特許第6255510号(P6255510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255510
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ハイブリッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/387 20071001AFI20171218BHJP
   B60K 6/365 20071001ALI20171218BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20171218BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20171218BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20171218BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20171218BHJP
   F16H 3/72 20060101ALI20171218BHJP
   B60K 17/02 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B60K6/387ZHV
   B60K6/365
   B60K6/445
   B60K6/543
   B60L11/14
   B60K17/04 G
   F16H3/72 A
   B60K17/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-555125(P2016-555125)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2015074193
(87)【国際公開番号】WO2016063623
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-213800(P2014-213800)
(32)【優先日】2014年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100142158
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 啓
(72)【発明者】
【氏名】矢ヶ崎 徹
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−32119(JP,A)
【文献】 特開2002−188657(JP,A)
【文献】 特開2013−141958(JP,A)
【文献】 特開2009−107426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0182694(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0143874(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102009025094(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−50/16
B60K 6/00− 6/547
B60L 1/00−15/42
F02D 29/00−29/06
F16H 3/00− 3/78
F16H 9/00− 9/26
F16H 59/00−63/50
B60K 17/02−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、
電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータと、
サンギヤとリングギヤとキャリアの三要素を有する遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構に連結された第1回転軸と駆動輪側に繋がる第2回転軸のいずれか一方から入力した回転を変速して他方へ出力する変速機構と、を備え、
前記遊星歯車機構は、前記サンギヤに前記第1モータジェネレータの回転軸が連結され、前記リングギヤに前記第2モータジェネレータの回転軸及び前記エンジンの出力軸が連結され、前記キャリアに前記変速機構の前記第1回転軸が連結されており、
前記エンジンの出力軸と前記遊星歯車機構の前記リングギヤとの間で係合・非係合を切替可能な第1クラッチと、
前記遊星歯車機構の前記キャリアと前記リングギヤとの間で係合・非係合を切替可能な第2クラッチと、を備える
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、
電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータと、
サンギヤとリングギヤとキャリアの三要素を有する遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構に連結された第1回転軸と駆動輪側に繋がる第2回転軸のいずれか一方から入力した回転を変速して他方へ出力する変速機構と、を備え、
前記遊星歯車機構は、前記サンギヤに前記第1モータジェネレータの回転軸が連結され、前記リングギヤに前記第2モータジェネレータの回転軸及び前記エンジンの出力軸が連結され、前記キャリアに前記変速機構の前記第1回転軸が連結されており、
前記エンジンの出力軸と前記遊星歯車機構の前記リングギヤとの間で係合・非係合を切替可能な第1クラッチと、
前記遊星歯車機構の前記キャリアと前記サンギヤとの間で係合・非係合を切替可能な第2クラッチと、を備える
