特許第6255269号(P6255269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255269
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】冷温蔵装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20171218BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20171218BHJP
   A47J 39/02 20060101ALI20171218BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   A47B31/00 H
   A47B31/02 B
   A47B31/02 D
   A47J39/02
   F25D23/12 M
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-24299(P2014-24299)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-150039(P2015-150039A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 園生
(72)【発明者】
【氏名】坪内 俊志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】高木 友裕
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−322463(JP,A)
【文献】 特開2011−067288(JP,A)
【文献】 米国特許第05449232(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00−31/02
A47J 39/00−47/20
F25D 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱と、
前記断熱箱の内部を冷蔵室と温蔵室とに仕切る仕切壁と、
前記断熱箱の内部において、水平面内であって前記仕切壁の壁面方向に沿って互いに配列される第1トレイ及び第2トレイと、を備える冷温蔵装置であって、
前記仕切壁には、前記第1トレイと前記第2トレイの配列方向に沿って延び、前記冷蔵室及び前記温蔵室を連通する連通空間が設けられ、
前記第1トレイ及び前記第2トレイは、それぞれ前記連通空間を貫通することで、前記冷蔵室と前記温蔵室の双方に亘って配される構成とされ、
前記連通空間は、
前記第1トレイが貫通される第1空間と、
前記第2トレイが貫通される第2空間と、
前記第1空間と前記第2空間とを連通し、前記第1空間に対する前記第1トレイの貫通部分が通過可能な通路と、を備え、
前記第1トレイの前記貫通部分が前記通路を介して前記第1空間と前記第2空間との間を移動可能とされ、
前記仕切壁には、上下動可能な可動部材が前記通路を塞ぐ形で設けられ、
前記可動部材は、前記第1トレイが前記通路を通過する場合において、その通過前に前記第1トレイの周端面と対向する対向面を有しており、
前記対向面は、前記第1トレイの前記周端面に対して所定の角度をなしており、
前記第1トレイが前記通路を通過する際には、前記対向面が前記第1トレイの前記周端面に押圧され、前記可動部材が上昇又は下降することで前記通路を開放する構成とされ、
前記連通空間のうち、前記対向面と前記第1トレイの前記周端面との間の空間を、前記冷蔵室側又は前記温蔵室側のうち、いずれか一方側から覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記連通空間の延設方向と直交する方向に沿う軸を回動軸として回動可能に設けられている冷温蔵装置。
【請求項2】
前記仕切壁には、前記第1トレイの前記貫通部分に対して上方又は下方から当接する当接部材が上下動可能に設けられ、
前記当接部材は、前記可動部材と対向する当接部材対向面を有しており、
前記カバー部材における前記当接部材側の面は、前記当接部材対向面に倣う形状をなし、
