特許第6255258号(P6255258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6255258-成形用包装材及び成形ケース 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255258
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】成形用包装材及び成形ケース
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/088 20060101AFI20171218BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171218BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20171218BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20171218BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20171218BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B32B15/088
   B32B15/08 F
   B65D1/00 111
   H01M2/02 K
   B65D65/40 D
   B65D1/26
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-14004(P2014-14004)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-195989(P2014-195989A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-42686(P2013-42686)
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】南堀 勇二
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲伸
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/033133(WO,A1)
【文献】 特開2006−066113(JP,A)
【文献】 特開2011−255931(JP,A)
【文献】 特開2015−107586(JP,A)
【文献】 特開2008−077930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08−15/098
B65D 1/00
B65D 1/26
B65D 65/40
H01M 2/02
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての2軸延伸ポリアミドフィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材であって、
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層は、アンチブロッキング剤を含有し、前記熱可塑性樹脂層は、アンチブロッキング剤を含有し、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムとして、
フィルムの破断強度を「X」とし、フィルムの破断歪みを「Y」としたとき、X/Yの値が230MPa〜360MPaである2軸延伸ポリアミドフィルムを用い
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士の静摩擦係数を「A」とし、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士の動摩擦係数を「B」としたとき、A/Bの値が1.0〜1.2の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂層の外面同士の静摩擦係数を「C」とし、前記熱可塑性樹脂層の外面同士の動摩擦係数を「D」としたとき、C/Dの値が1.0〜1.2の範囲であることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記2軸延伸ポリアミドフィルムの破断歪みが0.5以上である請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記金属箔層は、金属箔の両面に化成皮膜が形成されたものである請求項1または2に記載の成形用包装材。
【請求項4】
前記金属箔層の一方の面にウレタン系接着剤層を介して前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が積層され、前記金属箔層の他方の面にウレタン系接着剤層を介して前記熱可塑性樹脂層が積層され、
前記金属箔層が、アルミニウム箔層であり、前記熱可塑性樹脂層が、未延伸ポリプロピレンフィルム層であり、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムは、同時2軸延伸6−ナイロンフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項5】
前記金属箔層の一方の面にウレタン系接着剤層を介して前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が積層され、前記金属箔層の他方の面にウレタン系接着剤層を介して前記熱可塑性樹脂層が積層され、
前記金属箔層が、アルミニウム箔層であり、前記熱可塑性樹脂層が、未延伸ポリプロピレンフィルム層であり、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムは、同時2軸延伸6,6−ナイロンフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項6】
前記金属箔層の一方の面にウレタン系接着剤層を介して前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が積層され、前記金属箔層の他方の面にウレタン系接着剤層を介して前記熱可塑性樹脂層が積層され、
前記金属箔層が、アルミニウム箔層であり、前記熱可塑性樹脂層が、未延伸ポリプロピレンフィルム層であり、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムは、同時2軸延伸MXDナイロンフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項7】
前記金属箔層の一方の面にウレタン系接着剤層を介して前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が積層され、前記金属箔層の他方の面にウレタン系接着剤層を介して前記熱可塑性樹脂層が積層され、
前記金属箔層が、アルミニウム箔層であり、前記熱可塑性樹脂層が、未延伸ポリプロピレンフィルム層であり、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムは、順次2軸延伸6−ナイロンフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項8】
