(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両前方に向け上方に傾斜すると共に、車両左右方向の中央部に凸部を、その左右両側に凹部を有する着座部と、前記着座部の後方から立ち上る背もたれ部と、を有する後部座席を備え、
前記着座部の下方に電気デバイスが配置される電気デバイス収納構造であって、
前記電気デバイスは、バッテリと電気機器部品とを有し、
前記バッテリは、前記着座部の前方に配置され、
前記電気機器部品は、前記バッテリの上方、且つ前記凸部の下方に配置される、電気デバイス収納構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように後部座席下にバッテリを配置する場合、後部座席の高さが高くなってしまい、そのため室内空間が狭くなってしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、高さ寸法を抑えて室内空間を有効に活用することができる電気デバイス収納構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
車両前方に向け上方に傾斜すると共に、車両左右方向の中央部に凸部(例えば、後述の実施形態での第5領域70E)を、その左右両側に凹部(例えば、後述の実施形態での第4領域70D,第6領域70F)を有する着座部(例えば、後述の実施形態での着座部9a)と、前記着座部の後方から立ち上る背もたれ部(例えば、後述の実施形態での背もたれ部9b)と、を有する後部座席(例えば、後述の実施形態での後部座席9)を備え、
前記着座部の下方に電気デバイス(例えば、後述の実施形態での電気デバイスD)が配置される電気デバイス収納構造であって、
前記電気デバイスは、バッテリ(例えば、後述の実施形態でのバッテリ18)と電気機器部品(例えば、後述の実施形態での電気機器部品55)とを有し、
前記バッテリは、前記着座部の前方に配置され、
前記電気機器部品は、
前記バッテリの上方、且つ前記凸部の下方に配置される。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
車室(例えば、後述の実施形態での車室30)側から前記電気デバイスを挿入可能な箱状に形成されたケース(例えば、後述の実施形態でのケース1)と、前記ケースの開口を覆う蓋部材(例えば、後述の実施形態での蓋2)と、を有する電気デバイス収納部(例えば、後述の実施形態での電気デバイス収容体P)を備え、
前記電気機器部品と前記バッテリとは、前記電気デバイス収納部に収納され、
前記蓋部材上に前記着座部が搭載される。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、
前記蓋部材は、上面視において、前後方向に2つに分割されると共に、左右方向に3つに分割された6つの領域(例えば、後述の実施形態での第1領域60A,第2領域60B,第3領域60C,第4領域60D,第5領域60E,第6領域60F)からなり、
前方側の3つの前記領域(例えば、後述の実施形態での第1領域60A,第2領域60B,第3領域60C)の最上部は、後方側の3つの前記領域(例えば、後述の実施形態での第4領域60D,第5領域60E,第6領域60F)の最上部のいずれよりも高く形成され、
前記後方側の3つの前記領域の最上部は、前記凸部に対応する中央部(例えば、後述の実施形態での第5領域60E)が高く、前記凹部に対応する左右両側(例えば、後述の実施形態での第4領域60D,第6領域60F)が低く、前記着座部の前記凸部及び前記凹部に沿うように形成される。
【0009】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、
前記蓋部材は、天井部(例えば、後述の実施形態での天井部22)の周縁から垂下する枠状の側壁(例えば、後述の実施形態での縦壁23)を有し、
前記後方側の3つの前記領域の前記天井部は、後方に向かって高さが低くなる傾斜面であり、
前記中央部の前記天井部は、前記左右両側の前記天井部より高く形成され、