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記変速機構は、前記第1回転軸上又は前記第2回転軸上で係合・非係合を切替可能な第3クラッチを更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記変速機構は、前記第1回転軸に繋がる駆動プーリと、前記第2回転軸に繋がる従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に架け渡されたベルトとを有するベルト式の無段変速機構であって、
前記第3クラッチは、前記変速機構の前記第2回転軸上に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータ及びジェネレータとして機能するモータジェネレータとを備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータ及びジェネレータとして機能するモータジェネレータと、エンジンとモータジェネレータから入力した駆動力を合成して出力可能な遊星歯車機構(プラネタリギヤ)と、遊星歯車機構からの駆動力による回転を変速して駆動輪側へ出力可能な変速機構とを備えた車両用のハイブリッド駆動装置がある。特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、遊星歯車機構のサンギヤにモータジェネレータの出力軸が連結され、リングギヤにエンジンの出力軸が連結され、キャリアに無段変速機構の入力軸が連結されている。そして、このハイブリッド駆動装置では、エンジンの出力軸とリングギヤとの係合・非係合を切替可能な第1クラッチと、キャリアとリングギヤとの係合・非係合を切替可能な第2クラッチとを備えている。
【0003】
この特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、相対速度が比較的に小さい遊星歯車機構のリングギヤとキャリアとの間、又はサンギヤとキャリアとの間に第2クラッチを設けている。これにより、第2クラッチが非係合状態での摩擦材の差回転(スベリ速度)が小さくなるので、第2クラッチでの摩擦損失を少なく抑えることができ、その分、ハイブリッド駆動装置の動力伝達効率を向上させることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、第1クラッチおよび第2クラッチの係合時に遊星歯車機構のリングギヤに回転が生じているため、当該リングギヤとケーシングなど固定側の部材との間に設けているブレーキの摩擦材に差回転(スベリ速度)が生じる。しかしながら、この特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、リングギヤをケーシングなどの固定側の部材に対して固定するためのブレーキを備えている以上、当該ブレーキに生じる差回転(スベリ速度)を根本的を無くすことはできないため、当該ブレーキに差回転による損失が生じてしまう。特に、第1クラッチと第2クラッチの係合時にブレーキに差回転が生じることで損失が生じる。したがって、遊星歯車機構のリングギヤをケーシングなどの固定側の部材に対して固定するためのブレーキを備えた特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置の構造を見直すことで、損失をより低く抑えて更なる動力伝達効率の向上を図ることができるハイブリッド駆動装置を実現する余地がある。
【0005】
さらに、特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、モータ(モータジェネレータ)の駆動力による発進(ハイブリッド駆動装置を搭載した車両の発進)の際には、モータの回転数を零から上昇させる領域を用いての発進になる。しかしながら、一般的に、モータの効率は、回転数が零から上昇する領域の効率よりも他の領域の効率の方が良い。そのため、特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、その構成を改良することで、モータの駆動力を用いた走行モードでの効率をより高くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−32119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来構造のハイブリッド駆動装置において、遊星歯車機構のリングギヤと固定側の部材との間に設けていたブレーキに生じていた動力伝達損失を改善することができ、また、モータの駆動力を用いた走行モードにおける効率を更に高めることができるハイブリッド駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明にかかるハイブリッド駆動装置は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン(10)と、電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ(20−1)及び第2モータジェネレータ(20−2)と、サンギヤ(S)とリングギヤ(R)とキャリア(C)の三要素を有する遊星歯車機構(30)と、前記遊星歯車機構(30)に連結された第1回転軸(42)と駆動輪(60,60)側に繋がる第2回転軸(44)のいずれか一方から入力した回転を変速して他方へ出力する変速機構(40)と、を備え、前記遊星歯車機構(30)は、前記サンギヤ(S)に前記第1モータジェネレータ(20−1)の回転軸(21−1)が連結され、前記リングギヤ(R)に前記第2モータジェネレータ(20−2)の回転軸(21−2)及び前記エンジン(10)の出力軸(11)が連結され、前記キャリア(C)に前記変速機構(40)の前記第1回転軸(42)が連結されており、前記エンジン(10)の出力軸(11)と前記遊星歯車機構(30)の前記リングギヤ(R)との間で係合・非係合を切替可能な第1クラッチ(C1)と、前記遊星歯車機構(30)の前記キャリア(C)と前記リングギヤ(R)との間で係合・非係合を切替可能な第2クラッチ(C2)