(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体の原料を集積する集積用凹部を外周面に有する回転ドラムと、該回転ドラムの外周面に向けて前記吸収体の原料を飛散状態にて供給するダクトと、該ダクトの下流側に隣接して前記集積用凹部内に集積された前記吸収体の原料の積繊物を押さえる巻かけベルトとを有する吸収体の製造装置であって、
前記回転ドラムは、前記外周面を形成する部材よりも内側に回転しないドラム本体を備え、該ドラム本体は、該回転ドラムの中心軸側から前記外周面側に向かって設けられた仕切板により仕切られた相互に独立した複数の空間を有しており、
前記外周面を形成する部材が回転している際に、該外周面の前記集積用凹部を介して、前記巻かけベルトで覆われた領域における前記空間から、前記ダクトで覆われた領域における負圧の前記空間に、空気の流れが発生せず、
前記ドラム本体は、前記ダクトと前記巻かけベルトとの境界に最も近い前記仕切板の先端に、前記回転ドラムの周方向に沿って延在するプレートを備え、
前記プレートは、前記境界に最も近い前記仕切板の先端から、上流側及び下流側の少なくとも一方に延在しており、その周方向の長さが、前記集積用凹部の底面の周方向の長さよりも長い吸収体の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の吸収体の製造装置の好ましい第1実施形態の積繊装置1Aの概略が示されている。第1実施形態の積繊装置1Aは、吸収体3の原料を集積する集積用凹部22を外周面21に有する回転ドラム2と、該回転ドラム2の外周面21に向けて吸収体3の原料を飛散状態にて供給するダクト4と、ダクト4の下流側に隣接して集積用凹部22内に集積された吸収体3の原料の積繊物31を押さえる巻かけベルト5とを有している。また、第1実施形態の積繊装置1Aは、更に、回転ドラム2の下方に配されたバキュームコンベア6と、ダクト4に吸収体の原料である繊維材料を供給する繊維材料供給部7とを備えている。
【0012】
回転ドラム2は、
図1に示すように、外周面21を形成する部材20よりも内側に回転しないドラム本体23を備えている。ドラム本体23は、該回転ドラム2の中心軸側から外周面21側に向かって設けられた仕切板24により仕切られた相互に独立した複数の空間A,B,C・・・を有している。
図1中、2X方向が回転ドラム2の周方向、2Y方向が回転ドラム2の幅方向(回転ドラム2の中心軸と平行な方向)である。以下、回転ドラム2について詳述する。
【0013】
ドラム本体23は、
図1,
図2に示すように、回転ドラム2の幅方向の両端部に、円盤状の固定板231,231と、両固定板231,231を繋ぐ円柱状の中心軸部232とを有している。固定板231,231と中心軸部232とは、金属製の剛体からなり、一体に形成されている。尚、
図2においては、ドラム本体23内部の説明の為、一方の固定板231を取り外した状態を示している。ドラム本体23には、金属製の複数の仕切板24が、両固定板231,231間に亘って、中心軸部232の外周面から外周面21側に向かって配されており、第1実施形態の積繊装置1Aにおいては、4個配されている。各仕切板24は、中心軸部232の外周面から略固定板231の外周縁に至るまで延在している。4個の仕切板24により仕切られて、ドラム本体23には、相互に独立した4つの空間A,B,C,Dが形成されている。
【0014】
ドラム本体23の中心軸部232には吸気ファン(不図示)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム2内の仕切られた空間A〜Dの圧力が調整できるようになっており、積繊装置1Aにおいては、空間Aが負圧に維持されるようになっている。空間Aは、
図1,
図3に示すように、外周面21がダクト4で覆われた領域に位置している。空間Bは、空間Aに隣り合う空間であり、外周面21が後述する巻かけベルト5で覆われた領域に位置している。空間Cは、空間Bに隣り合う空間であり、外周面21がバキュームコンベア6側に向けられた領域に位置している。そして、空間Dは、空間Cと空間Aとの間に配される空間であり、外周面21がバキュームコンベア6側に向けられた領域に位置している。このように、空間A,B,C,Dは、その順で順次配されている。尚、回転ドラム2の空間Bは、大気圧(圧力ゼロ)に設定されている。また、回転ドラム2の残りの空間C,Dは、正圧に設定されている。
【0015】
本発明の吸収体の製造装置においては、後述する外周面21を形成する部材20が回転している際に、該外周面21の集積用凹部22を介して、後述する巻かけベルト5で覆われた領域における大気圧の空間Bから、後述するダクト4で覆われた領域における負圧の空間Aに、空気の流れが発生しないように形成されている。第1実施形態の積繊装置1Aにおいては、