前記中央部の前記天井部と、前記左右両側の前記天井部との間には、前記両天井部を連結する縦壁(例えば、後述の実施形態での縦壁22a)が形成される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、シート高さを大きく変えることなく電気デバイスを配置することができ、車室内空間を十分に確保して、車両全高の制限内においてシート座面と頭上空間とを確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、バッテリと電気機器部品とを1ユニットとして後部座席下に容易に一体搭載することができ、組付け性、及び搭載性が向上する。また、後部座席の取付フレームが不要となり、部品点数を削減することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、着座部の形状に沿った蓋部材形状とすることで、着座部に必要とされるクッション性を確保することができる。また、蓋部材の剛性が向上し、後部座席を確実に取付けることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、蓋部材の面剛性をさらに高めることができ、後部座席のさらなる確実な取付が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の電気デバイス収納構造では、
図1及び
図8に示すように、後部座席9(
図8参照)の下方のフロアパネルFに設けられた孔Hに電気デバイスDが収容された電気デバイス収容体Pを配設している。電気デバイス収容体Pは、電気デバイスDを挿入可能な箱状に形成されたケース1と、ケース1の開口を覆う蓋2と、を有し、蓋2上に後部座席9の着座部9aが配置されている。
【0016】
<電気デバイス収容体の構成>
先ず、電気デバイス収容体Pについて説明する。
図1、
図2及び
図14に示す電気デバイス収容体Pは、バッテリ18、DC/DCコンバータやインバータなどの高圧電気機器19、及びECU等の電気機器部品55を含む電気デバイスDを収容するものであり、例えば、ハイブリッド車に搭載される。電気デバイス収容体P内には、車両左側からバッテリ18、高圧電気機器19が、この順で収容され、電気機器部品55は、バッテリ18上であって車両中央に配置されている。電気デバイス収容体Pは、金属製のフロアパネルF(ボディパネル)に形成された孔Hに上側から嵌め込んだ状態で、このフロアパネルFに締結される。
【0017】
電気デバイス収容体Pは、
図3に示すように、ケース1と、蓋2と、上側シール3と、下側シール4と、補強部材51,52と、カラー61,62と、フレーム部材7と、各種の締結部材(ボルトB1、ナットN1等)と、を備えている。
【0018】
(ケース)
図3に示すケース1は、ケース本体11と、このケース本体11の側壁11aから外側に延びる環状の上側フランジ部12と、上側フランジ部12よりも下側に配置されケース本体11の側壁11aから外側に延びる環状の下側フランジ部13と、を有している。ケース本体11の側壁11a、上側フランジ部12、及び下側フランジ部13は、平面視において四角枠状を呈している(
図7参照。)。
【0019】
ケース本体11は、上方が開口した箱状(凹状)を呈する樹脂製の部材であり、その外形は、略直方体状を呈している。ケース本体11は、前記した電気デバイスDを収容可能に構成されている。
【0020】
なお、車両のフロアパネルF(
図2参照)のうち、後部座席9の下側には、ケース本体11の側壁11a(外側面)の形状に対応する矩形状の孔Hが形成されている。ケース本体11は、この孔Hに嵌め込まれた状態でフロアパネルFに締結される。孔Hの周囲には、後記するボルトB1(
図4参照)が挿通される挿通孔h1(
図4参照)が複数形成されている。また、ケース1がフロアパネルFに取り付けられた状態において、ケース1の底壁と、その下側に設置されているアンダカバー(図示せず)と、は上下方向で離間している。
【0021】
孔Hは、フロントフロアパネル5の後端部から左右の骨格部材8間に立ち上るように形成されたキックアップ部5aと、リヤフロアパネル6との間に開口する開口部である(
図1、
図2参照)。
【0022】
図3に示す上側フランジ部12は、ケース本体11の側壁11aの上端から外側に延びると共に、その外縁付近が上方に延びている。上側フランジ部12は、ケース本体11の側壁11aの全周に亘って環状に設けられている(
