特許第6255491号(P6255491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6255491コンピュータ支援設計(CAD)モデルをシミュレートするためのファスナの自動作成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255491
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】コンピュータ支援設計(CAD)モデルをシミュレートするためのファスナの自動作成
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   G06F17/50 612A
   G06F17/50 628A
   G06F17/50 632
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-521855(P2016-521855)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公表番号】特表2016-525238(P2016-525238A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】US2014043450
(87)【国際公開番号】WO2014205371
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/838,162
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500430693
【氏名又は名称】ダッソー システムズ ソリッドワークス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーロン ロバート レオン バンタ
(72)【発明者】
【氏名】リー−リン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】サビー レディ シルラ
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07499845(US,B1)
【文献】 特開2001−265836(JP,A)
【文献】 特開2011−238008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ支援シミュレーションプロセスによる使用のためにファスナデータを自動的に作成するためのコンピュータ実装方法であって、
コンピュータ支援設計(CAD)モデリング環境において作成される第1のCAD構成要素が、ファスナである実世界のオブジェクトを表すと判定するステップと、
前記第1のCAD構成要素を分析し、および前記シミュレーションプロセスによる使用のための1つまたは複数の特性を導出するステップであって、前記導出された特性は、サイズデータ、位置データ、材質タイプデータ、ネジ径、およびネジピッチのうちの1つまたは複数を含む、ステップと、
前記第1のCAD構成要素が第2のCAD構成要素に接触することを確立するステップであって、前記第2のCAD構成要素は、非ファスナオブジェクトである実世界のオブジェクトを表す、ステップと、
前記第1のCAD構成要素の前記第2のCAD構成要素に対する影響の範囲を算出するステップと、
前記1つまたは複数の導出された特性、および前記影響の範囲を前記シミュレーションプロセスにおいて前記第1のCAD構成要素を代替オブジェクトに置き換える方式で使用するステップと
を備えたことを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項2】
判定する前記ステップは、(a)前記第1のCAD構成要素に関連付けられたファイル、および前記第1のCAD構成要素に関連付けられたデータ構造のうちの1つにおけるデータを識別するファスナを位置付けるステップと、(b)前記第1のCAD構成要素における面を分析し、および円筒面を認識するステップと、(c)複数の円筒構成要素間の合致関係を識別するステップであって、前記複数の円筒構成要素のうちの1つは、前記第1のCAD構成要素である、ステップと、(d)ユーザが対話形式で前記第1のCAD構成要素を指定することを可能にするステップと、のうちの1つを備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
確立する前記ステップは、検索プロセスを実行して、前記第1のCAD構成要素と接触する非ファスナ幾何学的エンティティを位置付け、前記検索プロセスは、いくつかの接触候補を減少させるために境界ボックスを利用すること、同軸幾何学形状を識別すること、軸方向を識別すること、および合致関係を分析すること、のうちの少なくとも1つによって前記非ファスナ幾何学的エンティティを検出する、ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記第1のCAD構成要素を囲む境界ボックスは、前記いくつかの接触候補のうちのいずれの1つを、非ファスナ幾何学的エンティティを備えるものとみなすのかを判定する、ことを特徴とする請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
確立する前記ステップは、1つまたは複数の合致関係を分析して、前記第1のCAD構成要素が前記第2のCAD構成要素に接触するかを判定する、ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記シミュレーションプロセスの間に前記第1のCAD構成要素の幾何学形状を表示して、前記シミュレーションプロセスの間に前記第1のCAD構成要素の外観を反映させる、ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記ネジ径、前記ネジピッチ、およびと材質タイプデータのうちの1つまたは複数は、前記シミュレーションプロセスの間にネジファスナに対する軸方向予荷重を算出するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
コンピュータ支援設計システムであって、
データ記憶システムに動作可能に結合されたプロセッサであって、前記データ記憶システムは、3次元モデルを記憶する、プロセッサと、
前記プロセッサに動作可能に結合され,および前記プロセッサが、
CADモデルにおける1つまたは複数のコンピュータ支援設計(CAD)部品がファスナ部品であると判定し、各々のファスナ部品は、実世界のファスナを表し、
シミュレーションプロセスを開始し
前記ファスナ部品は、前記シミュレーションプロセスから自動的に除外され、
