特許第6255493号(P6255493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6255493緑茶種子由来の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3成分を含有する抗酸化又は皮膚美白用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255493
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】緑茶種子由来の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3成分を含有する抗酸化又は皮膚美白用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/56 20060101AFI20171218BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20171218BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20171218BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20171218BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20171218BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20171218BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   A61K31/56
   A61K36/82
   A61K8/63
   A61K8/97
   A61P17/00
   A61P17/18
   A61Q17/00
   A61Q19/02
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-525259(P2016-525259)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2016-528204(P2016-528204A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】KR2013006209
(87)【国際公開番号】WO2015005512
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン ソン
(72)【発明者】
【氏名】シム ジン スプ
(72)【発明者】
【氏名】ファン キョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン ヨウン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨム ミョン フン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ジュン チョル
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第2013−0035325(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第2010−0029369(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 8/00−8/99
A61K 36/00−36/9068
A61P 17/00
A61P 17/18
A61Q 17/00
A61Q 19/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表わされる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を有効成分として含有する抗酸化用皮膚外用剤組成物。
【化1】
【請求項2】
下記化学式1で表わされる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を有効成分として含有する皮膚美白用皮膚外用剤組成物。
【化2】
【請求項3】
前記21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、組成物の総重量に対して0.0001〜10重量%含有される請求項1又は2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
前記21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、緑茶種子由来のものである請求項1又は2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
前記21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、緑茶種子抽出物を酸、塩基、酵素又は前記酵素を産生する微生物を用いて分解させて得られる請求項4に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
抗酸化用皮膚外用剤組成物を製造するに際して、下記化学式1で表わされる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を有効成分として使用する方法。
【化3】
【請求項7】
皮膚美白用皮膚外用剤組成物を製造するに際して、下記化学式1で表わされる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を有効成分として使用する方法。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶種子由来の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3成分を有効成分として含有する抗酸化又は皮膚美白用組成物に係り、更に詳しくは、酸、塩基、酵素、又は前記酵素を産生する微生物を用いた分解反応を通じて緑茶種子抽出物から得られた緑茶種子由来の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3成分を有効成分として含有することにより、優れた抗酸化及び皮膚美白効能が奏される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚は、年をとるにつれて種々の内的・外的要因により変化を経る。すなわち、内的には新陳代謝を調節する各種のホルモンの分泌が減少して、免疫細胞の機能と細胞の活性が低下して生体に必要な免疫タンパク質及び生体構成タンパク質の生合成が減り、外的にはオゾン層の破壊により太陽光線のうち地表に達する紫外線の含量が増加して、環境汚染が一層激しくなることに伴い自由ラジカル及び活性有害酸素などが増加することにより、その結果、皮膚に種々の問題が生じる。