(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1はゴムクローラ1の製造過程における芯金4の翼部12にらせん状に巻き回された並列被覆体15の様子を示す図、
図2は
図1におけるA−A矢視図である。
ゴムクローラ1は、クローラ本体2、ラグ3、芯金4および一対の抗張体5等からなる。
クローラ本体2は、肉厚な帯状のゴムにより形成された大きな輪である。ラグ3は、輪であるクローラ本体2の外周面から外方に突出した状態で、クローラ本体2の内方からクローラ本体2の幅方向端に向けて延びている。ラグ3は、クローラ本体2の周方向に一定の間隔で複数設けられる。以下「幅方向」というときはクローラ本体2における幅方向をいい、「周方向」というときはクローラ本体2における周方向をいうものとする。「外周」および「内周」の語は、「輪」であるクローラ本体2(ゴムクローラ1)におけるそれぞれ「外周」および「内周」をいう。
【0014】
ラグ3は、幅方向の両側に面対称に、または幅方向両側で交互に千鳥状に配される。ラグ3は、幅方向の一方の端から他方の端に連続して設けられることがある。
芯金4は、金属等の硬質材料によって形成される。芯金4は、全体として細長い形状である。芯金4の中央には、芯金4の長手方向に間隔を有して一方の表面から同方向に突出する一対の突起部11が設けられている。芯金4における突起部11から長手方向外方端までの部分を翼部12という。
【0015】
翼部12は、板状であって、突起部11近傍から芯金4の長手方向の端に向かうに伴い厚さおよび幅が小さくなっている。翼部12の厚さおよび幅は、この形状に限られず、芯金4に求められる機能により、任意に決定される。
芯金4は、突起部11の突出する側がゴムクローラ1の内周側となるように、複数が周方向に等間隔に配されて、クローラ本体2に埋め込まれている。
【0016】
抗張体5は、1本のスチールコード13が、またはスチールコード13複数本を略等間隔で平行に並べて1単位とされたコード並列体が、突起部11側から芯金4の長手方向の端側に向けて(またはこの逆方向に)、翼部12の外周側にらせん状(スパイラル状)に巻き回されて形成される。
ゴムクローラ1の製造過程における加硫成形工程では、らせん状に巻き回される1本のスチールコード13またはコード並列体は、あらかじめゴム14により被覆されて使用される。ゴム14で被覆されたスチールコード13、およびゴム14で被覆されたコード並列体は、例えば特開2001−253374号公報、特開2013−40428号公報等に記載されており、公知である。
【0017】
図1に示されるコード並列体は、2本のスチールコード13を1単位とする。以下、ゴム14で被覆されたコード並列体を「並列被覆体15」という。
抗張体5を備えたゴムクローラ1は、例えば以下のようにして加硫成形される。
先ずゴムクローラ1の内周側の形状を形成する内側モールド(内側金型)に未加硫ゴムが充填され、芯金4が、突起部11を内側(奥側、内周側)にして所定の位置に並べられる。続いて、芯金4の翼部の外側に、突起部11側から翼部12の端側に向けて並列被覆体15が巻き回される。並列被覆体15は、巻き始めの端(以下「始端16」という)が、クローラ本体2の厚さ方向から見たときに、芯金4の翼部12の投影位置(翼部12に重なる位置)に配される。以下単に「厚さ方向」というときは、クローラ本体2における厚さ方向をいう。
【0018】
並列被覆体15の巻き回しが所定の周回数繰り返されると、始端16が重なる芯金4の翼部12に巻き終わりの端(以下「終端17」という)を(厚さ方向に)重ねて、巻き回しが終了される。終端17は、
図1におけるA−A矢視方向から見たとき、その端面が始端16の端面に対向し、始端16の端面と間隔を有する。
終端17を、A−A矢視方向から見たとき、その近傍が始端16の近傍に重なるように位置させてもよい。終端17を、始端16が重なる芯金4に対して周方向両側で隣り合ういずれかの芯金4の翼部12に重ならせてもよい。
【0019】
始端16からその近傍および終端17からその近傍を内周側に折り曲げることにより、これらの部分を並列被覆体15における他の部分よりも芯金4に近づけるのが好ましい(
図2の二点鎖線参照)。