各々のファスナ部品に対するシミュレーションファスナは、前記シミュレーションプロセスにおいてそれぞれのシミュレーションファスナが各ファスナ部品を置き換える方式で、前記シミュレーションプロセスによる使用のために自動的に作成され、
各々のシミュレーションファスナは、それぞれのファスナ部品に関連するデータから自動的に作成される複数の特性から構成され、および
前記複数の特性うちの1つまたは複数は、前記シミュレーションプロセスの間に前記シミュレーションファスナの影響の範囲の算出を支援する
ように構成する命令を備えるデータ記憶メモリと
を備えたことを特徴とするコンピュータ支援設計システム。
【請求項9】
前記複数の特性は、(i)サイズ、(ii)位置、(iii)材質タイプ、(iv)ネジ径、および(v)ネジピッチを示すデータのうちの少なくとも1つを備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータ支援設計システム。
【請求項10】
前記CAD部品のうちの少なくとも1つがファスナ部品であると判定することは、各CAD部品に対し、(a)前記CAD部品に関連付けられたファイル、および前記CAD部品に関連付けられたデータ構造のうちの1つにおけるデータを識別するファスナを位置付けることと、(b)前記CAD部品における面を分析し、および円筒面を認識することと、(c)複数の円筒構成要素間の合致関係を識別することであって、前記複数の円筒構成要素のうちの1つは、前記CAD部品である、ことと、(d)ユーザが、対話形式で前記CAD部品をファスナ部品として指定することを可能にすることと、のうちの1つを備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータ支援設計システム。
【請求項11】
検索プロセスは、前記ファスナ部品のうちの1つに接触する非ファスナ幾何学的エンティティを位置付け、前記検索プロセスは、複数の接触候補の量を減少させるために境界ボックスを利用すること、同軸幾何学形状を識別すること、軸方向を識別すること、および合致関係を分析すること、のうちの少なくとも1つによって前記非ファスナ幾何学的エンティティを検出する、ことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータ支援設計システム。
【請求項12】
前記ファスナ部品のうちの前記1つを囲む前記境界ボックスは、前記複数の接触候補のうちのいずれの1つを、非ファスナ幾何学的エンティティを備えるものとみなすのかを判定する、ことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ支援設計システム。
【請求項13】
1つまたは複数の合致関係は、非ファスナ幾何学的エンティティが前記ファスナ部品のうちの1つと接触するかを判定するために分析される、ことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ支援設計システム。
【請求項14】
コンピュータ実行可能命令を記憶した非一時的コンピュータ可読データ記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、コンピュータによって実行されると、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実行させることを特徴とする非一時的コンピュータ可読データ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ支援設計(CAD)の技術分野に関する。
【0002】
本出願は、2013年6月21日に出願された米国仮特許出願第61/838,162号の利益を主張する。上記出願の教示の全体が、参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアによって、ユーザが、複雑な三次元(3D)モデルを構築および操作することが可能となる。3Dモデルを作成するために、多数の異なるモデリング技術を使用することができる。1つのそのような技術は、ソリッドモデリング技術(solid modeling technic)であり、それは、3Dモデルが相互接続されたトポロジエンティティ(例えば、頂点、エッジ、および面)の集合である、トポロジ三次元モデルを提供する。トポロジエンティティは、対応する補助幾何学的エンティティ(supporting geometrical entities)(例えば、点、トリムカーブ(trimmed curves)およびトリムサーフェス(trimmed surfaces))を有する。トリムサーフェスは、エッジによって境界が定められたトポロジ面に相当する。CADシステムは、ソリッドモデリング技術、およびパラメトリックモデリング技術などの他のモデリング技術を組み合わることがある。パラメトリックモデリング技術は、モデルの異なる特徴および構成要素に対する種々のパラメータを定義し、ならびに種々のパラメータ間の関係に基づいてそれらの特徴と構成要素との間の関係を定義するために使用されてもよい。
【0004】
設計技術者は、3D CADシステムの典型的なユーザである。設計技術者は、3Dモデルの物理的側面および美的側面を設計し、3Dモデリング技術に熟練している。設計技術者は、部品を作成し、および部品をサブアセンブリまたはアセンブリに組み立てることがある。サブアセンブリはまた、他のサブアセンブリを構成することがある。アセンブリは、部品およびサブアセンブリを使用して設計される。以下では、部品およびサブアセンブリは総称して構成要素と称される。
【0005】
アセンブリを設計するとき、設計技術者は、標準部品をサブアセンブリモデルまたはアセンブリモデルに組み込むことが必要となることがある。標準部品を再設計するのではなく、部品は既存の部品のデータベースから取り出されることがある。商業的に利用可能な構成要素データベースには、標準の物理的部品に対するCADモデルを含む。そのようなデータベースは、部品ライブラリと称される。Dassault Systemes SolidWorks Corporation of Waltham, Massachusettsから利用可能なSOLIDWORKS(登録商標)2013ソフトウェアシステムと完全に統合されるのは、商業的に利用可能な部品ライブラリの例であるSOLIDWORKS Toolboxである。SOLIDWORKS Toolboxは、一般的なファスナ(fasteners)(例えば、ボルト、スクリュー、ワッシャ、およびナット)などの標準部品が含み、その各々が、現実世界のファスナをCADモデルで幾何学的に表現する。SOLIDWORKS Toolboxファスナは、現実世界の物体の設計において支援する、空間的および質量的特性の属性を有する。
【0006】