安定した状態で存在していた酸素が酵素、還元代謝、化学薬品、公害物質、光化学反応などの環境的及び生化学的な要因などによりスーパーオキシド陰イオンラジカル(superoxide anion radical、O)、ヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical、OH)、過酸化水素(hydrogen peroxide、H)、一重項酸素(singlet oxygen、)など反応性が大きな活性酸素(reactive oxygen species:ROS)に切り換わると、人体の細胞構成成分であるタンパク質、脂質及びDNAなどを非可逆的に破壊する。このような活性酸素の作用は、体内防御機構であるスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)、カタラーゼ(catalase)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、グルタチオン(glutathione)などの抗酸化性酵素、及びビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)などの抗酸化物質の作用により極力抑えられる。しかしながら、このような生体防御力に異常が生じたり、過度な活性酸素にさらされたりする場合には、残余又は過剰の活性酸素が生体に致命的な酸素毒性を引き起こし、細胞構成成分である脂質、タンパク質、糖、DNAなどに対して非選択的、非可逆的な破壊を誘導して老化はもとより、癌をはじめとして腦卒中、パーキンソン病などの脳疾患、心臓疾患、虚血、動脈硬化、皮膚疾患、消化器疾患、炎症、リウマチ関節炎、自己免疫疾患などの各種の疾病を引き起こすことが知られている(Crossら、Ann. Intern. Med., 1987, 107, 526; Aldersonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1988,85, 2706)。
【0003】
天然抗酸化剤の開発のために数多くの天然物由来の原料への取り組みが行われてきたが、ほとんどの天然物由来の原料は単なる抽出物の形として用いられ、これらの抽出物が示す効能が正確にどのような物質によるものであるかが判明されず、経験及び口伝により化粧料などに用いられているのが現状である。
【0004】
一方、人間の皮膚色を決定するのに種々の要因が与るが、中でも、メラニン色素を作るメラノサイト(melanocyte)の活動性、血管の分布、皮膚の厚さ及びカロチノイド、ビリルビンなどの人体内外の色素含有の有無などの要因が重要である。
【0005】
特に、最も重要な要因は、人体内のメラノサイトにおいてチロシナーゼなどの種々の酵素が働いて生成されるメラニンという黒色色素である。このメラニン色素の形成には、遺伝的要因、ホルモン分泌、ストレスなどに関する生理的な要因及び紫外線の照射などの環境的な要因などが影響を及ぼす。
【0006】
身体皮膚のメラニン細胞において生成されるメラニン色素は、黒い色素とタンパク質との複合体の形を有するフェノール系高分子物質であり、太陽から照射される紫外線を遮断して真皮以下の皮膚器官を保護するとともに、皮膚生体内に生じた自由ラジカルなどを捕捉するなど、皮膚内のタンパク質及び遺伝子を保護する有用な役割を果たす。
【0007】
このように皮膚の内外部のストレス的な刺激により生じたメラニンは、ストレスが消えても皮膚の角質化により外部に排出されるまでは消えない安定的な物質である。しかしながら、メラニンが過剰に生成されると、染みやそばかす、斑点などの過色素の沈着症を引き起こして、美容上によくない結果を来たしてしまう。
【0008】
また、レジャー人口の増加に伴い外部において活動することを楽しむ人々が増え、これに伴い、紫外線によるメラニン色素の沈着を防ごうとするニーズが増えるようになった。
【0009】
このようなニーズに応えるために、従来よりアスコルビン酸、麹酸、アルブチン、ヒドロキノン、グルタチオン若しくはこれらの誘導体、又はチロシナーゼ阻害活性を有する物質を化粧料や医薬品に配合して用いてきたが、これらの不十分な美白効果、皮膚に対する安全性の問題、化粧料に配合したときに現れる剤形及び安定性の問題などによりその使用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、前記問題を解決し、より優れた抗酸化及び皮膚美白効果を示す物質を発見するために鋭意努力したところ、緑茶種子抽出物から酸、塩基、酵素又は前記酵素を生成する微生物を用いた分解反応を通じて得られた21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3成分が優れた抗酸化及び皮膚美白効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明は、緑茶種子抽出物から得られた21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3成分を含有する抗酸化又は皮膚美白用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を解決するために、本発明は、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を有効成分として含有する抗酸化用皮膚外用剤組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を有効成分として含有する皮膚美白用皮膚外用剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明における21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、DPPH及びROSの生成の抑制などの抗酸化効果を示すとともに、メラニンの生成を抑え、紫外線(ultraviolet rays;UV)により生成された色素の沈着を改善する効果に起因する優れた皮膚美白効果を示す。したがって、本発明による21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、抗酸化、皮膚美白用化粧料組成物又は薬学組成物などの皮膚外用剤組成物、又は食品組成物として非常に有効に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、下記化学式1で表わされる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3(21−O−angeloyltheasapogenol E3)を有効成分として含有する組成物を提供する。
【0016】
【化1】
【0017】