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるハイブリッド駆動装置は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン(10)と、電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ(20−1)及び第2モータジェネレータ(20−2)と、サンギヤ(S)とリングギヤ(R)とキャリア(C)の三要素を有する遊星歯車機構(30)と、前記遊星歯車機構(30)に連結された第1回転軸(42)と駆動輪(60,60)側に繋がる第2回転軸(44)のいずれか一方から入力した回転を変速して他方へ出力する変速機構(40)と、を備え、前記遊星歯車機構(30)は、前記サンギヤ(S)に前記第1モータジェネレータ(20−1)の回転軸(21−1)が連結され、前記リングギヤ(R)に前記第2モータジェネレータ(20−2)の回転軸(21−2)及び前記エンジン(10)の出力軸(11)が連結され、前記キャリア(C)に前記変速機構(40)の前記第1回転軸(42)が連結されており、前記エンジン(10)の出力軸(11)と前記遊星歯車機構(30)の前記リングギヤ(R)との間で係合・非係合を切替可能な第1クラッチ(C1)と、前記遊星歯車機構(30)の前記キャリア(C)と前記サンギヤ(S)との間で係合・非係合を切替可能な第2クラッチ(C2)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるハイブリッド駆動装置によれば、電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータに加えて第2モータジェネレータを備え、遊星歯車機構のサンギヤに第1モータジェネレータの回転軸を連結し、リングギヤに第2モータジェネレータの回転軸及びエンジンの出力軸を連結し、キャリアに変速機構の第1回転軸を連結している。そのうえで、エンジンの出力軸とリングギヤとの間に第1クラッチを設け、キャリアとサンギヤとの間に第2クラッチを設けた構成を採用している。これにより、特許文献1に記載の従来構成のハイブリッド駆動装置と比較して、リングギヤとケーシングなど固定側の部材との間に設けていたブレーキを省略した構成を実現している。したがって、当該ブレーキに生じていた差回転(スベリ速度)による動力伝達の損失を根本的に無くすことができる。よって、特に、第1クラッチと第2クラッチの係合時にブレーキに生じていた差回転による損失を無くすことができるので、ハイブリッド駆動装置の損失をより低く抑えて動力伝達効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明にかかるハイブリッド駆動装置によれば、遊星歯車機構のリングギヤに第2モータジェネレータの回転軸を連結した構成を採用していることで、リングギヤが常時回転可能な状態となっている。これに対して、従来のハイブリッド駆動装置の構成では、リングギヤがブレーキで固定され得る構造であったため、モータジェネレータの駆動力による車両の発進において、当該モータジェネレータの回転数が零から上昇する領域を用いての発進(ハイブリッド駆動装置を搭載した車両の発進)となっていたのに対して、本願の上記構成によれば、第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとの効率の高い回転域を用いての発進が可能となる。したがって、ハイブリッド駆動装置を搭載した車両の発進における動力伝達効率を高めることができる。
【0012】
また、本発明にかかる上記のハイブリッド駆動装置では、前記第1回転軸(42)上又は前記第2回転軸(44)上で係合・非係合を切替可能な第3クラッチ(C3,C3´)を更に備えてよい。この構成によれば、当該第3クラッチを非係合とすることで、遊歯車機構から駆動輪側に伝達される動力を遮断することが可能となる。したがって、第3クラッチを非係合とした状態で、エンジンの駆動力を用いてモータジェネレータによる発電を行い、蓄電池の充電を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかるハイブリッド駆動装置では、前記変速機構(40)は、前記第1回転軸(42)に繋がる駆動プーリ(41)と、前記第2回転軸(44)に繋がる従動プーリ(43)と、前記駆動プーリ(41)と前記従動プーリ(43)との間に架け渡されたベルト(48)とを有するベルト式の無段変速機構(40)であってよい。
【0014】
その場合、前記第3クラッチ(C3)を前記変速機構(40)の前記第1回転軸(42)上に設けることができる。この構成によれば、第3クラッチを非係合とすることで、遊星歯車機構からベルト式の無段変速機構に入力する駆動力(入力トルク)を制限することが可能となる。これにより、ベルト式無段変速機構への入力トルクの複雑な制御や推定を行うことなく、ベルト式無段変速機構のスリップ保障などの機能保障が可能となる。
【0015】
あるいは、前記第3クラッチ(C3)を前記変速機構(40)の第2回転軸(44)上に設けることができる。この構成によれば、第3クラッチを非係合とすることで、遊星歯車機構から伝達される動力で無段変速機構を回転させた状態のまま、無段変速機構から駆動輪への動力伝達を遮断することが可能となる。これにより、駆動輪への動力伝達を遮断する際の無段変速機構のレシオ(プーリレシオ)を、次回駆動輪への動力伝達を再開するときのレシオに戻せることを条件に無段変速機構の制御を行う必要がなくなる。
すなわち、第3クラッチを非係合として駆動輪への動力伝達を遮断している間にも、無段変速機構のレシオの変更が可能となるので、次回駆動輪への動力伝達を再開するときのレシオが登坂走行時や減速回生時の低速側レシオであっても、駆動輪への動力伝達を遮断する前の無段変速機構のレシオをそのときの走行に最適なレシオに設定できる。したがって、車両のドライバビリティに影響を与えることなく、減速エネルギの回生などを行うことが可能となる。
【0016】
