(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱収縮性フィルムの片面に、硬質層を少なくとも1層積層し、積層シートを作製する積層工程と、前記積層シートを加熱変形させることにより、前記積層シートの少なくとも硬質層を蛇行変形させて前記硬質層の表面に凹凸を形成する凹凸パターン形成工程と、を有する光拡散シートの製造方法であって、
前記積層シートの表面に沿った1方向をX方向とし、前記積層シートの表面に沿い、且つX方向に直交する方向をY方向とした時、前記凹凸パターン形成工程において、少なくともY方向に張力を作用させ、前記硬質層が積層された面から前記光拡散シートに入射した光の1/10値拡散角度がX方向70〜80度、Y方向5〜15度となるように収縮させることを特徴とする光拡散シートの製造方法。
加熱収縮性フィルムの片面に、硬質層を少なくとも1層積層し、積層シートを作製する積層工程と、前記積層シートを加熱変形させることにより、前記積層シートの少なくとも硬質層を蛇行変形させて前記硬質層の表面に凹凸パターンを形成して母型を得る母型形成工程と、前記硬質層の表面に形成された凹凸パターンを樹脂組成物に形状転写して片面に凹凸パターンを有する転写型を得る転写工程と、を有し、前記転写型を光拡散体として得る光拡散体の製造方法であって、
前記積層シートの表面に沿った1方向をX方向とし、前記積層シートの表面に沿い、且つX方向に直交する方向をY方向とした時、前記凹凸パターン形成工程において、少なくともY方向に張力を作用させ、前記硬質層が積層された面から前記光拡散体に入射した光の1/10値拡散角度がX方向70〜80度、Y方向5〜15度となるように収縮させることを特徴とする光拡散体の製造方法。
加熱収縮性フィルムの片面に、硬質層を少なくとも1層積層し、積層シートを作製する積層工程と、前記積層シートを加熱変形させることにより、前記積層シートの少なくとも硬質層を蛇行変形させて前記硬質層の表面に凹凸パターンを形成して1次母型を得る1次母型形成工程と、前記硬質層の表面に形成された凹凸パターンを樹脂組成物または金属組成物に1〜n回(前記nは、2以上の整数)形状転写して片面に凹凸パターンを有する2〜(n+1)次母型を得る2〜(n+1)次母型形成工程と、前記2〜(n+1)次母型の凹凸パターンを更に別の樹脂組成物に形状転写して片面に凹凸パターンを有する複製物を得る複製物製造工程を有し、前記複製物を光拡散体として得る光拡散体の製造方法であって、
前記積層シートの表面に沿った1方向をX方向とし、前記積層シートの表面に沿い、且つX方向に直交する方向をY方向とした時、前記凹凸パターン形成工程において、少なくともY方向に張力を作用させ、前記硬質層が積層された面から前記光拡散体に入射した光の1/10値拡散角度がX方向70〜80度、Y方向5〜15度となるように収縮させることを特徴とする光拡散体の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(光拡散シートの製造方法)
本発明の光拡散シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の光拡散シートの製造方法は、
図1に示すように、1軸方向加熱収縮性フィルム11の片面の全面に、表面が平滑な硬質層12a(以下、表面平滑硬質層12aという。)を設けて積層シート10aを形成する工程と、積層シート10aの加熱により最も大きく収縮する方向をX方向とし、X方向と直交する方向(Y方向)に張力を作用させて、加熱変形させる工程とからなる。
上記方法を採用することにより、積層シートの硬質層を蛇行変形させ、
図2に示すような凹凸パターン13が、1軸方向加熱収縮性フィルム11の片面の全面に形成された、光拡散シート10が得られる。
ここで、表面平滑硬質層12aとは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の層である。
また、「蛇行変形」とは、
図2に示すような、波状の凹凸パターンを形成するような変形をいう。
【0010】
本発明の1軸方向加熱収縮性フィルム11としては、従来公知のものが使用でき、例えば、1軸収縮性ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、1軸収縮性ポリスチレン系シュリンクフィルム、1軸収縮性ポリオレフィン系シュリンクフィルム、1軸収縮性ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどを用いることができる。これらの1軸方向加熱収縮性フィルムは、収縮温度以上で加熱した場合、主に1方向に収縮する特性を有する。1軸方向加熱収縮性フィルム11の厚みは一般的には10〜500μmである。好ましくは、フィルムの入手しやすさの点で、20〜100μmである。
【0011】
本発明の表面平滑硬質層12aとしては、金属、金属化合物または1軸方向加熱収縮性フィルム11の加熱収縮温度より3℃以上高いガラス転移温度を有する樹脂の中から選ばれる少なくとも1種で構成する。このような構成により、積層シート10aを加熱収縮させる際、1軸方向加熱収縮フィルム11より、表面平滑硬質層12aの弾性率を大きくすることができ、表面平滑硬質層12aが波状に折れ曲がり蛇行変形して、凹凸パターン13を容易に形成できる。
【0012】