前記21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、好ましくは、緑茶種子由来のものである。
【0018】
本発明において用いられる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、植物から水又は有機溶媒を用いてサポニン粗抽出物を得る第1の段階、及び前記抽出物を酸、塩基、酵素又は前記酵素を産生する微生物を用いて加水分解して21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を分離する第2の段階を含む方法により製造することができる。
【0019】
[第1の段階:サポニン粗抽出物の収得]
植物、特に、緑茶種子からサポニン粗抽出物を得る。このとき、抽出溶媒としては、水又は有機溶媒が使用可能であり、有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテート及びクロロホルムよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の有機溶媒、又はこれらと水との混合物、好ましくは、50%のエタノールが使用可能である。
【0020】
植物から水又は有機溶媒を用いてサポニン粗抽出物を得るために、植物に約1〜6倍、好ましくは、約3倍の水又は有機溶媒を入れ、常温で1〜5回攪拌しながら抽出して脱脂させる。脱脂された植物に約1〜8倍、好ましくは、約4倍の水又は有機溶媒を入れ、1〜5回還流抽出した後、10〜20℃で1〜3日間浸漬させる。次いで、ろ過及び遠心分離を用いて残渣及びろ液を分離し、分離されたろ液を減圧濃縮して得たエキスを水に懸濁した後、エーテルなどを用いて色素を除去する。水層を有機溶媒を用いて1〜5回抽出した後、得られた有機溶媒層を減圧濃縮して有機溶媒エキスを得た後、これを少量のメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどに溶かす。次いで、大量のエチルアセテート、アセトニトリル(acetonitrile)などを追加して生成された沈殿物を乾燥させて、本発明のサポニン粗抽出物を得る。
【0021】
[第2の段階:21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3の分離]
前記第1の段階において得たサポニン粗抽出物を加水分解して21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を分離し、加水分解は、酸、塩基、酵素又は前記酵素を産生する微生物を用いて行うことができる。
【0022】
前記酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の酸、又はこれらの酸とエタノール、メタノール及びブタノールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアルコールとの混合溶媒、好ましくは、50%エタノールとの混合溶媒が使用可能である。
【0023】
酸を用いて加水分解を行う場合、サポニン粗抽出物に0.1〜2N、好ましくは、1Nの濃度の酸、又は酸とアルコールとの混合溶媒を1〜10%の量で加えた後、50〜100℃、好ましくは、80℃の水浴槽において0.5〜8時間、好ましくは、1時間加熱還流させる。
【0024】
前記塩基としては、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の塩基、又はこれらの塩基とエタノール、メタノール及びブタノールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアルコールとの混合溶媒、好ましくは、50%ブタノールとの混合溶媒が使用可能である。
【0025】
塩基を用いて加水分解を行う場合、サポニン粗抽出物を水又は水とエタノールとの混合溶媒に溶かした後、0.1〜2N、好ましくは、1Nの濃度の塩基、又は塩基とアルコールとの混合溶媒を1〜10%の量で加えた後、50〜100℃、好ましくは、100℃の水浴槽において0.5〜24時間、好ましくは、12時間加熱還流させる。
【0026】
前記酵素は、糖結合を分解する酵素であり、緑茶サポニンの糖部分を除去して21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を生成することを特徴とする。この酵素としては、商業的に市販中のものを用いるか、又は必要に応じて製造して用い、特に、前記酵素を産生する微生物から得られる。
【0027】
また、前記酵素としては、更に好ましくは、グルコシダーゼ(glucosidase)、アラビノシダーゼ(arabinosidase)、ラムノシダーゼ(rhamnosidase)、キシロシダーゼ(xylosidase)、セルラーゼ(cellulase)、ヘスペリジナーゼ(hesperidinase)、ナリンギナーゼ(naringinase)、グルクロニダーゼ(glucuronidase)、ペクチナーゼ(pectinase)、ガラクトシダーゼ(galactosidase)及びアミログルコシダーゼ(amyloglucosidase)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上が使用可能である。
【0028】
更に、前記酵素を産生する微生物としては、アスペルギルス(aspergillus)属、バチルス(bacillus)属、ペニシリウム(penicillium)属、リゾプス(rhizopus)属、リゾムコール(rhizomucor)属、タラロマイセス(talaromyces)属、ビフィドバクテリウム(bifidobacterium)属、モルティエレラ(mortierella)属、クリプトコッカス(cryptococcus)属、マイクロバクテリウム(microbacterium)属、 リューコノストック(leuconostoc)属及びラクトバチルス(lactobacillus)属よりなる群から選ばれるいずれか一種以上が使用可能である。
【0029】
酵素を用いて加水分解を行う場合、サポニン粗抽出物を5〜20倍、好ましくは、約10倍の酸性緩衝溶液に溶解させた後、酵素を0.001〜10%の量で添加する。これを約25〜37℃の水浴上において約40〜55時間、好ましくは、約48時間攪拌しながら、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失すると、熱水(80〜100℃)中において5〜15分間加熱して反応を終える。
【0030】
微生物を用いて加水分解を行う場合、サポニン粗抽出物を5〜10倍、好ましくは、約10倍のイオン水に溶解させた後、121℃で30分間滅菌して30℃まで冷却させる。次いで、予め培養された微生物を液体量に対して5〜10重量%接種し、20〜30℃で2〜5日間、好ましくは、5日間培養させた後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失すると、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得る。