図2,
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ドラム本体23は、ダクト4と巻かけベルト5との境界に最も近い仕切板24aの先端に、回転ドラム2の周方向2Xに沿って延在するプレート8を備えている。プレート8は、仕切板24aの先端から、上流側及び下流側の少なくとも一方に延在しており、その周方向の長さL1が、集積用凹部22の底面22aの周方向の長さL2よりも長く形成されている。更に詳述すると、積繊装置1Aにおいては、プレート8は、仕切板24aの先端から上流側に周方向2Xに沿って延在する上流側プレート81と、仕切板24aの先端から下流側に周方向2Xに沿って延在する下流側プレート82とを有しており、上流側プレート81及び下流側プレート82の合計の周方向の長さL1が、1個の集積用凹部22の底面22aの周方向の長さL2よりも長く形成されている。また、プレート8は、回転ドラム1の回転軸方向(2Y方向)において集積用凹部22の底面22aを略被う幅であり、1個の集積用凹部22の底面22a全面を被うことができる大きさである。
【0016】
上流側プレート81は、
図2,
図3(a)及び
図3(b)に示すように、両固定板231,231間に亘って、ダクト4と巻かけベルト5との境界に最も近い仕切板24aの先端から上流側に周方向2Xに沿って、ダクト4で覆われた領域内に向かって、即ち負圧の空間Aの領域内に向かって延在している。そして、下流側プレート82は、
図2,
図3(a)及び
図3(b)に示すように、両固定板231,231間に亘って、ダクト4と巻かけベルト5との境界に最も近い仕切板24aの先端から下流側に周方向2Xに沿って、巻かけベルト5で覆われた領域内に向かって、即ち大気圧の空間Bの領域内に向かって延在している。上流側プレート81及び下流側プレート82は、その根本部分が、仕切板24aの先端に、ボルトあるいは接着剤等の公知の固定手段によって、固定されている。
【0017】
プレート8(上流側プレート81及び下流側プレート82)は、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板状のプレートであり、空気を通さない非通気性の部材となっている。ここで、「非通気性」とは、「空気を全く通さない非通気性」及び「微量の空気は通すが実質的に空気を通さない難通気性」の両方を含み、実質的に非通気性という意味である。プレート8は、各仕切板24の先端に設けてもよいが、ダクト4と巻かけベルト5との境界に最も近い仕切板24aの先端にさえ設けていればよい。
【0018】
回転ドラム2においては、
図1に示すように、外周面21を形成する部材20が、ドラム本体23外周全周を覆って配されており、モータ等の原動機からの動力を受けて、その外周面21を形成する部材20が水平軸回りを矢印R方向に回転する。以下、外周面21を形成する部材20について、詳述する。
【0019】
外周面21を形成する部材20は、積繊装置1Aにおいては、
図4に示すように、剛性を有する金属製のフレーム体25と、フレーム体25に重ねて固定された多孔性プレート28(多孔性部材)と、該多孔性プレート28の外面28a側に重ねて固定されたパターン形成プレート29とを有する。
【0020】
フレーム体25は、
図4に示すように、集積用凹部22の平面視においてその底面22aと重なる凹部底面対応部251を、ドラム幅方向2Y方向の中央部に有している。ここで、「平面視」とは、対象物(集積用凹部22等)を、回転ドラム1の外周面の法線方向(回転ドラム1の回転軸方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。凹部底面対応部251は、該凹部底面対応部251を厚み方向に貫通する複数の貫通口252と、回転ドラム2の周方向2X方向に隣り合う2つの貫通口252,252の間に位置する非通気性のリブ253とを含んで構成されている。貫通口252を有していることによって、該凹部底面対応部251全体として通気性を有している。複数の貫通口252は、ドラム本体3の周方向に間欠的に配されている。非通気性のリブ253は、周方向2Xに隣り合う2つの貫通口252,252の間に亘って、ドラム幅方向2Yに延びて形成されている。リブ253は、主として、フレーム体25自体の強度を向上させると共に、後述する多孔性プレート28及びパターン形成プレート29を重ねた重合体の周方向2X両端部を、例えばボルトあるいは接着剤等の公知の固定手段によって固定する部分となる。
【0021】