図7参照)。上側フランジ部12は、後記する蓋2のフランジ21と補強部材51,52とによって上下方向で押圧(圧縮)される。したがって、剛性を確保するために、上側フランジ部12は上下方向において比較的肉厚に形成されている。上側フランジ部12の上端には、縦断面視で下側に凹んだシール溝12vが全周に亘って形成されている(
図4、
図7参照)。このシール溝12vには、後記する環状の上側シール3が設置される。
【0023】
図6、
図7に示すように、上側フランジ部12は、後記するフレーム部材7を締結するための締結部12aを複数(本実施形態では8個:
図7参照)有している。締結部12aは、前記したシール溝12vよりも前後方向において内側に設けられ、電気デバイスDの荷重が作用することを考慮して比較的肉厚に形成されている。締結部12aには、フレーム部材7を固定するためのボルトB2及び円筒状のカラーC2を挿通するための挿通孔h2が上下方向に沿って形成されている。また、締結部12aには、平面視でボルトB2の頭部を囲むように環状の溝12wが形成され、この溝12wにOリングRが設置されている。
【0024】
その他、上側フランジ部12のうち、後記する蓋2をケース1に固定するボルトB3の挿通孔h3(
図5、
図7参照)が、シール溝12vよりも外側に複数形成されている。この挿通孔h3には、ボルトB3の相手方となる断面視U字状のナットN3が嵌め込まれている。
【0025】
図3に示す下側フランジ部13は、ケース本体11のうち上側フランジ部12よりも下側の側壁11aから外側に延びており、この側壁11aの全周に亘って環状に形成されている。つまり、上側フランジ部12と、下側フランジ部13と、ケース本体11の側壁11aと、によって、縦断面視で凹状の溝vが側壁11aの全周に亘って形成されている。この溝vのうち左右方向に沿う箇所には、後記するカラー61,62が溶着された補強部材51,52が嵌め込まれる(
図7参照)。なお、上側フランジ部12のうち左右方向でカラー61に対応する部分は、このカラー61に干渉しないように前後方向で内側に凹んでいる(
図7参照)。
【0026】
図3に示すように、下側フランジ部13の外側端部は全周に亘って孔Hの外側に位置しており、その下面には後記する下側シール4が設置(接着)されている。フロアパネルFに対して電気デバイス収容体Pを上側から嵌め込むと、下側フランジ部13がフロアパネルFに係止され、環状の下側シール4が上下方向で圧縮されてフロアパネルFに密着するようになっている。
【0027】
なお、電気デバイス収容体PがフロアパネルFに設置された状態において、ケース1のうち下側フランジ部13(及び、後記する下側シール4)よりも下側の部分は車室外に臨み、下側フランジ部13よりも上側の部分は車室内に臨んでいる。
【0028】
(蓋)
蓋2は、箱状を呈するケース本体11の開口を塞ぐものであり、例えば、金属板をプレス加工することで形成され、その上面で後部座席9の着座部9aを支持している(
図8、
図12、
図13参照)。蓋2には、ケース本体11の開口に対応して略長方形に形成された天井部22と、天井部22の外周縁から一体に垂下する略4角枠状の縦壁23と、縦壁23の下端縁部から全周に亘って水平方向に延びるフランジ21と、が形成されている(
図2、
図7参照)。
【0029】
図10及び
図11に示すように、蓋2は、後述する後部座席9の着座部9aの形状に沿うようにその高さが設定されている。具体的に、蓋2の天井部22は、上面視において、前後方向に2つに分割されると共に、左右方向に3つに分割されて、車両前方右側から反時計回りに第1領域60A、第2領域60B、第3領域60C、第4領域60D、第5領域60E、第6領域60Fの6つの領域に区画されている。
【0030】
前方側の3つの第1〜第3領域60A、60B、60Cは、後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fのいずれよりも高く形成されている。前方側の3つの第1〜第3領域60A、60B、60Cの天井部22は、中央の第2領域60Bの高さが、左右両側の第1領域60A及び第3領域60Cの高さよりも僅かに高くなっている(
図14参照)。また、前方側の3つの第1〜第3領域60A、60B、60Cの内、第1領域60Aには、高圧電気機器カバー26が設けられ、第3領域60Cには後述する吸気カバー25が設けられており、中央に位置する第2領域60Bは、高圧電気機器カバー26及び吸気カバー25を備えた左右両側の第1領域60A及び第3領域60Cより低くなっている。即ち、第1〜第3領域60A、60B、60Cの最上部の高さは、高圧電気機器カバー26が設けられた第1領域60A、吸気カバー25が設けられた第3領域60C、第2領域60Bの順に低くなっている(