始端16および終端17の外周側に、補強繊維が配される。ゴムクローラ1では、矩形に裁断された補強繊維21が、始端16および終端17を含んで、(芯金4の)翼部12外方で重なる並列被覆体15の部分を覆う。
【0020】
補強繊維21には、綿または麻によるキャンバス(帆布)に換えて、ナイロン等の他の種類の繊維による織物、ポリイミド樹脂シート等の樹脂シートまたは樹脂シートが編まれたもの(編み物)等を使用することができる。
次に、芯金4,4および並列被覆体15の外側が、そのキャビティに未加硫ゴムが充填された外側モールド(外側金型)で覆われ、内側モールドと外側モールドとが結合される。外側モールドは、ゴムクローラ1におけるラグ3を含む外周側の形状を形成させる
キャビティ内の未加硫ゴムは、所定の温度および時間で加硫処理され、芯金4,4および抗張体5が埋め込まれたゴムクローラ1が形成される。
【0021】
ところで、従来、巻き回されたスチールコードの始端および終端がそれぞれに隣り合うスチールコードにハンダ付け等で固着されたのは、ゴムクローラが始端および終端が埋め込まれた部分で屈曲したとき、これらを含む近傍が単独で外周側に跳ね上がるのを防止するためであった。
上記したゴムクローラ1では、始端16および終端17を含むこれらの近傍の外周側が補強繊維21で覆われており、始端16、終端17を含むこれらの近傍の外周側への跳ね上がりは、補強繊維21によって防止される。ゴムクローラ1は、補強繊維21を所定の場所に埋め込むことにより、その加硫成形工程において始端16および終端17のハンダ付け等の固着作業を行わなくとも、屈曲時のスチールコード13,13の端近傍の跳ね上がりを防ぐことができる。
【0022】
また、始端16、終端17を含むこれらの近傍を、並列被覆体15における他の部分よりも芯金4の翼部12に近づけること、つまり始端16、終端17を含むこれらの近傍を意図的に内周側に位置させることにより、ゴムクローラ1の屈曲時等の始端16、終端17の外周側(接地側)への移動(位置変化)距離を大きくし、当該部分のゴムの亀裂発生
を効果的に防止することができる。
【0023】
図1に示されるゴムクローラ1では、1枚の補強繊維21により始端16および終端17近傍を覆ったが、2枚の補強繊維を用い、それぞれで始端16近傍および終端17近傍を別々に覆ってもよい。
図3は他のゴムクローラ1Bの製造過程におけるらせん状に巻き回された並列被覆体15a,15bの様子を示す図、
図4は
図3におけるB−B矢視図である。
【0024】
ゴムクローラ1Bを構成するクローラ本体2、ラグ3および芯金4は、ゴムクローラ1におけるものと同じである。
ゴムクローラ1Bは、抗張体5が、連続する1本の並列被覆体15で形成されるのではなく、2本の並列被覆体15a,15bが不連続に直列に並べられて形成される。並列被覆体15a,15bは、それぞれの長さが並列被覆体15より短い点を除き、2本のスチールコード13,13がゴム14に被覆された並列被覆体15と同じである。
【0025】
ゴムクローラ1Bは、芯金4の翼部12の外周側に最初に巻き回される並列被覆体15(15a)に、新たにボビン等に巻かれた別の並列被覆体15(15b)が巻き足されて製造される。
ゴムクローラ1Bの製造における芯金4の翼部12への並列被覆体15aの巻き回しの開始は、ゴムクローラ1と同様に、突起部11側から行われる。並列被覆体15aの巻き始めの端16a(始端16a)は、厚さ方向から見たとき、芯金4の翼部12におけるその幅の中央付近に重なる。始端16aを含むその近傍を、翼部12に近づけるように内周側に折り曲げるのが好ましい(
図4二点鎖線参照)。
【0026】
一つ目の並列被覆体15aの巻き終わりの端17a(終端17a)が芯金4の翼部12に重なるように、並列被覆体15aが切断される。終端17aは、始端16aと同様に、その近傍が内周側に折り曲げられるのが好ましい。
次に、巻き終えた並列被覆体15aの終端17aが重なる芯金の翼部12から、別の並列被覆体15bの巻き回しが再開される。並列被覆体15bの巻き回しの始端16bは、既に巻かれた並列被覆体15aの終端17aからわずかに離される。二つ目の並列被覆体15bの始端16b近傍も、内周側に折り曲げられるのが好ましい。
【0027】
