特許第6255508号(P6255508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255508
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20171218BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/06 301F
   H01L21/318 B
   H01L21/31 C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-554008(P2016-554008)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2015074230
(87)【国際公開番号】WO2016059889
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210071(P2014-210071)
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】谷本 佳美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄史
(72)【発明者】
【氏名】木下 多賀雄
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−055042(JP,A)
【文献】 特開2009−010107(JP,A)
【文献】 特開2012−033688(JP,A)
【文献】 特開2009−164300(JP,A)
【文献】 特開2014−072391(JP,A)
【文献】 特開2010−232452(JP,A)
【文献】 特開2008−205392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/31
H01L 21/318
H01L 29/06
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)と、
上記基板(1)上に形成されると共に、第1窒化物半導体層(3)と、上記第1窒化物半導体層(3)とは組成が異なる第2窒化物半導体層(4)とを含み、上記第1窒化物半導体層(3)と上記第2窒化物半導体層(4)とのヘテロ界面に2次元電子ガスを発生する窒化物半導体積層構造(5)と、
上記窒化物半導体積層構造(5)の表面における少なくとも一部を覆う、Si‐H結合量が6.0×1021cm−3以下である窒化シリコンから成る絶縁膜(9)と
を備え
上記絶縁膜(9)を構成する上記窒化シリコンは、N‐H結合量が1.0×1021cm−3以上であることを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化物半導体装置において、
上記絶縁膜(9)を第1絶縁膜(9)とし、
上記第1絶縁膜(9)上に積層されると共に、Si‐H結合量が上記第1絶縁膜(9)よりも多い窒化シリコンから成る第2絶縁膜(15)を備えた
ことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項3】
請求項に記載の窒化物半導体装置において、
上記第1絶縁膜(9)と上記第2絶縁膜(15)との膜厚の合計値が、25nm以上である
ことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の窒化物半導体装置において、
上記第2絶縁膜(15)上における少なくとも一部を覆う、Si‐H結合量が上記第2絶縁膜(15)よりも少ない窒化シリコンから成る第3絶縁膜(21)を備えた
ことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置を製造する窒化物半導体装置の製造方法であって、
上記絶縁膜(9)を800℃以上でアニールする
ことを特徴とする窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組成の異なる複数の層からなる窒化物半導体積層構造のヘテロ界面に発生する2次元電子ガス(2DEG)を利用した電界効果トランジスタでは、電圧印可時にオン抵抗が変動する電流コラプスと呼ばれる現象が発生するが、窒化物半導体の表面上にSiN(窒化シリコン)膜を積層することで上記電流コラプスを抑制できることが知られている。ところが、上記電流コラプスを抑制する効果はSiN膜の特性に影響されるため、様々な研究および開発が行われている。
【0003】
上記電流コラプスを抑制する効果が高いSiN膜には、電流がリークするという欠点がある。そのために、これまで、窒化物半導体の表面上に積層するSiN膜を、水素を多く含んで上記電流コラプスを抑制する役割を持った層と、水素が少なくリーク電流を抑制する役割を持った層との2層構造とする提案がなされている。
【0004】
このような2層構造のSiN膜を窒化物半導体の表面上に積層した窒化物半導体装置として、特開2008‐205392号公報(特許文献1)に開示された半導体装置がある。この特許文献1に開示された半導体装置においては、GaN電子走行層,AlGaN電子供給層およびGaN表面層を含む化合物半導体領域の表面上に、Si‐HまたはN‐Hの濃度が高い非ストイキオメトリの第1SiN膜と、Si‐HまたはN‐H結合が少なく絶縁性に優れた略ストイキオメトリの第2SiN膜とを積層させることによって、上記電流コラプスの抑制とリーク電流の抑制との両立を図っている。
【0005】