また、次回駆動輪への動力伝達を再開するときに無段変速機構のレシオを低速側レシオに戻すための手段として、モータジェネレータで低速走行時のトルクを補う必要が無い。したがって、その点を考慮してモータジェネレータの出力余裕を確保する必要がないので、モータジェネレータの低出力化及び小型化を図ることが可能となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるハイブリッド駆動装置によれば、従来構造のハイブリッド駆動装置において、遊星歯車機構のリングギヤと固定側の部材との間に設けていたブレーキに生じていた動力伝達損失を改善することができ、モータジェネレータの駆動力を用いた走行モードにおける効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態にかかるハイブリッド駆動装置の構成を示すスケルトン図である。
図2】遊星歯車機構の各要素の速度関係を示す共線図である。
図3】ハイブリッド駆動装置の走行モードとクラッチおよびブレーキの作動状態と関係を説明するための図(一覧表)である。
図4】各走行モードにおける遊星歯車機構の各要素の速度関係を示す共線図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかるハイブリッド駆動装置の構成を示すスケルトン図である。
図6】本発明の第3実施形態にかかるハイブリッド駆動装置の構成を示すスケルトン図である。
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかるハイブリッド駆動装置の構成を示すスケルトン図である。また、図2は、ハイブリッド駆動装置が備える遊星歯車機構の各要素の速度関係を示す共線図(速度線図)である。図1に示すハイブリッド駆動装置1は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン10と、電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ(MOT1)20−1及び第2モータジェネレータ(MOT2)20−2と、サンギヤSとリングギヤRとキャリアCの三要素を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構(プラネタリギヤ)30と、駆動プーリ41と従動プーリ43との間に架け渡されたベルト48を有するベルト式の無段変速機構40とを備えて構成されている。
【0020】
遊星歯車機構30のサンギヤSには、第1モータジェネレータ20−1の出力軸(回転軸)21−1が連結されており、キャリアCには、無段変速機構40の駆動プーリ41に繋がる入力軸(第1回転軸)42が連結されている。また、リングギヤRは、第1クラッチC1を介してエンジン10の出力軸11に連結されるようになっており、かつ、第2クラッチC2を介して無段変速機構40の入力軸42にも連結されるようになっている。また、リングギヤRは、第2モータジェネレータ(MOT2)20−2の出力軸(回転軸)21−2に連結されている。
【0021】
さらに、無段変速機構40の従動プーリ43に繋がる出力軸(第2回転軸)44上には、カウンタ歯車47と噛合する出力歯車45が設けられている。カウンタ歯車47は、ディファレンシャル装置(差動装置)50のリングギヤ51に噛合している。ディファレンシャル装置50は、カウンタ歯車47からの駆動力を左右の駆動輪60,60に配分するようになっている。そして、無段変速機構40の出力軸44上(従動プーリ43と出力歯車45との間)には、第3クラッチC3が設けられている。
【0022】
すなわち、図1に示すハイブリッド駆動装置1の遊星歯車機構30では、第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1が連結されたサンギヤSと、エンジン10の出力軸11及び第2モータジェネレータ20−2の出力軸21−2が連結されたリングギヤRとが入力部材になっており、無段変速機構40の入力軸42に連結されたキャリアCが出力部材になっている。そして、第1クラッチC1でエンジン10の出力軸11とリングギヤRとの係合・非係合を切り替え可能となっており、第2クラッチC2でキャリアCとリングギヤRとの係合・非係合を切り替え可能となっている。また、第3クラッチC3で無段変速機構40から駆動輪60,60側への駆動力の伝達有無を切り替え可能となっている。なお、上記の第1乃至第3クラッチC1〜C3には、詳細な図示は省略するが、油圧アクチュエータによって摩擦係合する構成の単板式あるいは多板式の油圧摩擦クラッチを用いることができる。その他にも電磁クラッチなどを用いてもよい。
【0023】
図3は、図1に示すハイブリッド駆動装置1の走行モードと第1乃至第3クラッチC1〜C3の作動状態、及び第1モータジェネレータ(MOT1)20−1と第2モータジェネレータ(MOT2)20−2の作動状態との関係を示す図(一覧表)である。また、図4は、ハイブリッド駆動装置1の各走行モードにおける遊星歯車機構30の各要素の速度関係を示す共線図(速度線図)である。図3では、●印が各クラッチの係合状態を示し、×印が非係合(解放)状態を示している。ハイブリッド駆動装置1では、第1乃至第3クラッチC1〜C3の作動状態(係合・非係合状態)と第1モータジェネレータ(MOT1)20−1及び第2モータジェネレータ(MOT2)20−2の作動状態とに応じて、図3の一覧表に示す各走行モードが成立する。すなわち、変速レンジが「S」レンジ又は「D」レンジのときには、「モータ走行モード(前進減速)」、「モータ走行モード(前進直結)」、「パラレルHVモード(直結モード)」、「パワースプリットモード」、「エンジン走行モード」、「回生ブレーキモード」のいずれかが成立し、変速レンジが「N」レンジ又は「P」レンジのときには、「ニュートラル」又は「充電/エンジン始動モード」のいずれかが成立し、変速レンジが「R」レンジのときには、「モータ走行モード(後進)」が成立する。なお、「S」レンジ又は「D」レンジ及び「R」レンジでは、いずれの走行モードでも第3クラッチC3は係合状態としておく一方、「N」レンジ又は「P」レンジでは、いずれの走行モードでも第3クラッチC3は非係合(解放)状態としておく。以下、各走行モードについて詳細に説明する。