図14参照)。なお、第1領域60Aと第3領域60Cは同じ高さであってもよく、第3領域60Cが第1領域60Aよりも高くてもよい。
【0031】
一方、後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fは、中央に位置する第5領域60Eの高さが高く形成され、その左右両側の第4領域60D及び第6領域60Fは、最も低く、同じ高さとなっている。即ち、各領域の最上部の高さは、低い順に第4領域60D及び第6領域60F<第5領域60E<第2領域60B<第3領域60C<第1領域60Aとなっている。
【0032】
後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fの天井部22は、車両後方に向かって高さが低くなる傾斜面であり、中央の第5領域60Eは、左右両側の第4領域60D及び第6領域60Fよりも高くなっているので、第5領域60Eと第4領域60D及び第6領域60Fとの間には、縦壁22aが第5領域60Eと、第4領域60D及び第6領域60Fに連続して形成される。
【0033】
即ち、蓋2の最上部の高さは、後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fが、前方側の3つの3つの第1〜第3領域60A、60B、60Cよりも低くなっており、後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fのうち、左右の第4領域60D及び第6領域60Fが中央に位置する第5領域60Eよりも低くなっている。
【0034】
また、
図8に戻り、天井部22には、天井部22を貫通する吸気口24aを有する吸気パイプ24が、上方に突出して形成されている。吸気パイプ24は、縦壁23より蓋2の中央側(後方)であり、且つ、吸気パイプ24の上端は、天井部22より高い位置に設けられている。天井部22の後部側からは、断面略円弧状の上記した吸気カバー25が、吸気パイプ24の上方を覆うように、前上方に向けて一体的に形成されている。吸気パイプ24及び吸気カバー25は、蓋2において、排気ダクト41(
図1、
図2参照)を外部に露出させるために車両の右後方に形成された孔htの反対側、即ち、車両の左前方に配置されている。
【0035】
このフランジ21には、ボルトB1(
図4参照)が挿通される挿通孔h4と、ボルトB3(
図5参照)が挿通される挿通孔h5と、がそれぞれ複数形成されている。また、その他、蓋2には、排気ダクト41(
図1、
図2参照)を外部に露出させるための孔ht(
図7参照)や、電気デバイスDの配線を引き出すための孔が形成されている。
【0036】
(上側シール)
図7に示す上側シール3は、上側フランジ部12に形成されたシール溝12v(上側フランジ部12の上面)に設置される環状のシール部材であり、上側フランジ部12と蓋2との間に介在している。なお、ケース1内への浸水を防止して電気デバイスDを保護するために、上側シール3には、後記する下側シール4よりも高いシール性能が要求される。したがって、上側シール3として、下側シール4よりも圧縮に伴う弾性復元力(反力)が大きいものを用いることが好ましい。上側シール3として、例えば、防水性の高いゴム製のOリングやガスケットを用いることが好ましい。
【0037】
そして、蓋2とフロアパネルFとを締結するボルトB1(
図3参照)がナットN1に螺合されることで上側シール3が上下方向で圧縮され、蓋2のフランジ21の下面と、上側フランジ部12の上面と、に密着するようになっている。なお、上側シール3は、圧縮されていない状態において、その上端が後記するカラー61(
図4(a)参照)よりも上方に位置している。
【0038】
(下側シール)
図7に示す下側シール4は、下側フランジ部13の下面に設置(例えば、接着)される環状のシール部材であり、下側フランジ部13とフロアパネルFとの間に介在している。下側シール4として、上側シール3よりも圧縮に伴う弾性復元力が小さい(つまり、柔軟である)エプトシーラー(発泡樹脂)や、シリコン製又はウレタン製のシーラーを用いることが好ましい。これによって、フロアパネルF等の部品公差を下側シール4で吸収しつつ、フロアパネルFの孔Hを介して車室に水が侵入することを防止できる。また、エプトシーラー等は、ゴム製のOリングと比較して安価であるという利点もある。
