【実施例】
【0053】
本発明の作用効果を確認するために、本発明に係るクラブ1と、従来のクラブとの性能を比較する試験を行った。
【0054】
<試験例1>
試験例1は、クラブの重量・重心位置がスイング速度に及ぼす影響を確認するものである。
【表1】
【表2】
【0055】
表1は、試験例1で使用したクラブの、重量及び重心位置を表したものである。本試験では、重量・重心位置が異なる3種類のクラブ実施例1(Smp1,Smp2,Smp3)を、女性ユーザー6名にスイングさせ、スイング速度を比較した。ここで、Smp1〜Smp3は、次の通りである。
Smp1:円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部8(全長190mm、最小径18mm)が、一次振動モードの腹Z1からグリップ6側に90mm離れて形成されているもの。
Smp2:Smp1の小径部に23gの鉛を貼付し、重心位置をグリップ側に21mm移動させたもの。
Smp3:Smp1の小径部に80gの鉛を貼付し、重心位置をグリップ側に60mm移動させたもの。
【0056】
試験例1の結果、スイング速度は、Smp1>Smp2>Smp3となった。この結果より、クラブ1を、グリップ6側で軽量化することで、スイング速度が向上する傾向を確認することができた。
【0057】
<試験例2>
試験例2は、クラブの重量・重心位置がクラブの反発特性に及ぼす影響を確認するものである。
【表3】
【表4】
【0058】
表3は、試験例2で使用したクラブの重量、SmpB(基準)との重量差、及びクラブの重心位置を表したものである。ここで、SmpA〜SmpCは、次の通りである。
SmpA:円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部8(全長190mm、最小径18mm)が、一次振動モードの腹Z1に対応した位置に形成されているものであって、クラブの重心位置をSmpBと同じとし、SmpBよりも51g軽くしたもの。
SmpB:円柱シャフト(径21mm)に、小径部が形成されていないもの。
SmpC(実施例2):円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部8(全長190mm、最小径18mm)が、一次振動モードの腹Z1からグリップ6側に90mm離して形成されたものであって、クラブの重心位置をSmpBよりも20mmヘッド側にシフトさせ、SmpBよりも65g軽くしたもの。
【0059】
以上3種類のクラブを使用して、反発特性の比較を行った。いずれのクラブにも、ヘッドの重心位置にグラウンドゴルフ用のボールを衝突させ、跳ね返り速度を比較した。なお、衝突速度は15m/s、25m/sの2種類とした。
【0060】
表4は試験例2の結果を表したものである。試験例2では、いずれの衝突速度(15m/s、25m/sの2種類)においてもSmpA<SmpB<SmpCの順に反発速度が大きくなった。この結果から、本発明の一実施形態に係るクラブは、ヘッド側を軽量にしたものや、軽量化を図っていないクラブと比較して、比較的ボールの反発速度に優れることがわかった。すなわち、クラブの重心をヘッド側に位置させつつクラブ全体を軽量化することにより、反発特性が向上することを確認できた。
【0061】
試験例1及び試験例2の結果から、クラブ1は、シャフト2においてグリップ6側を軽量にすることで、比較的スイング速度及びボールの反発速度に優れることがわかった。
【0062】
表5は、本発明の一実施例となるクラブNo1(実施例3)と、従来品であるクラブ(No2,No3,No4)の、各部の重量及びクラブの総重量を表したものである。なお、これらのクラブの全長はほぼ同じである。ここで、No.1〜No.4のクラブは、次の通りである。
No.1(実施例3):円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部8(全長190mm、最小径18mm)が、一次振動モードの腹Z1からグリップ6側に90mm離れて形成されているもの。
No.2:円柱シャフト(径21mm)に、小径部が形成されていないもの。
No.3:円柱シャフト(径22mm)に、小径部が形成されていないもの。
No.4:円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部(全長190mm、最小径18mm)が、一次振動モードの腹Z1に対応した位置に形成されているもの。
【0063】
表5からも分かるように、No.1のクラブ(実施例3)は、クラブの総重量が最も小さいにも関わらず、クラブ1の重心位置が最もヘッド6寄りである。
【0064】
No.2,No.3のクラブは、ヘッドを重くすることによって重心位置をヘッド側へシフトさせている。しかしながら、シャフトが重く、総重量は650g前後となっている。また、No4のクラブは、ヘッドが軽くシャフトが重いため、重心位置がグリップ側へシフトする仕様となっている。No.2,No.3のように総重量が大きく、さらに重心位置をヘッド側へシフトする構造では、反発特性の向上は期待できるものの、スイング速度が低下する。また、No.4では、総重量が小さいためにスイング速度が向上する反面、重心位置がグリップ側へ寄っているため、反発特性の低下が避けられない。
【0065】
即ち、No.1のクラブは、No.2〜No.4に係るクラブと比較しても、クラブを軽量にしつつも、比較的ボールの反発速度に優れるといえる。
【表5】
【0066】
次に、一次振動モードの腹Z1と小径部8の位置が痺れに及ぼす影響を、有限要素法による固有値解析により解析した。一次振動モードの腹Z1と小径部8の位置関係は
図6に示す。
図6の(a)、(b)、(c)は、それぞれSmpA1、SmpB1、SmpC1の一次振動モード励起状態を示している。
【0067】