また、特開2009‐164300号公報(特許文献2)に開示されたような半導体装置がある。この特許文献2に開示された半導体装置においては、GaN電子走行層,AlGaN電子供給層およびGaN表面層を含む化合物半導体積層構造の表面上に、Si‐H結合の濃度とN‐H結合の濃度を足した合計濃度が低くて絶縁性に優れたストイキオメトリの第1SiN膜と、Si‐H結合の濃度とN‐H結合の濃度を足した合計濃度が高くて化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた非ストイキオメトリの第2SiN膜とを積層させることによって、上記電流コラプスの抑制とリーク電流の抑制との両立を図っている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および上記特許文献2に開示された従来の半導体装置においては、以下のような問題がある。
【0007】
すなわち、上述したように窒化物半導体を含む化合物半導体領域の表面上にSiN膜を2層に積層しても、高温高電圧ストレス試験を実施するとリーク電流が増加し、スイッチングデバイスとして長時間の使用に耐えられないという問題が確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008‐205392号公報
【特許文献2】特開2009‐164300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、窒化物半導体層上に積層するSiN膜の特性を適正化し、高温高電圧ストレス試験の歩留まりが高く、スイッチングデバイスとして長時間の使用に耐えることが可能な窒化物半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の窒化物半導体装置は、
基板と、
上記基板上に形成されると共に、第1窒化物半導体層と、上記第1窒化物半導体層とは組成が異なる第2窒化物半導体層とを含み、上記第1窒化物半導体層と上記第2窒化物半導体層とのヘテロ界面に2次元電子ガスを発生する窒化物半導体積層構造と、
上記窒化物半導体積層構造の表面における少なくとも一部を覆う、Si‐H結合量が6.0×1021cm−3以下である窒化シリコンから成る絶縁膜と
を備え
上記絶縁膜を構成する上記窒化シリコンは、N‐H結合量が1.0×1021cm−3以上であることを特徴としている。
【0012】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記絶縁膜を第1絶縁膜とし、
上記第1絶縁膜上に積層されると共に、Si‐H結合量が上記第1絶縁膜よりも多い窒化シリコンから成る第2絶縁膜を備えている。
【0013】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記第1絶縁膜と上記第2絶縁膜との膜厚の合計値が、25nm以上である。
【0014】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記第2絶縁膜上における少なくとも一部を覆う、Si‐H結合量が上記第2絶縁膜よりも少ない窒化シリコンから成る第3絶縁膜を備えている。
【0015】
この発明の窒化物半導体装置の製造方法は、
この発明または一実施形態の窒化物半導体装置を製造する窒化物半導体装置の製造方法であって、
上記絶縁膜を800℃以上でアニールすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以上より明らかなように、この発明の窒化物半導体装置は、上記窒化物半導体積層構造の表面の少なくとも一部を覆う、窒化シリコンから成る絶縁膜のSi‐H結合量を6.0×1021cm−3以下にしている。したがって、本窒化物半導体装置を用いた半導体素子に対して高温高電圧ストレス試験を行った場合に、試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超える不良の発生を防止することができ、上記絶縁膜の特性を適正化することができる。
【0017】
すなわち、この発明によれば、スイッチングデバイスとして長時間の使用に耐えることが可能な窒化物半導体装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の窒化物半導体装置としての窒化物半導体HFETにおける断面図である。
図2図1に示す窒化物半導体HFETの製造工程における断面図である。
図3図2に続く工程における断面図である。
図4図3に続く工程における断面図である。
図5図4に続く工程における断面図である。
図6図5に続く工程における断面図である。
図7】高温高電圧ストレス試験の歩留まりと絶縁膜のSi‐H結合量との関係を示す図である。
図8図1とは異なる窒化物半導体HFETにおける断面図である。
図9図8に示す窒化物半導体HFETの製造工程における断面図で図である。
図10図1および図8とは異なる窒化物半導体HFETにおける断面図である。
図11図10に示す窒化物半導体HFETの製造工程における断面図である。
図12図11に続く工程における断面図である。
図13図12に続く工程における断面図である。
図14図13に続く工程における断面図である。
図15】絶縁膜のSi−H結合量とアニール温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。尚、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ,幅,厚さ,深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法を表してはいない。
【0020】
・第1実施の形態
図1は、本第1実施の形態の窒化物半導体装置としての窒化物半導体HFET(ヘテロ接合電界効果トランジスタ)における断面図である。