以下の説明において、外周面21を形成する部材20の各構成部材(多孔性プレート28及びパターン形成プレート29)の外面は、当該構成部材における、吸収体の原料が積繊されるときに該原料の供給側に向けられる面である。また、該各構成部材の内面は、当該構成部材における、吸収体の原料が積繊されるときに該原料の供給側とは反対側(ドラム本体23側)に向けられる面である。
【0022】
吸収体の原料としては、従来、生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、繊維材料として、解繊パルプ等のパルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、吸収体の原料としては、繊維材料と共に、吸収性粒子(吸収性ポリマー)を用いても良い。また、吸収体の原料としては、繊維状の吸水性ポリマーを単独で又は繊維材料と共に用いることもできる。更に、繊維材料等と共に、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じて用いることもできる。
【0023】
パターン形成プレート29は、その外面29aが回転ドラム2の最も外側に位置し、外周面21の一部を形成する部材であり、集積用凹部22の外周面を形成する部材でもある。ここで「集積用凹部22の外周面」とは、集積用凹部22を平面視した際の集積用凹部22の輪郭に沿った外面を意味する。パターン形成プレート29は、外面29aと、ドラム本体23側に向けられる内面29bとを有し、外面29aと内面29bとの間に、集積用凹部22内の立体形状に対応する形状の空間部を有している。パターン形成プレート29は、この空間部を除き、空気を通さない非通気性の部材となっている。ここでいう「非通気性」は、前述した通りである。パターン形成プレート29としては、例えば、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板に機械加工を施し開口部(凹部22内の立体形状に対応する形状の空間部)を形成したプレート、あるいは金型を用いて該開口部を一体成形したプレート、あるいはパンチング、エッチングしたプレート、それらのプレートを重ね合わせたもの等を用いることができる。尚、非通気性の部材の厚みは、一定に形成されており、集積用凹部22の深さを決定する要素の1つとなる。即ち、非通気性の部材の厚みを薄くすることにより、集積用凹部22の深さが浅くなり、薄い積繊物31が得られるようになる。
【0024】
多孔性プレート28は、ドラム本体23の中心軸部232に接続された吸気ファン(不図示)の駆動によって生じた空気流(バキュームエアー)を装置外部側(回転ドラム2の外方)に伝え、該空気流に乗って運ばれてくる吸収体の原料を透過させずに保持し、空気のみを透過させる通気性のプレートである。多孔性プレート28には、該プレート28を厚み方向に貫通する吸引孔(細孔)が、該プレート28の全体に均一な分布で複数(多数)形成されており、集積用凹部22が回転ドラム2内における負圧に維持された空間(積繊装置1Aにおいては空間A)上を通過している間、該吸引孔が空気流の透過孔として機能する。多孔性プレート28としては、例えば、金属又は樹脂製のメッシュプレート、あるいは金属又は樹脂製の板にエッチング、パンチングで複数(多数)の細孔を形成したもの等を用いることができる。
【0025】
多孔性プレート28の外面28aには、本実施形態の積繊装置1Aで製造される吸収体に設けられるスリット32に対応する位置に、非通気性部材281が固定されている。具体的には、合成樹脂製の3本の非通気性部材281が、ドラム幅方向2Yに間隔を空けて配され、パターン形成プレート29の空間部に対応する位置に、ドラム周方向2Xに帯状に延びて配されている。
【0026】
本実施形態の積繊装置1においては、
図4に示すように、回転ドラム2の外周面21を形成する部材20が、以上のように構成された多孔性プレート28及びパターン形成プレート29を、フレーム体25の各凹部底面対応部251(貫通口252)に配し、リブ253にボルトあるいは接着剤等の公知の固定手段によって、固定されて形成されている。積繊装置1においては、回転ドラム2は、このように形成された外周面21を形成する部材20が、ドラム本体23の外周縁を覆うように配されて形成されている。
【0027】
ダクト4は、
図1に示すように、後述する繊維材料供給部7から回転ドラム2に亘って延びており、ダクト4の下流側の開口が、負圧に維持される回転ドラム2の空間Aに位置する外周面21を覆っている。ダクト4は、回転ドラム2の吸気ファン(不図示)の作動により、ダクト4の内部空間内に、回転ドラム2の外周面21に向けて吸収体の原料を流す空気流が生じるようになっている。尚、ダクト4の天板には、