表面平滑硬質層12aに使用できる金属としては、弾性率が過剰に高くならず、より容易に凹凸パターン13を形成することができることから、金、アルミニウム、銀、炭素、銅、ゲルマニウム、インジウム、マグネシウム、ニオブ、パラジウム、鉛、白金、シリコン、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛、ビスマスよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。ここでいう金属は、半金属も含む。
【0013】
また、金属化合物としては、上述と同様の理由から、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化銅、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化鉛、酸化ケイ素、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、硫化亜鉛、ガリウムヒ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物であることが好ましい。中でも、酸化チタンは、光が当たると表面に付着した有機物を分解する光触媒であり、自己洗浄機能を有しているため、好ましい。
【0014】
さらに、樹脂としては、1軸方向加熱収縮性フィルム11の加熱収縮温度より3℃以上高いガラス転移温度を有する樹脂であればよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂等が挙げられ、2種以上の樹脂を混合してもよい。
【0015】
表面平滑硬質層12aが金属または金属化合物の場合は、厚さは、1nm〜2μmであることが好ましい。また、表面平滑硬質層12aが樹脂の場合、厚さは、5nm〜10μmであることが好ましい。表面平滑硬質層12aの厚さを上述の範囲に制御し、凹凸パターン13の平均ピッチを1〜20μmにすることが好ましい。
ここで、平均ピッチAは、各ピッチA1,A2,A3・・・の平均値である。
また、各ピッチA1,A2,A3・・・は、平均ピッチAが1〜20μmであることを満たした上で、連続的に変化してもかまわない。
また、1軸方向加熱収縮性フィルム11と表面平滑硬質層12aとの間には、密着性の向上等を目的として、プライマー層を形成してもよい。
【0016】
1軸方向加熱収縮性フィルム11に前記表面平滑硬質層12aを形成する方法としては、(A)金属や金属化合物の場合には、例えば、(1)1軸方向加熱収縮性フィルム11の片面に、金属や金属化合物を蒸着させる方法、(2)1軸方向加熱収縮性フィルム11の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層12aを積層する方法などが挙げられる。また、(B)樹脂の場合には、例えば、(3)樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、(4)1軸方向加熱収縮性フィルム11の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層12aを積層する方法などが挙げられる。
【0017】
本発明の積層シート10aの加熱収縮方向に張力を作用させて、加熱変形させる方法としては、例えば、以下の方法が適用できる。
【0018】
図3を用いて、具体的に一実施形態について説明する。
主に幅方向に加熱収縮する連続シート状積層シート(加熱変形前)10aの流れ方向(Y方向)に張力をかけながら、加熱ゾーン40に導入し、加熱ゾーン40内で積層シート10aの幅を連続的に減少させ、光拡散シート10を製造する。
【0019】
Y方向に張力を作用させながら、積層シート10aを幅方向に連続的に加熱変形させることによって、前記硬質層が積層された面から前記光拡散シートに入射した光の1/10値拡散角度がX方向70〜80度、Y方向5〜15度となる光拡散シートをより安定的に製造することができる。
【0020】
上述した方法では、積層シートのX方向に張力をかけながら積層シートを加熱変形してもよい。積層シートのX方向に張力をかけながら積層シートを加熱変形する方法としては、
図3に示すように積層シートのX方向の両端をグリップで把持し、X方向の張力を制御しながら、加熱ゾーン入口から出口にかけて積層シートのX方向の幅が連続的に減少するように加熱変形する方法がある。
【0021】
積層シート10aのY方向に張力を作用させながら、且つ積層シート10aのX方向にかかる張力を制御しながら、積層シート10aを幅方向に連続的に加熱変形させることによって、前記硬質層が積層された面から前記光拡散シートに入射した光の1/10値拡散角度がX方向70〜80度、Y方向5〜15度となる光拡散シートをより安定的に製造することができる。
【0022】
本発明の光拡散シートの製造方法においては、積層シート10aのY方向の変形率を10%以内、より好ましくは、5%以内に制御することが好ましい。積層シート10aのY方向の変形率を10%以内とすることによって前記硬質層が積層された面から前記光拡散シートに入射した光の1/10値拡散角度がX方向70〜80度、Y方向5〜15度となる光拡散シートをより安定的に製造することができる。
ここで、積層シート10aのY方向の変形率は、積層シート10aのY方向に沿った直線状の2点をマーキングし、2点間の距離の加熱変形前後で測定して、(加熱変形前の2点間の距離)−(加熱変形後の2点間の距離)の絶対値/(加熱変形前の2点間の距離)×100(%)を算出することにより得られる。
【0023】