【0021】
本実施の形態における窒化物半導体HFETは、図1に示すように、Siからなる基板1上に、アンドープAlGaNからなるバッファ層2と、アンドープGaNからなるチャネル層3と、アンドープAlGa1−xN(0<x<1)からなるバリア層4が、この順序で積層されて形成されている。AlGa1−xNにおけるAl混晶比xは、本実施の形態においては、x=0.17としている。
【0022】
上記チャネル層3とバリア層4との界面に、上記2次元電子ガスが発生する。尚、本実施の形態においては、バッファ層2とチャネル層3とバリア層4とで窒化物半導体積層構造5を構成している。尚、本実施の形態においては、バリア層4の厚みを30nmとしている。
【0023】
上記窒化物半導体積層構造5上に、予め設定された間隔を空けてソース電極6とドレイン電極7が形成されている。ここで、ソース電極6およびドレイン電極7は、一例としてTi,Al,TiNを順に積層してなるTi/Al/TiNで構成されている。尚、ソース電極6およびドレイン電極7は、窒化物半導体積層構造5におけるソース電極6とドレイン電極7とが形成される箇所にチャネル層3に至るリセスを形成し、電極材料をスパッタリングしてアニールすることよって、オーミックコンタクトを成すように形成されている。
【0024】
上記窒化物半導体積層構造5上であって、且つソース電極6とドレイン電極7との間には、ゲート電極8が形成されている。このゲート電極8は、例えば、WNで作製されている。
【0025】
上記窒化物半導体積層構造5上におけるソース電極6からゲート電極8までの間、および、ゲート電極8からドレイン電極7との間に、SiN(窒化シリコン)からなる絶縁膜9が形成されている。ここで、ゲート電極8におけるソース電極6側の端部は、庇状に絶縁膜9上に延在するフィールドプレート部8aを構成している。また、ゲート電極8におけるドレイン電極7側の端部は、庇状に絶縁膜9上に延在するフィールドプレート部8bを構成している。
【0026】
本実施の形態においては、上記絶縁膜9として、Si‐H結合量が2.0×1021cm−3であり、N‐H結合量が4.0×1021cm−3であり、屈折率が1.91であり、比誘電率が7.2のSiN膜を用いている。また、絶縁膜9の厚みを200nmとしている。
【0027】
詳細は後述するが、上記絶縁膜9は、高温高電圧ストレス試験によるリーク電流の増加を抑制する機能を有している。
【0028】
尚、上記絶縁膜9の屈折率は、同じ条件で成膜した単層膜をエリプソメトリで波長633nmで測定することによって得られた値である。また、比誘電率は、同じ条件で成膜した単層膜をメタルで挟んで作成した構造体を、100kHzの周波数で測定した容量値から算出した値である。後述する実施の形態において用いる第2絶縁膜および第3絶縁膜の屈折率および比誘電率の場合も同様にして求めている。
【0029】
また、上記絶縁膜9のSi−H結合量とN−H結合量は、同じ条件で成膜した単層膜をFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)によって測定し、ピーク面積と、非特許文献(W. A. Lanford and M. J. Rand, J. Appl. Phys. 49, 2473 (1978))に記載の変換式とから算出することによって得られた値である。
【0030】
尚、後述する実施の形態において用いる第2絶縁膜および第3絶縁膜のSi−H結合量およびN−H結合量の場合も、絶縁膜9の場合と同様にして求めている。
【0031】
次に、本実施の形態における窒化物半導体HFETの製造方法を、図2図7に従って説明する。
【0032】
先ず、図2に示すように、Si基板1上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法を用いて、アンドープAlGaNバッファ層2と、アンドープGaNチャネル層3と、アンドープAlGaNバリア層4とを、順に形成する。
【0033】
次に、図3に示すように、上記AlGaNバリア層4上に、絶縁膜9であるSiN膜を、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって成膜する。この絶縁膜9の成長温度は、一例として225℃としているが、100℃〜400℃の範囲内で他の温度に設定してもよい。
【0034】
さらに、上記絶縁膜9上に、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後、例えばBHF(バッファード弗酸)を用いたウェットエッチングによって、絶縁膜9に開口部10を形成する。尚、上記ウェットエッチングに替えて、ドライエッチングによって開口部10を形成してもよい。
【0035】
次に、図3の状態で、例えば、800℃で60分のアニール(熱処理)を窒素雰囲気中で行う。このアニール処理によって、SiN膜9中の水素が脱離して、Si‐H結合量が低下し、BHFによるウェットエッチングレートが低下する。このアニールによって、絶縁膜9のSi‐H結合量が2.0×1021cm−3となる。
【0036】
尚、上記絶縁膜9をアニールするための温度は、一例として800℃としているが、絶縁膜9のSi−H結合量を6.0×1021cm−3以下とすることを目的とするのであれば、600℃以上としてもよい。すなわち、絶縁膜9を600℃でアニールすれば、図15に示すように、Si−H結合量を6.0×1021cm−3以下とすることができる。このとき、絶縁膜9をアニールするための温度を800℃以上にすれば、電流コラプスを抑制する効果も得られる。
【0037】