図1に示すように、吸収体の原料である吸収性粒子(吸収性ポリマー)をダクト4内に供給するポリマー散布管41が配されている。
【0028】
巻かけベルト5は、
図1及び
図3(a)に示すように、回転ドラム2のダクト4の位置よりも下流側に隣接して外周面21に沿って配されており、回転ドラム2の空間Aよりも弱い圧力ゼロ(大気圧)に設定されている空間Bに位置する外周面21に沿って配されている。巻かけベルト5は、無端状の非通気性のベルトであり、ロール51及びロール52に架け渡されて、回転ドラム2の回転と共に連れ回るようになっている。巻かけベルト5により、集積用凹部22内の積繊物を押さえているので、空間Bの圧力を大気圧に設定しても、集積用凹部22内の積繊物をバキュームコンベア6上に転写するまで、集積用凹部22内に保持できる。
【0029】
バキュームコンベア6は、
図1に示すように、回転ドラム2の下方に配されており、回転ドラム2の正圧に設定されている空間Cに位置する外周面21に配されている。バキュームコンベア6は、駆動ロール61及び従動ロール62,62に架け渡された無端状の通気性ベルト63と、通気性ベルト63を挟んで回転ドラム2の空間Cに位置する外周面21と対向する位置に配されたバキュームボックス64とを備えている。バキュームコンベア6上には、ティッシュペーパー又は透液性の不織布等からなるコアラップシート33が導入されるようになっている。
【0030】
繊維材料供給部7は、
図1に示すように、ダクト4に吸収体の原料である繊維材料を供給する部分である。繊維材料供給部7は、解繊機71を備えている。繊維材料のシート状の原反30を解繊機71に導入することにより原反30を解繊し、解繊された繊維材料をダクト4内の流路に供給する。
【0031】
次に、前述した積繊装置1Aを用いて吸収体を連続的に製造する方法について説明する。
先ず、回転ドラム2内の空間A及びバキュームボックス64内を、それぞれに接続された吸気ファン(不図示)を作動させて負圧にする。空間A内を負圧にすることで、ダクト4内に、吸収体の原料を、回転ドラム2の外周面21に搬送する空気流(バキュームエアー)が生じる。また、回転ドラム2を回転させ、押さえベルト5を作動させる。
【0032】
次いで、繊維材料供給部7の解繊機71を作動させて、吸収体の原料である繊維材料のシート状の原反30を解繊し、解繊された繊維材料をダクト4内の流路に供給する(
図1参照)。また、ダクト4の天板に配されたポリマー散布管41により、ダクト4内に吸収体の原料である吸収性粒子(吸収性ポリマー)を供給する。
【0033】
そして、ダクト4により、回転ドラム2内の空間A領域において、回転ドラム2の外周面21に向けて、繊維材料及び吸収性粒子(吸収性ポリマー)が混合された吸収体の原料を飛散状態にて供給する(
図3(a)参照)。このようにして、回転ドラム2の外周面21の集積用凹部22内に吸収体の原料を積繊させて積繊物31を得る。
【0034】
次いで、更に回転ドラム2を回転させ、押さえベルト5で集積用凹部22内に積繊物31を押さえつけながら、バキュームコンベア6上まで搬送する。そして、集積用凹部22内の積繊物31は、バキュームボックス64の対向位置にくると、バキュームボックス64からの吸引によって、集積用凹部22から離型し、バキュームコンベア6上に導入された、ティッシュペーパー又は透液性の不織布等からなるコアラップシート33上へと受け渡される。
【0035】
ここで、上述したように、
図3(b)に示すように、積繊装置1Aにおいては、ドラム本体23は、ダクト4と巻かけベルト5との境界に最も近い仕切板24aの先端に、回転ドラム2の周方向2Xに沿って延在するプレート8を備えている。そして、プレート8を構成する上流側プレート81及び下流側プレート82の合計の周方向の長さL1が、1個の集積用凹部22の底面22aの周方向の長さL2よりも長く形成されている。従って、積繊装置1Aにおいては、回転ドラム2の外周面21を形成する部材20が回転している際に、該外周面21の集積用凹部22の底面22aの多孔性プレート28(多孔性部材)を介して、巻かけベルト5で覆われた領域におけるドラム本体23の大気圧の空間Bから、ダクト4で覆われた領域におけるドラム本体23の負圧の空間Aに、空気の流れが発生し難い。従って、回転ドラム2の集積用凹部22に吸収体の原料を積繊させて得られる積繊物31に乱れが生じ難く、安定的に吸収体を製造することができる。
【0036】
また、第1実施形態の積繊装置1Aにおいては、