本発明の光拡散シートの製造方法においては、凹凸パターン13の底部13bの平均深さBを、容易に平均ピッチAを100%とした際の30%以上、より好ましくは70%以上とすることが光拡散性能を向上させるために好ましい。
【0024】
ここで、底部13bとは、凹凸パターン13の凹部の極小点であり、平均深さBは、光拡散シート10を長さ方向に沿って切断した断面(
図5参照)を見た際の、光拡散シート10全体の面方向と平行な基準線L1から各凸部の頂部までの長さB1,B2,B3・・・の平均値(Bav)と、基準線L1から各凹部の底部までの長さb1,b2,b3・・・の平均値(bAV)との差(bAV−BAV)のことである。前記凸部の頂部および前記凹部の底部は、硬質層12における加熱収縮性フィルム11側と反対側の面に接するものである。また、各深さB1,B2,B3・・・は、平均深さBが平均ピッチAを100%とした際の10%以上であることを満たした上で、連続的に変化してもかまわない。
【0025】
さらに、加熱変形により製造された光拡散シート10の凹凸パターンの幅方向の均一性の向上、あるいは熱安定化を目的として、
図4に示すように、加熱変形後の積層シート10のX方向の収縮率の20%以下の拡幅処理を行うことも可能である。この場合、加熱変形後の加熱変形後の積層シート10を流れ方向川下に向けて幅広になる把持グリップ31で把持することにより拡幅処理が行なわれる。
ここで、収縮率の20%以下とは、例えば、加熱変形後の積層シート10の幅が加熱変形前の積層シート10aの幅の40%になった場合、収縮率は60%で拡幅処理はその20%以下、つまり、もとの長さの12%以下となる。
【0026】
本発明の製造方法において、上述のY方向の張力の制御およびX方向の張力の制御に加えて、本発明の積層シート10aの表面平滑硬質層12aの弾性率および厚さを制御することにより、凹凸パターン13の平均ピッチAをコントロールすることができる。
また、1軸方向加熱収縮性フィルム11の加熱変形率を制御することにより、凹凸パターン13の平均深さBをコントロールすることができる。
具体的には、表面平滑硬質層12aの弾性率が大きいほど、あるいは厚さが大きいほど平均ピッチAが大きくなる。また、加熱収縮率が大きいほど平均深さBが大きくなる。
上述の条件を適宜選択することで所望の品質を得ることができる。
【0027】
積層シート10aに1軸方向加熱収縮性フィルム11を用いた場合は、収縮方向に対して直交方向に沿って波状の凹凸パターン13が形成される。1軸方向加熱収縮性フィルム11の代わりに、軸方向で収縮率が異なる2軸方向加熱収縮性フィルムを用いても、光拡散性に異方性を有する光拡散シートを得ることができる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、加熱収縮性フィルムの片面の全面に表面平滑硬質層を設けたが、加熱収縮性フィルムの片面の一部に表面平滑硬質層を設けてもよいし、加熱収縮性フィルムの両面の全面に表面平滑硬質層を設けてもよいし、加熱収縮性フィルムの両面の一部に表面平滑硬質層を設けてもよい。
【0029】
本発明によれば、光拡散シート10を簡便に、かつ、大面積で製造できる。
また、この製造方法によれば、容易に、凹凸パターン13の平均ピッチAおよび平均深さBをコントロールし、優れた異方性光拡散特性を有する光拡散シート10を製造できる。
【0030】
本発明の光拡散シートの製造方法では、前記硬質層が積層された面から前記光拡散シートに入射した光の1/10値拡散角度がX方向5〜15度、Y方向70〜80度となるように収縮させることを特徴とする。
【0031】
前記光拡散シートを通路や廊下の照明装置の拡散体として用いた場合、X方向の前記1/10値拡散角度が5度未満であると幅方向で照度不足の部分が生じ、15度を越えると壁面が明るくなり過ぎて相対的に足元の照度が低くなるため、足元が見づらくなる。
また、Y方向の前記1/10値拡散角度が70度未満であると通路や廊下の長手方向の明るさに不均一な部分が生じ、80度を越えると照明が不要なエリアにまで光が照射され、照明が必要なエリアの照度が低下する。
【0032】
前記光拡散シートを壁面に飾られた展示物を照らすための照明装置の拡散体として用いた場合、X方向の前記1/10値拡散角度が5度未満であると展示物に照度不足の部分が生じ、15度を越えると展示物の観察者の目に直接照明の光が入り易くなり、展示物が観察しづらくなる。壁面が明るくなり過ぎて相対的に足元の照度が低くなるため、足元が見づらくなる。
また、Y方向の前記1/10値拡散角度が70度未満であると展示物の明るさに不均一な部分が生じ、80度を越えると、展示物を斜め方向から観察するときに観察者の目に直接照明の光が入り易くなり、展示物が見づらくなる。
【0033】
前記1/10値拡散角度の不足を解消しようとすると、点状光源を直線上に間隔を小さく並べる必要があり、照明装置の製造コストや消費電力を増加させることとなり、効率が悪くなる。
【0034】
前記1/10値拡散角度を調整する方法としては、各軸方向の収縮率、縦横の収縮率の比率または縦横の収縮率の差の調整、収縮工程においてX軸方向にかける張力の調整、Y軸方向にかける張力調整、X軸方向、Y軸方向の張力の比率または差の調整、加熱条件(温度、時間、張力条件との組み合わせ、冷却条件など)の調整、のうちの1つまたは、2つ以上を組み合わせる方法が挙げられる。
【0035】
1/10値拡散角度を上記条件とした本発明の製造方法は、通路、廊下、プラットホームなどを照明する際に、少ない個数の点状光源であっても、長手方向に効率よく、均一な照度で照らすことができる照明装置に用いる光拡散シートとなる。