次に、図4に示すように、上記絶縁膜9上および開口部10内にWNをスパッタリングし、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後に、ドライエッチングを行ってゲート電極8を形成する。
【0038】
次に、図5に示すように、上記絶縁膜9上およびゲート電極8上に、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後、絶縁膜9およびアンドープAlGaNバリア層4と、アンドープGaNチャネル層3の一部とを、ドライエッチングにより除去して開口部11,12を形成する。尚、上記ドライエッチングに替えて、ウェットエッチングによって、絶縁膜9に開口部11,12を形成してもよい。
【0039】
次に、図6に示すように、上記絶縁膜9上および開口部11,12内に、スパッタリングによってTi,Al,TiNを順に積層することにより、Ti/Al/TiN積層金属膜を形成する。ここで、TiN層は、後工程からTi/Al層を保護するためのキャップ層である。尚、上記スパッタリングに替えて、Ti,Alを蒸着してもよい。この後、例えば400℃以上且つ500℃以下で10分間以上アニールすることによって、GaNチャネル層3と上記Ti/Al/TiN積層金属膜との間にオーミックコンタクトが得られる。
【0040】
その後、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後、ドライエッチングによってソース電極6およびドレイン電極7を形成する。こうして、本窒化物半導体HFETが完成する。
【0041】
発明者等は、上記窒化物半導体積層構造5上に形成する絶縁膜9について、種々検討を行った。その結果、Si‐H結合量が6.0×1021cm−3以下のSiNからなる絶縁膜を用いることによって、高温高電圧ストレス試験によるリーク電流の増加を抑制できることを見出した。
【0042】
ここで、上記高温高電圧ストレス試験とは、本窒化物半導体HFETが通常用いられる温度よりも高い温度に保持した状態で、且つスイッチング動作のオフ状態において、本窒化物半導体HFETが通常用いられるオフ電圧よりも高いオフ電圧によって一定時間継続させた後に、リーク電流の増加を評価する加速試験である。上記リーク電流の増加が抑制されて、リーク電流によるHFETの破壊が生じないことが、本窒化物半導体HFETをスイッチングデバイスとして使用する際に必須とされている。
【0043】
図7に、上記高温高電圧ストレス試験の歩留まりと、窒化物半導体上に形成される絶縁膜9のSi‐H結合量との関係を示す。この試験は、本窒化物半導体HFETをオフの状態になるようゲート電圧を設定し、180℃の環境温度の下、ドレイン電極7に650Vの電圧を100時間印加して行った。この試験前後においてHFETのリーク電流を測定し、試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超えた素子を不良と判定し、歩留まりを算出している。
【0044】
図7から分かるように、上記絶縁膜9として用いたSiNの上記Si‐H結合量が6×1021cm−3以下のときに、高温高電圧ストレス試験の歩留まりを100%にすることができ、スイッチングデバイスとして使用可能であることを確認できる。
【0045】
さらに、上記絶縁膜9として用いるSiNは、上記SiNの上記N‐H結合量を、1.0×1021cm−3以上にすることによって、上記高温高電圧ストレス試験において、本窒化物半導体HFETをオフの状態でドレイン電極7に650Vの電圧の印加時間を200時間としても歩留りを100%にすることができる。
【0046】
また、上記SiNからなる絶縁膜9に800℃以上のアニールを行えば、電流コラプスを抑制する効果も得られる。
【0047】
・第2実施の形態
図8は、本第2実施の形態の窒化物半導体HFETにおける断面図である。
【0048】
本実施の形態における窒化物半導体HFETは、図8に示すように、上記第1の実施形態と同様の窒化物半導体積層構造5を有している。そして、窒化物半導体積層構造5上におけるソース電極6からゲート電極8までの間、および、ゲート電極8からドレイン電極7との間に形成される絶縁膜を、上記第1実施の形態における絶縁膜9と全く同じSiN(窒化シリコン)からなる第1絶縁膜9と、この第1絶縁膜9上に形成されたSiNからなる第2絶縁膜15とで構成されている。その他は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
本実施の形態においては、上記第1絶縁膜9のSiN膜として、Si‐H結合量が2.0×1021cm−3であり、N‐H結合量が4.0×1021cm−3であり、屈折率が1.91であり、比誘電率が7.2であるSiN膜を用いている。また、第1絶縁膜9の厚みを10nmとしている。
【0050】
また、上記第2絶縁膜15として、Si‐H結合量が6.0×1021cm−3であり、N‐H結合量が1.0×1021cm−3であり、屈折率が1.99であり、比誘電率が7.8であるSiN膜を用いている。また、第2絶縁膜15の厚みを200nmとしている。
【0051】
詳細は後述するが、この第2絶縁膜15は、本窒化物半導体HFETの作成工程において、第1絶縁膜9を保護する機能を有している。
【0052】
次に、本実施の形態における窒化物半導体HFETの製造方法を、図2および図9に従って説明する。
【0053】
先ず、上記第1実施の形態の場合と同様にして、図2に示すように、Si基板1上に、アンドープAlGaNバッファ層2、アンドープGaNチャネル層3、アンドープAlGaNバリア層4を、順に形成する。そして、AlGaNバリア層4上に、第1実施の形態における絶縁膜9の場合と同様にして、第1絶縁膜9であるSiN膜をプラズマCVD法によって成膜する。
【0054】