前記金属箔層の一方の面にウレタン系接着剤層を介して前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が積層され、前記金属箔層の他方の面にウレタン系接着剤層を介して前記熱可塑性樹脂層が積層され、
前記金属箔層が、アルミニウム箔層であり、前記熱可塑性樹脂層が、未延伸ポリプロピレンフィルム層であり、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムは、順次2軸延伸6,6−ナイロンフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項9】
前記金属箔層の一方の面にウレタン系接着剤層を介して前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が積層され、前記金属箔層の他方の面にウレタン系接着剤層を介して前記熱可塑性樹脂層が積層され、
前記金属箔層が、アルミニウム箔層であり、前記熱可塑性樹脂層が、未延伸ポリプロピレンフィルム層であり、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムは、順次2軸延伸MXDナイロンフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項10】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層が含有するアンチブロッキング剤が、シリカ粒子である請求項1〜のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項11】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層は、脂肪酸アミドを含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の成形用包装材を深絞り成形または張り出し成形してなる成形ケース。
【請求項13】
電池ケースとして用いられる請求項12に記載の成形ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材及び成形ケースに関する。
【0002】
なお、本明細書において、「破断強度」の語は、JIS K7127−1999の引張試験に準拠して、試料幅15mm、評点間距離100mm、引張速度100mm/分の条件で測定して得られた破断強度(単位:MPa)を意味する。
【0003】
また、本明細書において、「破断歪み」の語は、JIS K7127−1999の引張試験に準拠して、試料幅15mm、評点間距離100mm、引張速度100mm/分の条件で測定して得られた破断歪み(単位:なし)を意味する。
【0004】
また、本明細書において、「静摩擦係数」の語は、JIS K7125−1999に準拠して測定して得られた静摩擦係数であり、「2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士の静摩擦係数」は、成形用包装材を2枚に切断して、この2枚を互いに2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士で接触させて測定したものであり、「熱可塑性樹脂層の外面同士の静摩擦係数」は、成形用包装材を2枚に切断して、この2枚を互いに熱可塑性樹脂層の外面同士で接触させて測定したものである。
【0005】
また、本明細書において、「動摩擦係数」の語は、JIS K7125−1999に準拠して測定して得られた動摩擦係数であり、「2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士の動摩擦係数」は、成形用包装材を2枚に切断して、この2枚を互いに2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士で接触させて測定したものであり、「熱可塑性樹脂層の外面同士の動摩擦係数」は、成形用包装材を2枚に切断して、この2枚を互いに熱可塑性樹脂層の外面同士で接触させて測定したものである。
【0006】
また、本明細書において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。また、「金属」の語は、金属単体及び合金を含む意味で用いる。
【背景技術】
【0007】
リチウムイオン2次電池は、例えばノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話、電気自動車等の電源として広く用いられている。このリチウムイオン2次電池としては、電池本体の周囲をケースで包囲した構成のものが用いられている。このケース用包材としては、例えば、延伸ポリアミドフィルムからなる外層、アルミニウム箔層、熱可塑性樹脂からなる内層がこの順に接着一体化された構成のものが公知である(特許文献1参照)。
【0008】
このような電池ケース用包材は、任意の形状に成形されるため、高い深絞り成形性や高い張り出し成形性を有することが求められている。このために、従来では、例えば、包装材の外層フィルムの表面に脂肪酸アマイド系の滑り性付与成分をコーティングし、成形の際の金型内への材料の滑り込みを良くしたもの(特許文献2参照)や、金属箔層の厚さに対して外層フィルムの厚さを厚くした構成のものが採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−6631号公報
【特許文献2】特開2002−216714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、外層フィルムの表面に脂肪酸アマイド系の滑り性付与成分をコーティングした構成では、この滑り性付与成分をコーティングする工程を設ける必要があり、このために生産性が低いという問題があった。
【0011】
また、金属箔層の厚さに対して外層フィルムの厚さを厚くした構成では、包材の全体厚さが増大するため、限られたスペースに収める用途である場合には、内容物(包装対象物)の体積容積率が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、滑り性付与成分をコーティングしなくても優れた成形性を確保できる成形用包装材及び成形ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、成形用包装材の外側層として使用する2軸延伸ポリアミドフィルムの引張試験で求められる破断強度/破断歪み(引張試験で求められる破断強度を、引張試験で求められる破断歪みで除した値)が、成形用包装材の成形性等に影響を及ぼすという新規な知見を見出すに至り、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の手段を提供する。
【0014】
[1]外側層としての2軸延伸ポリアミドフィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材であって、
前記2軸延伸ポリアミドフィルムとして、
フィルムの破断強度を「X」とし、フィルムの破断歪みを「Y」としたとき、X/Yの値が230MPa〜360MPaである2軸延伸ポリアミドフィルムを用いることを特徴とする成形用包装材。
【0015】