【0024】
「モータ走行モード(前進減速)」では、第2モータジェネレータ(MOT2)20−2をオン(回転)すると共に、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を解放した状態で、第1モータジェネレータ(MOT1)20−1を正転駆動する。これにより、第1モータジェネレータ20−1の駆動力と第2モータジェネレータ20−2の駆動力とを合わせた駆動力が遊星歯車機構30及び無段変速機構40を介して駆動輪60,60側に伝達され、第1モータジェネレータ20−1及び第2モータジェネレータ20−2の駆動力で車両を前進走行させる。そして、この「モータ走行モード(前進減速)」では、図4(a)の共線図に示すように、サンギヤSに入力された第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1の回転が減速されてキャリアCから無段変速機構40へ出力される。このように、本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、遊星歯車機構30で第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1の回転が減速されて出力されるように構成したことで、第1モータジェネレータ20−1を大型化することなく、この「モータ走行モード(前進減速)」において、特に車両の発進時に大きなトルクを得ることができる。
【0025】
また、この「モータ走行モード(前進減速)」では、第1モータジェネレータ20−1が所定回転数N1(N1>0)のときにキャリアCの回転数が0になり、そこから第1モータジェネレータ20−1の回転数を上げると、キャリアCの回転数が次第に高くなる。したがって、第1モータジェネレータ20−1の回転数を上記の所定回転数N1から上昇させることで車両を発進させることができる。これにより、第1モータジェネレータ20−1及び第2モータジェネレータ20−2の駆動力による車両の発進において、第1モータジェネレータ20−1又は第2モータジェネレータ20−2の回転数が0から上昇する領域を用いずに車両を発進させることができる。したがって、第1モータジェネレータ20−1と第2モータジェネレータ20−2との効率の高い回転域を用いての車両の発進が可能となる。
【0026】
「モータ走行モード(前進直結)」では、第2クラッチC2を係合すると共に、第1クラッチC1を解放し、かつ第2モータジェネレータ20−2をオフ(停止)した状態で、第1モータジェネレータ20−1を正転駆動する。これにより、第1モータジェネレータ20−1の駆動力が遊星歯車機構30及び無段変速機構40を介して駆動輪60,60側に伝達され、第1モータジェネレータ20−1の駆動力のみで車両を前進走行させる。そして、この「モータ走行モード(前進直結)」では、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30のリングギヤRとキャリアCとサンギヤSの三要素が一体的に回転するようになっている。したがって、図4(b)の速度線図に示すように、サンギヤSに入力された第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1の回転が等速でキャリアCから無段変速機構40へ出力される。このように、本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30の構成要素であるサンギヤS、キャリアC、リングギヤRが一体的に回転するため、この「モータ走行モード(前進直結)」において、第1モータジェネレータ20−1による減速回生時に大きなエネルギの効率的な回生が可能となる。
【0027】
「パラレルHVモード(直結モード)」では、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合すると共に、第2モータジェネレータ20−2をオフ(停止)した状態で、第1モータジェネレータ20−1を電動モータ又はジェネレータとして動作させる。この「パラレルHVモード(直結モード)」では、図4(c)の共線図に示すように、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30のリングギヤRとキャリアCとサンギヤSの三要素が一体的に回転するようになっている。そして、第1モータジェネレータ20−1を電動モータとして動作させる場合は、第1モータジェネレータ20−1を正転駆動することで、遊星歯車機構30で合成された第1モータジェネレータ20−1の駆動力とエンジン10の駆動力とが無段変速機構40を介して駆動輪60,60に伝達されて車両が前進走行する。一方、第1モータジェネレータ20−1をジェネレータとして動作させる場合には、リングギヤRに入力されたエンジン10の出力軸11の回転が等速でキャリアCから無段変速機構40へ出力されることで、車両が前進走行し、その際にリングギヤRと一体的に回転するサンギヤSから第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1に伝達される駆動力で、第1モータジェネレータ20−1による発電が行われる。
【0028】