引き続いて、上記第2絶縁膜15となるSiN膜を、プラズマCVD法によって成膜する。この第1絶縁膜9および第2絶縁膜15の成長温度は、一例として225℃としているが、100℃〜400℃の範囲内で他の温度に設定してもよい。
【0055】
次に、上記第2絶縁膜15上に、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後に、例えば上記BHFを用いたウェットエッチングによって、図9に示すように第1絶縁膜9および第2絶縁膜15に開口部16を形成する。尚、上記ウェットエッチングに替えて、ドライエッチングによって開口部16を形成してもよい。
【0056】
その際に、上記第1絶縁膜9上を、この第1絶縁膜9よりもSi‐H結合量の多い第2絶縁膜15で覆うことによって、上記フォトリソグラフィ工程にて行われるレジスト剥離の際における薬液処理やプラズマ処理によって第1絶縁膜9が改質することを防止することができる。
【0057】
次に、図9に示す状態において、800℃で60分のアニール(熱処理)を窒素雰囲気中で行う。このアニール処理によって、SiN膜中の水素が脱離して、Si‐H結合量が低下し、上記BHFによるウェットエッチングレートが低下する。このアニールによって、第1絶縁膜9のSi‐H結合量が2.0×1021cm−3となり、第2絶縁膜15のSi‐H結合量が6.0×1021cm−3となる。
【0058】
次に、上記第2絶縁膜15上および開口部16内にWNをスパッタリングする。以後、上記第1実施の形態において絶縁膜9上に対して実行する工程と同じ工程を、第2絶縁膜15上に対して実行することによって、本窒化物半導体HFETが完成する。
【0059】
発明者等は、上記第1絶縁膜9上に形成する第2絶縁膜15について検討を行った。その結果、Si‐H結合量が第1絶縁膜9よりも多いSiNからなり、レジスト剥離の際における薬液処理やプラズマ処理に耐性のある絶縁膜を用いることによって、第1絶縁膜9を保護することができ、高温高電圧ストレス試験によるリーク電流の増加をさらに抑制できることを見出した。
【0060】
・第3実施の形態
図10は、本第3実施の形態の窒化物半導体HFETにおける断面図である。
【0061】
本実施の形態における窒化物半導体HFETは、図10に示すように、窒化物半導体積層構造5上におけるソース電極6からゲート電極8までの間、および、ゲート電極8からドレイン電極7との間に形成される絶縁膜を、上記第1実施の形態における絶縁膜9と全く同じSiN(窒化シリコン)からなる第1絶縁膜9と、この第1絶縁膜9上に上記第2実施の形態における第2絶縁膜15と同様にして形成されたSiNからなる第2絶縁膜15と、この第2絶縁膜15上に形成されたSiNからなる第3絶縁膜21とで、構成している。その他は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
本実施の形態においては、上記第1絶縁膜9として、上記Si‐H結合量が2.0×1021cm−3であり、N‐H結合量が4.0×1021cm−3であり、屈折率が1.91であり、比誘電率が7.2であるSiN膜を用いている。また、第1絶縁膜9の厚みを10nmとしている。
【0063】
また、上記第2絶縁膜15として、Si‐H結合量が8.0×1021cm−3であり、N‐H結合量が2.0×1021cm−3であり、屈折率が1.99であり、比誘電率が7.8であるSiN膜を用いている。また、第2絶縁膜15の厚みを20nmとしている。
【0064】
また、上記第3絶縁膜21として、Si‐H結合量が2.0×1021cm−3であり、N‐H結合量が1.3×1022cm−3であり、屈折率が1.87であり、比誘電率が6.8であるSiN膜を用いている。また、第3絶縁膜21の厚みを150nmとしている。
【0065】
上記第3絶縁膜21は、第2絶縁膜15よりもSi‐H結合量が少ないため、絶縁性が高く、ゲート電極8からのリーク電流を低減する機能を有している。
【0066】
次に、本実施の形態における窒化物半導体HFETの製造方法を、図9および図11図14に従って説明する。
【0067】
先ず、上記第1実施の形態および第2の実施の形態と同様にして、図9に示すように、Si基板1上に、アンドープAlGaNバッファ層2、アンドープGaNチャネル層3、アンドープAlGaNバリア層4を、順に形成する。そして、AlGaNバリア層4上に、第1絶縁膜9となるSiN膜を成膜する。引き続いて、上記第2の実施の形態と同様にして、第2絶縁膜15となるSiN膜を成膜する。この状態において、窒素雰囲気中で800℃で60分のアニールを行う。このアニールによって、第1絶縁膜9のSi‐H結合量が2.0×1021cm−3となり、第2絶縁膜15のSi‐H結合量が6.0×1021cm−3となる。さらに、上記第2の実施の形態と同様にして、第1絶縁膜9および第2絶縁膜15に開口部16を形成する。以下、本実施の形態においては、開口部16を第1開口部16と言う。
【0068】
次に、上記第2絶縁膜15上に、第3絶縁膜21となるSiN膜を、プラズマCVD法によって成膜する。第3絶縁膜21の成長温度は、一例として225℃としているが、100℃〜400℃の範囲内で他の温度に設定してもよい。
【0069】
次に、図11に示すように、上記第3絶縁膜21上に、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後、例えば上記BHFを用いたウェットエッチングによって、第3絶縁膜21上における開口部16の個所に第2開口部22を形成する。
【0070】
その場合、上記第3絶縁膜21のウェットエッチングレートが、アニールされた第2絶縁膜15のウェットエッチングレートよりも速いため、第2開口部22内には第1開口部16の縁で成る段差形状23が形成される。