現在の最先式CADシステムでは、設計技術者がファスナをCADモデルに挿入するとき、設計技術者は、そのCADモデルにおける1つまたは複数の他の部品にファスナ部品を取り付けるための、制約を確立することを望むことがある。そのような制約は、合致関係(mating relationships)と称される。
【0007】
合致関係を作成するための現在のアプローチは、幾何学形状(geometry)に基づく解決法および予め定められた合致参照解決法(mate-reference solution)を含む。幾何学形状に基づく解決法によって、設計技術者は、合致されることになる特定の幾何学形状を、マウスなどのポインティングデバイスを使用して選択およびドラッグ、または指定することが可能となる。SOLIDWORKSソフトウェアにおいて利用可能なSmartMatesツールは、幾何学形状に基づく解決法を提供し、それは、1つの構成要素上の円形エッジおよび第2の構成要素上の円形孔パターンが同一の半径を有し、次いで、同心円合致(concentric mate)を追加して、円形エッジを円形パターンと調節する、ことを判定することができる。
【0008】
SOLIDWORKS2013ソフトウェアにおいて実装されるような、予め定められた合致参照解決法によって、設計技術者は、後に必要となる可能性のある合致の選択および指定を通して、CADモデルに部品が組み込まれる前に、制約された関係を手動で定義することが可能になる。よって、設計技術者は、部品がアセンブリの構成要素としてそのアセンブリに挿入される前に、部品をどのように合致させるのかを定義することができる。予め定められた合致参照は、構成要素をアセンブリに合致させる間に、エンティティの選択を要求しないことによって、合致プロセスを加速させる。定義が完了すると、構成要素は、特定の条件が満たされる場合に、自動的に制約されることがある。
【0009】
設計プロセスの間、技術者は、モデルの設計をシミュレートして、設計される製品の現実世界の性能を分析および評価することがある。そのようなシミュレーションは、エンジニアリングシミュレーションプロセスによって実行されることがあり、その例は、SOLIDWORKS Simulation XpressおよびSOLIDWORKS Simulationであり、それらは、シミュレーションスタディを設定および実行するために、CADモデルデータを使用する。設計プロセスの間に作成されるファスナは、シミュレーションスタディから除外されることが多い。ファスナを除外することは、概して、シミュレーションの実行速度を増大させる。しかしながら、ファスナを含むモデリング環境における関係のタイプは、説明されるように、シミュレーションスタディに必要な関係のタイプとは異なる。前者の関係は、典型的には、幾何学的適合に基づく合致関係であり、後者の関係は、多くの場合、ファスナもしくはファスナスタック(fastener stack)(1つもしくは複数のファスナの組み合わせである)と、別の部品またはその1つもしくは複数の特徴との間の相互作用に影響する結合として取り扱われるはずである。よって、概して、構成要素のシミュレーションの間に、設計技術者は、モデリング環境において使用されるファスナデータを、シミュレーション環境のための適切なファスナデータと手動で置き換え、それは、幾何学形状を使用することなく、構成要素をまとめて固定する効果、および、他の構成要素に対するファスナの影響を許容する、シミュレーション特有のファスナの抽象化である。
【0010】
例えば、シミュレーションスタディで使用されるネジ付きボルトファスナ(threaded bolt fastener)は、ネジ付きファスナのCADモデルに対する影響の数学的表現である。シミュレーションボルトファスナ無しで、設計技術者は、有効でないことがある憶測を立てて、2つの構成要素間のネジ付きファスナをシミュレートする必要がある。ファスナの影響の数学的表現が利用可能でない場合、または、設計技術者が別の表現を使用することを望む場合、設計技術者は、ボルトで固定(bolted)され、またはファスナ幾何学形状をシミュレーションに含める、2つの構成要素を結束させる(bond)ことがある。
【0011】
結束させることは、モデルの連続性を保証して、荷重(loads)を2つのエンティティ間で移転させる、シミュレーション環境において使用される操作である。SOLIDWORKS Simulationソフトウェアを使用して、エンドユーザは、例えば、面またはエッジを、任意の他の面またはエッジに結束させることができる。しかしながら、構成要素を結束させることは非常に不正確であることがあり、例えば、シミュレーションソルバが、2インチの厚さの板などの、2つの1インチ厚さの結束された板を考慮し、2つの板が、相互にボルトで固定されることとは反対にボンド固定されるとき、応力および変位が著しく異なることがある。
【0012】
ファスナ幾何学形状をシミュレーションに含めることは、非常にシンプルなモデルに対して、計算上非常に重く、メモリ集約的となることがある(例えば、計算時間の日数対分の差)。概して、設計技術者は、実際のファスナ幾何学形状をシミュレーションに含めるための甚大な計算量を費やすことが必要とされることがあり、なぜなら、より多くの接触条件が、ファスナと合致する構成要素との間で定義される必要があるからである。
【0013】
設計技術者が、同一の部品を表す2つのタイプのオブジェクト−1つはCADモデリングプロセスの間に、1つはシミュレーションプロセスを実行するためのもの−を作成することが必要なCADシステムは、CADモデリングシステムにおいて有益となる効率性に欠ける。
【0014】
現在利用可能な技術は、種々の理由により、以下で本明細書せ説明される解決法には及ばない。そのようなソリューションによって、現在のCADシステムに対する時間節約の利点および強化を可能にするものであり、それは、モデリング環境とシミュレーション環境との間でデータを移転させるための、より効率的な手段により達成される。
【発明の概要】
【0015】
概して、一態様において、本発明の実施形態は、シミュレーションプロセスに自動的にデータを提供する、コンピュータによって実行される方法を特徴付ける。方法は、CADモデルを分析するステップと、ファスナである現実世界のオブジェクトを表現する第1の構成要素を検索するステップと、第1の構成要素から、シミュレーションプロセスによって使用するための情報を導出するステップと、を含む。
【0016】
他の実施形態は、データ記憶システムに動作可能に結合されたプロセッサと、プロセッサに動作可能に結合されたデータ記憶メモリと、を有するコンピュータ支援設計(CAD)システムを含む。そのような実施形態において、データ記憶システムは三次元モデルを記憶し、データ記憶メモリは、CADモデルを分析し、ファスナ部品を識別し、シミュレーションプロセスによって使用するためのデータを導出する、ようにプロセッサを構成する命令を含む。