前記第1トレイの前記貫通部分が前記第1空間に配されていない状態では、前記カバー部材が、前記対向面と前記当接部材対向面との間の空間を、前記冷蔵室側又は前記温蔵室側のうち、いずれか一方側から覆う構成である請求項1に記載の冷温蔵装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記可動部材に対して回動可能に取り付けられている請求項1又は請求項2に記載の冷温蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵室と温蔵室を備えた冷温蔵装置として、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1のものでは、一枚のトレイが冷蔵室及び温蔵室の双方に跨って配置されている。これにより、トレイ上に載置された冷食用の食品及び温食用の食品をそれぞれ適切な温度とすることができる。上記特許文献1の構成では、一枚のトレイを冷蔵室及び温蔵室に跨って配置するために、冷蔵室及び温蔵室を仕切る仕切壁に、冷蔵室と温蔵室とを連通する連通部が設けられ、トレイは、連通部に貫通する形で配されている。
【0003】
また、特許文献1のものでは、トレイが水平方向に2枚配列されている。つまり、連通部は、水平方向に配列された2枚のトレイに対応した各空間を備えている。トレイは、連通部に沿ってスライド移動可能となっており、2つの空間を繋ぐ通路には、上下動可能な可動部材が設けられている。可動部材によって、通路を塞ぐことで、通路を通じて冷蔵室及び温蔵室が連通されることを抑制している。
【0004】
ここで、一方の空間に配されたトレイを他方の空間まで移動させる場合(つまりパススルーを行う場合)には、トレイの周端面によって可動部材を押圧し、上昇させることで、通路を開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−67288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレイの周端面によって可動部材を押圧して上昇させるためには、可動部材の被押圧面を、トレイの周端面に対して異なる角度とする(傾かせる)必要がある。このため、トレイの周端面と被押圧面の間に隙間が生じる。すると、この隙間を通じて、温蔵室と冷蔵室との間で空気の移動が起こり、温蔵室及び冷蔵室の温度が変化する事態が懸念される。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、温蔵室と冷蔵室の間で空気の移動が起こる事態を抑制可能な冷温蔵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、断熱箱と、前記断熱箱の内部を冷蔵室と温蔵室とに仕切る仕切壁と、前記断熱箱の内部において、水平面内であって前記仕切壁の壁面方向に沿って互いに配列される第1トレイ及び第2トレイと、を備える冷温蔵装置であって、前記仕切壁には、前記第1トレイと前記第2トレイの配列方向に沿って延び、前記冷蔵室及び前記温蔵室を連通する連通空間が設けられ、前記第1トレイ及び前記第2トレイは、それぞれ前記連通空間を貫通することで、前記冷蔵室と前記温蔵室の双方に亘って配される構成とされ、前記連通空間は、前記第1トレイが貫通される第1空間と、前記第2トレイが貫通される第2空間と、前記第1空間と前記第2空間とを連通し、前記第1空間に対する前記第1トレイの貫通部分が通過可能な通路と、を備え、前記第1トレイの前記貫通部分が前記通路を介して前記第1空間と前記第2空間との間を移動可能とされ、前記仕切壁には、上下動可能な可動部材が前記通路を塞ぐ形で設けられ、前記可動部材は、前記第1トレイが前記通路を通過する場合において、その通過前に前記第1トレイの周端面と対向する対向面を有しており、前記対向面は、前記第1トレイの前記周端面に対して所定の角度をなしており、前記第1トレイが前記通路を通過する際には、前記対向面が前記第1トレイの前記周端面に押圧され、前記可動部材が上昇又は下降することで前記通路を開放する構成とされ、前記連通空間のうち、前記対向面と前記第1トレイの前記周端面との間の空間を、前記冷蔵室側又は前記温蔵室側のうち、いずれか一方側から覆うカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記連通空間の延設方向と直交する方向に沿う軸を回動軸として回動可能に設けられていることに特徴を有する。
【0009】
本発明によれば、可動部材の対向面と第1トレイの周端面との間の空間を覆うカバー部材を備えており、当該空間を通じて温蔵室と冷蔵室の間で空気の移動が起こる事態を抑制できる。また、カバー部材は、連通空間の延設方向と直交する方向に沿う軸を回動軸として回動可能に設けられている。このため、第1トレイを通路を通過する際に、第1トレイによってカバー部材を押圧し、回動させることができる。これにより、カバー部材が第1トレイを移動させる際の妨げになることがない。