二つ目の並列被覆体15bが巻き回された後のその終端17bの処理は、ゴムクローラ1の場合と同じである。並列被覆体15bの終端17bは、並列被覆体15aの始端16aと同じ芯金4の翼部12に重ならせるのが好ましい。
続いて、一つ目の並列被覆体15aの始端16aを含むその近傍、および始端16aに(クローラ本体2の)幅方向で隣り合う二周目前後の並列被覆体15aの外周側が、補強繊維21Baに覆われる。補強繊維21Baが覆う範囲は、少なくとも一周目の始端16aを含む始端16a近傍、および始端16aが重なる翼部12に重なる2周目、または2,3周目の並列被覆体15aを含むのが好ましい。
【0028】
一つ目の並列被覆体15aの終端17aを含むその近傍および二つ目の並列被覆体15bの始端16bを含むその近傍の外周側、ならびに二つ目の並列被覆体15bの終端17b近傍も、一つ目の始端16aと同様な形態で、それぞれ補強繊維21Bb,21Bcにより覆われる。補強繊維21Bbは、終端17aおよび始端16bを挟む、幅方向両側の並列被覆体15a,15bの各一列または各二列をも覆うのが好ましい。
【0029】
この後、金型内で未加硫ゴムが加硫成形され、スパイラル状のスチールコード13,13が埋め込まれたゴムクローラ1Bが製造される。
ゴムクローラ1Bは、始端16a、ハンダ付け等されることなく直列に配された終端1
7aおよび始端16b、ならびに終端17bを含むこれらの近傍の外周側が補強繊維21Ba,21Bb,21Bcで覆われている。このことにより、ゴムクローラ1Bは、スチールコード13,13における始端16a,16b、終端17a,17bを含むこれらの近傍の外周側への跳ね上がりが防止される。ゴムクローラ1は、補強繊維21Bbが、一つ目の並列被覆体15aの終端17aおよび二つ目の並列被覆体15bの始端16bの外周側を覆うことにより、これらをハンダ付け等で固着して連続させる作業を行うことなく製造することができる。
【0030】
また、上述した補強繊維21Ba,21Bb,21Bcを使用する加硫成形工程では、スチールコード13,13がスパイラル状に巻き回されたゴムクローラ1Bの製造に、複数本の並列被覆体15a,15bを使用することができ、通常廃棄される半端な長さの並列被覆体の有効活用が可能となる。
図5は他のゴムクローラ1Cの周方向断面図、
図6はゴムクローラ1Cに巻き回された並列被覆体15a,15bの様子を示す図、
図7はゴムクローラ1C加硫成形前の
図5の断面に対応する断面図である。なお、
図5は加硫成形後における
図6のC−C矢視断面である。
【0031】
ゴムクローラ1Cを構成するクローラ本体2、ラグ3および芯金4は、ゴムクローラ1,1Bにおけるものと同じである。
ゴムクローラ1Cは、抗張体5が2つの並列被覆体15a,15bを使用して形成されている。並列被覆体15a,15bは、ゴムクローラ1,1Bに使用された、2本のスチールコード13,13がゴム14に被覆されたものである。ゴムクローラ1Cにおける不連続な一対のスチールコード13,13のそれぞれは、両端(始端16a,16b、終端17a,17bに該当)が、厚さ方向から見たときに同じ芯金4の翼部12に外周側で重なっている。スチールコード13,13のすべての端近傍は、スチールコード13,13の他の部分よりも翼部12に近くなるように、内周側に折り曲げられている。折り曲げられた端近傍の外周側には、クローラ本体2を形成するゴムよりも硬度が5度以上高い、JIS−K−6253、タイプAデュロメータ硬さにおいて硬度60〜80度の補強ゴム22C,22Cが配されている。
【0032】
つまり、ゴムクローラ1Cにおいて、スチールコード13,13のすべての端近傍は、芯金4の翼部12と補強ゴム22Cとに挟まれている。
図6,7を参照して、ゴムクローラ1Cの加硫成形工程では、翼部12の外周側への並列被覆体15a,15bの巻き回し時にまたは巻き回しの後に、並列被覆体15a,15bの両端近傍が内周側に折り曲げられ、この両端近傍の外周側が、高い硬度の未加硫ゴム(加硫後の補強ゴム22C)で覆われる。
【0033】
隣り合う芯金4,4の翼部12,12の間には、加硫成形時に未加硫ゴムの流動による並列被覆体15a,15bの移動(位置の乱れ)を防ぐため、未加硫ゴム(補積ゴム)25Cが配される。
