(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255443
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】保持器を備えた軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/41 20060101AFI20171218BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20171218BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/06
F16H1/32 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-85824(P2016-85824)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-194135(P2017-194135A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】513241523
【氏名又は名称】上銀科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 健安
(72)【発明者】
【氏名】王 哲鴻
(72)【発明者】
【氏名】鄭 旭▲ミン▼
【審査官】
西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭47−036545(JP,B2)
【文献】
特開2016−121724(JP,A)
【文献】
特開昭62−072945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/38−33/56
F16C 19/06
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーモニック減速機に適用される、保持器を備えた軸受であって、
前記ハーモニック減速機は、少なくとも、剛性内歯車と、可撓性外歯車と、波動発生器とを含み、前記可撓性外歯車は前記剛性内歯車の内側に設けられ、前記波動発生器は前記可撓性外歯車の内側に設けられ、
前記波動発生器は、楕円輪と、前記軸受とを含み、前記軸受は前記楕円輪の回転に伴って前記楕円輪の輪郭に沿って変形し、
前記軸受は、内輪と、外輪と、保持器と、複数の転動体とを含み、
前記内輪は外周面に転動溝が設けられ、
前記外輪は前記内輪の外側に設けられ、前記外輪は前記内輪の前記転動溝と対向する転動溝が設けられ、
前記保持器は環状であって前記内輪と前記外輪との間に設けられ、前記保持器は隔てて配置される複数の間隔部が設けられ、二つの前記間隔部の間は保持部であり、前記保持器の表面と前記内輪及び前記外輪との間は所定の間隔が保たれ、
複数の前記転動体は複数の前記保持部に設置されて前記内輪の前記転動溝及び前記外輪の前記転動溝と接触し、前記転動体の中心点が囲繞して仮想の円をなし、前記楕円輪の回転によって生ずる前記転動体の運動軌跡は前記転動体の中心点が囲繞してなす仮想の楕円に沿い、
前記間隔部は前記転動体を保持する二つの保持面を有し、前記保持面は直線段を有し、前記直線段の長さTは、前記円の半径をRとし、前記楕円の長軸の長さをSとし、前記楕円の短軸の長さをUとするとき、T=(S/2−R)+(R−U/2)の関係式を満たす
保持器を備えた軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の保持器を備えた軸受であって、
前記保持面は、さらに二つの制限段を含み、二つの前記制限段は前記直線段の両端において前記直線段と連接して配置されて前記転動体を保持する
保持器を備えた軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーモニック減速機に関し、特にハーモニック減速機に適用される保持器を備えた軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーモニック減速機は、高減速比を有する減速装置である。従来のハーモニック減速機は、構造上主に剛性内歯環、剛性内歯環の内側に設けられる可撓性外歯杯、及び可撓性外歯杯の内側に回転自在に設けられる波動産生器を含む。波動産生器が可撓性外歯杯と組み立てられた後、可撓性外歯杯は波動産生器の外周縁に押し上げられて楕円形に変形する。これにより、波動産生器が動力源に駆動されて回転し始めたとき、剛性内歯環と可撓性外歯杯とが波動産生器の長軸において完全に噛み合い、波動産生器の短軸において完全に離れることができる。剛性内歯環と可撓性外歯杯とは歯数が異なるため、波動産生器が継続して回転するとき、この歯数の相違によって高減速比の効果を得ることができ、高トルクの出力が得られる。
【0003】
そして、この波動産生器は、通常、軸受、楕円輪及び軸連結器から構成される。軸受が楕円輪を套設し、軸連結器が動力源に連結されるとともに楕円輪と連結される。楕円輪の回転によって、軸受が楕円輪の輪郭に沿って変形し、可撓性外歯杯が軸受の外周縁に押し上げられて楕円形に変形して、剛性内歯環と噛み合うようになる。軸受における転動体は、環状の保持器によって隔離されて、軸受の各部分の受ける力のバランスがとれるようにするとともに転動体間の衝突を回避して騒音を回避するようにしなければならない。しかし、軸受が楕円輪とともに変形するため、保持器も継続して軸受の内輪及び外輪と摩擦、干渉し、これによって保持器が損傷し、減速機全体の寿命が短縮するとともに、伝動精度が低下する。それゆえ、従来の技術には未だに改良しなければならない課題がある。
【発明の概要】
【0004】