【0010】
また、前記仕切壁には、前記第1トレイの前記貫通部分に対して上方又は下方から当接する当接部材が上下動可能に設けられ、前記当接部材は、前記可動部材と対向する当接部材対向面を有しており、前記カバー部材における前記当接部材側の面は、前記当接部材対向面に倣う形状をなし、前記第1トレイの前記貫通部分が前記第1空間に配されていない状態では、前記カバー部材が、前記対向面と前記当接部材対向面との間の空間を、前記冷蔵室側又は前記温蔵室側のうち、いずれか一方側から覆う構成とすることができる。このような構成とすれば、第1トレイが収納されていない場合において、対向面と当接部材対向面との間の空間を通じて温蔵室と冷蔵室の間で空気の移動が起こる事態を抑制できる。
【0011】
また、前記カバー部材は、前記可動部材に対して回動可能に取り付けられているものとすることができる。このようにすれば、可動部材が上昇(又は下降)する際に、カバー部材を上昇(又は下降)させることができる。これにより、カバー部材を第1トレイの移動経路から退避させ易くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温蔵室と冷蔵室の間で空気の移動が起こる事態を抑制可能な冷温蔵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る冷温蔵装置を示す斜視図
図2図1の冷温蔵装置を示す分解斜視図
図3】冷温蔵装置を示す断面図(正面視)
図4】フレームカートを示す斜視図
図5】フレームカートを示す正面図(トレイが収納されている状態)
図6】フレームカートを示す断面図(図5のVI−VI線で切断した図に対応)
図7】フレームカートを示す平面図
図8】フレームカートを示す正面図(トレイが収納されていない状態)
図9】フレームカートを示す断面図(図8のIX−IX線で切断した図に対応)
図10】単位仕切壁を示す斜視図
図11】可動部材及びカバー部材を示す斜視図
図12】可動部材及びカバー部材を示す分解斜視図
図13】可動部材及びカバー部材を示す平面図
図14図6において可動部材付近を拡大して示す図
図15】第1トレイを移動させる過程を示す図
図16図9において可動部材付近を拡大して示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図1ないし図16によって説明する。本実施形態に係る冷温蔵装置13は、図1及び図2に示すように、トレイ80を収納するカート10と、カート10を出し入れ可能に収納するステーション70と、を備えている。なお、本実施形態では、ステーション70からカート10を出す方向を前方、ステーション70に対してカート10を入れる方向を後方とし、この前後方向と水平に交差する方向を左右方向、前後方向と垂直に交差する方向を上下方向とする。
【0015】
カート10(配膳車)は、図2に示すように、断熱箱からなるカート本体20と、トレイ80を収納するフレームカート30とから構成されている。カート本体20は前後両面が開放されており、その開口部にはそれぞれ観音開き式の断熱扉21が装着されている。また、カート本体20の底面にはキャスタ22が設けられている。これにより、使用者は、カート本体20の前面に設けられた把手25を把持しつつ、カート本体20を移動させることができる。
【0016】
フレームカート30は、底板33を有し、底板33の左右の側縁から金属製のフレーム31がそれぞれ立ち上がっている。また、底板33の底面にはキャスタ32が設けられている。これにより、フレームカート30を移動させることで、カート本体20の内部に前面側から出し入れが可能となっている。フレームカート30の左右方向の略中央部分には、前後方向全域に亘って仕切壁40が設けられている。仕切壁40の詳細については後述する。
【0017】
図3に示すように、フレームカート30を、カート本体20に収納した状態では、カート本体20の内部が仕切壁40によって左右に仕切られる。これにより、前後の断熱扉21を閉じると、仕切壁40の左側に温蔵室11が、右側に冷蔵室12が形成される。温蔵室11には、ステーション70側で生成された暖気又は冷気が循環供給され、冷蔵室12には、ステーション70側で生成された冷気が循環供給される構成となっている。
【0018】