【0031】
上述したように、酸、塩基、酵素又は前記酵素を産生する微生物を用いて加水分解した後、反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にアルコールを加えて1〜5回攪拌する。次いで、沈殿した塩をろ過して除去し、ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得る。
【0032】
本発明の組成物は、上述した方法を用いて製造可能な21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を組成物の総重量に対して0.0001〜10重量%の量で含有する。含有量が0.0001重量%未満であれば、前記成分による抗酸化又は皮膚美白効果が得られず、含有量が10重量%を超えても、含有量の増加に比べて効果の増加が大きくない。
【0033】
本発明の組成物は、抗酸化組成物として使用可能であり、DPPH及びROSの生成の抑制効能に優れている
【0034】
また、本発明の組成物は、皮膚美白用組成物として使用可能であり、メラニンの生成を抑え、紫外線により生成された色素の沈着を改善する効能に優れている。
【0035】
本発明の組成物は、化粧品学又は皮膚科学的に許容可能な媒質又は基剤を含有して化粧料組成物又は薬学組成物に剤形化される。これは、局所適用に適したあらゆる剤形であり、例えば、溶液、ゲル、固体、練り物無水生成物、水相に油相を分散させて得た乳液、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球又はイオン型(リポソーム)及び非イオン型の小嚢分散剤の形で、又はクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー又はコンシールスティックの形で提供される。なお、フォーム(foam)の形で、又は圧縮された推進剤を更に含有するエアロゾル組成物の形で使用可能である。これらの組成物は、当該分野における通常の方法により製造される。
【0036】
また、本発明の組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型若しくは非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性若しくは親油性活性剤、脂質小嚢又は化粧品に一般的に用いられる任意の他の成分などの化粧品学若しくは皮膚科学分野において一般的に用いられる補助剤を含有することができる。前記補助剤は、化粧品学又は皮膚科学分野において一般的に用いられる量で取り込まれる。
【0037】
更に、本発明の組成物は、抗酸化又は皮膚美白効果を増大させるために、皮膚吸収促進物質を含有することができる。
【0038】
更にまた、本発明の組成物は、食品組成物に剤形化され、例えば、各種の食品類、飲料、ガム、茶・ビタミン複合剤、健康機能性食品類及び様々な食品添加剤の形に剤形化され得る。
【0039】
本発明の食品組成物は、指示された割合にて必須成分としての21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を含有する以外には、他の成分に特に制限はなく、通常の飲料のように種々の香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤〔タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)〕及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)が好適に用いられる。前記天然炭水化物の割合は、これに限定されないが、本発明の組成物100ml当たりに、一般的に、約1〜20g、好ましくは、約5〜12gである。
【0040】
また、本発明の食品組成物は、本発明が目的とする主効果を損なわない範囲内において主効果に相乗効果を与える他の成分などを含有することができる。例えば、物性の改善のために、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、粘増剤、無機塩類、乳化剤及び合成高分子物質などの添加剤を更に含むことができる。これらに加えて、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖及び海藻エキスなどの補助成分を更に含むこともできる。これらの成分は、剤形又は使用目的に応じて、当業者が手軽に選定して配合し、その添加量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内において選ばれる。例えば、これらの成分の添加量は、組成物の総重量に対して0.01〜5重量%、より具体的には0.01〜3重量%の範囲である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳述するが、本発明がこれらの例に限定されることはない。
[実施例1]緑茶種子抽出物の製造
緑茶種子2kgにヘキサン6lを入れ、常温で3回攪拌抽出して脱脂させた後、脱脂された緑茶種子1kgに50%のエタノール4lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間浸漬させた。次いで、ろ過布を用いたろ過及び遠心分離を行って残渣及びろ液を分離し、分離されたろ液を減圧濃縮して得たエキスを水に懸濁した後、エーテル1lで5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500mlで3回抽出した。これから得られた全体の1−ブタノール層を減圧濃縮して1−ブタノールエキスを得、これを少量のメタノールに溶かした後、大量のエチルアセテートに追加して、生成された沈殿物を乾燥させて、緑茶種子抽出物(サポニン粗抽出物)300gを得た。
【0042】
[実施例2]酸加水分解方法による21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3の製造
[2−1]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gに20倍(v/w)の1N HCl−50%メタノール溶液(v/v)を加えて、80℃の水浴槽において8時間加熱還流させて、緑茶種子粗サポニンに結合された糖を加水分解した。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌させた後、沈殿した塩をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=7:1〜3:1)で分離して、0.55gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0043】