「パワースプリットモード」では、第1クラッチC1を係合して第2クラッチC2を解放すると共に、第2モータジェネレータ20−2をON(回転)した状態で、第1モータジェネレータ20−1を逆転駆動する。これにより、遊星歯車機構30で合成された第1モータジェネレータ20−1の駆動力とエンジン10の駆動力及び第2モータジェネレータ20−2の駆動力とが無段変速機構40を介して駆動輪60,60に伝達され、第1モータジェネレータ20−1の駆動力とエンジン10の駆動力及び第2モータジェネレータ20−2の駆動力との両方で車両が前進走行する。この「パワースプリットモード」では、図4(d)の共線図に示すように、エンジン10の出力軸11の回転及び第2モータジェネレータ20−2の出力軸21−2の回転に対して減速された回転がキャリアCから無段変速機構40へ出力される。つまり、同図における点線の共線図に示す状態では、エンジン10の出力軸11及び第2モータジェネレータ20−2の出力軸21−2に連結しているリングギヤRは回転数N2(N2>0)で正転しており、無段変速機40の入力軸42に連結しているキャリアCの回転はゼロであり、車両は停止状態にある。このとき、第1モータジェネレータ20−1に連結しているサンギヤSは逆転駆動されており、第1モータジェネレータ20−1は発電を行っている。この状態から、第2モータジェネレータ20−2を制御してその回転数を上昇させると、実線の共線図に示すように、リングギヤRは回転数が回転数N2から次第に上昇する。これにより、キャリアCの回転が0から次第に上昇する。これにより、車両は、発進装置がなくとも速度がゼロから滑らかに発進することが可能である。
【0029】
このように、第1モータジェネレータ20−1及び第2モータジェネレータ20−2の駆動力による車両の発進において、第1モータジェネレータ20−1又は第2モータジェネレータ20−2の回転数が0から上昇する領域を用いずに車両を発進させることができる。したがって、第1モータジェネレータ20−1と第2モータジェネレータ20−2との効率の高い回転域を用いての車両の発進が可能となる。
【0030】
「エンジン走行モード」では、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合すると共に、第2モータジェネレータ20−2をオフ(停止)した状態で、第1モータジェネレータ20−1を非作動とする。これにより、エンジン10の駆動力が遊星歯車機構30及び無段変速機構40を介して駆動輪60,60側に伝達され、エンジン10の駆動力のみで車両を前進走行させる。この「エンジン走行モード」では、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30のリングギヤRとキャリアCとサンギヤSの三要素が一体的に回転するようになっている。したがって、図4(e)の共線図に示すように、リングギヤRに入力されたエンジン10の出力軸11の回転が等速でキャリアCから無段変速機構40へ出力される。本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30の構成要素であるサンギヤS、キャリアC、リングギヤRが一体的に回転するため、この「エンジン走行モード」では、エンジン10の出力を効率的に伝達することが可能となる。
【0031】
「回生ブレーキモード」では、第2クラッチC2を係合すると共に第1クラッチC1を解放し、かつ、第2モータジェネレータ20−2をオフ(停止)した状態で、第1モータジェネレータ20−1をジェネレータとして動作させることで、第1モータジェネレータ20−1による回生制動を行う。この「回生ブレーキモード」でも、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30のリングギヤRとキャリアCとサンギヤSの三要素が一体的に回転するようになっている。したがって、図4(f)の共線図に示すように、キャリアCに入力された無段変速機構40の入力軸42の回転が等速でサンギヤSから第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1へ出力される。そして、本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、第1クラッチC1によって、第1モータジェネレータ20−1と駆動輪60,60との間の動力伝達経路に対して、エンジン10からの駆動力が伝達される動力伝達経路を切り離すことができる。これにより、減速回生時に遊星歯車機構30に入力されるエンジン10の引き摺りトルクを無くすことができるため、第1モータジェネレータ20−1によるエネルギ回生を効率的に行うことができる。
【0032】
「ニュートラル」では、既述のように第3クラッチC3を解放した上で、さらに、第1、第2クラッチC1,C2を解放し、かつ、第2モータジェネレータ20−2をオフ(停止)する。これにより、エンジン10の出力軸11と遊星歯車機構30との間、及びエンジン10の出力軸11と無段変速機構40の入力軸42との間の動力伝達経路、及び無段変速機構40から駆動輪60,60側への動力伝達経路が遮断された状態となる。
【0033】
「充電/エンジン始動モード」では、第3クラッチC3を解放した上で、さらに、第1クラッチC1と第2クラッチC2を係合し、かつ、第2モータジェネレータ20−2をオフ(停止)した状態で、第1モータジェネレータ20−1を電動モータとして動作させることでエンジン10を始動したり、第1モータジェネレータ20−1をジェネレータとして動作させることで、エンジン10の駆動力で発電(充電)を行ったりする。そして、エンジン10を始動する場合は、第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1の回転を遊星歯車機構30でエンジン10の出力軸11に伝達する。また、第1モータジェネレータ20−1による発電を行う場合には、エンジン10の出力軸11の回転を遊星歯車機構30で第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1に伝達することで、第1モータジェネレータ20−1を回転駆動して発電し、第1モータジェネレータ20−1に繋がれた蓄電器(図示せず)を充電する。この「充電/エンジン始動モード」では、第2クラッチC2の係合によって遊星歯車機構30のリングギヤRとキャリアCとサンギヤSの三要素が一体的に回転するようになっている。したがって、図4(g)の共線図に示すように、サンギヤSとキャリアCとリングギヤRのいずれかの要素に入力された回転が等速で他の要素に出力される。