【0036】
前記照明装置においては、発光ダイオードの出光面側に本発明の光拡散シートまたは光拡散体を配置する。前記照明装置の設置においては、通路、廊下、プラットホームなどの長手方向と、凹凸が形成された面から前記光拡散シートに入射した光の1/10値拡散角度が最大となる方向と、が略同じとなるように照明装置を設置する。また、本発明の光拡散シート1枚に対し、1個の光源を配置しても良いし、複数の光源ユニットを配置しても良い。
【0037】
本発明の光拡散シートまたは光拡散体は、光源ユニットと照明ユニットの間に配置しても良く、照明カバーの表面に貼り付けられていても良く、照明カバーを兼ねていても良い。
【0038】
本発明の光拡散シートおよび光拡散体においては、加熱収縮性フィルムには、より光拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤あるいは微細気泡を含有させることができる。
【0039】
本発明は、上述の製造方法で製造された光拡散シートの前記硬質層が積層された面の形状を転写し、表面に凹凸パターンを有する光拡散体を得る光拡散体の製造方法を含む。
【0040】
前記光拡散体の具体的な製造方法としては、例えば、下記(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)光拡散シートの前記硬質層が積層された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工し、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を前記光拡散シートから剥離する方法。ここで、電離放射線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)光拡散シートの前記硬質層が積層された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工し、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を前記光拡散シートから剥離する方法。
(c)光拡散シートの前記硬質層が積層された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させ、該熱可塑性樹脂を前記光拡散シートに押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却し、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を前記光拡散シートから剥離する方法。
【0041】
また、光拡散シートを用いて工程シートを作製し、その工程シートを用いて、光学素子を製造することもできる。工程シートを用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
(d)光拡散シートの前記硬質層が積層された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層し、そのめっき層を前記光拡散シートから剥離し、金属性の工程シートを作製し、次いで、工程シートの前記硬質層が積層された面と接していた側の面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工し、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シートから剥離する方法。
(e)(d)と同様にして工程シートを作製し、該工程シートの前記硬質層が積層された面と接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工し、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シートから剥離する方法。
(f)(d)と同様にして工程シートを作製し、該工程シートの前記硬質層が積層された面と接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させ、該熱可塑性樹脂を工程シートに押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却し、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シートから剥離する方法。
【0042】
(a)の方法の具体例について説明する。
図6に示すように、まず、ウェブ状の前記光拡散シートの凹凸パターン113aが形成された面に、コーター120により未硬化の液状電離放射線硬化性樹脂113cを塗工する。次いで、該硬化性樹脂を塗工した工程シート110を、ロール130を通すことにより押圧して、前記硬化性樹脂を前記光拡散シートの凹凸パターン113a内部に充填する。その後、電離放射線照射装置140により電離放射線を照射して、硬化性樹脂を架橋・硬化させる。そして、硬化後の電離放射線硬化性樹脂を前記光拡散シートから剥離させることにより、ウェブ状の光学素子150を製造することができる。
【0043】
(a)の方法において、前記光拡散シートの前記硬質層が積層された面には、離型性を付与する目的で、未硬化の電離放射線硬化性樹脂塗工前に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる層を1〜10nm程度の厚さで設けてもよい。