[2]前記2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士の静摩擦係数を「A」とし、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層の外面同士の動摩擦係数を「B」としたとき、A/Bの値が1.0〜2.0の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂層の外面同士の静摩擦係数を「C」とし、前記熱可塑性樹脂層の外面同士の動摩擦係数を「D」としたとき、C/Dの値が1.0〜2.0の範囲である前項1に記載の成形用包装材。
【0016】
[3]前記2軸延伸ポリアミドフィルムの破断歪みが0.5以上である前項1または2に記載の成形用包装材。
【0017】
[4]前項1〜3のいずれか1項に記載の成形用包装材を深絞り成形または張り出し成形してなる成形ケース。
【0018】
[5]電池ケースとして用いられる前項4に記載の成形ケース。
【発明の効果】
【0019】
[1]の発明では、外側層を構成する樹脂延伸フィルムとして、フィルムの破断強度を「X」とし、フィルムの破断歪みを「Y」としたとき、X/Yの値が230MPa〜360MPaである2軸延伸ポリアミドフィルムが用いられているから、深絞り成形や張り出し成形等の冷間(常温)成形法による成形加工時に生じる局所伸びによる応力集中を抑制することができ、略均一に変形させることができるので、冷間成形の際のピンホール発生やクラック発生を防止できる。このように深絞り成形性や張り出し成形等の成形性に優れており、成形時にピンホール、クラックを発生させることなく、シャープでかつ成形高さの高い形状の成形が可能となる。このように滑り性付与成分をコーティングしなくても優れた成形性を確保できるので、従来技術のように滑り性付与成分をコーティングする工程を設ける必要がなく、生産性に優れている。また、従来技術のように金属箔層の厚さに対して外層フィルムの厚さを特に厚くする必要もないので、例えば、電池用包材として用いられる場合には、十分な体積容積率を得ることができる。
【0020】
[2]の発明では、A/Bの値が1.0〜2.0の範囲であり、かつC/Dの値が1.0〜2.0の範囲であるから、成形用包装材を成形する際の包装材の滑り性が向上し、上記構成(X/Yの値が230MPa〜360MPaである構成)を採用したことによる効果とも相俟って、成形の際のピンホール発生やクラック発生をより十分に防止できて、成形性をさらに向上させることができる。
【0021】
[3]の発明では、外側層を構成する2軸延伸ポリアミドフィルムの破断歪みが0.5以上であるから、成形時に金属箔層の伸びに追随して2軸延伸ポリアミドフィルムが良好に伸びるので、成形体のコーナー部等においてもピンホールを生じることのない優れた成形性を確保できる。
【0022】
[4]及び[5]の発明では、成形によるピンホールがない上に、シャープでかつ成形高さの高い形状の成形ケース(電池用ケース等)の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の成形用包装材の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る成形用包装材1の一実施形態を図1に示す。この成形用包装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられるものである。即ち、前記成形用包装材1は、深絞り成形等の成形に供されて2次電池ケースとして用いられるものである。
【0025】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して2軸延伸ポリアミドフィルム層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。
【0026】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層(外側層)2は、包材として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である、即ち成形時の金属箔のネッキングによる破断を防止する役割を担うものである。
【0027】
本発明において、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2としては、フィルムの破断強度を「X」とし、フィルムの破断歪みを「Y」としたとき、X/Yの値が230MPa〜360MPaである2軸延伸ポリアミドフィルムを用いる。X/Yの値が230MPa未満では、深絞り成形や張り出し成形等の成形を行った際に包装材に破断やピンホールを生じる。一方、X/Yの値が360MPaを超えると、成形後に2軸延伸ポリアミドフィルム層2と金属箔層4の間で剥離を生じる。中でも、前記2軸延伸ポリアミドフィルムとしては、フィルムの破断強度を「X」とし、フィルムの破断歪みを「Y」としたとき、X/Yの値が250MPa〜300MPaである2軸延伸ポリアミドフィルムを用いるのが好ましい。
【0028】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム2の破断歪みは0.5以上であるのが好ましい。破断歪みが0.5以上の2軸延伸ポリアミドフィルムを用いることで、成形時に金属箔層4の伸びに追随して2軸延伸ポリアミドフィルム2が良好に伸びるので、成形体のコーナー部等においてもピンホールを生じることのない優れた成形性を確保できる。中でも、前記2軸延伸ポリアミドフィルム2の破断歪みは0.7以上であるのが特に好ましい。
【0029】
前記2軸延伸ポリアミドフィルムのX/Yの値は、例えば、延伸加工時の熱固定温度を調整することにより制御することができる。また、延伸方法(縦方向と横方向を同時に延伸する同時2軸延伸法、縦方向と横方向を順次延伸する順次2軸延伸法など)を選択することによって樹脂の結晶の配向を変えることでも制御することができる。
【0030】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2の外面(非積層面)2a同士の静摩擦係数を「A」とし、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2の外面(非積層面)2a同士の動摩擦係数を「B」としたとき、A/Bの値は1.0〜2.0の範囲であるのが好ましい。A/Bの値が1.0〜2.0の範囲である2軸延伸ポリアミドフィルム層2を用いることにより、成形の際のピンホール発生やクラック発生を十分に防止できる。中でも、前記A/Bの値が1.0〜1.5の範囲であるのがより好ましく、さらに1.0〜1.2の範囲であるのがより一層好ましい。
【0031】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2における静摩擦係数、動摩擦係数の調整は、該ポリアミドフィルム層にアンチブロッキング剤(例えば、シリカ粒子、アクリル樹脂ビーズ等)などを含有率を調整しつつ含有せしめることによって行うことができる。
【0032】
本発明において、前記2軸延伸ポリアミドフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6−ナイロンフィルム、6,6−ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等を使用できる。
【0033】
前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2の厚さは、12μm〜50μmに設定されるのが好ましい。
【0034】