[2−2]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gに20倍(v/w)の1M HSO−30%水溶液(v/v)を加えて、90℃の水浴槽において8時間加熱還流させて、緑茶種子粗サポニンに結合された糖を加水分解した。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿した塩をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=7:1〜3:1)で分離して、0.59gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0044】
[2−3]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gに20倍(v/w)の1M HNO−10%水溶液(v/v)を加えて、90℃の水浴槽において8時間加熱還流させて、緑茶種子粗サポニンに結合された糖を加水分解した。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿した塩をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=7:1〜3:1)で分離して、0.39gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0045】
[実施例3]塩基加水分解方法による21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3の製造
[3−1]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを乾燥ピリジン(500ml)に溶かし、ここにナトリウムメトキシド(sodium methoxide)粉末10gを加えて、油浴上において8時間還流反応させて、緑茶種子サポニンに結合された糖を加水分解した。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、精製水で3回洗浄した後にろ過を用いてろ過物を得、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿した塩をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.35gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0046】
[3−2]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gに20倍(v/w)の1M NaOH−20%水溶液(v/v)を加えて80℃で8時間還流反応させて、緑茶種子サポニンに結合された糖を加水分解した。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、精製水で3回洗浄した後にろ過を用いてろ過物を得、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿した塩をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.31gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0047】
[3−3]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gに20倍(v/w)の1M KOH−20%水溶液(v/v)を加えて80℃で8時間還流反応させて、緑茶種子サポニンに結合された糖を加水分解した。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、精製水で3回洗浄した後にろ過を用いてろ過物を得、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿した塩をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.25gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0048】
[実施例4]酵素分解方法による21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3の製造
[4−1]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlの0.1Mの酢酸緩衝溶液(pH4.5)に溶解させ、ここに酵素2.5g(ヘスペリジナーゼ0.5g、ナリンギナーゼ0.5g、セルラーゼ0.5g、β−グルクロニダーゼ0.2g、β−ガラクトシダーゼ0.5g、アミログルコシダーゼ0.3g;シグマ社製)を添加して37℃の水浴上において48時間攪拌させながら、薄層クロマトグラフィーで定期的に確認して、緑茶サポニンが消失すると、熱水(80〜100℃)中において10分間加熱して反応を終えた。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、1.02gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0049】
[4−2]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlの0.1Mの酢酸緩衝溶液(pH6.5)に溶解させ、ここに酵素3.5g(グルコシダーゼ1g、アラビノシダーゼ0.5g、ラムノシダーゼ1g、キシロシダーゼ0.5g、ペクチナーゼ0.5g)を添加して27℃の水浴上において48時間攪拌させながら、薄層クロマトグラフィーで定期的に確認して、緑茶サポニンが消失すると、熱水(80〜100℃)中において10分間加熱して反応を終えた。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、1.53gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0050】
[実施例5]微生物を活用した21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3の製造
[5−1]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して30℃まで冷却した後に予め培養されたアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)KCCM 11885を液体量に対して5〜10%接種して30℃で5日間培養した後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失したことを確認し、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得た。この沈殿物にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.72gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0051】