カート本体20の左右の側壁には、略全面にわたる空気流通路L1がそれぞれ設けられている。これにより、温蔵室11と冷蔵室12には複数段に亘って各空気流通路L1から温風又は冷気が吹き出される。カート本体20の天井壁の左右両側縁部には、上記の空気流通路L1の上端と連通するようにして、それぞれ前後方向に細長い吹出通口23が形成されている。一方、天井壁の中央部には、温蔵室11又は冷蔵室12と個別に連通する吸込通口24が形成されている。
【0019】
ステーション70は、正面が開口された略箱形をなし、その開口を通じてカート10を出し入れ可能となっている。ステーション70の上部には、図3に示すように、2つの熱交換室が水平方向に並んで区画形成されている。温蔵室11の上方に配された第1熱交換室71(正面視左側の熱交換室)には冷却器からなる冷却手段とヒータからなる加熱手段とが設けられ、冷蔵室12の上方に配された第2熱交換室72(正面視右側の熱交換室)には冷却手段のみが設けられている。また、両熱交換室71、72にはファン75がそれぞれ設けられている。
【0020】
第1熱交換室71の底部及び第2熱交換室72の底部には、導入通口73がそれぞれ設けられている。各導入通口73は、温蔵室11の吸込通口24と、冷蔵室12の吸込通口24の上方にそれぞれ配されている。各導入通口73は、対応する吸込通口24とそれぞれ接続されている。また、第1熱交換室71の底部及び第2熱交換室72の底部には、帯状の導出通口74がそれぞれ設けられている。各導出通口74は、温蔵室11の吹出通口23と冷蔵室12の吹出通口23にそれぞれ接続される。カート10がステーション70内に収納されて、対応する通口同士が接続されると、第1熱交換室71と温蔵室11の間、並びに第2熱交換室72と冷蔵室12の間に、それぞれ空気の循環路が形成されるようになっている。
【0021】
本実施形態の冷温蔵装置の使用例としては、まず、調理等の準備をした温食と冷食とをトレイ80に盛って、冷凍庫内においてチルド保存する。次に、翌朝等に冷凍庫からトレイ80を取り出して、各トレイ80をカート10の温蔵室11と冷蔵室12とに亘って複数段に収納し、カート10をステーション70に入れる。また、上記チルド保存は、食品を盛り付けた各トレイ80をフレームカート30に収納した状態で行ってもよい。カート10がステーション70に入れられると、初めは、両熱交換室71、72の両冷却手段が作動され、温蔵室11と冷蔵室12とには共に冷気が循環供給されることで、トレイ80に載せられた温食と冷食が共に冷蔵される。
【0022】
所定時間が経過すると、ステーション70に設けられたタイマの作動により、第1熱交換室71では、冷却手段から加熱手段の作動に切り替わる。一方、第2熱交換室72では、引き続き冷却手段が作動された状態が維持される。これにより、温蔵室11内には暖気が循環されることで解凍された温食が再加熱され、一方、冷蔵室12内では庫内設定温度が少し下げられ、冷食は引き続いて冷蔵保存される。配膳時刻となったら、カート10がステーション70から引き出され、トレイ80が取り出されて配膳に供されるようになっている。配膳が終了すると、フレームカート30のみが配膳場所に残され、下膳用に用いられる。
【0023】
次に、トレイ80及びフレームカート30の構成について、詳しく説明する。トレイ80は、例えば、合成樹脂とされ、平面視矩形状をなしている。トレイ80は、図4及び図7に示すように、温蔵室11に配される温蔵側トレイ部81と、冷蔵室12に配される冷蔵側トレイ部82と、温蔵側トレイ部81と冷蔵側トレイ部82とを連結する連結部83と、を備えている。温蔵側トレイ部81及び冷蔵側トレイ部82は、それぞれ上方に開口された凹部を有しており、凹部の底面に食品が載置される。
【0024】
図4に示すように、フレーム31の内側には、前後方向に延びる支持板34が複数段に積み重なるように設けられている。トレイ80における左右方向の端部は、左右のフレーム31,31の支持板34によってそれぞれ支持されている。これにより、トレイ80は、フレームカート30内において水平状態で配置される。本実施形態では、水平面内であって前後方向(仕切壁40の壁面方向)に沿って互いに配列された一対のトレイ80,80が上下方向に複数段積層されている。以下の説明では、前側に配されるトレイ80を第1トレイ80Aと呼び、後側に配されるトレイ80を第2トレイ80Bと呼ぶものとする。
【0025】