【0039】
蓋2とフロアパネルFとを締結するボルトB1(
図3参照)がナットN1に螺合されることで、下側シール4が上下方向で圧縮され、下側フランジ部13の下面と、フロアパネルF(孔Hの縁付近)の上面と、に密着するようになっている。なお、下側シール4は、圧縮されていない状態において、その下端が後記するカラー61,62よりも下方に位置している。
【0040】
(補強部材)
図3に示す補強部材51,52は、上側フランジ部12と下側フランジ部13とによって挟まれる金属部材であり、左右方向に延びている。上側フランジ部12及び下側フランジ部13は、上記したように平面視において四角枠状を呈しており、補強部材51、52は、四角枠状の一方の対辺(左右方向に沿う対辺)に対応する箇所に設置される。すなわち、
図7に示すように、ケース1の前側から一方の補強部材51が嵌め込まれ、ケース1の後側から他方の補強部材52が嵌め込まれる。
【0041】
なお、本実施形態では、ケース1のうち前後方向に沿う箇所には補強部材が設置されない。したがって、当該箇所には、ケース1の側壁11aから外側に張り出す補強用のリブ(図示せず)を複数設けることで、剛性を高めるようにすることが好ましい。このリブは、例えば、上側フランジ部12から下側フランジ部13に亘って上下方向に延びている。
【0042】
図4(a)に示す補強部材51は、例えば、縦断面視でC字状を呈する金属板51a,51bの端部同士を溶着することで形成され、その断面は四角枠状を呈している。補強部材51は、その上下幅が上側フランジ部12と下側フランジ部13との距離に略等しくなっている。
図4(b)に示す他方の補強部材52についても同様である。
【0043】
一方の補強部材51には、後記するカラー61を設置するための孔h6が複数形成されている。
図4(b)に示す他方の補強部材52のうち下側の金属板52bには、カラー62を設置するための孔h7が複数形成され、上側の金属板52aにはボルトB1を挿通させるための挿通孔h8が複数形成されている(
図7参照)。なお、
図3に示す領域K2及び領域K1のうち一方を他方と同様の構成にしてもよい。
【0044】
また、
図6、
図7に示すように、上側の金属板52aには、前記したボルトB2を挿通させるための挿通孔h9が複数形成されている。また、上側の金属板52aの下面において挿通孔h9に対応する箇所には、ボルトB2の相手方となるナットN2が予め溶着されている。
【0045】
(カラー)
図4(a)に示すカラー61は、円筒状を呈する金属部材であり、補強部材51を貫通した状態でこの補強部材51に溶着されている。左右方向に延びる補強部材51に溶着された状態において、カラー61は上下方向に延びている(
図7参照)。また、ボルトB1が締結された状態において、カラー61の上端は蓋2のフランジ21の下面に当接し、カラー61の下端はフロアパネルFの上面に当接している。
【0046】
カラー61は補強部材51に固定(溶着)されているため、カラー61が補強部材51から上側に突出する長さによって、上側シール3を圧縮する程度を調整できる。つまり、カラー61は、その上端が上側フランジ部12の上端よりも僅かに上側に位置しており、蓋2をカラー61に当接させることで上側シール3を適度に圧縮するようになっている。カラー61が補強部材51から上側に突出する長さは、上側シール3の材質や要求されるシール性能を考慮して設定されている。
【0047】
同様に、カラー61が補強部材51から下側に突出する長さによって、下側シール4を圧維する程度を調整できる。カラー61は、その下端が下側フランジ部13よりも所定距離だけ下側に位置しており、カラー61をフロアパネルFに当接させることで下側シール4を適度に圧縮するようになっている。カラー61が補強部材51から下側に突出する長さは、下側シール4の材質や要求されるシール性能を考慮して設定されている。
【0048】
図4(b)に示すカラー62については、下側の金属板52bのみを貫通している点を除いて、補強部材51に溶着されたカラー61と同様である。カラー62は、その上端が上側の金属板52aの下面に当接し、その下端がフロアパネルFの上面に当接している。カラー62が補強部材52から下側に突出する長さによって、下側シール4を圧縮する程度を調整できる。