補積ゴム25Cは、ゴムクローラ1Cにおいて主に芯金4よりも内周側のクローラ本体2となるベースゴム23、および主に芯金4よりも外周側のクローラ本体2、ラグ3となるトレッドゴム24と同じものである。
【0034】
また、ゴムクローラ1Cの加硫成形では、芯金4の翼部12および補積ゴム25Cの外周がキャンバス(帆布)26Cで覆われ、キャンバス26Cの外周側に並列被覆体15a,15bが巻き回される。キャンバス26Cは、並列被覆体15a,15bが芯金4の翼部12に接するのを防止する役割をする。キャンバス26Cは、ナイロン等の他の種類の繊維による織物、ポリイミド樹脂シート等の樹脂シートまたは樹脂シートが編まれたもの(編み物)等(「織物またはシート」)で代用することができる。
【0035】
加硫成形されたゴムクローラ1Cは、スチールコード13,13の端近傍の外周側が高い硬度の補強ゴム22C,22Cで覆われる。ゴムクローラ1Cでは、製造時に1つ目の並列被覆体15aの終端17a(のスチールコード13)および二つ目の並列被覆体15bの始端16b(のスチールコード13)をハンダ付け等により固着、またはこれらを隣のスチールコード13に固着しなくても、始端16a,16b、終端17a,17bを含むこれらの近傍は、硬度の高い補強ゴム22C,22Cによってその外周側への跳ね上がりが防止される。
【0036】
さらに、ゴムクローラ1Cは、スチールコード13,13の両端近傍が内周側に折り曲げられていることにより、両端近傍とクローラ本体2の外周側表面との距離が大きくなり、外周側表面への飛び出しのおそれが減少する。
並列被覆体15a,15bそれぞれの始端16a,16bおよび終端17a,17b近傍の形態、つまりこれらの近傍が内周側に折り曲げられたこと、およびこれらの外周側に他の部分よりも硬度の高い補強ゴム22Cが配されたことは、一つの並列被覆体15がスパイラル状に巻き回されたゴムクローラに適用することができる。適用されたゴムクローラは、ゴムクローラ1Cと同様に、スチールコードの巻き始め部分、および巻き終わり部分の外周側表面への飛び出しが防止される。
【0037】
図8は他のゴムクローラの加硫成形前の翼部12における周方向断面図である。
加硫成形前の状態が
図8に示されるゴムクローラは、加硫成形後におけるクローラ本体、ラグおよび芯金4が、ゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じである。このゴムクローラに使用される並列被覆体15a,15b、および加硫成形工程における並列被覆体15a,15bの巻き回し、それぞれの始端16a,16bおよび終端17a,17b近傍の曲げ等の処理は、ゴムクローラ1Cにおける処理と同じである。
【0038】
以下の説明において、ゴムクローラ1Cと同じ構成のものについてはゴムクローラ1Cにおけると同じ名称および符号を付しその説明を省略する。
ゴムクローラの加硫成形工程では、並列被覆体15a,15bそれぞれの始端16a,16bおよび終端17a,17bは、厚さ方向からみたとき、隣り合う芯金4,4の翼部12,12の間に配される。補強ゴム22C,22Cは、始端16a、終端17aと始端16bとが対向する部分、および終端17bの三カ所それぞれの近傍の外周側を覆う。そして、隣り合う芯金4,4の翼部12,12の間には、未加硫の補積ゴム25Cが入れられる。つまり、始端16a、終端17aと始端16bとが対向する部分、および終端17bそれぞれの近傍は、補強ゴム22Cおよび補積ゴム25Cで挟まれた状態で加硫成形が行われ、ゴムクローラが製造される。
【0039】
ゴムクローラの加硫成形工程では、ゴムクローラ1Cの加硫成形と同様に、翼部12,12間の補積ゴム25Cの存在によりベースゴム23(およびトレッドゴム24)の流動による並列被覆体15a,15bの位置変化が防止され、加硫成形後にも始端16a,16bおよび終端17a,17bは、その外周側が補強ゴム22C,22Cで覆われる。
このようにして加硫成形されたゴムクローラは、スチールコード13,13の端近傍の外周側に存在する硬度の高い補強ゴム22C,22Cにより、離れて継ぎ足されたスチールコード13,13の端同士が互いにハンダ付け等されなくても、および巻き始めの端、巻き終わりの端が幅方向隣のスチールコード13にハンダ付け等されなくとも、外周側への跳ね上がりが防止される。