図4に示すように、外周面21を形成する部材20を構成する多孔性プレート28の外面28aには、3本の非通気性部材281が帯状に延びて配されている。その為、集積用凹部22から離型して得られる積繊物31には、3本の非通気性部材281に対応する位置に、3本のスリット32が形成されるようになる。従って、第1実施形態の積繊装置1Aにおいては、集積用凹部22から離型して得られる積繊物31は、3本のスリット32を有する厚みが均等なものとなる。このようなスリット32を有する特異な積繊物31の形状であるにも拘わらず、第1実施形態の積繊装置1Aによれば、該外周面21の集積用凹部22の底面22aの多孔性プレート28(多孔性部材)を介して、巻かけベルト5で覆われた領域におけるドラム本体23の大気圧の空間Bから、ダクト4で覆われた領域におけるドラム本体23の負圧の空間Aに、空気の流れが発生し難いので、得られる積繊物31に乱れが生じ難く、安定的に吸収体を製造することができる。
【0037】
その後、コアラップシート33の搬送方向に沿う両側部が折り返され、積繊物31の上下両面がコアラップシート33に被覆される。そして、コアラップシート33に被覆された状態の積繊物31は、コアラップシート33と共に、切断装置(不図示)の切断手段によって切断される。こうして、コアラップシート33に積繊物31が被覆された吸収体が連続して得られる。
【0038】
積繊装置1Aを用いて得られる吸収体の積繊物31は、例えば、パターン形成プレート29の非通気性の部材の厚みを薄くすることにより得られる薄型のものであったとしても得られる積繊物31に乱れが生じ難い。このような積繊物31を用いて形成される薄型の吸収体は、生理用ナプキン、失禁パッド、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる吸収体として好適な高品質なものとなる。特に、生理用ナプキンに用いられると、フィット性の向上及び見栄えの向上が期待できる。このように、第1実施形態の積繊装置1Aを用いた製造方法によれば、得られる積繊物31に乱れが生じ難く、吸収体を安定的に製造することができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態の積繊装置1Bについて説明する。第2実施形態の積繊装置1Bについては、第1実施形態の積繊装置1Aと異なる点について主として説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。特に言及しない点については、第1実施形態の積繊装置1Aに関する説明が適宜適用される。また、第2実施形態の積繊装置1Bの効果については、第1実施形態の積繊装置1Aの効果と異なる点について説明し、特に説明しない点は、積繊装置1Aの効果と同様であり、積繊装置1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0040】
第2実施形態の積繊装置1Bは、
図5に示すように、ダクト4と巻かけベルト5との境界に最も近いドラム本体23の仕切板24aが、ダクト4で覆われた領域、即ち、ドラム本体23の負圧の空間Aに位置する領域に配置されている。このような位置に仕切板24aが配されているので、ダクト4は、ドラム本体23の負圧の空間Aに位置する領域のみならず、ドラム本体23の大気圧の空間Bに位置する領域の一部も覆うことになる。ダクト4は、回転ドラム2の外周面21に向けて吸収体の原料を飛散状態にて供給する部分であるため、ダクト4が覆う大気圧の空間Bに位置する領域の一部から、負圧の空間Aに、空気の流れが発生し難い。従って、積繊装置1Bにおいては、外周面21を形成する部材20が回転している際に、該外周面21の集積用凹部22を介して、巻かけベルト5で覆われた領域における大気圧の空間Bから、ダクト4で覆われた領域における負圧の空間Aに、空気の流れが発生しないように形成されている。
【0041】
このように、第2実施形態の積繊装置1Bは、回転ドラム2の集積用凹部22に吸収体の原料を積繊させて得られる積繊物31に乱れが生じ難く、安定的に吸収体を製造することができる。従って、第2実施形態の積繊装置1Bを用いた製造方法によれば、得られる積繊物31に乱れが生じ難く、吸収体を安定的に製造することができる。
【0042】
本発明の吸収体の製造装置は、上述の第1〜第2実施形態の積繊装置1A〜1Bに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1〜第2実施形態の積繊装置1A〜1Bにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0043】
例えば、第1〜第2実施形態の積繊装置1A〜1Bにおいては、ドラム本体23における巻かけベルト5で覆われた領域に位置する空間Bが、大気圧に設定されているが、大気圧に設定されていなくてもよく、ダクト4に覆われた領域に位置する空間Aより弱い負圧に設定されていればよい。