【0071】
次に、図11に示す状態において、680℃で60分のアニール(熱処理)を窒素雰囲気中で行う。このアニール処理によって、SiN膜中の水素が脱離して、Si‐H結合量が低下し、上記BHFによるウェットエッチングレートが低下する。このアニールによって、第1絶縁膜9のSi‐H結合量が3×1021cm−3となり、第2絶縁膜15のSi‐H結合量が8×1021cm−3となり、第3絶縁膜21のSi‐H結合量が2×1021cm−3となるのである。
【0072】
次に、図12に示すように、上記第3絶縁膜21上および第1,第2開口部16,22内にWNをスパッタリングし、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後、ドライエッチングを用いてゲート電極8を形成する。
【0073】
その際に、上記第2開口部22には段差形状23が形成されているため、ゲート電極8におけるソース電極6側の端部は、庇状に第3絶縁膜21上に延在する先端部8cと、第3絶縁膜21における第2開口部22の開口面を覆う中間部8dとを有するフィールドプレート部8aが形成される。また、ゲート電極8におけるドレイン電極7側の端部は、庇状に第3絶縁膜21上に延在する先端部8eと、第3絶縁膜21における第2開口部22の開口面を覆う中間部8fとを有するフィールドプレート部8bが形成される。
【0074】
このフィールドプレート8a,8bは、本窒化物半導体HFETをスイッチングデバイスとして使用する際に、オフ時にゲート電極8近傍の窒化物半導体積層構造5や絶縁膜9,15,21に掛かる電界強度を緩和する機能を有している。
【0075】
次に、図13に示すように、上記第3絶縁膜21上およびゲート電極8上に、一般的に用いられるフォトリソグラフィ工程によるレジストパターン形成を行った後、例えば上記BHFを用いたウェットエッチングによって、第3絶縁膜21に開口部を形成する。引き続き、同じレジストパターンを用いて、第2絶縁膜15,第1絶縁膜9およびアンドープAlGaNバリア層4と、アンドープGaNチャネル層3の一部とを、ドライエッチングにより除去して開口部11,12を形成する。尚、第3絶縁膜21に、上記ウェットエッチングに替えてドライエッチングによって上記開口部を形成してもよい。
【0076】
次に、図14に示すように、上記第3絶縁膜21上および開口部11,12内に、スパッタリングによってTi,Al,TiNを順に積層することにより、Ti/Al/TiN積層金属膜を形成する。以後、上記第1実施の形態においてTi/Al/TiN積層金属膜に対して実行する工程と同じ工程を、上記Ti/Al/TiN積層金属膜に対して実行することによってソース電極6およびドレイン電極7を形成する。こうして、本窒化物半導体HFETが完成する。
【0077】
発明者等は、上記第2絶縁膜15上に形成する第3絶縁膜21について検討を行った。その結果、第3絶縁膜21として、Si‐H結合量が第2絶縁膜15よりも少ないSiNからなる絶縁膜を用いることによって、絶縁性を高くしてゲート電極8からのリークを低減できることを見出した。また、ゲート電極8にフィールドプレート部8a,8bを形成することによって、オフ時にゲート電極8近傍の窒化物半導体積層構造5や絶縁膜9,15,21に掛かる電界強度を緩和でき、高温高電圧ストレス試験によるリーク電流の増加をさらに抑制できることを見出した。
【0078】
尚、この発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、上記基板や窒化物半導体積層構造5や上記各絶縁膜や各電極における素材や寸法等は、特許請求の範囲内で種々変更しても差し支えない。
【0079】
例えば、上記各実施の形態においては、Si基板を用いた窒化物半導体HFETについて説明した。しかしながら、この発明は、Si基板に限らず、サファイヤ基板やSiC基板を用いてもよく、GaN基板にAlGaN層を成長させた窒化物半導体からなる基板上に窒化物半導体層を成長させてもよい。また、窒化物半導体積層構造の構成として、チャネル層3とバリア層4との間にヘテロ改善層を形成してもよい。
【0080】
また、上記各実施の形態においては、上記窒化物半導体積層構造5の構成として、GaNチャネル層3を用いているが、GaNチャネル層3に替えて、AlGaNバリア層4よりもバンドギャップの小さい組成を有するAlGaN層を用いてもよい。さらに、AlGaNバリア層4上に、キャップ層として、例えばGaNからなる約1nmの厚さの層を設けてもよい。
【0081】
上記バリア層4の膜厚としては、一般的に20nm〜40nmがよく使用されるが、特に限定されるものではない。例えば、所望のシートキャリア濃度や所望の閾値電圧等を得るために、自由に設定してよい。さらに、上記各実施の形態においては、バリア層4として、混晶比x=0.17%のAlGa1−xNを用いている。しかしながら、上記2DEGを誘起し、トランジスタとして動作する結晶性であれば、特に限定されるものではない。
【0082】
また、上記各実施の形態においては、絶縁膜9を800℃でアニールしているが、アニールの温度は600℃以上であればよい。絶縁膜9を600℃以上でアニールすれば、Si−H結合量を6.0×1021cm−3以下とすることができる。
【0083】
また、上記第1実施の形態および第2実施の形態においては、絶縁膜9のアニールを開口部16の形成後に実施している一方、上記第3実施の形態においては、絶縁膜9のアニールを開口部16の形成前に実施しているが、第1〜第3実施形態のうちのいずれの方法でもよく、絶縁膜9を形成してから、ゲート電極またはオーミック電極のいずれかを形成するまでに、絶縁膜9のアニールを実施すればよい。
【0084】