仕切壁40は、図8及び図9に示すように、前後方向に長い長手状をなす単位仕切壁41を、複数段に積層することで構成されている。単位仕切壁41は、図10に示すように、下方に開口された略箱状をなしている。単位仕切壁41の内部には、当接部材43と可動部材50がそれぞれ収納されている。また、単位仕切壁41は、左右方向に延びる連結部材42を介して両フレーム31にそれぞれ固定されている。上下方向に隣り合う2つの単位仕切壁41,41は、上下方向にわずかに隙間を空けるように配されている。このため、上下方向に隣り合う2つの単位仕切壁41,41の間には、連通空間Sが形成されている。
【0026】
連通空間Sは、第1トレイ80Aと第2トレイ80Bの配列方向に沿って延びており、温蔵室11と冷蔵室12を連通するものとされる。第1トレイ80A及び第2トレイ80Bは、連通空間Sを貫通することで、温蔵室11と冷蔵室12の双方に亘って(跨って)配されている。連結空間Sは、仕切壁40の前後方向の全長に亘って延びている。連結空間Sは、図6に示すように、第1トレイ80Aの連結部83(貫通部分)が貫通される第1空間S1と、第2トレイ80Bの連結部83が貫通される第2空間S2と、第1空間S1と第2空間S2とを連通する通路S3と、を備える。
【0027】
第1空間S1、第2空間S2、通路S3の高さは、それぞれ連結部83の厚さよりも大きいものとされる。このため、第1トレイ80Aの連結部83は、通路S3を通過して、第1空間S1から第2空間S2へ移動することができる。また、第2トレイ80Bの連結部83は、通路S3を通過して、第2空間S2から第1空間S1へ移動することができる。
【0028】
つまり、トレイ80は、連通空間Sの延設方向(前後方向)に沿ってスライド移動可能となっている。これにより、トレイ80は、フレームカート30の前後方向の両側からそれぞれ取り出すことができる。例えば、フレームカート30の前側に収容されたトレイ80(第1トレイ80A)は、フレームカート30の前側から取り出すことができ、フレームカート30の後側から取り出すこともできる。
【0029】
当接部材43は、図10に示すように、前後方向に延びる長手状をなし、第1空間S1、第2空間S2に対応する形で、それぞれ設けられている。なお、当接部材43は、左右方向に分かれる2つの部材を組み合わせることで形成されている。当接部材43は、トレイ80の短辺方向の長さとほぼ同じ長さで設定されている。当接部材43は、仕切壁40に対して上下動可能に取り付けられ、その下端部が、単位仕切壁41の下面から下方に突出する形で配されている。当接部材43は、図5に示すように、トレイ80の連結部83に対して、上方から当接する構成となっている。これにより、トレイ80と仕切壁40の間に隙間が生じる事態を抑制しつつ、連結部83を当接部材43の下面と単位仕切壁41の上面との間に配することができる。また、当接部材43の下面には、連結部83の上面に嵌合する突部44が形成されている(図10参照)。
【0030】
また、トレイ80が配されていない状態では、当接部材43は、自重によって、トレイ80が配された状態よりも下降し、図8に示すように、単位仕切壁41の上面に当接する。このため、トレイ80が配されていない場合であっても連通空間Sを当接部材43によって塞ぐことができる。また、当接部材43の延設方向における各端面43Aは、図14に示すように、端部に向かうにつれて上昇する曲面とされる。これにより、トレイ80を連通空間Sに差し入れる際には、トレイ80の周端面84で、当接部材43の端面43Aを押圧することで、当接部材43を上昇させることができる。
【0031】
可動部材50は、図11に示すように、上方が開口された略箱状をなしている。可動部材50は、図10に示すように、前後方向において、2つの当接部材43,43の間に配されている。可動部材50の下端部は、図14に示すように、単位仕切壁41の下面から下方に突出する形で配されており、通路S3を塞ぐ形で設けられている。可動部材50は、通路S3を塞ぐことで、温蔵室11と冷蔵室12との間で空気の移動が起こる事態を抑制するとともに、第1トレイ80Aが第2空間S2側(又は第2トレイ80Bが第1空間S1側)へ移動することを規制する機能を担っている。
【0032】
可動部材50は、単位仕切壁41に対して上下動可能に取り付けられている。なお、図11に示すように、可動部材50には、上下方向に延びるスライド溝52が形成され、このスライド溝52は、仕切壁40に形成されたガイドリブ45に嵌合されている(図15参照)。可動部材50の下部には、トレイ80の周端面84と対向する対向面51が形成されている。この周端面84は、垂直方向に沿うものとされる。一方、対向面51は、周端面84から遠ざかるにつれて下方へ延びる面とされる。つまり、対向面51は、トレイ80の周端面84に対して所定の角度をなしている。これにより、トレイ80(第1トレイ80A又は第2トレイ80B)が通路S3を通過する際には、対向面51がトレイ80の周端面84に押圧され、可動部材50が上昇することで通路S3を開放する構成となっている。