【0044】
また、第1〜第2実施形態の積繊装置1A〜1Bにおいては、外周面21を形成する部材20を構成する多孔性プレート28の外面28aに、非通気性部材281が配されているが、配されていなくてもよい。
【0045】
また、製造される積繊物31の形状は、集積用凹部22の形状等を変更することにより柔軟に変更してもよい。
【0046】
また、第1実施形態の積繊装置1Aにおいては、仕切板24aの先端に設けられるプレート8が、
図3(b)に示すように、上流側プレート81及び下流側プレート82からなり、上流側プレート81及び下流側プレート82の合計の周方向の長さL1が、1個の集積用凹部22の底面22aの周方向の長さL2よりも長く形成されているが、プレート8が、上流側プレート81又は下流側プレート82のみを有していてもよい。その際、上流側プレート81又は下流側プレート82のみの周方向の長さが、1個の集積用凹部22の底面22aの周方向の長さL2よりも長く形成されていればよい。
【0047】
本発明で製造する吸収体は、吸収性物品の吸収体として好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0048】
上述した実施形態に関し、さらに以下の吸収体の製造装置を開示する。
【0049】
<1>
吸収体の原料を集積する集積用凹部を外周面に有する回転ドラムと、該回転ドラムの外周面に向けて前記吸収体の原料を飛散状態にて供給するダクトと、該ダクトの下流側に隣接して前記集積用凹部内に集積された前記吸収体の原料の積繊物を押さえる巻かけベルトとを有する吸収体の製造装置であって、
前記回転ドラムは、前記外周面を形成する部材よりも内側に回転しないドラム本体を備え、該ドラム本体は、該回転ドラムの中心軸側から前記外周面側に向かって設けられた仕切板により仕切られた相互に独立した複数の空間を有しており、
前記外周面を形成する部材が回転している際に、該外周面の前記集積用凹部を介して、前記巻かけベルトで覆われた領域における前記空間から、前記ダクトで覆われた領域における負圧の前記空間に、空気の流れが発生しない吸収体の製造装置。
【0050】
<2>
前記ドラム本体は、前記ダクトと前記巻かけベルトとの境界に最も近い前記仕切板の先端に、前記回転ドラムの周方向に沿って延在するプレートを備え、
前記プレートは、前記境界に最も近い前記仕切板の先端から、上流側及び下流側の少なくとも一方に延在しており、その周方向の長さが、前記集積用凹部の底面の周方向の長さよりも長い前記<1>に記載の吸収体の製造装置。
<3>
前記ダクトと前記巻かけベルトとの境界に最も近い前記仕切板は、前記ダクトで覆われた領域内に配置されている前記<1>に記載の吸収体の製造装置。
<4>
前記集積用凹部は、その底面に、前記回転ドラムの周方向に沿って延在する非吸引部を有している前記<1>〜<3>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<5>
更に、前記回転ドラムの下方に配されたバキュームコンベアと、前記ダクトに吸収体の原料を供給する繊維材料供給部とを備えている前記<1>〜<4>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<6>
前記バキュームコンベアは、前記回転ドラムの下方に配されており、前記回転ドラムの正圧に設定されている前記空間Cに位置する外周面に配されている前記<1>〜<5>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<7>
前記ドラム本体は、前記回転ドラムの幅方向の両端部に、円盤状の固定板と、両固定板を繋ぐ円柱状の中心軸部とを有している前記<1>〜<6>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<8>
前記ドラム本体の中心軸部には吸気ファンが接続されており、該吸気ファンの駆動により、前記回転ドラム内の仕切られた独立した複数の前記空間の圧力が調整できる、前記<1>〜<7>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<9>
外周面が前記ダクトで覆われた領域に位置している、前記回転ドラムの前記空間Aは、負圧に維持されるようになっている、前記<1>〜<8>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<10>
前記ドラム本体における前記巻かけベルトで覆われた領域に位置する空間Bが、大気圧(圧力ゼロ)に設定されている前記<1>〜<9>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<11>