上記課題に鑑み、本発明の主な目的は、保持器の保持構造を提供し、軸受が楕円輪に沿って変形するとき保持器が軸受の内輪及び外輪と摩擦、干渉しないようにすることである。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る保持器を備えた軸受は、ハーモニック減速機に適用される保持器を備えた軸受であって、前記ハーモニック減速機は、少なくとも、剛性内歯車と、可撓性外歯車と、波動発生器とを含み、前記可撓性外歯車は前記剛性内歯車の内側に設けられ、前記波動発生器は前記可撓性外歯車の内側に設けられ、前記波動発生器は、楕円輪と、前記軸受とを含み、前記軸受は前記楕円輪の回転に伴って前記楕円輪の輪郭に沿って変形し、前記軸受は、内輪と、外輪と、保持器と、複数の転動体とを含み、前記内輪は外周面に転動溝が設けられ、前記外輪は前記内輪の外側に設けられ、前記外輪は前記内輪の前記転動溝と対向する転動溝が設けられ、前記保持器は環状であって前記内輪と前記外輪との間に設けられ、前記保持器は隔てて配置される複数の間隔部が設けられ、二つの前記間隔部の間は保持部であり、前記保持器の表面と前記内輪及び前記外輪との間は所定の間隔が保たれ、複数の前記転動体は複数の前記保持部に設置されて前記内輪の前記転動溝及び前記外輪の前記転動溝と接触し、前記転動体の中心点が囲繞して仮想の円をなし、前記楕円輪の回転によって生ずる前記転動体の運動軌跡は前記転動体の中心点が囲繞してなす仮想の楕円に沿い、前記間隔部は前記転動体を保持する二つの保持面を有し、前記保持面は直線段を有し、前記直線段の長さTは、前記円の半径をRとし、前記楕円の長軸
の長さをSとし、前記楕円の短軸
の長さをUとするとき、T=(S/2−R)+(R−U/2)の関係式を満たす。
【0006】
また、好ましくは、前記保持面は、さらに二つの制限段を含み、二つの前記制限段は前記直線段の両端において前記直線段と連接して配置されて前記転動体を保持する。
【0007】
本発明は、保持に係る特殊構造を設けることによって、軸受が楕円輪に合わせて変形するとき、転動体を保持部において直線段によって定まる変位量の分だけ上下に変位させ、保持器の表面と内輪及び外輪とが一定の間隔が保たれるようにし、内輪又は外輪と摩擦、干渉しないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る軸受を含む波動発生器の分解斜視図である。
【
図2】本発明に係る軸受を含む波動発生器の組立図である。
【
図3】本発明に係る軸受を含む波動発生器と剛性内歯車との組立図である。
【
図5】本発明に係る軸受が楕円輪に取り付けられる前の転動体の中心点が囲繞してなす仮想の円と軸受が楕円輪に取り付けられた後の転動体の中心点が囲繞してなす仮想の楕円、円と楕円を重ねて示す図である。
【
図6】本発明に係る保持器と転動体との局部拡大組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図6を参照されたい。本発明に係る保持器を備えた軸受は、ハーモニック減速機に適用される。ハーモニック減速機は、少なくとも、剛性内歯車200と、可撓性外歯車(図示せず)と、波動発生器100と、を含む。可撓性外歯車は剛性内歯車200の内側に設けられ、波動発生器100は可撓性外歯車の内側に設けられる。波動発生器100は、楕円輪11と、軸連結器12と、軸受Eと、を含む。軸受Eは、楕円輪11の回転に伴って楕円輪11の輪郭に沿って変形する。ハーモニック減速機の伝動は、従来技術であり、ここでは説明を省略する。軸受Eは、内輪3と、外輪4と、保持器5と、複数の転動体2とを含む。内輪3は、外周面に転動溝31が設けられる。外輪4は、内輪3の外側に設けられ、内輪3の転動溝31と対向する転動溝41が設けられる。保持器5は、環状であり、内輪3と外輪4との間に設けられる。保持器5は、隔てて配置される複数の間隔部51が設けられ、二つの間隔部51の間は保持部52である。保持器52の表面と内輪3及び外輪4との間は所定間隔Pが保たれる。複数の転動体2は、複数の保持部52に設置され、内輪3の転動溝31及び外輪4の転動溝41と接触する。
【0010】
本発明においては、軸受が楕円形に変形することに合わせて保持器も楕円形に変形することにならないように、本発明において設ける保持部の構造を以下に説明する。
図4及び
図5を参照されたい。楕円輪11と軸受Eとの組立前は、転動体2(C1)の中心点C11が囲繞して仮想の円Cをなす。楕円輪11と軸受Eとの組立後は、軸受Eが楕円輪11に合わせて変形するため、転動体2(F1)が楕円輪11の回転によって生ずる運動軌跡は、転動体2(F1)の中心点F11が囲繞してなす仮想の楕円Fを沿う。間隔部51は、転動体2を保持する二つの保持面510を有する。保持面510は、一つの直線段512及び二つの制限段511を有する。二つの制限段511は、直線段512の両端においてこれと連接して配置される。制限段511は、主に、保持器5と転動体2とが組み立てられ、内輪3及び外輪4に取り付けられる前に、転動体2が保持部52から離脱しないように、転動体2を保持できるようにするものである。直線段512の長さTは、円の半径をRとし、楕円の長軸をSとし、楕円の短軸をUとするとき、T=(S/2−R)+(R−U/2)の関係式を満たす。
【0011】
以上のように、本発明が「産業上の利用可能性を有する」ことには疑いの余地がない。また、本実施例において開示した技術的特徴は、出願前に刊行物に掲載されたことも、公開使用されたこともなく、上記の効果増進の事実を有するだけでなく、付加的な効果も見損なうことができない。よって、本発明の「新規性」及び「進歩性」は特許法規の規定を満たしており、法に従って特許出願をするので、審査を通じて早期に特許査定がされることを期待する。
【0012】
以上の実施形態による開示は本発明を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。従って、数値の変更や等効素子の置換等は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0013】
100 波動発生器
11 楕円輪
12 軸連結器
E 軸受
2 転動体
3 内輪
31 転動溝
4 外輪
41 転動溝
5 保持器
51 間隔部
510 保持面
511 制限段
512 直線段
52 間隔部
200 剛性歯車
F 楕円
F1 転動体
F11 中心点
C 円
C1 転動体
C11 中心点
U 短軸
S 長軸
T 長さ
R 半径
P 間隔