【0040】
このゴムクローラにおいて、補強ゴム22C,22Cに換えて、ゴムクローラ1,1Bに使用された補強繊維21,21Ba,21Bb,21Bcを使用してもよく、その場合にも、硬度の高い補強ゴム22C,22Cを使用したときと同様の効果(ハンダ付け等を
行うことなく跳ね上がり防止)を得る。
図9は他のゴムクローラ1Dに巻き回された並列被覆体15の様子を示す図、
図10は
図9におけるD−D矢視図である。
【0041】
ゴムクローラ1Dを構成するクローラ本体2、ラグ3および芯金4は、ゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じである。
ゴムクローラ1Dに埋め込まれた抗張体5は、翼部12の外周側への巻き回しの途中でスチールコード13が途切れた、ゴムクローラ1Bにおけるものと同じである。ゴムクローラ1Dにおいてゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じ構成の部分は、
図9,10においてゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じ符合を付し、その説明を省略する。
【0042】
ゴムクローラ1Bについての
図3,4と
図9,10とを比較して、ゴムクローラ1Dは、加硫成形工程において、始端16a,16bおよび終端17a,17bの外周側を覆う補強繊維21Da,21Db,21Dcの周方向における範囲が異なる。ゴムクローラ1Bでは、加硫成形工程における補強繊維21Ba,21Bb,21Bcによる始端16a,16b、終端17a,17bを覆う範囲が、始端16a,16b等が(厚さ方向に)重なる芯金4の翼部12にとどまっていた。
【0043】
これに対して、ゴムクローラ1Dの加硫成形工程では、補強繊維21Da,21Db,21Dcが覆う範囲は、始端16a,16b等が(厚さ方向に)重なる芯金4に加えて、これと周方向両側で隣り合う芯金4,4の翼部12,12にまで及ぶ。補強繊維21Da,21Db,21Dcは、始端16a,16b等が重なる翼部12から両隣の芯金4,4の翼部12に架け渡される。補強繊維21Da,21Db,21Dcは、少なくとも、並列被覆体15a,15bにおける始端16a,16b、終端17a,17bを有する当該巻き部分、および始端16a,16bについては一周後の隣り合う並列被覆体の部分、終端17a,17bについては一周前の隣り合う並列被覆体の部分を覆う。
【0044】
ゴムクローラ1Dの加硫成形工程では、ゴムクローラ1Cの加硫成形工程と同様に、隣り合う芯金4,4の翼部12,12間が、補積ゴム25Cで満たされる。
ゴムクローラ1Dは、加硫成形前にこのように補強繊維21Da,21Db,21Dcが配されることにより、加硫成形処理において未加硫ゴムが、ラグ等に吸い上げられる等の流動により始端16a,16b、終端17a,17bが隣り合う翼部12,12の間に移動しても、始端16a,16b、終端17a,17bの外周側に必ず補強繊維21Da,21Db,21Dcが存在する。
ゴムクローラ1Dは、離れて継ぎ足されたスチールコード13,13の端同士が互いにハンダ付け等されなくても、および巻き始めの端、巻き終わりの端が幅方向隣のスチールコード13にハンダ付け等されなくとも、スチールコード13,13の端近傍の外周側への跳ね上がりが防止される。
【0045】
ゴムクローラ1Dの加硫成形工程において、始端16a,16b、終端17a,17bの近傍を内周側に折り曲げると、外周側への跳ね上がり防止効果が増大する。さらに始端16a,16b、終端17a,17bの外周側に、ゴムクローラ1Cに使用された補強ゴム22Cを配することにより、一層の跳ね上がり防止効果が期待できる。
図11は他のゴムクローラ1Eに巻き回された並列被覆体15の様子を示す図、
図12は
図11におけるE−E矢視図である。
【0046】
ゴムクローラ1Eを構成するクローラ本体2、ラグ3および芯金4は、ゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じである。
ゴムクローラ1Eに埋め込まれた抗張体5は、ゴムクローラ1におけるものと同じであ