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2に、各種添加剤、脂肪酸アミド等が添加されていてもよい。
【0035】
前記熱可塑性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0036】
前記熱可塑性樹脂層3としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂未延伸フィルム層であるのが好ましい。前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0037】
前記熱可塑性樹脂層3の外面(非積層面)3a同士の静摩擦係数を「C」とし、前記熱可塑性樹脂層3の外面(非積層面)3a同士の動摩擦係数を「D」としたとき、C/Dの値は1.0〜2.0の範囲であるのが好ましい。C/Dの値が1.0〜2.0の範囲である熱可塑性樹脂層3を用いることにより、成形の際のピンホール発生やクラック発生を十分に防止できる。中でも、前記C/Dの値が1.0〜1.5の範囲であるのがより好ましく、さらに1.0〜1.2の範囲であるのがより一層好ましい。
【0038】
前記熱可塑性樹脂層3における静摩擦係数、動摩擦係数の調整は、該熱可塑性樹脂層にアンチブロッキング剤(例えば、シリカ粒子、アクリル樹脂ビーズ等)などを含有率を調整しつつ含有せしめることによって行うことができる。
【0039】
前記熱可塑性樹脂層3の厚さは、20μm〜80μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱可塑性樹脂層3の厚さは30μm〜50μmに設定されるのが特に好ましい。
【0040】
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記熱可塑性樹脂層3に、各種添加剤、脂肪酸アミド等が添加されていてもよい。
【0041】
なお、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2、前記熱可塑性樹脂層3は、いずれも単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0042】
前記金属箔層4は、包材に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔層であるのが好ましい。前記アルミニウム箔4としては、純AlまたはAl−Fe系合金からなる厚さ5μm〜50μmの箔が好適に用いられる。
【0043】
成形用包装材の外側層および内側層は樹脂からなる層であり、これらの樹脂層には極微量ではあるが、ケースの外部からは光、酸素、液体が入り込むおそれがあり、内部からは内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)がしみ込むおそれがある。これらの侵入物が金属箔層に到達すると金属箔層の腐食原因となる。本発明では、金属箔の両面に耐食性の高い化成皮膜を形成した構成を採用するのが好ましく、この場合には、金属箔層4の耐食性を向上させることができる。
【0044】
前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、例えば、金属箔にクロメート処理、ジルコニウム化合物を用いたノンクロム型化成処理を施すことによって形成することができる。例えば、クロメート処理の場合は、脱脂処理を行った金属箔の表面に下記1)〜3)のいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥する。
1)リン酸、クロム酸およびフッ化物の金属塩の混合物からなる水溶液
2)リン酸、クロム酸、フッ化物金属塩および非金属塩の混合物からなる水溶液
3)アクリル系樹脂または/およびフェノール系樹脂と、リン酸と、クロム酸と、フッ化物金属塩との混合物からなる水溶液。
【0045】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2〜50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2〜20mg/m2が好ましい。このようなクロム付着量の化成皮膜によって高耐食性の成形用包装材となし得る。
【0046】
なお、前記金属箔のいずれか一方の面のみに化成皮膜を形成した構成を採用してもよい。
【0047】
前記第1接着剤層5としては、特に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィンの他、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーを含有してなる樹脂等により形成された接着剤層が挙げられる。
【0048】
前記第2接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィンの他、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーを含有してなる樹脂等により形成された接着剤層が挙げられる。
【0049】
なお、上記実施形態では、第1接着剤層5と第2接着剤層6を設けた構成を採用しているが、これら両層5、6は、いずれも必須の構成層ではなく、これらを設けない構成を採用することもできる。
【0050】
また、本発明では、前記2軸延伸ポリアミドフィルム層2の外面2aにさらにポリエステルフィルム層(中でもポリエチレンテレフタレートフィルム層が好ましい)が積層された構成を採用してもよい。即ち、図1で示す構成において、2軸延伸ポリアミドフィルム層2の上面にさらにポリエステルフィルム層が積層された構成を採用してもよい。
【0051】
本発明の成形用包装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、成形ケース(電池ケース等)を得ることができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の一方の面に、破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である厚さ25μmの2軸延伸ポリアミドフィルム2をドライラミネートし、次いで前記アルミニウム箔4の他方の面に、厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム3をドライラミネートして、図1に示す成形用包装材を得た。なお、ドライラミネートのための接着剤としてウレタン系接着剤5、6を用いた。
【0054】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が350MPaであり破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムは、6−ナイロン100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.2質量部を混合して得られたナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を190℃に設定することにより得られたものである。
【0055】
また、前記未延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.1質量部、エルカ酸アマイド0.1質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を無延伸Tダイ製膜加工することにより得られたものである。