【0049】
(フレーム部材)
図6に示すフレーム部材7は、上下二段に配置された電気デバイスD(例えば、バッテリパック)をケース1の上側フランジ部12に掛けた状態で保持するための金属部材である。フレーム部材7は、電気デバイスDに締結されるデバイス側締結部71と、上側フランジ部12に締結されるフランジ側締結部72と、を有している。デバイス側締結部71は、上下方向に延びており、フランジ側締結部72は、デバイス側締結部71の上端から上側フランジ部12に向けて前方(または後方)に延びている。
【0050】
前側のデバイス側締結部71は、ボルトB4及びナットN4を用いて電気デバイスDの前面に締結されている(後側のデバイス側締結部71も同様)。フランジ側締結部72は、その先端が上側フランジ部12の上面に当接した状態で、この上側フランジ部12に締結される。フランジ側締結部72の先端付近には、ボルトB2が挿通される挿通孔h10が形成されている。フランジ側締結部72は、ボルトB2と、補強部材51,52の内壁面(天井面)に溶着されたナットN2と、によって上側フランジ部12及び補強部材51,52に締結される。
【0051】
なお、上側フランジ部12の締結部12aに設けられた挿通孔h2には円筒状のカラーC2が設置され、このカラーC2を介してボルトB2が挿通される。このように上下方向に延びるカラーC2を設置することで、電気デバイスDの荷重が作用する部分の剛性を高めることができる。
【0052】
図6に示すように、本実施形態では、一対のフレーム部材7,7が前後で略対称となるように電気デバイスDに固定され、各フレーム部材7を上側フランジ部12に掛けた状態で締結するようにした。なお、実際には左右方向に沿って複数対のフレーム部材7が設置されている。デバイス側締結部71が電気デバイスDに締結され、かつ、フランジ側締結部72が上側フランジ部12に締結された状態において、電気デバイスDはケース本体11の底面から離間している。
【0053】
(締結部材)
図3に示すボルトB1及びナットN1(締結部材)は、蓋2と、補強部材51,52と、フロアパネルFと、を締結するものである。ボルトB1は、補強部材51に溶着されたカラー61を貫通し、その軸部の下端がフロアパネルFよりも下側に突出している。ボルトB1の軸部のうちフロアパネルFの下側に突出した箇所にナットN1が螺合される。なお、フロアパネルFの下面に予めナットN1を溶着するようにしてもよい。なお、他のボルトB2〜B4、ナットN2〜N4については、詳細な説明を省略する。
【0054】
<吸排気部>
図8に示すように、フロントフロアパネル5及びキックアップ部5aの車室30内側は、上端部が後部座席9の下面と吸気カバー25の上面との間に挟持されたトリム15により覆われている。即ち、トリム15はフロントフロアパネル5及びキックアップ部5aの車室30内側を覆い、さらに上端部が後部座席9の下面まで延びて、吸気カバー25の上面に接続されている。トリム15には、車室30内の空気を取り入れるための吸気グリル16が、設けられている。吸気部は、車室30内の空気を吸気グリル16から冷却用空気として取り入れ、吸気パイプ24の吸気口24aから電気デバイス収容体Pに供給する。
【0055】
排気部は、
図1及び
図2に示すように、電気デバイス収容体P(蓋2)から延びて、車室30と荷室31とを区画する環状バルク44の貫通孔45に接続される排気ダクト41(室内側ダクト42、荷室側ダクト43)と、を備える。
【0056】
このような電気デバイス収容体Pは、
図8に示すように、キックアップ部5aとリヤフロアパネル6との間に形成された孔Hに車室内側から挿入され、フロアパネルFにボルトB1及びナットN1で固定される。そして、電気デバイス収容体Pの蓋2上に後部座席9(着座部9a)が搭載される。
【0057】
図9に示すように、後部座席9は、着座部9aと、着座部9aの後方から立ち上る背もたれ部9bと、から構成され、着座部9aが電気デバイス収容体Pの蓋2上に搭載されて蓋2により支持されている。
【0058】