[5−2]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して27℃まで冷却した後、予め培養されたリゾプスオリーゼ(rhizopus oryzae)を液体量に対して5〜10%接種して27℃で5日間培養した後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失したことを確認し、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得た。この沈殿物にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.92gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0052】
[5−3]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して27℃まで冷却した後、予め培養されたバチルスサブティリス(bacillus subtilis)を液体量に対して5〜10%接種して27℃で2日間培養した後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失したことを確認し、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得た。この沈殿物にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.72gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0053】
[5−4]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して27℃まで冷却した後、予め培養されたリューコノストックメゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)を液体量に対して5〜10%接種して27℃で2日間培養した後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失したことを確認し、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得た。この沈殿物にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.52gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0054】
[5−5]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して27℃まで冷却した後、予め培養されたビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium longum)を液体量に対して5〜10%接種して27℃で2日間培養した後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失したことを確認し、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得た。この沈殿物にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.52gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0055】
[5−6]前記実施例1において得た緑茶種子抽出物10gを100mlのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して27℃まで冷却した後、予め培養されたラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)を液体量に対して5〜10%接種して27℃で2日間培養した後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認して基質が完全に消失したことを確認し、培養液を5,000〜10,000rpmにて遠心分離して回収した沈殿物を蒸留水で3回洗浄した後に、遠心分離して沈殿物を得た。この沈殿物にエタノール(200ml)を加えて3回攪拌した後、沈殿物をろ過を用いて除去した。ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離して、0.42gの21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3を得た。
【0056】
[試験例1]DPPH生成抑制試験(DPPHテスト)
有機ラジカルであるDPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)の還元により(抗酸化剤は酸化される)発生する吸光度の変化を用いて、抗酸化能を評価する方法を用いた。抗酸化度は、DPPHの酸化が抑えられて吸光度が対照群に比べて減少される度合いを測定して、対照群の吸光度に比べて50%以下の吸光度を示す濃度(IC50)を有効抗酸化濃度と評価した。
【0057】
100μM(エタノール中)のDPPH溶液190μlに、実施例1の緑茶種子抽出物、実施例2〜5の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3及び対照試料をそれぞれ10μlずつ混合して反応液を準備した。混合された反応液を37℃で30分間反応した後、540nmにおいて吸光度を測定した。対照試料としては、合成抗酸化剤として汎用されているトロロックス(Trolox)を用いた。それぞれの場合に対するDPPH分析結果は、下記表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
前記表1の結果から、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は非常に優れた抗酸化能を有し、公知の抗酸化剤であるトロロックスよりも抗酸化能に優れていることが分かる。
【0060】
[試験例2]蛍光物質を用いた活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)生成抑制能試験