【0017】
さらなる他の実施形態は、CADモデルにおけるデータを自動的に分析し、シミュレーションプロセスによって使用するためのデータを導出する、ための命令を含むコンピュータ可読データ記憶媒体を含む。モデリング環境およびシミュレーション環境はシームレスとすることができる。
【0018】
本発明の他の態様は、第1のCAD構成要素が、ファスナではない現実世界のオブジェクトを表現する第2のCAD構成要素に接触することを確立するステップと、第2のCAD構成要素に対する第1のCAD構成要素の影響の範囲(zone of influence)を計算するステップと、シミュレーションプロセスにおいて影響の範囲を使用するステップと、を含む。本発明は、(a)識別データを、関連するファイルまたはデータ構造に位置付け、(b)第1のCAD構成要素における面を分析し、および円筒面を認識し、(c)円筒構成要素のうちの1つが第1のCAD構成要素である、円筒構成要素間の合致関係を識別し、ならびに(d)ユーザが、第1のCAD構成要素を対話形式で指定することを可能にする、ことによって、第1のCAD構成要素がファスナであることを判定してもよい。
【0019】
本発明のさらなる態様は、検索プロセスを実行して、第1のCAD構成要素に接触する、非ファスナ幾何学的エンティティを位置付けるステップを含む。検索プロセスは、境界ボックスを利用していくつかの接触候補の数を減少させ、同軸幾何学形状を識別し、軸方向を識別し、または、合致関係を分析する、ことによって非ファスナ幾何学的エンティティを検出する。境界ボックスは、第1のCAD構成要素を囲んで、接触候補のうちのいずれの1つを、非ファスナ幾何学的エンティティを備えるものとみなすのかを判定する。さらに、本発明は、1つまたは複数の合致関係を分析して、第1のCAD構成要素が第2のCAD構成要素に接触するかどうかを判定してもよい。
【0020】
加えて、第1のCAD構成要素の幾何学形状は、シミュレーション環境において表示されて、第1のCAD構成要素の外観を、シミュレーション環境において視覚的に反映させてもよい。さらに、neji径(thread diameter)、ねじピッチ(thread pitch)、材料タイプデータ、またはそれらの組み合わせは、シミュレーションプロセスの間に導出され、次いで、ねじ付きファスナに対する軸方向予荷重(axial preload)を算出するために使用される、特性であってもよい。
【0021】
本発明の1つまたは複数の詳細は、添付の図面および以下の詳細な説明において記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明、図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
上述したことは、添付の図面で示されるように、本発明の実施形態の例についての以下のより具体的な説明から明らかとなるであろう。図面においては、同一の参照符号は異なる図面においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の実施形態を説明することに重点が置かれている。
【0023】
図1a】コンピュータ支援設計(CAD)モデルを示す図である。
図1b】シミュレーション環境における図1aのCADモデルを示す図である。
図2a】シンプルなファスナスタックを示す図である。
図2b】シンプルなファスナスタックを示す図である。
図3】本発明の例示的な実施形態に従った、メッシュ化されたシミュレーションモデルを示す図である。
図4】本発明の例示的な実施形態に従った、シミュレーションコネクタを自動的に作成するためのステップを含むフロー図である。
図5】本発明の実施形態を実装することができる、コンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述のように、設計技術者は、構成要素が、CADモデリングプロセスの間、またはCADモデルのシミュレーションプロセスの間に使用されているのかに応じて、同一の構成要素に対する異なるオブジェクトを作成する必要がある場合があり、これは精度および効率性の問題を生じさせる。この例は、シミュレーションプロセスの間に、他の構成要素に影響を与える現実世界の特性を有するファスナであり、これにおいては、現実世界の特性は、あったとしてもモデリングプロセスの間と同一のようには取り扱われない。本明細書で説明される解決法は、CADモデリングプロセスの間に構築される幾何学的オブジェクトに加え、そのオブジェクトの幾何学的参照(例えば、合致関係)を分析し、次いで、シミュレーションプロセスによって使用される適切な特性を有する適切なオブジェクトを自動的に作成する。
【0025】
本明細書で説明される発明概念により、設計技術者は、オブジェクトを削除すること、および、オブジェクトの異なる表現を、異なる環境、例えば、シミュレーション環境における使用のために再作成することから解放される。一つの例示的な実施形態では、このことは、CADモデルを分析し、およびシミュレーション環境に適切なデータを再利用することによって、一方でそのような環境には不要なデータを使用することなく達成される。本発明は、オブジェクトを削除する必要が無く、むしろ、シミュレーションプロセスの間にオブジェクトをCADモデルから除外することができ、それによって、シミュレーションスタディから、そのオブジェクトの影響を取り除く。
【0026】
ファスナオブジェクトは、非制限的な例として、ボルト、スクリュー、ナット、ソケット、ロッド、ピン、バネ、およびワッシャなどの現実世界のファスナの表現である。本明細書では、コネクタは、非ファスナ部品または同一のファスナスタックの部材ではない部品に、孔を通じて適合するファスナを指し、アクセサリ部品は、コネクタに取り付けるファスナであり、アクセサリ部品の例は、ボルトコネクタのCAD部品モデルに取り付けるナットまたはワッシャを表現するCAD部品モデルである。コネクタおよびアクセサリ部は、ファスナスタックまたは単純にスタックと総称される。
【0027】
本発明は、CADモデリング環境において作成されるファスナオブジェクトを定義および位置付けるデータを分析し、ならびにシミュレーションプロセスに対する適切な対応するファスナオブジェクトを、どのように作成するのかを判定する。以下では、適切な対応するシミュレーションオブジェクトを、「代替オブジェクト(substituted object)」と称される。次いで、モデリング環境において作成されたファスナオブジェクトは、シミュレーションプロセスによって使用されるオブジェクトの集合から自動的に除外され、シミュレーションプロセスの間に、代替オブジェクトがファスナオブジェクトの場所で自動的に使用され、設計技術者が介入する必要が無い。
【0028】