【0034】
そして、本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、無段変速機構40の出力軸44上に第3クラッチC3を設けていることで、当該第3クラッチを非係合とすることで、無段変速機構40から駆動輪60,60側に伝達される動力を遮断することができる。したがって、上記のように、第3クラッチC3を非係合としておき、エンジン10の駆動力を用いて第1モータジェネレータ20−1による発電を行い、蓄電池の充電を行うことが可能となる。
【0035】
「モータ走行モード(後進)」では、第2モータジェネレータ(MOT2)20−2をオン(回転)すると共に第1クラッチC1及び第2クラッチC2を解放した状態で、第1モータジェネレータ20−1を逆転駆動させる。これにより、第1モータジェネレータ20−1の駆動力で車両を後進させる。そして、この「モータ走行モード(後進)」では、図4(h)の共線図に示すように、サンギヤSに入力された第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1の回転(逆回転)が減速されてキャリアCから無段変速機構40へ出力される。
【0036】
また、この「モータ走行モード(後進)」では、第1モータジェネレータ20−1が所定回転数N3(N3<0)のときにキャリアCの回転数が0になり、そこから第1モータジェネレータ20−1の回転数を上昇(逆転駆動の回転を上昇)させると、キャリアCの回転数(逆回転の回転数)が次第に高くなる。したがって、第1モータジェネレータ20−1の回転数を上記の所定回転数N3から逆転方向に上昇させることで車両を発進(後向きに発進)させることができる。
【0037】
このように、第1モータジェネレータ20−1及び第2モータジェネレータ20−2の駆動力による車両の後向きの発進においても、第1モータジェネレータ20−1又は第2モータジェネレータ20−2の回転数が0から上昇する領域を用いずに車両を発進させることができる。したがって、第1モータジェネレータ20−1と第2モータジェネレータ20−2との効率の高い回転域を用いての車両の発進が可能となる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン10と、電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ20−1及び第2モータジェネレータ20−2と、サンギヤSとリングギヤRとキャリアCの三要素を有する遊星歯車機構30と、遊星歯車機構30からの駆動力による回転を変速して駆動輪60,60側へ出力可能な無段変速機構40とを備えている。そして、遊星歯車機構30のサンギヤSに第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1が連結され、リングギヤRにエンジン10の出力軸11及び第2モータジェネレータ20−2の出力軸21−2が連結され、キャリアCに無段変速機構40の入力軸42が連結されている。そして、エンジン10の出力軸11とリングギヤRとの係合・非係合を切替可能な第1クラッチC1と、キャリアCとリングギヤRとの係合・非係合を切替可能な第2クラッチC2と、無段変速機構40の出力軸44上に設けた第3クラッチC3とを備えている。
【0039】
本実施形態のハイブリッド駆動装置1によれば、電動モータ及びジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ20−1に加えて第2モータジェネレータ20−2を備え、遊星歯車機構30のサンギヤSに第1モータジェネレータ20−1の出力軸(回転軸)21−1を連結し、リングギヤRに第2モータジェネレータ20−2の出力軸(回転軸)21−2及びエンジン10の出力軸11を連結し、キャリアCに無段変速機構40の入力軸42を連結している。そのうえで、エンジン10の出力軸11とリングギヤRとの間に第1クラッチC1を設け、キャリアCとサンギヤSとの間に第2クラッチC2を設けた構成を採用している。これにより、特許文献1に記載の従来構成のハイブリッド駆動装置と比較して、リングギヤとケーシングなど固定側の部材との間に設けていたブレーキを省略した構成を実現している。したがって、当該ブレーキに生じていた差回転(スベリ速度)による動力伝達の損失を根本的に無くすことができる。よって、特に、第1クラッチと第2クラッチの係合時にブレーキに生じていた差回転による損失を無くすことができるので、ハイブリッド駆動装置の損失をより低く抑えて動力伝達効率の向上を図ることができる。
【0040】
また、本発明にかかるハイブリッド駆動装置1によれば、遊星歯車機構30のリングギヤRに第2モータジェネレータ20−2の出力軸21−2を連結した構成を採用していることで、リングギヤRが常時回転可能な状態となっている。これに対して、従来のハイブリッド駆動装置の構成では、リングギヤがブレーキで固定され得る構造であったため、モータジェネレータの駆動力による車両の発進において、当該モータジェネレータの回転数が0から上昇する領域を用いての発進(ハイブリッド駆動装置を搭載した車両の発進)となっていたのに対して、本願の上記構成によれば、第1モータジェネレータ20−1と第2モータジェネレータ20−2との効率の高い回転域を用いての車両の発進が可能となる。したがって、ハイブリッド駆動装置1を搭載した車両の発進における動力伝達効率を高めることができる。
【0041】
また、エンジン10の出力軸11とリングギヤRとの係合・非係合を切替可能な第1クラッチC1を備えたことで、当該第1クラッチC1でエンジン10から遊星歯車機構30への駆動力の入力を遮断できる。これにより、第1モータジェネレータ20−1と駆動輪60,60との間の動力伝達経路に対してエンジン10からの駆動力が伝達される動力伝達経路を切り離すことができる。したがって、車両の減速時に第1モータジェネレータ20−1で減速回生を行う際に、遊星歯車機構30に入力されるエンジン10の駆動力を遮断できるため、第1モータジェネレータ20−1による減速エネルギの効率的な回生が可能となる。