【0056】
上記のようにラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.0であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0057】
<実施例2>
破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が240MPaであり且つ破断歪みが1.0である2軸延伸ポリアミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0058】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が240MPaであり破断歪みが1.0である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を200℃に設定することにより得られたものである。
【0059】
上記のようにラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.1であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0060】
参考例1
破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が270MPaであり且つ破断歪みが1.2である2軸延伸ポリアミドフィルムを用い、ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.1質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0061】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が270MPaであり破断歪みが1.2である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を195℃に設定することにより得られたものである。
【0062】
上記のようにラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.4であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.3であった。
【0063】
<実施例
破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が320MPaであり且つ破断歪みが2.0である2軸延伸ポリアミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0064】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が320MPaであり破断歪みが2.0である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を190℃に設定することにより得られたものである。
【0065】
上記のようにラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.0であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0066】
<実施例
破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が300MPaであり且つ破断歪みが1.0である2軸延伸ポリアミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0067】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が300MPaであり破断歪みが1.0である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を195℃に設定することにより得られたものである。
【0068】
上記のようにラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.0であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0069】
参考例2
破断強度/破断歪み、の値が270MPaであり且つ破断歪みが1.2である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が300MPaであり且つ破断歪みが0.4である2軸延伸ポリアミドフィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0070】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が300MPaであり破断歪みが0.4である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を190℃に設定することにより得られたものである。
【0071】
上記のようにラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.4であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.4であった。
【0072】
<実施例
ナイロン樹脂組成物として、6−ナイロン100質量部、アンチブロッキング剤(アクリル樹脂ビーズ)0.2質量部を混合して得られたナイロン樹脂組成物を用い、ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.1質量部、エルカ酸アマイド0.2質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0073】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.1であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0074】
<実施例
ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.2質量部、エルカ酸アマイド0.1質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0075】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.0であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0076】
参考例3
ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径3μmのシリカ粒子)0.15質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0077】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.5であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.3であった。
【0078】
参考例4