る。ゴムクローラ1Eにおいてゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じ構成の部分は、
図11,12においてゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じ符合を付し、その説明を省略する。
【0047】
ゴムクローラ1Eは、並列被覆体15の始端16近傍および終端17近傍が、補強繊維21Ea,21Ebによって、ゴムクローラ1,1Bに比べて強固に被覆される。
すなわち、矩形の補強繊維21Eaが、並列被覆体15の始端16を含む巻き始め部分に外周側で二重になるように巻かれ、かつ巻かれた二重の外周側の先の余った部分31Eが、並列被覆体15の二周目の巻き回しで並列被覆体15の内周側になるように組み入れられる。
【0048】
この後、並列被覆体15は、ゴムクローラ1の場合と同様に芯金4の翼部12の外周側にらせん状に巻き回される。
並列被覆体15の巻き回しが終わると、並列被覆体15の終端17を含むその近傍に、矩形の補強繊維21Ebが、外周側が二重となるように、補強繊維21Eaとは逆方向で巻かれる。補強繊維21Ebは、終端17を巻いてなお余った部分32Eが、隣の並列被覆体15の内周側に押し入れられる。
【0049】
つまり、始端16を覆う補強繊維21Eaはその矩形の一辺側(の部分31E)が始端16の隣の並列被覆体15と翼部12との間に、終端17を覆う補強繊維21Ebはその矩形の一辺側(の部分32E)が終端17の隣の並列被覆体15と翼部12との間に、見かけ上挟まれた形態となる。そして、補強繊維21Ea,21Ebは、この状態で加硫成形されてゴムクローラ1E内に埋め込まれる。
【0050】
ゴムクローラ1Eは、スパイラル状に巻き回されたスチールコード13,13の両端にそれぞれ補強繊維21Ea,21Ebが巻かれ、補強繊維21Ea,21Ebは外周側で二重になっていることにより、ゴムクローラ1Eが始端16および終端17が埋め込まれた部分で屈曲したとき、始端16および終端17の過剰な動きが補強繊維21Ea,21Ebにより抑制される。その結果、スチールコード13,13の両端が位置する場所に生じ易いゴムの亀裂発生を、未然に防ぐことができる。
【0051】
このように、補強繊維21Ea,21Ebは、ゴムクローラ1Eの製造過程において始端16および終端17のハンダ付け等の固着作業を省き、かつ耐久性の高いゴムクローラ1Eを実現することができる。
補強繊維21Ea,21Ebにおける、並列被覆体15の他の部分と翼部12との間に見かけ上挟まれる部分31E,32Eは、隣り合う並列被覆体15のさらに隣り合う並列被覆体15まで拡大してもよい。並列被覆体15の他の部分と翼部12との間に見かけ上挟まれる部分31E,32Eの範囲は、任意に決定することができる。
【0052】
また、ゴムクローラ1におけるように、並列被覆体15の始端16および終端17近傍を1つの補強繊維でそれぞれ二重に巻いてもよい。
上述の実施形態において、いずれの補強繊維21,21Ba,21Bb,21Bc,21Ea,21Ebも、厚さ方向から見たときに、並列被覆体15の始端16,16a,16bおよび終端17,17a,17bを完全に覆い、なおこれらの端面が向く先に拡がる大きさが好ましい。
【0053】
ゴムクローラ製造における加硫成形工程において、2本のスチールコード13がゴムで被覆された並列被覆体15,15a,15bに換えて、1本のスチールコード13がゴムに被覆されたもの、3本以上のスチールコード13による並列体がゴムで被覆された並列被覆体を使用してもよい。並列被覆体は2〜5本による並列体がゴムで被覆されたものの
使用が好ましい。
【0054】
上述したゴムクローラ1,1B,1C,1D,1Eの加硫成形工程では、スチールコード13が予めゴム14で被覆された並列被覆体15,15a,15bが使用されたが、ゴム14で被覆されないスチールコードを芯金4の翼部12に巻き回す場合であっても、上述した形態を採用することができ、上記したと同様の効果を得ることができる。
その他、ゴムクローラ1,1B,1C,1D,1Eおよびゴムクローラ1,1B,1C,1D,1Eの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。