【0033】
可動部材50には、図11に示すように、一対のカバー部材60A,60Bが取り付けられている。一対のカバー部材60A,60Bは、左右方向に延びる軸部61によって連結されている。可動部材50の上面には、図12に示すように、上方が開口された取付孔50Aが形成されており、取付孔50Aには、軸部61が嵌合されている。これにより、一対のカバー部材60A,60Bは、左右方向(連通空間の延設方向と直交する方向)に沿う軸を回動軸として回動可能に設けられている。
【0034】
カバー部材60Aは、図14に示すように、その下端部62において、可動部材50の対向面51と第1トレイ80Aの周端面84の間に生じる空間S4(隙間)を冷蔵室12側(図14における紙面貫通方向の手前側)から覆う構成となっている。なお、図14は、空間S4付近を冷蔵室12側から見た図である。一方、カバー部材60Bは、その下端部において、空間S4を温蔵室11側から覆う構成となっている。
【0035】
なお、トレイ80が収容された状態(連結部83が連結空間Sに配されている状態、図14の状態)では、トレイ80の周端面84にカバー部材60Aが当接されており、カバー部材60Aは、周端面84から遠ざかるにつれて下降傾斜する姿勢で配されている。一方、トレイ80が収容されていない状態(図16の状態)では、カバー部材60A,60Bは、垂直方向に沿って延びる姿勢(自然状態)で配されている。また、カバー部材60A,60Bにおける当接部材43との対向面64(カバー部材における当接部材側の面)は、当接部材43の端面43A(当接部材対向面)の形状に倣う曲面とされる。
【0036】
このため、トレイ80が収容されていない状態において、当接部材43と可動部材50の間の空間S6(隙間)をカバー部材60A,60Bによってそれぞれ覆うことが可能となっている。また、軸部61には、図12及び図13に示すように、可動部材50の内方に向かうにつれて下降傾斜する形で延びる延設部63が設けられている。
【0037】
なお、一対のカバー部材60A,60Bは、第2空間S2側にも設けられている。第2空間S2側では、図14に示すように、カバー部材60Bが、その下端部において、可動部材50の対向面51と第2トレイ80Bの周端面84との間に生じる空間S5を冷蔵室12側から覆う構成となっている。また、第2空間S2側では、カバー部材60Aが、その下端部において、空間S5を温蔵室12側から覆う構成となっている。
【0038】
次に、第1トレイ80Aを後側に移動させる際の作用について説明する。作業者が、図14の状態から、第1トレイ80Aを後側(図14の右側)に移動させると、第1トレイ80Aの周端面84がカバー部材60Aの下部を後側に押圧する。これにより、カバー部材60Aは、軸部61を回動軸として、図14の反時計回りに回動する。
【0039】
さらに第1トレイ80Aを後側に移動させると、周端面84が可動部材50の対向面51を押圧する。対向面51は、周端面84から遠ざかるにつれて下方へ延びる面であるから、周端面84に押圧されることで、可動部材50が上昇する。これにより、図15に示すように、通路S3が開放され、第1トレイ80Aの連結部83が通路S3を通過することができる。これにより、予め第2トレイ80Bをフレームカート30から取り外しておけば、第1トレイ80Aの連結部83を第2空間S2に移動させることができる。
【0040】
また、可動部材50が上昇すると、これに取り付けられているカバー部材60A,60Bも上昇する。このため、第2空間S2側のカバー部材60B(及びカバー部材60A)は、図15に示すように、第1トレイ80Aよりも高い位置に配される。このため、第1トレイ80Aの連結部83を第2空間S2に移動させる際には、第2空間S2側のカバー部材60A,60Bに第1トレイ80Aの周端面84が当たることはない。なお、第1トレイ80Aの連結部83が通路S3を通過すると、可動部材50は、自重によって下降し、通路S3を塞いだ状態となる。