試験に供された細胞株は、人間角質形成細胞HaCaT細胞株(Human keratinocytes HaCaT cell line)であり、蛍光測定用96ウェルブラックプレートに各プレート当たり2.0×10個分注し、ペニシリン/ストレプトマイシン入りダルベッコ変法イーグル培地〔DMEM:Dulbeccos Modification of Eagles Medium、牛胎児血清(FBS)10%〕を用いて、37℃、5%のCOの条件下で1日間培養した後、試験試料を処理した。試験試料としては、実施例1の緑茶種子抽出物、実施例2〜5の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3及び対照試料を50ppmずつ用い、対照試料としては、合成抗酸化剤として広く用いられているトロロックス(Trolox)を用いた。次いで、培地としてペニシリン/ストレプトマイシン入り無血清ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(FBSなし)を用いて、37℃、5%のCOの条件下で1日間培養した。
【0061】
試験試料を入れて24時間培養した後、HCSS(HEPES緩衝生理食塩水)で洗浄し切れずに残留する培地を除去し、HCSSに20μMで準備されたDCFH−DA(2',7'−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、モレキューラープローブ社製)を100μl加えた後、37℃、5%のCOの条件下で20分間培養し、HCSSで洗浄した。次いで、試料により処理されたHCSSを100μl加えた後、初期に活性酸素種(ROS)により酸化されたDCF(ジクロロフルオレセイン)の蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Ex=485nm、Em=530nm)を用いて測定した。次いで、紫外線B波(UVB)(30mJ/cm)を照射し、処理直後及び処理してから3時間後の蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Ex=485nm、Em=530nm)を用いて測定した。
【0062】
ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた場合を対照群とし、これを基準として各試験物質の活性酸素種(ROS)の生成抑制能を求め(対照群の%)、実験結果を下記表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
前記表2の結果から、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、活性酸素種(ROS)の生成抑制能が良好であり、公知の抗酸化剤であるトロロックスよりも活性酸素種(ROS)の生成抑制能に優れていることが分かる。
【0065】
[試験例3]ラットの色素細胞を用いたメラニン生成抑制効果の測定
C57BL/6マウス由来のラットの色素細胞(Mel−Ab cell)(Dooley, T.P. et al, Skin pharmacol, 7, pp 188−200)を、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に10%の牛胎盤血清、100nMの2−O−テトラデカノイルホルボール−13−アテート、1nMのコレラトキシンを添加した培地において、37℃、5%のCOの条件下で培養した。培養されたMel−Ab細胞を0.25%のトリプシン−EDTAを用いて分離し、24ウェルプレートに10細胞/ウェル(cells/well)の濃度で細胞を培養し、2日目から3日間連続的に各試験試料を10ppmずつ添加した。試験試料としては、実施例1の緑茶種子抽出物、実施例2〜5の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3及び対照試料を用い、対照試料としては公知の美白剤であるヒドロキノンを用いて陽性対照群とし、試験試料を処理しなかったものを陰性対照群とした。試験試料を添加した後に37℃、5%のCOの条件下で1日間培養した後、培養液を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて洗浄した後、1Nの水酸化ナトリウムを用いて細胞を溶かして400nmにおいて吸光度を測定した。測定された結果を下記の数式1によりメラニン生成抑制率を計算し、その結果を下記表3に示す〔ドゥーリー(Dooley)の方法〕。
【0066】
[数式1]
メラニンの生成抑制率(%)=100−(各試験物質の吸光度/陰性対照群の吸光度)×100
【0067】
【表3】
【0068】
上記表3の結果から、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、優れたメラニンの生成抑制率を示し、公知の美白剤であるヒドロキノンよりも優れたメラニンの生成抑制率を示すことが確認される。
【0069】
[試験例4]人体の皮膚に対する皮膚美白効果の試験
前記実施例4において得た21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3に対する人体の皮膚に対する皮膚美白効果を調べるために、下記の実験を行った。
【0070】
まず、健康な12名の男子を対象として被検者の上膊部位に直径1.5cmの穴付き不透明テープを貼り付けた後、各被検者の最小紅斑量(Minimal Erythema Dose)の約1.5〜2倍の紫外線B波(UVB)を照射して皮膚の黒化を誘導した。
【0071】
紫外線B波を照射した後、実施例4−1の21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3 1%(溶媒は、1,3−ブチレングリコール:エタノール=7:3)、ヒドロキノン1%及び溶媒(vehicle、ビークル)(陰性対照群)1%をそれぞれ塗布し、一箇所には何も塗布しなかった状態で、10週間に亘って状態の変化を観察した。1週おきに皮膚の色相を色差計CR2002(日本、ミノルタ社製)を用いて測定した。
【0072】
次いで、前記各試験物質の塗布開始時点及び塗布完了時点における皮膚色の差(ΔL)を下記の数式2により計算し、これを下記表4に示す。一方、美白効果は、試料塗布部位及び対照群部位のΔLを比較して判定し、ΔL値が約2である場合には、沈着された色素の美白化が顕著であり、約1.5以上であれば、美白効果があると判定される。
【0073】
[数式2]
ΔL=塗布完了時点におけるL値−塗布開始時点におけるL
【0074】
【表4】
【0075】
前記表4の結果から、21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3は、皮膚色を明るくし、公知の美白剤であるヒドロキノンと同じレベルの皮膚色の明るさ度を示すことが確認される。これは、本発明において用いられる21−O−アンゲロイルテアサポゲノールE3が紫外線により生成された色素の沈着を改善して皮膚色を明るくするためであると認められる。