を形成することもできる。
【0089】
また、
図1の実施形態では、ポリマー層2の一方面にのみに金属酸化物層3が積層されているが、図示しないが、ポリマー層2の両面(一方面および他方面)に金属酸化物層3を積層することもできる。この実施形態も、
図1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0090】
また、
図1の実施形態では、ポリマー層2は、直線状の略平板状に形成されているが、ポリマー層2を、厚み方向に凸または凹となる曲面状に形成されていてもよい。
【0091】
これらの実施形態も、
図1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。以下に示す実施例の数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
【0093】
実施例1
ポリマー層2aとして、4フッ化エチレン樹脂多孔質膜(PTFE:「TEMISH」、7cm×7cm、厚み80μm、日東電工社製)を用意した。
【0094】
そして、エアロゾルデポジション装置(キャリアガス:窒素ガス)を用いてその成膜チャンバー(22℃)内において、基板ホルダーの台座に、ポリマー層2aを設置した。
【0095】
なお、このとき、成膜ノズルの噴射口とポリマー層2aの表面との間隔が、15mmとなるように調節した。
【0096】
一方、ジルコニア粉末(商品名「RC−100」、一次粒子の平均粒子径0.2μm、第一稀元素化学工業社製)を1175℃、0.5時間加熱して、ジルコニア粉末の凝集体(メジアン径2μm)を作製した。なお、ジルコニア粉末の凝集体のメジアン径の測定は、走査型電子顕微鏡(商品名「S−3400N」、日立ハイテク社製)を用いて5000倍の倍率にて測定した。
【0097】
この凝集体を50g用意し、450mLのガラス製エアロゾルチャンバーに投入した。
【0098】
その後、ガス管開閉弁を閉とし、また、連結管開閉弁を開とするとともに、メカニカルブースターポンプおよびロータリーポンプを駆動させることにより、成膜チャンバー内およびエアロゾルチャンバー内を、50Paまで減圧した。
【0099】
次いで、窒素ガスの流量が6L/分となるようにガス流量計により調整し、また、エアロゾルチャンバーを振盪器により振動させながら、ガス管開閉弁を開とした。これによって、エアロゾルチャンバー内において、ジルコニア粉末をエアロゾル化し、得られたエアロゾルを、成膜ノズルから噴射させた。
【0100】
なお、このときの成膜チャンバー内の圧力は、250Paであった。
【0101】
そして、基板ホルダーのステージによって、ポリマー層2aが固定された台座を移動速度12mm/秒でx−y方向に移動させるとともに、成膜ノズルから噴射されるエアロゾルを、ポリマー層2aの表面に噴き付けた。
【0102】
これにより、
図1に示すように、金属酸化物層3(5cm×5cm、厚み1.4μm)がポリマー層2aの表面(平面視略中央部)に、金属酸化物層3の厚み方向の一部がポリマー層2の表面に埋設されるように積層され、金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。なお、埋設部4の深さX
2(金属酸化物層3(ジルコニア層)の埋設している部分における上下方向長さ)は、0.9μmであった。
【0103】
実施例2〜4
ジルコニア粉末の凝集体の平均粒子径(メジアン径)を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。結果を表1に示す。
【0104】
なお、実施例2では、ジルコニア粉末を1050℃、0.5時間加熱することにより、ジルコニア粉末の凝集体の平均粒子径を調整した。実施例3では、ジルコニア粉末を1175℃、1時間加熱することにより、凝集体の平均粒子径を調整した。実施例4では、ジルコニア粉末を1175℃、3時間加熱することにより、凝集体の平均粒子径を調整した。
【0105】
実施例5
ポリマー層2として、ポリプロピレン不織布(PP:商品名「HOP60HCF」、日東電工社製、7cm×7cm、厚み200μm、熱ラミネート法)を用意した以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物層3(5cm×5cm、厚み20.6μm)がポリマー層2aの表面(平面視略中央部)に金属酸化物層3の厚み方向の一部が埋設された金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。結果を表2に示す。
【0106】
実施例6〜8
ジルコニア粉末の凝集体の平均粒子径(メジアン径)を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。結果を表2に示す。
【0107】
なお、実施例6では、ジルコニア粉末を1050℃、0.5時間加熱することにより、ジルコニア粉末の凝集体の平均粒子径を調整した。実施例7では、ジルコニア粉末を1175℃、1時間加熱することにより、凝集体の平均粒子径を調整した。実施例8では、ジルコニア粉末を1175℃、3時間加熱することにより、凝集体の平均粒子径を調整した。
【0108】
実施例9
セリア粉末(一次粒子の平均粒子径50nm)を800℃、3時間加熱して、セリア粉末の凝集体(メジアン径3μm)を作製し、この凝集体を使用した以外は、実施例5と同様にして、金属酸化物層3(5cm×5cm、厚み17μm)がポリマー層2aの表面(平面視略中央部)に金属酸化物層3の厚み方向の一部が埋設された金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。結果を表3に示す。
【0109】
実施例10
セリア粉末の凝集体の平均粒子径(メジアン径)を表3のように変更した以外は、実施例9と同様にして、金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。結果を表3に示す。なお、実施例10では、セリア粉末を1050℃で0.5時間加熱することにより、セリア粉末の凝集体の平均粒子径を調整した。
【0110】
比較例1
ジルコニア粉末の1次粒子粉末(平均粒子径0.2μm)10gを溶媒(1−メチル−2−ピロリドン)44gに分散させ、さらにバインダーとしてポリフッ化ビニリデンを2.5質量%となるように配合して、ジルコニア分散液を調製した。
【0111】
このジルコニア分散液をフッ化エチレン樹脂多孔質膜(上記と同一)の表面に、スピンコート法(150rpm、10秒)により積層させ、90℃で1日間乾燥させた。
【0112】
これにより、金属酸化物−ポリマー積層体1を得た。積層された金属酸化物層は、2cm×2cm、厚み2.3μmであった。
【0113】
比較例2
ジルコニア粉末の1次粒子粉末を、実施例1で使用したジルコニア粉末の凝集体(メジアン径2μm)に変更した以外は、比較例1と同様にして、ジルコニア分散液を、フッ化エチレン樹脂多孔質膜の表面に、スピンコート法により積層させ、乾燥させた。
【0114】
(密着性試験)
各実施例および各比較例の金属酸化物−ポリマー積層体1を、超音波洗浄器の浴槽に配置し、室温(25℃)の水中において、3分間、超音波洗浄器を作動させた。
【0115】
超音波洗浄前後の金属酸化物層3のみの質量を測定し、超音波洗浄前の金属酸化物層3に対する超音波洗浄後の金属酸化物層3の質量減少率を算出した。結果を表1〜表3に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】