ナイロン樹脂組成物として、6−ナイロン100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのアクリル樹脂ビーズ)0.3質量部を混合して得られたナイロン樹脂組成物を用い、ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.10質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0079】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.6であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0080】
参考例5
ナイロン樹脂組成物として、6−ナイロン100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.25質量部を混合して得られたナイロン樹脂組成物を用い、ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.10質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0081】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.4であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.3であった。
【0082】
参考例6
ナイロン樹脂組成物として、6−ナイロン100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.05質量部を混合して得られたナイロン樹脂組成物を用い、ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.05質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0083】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は2.2であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.6であった。
【0084】
参考例7
ポリプロピレン樹脂組成物として、ポリプロピレン樹脂100質量部、アンチブロッキング剤(平均粒径2μmのシリカ粒子)0.01質量部を混合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例と同様にして成形用包装材を得た。
【0085】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.4であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は2.2であった。
【0086】
<比較例1>
破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が370MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0087】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が370MPaであり破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を180℃に設定することにより得られたものである。
【0088】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.0であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.1であった。
【0089】
<比較例2>
破断強度/破断歪み、の値が350MPaであり且つ破断歪みが0.8である2軸延伸ポリアミドフィルムに代えて、破断強度/破断歪み、の値が220MPaであり且つ破断歪みが1.0である2軸延伸ポリアミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして成形用包装材を得た。
【0090】
なお、前記破断強度/破断歪みの値が220MPaであり破断歪みが1.0である2軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例1と同じナイロン樹脂組成物を同時2軸延伸法を用いて延伸加工し、該延伸加工時の熱固定温度を220℃に設定することにより得られたものである。
【0091】
ラミネートして得られた成形用包装材における2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数の比A/Bの値は1.5であり、該成形用包装材における未延伸ポリプロピレンフィルムの摩擦係数の比C/Dの値は1.3であった。
【0092】
【表1】
【0093】
上記のようにして得られた各成形用包装材に対して下記評価法に基づいて性能評価を行った。
【0094】
<成形性評価法>
株式会社アマダ製の深絞り成形具を用いて、成形用包装材を縦55mm×横35mm×深さ8mmの直方体形状に深絞り成形を行い、得られた成形ケースにおける4箇所のコーナー部での成形性を下記判定基準に基づいて評価した。なお、ピンホールの有無は、暗室にて光透過法で調べた。
(判定基準)
「×」…ピンホールがコーナー部のほぼ全面に発生した。
「△」…成形形状がシャープであり、ピンホールがコーナー部のごく一部に発生する場合が稀にあるがピンホールが発生することは実質的に殆どなかった。
「○」…成形形状がよりシャープであり、かつピンホールが全く発生しなかった。
「◎」…成形形状が非常にシャープであり、かつピンホールが全く発生しなかった。
【0095】
<外面の剥離の有無の評価>
上記深絞り成形により得られた成形品を乾燥機内で80℃で3時間放置した後、外面層が剥離を生じていないか目視観察を行った。
【0096】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜6、参考例1〜7の成形用包装材は、ピンホール等を発生させることなく、シャープでかつ成形高さの深い形状の成形を行うことができて成形性に優れていると共に、外面層の剥離も生じなかった。
【0097】
これに対し、外側層の2軸延伸ポリアミドフィルムの破断強度/破断歪みの値が360MPaを超える比較例1では、外面層の剥離を生じた。また、外側層の2軸延伸ナイロンフィルムの破断強度/破断歪みの値が230MPa未満である比較例2では、成形性が不十分であった。
【0098】
なお、A/Bの値とC/Dの値のうち少なくともいずれか一方が1.2を超えて2.0以下の範囲である参考例1〜5の成形用包装材は、成形性の評価が「○」であるのに対し、A/Bの値が1.0〜1.2の範囲であり、かつC/Dの値が1.0〜1.2の範囲である実施例1、2、の成形用包装材は、成形性の評価が「◎」であり成形性に非常に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池のケースとして好適に用いられ、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。中でも、電池ケース用として特に好適である。
【符号の説明】
【0100】
1…成形用包装材
2…外側層(2軸延伸ポリアミドフィルム層)
2a…外側層の外面(非積層面)
3…内側層(熱可塑性樹脂層)
3a…内側層の外面(非積層面)
4…金属箔層
5…第1接着剤層
6…第2接着剤層
図1