着座部9aは、車両前方に向け上方に傾斜すると共に、車両左右方向の中央部に凸部を、その左右両側に凹部が設けられている。具体的に、着座部9aを、前後方向で2つに分割すると共に左右方向で3つに分割して、車両前方右側から反時計回りに第1領域70A、第2領域70B、第3領域70C、第4領域70D、第5領域70E、第6領域70Fの6つの領域に区画したとき、後部座席9の左右に乗員が座る際に腿下となる第1領域70A及び第3領域70Cが最も高く、ヒップポイントとなる第4領域70D及び第6領域70Fが最も低くなっている。
【0059】
第2領域70Bは、左右の第1領域70A及び第3領域70Cと同じ高さに設定され、第5領域70Eは、左右の第4領域70D及び第6領域70Fより高く設定されている。即ち、着座面の高さは、低い順に第4領域70D及び第6領域70F<第5領域70E<第1領域70A、第2領域70B及び第3領域70Cとなっている。
【0060】
第6領域70F及び第4領域70Dに対して、それらの前方に位置する第1領域70A及び第3領域70Cを高くして、車両前方に向けて上方に傾斜するように角度を付けることで、車両の前突時に乗員の前方への移動を抑制するサブマリン効果を期待することができると共に、すわり心地が向上する。
【0061】
後部座席9の着座部9aと電気デバイス収容体Pの蓋2との相対的な位置関係は、着座部9aの第1領域70Aに対し蓋2の第1領域60Aが対応し、着座部9aの第2領域70Bに対し蓋2の第2領域60Bが対応し、着座部9aの第3領域70Cに対し蓋2の第3領域60Cが対応し、着座部9aの第4領域70Dに対し蓋2の第4領域60Dが対応し、着座部9aの第5領域70Eに対し蓋2の第5領域60Eが対応し、着座部9aの第6領域70Fに対し蓋2の第6領域60Fが対応する。
【0062】
従って、
図13に示すように、着座部9aとして利用されることが少ない中央の第2領域70B及び第5領域70Eの下方に、厚さを薄くできる電気機器部品55が配置される。これにより、後部座席9の機能を阻害することなく、後部座席9の下方に電気デバイスDを一括して収納することができる。
【0063】
また、上記した蓋2の最上部の高さ構成、即ち、後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fが、前方側の3つの3つの第1〜第3領域60A、60B、60Cよりも低くなっており、後方側の3つの第4〜第6領域60D、60E、60Fのうち、左右の第4領域60D及び第6領域60Fが中央に位置する第5領域60Eよりも低くなっている構成(
図10参照)は、後方側の3つの第4〜第6領域70D、70E、70Fが、前方側の3つの第1〜第3領域70A、70B、70Cよりも低くなっており、後方側の3つの第4〜第6領域70D、70E、70Fのうち、左右の第4領域70D及び第6領域70Fが中央に位置する第5領域70Eよりも低くなっている、後部座席9の着座部9aの高さ構成(
図9参照)と一致している。
【0064】
このように蓋2の最上部の形状が、着座部9aの形状に合わせて設定されることで、着座部9aの各部が必要とするクッション性、換言すれば、クッション厚を確保することができ、すわり心地が向上する。更に、天井部22を凹凸形状とすることで蓋2の剛性が向上して、着座部9aをしっかりと支持することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る電気デバイス収納構造によれば、バッテリ18が着座部9aの前方に配置され、電気機器部品55が着座部9aの凸部である第5領域70Eの下方に配置されるので、シート高さを大きく変えることなく電気デバイスDを着座部9aの下方に配置することができ、車室30内空間を十分に確保して、車両全高の制限内においてシート座面と頭上空間とを確保することができる。
【0066】
また、ケース1と、ケース1の開口を覆う蓋2と、を有する電気デバイス収容体Pにバッテリ18と電気機器部品55とが収納され、蓋2上に着座部9aが搭載されるので、バッテリ18と電気機器部品55とを1ユニットとして後部座席9の下に容易に一体搭載することができ、組付け性、及び搭載性が向上する。また、後部座席9の取付フレームが不要となり、部品点数を削減することができる。
【0067】