シミュレーション環境では、代替オブジェクトは、最初にモデル化されたファスナとしての他の構成要素の中で、同一のサイズであり、かつ同一の位置にあり、または、ほぼ同一のサイズであり、かつほぼ同一の位置にある。視覚的には、シミュレーション環境では、ファスナ幾何学形状が表示されてもよく、したがって、ファスナは、モデリング環境におけるものと同一の(またはほぼ同一の)に見えることになる。例えば、シミュレーション環境における代替オブジェクトは、モデリング環境における対応するオブジェクトの幾何学形状の、視覚的に透明なレンダリングであってもよい。代わりに、代替オブジェクトの視覚的表現は、ファスナの幾何学形状が表示されるモデリング環境におけるものとは異なってもよい。代替オブジェクトが最初のファスナとは異なる外観を有させることは、オブジェクトが置き換えられたことを視覚的に示す(例えば、図1b参照)。
【0029】
サイズおよび位置に加えて、最初にモデリングされたファスナにおける他の特性は、代替オブジェクトの特性となり、または、代替オブジェクトにおける適切な特性を作成するために使用される。非制限的な例として、材料が、最初のファスナオブジェクトに対して定義された場合、同一の材質が、シミュレーションファスナとなる代替オブジェクトにおいて使用されてもよく、および、材質は、代替オブジェクトに対する他の特性を作成するために使用されてもよく、その特性は、シミュレーションの間の代替オブジェクトの物理的挙動および影響を定義するために使用される。実施形態がファスナから導出する他の特性は、ファスナのヘッドの直径、ファスナがボルトである場合のナットの直径、固定された幾何学形状に接触する任意のワッシャの直径、ならびに、ネジ付きファスナのネジ径およびネジピッチである。ファスナの材質特性に従ったネジ付きファスナのネジ径およびネジピッチは、軸方向予荷重を算出するために使用される。
【0030】
加えて、本発明は、ファスナオブジェクトの予荷重、引張応力領域(tensile stress area)(例えば、ボルトのねじ部分の最少領域)、および強度を算出し(例えば、Machinery Handbook 27th Edition,page 1495,Industrial Press, Inc.,New York,N.Y.(2004)に従った)、およびこのデータを代替オブジェクトに含める。
【0031】
ここで、図1aを参照して、2つのボルトファスナ110、2つのナットファスナ120、および2つのワッシャ130を有するCADモデル100が示される。図1aにおける各々のボルト、ワッシャ、ナットの集合が、ファスナスタックである。上述したように、シミュレーションコネクタはモデリング環境におけるその対応部分とは異なり、なぜならば、シミュレーションコネクタが、シミュレーションスタディの間に他の部品の挙動に影響を与える現実世界の特性を有するからである。例えば、ボルトは、特定のシミュレーションスタディの間には曲がらなければならず、別のコネクタは、ばねのような品質を有することがあり、ワッシャは、荷重の分散を支援する。したがって、モデル100がシミュレーション環境において使用されるとき、図1bに示すように、設計技術者は、典型的にはファスナ110、120、130を削除し、およびその場所でシミュレーションコネクタ140を作成する。コネクタを交換しなければならないことは、時間がかかり、困難であり、間違いを起こしやすいことであり、なぜならば、設計技術者が、シミュレーション環境において、ボルトコネクタの特性を100%正確に複製しないことがあるからである。
【0032】
ここで、図2aおよび2bを参照して、単純なアセンブリ200が、それぞれ、収縮状態(collapsed state)と分解状態(exploded state)の両方でそれぞれ示される。2つのグレープレート205aおよび205bが、ボルト210、ロックワッシャ215、上部大平ワッシャ(large flat washer)220、プレート205aおよび205bの下方にある下部大平ワッシャ225、および、プレート205aおよび205bの下方にあるナット230から構成される(上から下まで)ファスナスタックによって、共に保持される。
【0033】
本発明は、まず、どの構成要素がファスナ構成要素であり、どの構成要素が構成要素でないのかを識別する。図2aおよび2bでは、プレート構成要素205aおよび205bは、ファスナではなく、他の構成要素210〜230がファスナ構成要素である。ファスナ構成要素は、例えば、(1)部品ファイルにあるファスナ自体を識別するデータ、(2)部品における面を分析し、円筒面を認識すること、および/または(3)合致関係(例えば、同心円合致関係)を有する2つの円筒部品を識別すること、を含む種々の方法で識別されてよい。加えて、本発明の一実施形態は、どの部品がファスナ部品として識別されたのかを示してもよく(例えば、ファスナ部品を強調表示すること、または、ファスナ部品のリストを設計技術者に提示することによって)、および、設計技術者が、自動的に識別されたファスナの集合から追加または除外する部品を対話形式で選択することによって、他の方法で示すことを可能にしてもよい。
【0034】
ファスナ部品は、標準構成要素であることが多く、および、例えば、Dassault Systemes SolidWorks Corporation orから利用可能な3D ContentCentral(登録商標)サービス、または、それぞれの物理的ハードウェア構成要素のベンダから利用可能なオンラインデータベースを介してアクセス可能なものなどの、オンラインの構成要素データベースからダウンロードすることができる。さらに、上記で言及したように、SOLIDWORKS Toolboxは、SOLIDWORKSのエンドユーザにアクセス可能な標準構成要素を含む。加えて、設計技術者は、自身または企業内で利用可能な標準構成要素のカスタムライブラリへのアクセスを有することができる。それらの標準ファスナ構成要素は、識別データを、本発明の一実施形態を読み取ることができるフォーマットを有するファイルに位置付けることによって、容易に識別可能であってもよい。
【0035】
ファスナ構成要素を識別した後、本発明は、ファスナ構成要素210〜230を分析し、どの構成要素が、プレート構成要素205aおよび205bに接触するのかを判定する。図2aでは、上部グレープレート205aが、上部大平ワッシャ220に接触され、下部グレープレート205bが、下部大平ワッシャ225に接触されている。接触は、合致関係を分析することにより、および/または、単純もしくはより複雑な接触検出プロセス(例えば、1つの部品からの幾何学形状が、別の部品にいつ接触するか、または、別の部品までの一定の距離内にあるかを検出するプロセス)によって判定されてもよい。さらに、合致情報は、接触検出プロセスの範囲を限定し(narrow down)、従って、接触検出プロセスの速度を上げるために利用することができる1つの技術である。