前記光拡散シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工するコーターとしては、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーター等が挙げられる。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の電離放射線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の電離放射線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の電離放射線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0044】
未硬化の液状電離放射線硬化性樹脂を塗工した後には、樹脂、ガラス等からなる基材を貼り合わせてから電離放射線を照射してもよい。電離放射線の照射は、基材、前記光拡散シートの電離放射線透過性を有するいずれか一方から行えばよい。
【0045】
硬化後の電離放射線硬化性樹脂のシートの厚みは0.1〜100μm程度とすることが好ましい。硬化後の電離放射線硬化性樹脂のシートの厚みが0.1μm以上であれば、充分な強度を確保でき、100μm以上であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0046】
上記
図6に示す方法では、前記光拡散シートがウェブ状であったが、枚葉のシートであってもよい。枚葉のシートを用いる場合、枚葉のシートを平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉のシートをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉の前記光拡散シートを配置させてもよい。
【0047】
(b),(e)の方法において、液状熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化の、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、(b)の方法における硬化温度は、前記光拡散シートのガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が前記光拡散シートのガラス転移温度以上であると、硬化時に前記光拡散シートの凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
【0048】
(c),(f)の方法において、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
シート状の熱可塑性樹脂を工程シートに押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターンを高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、前記光拡散シートのガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が前記光拡散シートのガラス転移温度以上であると、加熱時に前記光拡散シートの凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターンを高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【0049】
(a)〜(c)の方法の中でも、加熱を省略でき、前記光拡散シートの凹凸パターンの変形を防止できる点で、電離放射線硬化性樹脂を使用する(a)の方法が好ましい。
【0050】
(d)〜(f)の方法においては、工程シートの厚さを50〜500μm程度とすることが好ましい。工程シートの厚さが50μm以上であれば、工程シートが充分な強度を有し、500μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい工程シートを工程シートとして用いるため、光拡散シート用の材料として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。
【0051】
なお、(d)〜(f)では前記光拡散シートの凹凸パターンを金属に転写させて工程シートを得たが、樹脂に転写させて工程シートを得てもよい。その場合に使用できる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、(a)の方法で使用する電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、(a)の方法と同様に、電離放射線硬化性樹脂の塗工、硬化、剥離を順次行なって、工程シートを得る。
【0052】
本発明の光拡散シートまたは光拡散体には、凹凸パターンの形成された面と反対の面に粘着剤層を設けても構わない。
【実施例】
【0053】
以下、製造例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0054】
(製造例1)
加熱収縮性フィルムとして、幅方向に最も大きく熱収縮する厚さ60μmの連続シート状ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名ヒシペット)の片面に、トルエンで希釈したポリスチレン(ポリマーソース株式会社製、ガラス転移温度100℃)を厚さが0.7μmになるように塗工機により塗工し、硬質層を形成して積層シートを得た。