SmpA1は、従来品であるクラブであり、円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部(全長190mm、最小径18mm)が、一次振動モードの腹Z1に対応した位置に形成されているもの。SmpB1(実施例4)及びSmpC1(実施例5)は共に、本発明の実施例となるクラブ1であり、小径部8がシャフト2の一次振動モードの腹Z1よりもグリップ6側に形成されている。SmpB1は、円柱シャフト(径21mm)に、長さ方向の中心に向かうほど、徐々に直径が小さくなるように構成された小径部8(全長190mm、最小径は18mm)が、一次振動モードの腹Z1からグリップ6側に90mm離れて形成されたものである。SmpC1は、この小径部8に、拡径部83(最大径D3が20mm)が形成されたものである。表6は、本解析で使用したSmpA1,SmpB1,SmpC1におけるシャフト2の径及びグリップ6の振幅を表したものである。なお、本解析においては、シャフト2の一次振動モードの腹Z1に対応する部分の径は、第一大径部10の直径D11と同じとしている。なお、
図6及び表6において、D11は、一次振動モードの腹Z1に対応する部分の径、D2は小径部8の最小径、D3は、拡径部83の最大径を示す。
【表6】
【0068】
本解析では、全てのサンプルにおいて、クラブの全長を870mm、ヘッド重量を350gとした。また、各部材の弾性率として、ヘッド3及びシャフト2については1000kgf/mm
2、グリップ6については300kgf/mm
2とした。各部材の密度については、ヘッド3及びシャフト2については0.75g/cc、グリップ6については1.0g/ccとした。クラブ1の状態は、各部材が何ら固定されていない、完全自由な拘束状態とした。また、要素数を3334、節点数を5062として、有限要素法による固有値解析を行った。本解析条件の下で、シャフト2が湾曲する方向における相対変位が最小値を示す部位を、一次振動モードの腹Z1とした。
【0069】
解析の結果、グリップ6の振幅A1は、SmpA1>SmpB1>SmpC1となった。具体的には、SmpA1におけるグリップ6の振幅A1を1とした場合、SmpB1のグリップ6の振幅A1は0.88となった。これは、SmpB1において、剛性の低い部分である小径部8が、シャフト2の一次振動モードの腹Z1を避けて形成されているためであると考えられる。本解析により、SmpB1は、従来のクラブであるSmpA1に比べ、手の痺れを低減することができることが分かった。
【0070】
また、グリップ6の振幅はSmpB1(0.88)よりもSmpC1(0.85)の方が小さくなった。これは、SmpC1では、小径部8に、小径部8よりも曲げ剛性の高い拡径部83が形成されたためであると考えられる。本解析により、SmpC1は、SmpB1に比べ、更に手の痺れを低減することができることが分かった。
【0071】
次に、二次振動モードの腹Z2と、隣接する小径部同士の間の部分Xの位置が痺れに及ぼす影響を、有限要素法による固有値解析により解析した。全てのクラブは、一次振動モードの腹Z1よりもグリップ6側に小径部8が形成されているものである。二次振動モードの腹Z2と前記部分Xの位置関係は
図7に示す。
図7の(a)、(b)、(c)は、それぞれSmpA2(実施例6)、SmpB2(実施例7)、SmpC2(実施例8)の二次振動モード励起状態を示している。
【0072】
SmpA2は、シャフト2に小径部8が一つ形成されているもの、SmpB2及びSmpC2は共に、シャフト2に小径部8が二つ形成されたものである。SmpB2は、両小径部の間の部分Xが第二振動モードの腹Z2からずれた位置に形成されたものである。SmpC2は、前記部分Xが第二振動モードの腹Z2に対応した位置に形成されたものである。表7は、本解析で使用したSmpA2,SmpB2,SmpC2のシャフト2の径及びグリップ6の振幅を表したものである。なお、
図7及び表7において、D11は、一次振動モードの腹Z1に対応する部分の径、D2は小径部8の最小径、D4は、前記部分Xの最大径を示す。
【0073】
SmpB2における前記部分Xは、シャフト2のヘッド3本体の上側の面4aから535mmの箇所に、SmpC2における前記部分Xは、シャフト2のヘッド3本体の上側の面4aから475mmの箇所に形成されている。
【表7】
【0074】
本解析においては、全てのサンプルにおいて、クラブの全長を870mm、ヘッド重量を350gとして解析した。また、各部材の弾性率として、ヘッド及びシャフトについては1000kgf/mm
2、グリップについては300kgf/mm
2とした。各部材の密度については、ヘッド3及びシャフト2については0.75g/cc、グリップ6については1.0g/ccとした。クラブ1の状態は、各部材が何ら固定されていない、完全自由な拘束状態とした。また、要素数を3334、節点数を5062として、有限要素法による固有値解析を行った。本解析条件の下で、シャフト2が湾曲する方向における相対変位が最小値を示す部位を、二次振動モードの腹Z2とした。
【0075】
解析の結果、グリップ6の振幅A2は、SmpA2>SmpB2>SmpC2となった。具体的には、SmpA2におけるグリップ6の振幅A2を1とした場合、SmpB2のグリップ6の振幅A2は0.93となった。これは、SmpBでは、小径部と小径部の間に、小径部8よりも曲げ剛性の高い部分Xが形成されたためであると考えられる。本解析により、SmpB2は、SmpA1に比べ、手の痺れを低減することができることが分かった。
【0076】
また、グリップ6の振幅A2はSmpB2(0.93)よりもSmpC2(0.88)の方が小さくなった。これは、SmpC1では、小径部8よりも剛性の高い前記部分Xが、第二振動モードの腹Z2に対応する位置に形成されたためであると考えられる。本解析により、SmpC2は、SmpB2に比べ、更に手の痺れを低減することができることが分かった。
【0077】
以上の試験、及び解析結果から、本発明の一実施形態に係るクラブ1は、クラブを軽量化しつつも、比較的ボールの反発速度に優れると共に、打撃時のプレーヤーの手の痺れを低減することができるといえる。