【0041】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、可動部材50の対向面51と第1トレイ80Aの周端面84との間の空間S4を覆うカバー部材60Aを備えており、当該空間S4を通じて温蔵室11と冷蔵室12の間で空気の移動が起こる事態を抑制できる。また、カバー部材60Aは、連通空間Sの延設方向と直交する方向に沿う軸を回動軸として回動可能に設けられている。このため、第1トレイ80Aが通路を通過する際に、第1トレイ80Aによってカバー部材60Aを押圧し、回動させることができる。これにより、カバー部材60Aが第1トレイ80Aを移動させる際の妨げになることがない。
【0042】
また、仕切壁40には、第1トレイ80Aの連結部83に対して上方から当接する当接部材43が上下動可能に設けられ、当接部材43は、可動部材50と対向する端面43Aを有しており、カバー部材60Aにおける対向面64は、端面43Aに倣う形状をなし、第1トレイ80Aの連結部83が第1空間S1に配されていない状態では、カバー部材60Aが、対向面51と端面43Aとの間の空間S6を、冷蔵室12側又は温蔵室11側のうち、いずれか一方側から覆う構成となっている。このような構成とすれば、第1トレイ80Aが収納されていない場合において、対向面51と端面43Aとの間の空間S6を通じて温蔵室11と冷蔵室12の間で空気の移動が起こる事態を抑制できる。また、対向面64は、端面43Aに倣う形状(端面43Aと並行状)をなしているため、カバー部材60Aによって空間S6をより広範囲で覆うことができる。
【0043】
また、カバー部材60Aは、可動部材50に対して回動可能に取り付けられている。このようにすれば、可動部材50が上昇する際に、カバー部材60Aを上昇させることができる。これにより、第1トレイ80Aが通路S3を通過する際に、カバー部材60Aを第1トレイ80Aの移動経路から退避させ易くなる。
【0044】
また、軸部61には、延設部63が設けられている。延設部63は、軸部61から下降傾斜するように延びるため、延設部63の重心は、軸部61より下方に配される。このため、カバー部材60A,60Bが回動した後、カバー部材60A,60Bをより確実に回動前の状態に復帰させることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ステーション70にカート10を収容する方式の冷温蔵装置について説明したが、これに限定されない。本発明は、例えば、カート10側に加熱冷却手段を備えた冷温蔵装置に適用することが可能である。
(2)上記実施形態では、カバー部材60A,60Bが可動部材50に取り付けられている構成を例示したが、これに限定されない。カバー部材60A,60Bが仕切壁40に対して直接的に取り付けられていてもよい。
(3)上記実施形態では、当接部材43及び可動部材50が、それぞれ単位仕切壁41の下面から下方に突出する構成としたが、これに限定されない。当接部材43及び可動部材50は、単位仕切壁41の上面から上方に突出する構成としてもよい。つまり、当接部材43は、連結部83に対して下方から当接してもよい。このような構成の場合には、トレイ80を挿通する際に、当接部材43及び可動部材50を下降させる構成とすればよく、下降した当接部材43及び可動部材50は、弾性部材などを用いて元の位置に復帰させる構成とすればよい。
(4)上記実施形態では、可動部材50の対向面51を曲面としたが、これに限定されない。対向面51は、周端面84に対して所定の角度をなし、トレイ80の周端面84に押圧されることで可動部材50を上昇又は下降させるような角度をなす面であればよい。例えば、対向面51は、周端面84から遠ざかるにつれて下降傾斜する傾斜面であってもよい。
(5)上記実施形態では、当接部材43の端面43Aを曲面としたが、これに限定されない。端面43Aは、トレイ80の周端面84に押圧されることで、可動部材50を上昇又は下降させるような角度をなす面であればよい。
【符号の説明】
【0046】
11…温蔵室、12…冷蔵室、13…冷温蔵装置、20…カート本体(断熱箱)、40…仕切壁、43…当接部材、43A…当接部材43の端面(当接部材対向面)、50…可動部材、51…対向面、60A,60B…カバー部材、64…カバー部材における対向面(カバー部材における当接部材側の面)、80A…第1トレイ、80B…第2トレイ、83…連結部(第1トレイの貫通部分)、84…第1トレイの周端面、S…連通空間、S1…第1空間、S2…第2空間、S3…通路、S4…対向面と第1トレイの周端面との間の空間、S6…対向面と当接部材対向面との間の空間
図1
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図16