得られた積層シートの50cm四方の積層シートサンプルを切り出し、最も大きく熱収縮する幅方向をX方向と定め、積層シートサンプルのX方向の両端部およびY方向の両端部を把持した。
このとき、
図7および
図8に示すように、Y方向の両端部を把持する把持手段33は、積層シートのX方向の熱収縮に合わせてX方向へ移動可能にするためX方向に延びた直線状のレールに移動可能なようにX方向8cm毎に取り付けた把持手段とした。更に、
図7および
図8に示すように、X方向、Y方向の張力を検出制御する手段を配置した。
次に積層シートのX方向にかかる張力がY方向にかかる張力の30倍となるように積層シートに張力を作用させながら、100℃で1分間加熱することにより、X方向で加熱前の長さの40%に熱収縮させ(すなわち、収縮率60%で収縮させ)、Y方向で加熱前の長さの94%に収縮させ(すなわち、変形率6%で収縮させ)、硬質層が、最も大きな収縮方向に対して直交する方向に沿って波状の凹凸パターンを有する光拡散シートを得た。
【0055】
(製造例2)
製造例1において、積層シートのX方向にかかる張力がY方向にかかる張力の20倍となるように積層シートに張力を作用させながら、85℃で1分間加熱することにより、X方向で加熱前の長さの60%に熱収縮させ(すなわち、収縮率40%で収縮させ)、Y方向で加熱前の長さの87%に収縮させ(すなわち、変形率13%で収縮させ)こと以外は、製造例1と同様にして、光拡散シートを得た。
【0056】
(製造例3)
製造例1において、X方向にかかる張力がY方向にかかる張力の25倍となるように積層シートに張力を作用させながら、85℃で1分20秒間加熱することにより、X方向で加熱前の長さの50%に熱収縮させ(すなわち、収縮率50%で収縮させ)、Y方向で加熱前の長さの92%に収縮させ(すなわち、変形率8%で収縮させ)こと以外は、製造例1と同様にして、光拡散シートを得た。
【0057】
(製造例4)
製造例1において、積層シートのX方向にかかる張力がY方向にかかる張力の5倍となるように積層シートに張力を作用させながら、100℃で1分20秒間加熱することにより、X方向で加熱前の長さの80%に熱収縮させ(すなわち、収縮率20%で収縮させ)、Y方向で加熱前の長さの85%に熱収縮させた(すなわち、収縮率15%で収縮させた)こと以外は、製造例1と同様にして、光拡散シートを得た。
【0058】
(製造例5)
加熱収縮性フィルムとして幅方向と流れ方向でほぼ同等に熱収縮する2軸方向加熱収縮性フィルムを用い、積層シートのX方向の両端部およびY方向の両端部を把持しないで加熱変形させたこと以外は、製造例1と同様にして光拡散シートを得た。
【0059】
(評価方法)
(1)平均ピッチ、平均深さの求め方
製造例1〜5の光拡散シートの凹凸が形成された面の任意の10箇所を、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製ナノスコープIII)により測定し、凹凸パターンの平均ピッチおよび平均深さを求めた。
【0060】
(2)光拡散特性の評価
[照度曲線における1/10幅の測定]
製造例1〜5の光拡散シートに対し、該光拡散シートの凹凸パターンが形成された面から、照射角3.5度のLED光源の光を、該LED光源の最も発光輝度が高くなる軸が前記光拡散シートの面に対して垂直に入射した。
次いで、ゴニオメーター(型式:GENESIA Gonio/FFP、ジェネシア社製)を用いて透過散乱光を測定することにより、照度曲線を得た。具体的には、光拡散シートから垂直に出射する光(この光の出光角度を0°とする。)の照度を1とした際の相対照度を、XまたはY方向に沿って出光角度−90°から90°までの相対照度を1°間隔で測定して、照度曲線を得た。ここで、照度曲線とは、
図5に示すような、横軸を出光角度とし、縦軸を相対照度として、プロットとした曲線である。
そして、照度曲線における1/10値幅(
図5中のW2)を求めた。その際、相対照度が0.1以上の角度範囲のデータのみを利用した。
1/10値幅の結果を表1に示す。なお、照度曲線の1/10値幅の角度が大きい程、拡散角度が大きくなる。
【0061】
(3)照明に使用したときの特性
LED光源を廊下の天井中央に設置し、該LED光源を覆うように製造例1〜5の光拡散シートを配置した。このとき、光拡散シートの凹凸が形成された面がLED光源側となるように配置し、且つ、前記(2)で測定された1/10値拡散角度が最も大きくなる方向が、廊下の長手方向となるように光拡散シートを配置した。次に該LED光源を点灯して、廊下の照明状態を以下の基準に従って目視で観察した。
(廊下長手方向の照度均一性)
○:廊下の長手方向に広く、且つ均一に照らされている。
×:廊下の長手方向に広く照らされていない、または均一に照らされていない。
(廊下壁面の照度適性)
○:廊下壁面が眩しすぎない程度に、且つ均一に照らされている。
×:廊下壁面が眩しすぎる、または均一に照らされていない。
【0062】
得られた光拡散シートについて、上述の評価方法で評価した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
製造例1から製造例4から得られた光拡散シートは、いずれも、X方向の1/10値拡散角度が70〜80度、Y方向の1/10値拡散角度が5〜15度の範囲であり、廊下、通路などの照明に適した光拡散シートであった。