また、蓋2は、上面視において、前後方向に2つに分割されると共に、左右方向に3つに分割された6つの第1〜第6領域60A,60B,60C,60D,60E,60Fからなり、前方側の3つの第1〜第3領域60A,60B,60Cは、後方側の3つの第4〜第6領域60D,60E,60Fのいずれよりも高く形成され、後方側の3つの第4〜第6領域60D,60E,60Fは、着座部9aの凸部及び凹部に沿うように、中央部が高く、左右両側が低く形成されるので、着座部9aの形状に沿った蓋形状とすることで、着座部9aに必要とされるクッション性を確保することができる。また、蓋2の剛性が向上し、後部座席9を確実に取付けることができる。
【0068】
また、蓋2は、天井部22の周縁から垂下する枠状の縦壁23と、後方側の3つの第4〜第6領域60D,60E,60Fにおいて第5領域60Eの天井部22と左右両側の第4領域60D及び第6領域60Fの天井部22とを連結する縦壁22aと、を備えるので、蓋2の面剛性をさらに高めることができ、後部座席9のさらなる確実な取付けが可能となる。
【0069】
<変形例>
続いて、本発明の変形例に係る電気デバイス収納構造について説明する。
図15は、車室内に配置される電気デバイス収納構造が収納空間Gに挿入される前の状態を左前方から見下ろした斜視図であり、
図16は、
図15に示す電気デバイス収容体のXVI―XVI矢視断面図である。
【0070】
本変形例の電気デバイス収納構造が、実施形態の電気デバイス収納構造と異なる点は、電気デバイス収容体Pが車室30内に配置されていることである。また、電気デバイス収容体Pが車室30内に配置されるため、電気デバイス収容体P単体でのシール機構を備えていない。この点以外は、電気デバイス収納構造の主要構造も含み、実施形態と同様であり、
図15及び
図16において、
図2及び
図8と共通する構成要素には同じ参照符号が付されている。
このため、実施形態の電気デバイス収納構造と同一又は同等部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0071】
図15及び
図16に示すように、本変形例のフロアパネルFは、電気デバイス収容体Pを収容可能な収納空間Gを有し、箱状に形成されたミドルフロア10を備える。ミドルフロア10の上端縁から外側に延びる環状のフランジ部10aは、フロント側がフロントフロアパネル5のキックアップ部5aに溶接されることで一体形成されている。また、フランジ部10aのリア側は、ボルトB1とナットN1とによりリヤフロアパネル6に締結されている。また、フランジ部10aの左右フランジ端部(図示せず)は、骨格部材8に固定されている。これにより、ミドルフロア10を含むフロアパネルFは所定高さまでの止水構造を有し、収納空間Gに収容された電気デバイス収容体Pは、防水された車室30内に配置された構成となる。
【0072】
このように、本変形例の電気デバイス収容体Pは車室30内に配置されることから、電気デバイス収容体P単体での防水対策を必要としておらず、実施形態(
図2〜
図8)において説明した上側シール3及び下側シール4を備えていない。尚、ケース1と蓋2との接合部には、例えば、エプトシール(図示せず)などのシール部材を配設して防塵対策しておくことが好ましい。また、万一、ミドルフロア10内に液体が侵入しても、電気デバイスDは、樹脂製のケース1内に収容されているので、高圧部品への影響が防止されている。
【0073】
図示は省略するが、上記説明した電気デバイス収納構造は、本変形例のように、電気デバイス収容体Pが車室30内に配置される場合にも適用することができる。即ち、後部座席9の着座部9aを、車両前方に向け上方に傾斜させると共に、車両左右方向の中央部に凸部を、その左右両側に凹部が設け、電気デバイスDのバッテリ18を着座部9aの前方に配置し、電気デバイスDの電気機器部品55を凸部に配置することで、シート高さを大きく変えることなく後部座席9の下方に電気デバイスDを配置することができ、車室30内空間を十分に確保して、車両全高の制限内においてシート座面と頭上空間とを確保することができる。また、蓋2の最上部の形状を、上記した実施形態と同様に着座部9aの凸凹部に沿って形成することで、後部座席9(着座部9a)の高さ寸法を抑えると共に、蓋2の剛性が向上し、後部座席9を確実に取付けることができる。
【0074】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。適用車両としてハイブリッド自動車について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、モータのみを駆動源とする電気自動車であってもよい。