【0036】
本発明は、幾何学形状検索プロセスを実行して、非ファスナ幾何学形状を、各ファスナと接触するように位置付ける(例えば、穴−円筒のペアを発見するために)。検索を限定するために、一実施形態では、それぞれのファスナを囲む境界ボックスは、境界ボックス内に入らない幾何学形状を無視するために利用される。各ファスナと接触している非ファスナ幾何学形状を検出するために使用することができる他の方法は、ファスナと、同軸の構成要素、同一の軸方向を有する構成要素、同一もしくはほぼ同一の半径を有する構成要素、同一もしくはほぼ同一の寸法を有する円筒、またはこれらの組み合わせ、を識別する方法を含む。加えて、検索プロセスの間の合致関係の検出は、ファスナと接触している非ファスナ幾何学形状を識別するために使用されてもよい。境界ボックスの技術を採用すること、合致関係を分析すること、および上述した他の方法によって、検索を、起こり得る接触に限定することは、接触を発見する間に、本発明の計算性能を向上させることができる。起こり得る接触が識別された後、当業者には既知であるような接触−検出の方法が、実際の接触を検出するために本発明によって採用されてもよい。
【0037】
どのファスナが、非ファスナ構成要素に接触するのかを識別した後、本発明は、各接触ファスナの直径を判定する。直径は、メモリに記憶されたファスナの部品ファイルまたはデータ構造を分析して、寸法データを位置付けること、または、ファスナにわたる幾何学的ユニットの数を計算することによって判定されてもよい。例えば、接触ファスナの直径は、値が直径であることを示す特定のパラメータ名を有する部品ファイルでパラメータとして指定されてもよい。さらに、サイジングデータを取得するために、本発明は、そのデータをファスナ部品ファイルから直接読み込むことができる。
【0038】
図3は、図2aおよび図2bに示されるファスナスタックによって共に保持される2つのグレープレート205aおよび205bのモデルのメッシュ300の画像を示す。図3では、ファスナが位置する露出孔305によって示されるように、シミュレーションボルトコネクタは隠れている。メッシュ内の影響半径(influence radius)310(赤の円形領域として示される)は、図2aおよび2bに示すように、上部大平ワッシャ220を通じたファスナスタック210〜230のグレープレート205aおよび205bに対する影響を示す。見えていないシミュレーションボルトコネクタが、グレー領域を圧迫し、圧力の領域が赤で示される。(後述するように、図4のステップ430で収集されるデータは、シミュレーションスタディにおいてシミュレーションコネクタの影響の範囲を算出するために使用される。)
【0039】
図3に示す例は、影響半径310(影響の範囲とも称されてもよい)は、ワッシャ220がプレート205aに接触する領域を含み、予荷重データおよび剛性データ(stiffness data)が、ボルト210から導出される。ワッシャ220が存在しなかった場合、影響半径、予荷重データ、および剛性データは全て、ボルト210から導出される。影響半径310内の全てのノード(すなわち、メッシュ内の点)は、ファスナタイプに依存し、および種々のシミュレーションスタディにおいて荷重移転パラメータを算出するために使用することができる、接触条件または結合条件が作成されるときに考慮される。影響半径310は、影響半径310にわたって分散されるファスナの軸方向予荷重に等しく加えられる力を有する。加わる力は、剛体バー(rigid bar)を使用して、シミュレーションコネクタの数学的中心部から、非ファスナ構成要素のノードに加えられる。従って、各ノードペア間の結合が、剛体バーとしてシミュレートされる。円筒(すなわち、孔305として示されるコネクタシャフト)は、梁要素(beam element)(すなわち、2つの端点を有する1つの線)としてシミュレートされる。コネクタ材質の特性は、シミュレーションスタディのためのコネクタの軸方向予荷重に対するデフォルト値を算出する。しかしながら、設計技術者は、シミュレーションコネクタが自動的に作成された後、常に荷重値を修正することができる。
【0040】
ここで、図4を参照すると、本発明の実施形態の一例に従って、モデリング環境におけるファスナオブジェクトを、シミュレーション環境における代替オブジェクトに自動的に変換するためのプロセス400が示される。始めに、設計技術者は、モデリング環境においてCADモデルを作成する(ステップ405)。CADモデルは、種々の構成要素の定義を支援する幾何学形状から構成される。次いで、設計技術者は、線形または非線形(静的または動的)シミュレーションスタディなどのシミュレーションスタディをセットアップする(ステップ410)。CADモデルに関して構築または行うことができる他のシミュレーションスタディは、静的スタディ、バックリング(buckling)スタディ、周波数スタディ、調和(harmonic)スタディ、ランダム(random)スタディ、振動スタディ、モーダル時間歴(modal time)スタディ、熱スタディ、応答スペクトル、ドロップテストスタディ、疲労スタディ、および設計スタディである。次のステップでは、モデリング環境からの全ての構成要素のモデリングプログラムオブジェクト(幾何学形状データなどを有する)が、ファスナを定義するそれらのオブジェクトを除いて、シミュレーション環境にロードされる(ステップ415)が、いくつかの実施形態では、オブジェクトは、ロードされなくてもよく(例えば、異なる計算プロセスによって入力または読み込まれる)、むしろ、モデリング環境およびシミュレーション環境はシームレスとすることができ、オブジェクトは、両環境に存在し、および両環境に対して透過的である。
【0041】
モデリング環境におけるファスナに対し、従来技術にあるように、設計技術者が、ファスナとその幾何学形状をシミュレーション環境において別個に指定する代わりに、既に検討したような種々の方法を使用て、対応するシミュレーションファスナが自動的に識別される(ステップ420)。例えば、ファスナは、プロセス400が、ファスナ自体を定義する部品データファイルのヘッダのコードを読み込み、および解釈した後に識別されてもよい。加えてまたは代替として、ファスナがモデリング環境において作成されるとき、各ファスナの識別データ(ID)が、シミュレーション環境において容易に利用可能なファスナIDのリストに追加されてもよい。次いで、その容易に利用可能なリストは、プロセス400により読み込まれて、シミュレーション環境においてファスナを自動的に識別する。また、ファスナは、部品が円筒面を有することを判定するプロセス400によって識別されてもよい。さらに、プロセス400は、2つの部品間の合致関係のタイプ(例えば、2つの円筒特徴の間の同心円合致関係)によって、ファスナを識別することができる。一実施形態はまた、設計技術者が、どの構成要素がファスナであるのかを特別に指摘することを可能にする。ファスナを識別することはまた、各ファスナスタックおよびそのスタックにおけるファスナ部品を識別することを含む。プロセス400は、このことを、非限定的な例として、ファスナ間の合致関係、ファスナ同士の近接度、または、これらの組み合わせを分析することによって達成することができる。