また、上記各実施の形態においては、上記ゲート電極8の材料としてWNを用いているが、上記WNに限らず、例えばTiNやNi/Au等で形成しても差し支えない。
【0085】
また、上記各実施の形態においては、上記Ti/Al/TiNを積層してソース電極6およびドレイン電極7としてのオーミック電極を形成したが、これに限らず上記キャップ層であるTiNは無くともよい。また、スパッタリングによってTi/Alを積層した後、その上にAu,Ag,Pt等を積層してもよい。また、上記スパッタリングに替えて、上記Ti,Alを蒸着してもよい。
【0086】
また、上記第2実施の形態および上記第3実施の形態において、上記第1絶縁膜9の膜厚は、数nm〜20nmが望ましい。膜厚が薄すぎると、高温高電圧ストレス試験の歩留まりが低下する。これに対し、上記膜厚が厚すぎると、ウェットエッチングによってゲート電極8用の開口部16を形成する際に、第1絶縁膜9にサイドエッチングが生じ、空隙が形成されてしまうためである。
【0087】
さらに、上記第1絶縁膜9と第2絶縁膜15との合計の膜厚は、25nm〜200nmが望ましい。膜厚が薄すぎると、レジスト剥離時の薬液処理やプラズマ処理等によって第1絶縁膜9が改質することがあるためである。これに対し、膜厚が厚すぎると、フィールドプレート8a,8bの効果が小さくなるためである。
【0088】
また、上記第3実施の形態において、上記第3絶縁膜21の膜厚は、100nm〜数μmが望ましい。膜厚が薄すぎると、窒化物半導体積層構造5の表面の電界が高くなってしまうためである。これに対し、膜厚が厚すぎると、第3絶縁膜21による応力が大きくなってウエハが反るという問題が生ずるためである。
【0089】
以下、この発明を纏めると、この発明の窒化物半導体装置は、
基板1と、
上記基板1上に形成されると共に、第1窒化物半導体層3と、上記第1窒化物半導体層3とは組成が異なる第2窒化物半導体層4とを含み、上記第1窒化物半導体層3と上記第2窒化物半導体層4とのヘテロ界面に2次元電子ガスを発生する窒化物半導体積層構造5と、
上記窒化物半導体積層構造5の表面における少なくとも一部を覆う、Si‐H結合量が6.0×1021cm−3以下である窒化シリコンから成る絶縁膜9と
を備えたことを特徴としている。
【0090】
図7より、上記絶縁膜9として用いる上記窒化シリコンにおけるSi‐H結合量が6×1021cm−3以下の場合に、高温高電圧ストレス試験の歩留まりを100%にすることができること分かる。
【0091】
上記構成によれば、上記窒化物半導体積層構造5の表面の少なくとも一部を覆う、窒化シリコンから成る絶縁膜9のSi‐H結合量を6.0×1021cm−3以下にしている。したがって、本窒化物半導体装置を用いた半導体素子に対して高温高電圧ストレス試験を行った場合に、試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超える不良はなく、上記絶縁膜9の特性を適正化することができる。
【0092】
すなわち、スイッチングデバイスとして長時間の使用に耐えることが可能な窒化物半導体装置を提供することが可能になる。
【0093】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記絶縁膜9を構成する上記窒化シリコンは、屈折率が1.95以下である。
【0094】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記絶縁膜9を構成する上記窒化シリコンは、N‐H結合量が1.0×1021cm−3以上である。
【0095】
この実施の形態によれば、上記絶縁膜9におけるN‐H結合量は、1.0×1021cm−3以上である。したがって、本窒化物半導体装置を用いた半導体素子に対して高温高電圧ストレス試験を、条件を厳しくして行っても、試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超える不良はなく、上記絶縁膜9の特性を適正化することができる。
【0096】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記絶縁膜9を構成する上記窒化シリコンは、100kHzにおける誘電率が6よりも大きく且つ8よりも小さい。
【0097】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記絶縁膜9を第1絶縁膜とし、
上記第1絶縁膜9上に積層されると共に、Si‐H結合量が上記第1絶縁膜9よりも多い窒化シリコンから成る第2絶縁膜15を備えている。
【0098】
この実施の形態によれば、上記高温高電圧ストレス試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超えることがない第1絶縁膜9上に積層されている第2絶縁膜15は、上記第1絶縁膜9よりもSi‐H結合量が多い窒化シリコンから成る絶縁膜を用いている。したがって、第2絶縁膜15はレジスト剥離の際における薬液処理やプラズマ処理に耐性があり、安定化作用に優れており、上記第1絶縁膜9を保護することができ、高温高電圧ストレス試験によるリーク電流の増加をさらに抑制することができる。
【0099】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記第2絶縁膜15を構成する上記窒化シリコンは、屈折率が1.95より大きく且つ2.00より小さい。
【0100】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記第1絶縁膜9と上記第2絶縁膜15との膜厚の合計値が、25nm以上である。
【0101】