【0042】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置1によれば、遊星歯車機構30のキャリアCとリングギヤRとの間に設けた第2クラッチC2を係合することで、遊星歯車機構30の三要素(リングギヤR、サンギヤS、キャリアC)が一体的に回転するようになる。これにより、遊星歯車機構30での機械的な動力伝達損失を少なく抑えることができる。したがって、エンジン10及び第1モータジェネレータ20−1からの動力をより効率的に伝達できるようになると共に、第1モータジェネレータ20−1による減速エネルギの回生をより効率的に行えるようになる。
【0043】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置1によれば、無段変速機構40の出力軸44上に第3クラッチC3を設けたことで、当該第3クラッチC3を非係合(解放)とすることで、遊星歯車機構30から駆動輪60,60側に伝達される動力を遮断することが可能となる。したがって、第3クラッチC3を非係合とした状態で、エンジン10の駆動力を用いて第1モータジェネレータ20−1による発電を行い、蓄電池の充電を行うことが可能となる。
【0044】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置1では、第3クラッチC3を無段変速機構40の出力軸44上に設けている。この構成によれば、第3クラッチC3を非係合とすることで、遊星歯車機構30から伝達される動力で無段変速機構40を回転させた状態のまま、無段変速機構40から駆動輪60,60への動力伝達を遮断することが可能となる。これにより、駆動輪60,60への動力伝達を遮断する際の無段変速機構40のレシオ(プーリレシオ)を、次回駆動輪への動力伝達を再開するときのレシオに戻せることを条件に無段変速機構40の制御を行う必要がなくなる。すなわち、第3クラッチC3を非係合として駆動輪60,60への動力伝達を遮断している間にも、無段変速機構40のレシオの変更が可能となるので、次回駆動輪60,60への動力伝達を再開するときのレシオが登坂走行時や減速回生時の低速側レシオであっても、駆動輪60,60への動力伝達を遮断する前の無段変速機構40のレシオをそのときの走行に最適なレシオに設定できる。したがって、車両のドライバビリティに影響を与えることなく、減速エネルギの回生などを行うことが可能となる。
【0045】
また、次回駆動輪60,60への動力伝達を再開するときに無段変速機構40のレシオを低速側レシオに戻すために、第1モータジェネレータ20−1で低速走行時のトルクを補う必要が無くなる。したがって、その点を考慮して第1モータジェネレータ20−1の出力余裕を確保する必要がないので、第1モータジェネレータ20−1の低出力化及び小型化を図ることが可能となる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態にかかるハイブリッド駆動装置1−2の構成を示すスケルトン図である。同図に示すハイブリッド駆動装置1−2では、図1に示す第1実施形態のハイブリッド駆動装置1において、遊星歯車機構30のリングギヤRとキャリアCとの間(エンジン10の出力軸11と無段変速機構40の入力軸42との間)に設けていた第2クラッチC2に代えて、遊星歯車機構30のサンギヤSとキャリアCとの間(第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1と無段変速機構40の入力軸42との間)に設けた他の第2クラッチC2´を備えている。その他の構成は、第1実施形態のハイブリッド駆動装置1と同じである。すなわち、本実施形態のハイブリッド駆動装置1−2では、遊星歯車機構30のサンギヤSに第1モータジェネレータ20−1の出力軸21−1が連結されており、リングギヤRにエンジン10の出力軸11が連結されており、キャリアCに無段変速機構40の入力軸42が連結されている。そして、エンジン10の出力軸11と遊星歯車機構30のリングギヤRとの間に第1クラッチC1を設け、遊星歯車機構30のキャリアCとサンギヤSとの間に第2クラッチC2´を設け、さらに、無段変速機構40の従動プーリ43に繋がる出力軸44上(従動プーリ43と出力歯車45との間)に第3クラッチC3を設けている。
【0048】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態にかかるハイブリッド駆動装置の構成を示すスケルトン図である。同図に示す第3実施形態のハイブリッド駆動装置1−3では、図1に示す第1実施形態のハイブリッド駆動装置1において無段変速機構40の従動プーリ43に繋がる出力軸(第2回転軸)44上に設けていた第3クラッチC3に代えて、無段変速機構40の駆動プーリ41に繋がる入力軸(第1回転軸)42上に設けた他の第3クラッチC3´を備えている。その他の構成は、第1実施形態のハイブリッド駆動装置1と同じである。
【0049】
本実施形態のハイブリッド駆動装置1−3では、第3クラッチC3を無段変速機構40の入力軸42上に設けたことで、当該第3クラッチC3を非係合とすることで、ベルト式の無段変速機構40に入力する駆動力(入力トルク)を制限することが可能となる。これにより、ベルト式の無段変速機構40への入力トルクの複雑な制御や推定を行うことなく、ベルト式の無段変速機構40のスリップ保障などの機能保障が可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本発明にかかるハイブリッド駆動装置が備える変速機構は、上記実施形態に示すベルト式の無段変速機構40には限らず、他の構成の変速機構であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6