【0042】
次のステップでは、各ファスナに対し、(a)既に検討したように、非ファスナ幾何学形状に接触するファスナスタック内の部品が判定され(例えば、図2aおよび2bの上部の大平ワッシャ220参照)、(b)接触ファスナ部品に対するサイジング情報が判定され(例えば、ファスナデータベースを読み込みことによって)、(c)接触ファスナ部品が非ファスナ幾何学形状に合致する位置が判定され(例えば、同一平面の面、軸などを分析することによって、例えば、既に検討したように、接触検出プロセスを実行することによって、または、既に検討したように、影響範囲を判定することによって)、および、(d)ファスナ材質に関するデータが判定される(例えば、現実世界の材質を指定するデータを部品ファイルから読み込むことによって)(ステップ430)。(a)、(b)、および(c)で説明された情報は、次いで、シミュレーションスタディにおいてシミュレーションコネクタの影響の範囲(例えば、円形ファスナの影響半径)を算出するために使用される。なお、一実施形態では、ファスナに外接する円の領域は、非ファスナ部品に投影されて、影響の範囲を算出する。(d)で説明されるファスナ材質に関する情報は、予荷重、すなわち、接合を共に保持する力の算出に使用される。Machinery’s Handbook、第27版、1495ページ、ニューヨーク州ニューヨーク市、Industrial Press社発行(2004年)を参照されたい。
【0043】
いくつかの実施形態では、ファスナの幾何学形状がシミュレーションモデルに含まれていた場合、幾何学形状は、シミュレーションの間の考慮から除外される(ステップ435)。また、全てのファスナが識別されて、ファスナに関する上述の情報が収集されると、シミュレーションコネクタが、前に取り出されたサイズ、位置、および材質データを使用して作成される(ステップ440)。さらに、一実施形態は、作成されたシミュレーションコネクタの数を報告してもよい(ステップ445)。
【0044】
加えて、ファスナ特性を使用して、予荷重力および/または予荷重経路が算出されてもよい(例えば、Machinery’s Handbook、第27版参照)。これらは、張力を定義するために、シミュレーションスタディにおいて使用されてもよく(例えば、コネクタがしっかり締まっているとき)、これは次に、シミュレーションプロセスへの入力として使用されてもよい。
【0045】
既に検討したように、実施形態はまた、表示の目的のみでモデリング環境において作成されたファスナの幾何学形状を、シミュレーションスタディの間に使用することができ、それによって、ファスナの正確なサイズ、位置、および形状が表現する(ステップ450)。これは、図1bに示すシミュレーションコネクタ140の表現とは対照的である。
【0046】
材料、位置、および予荷重のデータが判定された後、シミュレーションコネクタが作成される(ステップ455)。ボルトコネクタは、例えば、バネを有する1つまたは複数の剛体バーとして定義されてもよい。一実施形態では、ボルトシャンク(bolt shank)を表す梁要素、および剛体バー要素が、梁をフランジに結合する。ボルトの予荷重は、熱膨張/収縮を使用して算出されてもよい(熱膨張/収縮を算出する方法については、「Technical Note:Modeling Pretensions in Bolted Connections」、J.M.StallingsおよびD.Y.Hwang、Computers&Structures、Vol.45、No.4、pp801−803、1992年を参照されたい。)。
【0047】
ボルトコネクタは、梁要素によって定義されてもよく、梁要素は、トルクに対して抵抗も有さず、なぜならば、軸回転自由度が解放され、現実世界のコネクタと調和するからである。実際には、結合部品間の滑りは、締付力(clamp force)(予荷重)により与えられる摩擦力によって抵抗される。
【0048】
図5は、CPU502、コンピュータモニタ504、キーボード入力デバイス506、マウス入力デバイス508、および記憶装置510を含む、コンピュータモデリングシステム500を示す。CPU702、コンピュータモニタ504、キーボード506、マウス508、および記憶装置510は、一般に利用可能なコンピュータハードウェアデバイスを含む。例えば、CPU502は、Intelベースのプロセッサを含むことができる。マウス508は、設計技術者が押下して、CPU502によって実行されるソフトウェアプログラムにコマンドを発行することができる、従来の左ボタンおよび右ボタンを有することができる。マウス508の代替として、またはマウス508に加えて、コンピュータモデリングシステム500は、トラックボール、タッチセンサパッドなどのポインティングデバイス、またはキーボード506に組み込まれたポインティングデバイスおよびボタンを含むことができる。当業者は、別の利用可能なポインティングデバイスを使用して、本明細書でマウスデバイスに関連して説明したものと同一の結果が得られることを理解するであろう。以下に続く検討から明らかになるように、他の適切なコンピュータハードウェアプラットフォームが適している。好ましくは、そのようなコンピュータハードウェアプラットフォームは、Microsoft Windows(登録商標)7、UNIX(登録商標)、Linux(登録商標)またはMAC OSオペレーティングシステムを動作させることが可能である。
【0049】
さらなるコンピュータプロセシングユニットおよびハードウェアデバイス(例えば、ラピッドプロトタイプデバイス、ビデオデバイスおよびプリンタデバイス)が、コンピュータモデリングシステム500に含まれてもよい。さらに、コンピュータモデリングシステム500は、ネットワークハードウェアおよびソフトウェアを含んでもよく、それによって、ハードウェアプラットフォーム512への通信が可能になり、他のコンピュータコンポーネントの中でも、CPUおよび記憶システムを含む多数のコンピュータシステム間の通信を促進する。
【0050】