この実施の形態によれば、上記第1絶縁膜9と上記第2絶縁膜15との膜厚の合計が25nm以上であるので、レジスト剥離時の薬液処理やプラズマ処理等によって上記第1絶縁膜9が改質することを防止できる。
【0102】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記第2絶縁膜15上における少なくとも一部を覆う、Si‐H結合量が上記第2絶縁膜15よりも少ない窒化シリコンから成る第3絶縁膜21を備えている。
【0103】
この実施の形態によれば、上記第2絶縁膜15を覆う上記第3絶縁膜21として、Si‐H結合量が上記第2絶縁膜15よりも少ない窒化シリコンを用いている。したがって、上記絶縁膜の絶縁性を高くして、リーク電流をさらに低減することができる。
【0104】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置では、
上記第3絶縁膜21を構成する窒化シリコンは、屈折率が1.90以下である。
【0105】
また、この発明の窒化物半導体装置の製造方法は、
この発明または一実施形態の窒化物半導体装置を製造する窒化物半導体装置の製造方法であって、
上記絶縁膜9を800℃以上でアニールすることを特徴としている。
【0106】
上記構成によれば、上記絶縁膜9を800℃以上でアニールすることよって、電流コラプスを抑制することができる。
【0107】
また、この発明の窒化物半導体装置の製造方法は、
基板1上に、第1窒化物半導体層3とこの第1窒化物半導体層3とは組成の異なる第2窒化物半導体層4とを含む窒化物半導体積層構造5を、上記第1窒化物半導体層3と上記第2窒化物半導体層4とのヘテロ界面に2次元電子ガスが発生するように積層するステップと、
上記窒化物半導体積層構造5の表面における少なくとも一部を、Si‐H結合量が6.0×1021cm−3以下である窒化シリコンから成る絶縁膜9によって覆うステップと
を備えたことを特徴としている。
【0108】
上記構成によれば、上記窒化物半導体積層構造5の表面における少なくとも一部を覆う窒化シリコンから成る絶縁膜9のSi‐H結合量を、6.0×1021cm−3以下に設定している。したがって、本窒化物半導体装置に対して高温高電圧ストレス試験を行った場合、試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超える不良はなく、上記絶縁膜9の特性を適正化することができる。
【0109】
すなわち、スイッチングデバイスとして長時間の使用に耐えることが可能なであ窒化物半導体装置を提供することが可能になる。
【0110】
また、この発明の窒化物半導体装置の製造方法は、
基板1上に、第1窒化物半導体層3とこの第1窒化物半導体層3とは組成の異なる第2窒化物半導体層4とを含む窒化物半導体積層構造5を、上記第1窒化物半導体層3と上記第2窒化物半導体層4とのヘテロ界面に2次元電子ガスが発生するように積層するステップと、
上記窒化物半導体積層構造5の表面における少なくとも一部を、屈折率が1.95以下である窒化シリコンから成る絶縁膜9によって覆うステップと
を備えたことを特徴としている。
【0111】
上記構成によれば、上記窒化物半導体積層構造5の表面における少なくとも一部を覆う窒化シリコンから成る絶縁膜9の屈折率を、1.95以下にしている。
【0112】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置の製造方法では、
上記絶縁膜9を第1絶縁膜とし、この第1絶縁膜9上に、Si‐H結合量が上記第1絶縁膜9より多い窒化シリコンから成る第2絶縁膜15を積層するステップを備えている。
【0113】
この実施の形態によれば、上記高温高電圧ストレス試験後のリーク電流が試験前のリーク電流の5倍を超えることがない第1絶縁膜9上に、上記第1絶縁膜9よりもSi‐H結合量が多い窒化シリコンから成る第2絶縁膜15が積層される。したがって、上記第1絶縁膜9を保護することができ、高温高電圧ストレス試験によるリーク電流の増加をさらに抑制することができる。
【0114】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置の製造方法では、
上記第2絶縁膜15を積層するステップで積層される上記第2絶縁膜15を構成する上記窒化シリコンは、屈折率が1.95より大きく且つ2.00より小さい。
【0115】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置の製造方法では、
上記第2絶縁膜15上における少なくとも一部を、Si‐H結合量が上記第2絶縁膜15より少ない窒化シリコンから成る第3絶縁膜21によって覆うステップを備えている。
【0116】
この実施の形態によれば、上記第2絶縁膜15上を、Si‐H結合量が上記第2絶縁膜15よりも少ない窒化シリコンから成る上記第3絶縁膜21で覆っている。したがって、上記絶縁膜の絶縁性を高くして、リーク電流を低減することができる。
【0117】
また、一実施の形態の窒化物半導体装置の製造方法では、
上記第3絶縁膜21を積層するステップで積層される上記第3絶縁膜21を構成する上記窒化シリコンは、屈折率が1.90以下である。
【符号の説明】
【0118】
1…基板
2…アンドープAlGaNバッファ層
3…アンドープGaNチャネル層
4…アンドープAlGaNバリア層
5…窒化物半導体積層構造
6…ソース電極
7…ドレイン電極
8…ゲート電極
8a,8b…フィールドプレート部
9…絶縁膜,第1絶縁膜
10,11,12,16,22…開口部
15…第2絶縁膜
21…第3絶縁膜
23…段差形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15