前記ドラム本体における前記巻かけベルトで覆われた領域に位置する空間Bが、該空間Bに隣り合う、前記ドラム本体における前記ダクトに覆われた領域に位置する空間Aより弱い負圧に設定されている前記<1>〜<10>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
【0051】
<12>
前記回転ドラムは、空間A、空間Aに隣り合う空間B、空間Bに隣り合う空間C、及び空間Cと空間Aとの間に配された空間Dを有し、
前記回転ドラムにおける、外周面がバキュームコンベア側に向けられた領域に配された空間C,Dは、正圧に設定されている、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<13>
前記ドラム本体のプレートは、前記仕切板の先端から上流側に周方向2Xに沿って延在する上流側プレートと、該仕切板の先端から下流側に周方向2Xに沿って延在する下流側プレートとを有している前記<1>〜<12>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<14>
前記ドラム本体のプレートは、前記回転ドラムの回転軸方向において、前記集積用凹部の底面を略被う幅を有する前記<1>〜<13>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<15>
前記ドラム本体のプレート(上流側プレート及び下流側プレート)は、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板状のプレートであり、空気を通さない非通気性の部材となっている前記<1>〜<14>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<16>
前記吸収体の原料として、繊維材料を用いる前記<1>〜<15>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<17>
前記吸収体の原料として、繊維材料と共に、吸収性粒子(吸収性ポリマー)を用いる前記<1>〜<16>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<18>
前記回転ドラムの外周面を形成する部材は、多孔性部材と該多孔性部材の外面側に重ねて固定されたパターン形成プレートとを有し、
前記多孔性部材の外面に、非通気性部材が固定されており、
複数本の前記非通気性部材が、ドラム幅方向2Yに間隔を空けて配され、前記パターン形成プレートの空間部に対応する位置に、ドラム周方向2Xに帯状に延びて配されている前記<1>〜<17>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<19>
前記回転ドラムの外周面を形成する部材が、前記ドラム本体外周全周を覆って配されている前記<1>〜<18>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<20>
前記回転ドラムの外周面を形成する部材は、剛性を有する金属製のフレーム体と、該フレーム体に重ねて固定された多孔性プレート(多孔性部材)と、該多孔性プレートの外面側に重ねて固定されたパターン形成プレートとを有する前記<1>〜<19>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
【0052】
<21>
前記巻かけベルトは、無端状の非通気性のベルトであり、第一のロール及び第二のロールに架け渡されて、前記回転ドラムの回転と共に連れ回るようになっている前記<1>〜<20>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<22>
前記積繊物は、複数本の非通気性部材に対応する位置に、複数本のスリットが形成される前記<1>〜<21>の何れか1に記載の吸収体の製造装置。
<23>
前記<1>〜<22>の何れか1に記載の吸収体の製造装置を用いた吸収体の製造方法。
<24>
前記吸収体は、吸収性物品の吸収体である前記<23>に記載の吸収体の製造方法。
<25>
前記吸収性物品は、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられる前記<24>に記載の吸収体の製造方法。
<26>
前記吸収性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナーである前記<24>又は<25>に記載の吸収体の製造方法。