コンピュータ支援モデリングソフトウェア(例えば、プロセッサ400)は、記憶装置510に記憶されてもよく、CPU502にロードされてもよく、およびCPU502によって実行されてもよい。モデリングソフトウェアによって、設計技術者は3Dモデルを作成および修正することが可能となり、かつ本明細書に記載された本発明の態様を実装することができる。CPU502は、3Dモデルおよび上述したその他の態様を表示するために、コンピュータモニタ504を使用する。キーボード506およびマウス508を使用して、設計技術者は3Dモデルに関連付けられたデータを入力および修正することができる。CPU502は、キーボード506およびマウス508からの入力を受け付け、処理する。CPU502は、3Dモデルに関連付けられたデータと共に入力を処理し、モデリングソフトウェアによって命令されるようにコンピュータモニタ504上に表示される3Dに対して、対応する適切な変更を行なう。一実施形態では、モデリングソフトウェアは、1つまたは複数のソリッドボディおよびサーフェスボディから構成される3Dモデルを構築するのに使用されるソリッドモデリングシステムに基づく。
【0051】
本発明の実施形態は、デジタル電子回路、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、もしくはこれらの組み合わせで実装されてもよい。装置は、プログラム可能プロセッサによる実行のために機械可読記憶装置に有形的に具体化されたコンピュータプログラム製品において実装されてもよく、方法ステップは、入力データを操作し、および出力を生成することにより、命令のプログラムを実行して機能を実行する、プログラム可能プロセッサによって実行されてもよい。本発明の実施形態は、有利なことに、少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能システム上で実行可能1つまたは複数のコンピュータプログラムにおいて実装されてもよく、プログラム可能プロセッサは、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイスおよび少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、これらのデバイスにデータおよび命令を送信する。各コンピュータプログラムは、高レベル手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実装されてもよく、必要に応じて、アセンブリ言語または機械言語で実装されてもよく、いずれの場合も、言語は、コンパイラ言語またはインタープリタ言語であってもよい。適切なプロセッサは、非制限的な例として、汎用マイクロプロセッサおよび専用マイクロプロセッサの両方を含む。概して、プロセッサは、リードオンリメモリおよび/またはランダムアクセスメモリから命令およびデータを受信し、いくつかの実施形態では、命令およびデータは、グローバルネットワークを通じてダウンロードされてもよい。コンピュータプログラム命令およびデータを有形的に具体化するのに適切な記憶装置は、全ての形式の不揮発性メモリを含み、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリ装置、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD−ROMディスクがある。上述したもののいずれは、カスタム設計のASIC(特定用途集積回路)によって補完されてもよく、またはこれに組み込まれてもよい。
【0052】
本明細書に記載される本発明の実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形式で実装されてもよい。ソフトウェアで実装される場合、ソフトウェアは、プロセッサが、ソフトウェアまたはその命令のサブセットをロードすることを可能にするように構成された任意の非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。次いで、プロセッサは、命令を実行し、および本明細書に記載されるように動作するように構成され、または、そのように装置に動作させるように構成される。
【0053】
本明細書に開示される実施形態によって、ファスナの部品モデルは、シミュレーションスタディによる使用のためのファスナとして、容易に再利用される。これにより、設計技術者は、モデリング環境において作成されたファスナを削除して、およびサブアセンブリまたはアセンブリの現実世界の挙動をシミュレートするために、シミュレーションプロセスによって必要とされるデータで同一のファスナを再作成しなければならないことから解放される。本明細書に開示される実施形態の利点は、設計技術者よってさらなる時間と努力を要する意味が、マウスボタンを1回クリックすれば達成され、これによって、ユーザインターフェース項目が選択されて、シミュレーションプロセスが開始されることにあり、本発明は、モデリング環境において使用されるファスナから、シミュレーションファスナを自動的に作成するため、時間と努力の量が減る。さらに、部品モデルからシミュレーションファスナを自動的に作成することで、設計技術者が、シミュレーション環境において、ファスナまたはファスナスタックの特性を100%正確に複製できないという可能性を減らす(例えば、失くしたナットまたはワッシャ、または、不正確なネジ数が、シミュレーション結果に影響する)。さらなる利点は、設計技術者が、シミュレーションファスナを作成するときに間違いとなり得ることを想定せずに済むという点である(例えば、予荷重データのサイズまたはデフォルト値)。従来技術によって必要とされる手動のプロセスは、必ずしもすべての設計技術者が熟練しるとは限らない高度なシミュレーションの知識が必要とすることがあった。さらなる別の利点は、本発明は、従来技術で行われるような、シミュレーションコネクタを抽象的に表現する必要がないことであり、それによって、設計技術者が、別のコネクタからサイジングされた1つのシミュレーションコネクタを識別すること、および、シミュレーションボルトコネクタのサイズを理解するために設計技術者による綿密な調査を必要とすることがなくなることである。
【0054】
本発明の多くの実施形態について説明した。それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変形がなされてよいことは、理解されるであろう。例えば、本発明の実施形態では、操作を行う順番を変更してもよく、例えば、図4のステップ420が、図4のステップ410の前に実装されてもよい。さらに、実装の必要性に応じて、本明細書に記載される特定の操作が、組み合わせられた操作として実装されてもよく(例えば、プロセス400のステップ415および420)、除外されてもよく(ファスナが、ステップ415の前に識別されない場合またはシミュレーション環境にロードされない場合は、プロセス400のステップ420は必要ではない)、追加されてもよく、または他の方法で再編成されてよい(例えば、プロセス400のステップ450および455)。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5